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特許7082260移動体用ガイドレール及びガイドレールシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】移動体用ガイドレール及びガイドレールシステム
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/30 20060101AFI20220601BHJP
   E04G 5/00 20060101ALI20220601BHJP
   E04G 5/04 20060101ALI20220601BHJP
   B66B 7/02 20060101ALI20220601BHJP
   B66B 7/04 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E04G3/30 301B
E04G5/00
E04G5/04 C
B66B7/02 B
B66B7/04 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018084853
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019190156
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000167495
【氏名又は名称】工研ゴンドラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】田辺 玲子
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特許第5584871(JP,B2)
【文献】特開2008-115683(JP,A)
【文献】登録実用新案第3045993(JP,U)
【文献】特開平05-125883(JP,A)
【文献】特許第2506471(JP,B2)
【文献】米国特許第04157129(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/30
E04G 5/00
E04G 5/04
B66B 7/02
B66B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁工事に用いる作業用ゴンドラなどの移動体を案内するものとして外壁に垂直向きに取り付けられるガイドレールであって、
前記移動体に設けられたガイドローラが転動自在に係合するレール本体部と、
このレール本体部と外壁側の対向する位置に配置され、前記外壁と連結する連結具と連結可能な連結部と、この連結部と前記レール本体部をつなぐウエブ部と、を有し、
前記ウエブ部には連結部近傍に前記連結具との緩衝を防止するストッパ部が設けられ、前記レール本体部は断面円形の中空パイプ状に形成されていることを特徴とする移動体用ガイドレール。
【請求項2】
連結部は、断面円形の中空パイプ状に形成されている請求項1に記載の移動体用ガイドレール。
【請求項3】
レール本体部は、断面が連結部と同径又は大径の中空パイプ状に形成されている請求項1又は2に記載の移動体用ガイドレール。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の移動体用ガイドレールを備え、このガイドレールのレール本体部に、水平方向に所定の間隔を置いて配置され、複数個一組として移動体の上下方向に複数設けられたガイドローラが、該レール本体部の外周面を外側から挟持するように転動自在に係合するとともに、連結部に、一対のクランプ部を有して外壁と連結して設けられた連結具が、該連結部の外周面を前記クランプ部で外側から挟持するように係合してなることを特徴とするガイドレールシステム。
【請求項5】
ガイドローラは、外周面が鼓状に形成された鼓状ローラである請求項に記載のガイドレールシステム。
【請求項6】
連結具は、外壁に設けたアンカーブラケットに上下方向、及び水平方向に位置調整可能に取り付けられている請求項又はに記載のガイドレールシステム。
【請求項7】
ガイドレールを上下方向に複数本有し、これら上下に隣接するガイドレールは、レール本体部の相対向する開口端部にジョイントを挿入して着脱可能に連結されている請求項ないしのいずれかに記載のガイドレールシステム。
【請求項8】
上下に隣接するガイドレールは、連結部の相対向する開口端部にスペーサピンを挿入して着脱可能に連結されている請求項に記載のガイドレールシステム。
【請求項9】
水平方向に所定の間隔を置いて配置されたガイドローラは、ガイドレールのレール本体部の外周面を外側から挟持する位置と、該挟持する位置から脱して取り外し可能な位置と、に変換可能に支持部材に設けられている請求項ないしのいずれかに記載のガイドレールシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体用ガイドレール及びガイドレールシステムに関し、さらに詳しくは建物の外壁工事等に際して、作業者が乗り込む作業用ゴンドラなどの移動体(昇降体)を案内するために外壁に垂直向きに設ける仮設のガイドレールとその関連技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
前記のような作業用ゴンドラにおいて、例えばマンションなど高層ないし超高層の建物の改修工事を行う場合、単にワイヤロープを介して吊り下げただけのゴンドラでは大きく水平方向に振れることがある。そこで、揺れないようにするために外壁にガイドレールを垂直向きに2本並列して敷設し、それに沿ってゴンドラを昇降させる方式をとっているのが実情である。
【0003】
この従来技術として挙げられるのは、例えば特許文献1に開示されているものである。これは壁面に沿って吊り下げられ少なくとも昇降する昇降体を前記壁面に平行かつ鉛直にガイドする仮設ガイドレールの取付金具であって、前記壁面に取り付ける壁面固定部材に、位置調整部を介して前記壁面と平行な面上で位置調整可能に取り付けられる取付金具基板と、この取付金具基板に垂直に突き出して固設される金具固定軸部材と、この金具固定軸部材に回動位置を調整して取り付けられて固定されるとともに、前記仮設ガイドレールを挟んで固定するレール固定部材とからなり、複数の前記壁面固定部材の配設位置にかかわらず前記壁面と平行な面上で位置調整された前記取付金具基板を介して前記金具固定軸部材を所望の鉛直線上に配設し、前記金具固定軸部材に固定される複数の前記レール固定部材を前記金具固定軸部材周りの回動で位置調整し、前記仮設ガイドレールを直線上に配設して締め付けて固定可能に構成してなるものである(請求項1、図3,4参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の取付金具で固定されるガイドレールは、1本の長さが2.5~3mを標準としているため高層ないし超高層建物の改修工事では、例えば150mの高さの建物の場合1本のガイドレール長を3mとすると50本のレールを延長し、かつ昇降体1台に対し約100本にも及ぶこととなり、仮設ゴンドラの振れ止めとしての機能は満足しているが、仮設解体時に高所ないし超高所で膨大な数のアンカーボルト等の取付金具を取り付け、取り外したりするときに取付金具の締め付け確認を行うのは困難を伴う上、取付金具の落下リスクも非常に高く危険性のある作業となっていた。しかも、取付金具は工事終了に伴う仮設解体時に取り外すが、その際にアンカーボルト打設時に壁面にあけた穴の補修も多数箇所で必要となる、という問題がある。
【0005】
また、ガイドレールを構成するH型鋼のフランジ部に昇降体側のガイドローラを添わせて転動自在に係合する構造であるため、フランジ部に添わせるガイドローラ等の数量が多くなりローラ構造が複雑となる。さらに、壁面とレール固定部材を単純化しようとすると、レール固定部材を特殊な部材で製作する必要があり、必然的にコストが高くなる、という問題がある。
【0006】
さらにまた、ガイドレールそのものも、前記のようにH型鋼という鋼材からなるので、重くて運搬が容易でないのに加え、このフランジ部が角形を呈しているため、取り付けに際しては、それに適合する精度の高い溝付きガイドローラを特別に製作しなければならず、しかも個数も多数必要となるため、製作費がかかる、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5584871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、前記従来の問題を解決し、ボルト等の取付金具数を削減して取り付け取り外し作業を簡易にできるとともに、仮設解体時の部品落下事故のリスクの低減と、仮設解体の省力化を図ることができ、しかもレール固定部材などレールとの連結部の部品を汎用品で賄えて製作コストを低く抑えることができる移動体用ガイドレール及びガイドレールシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、建物の外壁工事に用いる作業用ゴンドラなどの移動体を案内するものとして外壁に垂直向きに取り付けられるガイドレールであって、前記移動体に設けられたガイドローラが転動自在に係合するレール本体部と、このレール本体部と外壁側の対向する位置に配置され、前記外壁と連結する連結具と連結可能な連結部と、この連結部と前記レール本体部をつなぐウエブ部と、を有し、前記ウエブ部には連結部近傍に前記連結具との緩衝を防止するストッパ部が設けられ、前記レール本体部は断面円形の中空パイプ状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、連結部は、断面円形の中空パイプ状に形成されている。請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、レール本体部は、断面が連結部と同径又は大径の中空パイプ状に形成されている。連結部は、断面円形の中空パイプ状に代えて、ウエブ部と直交する向きの断面フラットな板状に形成してもよい。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の移動体用ガイドレールを備え、このガイドレールのレール本体部に、水平方向に所定の間隔を置いて配置され、複数個一組として移動体の上下方向に複数設けられたガイドローラが、該レール本体部の外周面を外側から挟持するように転動自在に係合するとともに、連結部に、一対のクランプ部を有して外壁と連結して設けられた連結具が、該連結部の外周面を前記クランプ部で外側から挟持するように係合してなるガイドレールシステムであることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項において、ガイドローラは、外周面が鼓状に形成された鼓状ローラである。請求項に記載の発明は、請求項又はにおいて、連結具は、外壁に設けたアンカーブラケットに上下方向、及び水平方向に位置調整可能に取り付けられている。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項ないしのいずれかにおいて、ガイドレールを上下方向に複数本有し、これら上下に隣接するガイドレールは、レール本体部の相対向する開口端部にジョイントを挿入して着脱可能に連結されている。請求項に記載の発明は、請求項において、上下に隣接するガイドレールは、連結部の相対向する開口端部にスペーサピンを挿入して着脱可能に連結されている。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項ないしのいずれかにおいて、水平方向に所定の間隔を置いて配置されたガイドローラは、ガイドレールのレール本体部の外周面を外側から挟持する位置と、該挟持する位置から脱して取り外し可能な位置と、に変換可能に支持部材に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、前記のようであって、請求項1ないしに記載の発明によれば、移動体に設けられたガイドローラが転動自在に係合するレール本体部と、このレール本体部と外壁側の対向する位置に配置され、前記外壁と連結する連結具と連結可能な連結部と、この連結部と前記レール本体部をつなぐウエブ部と、を有し、前記ウエブ部には連結部近傍に前記連結具との緩衝を防止するストッパ部が設けられ、前記レール本体部は断面円形の中空パイプ状に形成されているので、従前のH型鋼からなるガイドレールに比べてレール本体部に転動自在に係合するガイドローラを複雑なものとする必要がなく簡素な構成にすることができて取り扱い易く、しかもその数量も少なくすることができてコストの低減を図ることができるという効果が期待できる。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の移動体用ガイドレールを備え、このガイドレールのレール本体部に、水平方向に所定の間隔を置いて配置され、複数個一組として移動体の上下方向に複数設けられたガイドローラが、該レール本体部の外周面を外側から挟持するように転動自在に係合するとともに、連結部に、一対のクランプ部を有して外壁と連結して設けられた連結具が、該連結部の外周面を前記クランプ部で外側から挟持するように係合してなるので、前記のようなガイドレールを用いたガイドレールシステムを提供することができる。また、連結具を特殊な部材で製作する必要がなく市販の汎用品で賄えるので、製作コストを低く抑えることができる。また、システム全体としてボルト等の取付金具の数量を少なくできるので、仮設解体時の部品落下事故のリスクの低減と、仮設解体の省力化を図ることができる。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、ガイドローラとして鼓状ローラを用いることができ、従前の溝付きでH型鋼レールに対して精度の高さを要求されるローラを使用しなくともよいので、製作費を低く抑えることができる。請求項に記載の発明によれば、ガイドレールの外壁への取付に際し、壁面アンカーの位置が墨だし位置からずれた場合でも連結具を位置調整することによりガイドレールを垂直に仮設することができる。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、上下に隣接するガイドレールを容易に、かつボルト等の取付金具数を削減して連結することができ、ガイドレールの取り付け取り外し作業を簡易にできる。請求項に記載の発明によれば、ジョイントとスペーサピンの協働作用によりガイドレールを高い剛性を維持した状態で連結することができる。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、ガイドローラをガイドレールの上下端からだけではなく、ガイドレールの途中からでも入れられるので、その装着作業が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明に係わるガイドレールシステムの一実施の形態を示す全体概要を示す正面図である。
図2】同上の平面図である。
図3】同上の側面図である。
図4】ガイドレールシステムに用いられるガイドレールを示す斜視図である。
図5】建物の外壁に取り付けられたアンカーブラケットと作業用ゴンドラ間の連結構造を示す拡大平面図である。
図6】アンカーブラケットを示し、(A)は外壁側から見た斜視図、(B)はゴンドラ側から見た斜視図である。
図7】(A)はレールクランプがアンカーブラケットに取り付けられた状態を示す斜視図、(B)はレールクランプの構成を示す図面である。
図8】上下のガイドレールのレール本体部を連結するオートジョイントを示す斜視図である。
図9】上下のガイドレールの連結部を連結するスペーサピンを示す斜視図である。
図10】オートジョイントとスペーサピンの取付状態を示す斜視図である。
図11】ガイドローラの取付状態を示す斜視図である。
図12】ガイドローラとゴンドラ側の連結構造を示す拡大斜視図である。
図13】ガイドレールの別の実施例を示す斜視図である。
図14】ガイドレールのさらに別の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1~3は、一実施の形態に係わるガイドレールシステムの概要を示す説明図である。1はガイドレールシステムで、このガイドレールシステム1は、建物の外壁Aに垂直向きに取り付けられたガイドレール2と、該ガイドレールに沿って昇降可能な作業用ゴンドラ3等を装備している。
【0023】
ガイドレール2は、全体がアルミニウム製で軽量化が図られており、図4に詳示するようにレール本体部2aと、該レール本体部と外壁側の対向する位置に配置された連結部2bと、該連結部とレール本体部2aをつなぐウエブ部2cと、を一体に備え、ウエブ部2cの中間部には連結部2bに取り付けられる後述の連結金具がレール本体部2aに取り付けられる後述のガイドローラに緩衝するのを防止するストッパ部2dが設けられている。前記レール本体部2a、及び前記連結部2bは、断面円形の中空パイプ状に形成され、そのパイプ外径はレール本体部2aのほうが連結部2bより大きくなっている。
【0024】
ガイドレール2の壁側の連結構造について説明する。図5に示すように建物の外壁Aに設けた固定用アンカーボルト5を介してアンカーブラケット6が取り付けられている。アンカーブラケット6は、図6に示すように上下が開口した箱型本体6aを有し、この本体の壁側となる背板にはアンカーボルト5を取り付ける穴6bが穿設されており、壁側と反対側となる前板には下部にアンカーボルト締付け用電動工具(インパクトレンチ等)用の大径穴6cが穿設されているとともに、上部にレールクランプ位置調整用の逆T字状スリット6dが切欠き形成されている。スリット6dは下方の水平溝部の両端部が閉じ、該水平溝部のセンターから上方の垂直溝部が本体6aの上端に向けて開くように連接した構成となっており、これら溝部には後述するレールクランプとしての連結金具がその連結用ボルトをスライド自在に係合して装着されるようになっている。このような構成からなるので、前記連結金具は連結用ボルトが逆T字状スリット6dに沿ってスライドすることにより、アンカーブラケット6に対して上下方向、及び水平方向に位置調整可能となる。
【0025】
前記した連結金具10は、市販のハゼ金具からなり、図7に示すように固定ボルト8により接離(開閉)可能に連結された一対のクランプ部10a,10bを有し、該クランプ部の対向面に形成の円弧状凹所でガイドレール2の連結部2bをクランプ可能になっているとともに、両クランプ部10a,10bの受部に頭部が固定されて設けられた連結用ボルト11で前記のようにスリット6dにスライド可能に係合し、アンカーブラケット6を介して壁側に連結固定されるようになっている。前記のような調整用逆T字状スリット6dを設け、その任意の位置に連結金具10を固定できるようにしていることにより壁面のアンカー位置が墨出し位置からずれた場合でもガイドレール2を垂直向きに仮設可能になる。
【0026】
次に、ガイドレール2の壁側と反対側、つまり作業用ゴンドラ3側の連結構造について説明する。ガイドレール2のレール本体部2aには、図11にも示すように水平方向に所定の間隔を置いて配置され、2個一組としてゴンドラ3の上下方向に複数(3個)設けられたガイドローラ16が、該レール本体部の外周面を外側から多少の余裕間隔をもって挟持するように転動自在に係合されている。ガイドローラ16は外周面が鼓状に形成された鼓状ローラで、合成樹脂製の簡易な構造からなっている。そのため、しっかりとレール本体部2aを挟む形になるので、レール本体部2aから外れることがない。ガイドローラ16の支持部材15への取付数量はこの例では2×3で計6個であるが、2×2の計4個等としてもよい。
【0027】
支持部材15のガイドローラ16とは反対側の面にはリンクアーム機構17の一端部が枢支されて取り付けられているとともに、リンクアーム機構17の他端部にはゴンドラ3に固定するブラケット18が枢支されて取り付けられている。そのためゴンドラ3の水平方向に振れ(前後左右の振れ)をリンクアーム機構17によって吸収できるようになっている。ブラケット18は断面略コ字状に形成されており、ゴンドラ3の手摺42にスライド可能に係合して固定される。
【0028】
前記のように支持部材15に取り付けられたガイドローラ16のガイドレール2への取付は、次のように行う。すなわち、ガイドレール2の最下端は、ガイドローラ16の支持部材15等を含むユニット長さ+α分浮かした状態で固定されるので、ガイドローラ2はその隙間を利用してガイドレール2の最下端から差し込んで取り付ける。もしくは最上端から差し込んでもよい。このように基本的には前記のようにガイドレール2の最下端もしくは最上端からの差し込み方式で取り付けるが、ガイドレールの途中である長さ方向の中間部から脱着方式で取り付ける設計としてもよい。この脱着方式についてはいろいろな設計が考えられるが、一例として図示は省略したが支持部材15をガイドローラ16の左右がそれぞれ別位置となるようにセパレート型の一対ものとしヒンジ結合により折り畳みできる構造としたり、支持部材15上で左右いずれか一方のガイドローラを他方のガイドローラに対して接離可能とする構造としたりすると、ガイドローラ16は、ガイドレール2のレール本体部2aの外周面を外側から挟持する位置と、該挟持する位置から脱して取り外し可能な位置と、に変換可能となり、前記脱着方式を実現することができる。
【0029】
また前記においては、ガイドレール2を上下方向に複数本有し、これら上下に隣接するガイドレールは、レール本体部2aの相対向する開口端部にオートジョイント21を挿入して着脱可能に連結されるようになっている。オートジョイント21は、図8に示すように軸方向中間部がレール本体部2aの外径に近い外径に形成された大径部21aに形成され、その上下にレール本体部2aに嵌挿される小径部21b,21cに形成されている。上小径部21bには上レール本体部用の上ロックピン22が内蔵バネで出没可能に設けられ、下小径部21cには下レール本体部用の下ロックピン23が内蔵バネで出没可能に設けられている。24は上ロックピン22の解除ボタンであり、仮設解体時に押し込むことにより上ロックピン22を内蔵バネに抗して小径部21b側に引き込ませ、上レール本体部を取り外せることができる構成となっている。
【0030】
このオートジョイント21により上下のガイドレール2を連結するには、下ガイドレールである下レール本体部2aの上部開口に下小径部21cを挿し込み、下ロックピン23を該上部開口近くに設けたピン孔25(図10)に該ピンを内蔵バネで出没させて係止するとともに、上小径部21bに上レール本体部2aの下部開口を挿し込み、該下部開口近くに設けたピン孔(図示せず)に上ロックピン22を内蔵バネで出没させて係止させる。これにより、下レール本体部2aと上レール本体部2aはオートジョイント21によって自動的にジョイントロックされ、上下に隣接するガイドレール2は、それらのレール本体部2aの相対向する開口端部に挿入されるオートジョイント21を介して着脱可能に連結されることとなる。
【0031】
なお、オートジョイント21は下ロックピン23で予め下ガイドレールの下レール本体部2aの上部開口に挿し込んでセットして出荷されるため、現場でのガイドレール仮設解体作業時は取り外す必要がない。もし取り外す場合は、オートジョイント21の下ロックピン23をガイドレール表面より小径部21c側に押し込む。これにより引き抜くことが可能となる。
【0032】
図9は、スペーサピンを示し、このスペーサピン27は軸方向中間部が連結部2bの外径に近い外径に形成された大径部27aに形成され、その上下に連結部2b,2cに嵌挿される小径部27b,27cに形成されており、図10に示すように下小径部27cを下連結部2cの上部開口に挿し込み、上小径部27bに上連結部2bの下部開口を挿し込むことにより、ガイドレール2の上下連結部2bの隙間を塞ぎ、かつオートジョイント21と協働して連結部2b,2c間の剛性を高めるようになっている。
【0033】
すなわち、オートジョイント21とガイドレール2の着脱をスムーズにするため、ガイドレール2のレール本体部2aの内径はオートジョイント21の挿し込み部である下小径部21cの外径に対して、かなりルーズな嵌め合いになっている。そのため、ガイドレール2をオートジョイント21のみで連結すると水平方向に大きな撓みを生じ、垂直方向に連結されたガイドレール2が前後左右に振れることとなる。そのため、前記のようなスペーサピン27を使用することでガイドレール2の前後(ゴンドラ側と壁側)2点支持となり、左右に振れるのを抑止するものである。スペーサピン27の上小径部27bの先端部はガイドレール2の上連結部2bの下部開口が挿し込み易いように先端に向けて小径となる先細テーパ状に形成されている。
【0034】
前記のようなガイドレール2にガイドローラ16を介して昇降可能になったゴンドラ3の構造につき、図1ないし3を参照して簡単に説明する。すなわち、ゴンドラ3は昇降装置(ワインダ)31を利用してガイドレール2に沿って昇降可能に設置され、建物の外壁Aの修理など各種工事に使用されるものであって、直方体形状の箱型に形成されたゴンドラ本体32を具えている。ゴンドラ本体32はそれぞれフレームにより枠組み構成された底部33と両側部34,35、及び前部36と背部37を有し、底部33の上面には作業者用の床板が配設されているとともに、底部33の下面の各隅部にはキャスタ39が取り付けられており、頂部40は開放されている。なお、ここで前部36とはビル等の建物の外壁Aを向いた側である。
【0035】
ゴンドラ本体32の前部36には水平方向を向いた手摺42(図12)が設けられており、この手摺に支持部材15に取り付けられた前記ブラケット18がスライド可能に係合して図示しない固定具により固定されている。したがって、ゴンドラ3は、ガイドレール2とは支持部材15に取り付けたガイドローラ16、支持部材15と手摺42を連結するリンクアーム機構17介して連結され、該レールに沿って昇降する。図1で45はゴンドラ用吊りワイヤロープである。図示していないが、ゴンドラ3の前部36下方にはスラップが倒伏可能に設けられ、落下物の防止が可能になっているとともに、両側部34,35にはスライド可能な養生ネット扉が前記スラップと連動して前後に移動可能に設けられている。さらに、ゴンドラ3の背部37にも養生ネットが張設されているし、ワイヤロープ45の作動に支障がない形で背部等から頂部40にかけて例えばアーチ状に養生ネットを張設することも可能である。
【0036】
前記のようなガイドレールシステム1の組み付けに際しては、まずアンカーブラケット6を、アンカーボルト5を介して建物の外壁Aに固定する。次に、予め固定ボルト8で連結した連結金具10の前記固定ボルトを緩め該金具の一対のクランプ部10a,10bをガイドレール2の連結部2bに嵌め込むとともに、連結用ボルト11の頭部をクランプ部10a,10bの受部に挿し込んで係合させ取り付ける。しかる後、固定ボルト8を締付け、ガイドレール2と連結金具10をしっかり固定する一方、連結金具10の連結用ボルト11をアンカーブラケット6のスリット6dに係合させて取り付ける。これにより、外壁Aにガイドレール2が取り付けられた状態になる。
【0037】
次に、図11に示したように予め支持部材15上にユニット化された左右2個一組で多段に配置されたガイドローラ16をガイドレール2のレール本体2aに、その隙間のある最下端又は最上端から挿入して取り付ける。しかる後、支持部材15にリンクアーム機構17を介して設けられたブラケット18をゴンドラ3の手摺42に係合させて固定すると、ゴンドラ3側の取付作業も終了する。これにて、ゴンドラ3はガイドローラ16がガイドレール2に沿って転動することにより、昇降可能となる。前記において、ガイドレール2は前記したように外壁Aの上方まで必要な本数継ぎ足す。
【0038】
ガイドレールシステム1は、前記のような構成からなっているので、ゴンドラ3を建物の外壁Aに垂直向きに設けたガイドレール2に沿って振れを防止しながら昇降することができる。しかも、この昇降に際してガイドレール2は壁側の連結部2bがアンカーブラケット6と連結金具10を介して連結し、ゴンドラ側のレール本体部2aがガイドローラ13と係合して連結するため、連結が確実で、ゴンドラ3の昇降もスムーズ、かつ安定したものとなり、安全性が高いものとなる。
【0039】
また、ガイドレール2も従前のようなH型鋼からなるものではなく、断面円形の中空パイプからなるレール本体部2aと連結部2bをウエブ部2cで一体に固定した構造となっているため、壁側との連結も連結金具10を介して容易に行えるし、ゴンドラ側もガイドローラ13を転動自在に係合させることで容易に行える。また、ガイドレール2は前記のように中空パイプ状となっているとともに、材質もアルミニウム製で軽量のため、持ち運びにも便利なものとなるのに加え、仮設工事も迅速、かつ容易に行うことができる。
【0040】
また、連結部2bを中空パイプ状にしたことにより、連結金具10として、従前のような特殊な金具を用いる必要がなく、既存(市販)の汎用品であるハゼ金具を用いることができるので、費用を安く抑えることができる。ガイドローラ16もガイドレール2のレール本体部2aと転動自在に係合可能であれば、この実施例のような鼓状のローラ等、任意のものを用いることができ、従前のH型鋼レールの時のような高い取り付け精度も要求されないし、その個数も低減でき、取り付け作業も容易となるので、これらの面での費用も抑えることができる。
【0041】
また、ガイドレール2に対するゴンドラ3の位置に多少の位置ズレが生じてもガイドローラ用支持部材15にリンクアーム機構17を介して取り付けたブラケット18をゴンドラ3の手摺42に沿ってスライドさせることでその位置を調整することができる。
【0042】
図13は、ガイドレールの別の実施例を示す。このガイドレール52は、連結部52bとして前記ガイドレール2の連結部2bと同様な中空パイプ状のものを採用しているが、その外径がレール本体2aの外径に近い外径に形成されている点、ウエブ52cにストッパ部を設けていない点、においてガイドレール2と相違する。このような構造のガイドレール52においてもガイドレール2と同様な効果を期待できる。
【0043】
14は、ガイドレールのさらに別の実施例を示す。このガイドレール62は、連結部62bとして中空パイプ状ではなく、平板状のものを採用している点、ウエブ62cに前記と同様にストッパ部を設けていない点、においてガイドレール2と相違する。このような構造のガイドレール62においてもガイドレール2と同様な効果を期待できる。
【0044】
なお、実施の形態に係るガイドレールシステム1として図面で示したガイドレール2やアンカーブラケット6、連結具としての連結金具10をはじめとする各構成部材の構造等は、あくまでも好ましい一例を示すものであり、特許請求の範囲内で適宜設計変更が可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 ガイドレールシステム
2 ガイドレール
2a レール本体部
2b 連結部
2c ウエブ部
2d ストッパ部
3 作業用ゴンドラ(移動体)
5 アンカーボルト
6 アンカーブラケット
10 連結金具(レールクランプ)
10a,10b クランプ部
16 ガイドローラ
15 支持部材
17 リンクアーム機構
18 ブラケット
21 オートジョイント
27 スペーサピン
31 昇降装置(ワインダ)
32 ゴンドラ本体
42 手摺
45 吊りワイヤロープ
52,62 ガイドレール
A 建物の外壁
図1
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