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特許7082263造血器悪性腫瘍の治療のための、LSD1阻害剤の組合せ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】造血器悪性腫瘍の治療のための、LSD1阻害剤の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/135 20060101AFI20220601BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A61K31/135
A61K31/203
A61K31/7068
A61K31/52
A61K31/167
A61K31/505
A61K31/4406
A61K31/53
A61K31/5377
A61K31/496
A61K31/5517
A61K31/706
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 52
(21)【出願番号】P 2018548073
(86)(22)【出願日】2017-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2017055763
(87)【国際公開番号】W WO2017157813
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】16382117.6
(32)【優先日】2016-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517381706
【氏名又は名称】オリソン ヘノミクス エセ. アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シセリ, フィリッポ
(72)【発明者】
【氏名】ルナルディ, セレーナ
(72)【発明者】
【氏名】マエス, タマラ
(72)【発明者】
【氏名】マスカロ クルサット, クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】ティラプ フェルナンデス デ ラ ケスタ, イニゴ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502335(JP,A)
【文献】米国特許第03968249(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0312896(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0174138(US,A1)
【文献】Scott R. Daigle et al,Selective killing of mixed lineage leukemia cells by a potent small-molecule DOT1L inhibitor,Cancer Cell,2011年,vol 20,53-65
【文献】Gallipoli, Paolo et al,Epigenetic regulators as promising therapeutic targets in acute myeloid leukemia,Therapeutic Advances in Hematology,2015年,vol 6 no 3,103-119
【文献】Ramirez, Lorimar et al,HDAC and LSD1 Inhibitors Synergize to Induce Cell Death in Acute Leukemia Cells,Blood,2011年,Vol. 118, No. 21,Abstract # 1427
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む、過剰増殖性疾患の治療における使用のための組合せ産物。
【請求項2】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項3】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、シタラビン又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項4】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ピノメトスタット又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項5】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、リノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、又は薬学的に許容されるその塩である治療剤とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項6】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、デシタビン又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項7】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、アザシチジン又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項8】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、キザルチニブ又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項9】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ヌトリン-3A又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項10】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ダサチニブ又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項11】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、JQ1又は薬学的に許容されるその塩とを含む、請求項1に記載の組合せ産物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物と、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む、過剰増殖性疾患の治療における使用のための薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物を含む、過剰増殖性疾患の治療における使用のための製品。
【請求項14】
求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物を含む、造血器悪性腫瘍の治療における使用のための製品。
【請求項15】
求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物と1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む、造血器悪性腫瘍の治療における使用のための薬学的組成物。
【請求項16】
求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物を含む、造血器悪性腫瘍の治療における使用のための医薬。
【請求項17】
同時のレジメンとしての組合せ産物の投与のためのものである、請求項16に記載の医薬。
【請求項18】
逐次のレジメンとしての組合せ産物の投与のためのものである、請求項16に記載の医薬。
【請求項19】
過剰増殖性疾患の治療のための医薬の調製のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物の使用。
【請求項20】
造血器悪性腫瘍の治療のための医薬の調製のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ産物の使用。
【請求項21】
医薬が、同時のレジメンとしての組合せ産物の投与のためのものである、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項22】
医薬が、順次のレジメンとしての組合せ産物の投与のためのものである、請求項19又は20に記載の使用。
【請求項23】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための医薬。
【請求項24】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、シタラビン又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための、請求項23に記載の医薬。
【請求項25】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、デシタビン又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための、請求項23に記載の医薬。
【請求項26】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、アザシチジン又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための、請求項23に記載の医薬。
【請求項27】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための医薬。
【請求項28】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、シタラビン又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための、請求項27に記載の医薬。
【請求項29】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、デシタビン又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための、請求項27に記載の医薬。
【請求項30】
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、アザシチジン又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための、請求項27に記載の医薬。
【請求項31】
トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための医薬。
【請求項32】
シタラビン又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための、請求項31に記載の医薬。
【請求項33】
デシタビン又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための、請求項31に記載の医薬。
【請求項34】
アザシチジン又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで過剰増殖性疾患の治療において使用するための、請求項31に記載の医薬。
【請求項35】
トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための医薬。
【請求項36】
シタラビン又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための、請求項35に記載の医薬。
【請求項37】
デシタビン又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための、請求項35に記載の医薬。
【請求項38】
アザシチジン又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式(I):
(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩との組合せで造血器悪性腫瘍の治療において使用するための、請求項35に記載の医薬。
【請求項39】
造血器悪性腫瘍が骨髄性の造血器悪性腫瘍である、請求項14に記載の製品、請求項15に記載の薬学的組成物、又は請求項16から18、27から30、又は35から38のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項40】
骨髄性の造血器悪性腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項39に記載の製品、請求項39に記載の薬学的組成物、又は請求項39に記載の医薬。
【請求項41】
骨髄性の造血器悪性腫瘍が慢性骨髄性白血病である、請求項39に記載の製品、請求項39に記載の薬学的組成物、又は請求項39に記載の医薬。
【請求項42】
骨髄性の造血器悪性腫瘍が骨髄異形成症候群である、請求項39に記載の製品、請求項39に記載の薬学的組成物、又は請求項39に記載の医薬。
【請求項43】
骨髄性の造血器悪性腫瘍が骨髄増殖性疾患である、請求項39に記載の製品、請求項39に記載の薬学的組成物、又は請求項39に記載の医薬。
【請求項44】
骨髄増殖性疾患が、骨髄線維症、急性混合性白血病、真性多血症、本態性血小板血症、及び慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群からなる群から選択される、請求項43に記載の製品、請求項43に記載の薬学的組成物、又は請求項43に記載の医薬。
【請求項45】
骨髄性の造血器悪性腫瘍が、MLL、AF9、AF4、AF10、AML1、ETO、CALMに関する転座又は再構成;又はNPM1若しくはNotch1における変異、又はLSD1過剰発現を有する骨髄性の造血器悪性腫瘍である、請求項39に記載の製品、請求項39に記載の薬学的組成物、又は請求項39に記載の医薬。
【請求項46】
造血器悪性腫瘍がリンパ性の造血器悪性腫瘍である、請求項14に記載の製品、請求項15に記載の薬学的組成物、又は請求項16から18、27から30、又は35から38のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項47】
リンパ性の造血器悪性腫瘍が急性リンパ芽球性白血病である、請求項46に記載の製品、請求項46に記載の薬学的組成物、又は請求項46に記載の医薬。
【請求項48】
リンパ性の造血器悪性腫瘍が、MLL、AF9、AF4、AF10、AML1、ETO、CALMに関する転座又は再構成;又はNPM1若しくはNotch1における変異、又はLSD1過剰発現を有するリンパ性の造血器悪性腫瘍である、請求項46に記載の製品、請求項46に記載の薬学的組成物、又は請求項46に記載の医薬。
【請求項49】
造血器悪性腫瘍が骨髄性の造血器悪性腫瘍である、請求項20から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
骨髄性の造血器悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、急性混合性白血病、真性多血症、本態性血小板血症、及び慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群から選択される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
造血器悪性腫瘍が、リンパ性の造血器悪性腫瘍である、請求項20から22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項52】
リンパ性の造血器悪性腫瘍が急性リンパ芽球性白血病である、請求項51に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSD1阻害剤、特にORY-1001と他の抗がん剤との組合せに関する。その組合せは造血器悪性腫瘍の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
正常組織と比較した患部組織における異常な遺伝子発現は、がんを含む、多くのヒト疾患の共通の特徴である。遺伝子発現パターンは、細胞における複数のレベルで制御される。遺伝子発現の制御はDNAの修飾を通して生じることがある:DNAプロモーターメチル化は遺伝子発現の抑制に関係する。ブロックバスターのビダーザ(商標)を含めて、DNAメチル化のいくつかの阻害剤は、臨床的使用が承認されている。別のクラスの修飾は、DNAが真核細胞において通常関係する(周囲でコイル化されている)、タンパク質スキャフォールドを形成する、ヒストンに関与する。ヒストンは、DNAを組織することにおいて重要な役割を果たし、ヒストンの周囲のDNAの制御されたコイル化及びアンコイル化は、遺伝子発現を制御するのに重要であり、コイル化されたDNAは、一般的に、遺伝子転写に利用できない。ヒストンアセチル化、ヒストンリジンメチル化、ヒストンアルギニンメチル化、ヒストンユビキチン化、及びヒストンSUMO化を含む、多数のヒストン修飾が発見されており、その多くは、細胞の転写機構によって、関係するDNAへの近づきやすさを変更する。これらのヒストンマークは、転写及び抑制に関与する様々なタンパク質複合体をリクルートするのに役立つ。ますます多くの研究が、様々な組合せのヒストンマークが細胞型特異的な方式における遺伝子発現をどのように制御するか、の複雑な絵を描いており、この概念を捉えるために新たな用語が作り出された:ヒストンコード。
【0003】
プロトタイプのヒストンマークは、ヒストンアセチル化である。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ及びヒストンデアセチラーゼは、このヒストンマークの調節に関与する触媒機械であるが、一般的に、これらの酵素は、ヒストンマークを読み取ること及び変更することに関与する他のタンパク質を含有する、多タンパク質複合体の一部である。これらのタンパク質複合体の構成は、一般的に、細胞型特異的であり、一般的に、転写調節因子、リプレッサー、コリプレッサー、遺伝子発現調節に関係するレセプター(例えば、エストロゲン又はアンドロゲンレセプター)を含む。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、クロマチンのヒストンアセチル化プロファイルを変更する。それに伴い、ボリノスタット(SAHA)、トリコスタチンA(TSA)、及び多くの他のもの、のようなヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、様々なインビトロ及びインビボの動物モデルにおいて遺伝子発現を変更することが示された。臨床的に、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、がん設定において活性を示し、神経学的状態及び他の疾患についてだけでなく、腫瘍学適応についても調べられている。
【0004】
遺伝子発現を制御することに関与する別の修飾は、リジン及びアルギニンメチル化を含めたヒストンメチル化である。ヒストンリジンのメチル化状態は、最近、遺伝子発現を動的に制御するのに重要であることが示された。
【0005】
ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ及びヒストンリジンデメチラーゼとして知られる一群の酵素が、ヒストンリジン修飾に関与している。リジン特異的デメチラーゼ-1(LSD1)と呼ばれるある特定のヒトヒストンリジンデメチラーゼ酵素が、最近、この重大なヒストン修飾に関与することが見出された。LSD1は、ポリアミンオキシダーゼ及びモノアミンオキシダーゼに対してかなりの程度の構造上の類似性、及びアミノ酸の同一性/ホモロジーを有しており、これらの全て(すなわち、MAO-A、MAO-B及びLSD1)は、窒素-水素結合及び/又は窒素炭素結合の酸化を触媒するフラビン依存性アミンオキシダーゼである。LSD1は、がん、神経学的疾患及び他の状態を処置するための新たな薬物の開発の興味深い標的として認識されている。
【0006】
シクロプロピルアミン含有化合物は、モノアミンオキシダーゼA(MAO-A;又はMAOA)、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B;又はMAOB)のようなアミンオキシダーゼ、及びリジン特異的デメチラーゼ-1(LSD1)を含む、多数の医学的に重要な標的を阻害することが知られている。パルネート(Parnate)(登録商標)の有効成分であり、シクロプロピルアミンの最もよく知られている例の1つであるトラニルシプロミン(2-フェニルシクロプロピルアミンとしても知られている)は、これらの酵素の全てを阻害することが知られている。MAO-A阻害は、望ましくない副作用を引き起こすかもしれないので、強力なLSD1阻害活性を示す一方でMAO-A阻害活性を欠くか又は実質的に低減したMAO-A阻害活性を有する、シクロプロピルアミン誘導体を同定することが望ましい。
【0007】
例えばがんなどの状態のための適切な治療の欠如を考慮して、疾患修飾薬、及び新規な標的を阻害することによって働く薬物が切実に必要とされる。したがって、過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療に使用され得る、改善された方法及び組成物が必要とされる。
【0008】
国際特許出願WO2013/057322は、ORY-1001又は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンとしても知られる、式(I):
(I)、
の化合物を含む、多数のLSD1阻害剤を開示する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、少なくとも一部分は、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を、ある他の特定の薬剤と組み合わせて投与することによって、がん細胞の成長を阻害することにおける相加又は相乗効果が達成され得る、という発見に基づく。その組合せ及び方法は、過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療において有用であり得る。
【0010】
本発明は、LSD1阻害剤の組合せ、特に式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩

(I)
の、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤との組合せに関する。
【0011】
したがって、本発明は、式(I):

(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せを提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、例えば、以下でより詳しく述べられるように、骨髄性の造血器悪性腫瘍及びリンパ性の造血器悪性腫瘍を含む、過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療における使用のための、式(I):

(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せを対象とする。
【0013】
別の態様では、本発明は、必要とする患者における過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍を治療するための方法であって、治療的有効量の、式(I):

(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、治療的有効量の、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを前記患者に投与することを含む方法を対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0014】
別の態様では、本発明は、必要とする患者における過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍を治療するための方法であって、式(I):

(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤との治療的有効量の組合せを前記患者に投与することを含む方法を対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0015】
別の態様では、本発明は、必要とする患者における過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍を治療するための方法であって、式(I):

(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法を対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0016】
別の態様では、本発明は、式(I):

(I)
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤と、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1及び2で使用された9×9マトリックスアッセイのプレート構成である。
図2A】実施例1.2.2.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図2A)及びMOLM-13細胞(図2B)中のORY-1001/ATRAの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図2B】実施例1.2.2.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図2A)及びMOLM-13細胞(図2B)中のORY-1001/ATRAの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図3A】実施例1.2.3.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図3A)、OCI-AML3(図3B)及びMOLM-13細胞(図3C)中のORY-1001/ARA-Cの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図3B】実施例1.2.3.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図3A)、OCI-AML3(図3B)及びMOLM-13細胞(図3C)中のORY-1001/ARA-Cの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図3C】実施例1.2.3.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図3A)、OCI-AML3(図3B)及びMOLM-13細胞(図3C)中のORY-1001/ARA-Cの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図4A】実施例1.2.4.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図4A)及びMOLM-13細胞(図4B)中のORY-1001/EPZ5676の組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図4B】実施例1.2.4.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図4A)及びMOLM-13細胞(図4B)中のORY-1001/EPZ5676の組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図5A】実施例1.2.6.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図5A)及びMOLM-13細胞(図5B)中のORY-1001/SAHAの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図5B】実施例1.2.6.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図5A)及びMOLM-13細胞(図5B)中のORY-1001/SAHAの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図6A】実施例1.2.7.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図6A)、OCI-AML3(図6B)及びMOLM-13細胞(図6C)中のORY-1001/ロシリノスタットの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図6B】実施例1.2.7.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図6A)、OCI-AML3(図6B)及びMOLM-13細胞(図6C)中のORY-1001/ロシリノスタットの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図6C】実施例1.2.7.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図6A)、OCI-AML3(図6B)及びMOLM-13細胞(図6C)中のORY-1001/ロシリノスタットの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図7A】実施例1.2.9.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図7A)及びMOLM-13細胞(図7B)中のORY-1001/アザシチジンの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図7B】実施例1.2.9.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図7A)及びMOLM-13細胞(図7B)中のORY-1001/アザシチジンの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図8A】実施例1.2.10.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図8A)及びMOLM-13細胞(図8B)中のORY-1001/デシタビンの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図8B】実施例1.2.10.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図8A)及びMOLM-13細胞(図8B)中のORY-1001/デシタビンの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図9A】実施例1.2.11.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図9A)及びMOLM-13細胞(図9B)中のORY-1001/キザルチニブの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図9B】実施例1.2.11.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図9A)及びMOLM-13細胞(図9B)中のORY-1001/キザルチニブの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図10A】実施例1.2.12.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図10A)及びMOLM-13細胞(図10B)中のORY-1001/ABT737の組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図10B】実施例1.2.12.1に記載の手順に従ったMV(4;11)(図10A)及びMOLM-13細胞(図10B)中のORY-1001/ABT737の組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図11】実施例1.2.13.1に記載の手順に従ったMOLM-13細胞中のORY-1001/ヌトリン3Aの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図12】実施例1.2.14.1に記載の手順に従ったMV(4;11)細胞中のORY-1001/ダサチニブの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図13】実施例1.2.15.1に記載の手順に従ったMV(4;11)細胞中のORY-1001/JQ1の組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図14】実施例1.2.16.1に記載の手順に従った、ORY-1001との組合せのヒドロキシ尿素(HU)で処理されたMV(4;11)細胞の用量-反応曲線である。
図15】実施例1.2.17.1に記載の手順に従った、ORY-1001との組合せのAs(ヒ素)で処理されたMV(4;11)細胞の用量-反応曲線である。
図16】実施例2.2.2に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/ARA-Cの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図17】実施例2.2.3に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/SAHAの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図18】実施例2.2.4に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/ロシリノスタットの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図19】実施例2.2.5に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/エンチノスタットの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図20】実施例2.2.6に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/アザシチジンの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図21】実施例2.2.7に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/デシタビンの組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
図22】実施例2.2.8に記載の手順に従ったMOLT-4細胞中のORY-1001/ABT737の組合せについて計算されたコンビネーションインデックスである。
【0018】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、及び他の治療剤が、ここに記載されたように、式(I)の化合物単独又は他の治療薬単独での治療により達成した結果よりも優位な結果で、造血器悪性腫瘍を治療するために組合せで使用され得るという発見に基づく。
【0019】
詳細には、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せを提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、治療活性物質としての使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せを提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、造血器悪性腫瘍の治療での使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せを対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0022】
別の態様では、本発明は、必要とする患者における造血器悪性腫瘍を治療するための方法であって、治療的有効量の、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに治療的有効量の、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤を投与することを含む方法、を対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0023】
別の態様では、本発明は、必要とする患者における造血器悪性腫瘍を治療するための方法であって、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤との治療的有効量の組合せを前記患者に投与することを含む方法を対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0024】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せの、造血器悪性腫瘍の治療のための使用を提供する。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せの、造血器悪性腫瘍の治療のための医薬の調製のための使用を提供する。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0026】
別の態様では、本発明は、必要とする患者における造血器悪性腫瘍を治療するための方法であって、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法を対象とする。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様では、前記造血器悪性腫瘍は、リンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の治療剤と、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0028】
ORY-1001:
式(I):
(I)
の化合物[CAS登録番号1431304-21-0]は、ORY-1001又は(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンとしても知られ、例えば国際特許出願WO2013/0573222の実施例5に記載されている。塩酸塩[CAS登録番号1431303-72-8、二塩酸塩]を含めて、薬学的に許容されるその塩もそこに記載されている。最も特有の薬学的に許容される塩は二塩酸塩である。式(I)の化合物は選択的LSD1阻害剤として作用する。
【0029】
レチノイン酸アナログ:
トレチノイン[CAS登録番号302-79-4]は、ATRA又はall-transレチノイン酸としても知られ、かつ称され、例えば米国特許US2709712又は推奨INNリスト(Recommended INN List)11に記載されている。トレチノインは未熟な前骨髄球が分化することを引き起こす。ATRAは急性白血病の処置のための現在の標準治療の一つである。
(トレチノイン)
抗がん性、特に抗白血病活性を有することが文献で報告されたATRA誘導体は、本発明の組合せでも使用され得る。
【0030】
ヌクレオシドアナログ:
ヌクレオシドアナログは、核酸アナログ及び糖を含有し、化学療法で使用されるいくつかを含めて、様々な障害に対する治療薬として使用されるヌクレオシドである。本発明の組合せでの使用にとって好ましいヌクレオシドアナログはシタラビンである。
シタラビン[CAS登録番号147-94-4]は、ARA-C又はアラビノフラノシルシチジンとしても知られ、かつ称され、例えばChu M.Y. et al.又は推奨INNリスト(Recommended INN List)6に記載されている。シタラビンは、細胞周期がDNA合成の間のS期にあるときにDNAを傷害する、シトシンアラビノシド三リン酸に急速に変わる。ARA-Cは、通常例えばダウノルビシンなどのアントラサイクリンとの組合せで、急性白血病の処置のための現在の標準治療の一つである。
(シタラビン)
本発明の組合せで使用され得る他のヌクレオシドアナログは、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン及びネララビンを含むが、限定されるものではない。
【0031】
DOT1L阻害剤:
DOT1Lは、白血病、特にAML及びALLのあるサブタイプに関与していることが報告されている、ヒストンメチルトランスフェラーゼであり、DOT1Lの阻害剤は白血病の治療について開発中である。任意の既知のDOT1L阻害剤が本発明の組合せに原則として使用され得る。使用され得るDOT1L阻害剤の例は、限定されることなしに、ピノメトスタット、EPZ-004777、及びSGC-0946を含む。本発明の組合せでの使用にとって好ましいDOT1L阻害剤はピノメトスタットである。
ピノメトスタット[CAS登録番号1380288-87-8]は、EPZ-5676としても知られ、かつ称され、例えば国際特許出願WO2012075381又は提案INNリスト(Proposed INN List)112に記載されている。ピノメトスタットはDOT1L阻害剤として作用する。
(ピノメトスタット)
EPZ-004777[CAS登録番号1338466-77-5]は、7-[5-デオキシ-5-[[3-[[[[4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]アミノ]カルボニル]アミノ]プロピル](1-メチルエチル)アミノ]-β-D-リボフラノシル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミンとしても知られ、例えばDaigle S.R. et al.に記載されている。EPZ-004777はDOT1L阻害剤として作用する。
(EPZ-004777)
SGC0496[CAS登録番号1561178-17-3]は、化合物1-[3-[[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノ-5-ブロモ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル]メチル](イソプロピル)アミノ]プロピル]-3-[4-(2,2-ジメチルエチル)フェニル]尿素であり、Yu et al.10に記載されている。SGC0496は以下の構造式:
(SGC0496)
を有する。
【0032】
HDAC阻害剤
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、いくつかの時期のがんの治療について承認されている又は臨床開発中である、ヒストンデアセチラーゼの機能に干渉する化合物のクラスである。任意の既知のHDAC阻害剤が本発明の組合せに原則として使用され得る。本発明の組合せでの使用にとって好ましいHDAC阻害剤は、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット又はキシノスタットである。
ボリノスタット[CAS登録番号149647-78-9]は、SAHA又はスベラニロヒドロキサム酸としても知られ、かつ称され、例えば国際特許出願WO930714811又は推奨INNリスト(Recommended INN List)5612に記載されている。ボリノスタットはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤として作用する。
(ボリノスタット)
リコリノスタット[CAS登録番号1316214-52-4]は、ロシリノスタット及びACY-1215としても知られ、かつ称され、例えば国際特許出願WO201109121313又は推奨INNリスト(Recommended INN List)7114に記載されている。リコリノスタットはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤として作用する。
(リコリノスタット)
エンチノスタット[CAS登録番号209783-80-2]は、SNDX-275としても知られ、例えば日本国特許出願JP1015246215又は推奨INNリスト(Recommended INN List)6116に記載されている。エンチノスタットはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤として作用する。
(エンチノスタット)
ベリノスタット[CAS登録番号866323-14-0]は、(22E)-N-ヒドロキシ-3-[3-(フェニルスルファモイル)フェニル]プロパ-2-エナミドとしても知られ、WO2009/04051717に開示されている。その化合物は以下の構造式:
(ベリノスタット)
を有する。
パノビノスタット[CAS登録番号404950-80-7]は、(2E)-N-ヒドロキシ-3-[4-({[2-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)エチル]アミノ}メチル)フェニル]アクリルアミドとしても知られ、WO02/02257718に開示されている。その化合物は以下の構造式:
(パノビノスタット)
を有する。
【0033】
脱メチル化剤
低メチル化剤としても知られ、これらは特にDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT阻害剤)の活性を妨げることにより、DNAメチル化を阻害する薬物である。現在、このクラスの2つ(デシタビン及びアザシチジン)は骨髄異形成症候群の治療についてFDA承認されており、AML19を含む、多数の腫瘍について調べられている。本発明に使用され得るDNMT阻害剤は以下を含むが、これらに限定されるものではない。
デシタビン[CAS登録番号2353-33-5]は、5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても知られる、例えばWolfrom I.M.L. et al.20又は推奨INNリスト(Recommended INN List)3021に記載されている。
(デシタビン)
アザシチジン[CAS登録番号320-67-2]は、5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても知られ、例えば独国特許DE114094122又は推奨INNリスト(Recommended INN List)1921に記載されている。アザシチジンは急性白血病の処置のための現在の標準治療の一つである。
(アザシチジン)
グアデシタビン(SGI-110としても知られる)。この化合物はホスホジエステル結合を介してグアノシンに連結したデシタビンであり、デシタビンのプロドラッグとして作用する。リン酸化による代謝活性化及びDNAへの取込みの後で、グアデシタビンはDNAメチルトランスフェラーゼを阻害し、それによってゲノムワイドで非特異的な低メチル化を引き起こし、S期での細胞周期停止を誘導する。この薬剤はシチジンデアミナーゼに抵抗性があり、したがって細胞外及び細胞内の双方に徐々にデシタビンを放出し、より延長されたデシタビンへの曝露につながる。
ゼブラリン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、6-ジヒドロ-5,6-アザシチジン、ヒドララジン、プロカインアミド、ヒドララジン、EGCG及びRG108は、本発明の組合せに使用され得る他のDNMT阻害剤である。
【0034】
FLT3阻害剤:
FMS関連チロシンキナーゼ3(FLT3)はがん原遺伝子である。FLT3受容体の変異は白血病の進展につながることがあり、実際にAMLで最も頻繁に変異していた遺伝子の1つである。FLT3阻害剤はいくつかの型のがんの治療のために開発されている。任意の既知のFLT3阻害剤が本発明の組合せに原則として使用され得る。本発明の組合せでの使用にとって好ましいFLT3阻害剤は、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ及びレスタウルチニブを含む。
キザルチニブ[CAS登録番号950769-58-1]は例えば国際特許出願WO200710912024又は推奨INNリスト(Recommended INN List)9925に記載されている。
(キザルチニブ)
【0035】
BCL2阻害剤:
Bcl2(B細胞性リンパ腫2)は重要な抗アポトーシスタンパク質と考えられており、がん遺伝子として分類されている。BCL2遺伝子の改変は多数のがんの原因として同定されており、Bcl2阻害剤は抗がん治療として開発されている。任意の既知のBcl2阻害剤が本発明の組合せに使用され得る。好ましいBcl2阻害剤は、ABT-737、ナビトクラックス(別名ABT-263)、ベネトクラックス(別名ABT-199)、及びオバトクラックスを含む。
ABT-737[CAS登録番号852808-04-9]は、4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)フェニル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[4-[[(2R)-4-(ジメチルアミノ)-1-フェニルスルファニルブタン-2-イル]アミノ]-3-ニトロフェニル]スルホニルベンズアミドとしても知られ、例えば国際特許出願WO200504959426に記載されている。
(ABT-737)
ナビトクラックス[CAS登録番号923564-51-6]は、ABT-263又は4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチル-1-クロロヘキセン-1-イル]メチル}-1-ピペラジニル)-N-[(4-{[(2R)-4-(4-モルホリニル)-1-(フェニルスルファニル)-2-ブタニル]アミノ}-3-[(トリフルオロメチル)スルホニル]フェニル)-スルホニル]ベンズアミドとしても知られ、例えばUS2007002713527に記載されている。
(ABT-263(ナビトクラックス))
オバトクラックス[CAS登録番号803712-67-6]は、2-(2-((3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル)メチレン)-3-メトキシ-2H-ピロール-5-イル)-1H-インドールとしても知られ、例えば国際特許出願WO200410632828に記載されている。
(オバトクラックス)
ベネトクラックス[CAS登録番号1257044-40-8]は、ABT-199又は4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチルシクロヘキシ-1-エン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[[3-ニトロ-4-[[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル]アミノ]フェニル]スルホニル]-2-[(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)オキシ]ベンズアミドとしても知られ、例えば国際特許出願WO201013858829に記載されている。
(ABT-199(ベネトクラックス))
【0036】
MDM2阻害剤:
マウスダブルマイニュート2ホモログ(Mouse double minute 2 homolog)(MDM2)は、がんでの他の役割の間で、p53腫瘍抑制因子の重要な負の制御因子と考えられている。Mdm2阻害剤は、Mdm2とp53の間の相互作用を阻害する化合物であり、中でもヌトリン類を含む。特に好ましいMDM2阻害剤はヌトリン-3Aである。
ヌトリン-3A[CAS登録番号675576-98-4]は、4-[[(4S,5R)-4,5-ビス(4-クロロフェニル)-4,5-ジヒドロ-2-[4-メトキシ-2-(1-メトキシエトキシ)フェニル]-1H-イミダゾール-1-イル]カルボニル]-2-ピペラジノンとしても知られ、例えば米国特許出願US2005028280330に記載されている。
(ヌトリン-3A)
【0037】
c-KIT阻害剤:
c-KIT(肥満/幹細胞成長因子受容体(SCGFR)又はCD117としても知られる)は、ヒトにおいてはがん原遺伝子である受容体型チロシンキナーゼタンパク質である。この遺伝子における活性化変異は、急性骨髄性白血病を含む、多数のがんに関連している。任意の開示されたcKIT阻害剤が本発明の組合せに使用され得る。
ダサチニブ(CAS登録番号302962-49-8)は、化合物N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキシアミドであり、式:
(ダサチニブ)
を有する。
ダサチニブは、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する患者におけるファーストラインの使用について承認されている。
イマチニブ(CAS登録番号152459-95-5)は、化合物4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]-N-(4-メチル-3-{[4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)ベンズアミドであり、式:
(イマチニブ)
を有する。
イマチニブは、フィラデルフィア染色体陽性のCMLを含む、複数のがんの治療において用いられるチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0038】
BET阻害剤:
BET阻害剤は、現在臨床試験中の、抗がん、免疫抑制、及び他の効果を有する薬物のクラスである。これらの分子は、ブロモドメイン及びエクストラターミナルモチーフ(Bromodomain and Extra-Terminal motif)(BET)タンパク質BRD2、BRD3、BRD4、及びBRDTのブロモドメインに可逆的に結合し、BETタンパク質とアセチル化ヒストンと転写因子の間のタンパク質-タンパク質相互作用を妨げる。任意の既報のBET阻害剤が本発明の組合せに使用され得る。BET阻害剤の例は以下を含むが、これらに限定されるものではない:
JQ1(CAS登録番号1268524-70-4)は、(S)-tert-ブチル2-(4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセタートであり、WO201114365131に開示される。
(JQ1)
GSK1210151A(I-BET151)(CAS登録番号1300031-49-5)は、7,3,5-ジメチル-4-イソキサゾリル-1,3-ジヒドロ-8-メトキシ-1-[1R-1-(2-ピリジニル)エチル]-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンであり、WO201105484332に開示される。
(GSK1210151A)
MS436(CAS登録番号1395084-25-9)は、4-[(1E)-2-(2-アミノ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ジアゼニル]-N-2-ピリジニル-ベンゼンスルホンアミドであり、WO201211617033に開示される。
(MS436)
I-BET762(GSK525762)は:
(I-BET762)
である。
OTX-015(CAS登録番号202590-98-5)は、(6S)-4-(4-クロロフェニル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-アセタミドであり、US571227434に開示される。
(OTX-015)
CPI-203(CAS登録番号1446144-04-2)は、(6S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-アセタミドであり、WO201413458335に開示される。
(CPI-203)。
GSK1324726A(I-BET726)(CAS登録番号1300031-52-0)は、4-[(2S,4R)-1-アセチル-4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-メチル-6-キノリニル]-安息香酸であり、WO201105484336に開示される。
(GSK1324726A)
化合物(I)との組合せに使用され得る他のBET阻害剤は、ABBV-075、BAY1238097、CPI-0610及びTEN-010を含む。
【0039】
アントラサイクリン:
アントラサイクリン(又はアントラサイクリン系抗生物質)は、ストレプトマイセス属微生物(Streptomyces peucetius var. caesius)由来の、がん化学療法において使用される薬物のクラスである。これらの化合物は、白血病を含む、多くのがんを治療するために使用される。本発明の組合せでの使用のためのアントラサイクリンの例は、ドキソルビシン、イダルビシン、及びダウノルビシンを含む。
例えばダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシンなどのアントラサイクリンは、特定の型の白血病(例えば、急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病)を治療するために、大抵、例えばシタラビンなどの他の化学療法薬との組合せで使用される。
(ダウノルビシン)
(ドキソルビシン)
(イダルビシン)
【0040】
三酸化ヒ素:
三酸化ヒ素は、例えばATRAなどの「ファーストライン」の薬剤に反応しない急性前骨髄球性白血病の治療について、米国FDAに承認されている化学療法剤である。三酸化ヒ素は、がん細胞がアポトーシスを起こすのを誘導することが示される。急性骨髄性白血病の難治性の前骨髄球性(M3)サブタイプの治療における、細胞増殖抑制薬として使用する。三酸化ヒ素とオールトランスレチノイン酸(ATRA)の併用療法は、ある白血病の治療についてFDAに承認されている。経口投与が可能な三酸化ヒ素の液剤が開発されている。
【0041】
ヒドロキシ尿素:
ヒドロキシ尿素(CAS登録番号127-07-1)は、ヒドロキシカルバミドとしても知られ、CMLを含む骨髄増殖性疾患において使用される抗悪性腫瘍薬である。ヒドロキシカルバミドは、NDPの還元に関連するチロシルフリーラジカルの除去による酵素リボヌクレオチドレダクターゼの阻害を介して、デオキシリボヌクレオチドの生産を減少させる。
(ヒドロキシ尿素)
【0042】
ATRA、ARA-C(例えばダウノルビシン又はイダルビシンなどのアントラサイクリンとの組合せでもよい)及びアザシチジンは、急性白血病の処置のための現在の標準治療である。
【0043】
ある実施態様において、レチノイン酸アナログはトレチノインである。
【0044】
ある実施態様において、ヌクレオシドアナログはシタラビンである。
【0045】
ある実施態様において、DOT1L阻害剤は、ピノメトスタット及びEPZ-00477から選択される。
【0046】
ある実施態様において、HDAC阻害剤は、ボリノスタット、リコリノスタット、及びエンチノスタットから選択される。
【0047】
ある実施態様において、DNMT阻害剤は、デシタビン及びアザシチジンから選択される。
【0048】
ある実施態様において、FLT3阻害剤はキザルチニブである。
【0049】
ある実施態様において、BCL2阻害剤はABT-737である。
【0050】
ある実施態様において、MDM2阻害剤はヌトリン-3Aである。
【0051】
ある実施態様において、c-KIT阻害剤はダサチニブである。
【0052】
ある実施態様において、BET阻害剤はJQ-1である。
【0053】
ある実施態様において、アントラサイクリンはダウノルビシンである。
【0054】
別の実施態様は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せに関する。特定の実施態様において、組合せは、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む。
【0055】
別の実施態様は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤と、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物に関する。特定の実施態様において、医薬組成物は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤と、1つ以上の薬学的に許容される添加剤とを含む。
【0056】
別の実施態様は、治療活性物質としての使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せに関する。特定の実施態様において、組合せは、治療活性物質としての使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む。
【0057】
別の実施態様は、過剰増殖性疾患の治療における使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せに関する。特定の実施態様において、造血器悪性腫瘍の治療における使用のために、組合せは、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0058】
別の実施態様は、必要とする患者における造血器悪性腫瘍の治療のための方法であって、治療的有効量の、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せを前記患者に投与することを含む方法に関する。特定の実施態様において、方法は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤との治療的有効量の組合せを投与することを含む。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0059】
別の実施態様は、造血器悪性腫瘍の治療のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せの使用に関する。特定の実施態様において、造血器悪性腫瘍の治療のために、組合せは、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0060】
別の実施態様は、造血器悪性腫瘍の治療に有用な医薬の調製のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、サパシタビン、クロファラビン、エラシタラビン、フルダラビン、シタラビンオクホスファート、ゲムシタビン、2-クロロ-2-デオキシアデノシン(2-CDAとしても知られる)、トロキサシタビン、フォロデシン、ネララビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、SGC-0946、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン、キザルチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レスタウルチニブ、ABT-737、ナビトクラックス、ベネトクラックス、オバトクラックス、ヌトリン-3A、ダサチニブ、イマチニブ、JQ1、GSK1210151A、MS436、GSK525762、OTX-015、CPI-203、GSK1324726A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せの使用に関する。特定の実施態様において、本発明は、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン、シタラビン、ピノメトスタット、EPZ-004777、ボリノスタット、リコリノスタット、エンチノスタット、デシタビン、アザシチジン、キザルチニブ、ABT-737、ヌトリン-3A、ダサチニブ、JQ1、ダウノルビシン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む組合せの、造血器悪性腫瘍疾患の治療に有用な医薬の調製のための使用に関する。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0061】
別の実施態様は、ここに記載された組合せ及び1つ以上の薬学的に許容される添加剤に関する。
【0062】
別の実施態様は、治療活性物質としての使用のための、ここに記載された組合せに関する。
【0063】
別の実施態様は、造血器悪性腫瘍の治療における使用のための、ここに記載された組合せに関する。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0064】
別の実施態様は、造血器悪性腫瘍の治療のための方法であって、ここに記載された組合せの有効な量をヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0065】
別の実施態様は、ここに記載された組合せの、造血器悪性腫瘍の治療のための使用に関する。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0066】
別の実施態様は、ここに記載された組合せの、造血器悪性腫瘍の治療に有用な医薬の調製のための使用に関する。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。ある実施態様において、前記造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0067】
ある実施態様において、造血器悪性腫瘍はLSD1に関連しているか、LSD1阻害剤によって調節される。
【0068】
ある実施態様において、造血器悪性腫瘍は骨髄性の造血器悪性腫瘍である。
【0069】
ある実施態様において、造血器悪性腫瘍は急性骨髄性白血病(AML)である。
【0070】
ある実施態様において、造血器悪性腫瘍はリンパ性の造血器悪性腫瘍である。
【0071】
ある実施態様において、造血器悪性腫瘍は急性リンパ性白血病(ALL)である。
【0072】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、レチノイン酸アナログ又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0073】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ヌクレオシドアナログ又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0074】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、DOT1L阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0075】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、HDAC阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0076】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、DNMT阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0077】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、FLT3阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0078】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、BCL2阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0079】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、MDM2阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0080】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、c-KIT阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0081】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、BET阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0082】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、アントラサイクリン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0083】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、三酸化ヒ素とを含む。
【0084】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ヒドロキシ尿素とを含む。
【0085】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、トレチノイン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0086】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、シタラビン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0087】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ピノメトスタット又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0088】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、EPZ-004777又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0089】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ボリノスタット又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0090】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、リコリノスタット又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0091】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、エンチノスタット又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0092】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、デシタビン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0093】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、アザシチジン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0094】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、キザルチニブ又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0095】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ABT-737又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0096】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ヌトリン-3A又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0097】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ダサチニブ又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0098】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、イマチニブ又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0099】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、JQ1又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0100】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ダウノルビシン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0101】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、イダルビシン又は薬学的に許容されるその塩とを含む。
【0102】
ある実施態様において、組合せは式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、シタラビンと、好ましくはダウノルビシン、イダルビシンから選択される、アントラサイクリンと、薬学的に許容されるそれらの塩とを含む。
【0103】
ある実施態様において、上に記載された式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は二塩酸塩である。
【0104】
ここに記載された本発明の方法において、患者はヒト又は動物であり、好ましくはヒトである。
【0105】
別に定義されない限り、ここで使用される全ての技術用語及び科学用語は、この発明の属する分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。ここに記載されたものと類似又は同等の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用され得るが、適当な方法及び材料を以下に記載する。
【0106】
ここに言及された全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、その全体が参照により援用される。
【0107】
別に示されない限り、この出願で使用される命名法は、IUPACの系統的命名法に基づく。
【0108】
別に示されない限り、ここの構造における炭素、酸素、硫黄、又は窒素原子上に現れているどの開いた原子価も水素の存在を示す。
【0109】
用語「任意の」又は「任意に」は、続いて記載される事象又は状況が生じ得るが生じる必要がないこと、また、その記載が、事象又は状況が生じる場合と生じない場合の双方を含むことを意味する。
【0110】
用語「薬学的に許容される塩」は、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない塩を意味する。薬学的に許容される塩は、酸付加塩及び塩基付加塩の双方を含む。
用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの無機酸、並びに脂肪族、環状脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスから選択される有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸(maloneic acid)、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びサリチル酸などで形成された塩で、薬学的に許容されるものを意味する。
【0111】
用語「薬学的に許容される塩基付加塩」は、有機又は無機塩基で形成された塩で、薬学的に許容されるものを意味する。許容される無機塩基の例は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン及びアルミニウムの塩を含む。薬学的に許容される有機非毒性塩基由来の塩は、第一級、第二級及び第三級アミン、天然の置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン類(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペリジン(piperizine)、ピペリジン(piperidine)、N-エチルピペリジン及びポリアミン樹脂類など)の塩を含む。
【0112】
ここで使用される立体化学の定義及び規定は、一般的にS. P. Parker37;及びEliel, E. and Wilen, S.38に従う。光学的に活性な化合物を記載する際に、接頭語D及びL、又はR及びSが使用されて、そのキラル中心の周りでの分子の絶対配置を意味する。対象とするキラル中心に結合した置換基は、Cahn, Ingold and Prelog39のシーケンスルール(Sequence Rule)に従ってランク付けされる。接頭語D及びL、又は(+)及び(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために用いられ、(-)又はLは化合物が左旋性であることを示す。接頭語(+)又はDを有する化合物は、右旋性である。
【0113】
用語「医薬組成物」及び「医薬製剤」(又は「製剤」)は、互換的に使用され、哺乳動物、例えばそれを必要とするヒトに投与される、薬学的に許容される添加剤とともに治療的有効量の医薬品有効成分を含む混合物又は溶液を意味する。
【0114】
用語「薬学的に許容される」は、一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではなく、ヒトだけでなく動物の医薬用途について許容される、薬学的組成物を調製するのに有用な物質の属性を意味する。
【0115】
用語「薬学的に許容される添加剤」、「薬学的に許容される担体」及び「治療的に不活性な添加剤」は、互換的に使用可能であり、医薬製品を製造する際に使用される、例えば崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤又は潤滑剤など、治療活性を有さず、投与される対象に対して非毒性である、医薬組成物中の任意の薬学的に許容される成分を意味する。
【0116】
用語「阻害剤」は、特定のリガンドの特定の受容体又は酵素への結合に競合する、減少させる又は妨げる化合物、及び/又は特定のタンパク質、例えば受容体又は酵素の活性を減少させる又は妨げる化合物を意味する。
【0117】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物は、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及び例えばサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されるものではない。ある実施態様において、個体又は対象はヒトである。
【0118】
ここで使用する用語「動物」は、ヒト及び非ヒト動物を含む。一実施態様では、「非ヒト動物」は、哺乳動物、例えばラット又はマウスなどのげっ歯類である。一実施態様では、非ヒト動物は、マウスである。
【0119】
用語「半数効果濃度」(EC50)は、特定のin vivo効果の最大値の50%を得るために必要な、特定の化合物又は分子の血漿濃度を意味する。
【0120】
用語「治療的有効量」(又は「有効量」)は、対象に投与されたとき、ここに記載の(i)特定の疾患、状態、又は障害を治療又は予防する、(ii)特定の疾患、状態、又は障害の1つ以上の症状を軽減、改善又は排除する、又は(iii)特定の疾患、状態、又は障害の1つ以上の症状の発現を防止する又は遅らせる、本発明の化合物又は分子の量を意味する。治療的有効量は、化合物、治療される病状、治療される病気の重症度、対象の年齢及び相対的健康度、投与の経路及び形態、担当の医師又は獣医師の判断、及び他の要因に応じて変化するであろう。
【0121】
病状の「治療」(「treating」又は「treatment」)という用語は、病状を阻害すること、すなわち病状又はその臨床症状の進行を阻止すること、又は病状を緩和すること、すなわち病状又はその臨床症状の一時的又は永続的退行を引き起こすことを含む。用語「転座」又は「染色体転座」は、非相同染色体間の一部の再構成によって引き起こされる染色体異常の1つの型を意味する。転座は、均衡(遺伝情報過剰又は欠失のない材料の均一な交換で)又は不均衡(染色体材料の交換は等しくなく、遺伝子過剰又は欠失をもたらす)であり得る。染色体転座は、配偶子形成において、減数分裂でのエラーによって、又は、体細胞の細胞分裂において、有糸分裂でのエラーによって、のどちらかで起こり得る。前者は、転座保因者として、子の全ての細胞において特徴付けられる染色体異常をもたらす。体細胞転座は、一方で、影響を受けた細胞株においてのみで特徴付けられる異常をもたらす。
【0122】
用語「再構成」又は「染色体再構成」は、欠失、重複、逆位、又は転座を通じた天然染色体の構造の変化によって引き起こされる染色体異常の1つの型を意味する。再構成は異なる二つの場所でのDNA二重らせん中の切断によって引き起こされ、切断された末端が再結合し、破損する前の染色体の遺伝子配列順とは異なる、新しい染色体構成をもたらす。「複雑な染色体再構成(Complex chromosomal rearrangements)」(CCR)は、2つ以上の染色体間の遺伝子材料の交換を有する、少なくとも3つの切断点を有する構造的な染色体の再構成を意味する。
【0123】
別の実施態様は、ここに記載された式(I)の化合物と、薬学的に許容される添加剤との組合せを含む、医薬組成物又は医薬と同様に、そのような組合せ、組成物及び医薬を調製するために、式(I)の化合物を使用する方法も提供する。
【0124】
組成物は、医療実施基準(good medical practice)にかなう方式で、製剤化され、用量化され、投与される。この観点において考慮すべき要因は、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程、及び医師に知られる他の要因を包含する。
【0125】
式(I)の化合物及びここに記載された組合せにおける使用のための他の治療剤と同様に、ここに記載された医薬組成物も、経口、局所(口腔及び舌下を含む)、直腸内、膣内、経皮、非経口、皮下、腹腔内、肺内、皮内、髄腔内及び硬膜外及び鼻腔内、並びに、必要に応じて局所治療、病巣内投与を含む任意の適切な方法により投与されうる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。
【0126】
式(I)の化合物及びここに記載された組合せにおける使用のための他の治療剤と同様に、ここに記載された医薬組成物も、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐剤、ゲル剤、乳剤、貼付剤などの簡便な投与剤形で投与され得る。そのような組成物は、例えば、希釈剤、担体、pH調節剤、保存剤、溶解剤、安定剤、湿潤剤、甘味剤、着色剤、香料、浸透圧を変更するための塩、緩衝剤、マスキング剤、抗酸化剤、及びさらなる活性剤などの、医薬製剤における通常の成分を含んでいてもよい。それらは他の治療上価値のある物質もさらに含むことができる。
【0127】
典型的な製剤は、式(I)の化合物又はここに記載された治療剤又はここに記載された組合せと、薬学的に許容される添加剤とを混合することによって調製される。適切な添加剤は当業者に周知であり、例えば、Ansel H.C. et al.40、Gennaro A.R. et al.41、及びRowe R.C.42に詳細が記載される。製剤は、薬物(すなわち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)の美しい見栄え又は医薬製品(すなわち、医薬)の製造における補助を提供するために、1つ以上の緩衝剤、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動化剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、香料、香味料、希釈剤及び他の既知の添加剤も含みうる。
【0128】
式(I)の化合物及びここに記載された投与され得る他の治療剤での用量は、広い制限の中で変わり得るし、もちろん、各特定の場合における個々の要件に合わせられる。
【0129】
ここに記載されたように、式(I)の化合物は、高薬理活性医薬品有効成分(HPAPI)である。予想される1日用量はしたがって非常に少ない、すなわち1日当たり10mgより少ない。したがって、固体剤形における薬物量も非常に少ない、すなわち100mgの錠剤当たり10mgのAPIより少ないであろう。
【0130】
一般に、経口投与の場合において、ここに記載したように式(I)の化合物の1人当たり約0.01~10mgの1日用量は適当であるが、必要に応じて上記の上限は超過されることもあり得る。
【0131】
組合せの追加の化合物は、意図した目的に有効な量で投与され得る。上記の同時に投与する薬剤の適切な投与量は、現在使用されるものであり、例えば、治療指数を増加させる、又は、毒性又は他の副反応又は結果を軽減させるなどのために、新たに同定された組合せの複合作用(相乗作用)により減じられ得る。
【0132】
式(I)の化合物についての適切な経口剤形の一例は、約90~30mgの無水ラクトース、約5~40mgのクロスカルメロース、約5~30mgのポリビニルピロリドン(PVP)K30、及び約1~10mgのステアリン酸マグネシウムを配合する、約0.01mg~10mgのここに記載された式(I)の化合物を含む錠剤である。粉末成分は最初に混合され、その後PVPの溶液と混合される。得られた組成物は、乾燥され、造粒され、ステアリン酸マグネシウムと混合され、通常の装置を使用して錠剤の形態に圧縮され得る。
【0133】
ここに記載された組合せは、同時又は逐次レジメンとして投与され得る。逐次的に投与されるとき、その組合せは、2回以上の投与で投与され得る。併用投与は、別個の製剤を使用する同時投与、及びどちらかの順序での連続投与を含み、その際、好ましくは、双方の(又は全ての)活性剤がそれらの生物学的活性を同時に発揮する期間がある。本発明の組合せは、式(I)の化合物と他の治療剤とを含む、単一の医薬組成物としても投与され得る。
【0134】
治療法のある実施態様において、組合せは外科療法及び放射線療法と組み合わされ得る。組合せの量及び投与の相対的なタイミングは、望まれる併用療法の効果を達成するために選択されるであろう。
【0135】
化合物は治療される状態に適切な経路によって投与され得る。適切な経路は、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)、経皮、経直腸、経鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内及び鼻腔内を含む。局所投与は、例えば経皮投与の貼付剤又はイオン導入装置などの経皮投与の使用も含み得る。局所免疫抑制治療の場合、化合物は、移植片を移植前に灌流又は他の方法で阻害剤と接触させることを含む、病変内投与により投与され得る。
【0136】
好ましい経路は、例えばレシピエントの状態によって変化し得ることが理解されるであろう。化合物は、経口投与される場合、薬学的に許容される担体、流動化剤、又は添加剤とともに、丸剤、カプセル剤、錠剤などとして製剤化され得る。化合物は、非経口投与される場合、以下に詳述されるように、薬学的に許容される非経口ビヒクル又は希釈剤を用いて、単位用量の注射可能な形態で、製剤化され得る。
【0137】
ここに記載された組合せは、過剰増殖性の疾患又は障害、特に造血器悪性腫瘍の治療のために使用され得る。ここに使用されたように、造血器悪性腫瘍は、骨髄性の造血器悪性腫瘍及びリンパ性の造血器悪性腫瘍に関連する。ここに使用されたように、骨髄性の造血器悪性腫瘍及びリンパ性の造血器悪性腫瘍は、前がん状態の骨髄性又はリンパ性の造血器障害、及び非腫瘍性又は非がん性の骨髄増殖性又はリンパ増殖性の障害も含む。
【0138】
特に、本発明の組合せは、以下の治療又は予防に使用され得る:
-骨髄性の造血器悪性腫瘍、例えば急性骨髄性白血病(AML)(例えば赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性好酸球性白血病、急性好塩基球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性骨髄芽球性白血病);慢性骨髄性白血病;骨髄異形成症候群;慢性骨髄単球性白血病;及び骨髄増殖性疾患(例えば骨髄線維症、急性混合性白血病、真性多血症、慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群、本態性血小板血症、及び慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群)など
-リンパ性の造血器悪性腫瘍、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)、T細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫
【0139】
好ましい実施態様において、本発明の組合せは骨髄性の造血器悪性腫瘍のために使用される。ある実施態様において、本発明の組合せは急性骨髄性白血病の治療のために用いられる。ある実施態様において、本発明の組合せは、MLL、AF9、AF4、AF10、AML1、ETO、CALMに関する転座及び再構成;NPM1又はNotch1における変異、又はLSD1の過剰発現を有する、骨髄性又はリンパ性の造血器悪性腫瘍を治療するために優先的に用いられる。
【0140】
本発明のある特定の実施態様は、過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療のための方法であって、LSD1阻害剤の投与を通じて感受性を高めること、続いてここに記載されたように有効量の組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0141】
本発明のある特定の実施態様は、過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療のための方法であって、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の投与を通じて感受性を高めること、続いてここに記載されたように有効量の組合せをヒト又は動物に投与することを含む方法に関する。
【0142】
本発明の別の実施態様において、上記の疾患及び障害の治療に有用な組合せを含有する製品、又は「キット」が提供される。
【0143】
一実施態様において、製品は、ここに記載された容器及び組合せを含む。
【0144】
本発明の一実施態様は、過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍の治療において有用なここに記載された組合せを含む製品を提供する。
【0145】
キットは、容器上に又は容器に付属する、ラベル又は添付文書をさらに含んでもよい。用語「添付文書」は、治療製品の商品パッケージに通例含まれる、治療製品の効能効果、用法、用量、投与、禁忌、及び/又は使用に関する警告についての情報を含む説明書のことを言及するのに使用される。適切な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、病態を治療するのに有効な、組合せ又はその製剤を保持してもよく、無菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈注射用溶液のバッグ又はバイアルとすることができる)を有してもよい。ラベル又は添付文書は、組成物が例えば過剰増殖性疾患、特に造血器悪性腫瘍などの選択した状態を治療するために使用されることを示す。一実施態様において、ラベル又は添付文書は、組合せを含む組成物が、異常な細胞増殖から生じる障害を治療するために使用され得ることを示す。ラベル又は添付文書は、この組成物が、他の障害を治療するために使用され得ることを示してもよい。代替的に、又は追加的に、製品は、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液などを含む第二の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0146】
キットは、組合せ、及び、存在する場合、第2の医薬製剤、の投与についての説明書をさらに含んでもよい。例えば、キットが、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む第1の組成物、及びレチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択される1つ以上の治療剤とを含む第2の組成物を含む場合、そのキットは、必要とする患者への第1及び第2の医薬組成物の、同時、逐次又は別個の投与についての説明書をさらに含んでもよい。
【0147】
別の実施態様において、キットは、例えば錠剤又はカプセル剤などの、組合せの固体経口形態の送達に適している。このようなキットは、好ましくは多数の単位用量を含む。このようなキットは、その意図された使用の順序向けの投与量を記したカードを含むことができる。このようなキットの例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業においてよく知られており、医薬単位剤形を包装するために広く使用される。必要に応じて、記憶の助けとなるものが、例えば、用量が投与され得る治療スケジュール中の日にちを示す、数字、文字若しくは他のマークの形で、又はカレンダー挿入物とともに、提供され得る。
【0148】
一実施態様によれば、キットは(a)その中に式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩が入った第1の容器;(b)レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つの治療剤が入った第2の容器及び(c)その中に第3の医薬組成物が入った第3の容器であって、第3の医薬製剤は、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される抗過剰増殖性活性を有する別の化合物を含む。代替的に、又は追加的に、キットは、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びブドウ糖液などを含む別の容器を含んでもよい。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【0149】
キットが、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を有する第1の容器と、レチノイン酸アナログ、ヌクレオシドアナログ、DOT1L阻害剤、HDAC阻害剤、脱メチル化剤、FLT3阻害剤、BCL2阻害剤、MDM2阻害剤、c-KIT阻害剤、BET阻害剤、アントラサイクリン、三酸化ヒ素、ヒドロキシ尿素、及び薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される1つの治療剤との組成物を含む場合、キットは、例えば分割ボトル又は分割ホイルポケットなどの、別個の組成物を収容するための容器を含んでもよいが、別個の組成物は、単一の、分割されていない容器に収容されてもよい。一般的に、キットは別個の成分の投与のための説明書を含む。キットの形態は、別個の成分が、好ましくは異なる剤形(例えば、経口及び非経口)で投与されるとき、異なる投与間隔で投与されるとき、又は組合せの個々の成分の用量調整が処方医により望まれるときに、特に有利である。
【実施例
【0150】
次の実施例は本発明の説明のために提供される。それらは本発明の範囲を限定していると考えるべきではなく、単にその代表的なものにすぎない。
【0151】
実施例1:急性骨髄性白血病の細胞株におけるORY-1001と他の治療剤の間の相乗作用の決定のためのマトリックスアッセイ
この実施例の目的はORY-1001と他の治療剤の間に存在する相乗作用を決定することである。表1は併用療法において試験された化合物及び使用された細胞株を要約する。
表1:ORY-1001との組合せで試験されるであろう化合物のリスト。*リコリノスタット及びACY-1215としても知られる。
【0152】
1.1 実験デザイン
1.1.1 細胞株及び培養条件
AML細胞株は、5%CO雰囲気で制御された加湿インキュベーター内で、RPMI10%FBS培地中37℃で維持された。細胞凍結及び解凍はATCCからの推奨に従って行われた。使用された細胞株の遺伝子プロファイリングは表2で利用できる。
表2:本文書において報告されたAML細胞株の遺伝特性。
【0153】
1.1.2 生存アッセイ(96時間)
細胞は、予め決められたように(KASUMI-1細胞の場合の16000細胞/ウェルを除いて、4000細胞/ウェル)、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、最適密度で播種された(処理の間の直線的な増殖を保証するため)。3つのウェルは各実験例の条件が指定された;それぞれバックグラウンド補正及び正規化のために、培地のみ及びビヒクル処理されたコントロールも加えられた。播種の後、ORY-1001(又は組合せ処置のための他のいくつかの候補)の8段階の希釈液(1:3)を含有する50μLの培地が細胞に加えられた。アラマーブルー(登録商標)(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA/USA)生存染色を用いて細胞生存を評価する前に、細胞はその後制御された5%CO雰囲気において37℃で96時間インキュベートされた。アラマーブルー(登録商標)は、生細胞の天然還元力を用いてレサズリンを蛍光分子、レゾルフィンに変換する、細胞生存インジケーターである43。手短に、アラマーブルー原液は培地で1:20に希釈され、3時間のインキュベートの後、蛍光がTECAN Infinity 2000プレートリーダー(Tecan Group Ltd.,Mannedorf,CH;540-570nm励起波長、580-610nm放出波長)を用いて検出された。各条件について、平均蛍光は3回の技術的反復から計算された;バックグラウンド補正は培地のみのコントロールの蛍光から計算された。ベストフィット曲線及びEC50値を計算するために、データはGraphPad PRISM(登録商標)version5.01(GraphPad Software,Inc.,La Jolla,CA/USA)を用いて解析された。
【0154】
1.1.3 9×9マトリックス生存アッセイ
各マトリックスアッセイは以下の図1で説明されたスキームに従って、2つのプレートに分配された。
細胞は、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、最適密度(4000細胞/ウェル、予め決められたように)で播種された;プレートの縁のウェルは、バックグラウンド補正のために、細胞なしの100μLの培地と共に置かれた。2つの化合物のそれぞれは25μLの中に加えられ、結果的に最終体積100μLの培地とされた。図1に示したように、マトリックスは左から右へORY-1001の濃度の上昇を、上から下へ目的化合物(図1参照)の濃度の上昇を表す。2つのプレートに渡って再現性を確認するために、プレート#1の最初と最後の列はプレート#2(図1において赤い矢印によって示した)において繰り返された。マトリックス上の水平及び垂直に中心にされた双方の化合物のEC50を得るためにデザインされた(図1に示したように、ORY-1001及び右から及び下から5番目に対応する他の化合物のEC50)、双方の化合物について試験された濃度は、8回の1:2希釈ステップを通じて得られた256倍の範囲をカバーしていた。マトリックスアッセイにおいて試験された化合物のEC50値は、セクション1.1.2において詳述したように単剤アッセイを通じて以前に得られた。広い濃度範囲が試験された化合物(デシタビン、アザシチジン及びヌトリン3A)について段階希釈は1:3のステップで行われた。
生存はその後セクション1.1.2において詳述したようにアラマーブルー染色を用いて決定された。
【0155】
1.1.3.1 9×9マトリックス生存アッセイ(データ解析)
各マトリックスアッセイについて、次の式に従って相対生存のパーセンテージの値を得るために、データはその後ビヒクル処理されたコントロール(<0.4%DMSO、左上コーナー)を対照として正規化された:
%相対生存=RFU処理された細胞/RFUビヒクルコントロール×100
その後、生存率の値は、GraphPad PRISM(登録商標)version5.01(GraphPad Software,Inc.,La Jolla,CA/USA)を用いて解析され、ベストフィット曲線及びEC50値を計算した。
この時点において画分の影響(Fractional Effect)(Fa)は式
Fa=1-(相対生存%/100)
次の条件:
・単剤としてORY-1001の段階希釈液を用いて処理された細胞(各マトリックスアッセイの第1及び第2のプレートの最初の行の平均)
・単剤として目的化合物の段階希釈液を用いて処理された細胞(マトリックスアッセイの最初の列)
・EC50値の比に対応する固定比でのORY-1001及び目的化合物を用いて処理された細胞(マトリックスアッセイの対角線における相対生存%の値;図1中でハイライトされた)
を用いて計算された。
Calcusynを用いた解析の前に、前述のFa値はその後2回の技術的反復に渡って平均化された。
Calcusynソフトウェア(http://www.biosoft.com/w/calcusyn.htm,Biosoft,Cambridge,UK)は、Median Effect原理(Median Effect Principle)及びコンビネーションインデックス定理(Combination Index Theorem)に基づいて、2つの化合物の間の相互作用の性質(相乗的、相加的又は拮抗的)を決定するためにデザインされる44。情報を与える結果を生み出すために、Calcusynを用いて処理されるであろうデータは(単剤と薬物組合せの双方について)、これらの理論モデルを用いて当てはめる必要がある。この理由のために、外れ値及びMedian Effect原理(Median Effect Principle)への不十分なフィットによって特徴付けられるデータポイントを除去することは極めて重要である45。これを達成するために、次のストラテジーがデータフィルタリングに適用された。
最初のステップで:
1)Fa<0.1
2)前のポイントに比べて、Faの増加<0.03(Fa>0.9の場合)
によって特徴付けられるポイントを除去することで、データばらつきは減らされた。
これらの条件は用量反応曲線のプラトーを定義し、細胞は非常に低い又は非常に高い濃度の化合物(又は組合せ)で処理されて、結果的に0%又は100%(Fa値がそれぞれ0又は1と同等である)に近い生存の減少となる。用量反応曲線のこの範囲において、アラマーブルーシグナルにおける変化は非常に小さく、大概、とても小さい生物学的意義を有するランダムノイズの結果であることが注意される。
次に、各データポイントについて、Log10(濃度)及びLog10(Fa/(1-Fa))は計算され、x軸で前者の値、y軸で後者の値を報告するドットプロットグラフが生成された。Excelを用いて、回帰曲線がその後得られた(Median Effect方程式(Median Effect Equation)に対応している)。
この時点で各データポイントについて、回帰曲線からの距離が式:
距離(ax+by+c=0;X,Y)=(aX+bY+c)/√(a2+b2
を用いて計算された。
外れ値は、グラブス検定を用いて、Median Effect方程式(Median Effect Equation)からの距離に基づいて同定される。各データポイントについて、グラブス検定は、次の式(グラブス検定についての変数はG又はZと互換的に呼ばれ得ることが注意される):
G=(X-Xaverage)/s
により距離の絶対値に行われた。
ここでXは回帰曲線からの各ポイントの距離の絶対値を表し、Xaverageは全てのX値の平均を表し、sは標準偏差を表す。Gcrit(下に示すようにα=0.2で計算される)の上のGの値はMedian Effect方程式(Median Effect Equation)上でフィットしない外れ値を同定する。そのようなデータポイントは、Calcusynを用いてコンビネーションインデックスを成功裏に計算するために除去される。
可能な場合、多数の外れ値を除去するために:
1.さらなる外れ値が同定されない又は
2.R2>0.95である。データの質を測定するために、R値はCalcusynソフトウェアによっても計算される(よいデータは0.95を上回るR値によって特徴付けられる
まで、検定は複数回繰り返された46
【0156】
1.1.3.2 Calcusynアウトプット
x軸上で、画分の影響(Fractional Effect)(影響を受けた画分(Fraction Affected)とも呼ばれ、テキスト中でFaと称される)が報告され、処理(細胞傷害性の処理の場合において、画分の影響(Fractional Effect)は、ビヒクルコントロールと比較した生存減少に対応し、1は100%に等しい)によって影響を受けた細胞の画分を表す。y軸上で、コンビネーションインデックスが報告され、それらは相乗的(CI<1)、相加的(CI=1)又は拮抗的(CI>1)のいずれかであり得る。クロスは実験のデータポイントを表し、中心の線はCI曲線であり、上と下の線はCIの上と下の1.96標準偏差(SD)の幅を定義する。
【0157】
1.1.4 組合せ処理 ダサチニブ/ORY-1001及びJQ1/ORY-1001
細胞は、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、2500細胞/ウェルの密度で播種された;プレートの縁のウェルは、バックグラウンド補正のために、細胞なしの100μLの培地と共に置かれた。2つの化合物のそれぞれは25μLの中に加えられ、結果的に最終体積100μLの培地とされた。細胞はORY-1001とダサチニブ又はJQ-1の段階1:3希釈液を用いて処理された。ORY-1001/ダサチニブ及びORY-1001/JQ1の比はそれぞれ1:1000及び1:200であった。
生存はその後セクション1.1.2において詳述したようにアラマーブルー染色を用いて決定された。
【0158】
1.1.4.1 組合せ処理 ダサチニブ/ORY-1001及びJQ1/ORY-1001(データ解析)
データ解析はセクション1.1.3.1に記載のとおり行われた。
【0159】
1.1.4.2 Calcusynアウトプット
Calcusynソフトウェアのアウトプットはセクション1.1.3.2に記載のとおりである。
【0160】
1.1.5 組合せ処理 ORY-1001/ヒドロキシ尿素
細胞は、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、4000細胞/ウェルの密度で播種された;プレートの縁のウェルは、バックグラウンド補正のために、細胞なしの100μLの培地と共に置かれた。2つの化合物のそれぞれは25μLの中に加えられ、結果的に最終体積100μLの培地とされた。細胞は、固定された濃度のORY-1001(5nM)又はビヒクル(0.05%)の存在下で、ヒドロキシ尿素の段階1:3希釈液を用いて処理された。
生存はその後セクション1.1.2において詳述したようにアラマーブルー染色を用いて決定された。データは、GraphPad PRISM(登録商標)version 5.01(GraphPad Software, Inc.,La Jolla,CA/USA)を用いて解析され、ベストフィット曲線及びEC50値を計算した。
【0161】
1.1.6 組合せ処理 ORY-1001/三酸化ヒ素
細胞は、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、2500細胞/ウェルの密度で播種された;プレートの縁のウェルは、バックグラウンド補正のために、細胞なしの100μLの培地と共に置かれた。2つの化合物のそれぞれは25μLの中に加えられ、結果的に最終体積100μLの培地とされた。細胞は、固定された濃度のORY-1001(5nM)又はビヒクル(0.05%)の存在下で、三酸化ヒ素の段階1:3希釈液を用いて処理された。
生存はその後セクション1.1.2において詳述したようにアラマーブルー染色を用いて決定された。データは、GraphPad PRISM(登録商標)version 5.01(GraphPad Software, Inc.,La Jolla,CA/USA)を用いて解析され、ベストフィット曲線及びEC50値を計算した。
【0162】
1.2 結果
1.2.1 ORY-1001単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はORY-1001の段階1:3希釈液(0.015から100nMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。OCI-AML2を除いて、試験されたAML細胞株において、ORY-1001は、サブナノモルの範囲のEC50値で、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少を引き起こした。
【0163】
1.2.2 ATRA単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はATRAの段階1:3希釈液(0.015から100nMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1(EC50=1.7nM)、MV(4;11)(EC50=2.8nM)、HL-60(EC50=2.7nM)、OCI-AML2(EC50=5.9nM)、OCI-AML3(EC50=0.8nM)及びMOLM-13細胞(EC50=4.8nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0164】
1.2.2.1 組合せ ORY-1001/ATRA
ATRA(0.16-40nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図2A及び2Bに示される。
試験された条件において、相乗作用(CI<1)は、ORY-1001とATRAの間で、MV(4;11)細胞(n=2)において0.5を、MOLM-13細胞(n=2)において0.8を、超えるFa値で検出された。
【0165】
1.2.3 ARA-C単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はARA-Cの段階1:3希釈液(0.15から1000nMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1(EC50=251.7nM)、MV(4;11)(EC50=198nM)、HL-60(EC50=43.5nM))、OCI-AML2(EC50=26.5nM)、OCI-AML3(EC50=144.8nM)、KASUMI-1(EC50=28.7nM)及びMOLM-13細胞(EC50=78.5nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0166】
1.2.3.1 組合せ ORY-1001/ARA-C
ARA-C(6.25-1600nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4-11)、OCI-AML3及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図3A、3B及び3Cに示される。
試験された条件において、ORY-1001は、MV(4;11)細胞のARA-Cへの反応をFa>0.5(n=1)で相乗的に高める。OCI-AML3及びMOLM-13細胞において、ARA-CとORY-1001の間の相乗作用は、Fa>0.7及びFa>0.6でそれぞれ検出された(n=2)。
【0167】
1.2.4 EPZ5676単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はEPZ5676の段階1:3希釈液(1.5nMから10μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。MV(4;11(EC50=16nM)及びMOLM-13細胞(EC50=44.7nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0168】
1.2.4.1 組合せ ORY-1001/EPZ5676
EPZ5676(1.25-320nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図4A及び4Bに示される。
試験された条件において、ORY-1001とEPZ56756の間の相乗作用は、MV(4;11)細胞(n=2)においてFa>0.4で、MOLM-13細胞(n=2)においてFa>0.3で検出された。
【0169】
1.2.5 EPZ004777単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.2%)又はEPZ004777の段階1:3希釈液(2.5nMから16.7μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。MV(4;11)(EC50=118nM)及びMOLM-13細胞(EC50=108.3nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0170】
1.2.6 SAHA単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はSAHAの段階1:3希釈液(1.5nMから10μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML2、OCI-AML3、KASUMI-1及びMOLM-13細胞において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された(100-1000nM範囲のEC50)。
【0171】
1.2.6.1 組合せ ORY-1001/SAHA
SAHA(6.25-1600nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図5A及び5Bに示される。
試験された条件において、ORY-1001とSAHAの間の相乗的相互作用は、MV(4;11)細胞において0.3から0.8の間のFa値(n=2)で、MOLM-13細胞においてFa>0.4(n=1)で検出された。
【0172】
1.2.7 ロシリノスタット単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はロシリノスタットの1:3段階希釈液(1.5nMから10μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML2、OCI-AML3、KASUMI-1及びMOLM-13細胞において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された(0.5-3μM範囲のEC50)。
【0173】
1.2.7.1 組合せ ORY-1001/ロシリノスタット
ロシリノスタット(15.6-4000nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)、OCI-AML3及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図6A、6B及び6Cに示される。
試験された条件において、ORY-1001はロシリノスタットと、MV(4;11) 細胞においてFa>0.6(n=2)で、OCI-AML3細胞においてFa>0.4(n=2)で相乗的に相互作用する。MOLM-13細胞において、相互作用はFa>0.8(n=2)で検出された。
【0174】
1.2.8 エンチノスタット単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.1%)又はエンチノスタットの1:3段階希釈液(7.6nMから50μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1(EC50=230nM)、MV(4;11)(EC50=98.5nM)、HL-60(EC50=42nM)、OCI-AML2(EC50=106.5nM)、OCI-AML3(EC50=55.2nM)、KASUMI-1(EC50=167.5nM)及びMOLM-13細胞(EC50=52nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0175】
1.2.9 アザシチジン単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はアザシチジンの1:3段階希釈液(15nMから100μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1(EC50=2881.5nM)、MV(4;11)(EC50=1112nM)、HL-60(EC50=1812nM)、OCI-AML2(EC50=1851.7nM)、OCI-AML3(EC50=889.4nM)、KASUMI-1(EC50=2281.7nM)及びMOLM-13細胞(EC50=322.8nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0176】
1.2.9.1 組合せ ORY-1001/アザシチジン
アザシチジン(9.5nM-62.3μM)及びORY-1001(0.001-8nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図7A及び7Bに示される。
試験された条件において、MV(4;11)及びMOLM-13細胞の双方において、ORY-1001はアザシチジンとFa>0.3(n=2)で相乗作用する。
【0177】
1.2.10 デシタビン単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はデシタビンの1:3段階希釈液(1.5nMから10μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1(EC50=95nM)、MV(4;11)(EC50=79.5nM)、HL-60(EC50=42.1nM)、OCI-AML2(EC50=36nM)、OCI-AML3(EC50=100.5nM)、KASUMI-1(EC50=24nM)及びMOLM-13細胞(EC50=12.6nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0178】
1.2.10.1 組合せ ORY-1001/デシタビン
デシタビン(0.4-2430nM)及びORY-1001(0.004-24.3nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図8A及び8Bに示される。
試験された条件において、ORY-1001とデシタビンの間の相乗効果は、MV(4;11)及びMOLM-13細胞の双方においてFa>0.5(n=2)で検出された。
【0179】
1.2.11 キザルチニブ単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.1%)又はキザルチニブの1:3段階希釈液(2.3nMから15μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。増強された感度により、範囲はMV(4;11)(0.0015-10nM)及びMOLM-13細胞(0.01-60nM)に調整された。MV(4;11)(EC50<1nM)、OCI-AML2(EC50=830nM)及びMOLM-13細胞(EC50<1nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0180】
1.2.11.1 組合せ ORY-1001/キザルチニブ
キザルチニブ(0.031-8nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図9A及び9Bに示される。
試験された条件において、MV(4;11)及びMOLM-13細胞において(両者はFLT3-ITD変異を有している)、ORY-1001/キザルチニブの組合せについてのコンビネーションインデックスはFa>0.2(n=2)で1より低い(相乗的相互作用)。
【0181】
1.2.12 ABT737単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はABT737の1:3段階希釈液(0.15nMから1μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。MV(4;11)(EC50=6.3nM)、HL-60(EC50= 113.4nM)、OCI-AML2(EC50=14nM)、KASUMI-1(EC50=124nM)及びMOLM-13細胞(EC50=25nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0182】
1.2.12.1 組合せ ORY-1001/ABT737
ABT373(0.3-80nM)及びORY-1001(0.006-1.6nM)を用いたマトリックス処理が、MV(4;11)、OCI-AML3及びMOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図10A及び10Bに示される。
MV(4;11)(n=2)及びMOLM-13細胞(n=1)において、ORY-1001とABT737の間の相乗作用は、Fa>0.7及びFa>0.9でそれぞれ検出された。
【0183】
1.2.13 ヌトリン3A単剤
THP-1、MV(4;11)、HL-60、OCI-AML3、KASUMI-1、OCI-AML2及びMOLM-13のAML細胞株の最適増殖条件を決定した後で、セクション1.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.2%)又はヌトリン3Aの1:3段階希釈液(0.6nMから4μMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。THP-1(EC50=323.7nM)、OCI-AML2(EC50=446.5nM)、OCI-AML3(EC50=659nM)及びMOLM-13細胞(EC50=127.7nM)において、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きい生存の減少が検出された。
【0184】
1.2.13.1 組合せ ORY-1001/ヌトリン3A
ヌトリン3A(1.1-7290nM)及びORY-1001(0.001-8.1nM)を用いたマトリックス処理が、MOLM-13細胞で、セクション1.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図11に示される。
試験された条件において、MOLM-13細胞において、ORY-1001はヌトリン3Aと0.8を超えるFa値で相乗的相互作用を示す(n=2)。
【0185】
1.2.14.1 組合せ ORY-1001/ダサチニブ
ダサチニブ(6nM-40μM)及びORY-1001(0.006-40nM)を用いた処理が、MV(4;11)細胞で、セクション1.1.4に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.4.1に報告したとおりである。得られた結果は図12に示される。
試験された条件において、MV(4;11)細胞において、ORY-1001はダサチニブと0.4から0.9の間のFa値で相乗的相互作用を示す(n=1)。
【0186】
1.2.15 組合せ ORY-1001/JQ1
JQ1 (0.9nM-6000nM)及びORY-1001(0.004-30nM)を用いた処理が、MV(4;11)細胞で、セクション1.1.4に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は1.1.4.1に報告したとおりである。得られた結果は図13に示される。
試験された条件において、MV(4;11)細胞において、ORY-1001はJQ1と0.6から0.9の間のFa値で相乗的相互作用を示す(n=3)。
【0187】
1.2.16 組合せ ORY-1001/ヒドロキシ尿素
ヒドロキシ尿素(0.076-500nM)の段階希釈液を用いた処理が、ORY-1001(5nM)又はビヒクル(DMSO 0.05%)の存在下で、MV(4;11)細胞で、セクション1.1.5に記載したように行われた。得られた結果は図14に示される。
試験された条件において、ORY-1001はMV(4;11)細胞のヒドロキシ尿素への反応を増強する(n=1)。
【0188】
1.2.17 組合せ ORY-1001/三酸化ヒ素
三酸化ヒ素(0.039-10nM)の段階希釈液を用いた処理が、ORY-1001(5nM)又はビヒクル(DMSO 0.05%)の存在下で、MV(4;11)細胞で、セクション1.1.6に記載したように行われた。得られた結果は図15に示される。
試験された条件において、ORY-1001はMV(4;11)細胞の三酸化ヒ素への反応を増強する(n=1)。
【0189】
実施例2:MOLT4細胞(急性リンパ性白血病)におけるORY-1001と他の目的化合物の間の相乗作用の決定のためのマトリックスアッセイ
この実施例の目的はORY-1001と他の治療剤の間に存在する相乗作用を決定することである。表3は併用療法で試験された化合物及び使用された細胞株を要約する。
表3:ORY-1001との組合せで試験されるであろう化合物のリスト。*リコリノスタット及びACY-1215としても知られる。
【0190】
2.1 実験デザイン
2.1.1 細胞株及び培養条件
MOLT4細胞は、5%CO雰囲気で制御された加湿インキュベーター内で、RPMI10%FBS培地中37℃で維持された。細胞凍結及び解凍はATCCからの推奨に従って行われた。使用された細胞株の遺伝子プロファイリングは表4で利用できる。
表4:本文書において報告されたALL細胞株の遺伝特性。
【0191】
2.1.2 生存アッセイ(10日間)
より短い処理(96時間)は細胞株の生存に影響を及ぼしていないので(データは示していない)、MOLT4細胞の生存へのORY-1001の効果は10日間の処理の後で評価された。
MOLT4細胞は、予め決められたように(5000細胞/ウェル)、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、最適密度で播種された。3つのウェルは各実験例の条件が指定された;それぞれバックグラウンド補正及び正規化のために、培地のみ及びビヒクル処理されたコントロールも加えられた。播種の後、ORY-1001の8つの1:3段階希釈液を含有する50μLの培地が細胞に加えられた(範囲0.015-100nM)。細胞はその後制御された5%CO2雰囲気において37℃で6日間インキュベートされた。6日目に、100μLのORY-1001の段階希釈液(前述のとおり)を用いた培地又はビヒクルが細胞に加えられた。化合物なしの培地(100μ)はバックグラウンドコントロールに加えられた。
追加の4日間のインキュベーションの後で、細胞生存は、セクション1.1.2で詳述したとおり、アラマーブルー(登録商標)染色を用いて評価された。
【0192】
2.1.3 100nMのORY-1001前処理を用いた9×9マトリックス生存アッセイ
各マトリックスアッセイは1.1.3に記載したとおり、2つのプレートに渡って分配された。マトリックスアッセイは上記セクション(2.1.2)で報告した観察に従って適応された。
MOLT4細胞は、50μLの培地を用いて96ウェルのプレートにおいて、最適密度(5000細胞/ウェル、予め決められたように)で播種された。プレートの縁のウェルは、バックグラウンド補正のために、100μLの培地のみで満たされた。ORY-1001を用いた最初の前処理のために、50μLの培地が細胞に加えられ、結果的に最終体積100μLの培地とされた。マトリックス上の垂直方向に中心にあるORY-1001についてのEC50値を得るためにデザインされた、8回の1:2希釈ステップを通じて得られた、さまざまな濃度のORY-1001を用いて、6日間の前処理は行われた。より広い濃度範囲が試験された化合物(デシタビン及びアザシチジン)について、段階希釈は1:3のステップで行われた。細胞はその後5%COで制御された雰囲気で6日間インキュベートされた。
6日目に、ORY-1001及び目的化合物の双方の段階希釈液を含有する追加の100μLの培地が各ウェルに加えられた(200μL最終体積)。前述のとおり、バックグラウンド補正のために、細胞なしの100μLの培地もプレートの縁に加えられた(200μL最終体積)。図1に示したように、マトリックスは左から右へORY-1001の濃度の上昇を、上から下へ目的化合物の濃度の上昇を表す。2つのプレートに渡って再現性を確認するために、プレート#1の最初と最後の列はプレート#2(図1において赤い矢印によって示された)において繰り返された。マトリックス上の水平方向及び垂直方向に中心にある双方の化合物のEC50を得るためにデザインされた(図1に示したように、右から及び下から5番目に対応するORY-1001及び他の化合物のEC50)、双方の化合物について試験された濃度は、8回の1:2の希釈ステップを通じて得られた256倍の範囲をカバーしていた。マトリックスアッセイにおいて試験された化合物のEC50値は、セクション1.1.2において詳述したように単剤アッセイを通じて以前に得られた。広い濃度範囲が試験された化合物(デシタビン、アザシチジン及びヌトリン3A)について、段階希釈は1:3のステップで行われた。この時点で、細胞は双方の化合物を用いてさらに96時間インキュベートされた。
ORY-1001及び目的化合物を用いた4日間の併用処理の後で(10日目)、アラマーブルー(登録商標)原液は培地で1:20に希釈され、3時間のインキュベートの後、蛍光はTECAN Infinity 2000プレートリーダー(Tecan Group Ltd.,Mannedorf,CH;540-570nm励起波長、580-610nm放出波長)を用いて検出された。各条件について、バックグラウンド補正は培地のみのコントロールの蛍光から計算された。マトリックスアッセイは2回の技術的反復で行われた。
【0193】
2.1.3.1 100nMのORY-1001前処理を用いた9×9マトリックス生存アッセイ(データ解析)
データ解析はセクション1.1.3.1に記載のとおり行われた。
【0194】
2.1.3.2 Calcusynアウトプット
Calcusynソフトウェアのアウトプットはセクション1.1.3.2に記載のとおりである。
【0195】
2.2 結果
2.2.1 ORY-1001単剤
MOLT4細胞の最適増殖条件を決定した後で、セクション2.1.2で記載したように、ビヒクル(DMSO 0.05%)又はORY-1001の1:3段階希釈液(0.015から100nMの範囲)を用いてインキュベーションが行われた。試験された条件において、最も高いORY-1001濃度(100nM)での生存減少は、サブナノモルの範囲のEC50値で、(ビヒクルコントロールに比較して)20%より大きかった。
【0196】
2.2.2 組合せ ORY-1001/ARA-C
ARA-C(6.25-1600nM)及びORY-1001(0.08-20nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。得られた結果は図16に示される。
試験された条件において、MOLT4細胞において、ORY-1001は、0.2を超えるFa値で(n=2)、相乗的にARACの効果を増強する。
【0197】
2.2.3 組合せ ORY-1001/SAHA
SAHA(12.5-3200nM)及びORY-1001(0.08-20nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は2.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図17に示される。
試験された条件において、ORY-1001とSAHAの間の相乗的相互作用は、0.3から0.8の間からなるFa値(n=2)で検出された。
【0198】
2.2.4 組合せ ORY-1001/ロシリノスタット
ロシリノスタット(31.25-8000nM)及びORY-1001(0.08-20nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は2.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図18に示される。
試験された条件において、SAHAについて前に観察されたように、ORY-1001とロシリノスタットの間の相乗作用は、0.2から0.6の間のFa値(n=1)で検出された。
【0199】
2.2.5 組合せ ORY-1001/エンチノスタット
エンチノスタット(15.6-4000nM)及びORY-1001(0.08-20nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は2.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図19に示される。
試験された条件において、SAHAについて以前に観察されたように、ORY-1001とエンチノスタットの間の相乗作用は、0.2から0.9の間のFa値(n=2)で検出された。
【0200】
2.2.6 組合せ ORY-1001/アザシチジン
アザシチジン(13.72nM-90μM)及びORY-1001(0.012-81nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は2.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図20に示される。
試験された条件において、ORY-1001とアザシチジンの間の相乗作用は、0.2から0.4の間の値を持つFa(n=2)の狭い範囲内でのみ検出された。
【0201】
2.2.7 組合せ ORY-1001/デシタビン
デシタビン(1.5nM-10μM)及びORY-1001(0.012-81nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は2.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図21に示される。
試験された条件において、デシタビンはFa値の広い範囲内で(0.1から0.9の間のFA値;n=1)ORY-1001と強力に相乗作用する。
【0202】
2.2.8 組合せ ORY-1001/ABT737
ABT737(19.53-5000nM)及びORY-1001(0.08-20nM)を用いたマトリックス処理が、MOLT-4細胞で、セクション2.1.3に記載したように行われた。データ解析及びコンビネーションインデックスの計算は2.1.3.1に報告したとおりである。得られた結果は図22に示される。
試験された条件において、MOLT4細胞において、ORY-1001とABT737の間の相乗作用は0.6を超えるFa値で(n=2)で検出された。
【0203】
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図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22