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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】コラーゲンと鉄を含む飲料
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20220531BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220531BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20220531BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220531BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220531BHJP
   A23L 33/165 20160101ALI20220531BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220531BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20220531BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220531BHJP
【FI】
A61K38/39
A23L2/00 B
A23L2/00 J
A23L2/38 B
A23L2/38 C
A23L2/66
A23L33/105
A23L33/165
A23L33/18
A61K9/08
A61K33/26
A61K36/53
A61K47/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021143900
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2021-09-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020192119
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 愛理
(72)【発明者】
【氏名】山下 美保
(72)【発明者】
【氏名】山地 麻里江
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】大久保 元浩
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315439(JP,A)
【文献】特許第6841371(JP,B1)
【文献】特許第6923065(JP,B1)
【文献】「インナーリフティアQQリキッド」,2020年10月29日.URL:https://web.archive.org/web/20201029124800/https://net.pola.co.jp/ec/pro/disp/1/0835
【文献】Mintel GNPD ID:2534909「Extract Rose Drink」(掲載時期:2014年7月)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-48/00
A23L 2/00-2/84
A23L 33/00-33/29
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鉄換算で0.006~0.04w/v%のクエン酸鉄アンモニウム
(B)0.1~15w/v%のコラーゲンペプチド、
(C)レモンバーム葉の熱水抽出エキス
を含有することを特徴とするpHが2.5~4.5である経口液体組成物であって、
(C)レモンバーム葉の熱水抽出エキスの含有量が、(B)コラーゲンペプチド1000質量部に対して0.5~125質量部である、経口液体組成物。
【請求項2】
(C)のレモンバーム葉の熱水抽出エキスの含有量が0.0002~2w/v%である請求項1記載の経口液体組成物。
【請求項3】
経口液体組成物が、液体飲料である請求項1又は2に記載の経口液体組成物。
【請求項4】
pH2.5~4.5である経口液体組成物において、0.006~0.04w/v%のクエン酸鉄アンモニウムに、0.1~15w/v%のコラーゲンペプチドを配合することで生じる不快臭を、コラーゲンペプチド1000質量部に対して0.5~125質量部のレモンバーム葉の熱水抽出エキスを配合することにより抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄化合物を含有する経口液体組成物に関し、医薬品、医薬部外品及び食品等の分野において利用されうる。
【背景技術】
【0002】
鉄は生体にとって必須の金属であるにも関わらず、特に女性において、摂取基準に対して不足しがちであることが報告されている。日本人の食事摂取基準(2020年版)において女性の鉄の推奨量は10.5mgであるが、平成30年国民健康・栄養調査では女性の鉄の摂取量は7.5mgであり、1日当たり3mg程度鉄が不足している(非特許文献1)。食生活上の効率的な摂取の方法として、鉄化合物を配合した飲料やサプリメント等が利用されているが、鉄化合物が他の配合成分と反応し、風味や品質を損なうという問題があった(特許文献1、2)。
【0003】
また、近年、コラーゲンペプチドやエラスチンペプチドを配合した飲料やサプリメントの人気が高まっている。コラーゲンは、真皮、靭帯、腱、骨、軟骨などを構成する主要なタンパク質である。(非特許文献2)。コラーゲンペプチドは、動物や魚から得られたコラーゲンを加水分解する等の方法で得られる。エラスチンは、項靭帯、大動脈、皮膚、肺など弾性を必要とする様々な組織に広く分布している線維の主要タンパク質である(非特許文献3)。
【0004】
エラスチンペプチドは、動物の大動脈や魚の動脈球等を原料として加水分解する等の方法で得られる。このように、コラーゲンペプチドやエラスチンペプチドは、豚や魚由来のタンパク質を原料として得られるため、特有の不快臭を有する。
【0005】
今までに、コラーゲン加水分解物を配合した風味の良好な飲料として、ハトムギエキス、ベニバナエキス、アンズエキスおよびニンジンエキスよりなる群から選ばれる2種以上のエキス、ローヤルゼリー、ビタミンB2類およびビタミンB6類から選ばれる1種または2種以上のビタミン、食物繊維、糖類、ステビア、梅果汁、L-アスパラギン酸ナトリウム、酸味剤およびフルーツ系フレーバーを配合した飲料が報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】食品と開発 VOL.55 No.6 P.41
【文献】大原浩樹ら日本食品化学工学誌 VOL.56 No.3 P.137~145(2009)
【文献】食品と開発 VOL.50 No.7 P.14
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-93397号公報
【文献】特開2000-279143号公報
【文献】特開平5-199855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、コラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを配合した経口液体組成物に、鉄化合物を配合したところ、特有の不快臭が増強することを発見した。よって本発明の目的は、この特有の不快臭を抑制し、日常的に摂取可能な嗜好性の高い経口液体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の植物エキスを配合すると、鉄化合物とコラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを組み合わせた際の特有の不快臭を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
(1)(A)鉄化合物、
(B)コラーゲンペプチド及びエラスチンペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチド、
(C)レモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、及びローズマリーエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物エキス、を含有することを特徴とする経口液体組成物、
(2)(A)鉄化合物の含有量が、鉄換算で0.0002~0.2w/v%である(1)に記載の経口液体組成物、
(3)(B)コラーゲンペプチドの含有量が、0.02~20w/v%である(1)又は(2)に記載の経口液体組成物、
(4)(B)エラスチンペプチドの含有量が、0.0002~2w/v%である(1)~(3)のいずれかに記載の経口液体組成物、
(5)(C)のレモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、及びローズマリーエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物エキスの含有量が0.0002~2w/v%である(1)~(4)のいずれかに記載の経口液体組成物、
(6)鉄化合物が、フマル酸第一鉄、塩化第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄およびヘム鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)~(5)のいずれかに記載の経口液体組成物、
(7)pHが2.5~4.5である(1)~(6)のいずれかに記載の経口液体組成物、
(8)経口液体組成物が、液体飲料である(1)~(7)のいずれかに記載の経口液体組成物、
(9)鉄化合物に、コラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを配合することで生じる不快臭を、レモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、及びローズマリーエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物エキスを配合することにより抑制する方法、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、鉄化合物とコラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを配合した際の特有の不快臭が抑制された経口液体組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において「鉄化合物」とは、二価の鉄化合物及び三価の鉄化合物のいずれでもよく、例えばフマル酸第一鉄、塩化第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄、ヘム鉄を挙げることができる。鉄化合物の含有量は、鉄の含有量が高くなるにつれ、コラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドと配合した際の不快臭の割合が増加するため、鉄の含有量が高くなるほど実施する意義が高い。本発明の経口液体組成物中、鉄換算で下限値は0.0002w/v%が好ましく、0.001w/v%がより好ましく、0.002w/v%がさらに好ましく、0.006w/v%がさらに好ましく、0.01w/v%が最も好ましい。また、鉄化合物としては下限値は0.001w/v%が好ましく、0.005w/v%がより好ましく、0.01w/v%がさらに好ましく0.02w/v%がさらに好ましく、0.03w/v%がさらに好ましく、0.05w/v%が最も好ましい。なお、本発明のコラーゲンペプチドとレモンバームエキスを配合する場合は、本発明の経口液体組成物中、鉄換算で下限値は好ましくは0.006w/v%、より好ましくは0.01w/v%であり、鉄化合物としては下限値は好ましくは0.03w/v%、より好ましくは0.05w/v%である。また、上限値としては、本発明の経口液体組成物中、鉄換算としては上限値は0.2w/v%が好ましく、0.04w/v%がより好ましい。また、鉄化合物の上限値は3.3w/v%が好ましく、1.2w/v%がより好ましい。
【0013】
本発明において「コラーゲンペプチド」とは、その起源は特に限定されず、合成であってもよく、牛や豚等の家畜や魚を加工する際に副生する皮、骨、靭帯、腱、軟骨等から抽出して製造されるコラーゲンペプチドであってもよいが、豚および魚由来のコラーゲンペプチドが好ましい。コラーゲンタンパク質を酵素や化学的処理等により分解して得られるコラーゲンペプチドが好ましい。コラーゲンペプチドの平均分子量としては、特に限定されないが、500~50000であることが好ましく、1000~25000であることがより好ましい。コラーゲンペプチドの含有量は、本発明の経口液体組成物中、0.02~20w/v%であることが好ましく、0.1~15w/v%がより好ましい。
【0014】
本発明のコラーゲンペプチドは、市販品を用いてもよく、例えば、(株)ニッピ製の「ニッピペプタイドPS-1」、「ニッピペプタイドPRA-P」、「ニッピペプタイドFCP-EX」、ゼライス(株)製の「HACP-CF」、「HACP-TF」、新田ゼラチン(株)製の「コラペプPU」、「コラペプJB」、「HDL-50SP」、「SCP-3100」、ルスロ(株)製の「peptan P2000HD」等が挙げられる。
本発明の「コラーゲンペプチド」の含有量は、鉄換算で鉄1質量部に対して1~75000質量部が好ましく、5~7500質量部がより好ましく、20~2500質量部がさらに好ましい。
【0015】
本発明において「エラスチンペプチド」とは、その起源は特に限定されず、合成であってもよく、動物の大動脈や魚の動脈球等を、酵素等を用いて加水分解して製造されるものであってもよいが、豚大動脈およびカツオ動脈球由来のエラスチンペプチドが好ましい。本発明のエラスチンペプチドは、市販品を用いても良く、例えば、日本ハム(株)製の「P-エラスチン」、林兼産業(株)の「カツオエラスチン」、日本水産(株)製の「美弾エラスチン」等が挙げられる。エラスチンペプチドの分子量は特に限定されないが、100~20000であることが好ましく、150~10000であることがより好ましい。
【0016】
エラスチンペプチドの含有量は、本発明の経口液体組成物中、0.0002~2w/v%であることが好ましく、0.002~1w/v%がより好ましい。
【0017】
本発明の「エラスチンペプチド」の含有量は、鉄換算で鉄1質量部に対して0.1~5000質量部が好ましく、0.5~500質量部がより好ましく、0.5~100質量部がさらに好ましい。
【0018】
本発明のレモンバームとは、シソ科コウスイハッカ属のレモンバーム(別名:メリッサ、学名:Melissa officinalis)の葉に由来する生薬又は植物であり、生薬末又は植物末、生薬エキス又は植物エキスの形で使用される。本発明に用いる生薬末又は植物末としては、例えば乾燥刻み加工品を更に細かく粉砕した粉末状の乾燥品としてもよい。
【0019】
本発明に用いる「レモンバームエキス」は、水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などの溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができるが、このうち水、低級脂肪族アルコール、多価アルコール又はこれらの混液で抽出することが最も好ましい。
また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥、デキストリン等の賦形剤を加えた粉末化などの処理により、乾燥エキス末、エキス末、軟エキス、流エキスなどにすることができる。レモンバームエキスの市販品としては、丸善製薬(株)の「レモンバームエキスA」、「レモンバームエキスパウダーMF」、一丸ファルコス(株)の「ファルコレックス メリッサB」等が挙げられる。
【0020】
レモンバームエキスの含有量は、賦形剤や抽出溶媒等を除いた正味のレモンバームエキスとして、本発明の効果の点から、本発明の経口液体組成物中0.0002w/v%以上が好ましく、0.001w/v%以上がより好ましい。上限値は、風味の観点から、2w/v%が好ましく、0.5w/v%がより好ましく、0.25w/v%が最も好ましい。鉄とレモンバームを配合するときは、レモンバームエキスの含有量は、本発明の効果の点から、鉄換算で、鉄1質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましい。上限値は鉄換算で鉄1質量部に対して10000質量部が好ましく、1250質量部がより好ましく、125質量部がさらに好ましい。
【0021】
本発明のドクダミはコショウ目ドクダミ科ドクダミ属ドクダミHouttuynia cordata Thunberg(Saururaceae)の開花期の地上部に由来する生薬又は植物であり、生薬末又は植物末、生薬エキス又は植物エキスの形で使用される。本発明に用いる生薬末又は植物末としては、例えば乾燥刻み加工品を更に細かく粉砕した粉末状の乾燥品としてもよい。
本発明に用いる「ドクダミエキス」は、水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などの溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができるが、このうち水、低級脂肪族アルコール、多価アルコール又はこれらの混液で抽出することが最も好ましい。
【0022】
また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥、デキストリン等の賦形剤を加えた粉末化などの処理により、乾燥エキス末、エキス末、軟エキス、流エキスなどにすることができる。ドクダミエキスの市販品としては、丸善製薬(株)の「ジュウヤク抽出液」、「ジュウヤク抽出液BG」、「ドクダミエキスパウダーMF」や、一丸ファルコス(株)の「ファルコレックス ドクダミ B」、「ファルコレックス ドクダミ E」、「ファルコレックス ドクダミ W」、「ドクダミDXP100」等が挙げられる。
【0023】
ドクダミエキスの含有量は、賦形剤や抽出溶媒等を除いた正味のドクダミエキスとして、本発明の効果の点から、本発明の経口液体組成物中0.0002w/v%以上が好ましく、0.002w/v%以上がより好ましい。上限値は、風味の観点から2w/v%が好ましく、0.2w/v%がより好ましい。ドクダミエキスの含有量は、本発明の効果の点から、鉄換算で、鉄1質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。上限値は鉄換算で鉄1質量部に対して10000質量部が好ましく、1000質量部がより好ましく、100質量部がさらに好ましい。
【0024】
本発明のアーティチョークは、キク目キク科チョウセンアザミ属アーティチョークCynara scolymus Linne (Compositae)の葉に由来する生薬又は植物であり、生薬末又は植物末、生薬エキス又は植物エキスの形で使用される。本発明に用いる生薬末又は植物末としては、例えば乾燥刻み加工品を更に細かく粉砕した粉末状の乾燥品としてもよい。
本発明に用いる「アーティチョークエキス」は、水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などの溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができるが、このうち水、低級脂肪族アルコール、多価アルコール又はこれらの混液で抽出することが最も好ましい。
また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥、デキストリン等の賦形剤を加えた粉末化などの処理により、乾燥エキス末、エキス末、軟エキス、流エキスなどにすることができる。アーティチョークエキスの市販品としては、一丸ファルコス(株)の「バイオベネフィティ(登録商標)」、「バイオベネフィティ G」、「バイオベネフィティ HS」、「シナロピクリン F」、「バイオベネフィティ F」等が挙げられる。
【0025】
アーティチョークエキスの含有量は、賦形剤や抽出溶媒等を除いた正味のアーティチョークエキスとして、本発明の効果の点から、本発明の経口液体組成物中0.0002w/v%以上が好ましく、0.0006w/v%以上がより好ましい。上限値は、風味の観点から2w/v%が好ましく、0.06w/v%がより好ましい。アーティチョークエキスの含有量は、本発明の効果の点から、鉄換算で鉄1質量部に対して0.001質量部以上部が好ましく、0.003質量部以上がより好ましく、0.015質量部以上がさらに好ましい。上限値は、鉄換算で鉄1質量部に対して10000質量部が好ましく、300質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。
【0026】
本発明のローズマリーとは、シソ科植物ローズマリー(学名:Rosmarinus Officinalis)の葉に由来する生薬または植物であり、生薬末又は植物末、生薬エキス又は植物エキスの形で使用される。本発明に用いる生薬末又は植物末としては、例えば乾燥刻み加工品を更に細かく粉砕した粉末状の乾燥品としてもよい。発明に用いる「ローズマリーエキス」は、水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)などの溶媒や前記溶媒の混液により抽出したものを使用することができるが、このうち水、低級脂肪族アルコール、多価アルコール又はこれらの混液で抽出することが最も好ましい。
また、エキスの形態は特に制限されるものではなく、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥、デキストリン等の賦形剤を加えた粉末化などの処理により、乾燥エキス末、エキス末、軟エキス、流エキスなどにすることができる。ローズマリーエキスの市販品としては、本発明に用いるまた抽出物である。エキス末として、市販品を用いても良く、「ローズマリーエキス(バイオアクティブズジャパン)」、「ローズマリーエキスMF(丸善製薬)」等が挙げられる。
【0027】
ローズマリーエキスの含有量は、賦形剤や抽出溶媒等を除いた正味のローズマリーエキスとして、本発明の効果の点から、本発明の経口液体組成物中0.0002w/v%以上が好ましく、0.0008w/v%以上がより好ましい。上限値は、風味の観点から、2w/v%が好ましく、0.1w/v%がより好ましい。ローズマリーエキスの含有量は、本発明の効果の点から、鉄換算で、鉄1質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、0.004質量部以上がより好ましく、0.02質量部以上がさらに好ましい。上限値は鉄換算で鉄1質量部に対して10000質量部が好ましく、500質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましい。
【0028】
本発明は、鉄化合物とコラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを配合した際の不快臭を、特定の植物エキス、すなわちレモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、又はローズマリーエキスを配合することで顕著に抑制できる。
【0029】
本発明における経口液体組成物とは、経口摂取できる液体であれば特に制限はなく、医薬品、医薬部外品、又は食品(一般の食品だけでなく、栄養機能性食品や特定保健用食品、機能性表示食品も含む)を挙げることができる。
【0030】
医薬品及び医薬部外品としては、例えば内服液剤、ドリンク剤等を挙げることができる。食品としては、清涼飲料水、炭酸飲料、スポーツ・機能性飲料、ノンアルコール飲料、乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、果実・野菜系飲料、ゼリー飲料等が挙げられる。より好ましくは、医薬品及び医薬部外品であれば内服液剤、ドリンク剤、食品であれば、栄養機能性食品、特定保健用食品等の各種飲料、炭酸飲料、ゼリー飲料である。
【0031】
本発明の経口液体組成物のpHは、特に限定されないが、口当たりの良さという点から2.5~4.5が好ましく、3.0~4.0がより好ましい。pHを上記範囲に保つために、必要に応じて有機酸等のpH調整剤を配合することができる。
【0032】
本発明の経口液体組成物は、常法により製造することができ、その方法は特に限定され
るものではない。通常、各成分を量りとり、適量の精製水で溶解、撹拌した後、pHを調
整し、さらに精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、殺菌処理を施すことにより
得られる。
【0033】
また、本発明の経口液体組成物には、その他の成分として、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリー、デキストリン等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色剤、香料、矯味剤、保存剤、甘味料、酸味剤等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【実施例
【0034】
以下に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
(比較例1~18、実施例1-1~18)
下記表1~10に記載の処方および次の方法に従い経口液体組成物を調製した。まず、全量の60%程度の精製水に、コラーゲンペプチド(豚由来:新田ゼラチン株式会社製コラペプJB、株式会社ニッピ製ニッピぺプタイドPRA-P、魚由来:株式会社ニッピ製ニッピペプタイドFCP-EX)、又はエラスチンペプチド(魚由来:林兼産業株式会社製カツオエラスチン、豚由来:日本ハム株式会社製P-エラスチン)、クエン酸、安息香酸ナトリウムを添加し、十分に撹拌した。その後に、クエン酸鉄アンモニウムを添加し、全量の80%程度となるように精製水を加え、十分に撹拌した。次に植物エキスとして、レモンバームエキス(熱水抽出エキス、丸善製薬株式会社製レモンバームエキスパウダーMF)、ドクダミエキス(水抽出エキス、日本粉末薬品株式会社製ドクダミエキスパウダー)、アーティチョークエキス(エタノール抽出エキス、一丸ファルコス株式会社製バイオベネフィティF)、又はローズマリーエキス(熱水抽出物エキス、丸善製薬株式会社製ローズマリーエキスMF)を添加し、十分に撹拌後、塩酸または水酸化ナトリウムを用いてpHを調整し、精製水を加えて全量とし、経口液体組成物を得た(実施例1-1~18)。これらの経口液体組成物をスクリュー管No.7((株)マルエム製)に50ml充填し、80℃25分の殺菌を行った。なお、植物エキスを添加しない経口液体組成物を対照とした(比較例1~18)。
上記の通り調製した経口液体組成物を65℃で7日間保存し、においを嗅ぎ、表11の基準で不快臭の軽減度合いを評価した。
なお、表1~表10の各エキス量は、原料エキスに含まれる賦形剤と抽出溶媒を除いた正味のエキス量である。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【0045】
【表10】
【0046】
【表11】
【0047】
表1~6に示した通り、鉄化合物およびコラーゲンペプチドを配合することにより、不快臭が生じた(比較例1~10)。コラーゲンペプチドの濃度が高まると不快臭の割合も増加した(比較例1~3)。また、鉄の濃度が高まると不快臭の割合も増加した(比較例2、4、5、7)。一方、レモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、又はローズマリーエキスを配合することにより、不快臭の割合が軽減された(実施例1-1~実施例10-3)。
表7~10に示した通り、鉄化合物およびエラスチンペプチドを配合した場合においても、不快臭が生じた(比較例11~18)。エラスチンペプチドの濃度が高まると不快臭の割合も増加した(比較例12、14,15)。また、鉄の濃度が高まると不快臭の割合も増加した(比較例12、13)。一方、レモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、又はローズマリーエキスを配合することにより、不快臭の割合が軽減された(実施例11-1~実施例18)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、経口液体組成物中における鉄化合物およびコラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを配合した際の不快臭を抑制することが可能となったので、医薬品、医薬部外品及び食品の分野において、商品性の高い鉄化合物及びコラーゲンペプチド又はエラスチンペプチド含有経口液体組成物を提供することが期待される。
【要約】
【課題】
本発明は、経口液体組成物中に鉄化合物とコラーゲンペプチド又はエラスチンペプチドを配合した際の、不快臭を抑制することを課題とする。
【解決手段】
(A)鉄化合物、
(B)コラーゲンペプチド及びおよび,またはエラスチンペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1種のペプチド1種以上、
(C)レモンバームエキス、ドクダミエキス、アーティチョークエキス、及びローズマリーエキスからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物エキス1種以上を含有することを特徴とする配合した経口液体組成物。
【選択図】なし