(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】出力装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220601BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20220601BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220601BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B60L1/00 L
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2017241689
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
(72)【発明者】
【氏名】円尾 忠司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮太
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033237(JP,A)
【文献】特開2016-211376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の二次電池セルを直列に接続して成るバッテリから、前記複数個の一部の二次電池セルを直列に繋いで生じる電圧を出力する出力装置であって、
前記直列接続する個数の切り替え可能な二次電池セルにそれぞれ設けられ、二次電池セル間で電荷を移送する直列電荷移送回路であって、前記二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、前記二次電池セルに隣接する切り替え可能な二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る直列電荷移送回路と、
前記複数個を分割した2個以上の二次電池セルから成る二次電池セル群にそれぞれ設けられ、二次電池セル群間で電荷を移送する並列電荷移送回路であって、一方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、他方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る並列電荷移送回路と、を備え、
前記並列電荷移送回路は多段に設けられ、
前記一方の二次電池セル群と同電位になる二次電池セルに設けられた前記直列電荷移送回路が、前記一方の二次電池セル群の並列電荷移送回路と前記他方の二次電池セル群の並列電荷移送回路との間に接続されることを特徴とする出力装置。
【請求項2】
複数個の二次電池セルを直列に接続して成るバッテリから、前記複数個の一部の二次電池セルを直列に繋いで生じる電圧を出力する出力装置であって、
前記直列接続する個数の切り替え可能な二次電池セルにそれぞれ設けられ、二次電池セル間で電荷を移送する直列電荷移送回路であって、前記二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、前記二次電池セルに隣接する切り替え可能な二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る直列電荷移送回路と、
前記複数個を分割した2個以上の二次電池セルから成る二次電池セル群にそれぞれ設けられ、二次電池セル群間で電荷を移送する並列電荷移送回路であって、一方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、他方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る並列電荷移送回路と、を備え、
前記一方の二次電池セル群と同電位になる二次電池セルに設けられた前記直列電荷移送回路が、前記一方の二次電池セル群の並列電荷移送回路と前記他方の二次電池セル群の並列電荷移送回路との間に接続される出力装置であって、
前記複数個は2で割り切れ、
前記複数個を2分割した二次電池セル群のそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられ
、
前記複数個を2分割した二次電池セル群の一方には前記直列電荷移送回路が設けられ、他方には前記直列電荷移送回路が設けられないことを特徴とする出力装置。
【請求項3】
複数個の二次電池セルを直列に接続して成るバッテリから、前記複数個の一部の二次電池セルを直列に繋いで生じる電圧を出力する出力装置であって、
前記直列接続する個数の切り替え可能な二次電池セルにそれぞれ設けられ、二次電池セル間で電荷を移送する直列電荷移送回路であって、前記二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、前記二次電池セルに隣接する切り替え可能な二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る直列電荷移送回路と、
前記複数個を分割した2個以上の二次電池セルから成る二次電池セル群にそれぞれ設けられ、二次電池セル群間で電荷を移送する並列電荷移送回路であって、一方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、他方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る並列電荷移送回路と、を備え、
前記一方の二次電池セル群と同電位になる二次電池セルに設けられた前記直列電荷移送回路が、前記一方の二次電池セル群の並列電荷移送回路と前記他方の二次電池セル群の並列電荷移送回路との間に接続される出力装置であって、
前記複数個は3で割り切れ、
前記複数個を3分割した二次電池セル群のそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられ
、
前記複数個を3分割した二次電池セル群の何れかには前記直列電荷移送回路が設けられ、他方には前記直列電荷移送回路が設けられないことを特徴とする出力装置。
【請求項4】
請求項1
の出力装置であって、
前記複数個は6で割り切れ、
前記複数個を2分割した二次電池セル群のそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられ、
前記複数個を3分割した二次電池セル群のそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられ、
前記複数個の一部の二次電池セルを含む側の前記2分割した二次電池セル群を3分割したそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられたことを特徴とする出力装置。
【請求項5】
請求項1の出力装置であって、
前記複数個は50で割り切れ、
前記複数個を2分割した二次電池セル群のそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられ、
前記複数個の一部の二次電池セルを含む側の前記2分割した二次電池セル群を5分割した二次電池セル群のそれぞれに前記並列電荷移送回路が設けられたことを特徴とする出力装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1の出力装置であって、
前記一部の二次電池セル中で直列接続する個数を所定範囲で切り替え可能にする電圧調整回路を備えることを特徴とする出力装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1の出力装置であって、
前記直列電荷移送回路と前記並列電荷移送回路と同一構造の直列電荷移送回路と並列電荷移送回路が更に一組、前記直列電荷移送回路と前記並列電荷移送回路と前記バッテリに対して対称に配置されたことを特徴とする出力装置。
【請求項8】
請求項
6の出力装置であって、
前記電圧調整回路は、
特定の二次電池セルの出力電位と前記特定の二次電池セルよりも電圧の高くなる隣接する二次電池セルの出力電位とをデューティ駆動するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段により構成された電位を平滑化する平滑手段と、を備えることを特徴とする出力装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1の出力装置であって、
前記バッテリは車両用であり、
前記二次電池セルはリチウムイオンセルであることを特徴とする出力装置。
【請求項10】
請求項9の出力装置であって、
前記出力装置が前記バッテリと同一の金属筐体に収容されることを特徴とする出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の二次電池セルを直列に接続して成るバッテリから、複数個の一部の二次電池セルを直列に繋いで生じる電圧を出力する出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、並列に接続された複数のDC/DCコンバータユニットを用い電圧を変換して電気式車両駆動用に用いる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電気式車両駆動用にDC/DCコンバータユニットを用い電圧を変換するため、車両電装品に大電力を供給する際にもDC/DCコンバータユニットの損失が大きいと考えられる。
【0005】
本発明の目的は、バッテリ電圧よりも低い電圧を低損失で供給できる出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る出力装置は、複数個の二次電池セルを直列に接続して成るバッテリから、前記複数個の一部の二次電池セルを直列に繋いで生じる電圧を出力する。そして、前記直列接続する個数の切り替え可能な二次電池セルにそれぞれ設けられ、二次電池セル間で電荷を移送する直列電荷移送回路であって、前記二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、前記二次電池セルに隣接する切り替え可能な二次電池セルに並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る直列電荷移送回路と、前記複数個を分割した2個以上の二次電池セルから成る二次電池セル群にそれぞれ設けられ、二次電池セル群間で電荷を移送する並列電荷移送回路であって、一方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子の間と、他方の二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る並列電荷移送回路と、を備え、前記並列電荷移送回路は多段に設けられ、前記一方の二次電池セル群と同電位になる二次電池セルに設けられた前記直列電荷移送回路が、前記一方の二次電池セル群の並列電荷移送回路と前記他方の二次電池セル群の並列電荷移送回路との間に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の出力装置は、バッテリの二次電池セルの一部の二次電池セルで生じる電圧を出力するため、DC/DCコンバータユニットでの降圧のための損失が生じない。ここで、一部の二次電池セルのみを出力させるため、二次電池セル間の容量バランスを保つための二次電池セル間で電荷を移送する直列電荷移送回路が設けられるが、直列電荷移送回路を構成するスイッチング素子での抵抗性損失が生じる。このため、個々の二次電池セルに設けられ個数の多い直列電荷移送回路に、二次電池セル群に設けられ個数の少ない並列電荷移送回路が接続される。個数の少ない並列電荷移送回路のスイッチング素子が接続されることで、バッテリから出力電圧を出力している二次電池セルまでのスイッチング素子の等価的な抵抗値が下がり、抵抗性損失が小さくなる。これにより、バッテリ電圧よりも低い電圧を低損失で供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の出力装置の動作原理について示す説明図
【
図2】参考例の出力装置での損失について示す説明図
【
図3】第1実施形態に係る出力装置の電荷移送回路の回路図
【
図4】第1実施形態に係る出力装置の電圧調整回路の回路図
【
図5】第1実施形態に係る出力装置のバッテリ電圧と出力電圧を示す図
【
図6】第1実施形態の係るバッテリモジュールの斜視図
【
図7】第1実施形態の改変例に係る出力装置の電圧調整回路の回路図
【
図8】第2実施形態に係る出力装置の電荷移送回路の回路図
【
図9】第3実施形態に係る出力装置の電荷移送回路の回路図
【
図10】第4実施形態に係る出力装置の電荷移送回路の回路図
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の出力装置の動作原理について、
図1を参照して説明する。
ここでは、4個のLi-ionセルCellA、CellB、CellC、CellDからなるバッテリB5が示される。バッテリB5には、過充電が発火原因となるLi-ionセルの電圧を均一にするためのキャパシタースイッチング方式の電荷移送回路E5が取り付けられている。電荷移送回路E5は、個々のセルに並列に接続された一対のスイッチング素子と、一対のスイッチング素子の間と、当該セルに隣接するセルに並列に接続された一対のスイッチング素子の間とに接続されたコンデンサと、から成る。即ち、セルCellAと並列に一対のスイッチング素子(MSOFET)であるMOS1、MOS2が接続され、セルCellBと並列に一対のMOS3、MOS4が接続され、セルCellCと並列に一対のMOS5、MOS6が接続され、セルCellDと並列に一対のMOS7、MOS8が接続される。セルCellAに並列なMOS1、MOS2との間と、セルCellBに並列なMOS1、MOS2との間にコンデンサCrαが接続されている。セルCellBに並列なMOS3、MOS4との間と、セルCellCに並列なMOS5、MOS6との間にコンデンサCrβが接続されている。セルCellCに並列なMOS5、MOS6との間と、セルCellDに並列なMOS7、MOS8との間にコンデンサCrγが接続されている。
【0010】
コンデンサCrαは、セルCellAとセルCellBとの間を、所定デューティ(例えば、30%-50%)で駆動されるMOS1、MOS2、MOS3、MOS4のスイッチング(ON/OFF)により交互に接続される。このとき、セルCellAとセルCellBとの間に電位差があれば、電位の高いセルからコンデンサ、コンデンサから電位の低いセルに電荷が移動して電位差が無いように均一化される。ここで、コンデンサCrαが切り替わる前後でセルCellAの電圧VcaとセルCellBの電圧Vcbはほぼ同じ値なので(コンデンサCrα電圧Vcr=Vca=Vcb)、MOS1、MOS2、MOS3、MOS4は電位差がほとんど無い状態で作動し、スイッチングロスがほとんど発生しない。即ち、電荷移送回路E5は高効率である。同様にして、セルCellBとセルCellCとが電位差が無いように調整され、セルCellCとセルCellDとが電位差が無いように調整され、全てのセルCellA、CellB、CellC、CellDの電位が均一となる。なお、ここでは、スイッチング素子としてMSOFETを用いたが、スイッチング素子としては、MSOFET以外にも、FET、トランジスタ、サイリスタ等種々のスイッチング素子を用いることができる。
【0011】
[参考例]
図2に示される参考例では、18個のセルから成る48Vのバッテリの一部セルから12Vの電圧を出力し、上述した電荷移送回路E5のみでセル間の電圧の均一化を図った場合を示している。下方(低電圧側)のセルC1,図示しないC2、C3、C4、C5等が負荷に接続される。この場合、等価的にn個(n=負荷に接続されないセル数の2倍)の直列に接続されたMOS(MOS1~MOSn)が電流経路となるので、n個のMOSのON抵抗を経由することとなって、抵抗性損失が増大する。
ここで、損失Lossは、流れる電流をI、各MOSのON抵抗をRmosとすると次式で表される:
Loss=I
2×(Rmos1+Rmos2+・・・・Rmosn)
【0012】
[第1実施形態]
図3は、第1実施形態に係る出力装置の電荷移送回路E1A、E1Bを示しをている。
第1実施形態では、18個のLi-ionセルC1~C18からなるバッテリB1が示される。バッテリB1は48Vを出力し、ハイブリッドカーの駆動モータ用電源として用いられている。第1実施形態の出力装置は、48VのバッテリB1から12Vを取り出し、前照灯、ワイパー等の12V電装品へ供給する。セルC1~C18は、C1、C2、C3の3個のセルから成る第1セル群b1と、C4、C5、C6,C7、C8、C9の6個のセルからなる第2セル群b2と、C10、C11、C12の3個のセルから成る第3セル群b3と、C13、C14、C15,C16、C17、C18の6個のセルからなる第4セル群b4とに分けられている。
【0013】
バッテリB1は、図示しないオルタネータによって充電される。オルタネータは、車両電装品に必要な電力を供給するため、図示しないエンジンによって駆動されるとともに、車両減速時には駆動系を介して減速時の運動エネルギーを回生して、バッテリB1を充填するが如く作用する。また、バッテリB1は、図示しない車載されたモータ、インバータ等からなる電気駆動制御システムへ電力を供給して、エンジンの駆動トルクをアシストするように作用する。これによって、車両の加速時には、上記減速時に回生したエネルギーを再利用して走行できるから車両の走行燃費向上を図ることが可能になる。
【0014】
図4は、出力装置の電圧調整回路20を示している。電圧調整回路20は、一部の二次電池セル中で直列接続する個数を所定範囲で切り替え可能にする。即ち、電圧調整回路20は、セルC1、C2、C3の3個のセルから成る第1セル群b1の電圧を出力するためのスイッチ(FET等のスイッチング素子)SW3(8V)と、セルC4の電圧を出力するためのスイッチSW4(10.6V)と、セルC5の電圧を出力するためのスイッチSW5(13.3V)と、セルC6の電圧を出力するためのスイッチSW6(16V)と、セルC7の電圧を出力するためのスイッチSW7(18.7V)と、セルC8の電圧を出力するためのスイッチSW8(21V)と、セルC9の電圧を出力するためのスイッチSW9(24V)と、を備える。ここで、Li-ionバッテリB1は、電池容量によって36V-54Vまで変化する。このバッテリB1の電圧の変化に対して、14V付近の電圧を出力するように、電圧調整回路20はスイッチを切り替える。
【0015】
図3中に示す電荷移送回路E1A、E1Bは、C1、C2、C3の第1セル群b1と、C4、C5、C6,C7、C8、C9の6個のセルからなる第2セル群b2とから電力供給を行うので全セルでの電圧を均一にするためと、電荷移送回路E1A、E1B内での電力損失を低減するために設けられている。
【0016】
電荷移送回路E1Aは、C1-C18の18個のセルを2分割したセルC1-C9からなる二次電池セル群と、セルC10-C18からなる二次電池セル群との間で電荷を移送する2分割並列電荷移送回路E1/2を備える。2分割並列電荷移送回路E1/2は、セルC1-C9からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/21、M/22と、セルC10-C18からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/23、M/24と、スイッチング素子M/21、M/22との間とスイッチング素子M/23、M/24との間に設けられたコンデンサCとから成る。
【0017】
電荷移送回路E1Aは、C1-C18の18個のセル3を分割したセルC1-C6からなる二次電池セル群と、セルC7-C12からなる二次電池セル群と、セルC13-C18からなる二次電池セル群との間で電荷を移送する3分割並列電荷移送回路E1/3を備える。3分割並列電荷移送回路E1/3は、セルC1-C6からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/31、M/32と、セルC7-C12からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/33、M/34と、セルC13-C18からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/35、M/36と、スイッチング素子M/31、M/32との間とスイッチング素子M/33、M/34との間に設けられたコンデンサCと、スイッチング素子M/33、M/34との間とスイッチング素子M/35、M/36との間に設けられたコンデンサCと、から成る。
【0018】
電荷移送回路E1Aは、C1-C9の9個のセル3を分割したセルC1-C3からなる二次電池セル群と、セルC4-C6からなる二次電池セル群と、セルC7-C9からなる二次電池セル群との間で電荷を移送する6分割並列電荷移送回路E1/6を備える。6分割並列電荷移送回路E1/6は、セルC1-C3からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/61、M/62と、セルC4-C6からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/63、M/64と、セルC7-C9からなる二次電池セル群に並列に接続された一対のスイッチング素子M/65、M/66と、スイッチング素子M/61、M/62との間とスイッチング素子M/63、M/64との間に設けられたコンデンサCと、スイッチング素子M/63、M/64との間とスイッチング素子M/65、M/66との間に設けられたコンデンサCと、から成る。6分割並列電荷移送回路E1/6は、全セルC1-C18内で2分割し、電圧を出力するセルC1-C9を3分割したそれぞれにスイッチング素子及びコンデンサからなる電荷移送回路を設ける。
【0019】
直列接続する個数の切り替え可能なセルC4-C9には、それぞれセル間で電荷を移送する直列電荷移送回路E-4~E-9が取り付けられている。即ち、セルC4に設けられる直列電荷移送回路E-4は、セルC4に並列に接続されたスイッチング素子M1、M2と、スイッチング素子M1、M2間とスイッチング素子M3、M4間とに設けられたコンデンサCから成る。セルC5に設けられる直列電荷移送回路E-5は、セルC5に並列に接続されたスイッチング素子M3、M4と、スイッチング素子M1、M2間とスイッチング素子M3、M4間とに設けられたコンデンサCと、スイッチング素子M3、M4間とスイッチング素子M5、M6間とに設けられたコンデンサCとから成る。セルC6に設けられる直列電荷移送回路E-6は、セルC6に並列に接続されたスイッチング素子M5、M6と、スイッチング素子M3、M4間とスイッチング素子M5、M6間とに設けられたコンデンサCと、スイッチング素子M5、M6間とスイッチング素子M7、M8間とに設けられたコンデンサCとから成る。セルC7に設けられる直列電荷移送回路E-7は、セルC7に並列に接続されたスイッチング素子M7、M8と、スイッチング素子M5、M6間とスイッチング素子M7、M8間とに設けられたコンデンサCと、スイッチング素子M7、M8間とスイッチング素子M9、M10間とに設けられたコンデンサCとから成る。セルC8に設けられる直列電荷移送回路E-8は、セルC8に並列に接続されたスイッチング素子M9、M10と、スイッチング素子M7、M8間とスイッチング素子M9、M10間とに設けられたコンデンサCと、スイッチング素子M9、M10間とスイッチング素子M11、M12間とに設けられたコンデンサCとから成る。セルC9に設けられる直列電荷移送回路E-9は、セルC9に並列に接続されたスイッチング素子M11、M12と、スイッチング素子M9、M10間とスイッチング素子M11、M12間とに設けられたコンデンサCとから成る。2分割並列電荷移送回路E1/2の中点MDは、48Vを2分割した電圧、24Vを出力し中点MDと同電位となるセルC9に接続されると共に、該セルC9に設けられる直列電荷移送回路E-9に接続される。
【0020】
電荷移送回路E1Bの回路構成は、
図3中に示される電荷移送回路E1Aと同じであり、バッテリに対して対称に配置され、反転作動される。
【0021】
図3中に示されるように、セルC4からの電圧が出力される際に、電荷移送回路E1A内の電流経路は3種存在する。
経路I1:セルC18端子→2分割並列電荷移送回路E1/2内のスイッチング素子M/24,M/23→セルC9の直列電荷移送回路E-9(スイッチング素子M12、M11)→セルC8の直列電荷移送回路E-8(スイッチング素子M10、M9)→セルC7の直列電荷移送回路E-7(スイッチング素子M8、M7)→セルC6の直列電荷移送回路E-6(スイッチング素子M6、M5)→セルC5の直列電荷移送回路E-5(スイッチング素子M4、M3)→セルC4端子
【0022】
経路I2:セルC18端子→2分割並列電荷移送回路E1/2内のスイッチング素子M/24,M/23→6分割並列電荷移送回路E1/6内のスイッチング素子M/66、M/65→セルC6の直列電荷移送回路E-6(スイッチング素子M6、M5)→セルC5の直列電荷移送回路E-5(スイッチング素子M4、M3)→セルC4端子
【0023】
経路I3:セルC18端子→3分割並列電荷移送回路E1/3内のスイッチング素子M/36,M/35、M/34、M33→セルC6の直列電荷移送回路E-6(スイッチング素子M6、M5)→セルC5の直列電荷移送回路E-5(スイッチング素子M4、M3)→セルC4端子
【0024】
更に、電荷移送回路E1B内に上述した経路I1、I2、I3が形成される。
第1実施形態では、多段に並列電荷移送回路(2分割並列電荷移送回路E1/2、3分割並列電荷移送回路E1/3、6分割並列電荷移送回路E1/6)が形成されることで、スイッチング素子の並列化が図られている。これによって、スイッチング素子による等価抵抗値が低下し、低スイッチング抵抗損失となり、高効率が実現できる。
【0025】
即ち、
図2を参照して上述したように、18個のセルで、第1実施形態と同様に、セルC4で電圧を出力した場合、等価抵抗値は、セルC18に並列なMOS1、MOS2、セルC17に並列ないMOS3、MOS4・・・セルC5に並列なMOSnまでの直列接続になる。これに対して、第1実施形態では、MOSが直並列に多段に接続されることで、等価抵抗値が低減される。
【0026】
シミュレーションの結果、第1実施形態の出力装置の効率は使用セル数等で変化し、97.19%から98.38%であったが、平均して97.5%であった。即ち、2.5%の損失であり、48VをDC-CDコンバータで降圧した場合の5%と比較して半減させることができた。
【0027】
図5は、第1実施形態に係る出力装置のバッテリ電圧V(in)と出力電圧V(out)を示す図である。
ここで、Li-ionバッテリB1のバッテリ電圧V(in)は、電池容量によって36V-54Vの範囲で変化する。このバッテリB1の電圧の変化に対して、
図4を参照して上述した電圧調整回路20は、14V付近の出力電圧を維持するように、スイッチSW3~SW9を切り替える。なお、スイッチ切り替え時の電圧変化幅は、バッテリB1の電圧が最高の54Vの際に最も大きくなり、約3Vとなる。
【0028】
図6は、第1実施形態に係るバッテリモジュールの斜視図である。
ハイブリッド車両に搭載されるバッテリモジュール30は、48ボルトのLi-ionバッテリB1と、
図3中に示された電荷移送回路E1A、E1B、及び、
図4中に示された電圧調整回路20を備える出力装置40とを収容するケーシング36と、ケーシング36に被せられるアルミダイキャストケース32から成る。出力装置40は低損出で発熱量が小さいのでバッテリB1と同一のバッテリモジュール30に収容することができる。更に、出力装置40をバッテリB1に近くに配置することで、バッテリまでのケーブル損失を低減することができる。ここで、アルミダイキャストケースには放熱用のフィンを設けることが望ましい。
【0029】
ここで、バッテリの各セルには、セルバランスを取るため全セルにそれぞれ直列電荷移送回路を設けることもできる。また、直列電荷移送回路の設けられないセルに、特開2016-12510に示される電圧均一化装置に接続して個々のセルで抵抗へ放電してセルバランスを取ることもできる。
【0030】
図7は、第1実施形態の改変例に係る出力装置の電圧調整回路120の回路図である。
第1実施形態の改変例の電圧調整回路は高い電圧精度を備える。
電圧調整回路120は、セルC3の電圧を出力するためのスイッチSW3(8V)と、セルC4の電圧を出力するためのスイッチSW4(10.6V)と、セルC5の電圧を出力するためのスイッチSW5(13.3V)と、セルC6の電圧を出力するためのスイッチSW6(16V)と、セルC7の電圧を出力するためのスイッチSW7(18.7V)と、セルC8の電圧を出力するためのスイッチSW8(21V)と、セルC9の電圧を出力するためのスイッチSW9(24V)とに、該スイッチをデューティ駆動するDutyコントロール122が設けられている。更に、デューティ駆動された電圧を平滑化するための平滑回路を構成するインダクタンスLとコンデンサCとが設けられている。
【0031】
例えば、セルC4の10.6Vの電圧と、セル5の13.3Vの電圧とが、スイッチSW4とスイッチSW5とでデューティ駆動され、12Vの電圧が生成され、L-C平滑回路で平滑化されて出力される。この場合、スイッチSW5に加わる電圧は、セルC5の1セル分(2.7V)である。このため、全セルの合計電圧48Vをスイッチングして降圧するDC-DCコンバンターのスイッチング損失と比較すると、1/セル数=1/18となって低損失となる。
【0032】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る出力装置の電荷移送回路E2A、E2Bを示している。
第2実施形態では、セルC1-C100から構成される100個のLi-ionセルからなるバッテリB2が用いられる。バッテリB2は、直列接続する個数の切り替え可能なセルC4-C9を含む。バッテリB2は260Vを出力し、ハイブリッドカーの駆動モータ用電源として用いられている。
【0033】
電荷移送回路E2Aは、100個のセルを2分割した一方の50個のセルからなる二次電池セル群(切り替え可能なセルC4-C9を含む側)と、他方の50個のセルからなる二次電池セル群との間で電荷を移送する2分割並列電荷移送回路E1/2を備える。また、電荷移送回路E2Aは、一方の50個のセルからなる二次電池セル群(切り替え可能なセルC4-C9を含む側)は、50個のセルを2分割した一方の25個のセルからなる二次電池セル群(切り替え可能なセルC4-C9を含む側)と、他方の25個のセルからなる二次電池セル群との間で電荷を移送する第2の2分割並列電荷移送回路E2.1/2を備える。更に、電荷移送回路E2Aは、一方の25個のセルからなる二次電池セル群は、5分割された各5個のセルからなる二次電池セル群の間で電荷を移送する5分割並列電荷移送回路E1/5を備える。
【0034】
直列接続する個数の切り替え可能なセルC4-C9を含む、上記5分割された各5個のセルからなるセルC1-C10には、それぞれセル間で電荷を移送する直列電荷移送回路E-1~E-10が取り付けられている。電荷移送回路E2Bの回路構成は、図中に示される電荷移送回路E2Aと同じであり、バッテリB2に対して対称に配置され、反転作動される。
【0035】
第2実施形態の出力装置は、電荷移送回路E2A、E2Bが、2分割並列電荷移送回路E1/2、第2の2分割並列電荷移送回路E2.1/2、5分割並列電荷移送回路E1/5、直列電荷移送回路E-1~E-10を構成するMOSが直並列に多段に接続されることで、等価抵抗値が低減される。
【0036】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係る出力装置の電荷移送回路E3A、E3Bを示している。
第3実施形態では、4個のセルC1-C4から構成されるバッテリB3が用いられる。電荷移送回路E3Aは、4個のセルを2分割した一方の2個のセルからなる二次電池セル群と、他方の2個のセルからなる二次電池セル群との間で電荷を移送する2分割並列電荷移送回路E1/2を備える。また、直列接続する個数の切り替え可能なセルC1-C4の各セルC1-C4には、それぞれセル間で電荷を移送する直列電荷移送回路E-1~E-4が取り付けられている。電荷移送回路E3Bの回路構成は、図中に示される電荷移送回路E3Aと同じであり、バッテリB3に対して対称に配置され、反転作動される。
【0037】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係る出力装置の電荷移送回路E4A、E4Bを示している。第4実施形態では、9個のセルC1-C9から構成されるバッテリB4が用いられる。電荷移送回路E4Aは、9個のセルを3分割した3個のセルからなる各二次電池セル群の間で電荷を移送する3分割並列電荷移送回路E1/3を備える。また、直列接続する個数の切り替え可能な各セルC4-C9には、それぞれセル間で電荷を移送する直列電荷移送回路E-4~E-9が取り付けられている。電荷移送回路E4Bの回路構成は、図中に示される電荷移送回路E4Aと同じであり、バッテリB4に対して対称に配置され、反転作動される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述した実施形態の構成で、目標出力電圧が決まれば、対応する出力段位に限定して並列MOS数を増やし、不要部分のMOSを削減することで、更なる効率向上を図ることができる。ここで、出力装置を車両用に適用した例を挙げたが、本発明の出力装置は、バッテリを電源とする船舶、航空機、電動土木機械、電動工具、電子機器等、種々の機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
E1A、E1B 電荷移送回路
20 電圧調整回路
B1 バッテリ
C コンデンサ
C1、C2、C3 セル
E1/2 2分割並列電荷移送回路
E1/3 3分割並列電荷移送回路
E1/6 6分割並列電荷移送回路
E-4 直列電荷移送回路
M/21 スイッチング素子
SW3 スイッチ