(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 13/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
E03D13/00
(21)【出願番号】P 2020195873
(22)【出願日】2020-11-26
(62)【分割の表示】P 2015151983の分割
【原出願日】2015-07-31
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 智弘
(72)【発明者】
【氏名】永沼 信貴
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋式
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、
小便を受ける面を形成している上記ボウル面と、
上記ボウル面内の上方領域に設けられ、洗浄水を上記ボウル面の左右方向に広がるように吐水する吐水装置と、を有し、
上記ボウル面は、上記ボウル面の左右両側の領域から前方側の領域まで下降しながら延び、上記ボウル面の左右両側の領域上を流下する洗浄水の一部を前方側の領域に向けて導く棚部を有し、
上記棚部は、水平断面において上記棚部の外側端部
における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鈍角になるよう形成される領域と、水平断面において上記棚部の外側端部
における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鋭角になるよう形成される領域とを備えていることを特徴とする小便器。
【請求項2】
上記棚部のうち、水平断面において上記棚部の外側端部における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鈍角になるよう形成される領域では、水平断面において上記棚部の内側端部
における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鈍角になるように上記棚部が形成され、
上記棚部のうち、水平断面において上記棚部の外側端部における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鋭角になるよう形成される領域では、水平断面において上記棚部の内側端部
における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鋭角になるように上記棚部が形成される請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
上記棚部のうち、水平断面において上記棚部の外側端部における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鈍角になるよう形成される領域が、
水平断面において上記棚部の外側端部における上記ボウル面と上記棚部とのなす角が鋭角になるよう形成される領域よりも高い位置に設けられている請求項1又は2に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器に係り、特に、洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、小便器において、ボウル面の側壁の内面に導水段部を設け、比較的大量の洗浄水を導水段部により広範囲に導いて洗浄しようとするものが知られている。
また、特許文献1に示すような小便器において、ボウル部の前壁の内側部分の洗浄が不十分となる場合があるため、特許文献2に示すように、ボウル部の導水凸部の凸面の頂部付近に、局所的に突出する突起部を設け、導水凸部の高さを一層高くすることで、導水凸部の外側から内側に向けて流れる洗浄水を跳ね返す小便器が知られている。この小便器には、突起部が比較的大量の洗浄水のうち導水凸部の外側から内側に向けて流れる洗浄水を跳ね返すことにより、洗浄水をボウル部の前壁の内側部分にも流すことができるとされている。
【0003】
また、近年、特許文献3に示すように、ボウル面を正面に向けて形成し、吐水装置から吐水された洗浄水がボウル面の左右方向に広がるように吐水され、ボウル面の広範囲を洗浄しようとする小便器が検討されている。このような小便器においては、左右方向に吐水された洗浄水が比較的なだらかなボウル面に沿って水膜を形成し、ボウル面を洗浄するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-115533号公報
【文献】特開2014-234621号公報
【文献】特許05660239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の節水化の要請に伴い、小便器においても、小便器の洗浄水量を低減させることが要請されている。洗浄水量を低減させるためには、小便器の1回あたりの洗浄水量及び/又は単位時間当たりの洗浄水量を削減する必要がある。小便器の1回あたりの洗浄水量が減少し且つ洗浄時間が一定の場合においては、単位時間当たりの洗浄水量も減少する。洗浄水量が低減されている状態でボウル面を広範囲に洗浄しようとする場合、水量が少なくなるので、ボウル面上に形成される水膜の厚みが薄くなる。このように水膜の厚みが薄くなる場合には、広がった洗浄水の勢いが低下しやすくなり、勢いの低下された洗浄水がボウル面上の段部から流れ落ちやすくなり、洗浄水を段部に沿って前方に導くことができなくなるという問題が生じた。この結果、ボウル面全体を良好に洗浄することができなくなるという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、節水化に伴い洗浄水量が低減され、吐水装置によりボウル面に左右方向に広がるように吐水される洗浄水は比較的水勢が弱く且つ比較的水量の少ない薄い水膜を形成するような場合であっても、棚部の逆傾斜面が、内側向きのボウル面に対して外側に向けられるように傾斜されているため、洗浄水を逆傾斜面からボウル面に向かって流下させることを抑制し、洗浄水を棚部上において前方側の領域に向けて導くことができ、ボウル面の前方側の領域を良好に洗浄することができる。従って、ボウル面全体を良好に洗浄することができる小便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水によりボウル面を洗浄する小便器であって、小便を受ける面を形成しているボウル面と、ボウル面内の上方領域に設けられ、洗浄水をボウル面の左右方向に広がるように吐水する吐水装置と、を有し、ボウル面は、ボウル面の左右両側の領域から前方側の領域まで下降しながら延び、ボウル面の左右両側の領域上を流下する洗浄水の一部を前方側の領域に向けて導く棚部を有し、棚部は、水平断面において棚部の外側端部と接続するボウル面の外側端部接続部分と棚部の外側端部とのなす角が鈍角になるよう形成される領域と、水平断面において棚部の外側端部と接続するボウル面の外側端部接続部分と棚部の外側端部とのなす角が鋭角になるよう形成される領域とを備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、節水化に伴い洗浄水量が低減され、吐水装置によりボウル面に左右方向に広がるように吐水される洗浄水は比較的水勢が弱く且つ比較的水量の少ない薄い水膜を形成するような場合であっても、棚部の順傾斜面が、ボウル面の内側に向けられるように傾斜しているため、洗浄水を内側向きのボウル面に向かって流下させることができ、ボウル面の左右両側の領域を良好に洗浄することができ、さらに、棚部の逆傾斜面が、内側向きのボウル面に対して外側に向けられるように傾斜されているため、洗浄水を逆傾斜面からボウル面に向かって流下させることを抑制し、洗浄水を棚部上において前方側の領域に向けて導くことができ、ボウル面の前方側の領域を良好に洗浄することができる。従って、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
また、好ましくは、ボウル面の外側端部接続部分と棚部の外側端部とのなす角が鈍角になるよう形成される領域では、水平断面において棚部の内側端部と接続するボウル面の内側端部接続部分と棚部の内側端部とのなす角が鈍角になるように棚部が形成され、ボウル面の外側端部接続部分と棚部の外側端部とのなす角が鋭角になるよう形成される領域では、水平断面において棚部の内側端部と接続するボウル面の内側端部接続部分と棚部の内側端部とのなす角が鋭角になるように棚部が形成される。
また、好ましくは、ボウル面の外側端部接続部分と棚部の外側端部とのなす角が鈍角になるよう形成される領域が、ボウル面の外側端部接続部分と棚部の外側端部とのなす角が鋭角になるよう形成される領域よりも高い位置に設けられている。
【0008】
本発明において、好ましくは、ボウル面の棚部の逆傾斜面は、その上端が、吐水装置から吐水され左右方向まで広がった洗浄水の両端が棚部に到達する位置の近傍に形成されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面上で左右方向へ広がった洗浄水の両端が、棚部に到達する位置の近傍に、逆傾斜面の上端が形成される。よって、洗浄水を逆傾斜面から内側に向かって流下させることを抑制し、棚部上を前方側の領域に向けて導くことができる。従って、吐水装置から吐水される洗浄水の水勢が比較的弱くなる場合においても、洗浄水をより前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。従って、洗浄水量が低減される場合においても、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、ボウル面の棚部の逆傾斜面は、その下端が、棚部の中間位置の近傍に形成されている。
このように構成された本発明においては、逆傾斜面の下端が、棚部の中間位置の近傍に形成されているので、洗浄水を逆傾斜面から内側に向かって流下させることを抑制し、且つ、棚部の中間位置の近傍までにおいて棚部に沿って前方側の領域に向かう洗浄水の流れを形成することができ、洗浄水を前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。よって、吐水装置から吐水される洗浄水の水勢が比較的弱くなる場合においても、洗浄水をより前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。従って、洗浄水量が低減される場合においても、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、ボウル面の棚部の逆傾斜面の下端から棚部の下端まで順傾斜面が形成されている。
このように構成された本発明においては、棚部の逆傾斜面が、洗浄水を逆傾斜面からボウル面に向かって流下させることを抑制し、棚部の逆傾斜面上に流れる洗浄水を、逆傾斜面の下端から棚部の下端まで形成される順傾斜面により、ボウル面に向かって徐々に流下させ、ボウル面の前方側の領域を良好に洗浄することができ、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ボウル面の棚部は、上方から順に、上端側の順傾斜面を形成する第1順傾斜面と、逆傾斜面と、下端側の順傾斜面を形成する第2順傾斜面とを備えている。
このように構成された本発明においては、棚部は、上方から順に、第1順傾斜面と、逆傾斜面と、第2順傾斜面とが形成されているので、第1順傾斜面は、洗浄水の一部を、棚部の上部からボウル面を洗浄させるように、ボウル面に沿って流下させることができる。また、逆傾斜面は、洗浄水を逆傾斜面から内側に向かって流下させることを抑制し、洗浄水を棚部上において前方側の領域に向けて導くことができる。また、第2順傾斜面は、逆傾斜面によって前方側に導かれる洗浄水の一部を、棚部の下部からボウル面を洗浄させるように、ボウル面に沿って流下させることができる。従って、ボウル面の前方側の領域を良好に洗浄することができ、さらに、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ボウル面は、ボウル面の上端から下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されている。
このように構成された本発明においては、洗浄水を吐水装置からボウル面上において左右方向へ広がるように吐水させることができ、ボウル面上において左右方向へ広がるように吐水された左右端近傍の洗浄水の水勢が比較的弱くなる場合においても、洗浄水をより前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。従って、洗浄水量が低減される場合においても、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の小便器によれば、節水化に伴い洗浄水量が低減され、吐水装置によりボウル面に左右方向に広がるように吐水される洗浄水は比較的水勢が弱く且つ比較的水量の少ない薄い水膜を形成するような場合であっても、棚部の逆傾斜面が、内側向きのボウル面に対して外側に向けられるように傾斜されているため、洗浄水を逆傾斜面からボウル面に向かって流下させることを抑制し、洗浄水を棚部上において前方側の領域に向けて導くことができ、ボウル面の前方側の領域を良好に洗浄することができ、ボウル面全体を良好に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による小便器を示す全体斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線に沿って見た断面図である。
【
図7】
図5の棚部の逆傾斜面の近傍部分を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
【
図9】
図3のIX-IX線に沿って見た断面図である。
【
図10】
図3のX-X線に沿って見た断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態による小便器の棚部の全体における、第1順傾斜面、逆傾斜面及び第2順傾斜面の傾斜の変化の様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一実施形態による小便器を説明する。先ず、
図1乃至
図3により小便器の基本構造を説明する。
図1は本発明の一実施形態による小便器を示す全体斜視図であり、
図2は
図1の小便器の上面図であり、
図3は
図1の小便器の中央断面図である。
【0016】
図1乃至
図3に示すように、符号1は、本発明の一実施形態による小便器を示し、この小便器1は、陶器製の小便器本体2と、この小便器本体2を洗浄するための自動便器洗浄ユニット4(
図3に図示され、他の図面においては省略する)を備えている。小便器1は自身の最下部が床面Gから浮かされた状態となるように背後の壁面Wに沿って取付けられる壁掛け式の小便器であるが、小便器1は床面上に直接配置される床置き式の小便器であってもよい。
本発明の一実施形態における小便器1は、節水型の小便器として用いることができるように、小便器1の一回の洗浄に、0.5リットル乃至1.2リットルの洗浄水量を使用して一回の洗浄を行えるようになっているが、小便器1の一回の洗浄に、4リットル程度の洗浄水量を使用するような小便器にも適用可能である。このように、便器の種類に応じて使用する洗浄水量が異なっていてもよい。
【0017】
小便器1の小便器本体2は、上方端に上述した自動便器洗浄ユニット4を収納するための収納室6と、この収納室6の前面7から下方に延びるボウル面8と、このボウル面8の底部に形成された排出口10とを備えている。
【0018】
収納室6は、小便器本体2と別体である蓋3により形成されている。また、収納室6の前面7は、詳細は後述するように、後方に向かって傾斜して形成されている。また、排出口10には、目皿板(図示せず)が配置されている。さらに、排出口10は、下流側に配置された排水トラップ管路12及び排水配管13に接続されている。
【0019】
次に、
図3により、自動便器洗浄ユニット4について説明する。
自動便器洗浄ユニット4は、水道等の給水源から洗浄水を供給する給水管14と、給水管14に設けられる流量調整装置16と、給水管14に取り付けられ給水の供給及び停止を行う開閉弁18と、開閉弁18から後述するスプレッダに洗浄水を供給する供給通路20と、供給通路20の先端に取り付けられた吐水部であるスプレッダ22と、使用者の有無を検知する人体検知センサ24と、人体検知センサ24からの検知信号及び所定の制御プログラム等に基づいて開閉弁18等を制御することができる制御ユニット26と、を備えている。
【0020】
流量調整装置16は、給水管14内を通過する洗浄水を適正な一定流量に調整することができる定流量弁である。流量調整装置16は、流量センサ等を使用して洗浄水を適正な流量に調整することができる他の装置により構成されてもよい。流量調整装置16は、制御ユニット26により制御されるように構成されてもよい。開閉弁18は、制御ユニット26の制御信号により給水管14の流路(及び下流側の供給通路20の流路)を開閉する電磁弁である。開閉弁18は、給水の供給及び停止を行うことができる他の流路開閉装置により構成されてもよい。
【0021】
本実施形態においては、自動便器洗浄ユニット4は、給水管14に取り付けられ給水の供給及び停止を行う開閉弁18を備え、制御ユニット26が開閉弁18を開閉して供給通路20への洗浄水の供給開始及び停止を制御している。
【0022】
人体検知センサ24は、小便器1の正面側(前方側)の使用者の有無及び使用者までの距離を検知する赤外線式のセンサである。この人体検知センサ24により使用者が用を足して小便器1から所定距離離れたことを検知した場合に、制御ユニット26から操作信号が発信され、この操作信号により、開閉弁18が開となり、給水管14からスプレッダ22に洗浄水が供給され、小便器1のボウル面8が洗浄されるようになっている。なお、人体検知センサ24は、赤外線式のセンサに限定されず、隠蔽可能な電波式センサ(マイクロ波センサ)であっても良い。
制御ユニット26は、人体検知センサ24の使用者の有無の検知結果を受けて、開閉弁18を開閉させる制御を行う他、予め設定された所定時間、例えば2時間等の時間が経過するごとに、制御ユニット26から操作信号が発信され、この操作信号により、開閉弁18を開状態とする制御を行う。これにより、洗浄水が、給水管14からスプレッダ22に供給され、小便器1のボウル面8が洗浄され、排出口10の下流側に配置された排水トラップ管路12及び排水配管13内の雑菌の繁殖を抑制し、尿石等の付着を抑制する設備保護洗浄を行えるようになっている。
【0023】
図1等に示すように、この自動便器洗浄ユニット4において、スプレッダ22が、小便器本体2の正面部8aの収納室6の前面7に取り付けられている。スプレッダ22は、ボウル面8内の上方領域のほぼ中央に設けられ、洗浄水をボウル面8の中央領域から左右両端部方向まで広がるように吐水する。スプレッダ22は、洗浄水をボウル面8の中央領域から広範囲の左右領域まで広がるように吐水する吐水口部28と、吐水口部28に洗浄水を供給する供給通路30と、を備えている。スプレッダ22は、スプレッダ22から吐水される洗浄水の単位時間あたりの流量を7.0リットル/分~13リットル/分の値の範囲としている。
【0024】
吐水口部28は、内部において供給通路30の前端に接続され、スプレッダ22の外周を下部から左右方向まで扇形に開口するように形成されている。このように扇形に開口する吐水口部28は、洗浄水をボウル面8の左右両端近傍まで広がるように吐水させ、ボウル面8上の広範囲にわたって水流の水膜を形成しながら、水流が流れる領域のボウル面8の表面を洗浄することができる。供給通路30は、給水管14の先端に接続されている。
【0025】
次に、
図1乃至
図3により、小便器1の小便器本体2のボウル面8の構造を説明する。
ボウル面8は、小便器において小便を受けるような内側に向けた面を形成している。ボウル面8は、小便器本体2において、収納室6の前面7と一体構造となっている。ボウル面8は、その上方側の部分において、収納室6の前面7と連続して形成されている。ここで、収納室6の前面7とボウル面8の「連続」は、収納室6の前面7とボウル面8が、面一に、又は、ほぼ面一に形成されていることを意味している。また、完全な面一である必要はなく、例えば、小さな段差があってもよく、収納室6の前面からボウル面8へと流れる洗浄水が剥離することがなければ良い。従って、スプレッダ22から左右方向に拡がるように吐水された洗浄水がボウル面8の上部において滑らかに広がるように水膜を形成しながら流れることができる。
【0026】
ボウル面8は、その上部から下部まで、前面が使用者に対向するように開いた円弧形状(アーチ形状)の正面部8aを有している。ボウル面8は、ボウル面8のうち、スプレッダ22が設けられている上方領域において、従来のようなボウル面から前方に壁状に突出する側面部が設けられておらず、正面部8aのみから形成されている。
【0027】
ボウル面8の正面部8aは、左右方向に連続した凹曲面で形成されている。ボウル面8の正面部8aのみから形成されている上方領域は、平面視において、ボウル面8の左側端部8bから右側端部8cまで1つの曲率半径Rで描かれる1つの円弧(曲率半径Rが途中で概ね変化しないような1つの円弧であり、シングルRと称される円弧)に沿って形成されているシングルR領域を形成している。すなわち、シングルR領域においては曲面がほぼ単一の曲率半径Rを有するほぼ単一の円弧形状により形成されている。このシングルR領域においては、ボウル面8の上端8dから下方に向かうにつれて、円弧の曲率半径が徐々に減少するように形成され、曲率が徐々に増大するように形成されている。ボウル面8のシングルR領域よりさらに下方の領域は、2種類の曲率半径Rを有する円弧の組み合わせ、又は円弧と直線との組み合わせによる複合的な形状部分である複合R領域を形成している。
【0028】
ボウル面8の正面部8aは、比較的深さの浅い凹曲面として形成される。ボウル面8は、スプレッダ22を横切る水平断面において、左側端部8bから小便器1の背面の壁取付面9(本発明の小便器は、上述のように床置き式の水洗大便器においても適用でき、実際に壁面に取付けない場合においても小便器1の背面側の面として壁取付面9と称している)に垂直に降ろした垂線と、ボウル面8の正面部8a(例えば正面部8aの端部における接線)とが左側端部8bにおいて成す角度が、45度より大きく90度未満の範囲の角度に形成されている。ボウル面8は、左右対称に形成されており、右側端部8cにおいても同様の関係が成立する。
また、
図1に示すように、ボウル面8は、スプレッダ22を横切る水平断面において、ボウル面8の左側端部8bと右側端部8cとをつなぐ線分と、この線分を直径とする円弧との間の範囲に位置するように形成されている。
【0029】
ボウル面8の正面部8aは、ボウル面8を水平に切った各断面におけるボウル面8の中央における正面部8aの位置が、ボウル面8の上端8dから下方に向けて徐々に後退するように形成されている。さらに、ボウル面8の正面部8aは、ボウル面8を水平に切った各断面におけるボウル面8の正面部8aの円弧形状が、ボウル面8の上端8dから下方に向けて連続的に曲率半径が小さくなるように形成されている。
このようなボウル面8は、スプレッダ22から吐水された洗浄水をボウル面8上において左右方向へ広がるように水膜を形成させることができる。また、節水化の要請により、スプレッダ22から吐水される洗浄水量が低減される場合においても、比較的流量の少ない洗浄水によってボウル面8上に広範囲に比較的薄い水膜を形成し、ボウル面8を広範囲にわたって洗浄することができる。
また、このようなボウル面8は、ボウル面8の上端8dから下方に向けて徐々に後退して形成されると共に、連続的に曲率半径が小さくなるように形成されているので、ボウル面8の下方において、洗浄水がボウル面8から外部に飛散することをより確実に抑制することができる。
【0030】
また、ボウル面8は、ボウル面8の左側端部8bを含む左側端部と右側端部8cを含む右側端部とが、下方の前端部8eに向かうにつれて、それぞれ前方に突出するように形成されている。
このようなボウル面8は、ボウル面8の右側端部8cと、ボウル面8の左側端部8bとが、下方に向かうにつれて前方に突出するように形成されているので、ボウル面8の下方において、洗浄水がボウル面8から右側端部8c又は左側端部8bを超えて外部に飛散することをより確実に抑制することができる。
【0031】
なお、本発明の一実施形態においては、ボウル面8は、スプレッダ22から吐水された洗浄水がボウル面8の左右方向に広がるように流れながら流下することができる他の形状により形成されてもよい。
【0032】
次に、
図1乃至
図8により、小便器1の小便器本体2のボウル面8の棚部32の構造を説明する。
図4は、
図3のIV-IV線に沿って見た断面図であり、
図5は
図3のV-V線に沿って見た断面図であり、
図6は
図3のVI-VI線に沿って見た断面図であり、
図7は
図5の棚部の逆傾斜面の近傍部分を拡大して示す部分拡大断面図であり、
図8は
図3のVIII-VIII線に沿って見た断面図であり、
図9は
図3のIX-IX線に沿って見た断面図であり、
図10は
図3のX-X線に沿って見た断面図であり、
図11は本発明の一実施形態による小便器の棚部の全体における、第1順傾斜面、逆傾斜面及び第2順傾斜面の傾斜の変化の様子を示す概略図である。
【0033】
ボウル面8は、ボウル面8の左右両側の領域から、下部側且つ前方側の領域まで下降しながら延び、ボウル面8の左右両側の領域上を流下する洗浄水の一部を前方側の領域に向けて導く棚部32を有している。棚部32は、ボウル面8に対して横方向に延びる平面部を形成している。この棚部32の平面部は、水が流れやすいような流路を上面に形成し、洗浄水を棚部32に沿って右側棚部先端部32o又は左側棚部先端部32pまで導くことができるようになっている。従って、棚部32により、比較的少ない洗浄水により、ボウル面8の前方側の領域まで洗浄水を到達させてボウル面8を従来よりも広範囲に確実に洗浄することができる。
【0034】
ボウル面8の棚部32は、棚部32の上部領域において、ボウル面8の内側に向けられるように傾斜している第1順傾斜面32aと、内側向きのボウル面8に対して外側に向けられるように傾斜している逆傾斜面32bと、棚部32の下部領域において、ボウル面8の内側に向けられるように傾斜している第2順傾斜面32cと、を備えている。
ボウル面8の棚部32は、小便器本体2の中心に延びる中央平面Pに対して左右対称な形状により、左右の棚部32がそれぞれ形成されている。
【0035】
図4に示すように、第1順傾斜面32aは、ボウル面8の内側に向けられるように、すなわち、内側向きのボウル面8にしたがうように内側に向けられるように傾斜している。第1順傾斜面32aの傾斜面(平坦面)の向きは、内側向きのボウル面8の向きに順じた内側向き(近傍のボウル面8の内側向きとは向きが若干異なるけれどもボウル面8の内側に向けられている内側向き)となっている。第1順傾斜面32aが、ボウル面8の内側に向けられるとは、第1順傾斜面32aの平坦面が、ボウル面8の内側の中央平面Pに向かう向きに向けられていることをいう。
このように、第1順傾斜面32aは、中央平面P上の位置に向かう向きに向けられている。より具体的には、第1順傾斜面32aの面に直交する垂線V1が、中央平面Pと(中央平面Pを延ばした面と)、交差できるような向きで、内方に向かって延びるように第1順傾斜面32aが内側向きに形成されている。
【0036】
図4に示すように、棚部32の上端部領域における水平断面において、第1順傾斜面32aは、棚部32の第1順傾斜面内側端部32dが第1順傾斜面外側端部32eよりも後方側に位置することにより形成されている。第1順傾斜面内側端部32dが、第1順傾斜面外側端部32eよりも後方側に位置するため、第1順傾斜面32aは、小便器本体2の前後方向において、ボウル面8の正面よりも内側に向けられて形成されている。
図4に示すように、第1順傾斜面32aは、ボウル面8の第1順傾斜面内側端部32dに対するボウル面8の垂線V2よりも、前方側に延びるように形成されている。よって、第1順傾斜面32aと、ボウル面8とは、90°よりも大きな角度、すなわち鈍角の角度a1を形成している。
【0037】
図11においては、第1順傾斜面32aの領域において、ボウル面8上に設けられる第1順傾斜面内側端部32dに対し第1順傾斜面外側端部32eが前方側にずれて配置され、第1順傾斜面内側端部32dと第1順傾斜面外側端部32eを結ぶ平面が内側向きの傾斜面を形成していることが示されている。
すなわち、
図4及び
図11に示すように、本実施形態においては、第1順傾斜面32aは、第1順傾斜面内側端部32dが、第1順傾斜面外側端部32eよりもL1mmの距離後方側となるような位置に形成されている。例えば、L1mmは、0mmよりも大きく且つ4mm以下となるような範囲に形成されている。従って、第1順傾斜面32aは、中央平面Pに向かう内側向きに傾いている平面を形成している。
【0038】
また、
図8に示すように、棚部32の上端部領域における棚部32の傾斜面と直交する方向の断面において、第1順傾斜面32aは、棚部32の第1順傾斜面内側端部32dが第1順傾斜面外側端部32eよりも下方側に位置することにより形成されている。第1順傾斜面内側端部32dが、第1順傾斜面外側端部32eよりも下方側(低い位置)に位置するため、第1順傾斜面32aは、小便器本体2の上下方向において、ボウル面8の内側に向けられて形成されている。第1順傾斜面32aは、水平よりも内向きに傾けられて形成されている。
図8に示すように、第1順傾斜面32aは、第1順傾斜面32aの面に直交する垂線V1が、中央平面Pに向かって延びるように形成されている。よって、第1順傾斜面32aは、ボウル面8の内側に向かって傾いている平坦面を形成している。
【0039】
図11に示すように、第1順傾斜面32aは、棚部32において、棚部32の上端32jより下方側の所定長さにわたって形成されている。例えば、第1順傾斜面32aは、棚部32の上端32jから、棚部32全体の長さの4分の1程度の長さにわたって形成されている。第1順傾斜面32aは、棚部32において、棚部32の上端32jと、逆傾斜面32bの上端32lとの間に形成されている。例えば、棚部32の全長Lを500mmとすれば、逆傾斜面32bの長さは、125mm程度の長さに形成されている。
【0040】
図6に示すように、第2順傾斜面32cは、ボウル面8の内側に向けられるように、すなわち、内側向きのボウル面8にしたがうように内側に向けられるように傾斜している。第2順傾斜面32cの傾斜面(平坦面)の向きは、内側向きのボウル面8の向きに順じた内側向き(近傍のボウル面8の内側向きとは向きが若干異なるけれどもボウル面8の内側に向けられている内側向き)となっている。第2順傾斜面32cが、ボウル面8の内側に向けられるとは、第2順傾斜面32cの平坦面が、ボウル面8の内側の中央平面Pに向かう向きに向けられていることをいう。
このように、第2順傾斜面32cは、中央平面P上の位置に向かう向きに向けられている。より具体的には、第2順傾斜面32cの面に直交する垂線V3が、中央平面Pと(中央平面Pを延ばした面と)、交差できるような向きで、内方に向かって延びるように第2順傾斜面32cが内側向きに形成されている。
【0041】
図6に示すように、棚部32の下部領域における水平断面において、第2順傾斜面32cは、棚部32の第2順傾斜面内側端部32fが第2順傾斜面外側端部32gよりも後方側に位置することにより形成されている。第2順傾斜面内側端部32fが、第2順傾斜面外側端部32gよりも後方側に位置するため、第2順傾斜面32cは、小便器本体2の前後方向において、ボウル面8の正面よりも内側に向けられて形成されている。
図6に示すように、第2順傾斜面32cは、ボウル面8の第2順傾斜面内側端部32fの近傍領域に対するボウル面8の垂線V4よりも、前方側に延びるように形成されている。よって、第2順傾斜面32cと、ボウル面8とは、90°よりも大きな角度、すなわち鈍角の角度a2を形成している。本発明の一実施形態においては、第2順傾斜面32cの角度a2は、第1順傾斜面32aの角度a1よりも大きく形成されている。
【0042】
図11においては、第2順傾斜面32cの領域において、ボウル面8上に設けられる第2順傾斜面内側端部32fに対し第2順傾斜面外側端部32gが前方側にずれて配置され、第2順傾斜面内側端部32fと第2順傾斜面外側端部32gを結ぶ平面が内側向きの傾斜面を形成していることが示されている。
すなわち、
図6及び
図11に示すように、本実施形態においては、第2順傾斜面32cは、第2順傾斜面内側端部32fが、第2順傾斜面外側端部32gよりもL2mmの距離後方側となるような位置に形成されている。例えば、L2mmは、0mmよりも大きく且つ8mm以下となるような範囲に形成されている。従って、第2順傾斜面32cは、中央平面Pに向かう内側向きに傾いている平面を形成している。
図11に示すように、例えば、第2順傾斜面32cは、第2順傾斜面内側端部32fと第2順傾斜面外側端部32gとの距離L2が、第1順傾斜面32aの同様の距離L1よりも大きく形成され、第2順傾斜面32cは第1順傾斜面32aよりもより内側向きに向けられて形成されている。
【0043】
また、
図10に示すように、棚部32の下部領域における棚部32の傾斜面と直交する方向の断面において、第2順傾斜面32cは、棚部32の第2順傾斜面内側端部32fが第2順傾斜面外側端部32gよりも下方側に位置することにより形成されている。第2順傾斜面内側端部32fが、第2順傾斜面外側端部32gよりも下方側(低い位置)に位置するため、第2順傾斜面32cは、小便器本体2の上下方向において、ボウル面8の内側に向けられて形成されている。第2順傾斜面32cは、水平よりも内向きに傾けられて形成されている。
図10に示すように、第2順傾斜面32cは、第2順傾斜面32cの面に直交する垂線V3が、中央平面Pに向かって延びるように形成されている。よって、第2順傾斜面32cは、ボウル面8の内側に向かって傾いている平坦面を形成している。
【0044】
図11に示すように、第2順傾斜面32cは、棚部32において、棚部32の中間点32mより下方側の所定長さにわたって形成されている。例えば、第2順傾斜面32cは、棚部32の中間点32mから、棚部全体の長さLの2分の1程度の長さにわたって形成されている。第2順傾斜面32cは、棚部において、棚部32の中間点32m(逆傾斜面32bの下端)と、棚部32の下端32kとの間に形成されている。例えば、棚部の全長Lを500mmとすれば、第2順傾斜面32cの長さは、250mm程度の長さに形成されている。第2順傾斜面32cは、第1順傾斜面32aよりも長い長さに形成されている。
【0045】
次に、
図5、
図7及び
図9に示すような、逆傾斜面32bについて形成する。逆傾斜面32bは、内側向きのボウル面8に対して外側に向けられるように傾斜している。内側向きのボウル面8に対して外側とは、逆傾斜面32bの面の向きが、ボウル面8の内側方向よりも外側方向に向けられていることをいう。逆傾斜面32bの面に直交する垂線V5が、小便器本体2の中心を通る中央平面Pと交差する向きよりも外側の向き、すなわち中央平面Pと交差しない向きに向かって外方に延びるように逆傾斜面32bが外側向きに形成されている。よって、洗浄水は逆傾斜面32b上に乗りやすく且つ逆傾斜面32b上から内向きに流れ落ちにくく、且つ逆傾斜面32b上を逆傾斜面32bの下方に向かって逆傾斜面32bに沿うように流れやすくなっている。
【0046】
図5に示すように、棚部32の中央より上方側の領域における水平断面において、逆傾斜面32bは、逆傾斜面内側端部32hが逆傾斜面外側端部32iよりも前方側に位置することにより形成されている。逆傾斜面内側端部32hが、逆傾斜面外側端部32iよりも前方側に位置するため、逆傾斜面32bは、ボウル面8の正面よりも外側に向けられて形成されている。逆傾斜面32bは、左右方向(幅方向)において棚部32そのものが逆傾斜面内側端部32hから逆傾斜面外側端部32iまでの領域の全体が平坦に傾斜している面を形成している。また、逆傾斜面32bは、水平断面において、逆傾斜面内側端部32hから逆傾斜面外側端部32iまで一定の傾斜を有する外側向きの傾斜面を形成している。
図7に示すように、逆傾斜面32bは、ボウル面8の逆傾斜面内側端部32hに対するボウル面8の垂線V6と、逆傾斜面32bとの成す角度a3が0度よりも大きく且つ30度以下となるような角度に形成されている。より好ましくは、逆傾斜面32bは、ボウル面8の垂線V6と、逆傾斜面32bとの成す角度a3が0度よりも大きく且つ15度以下となるような角度に形成されている。例えば、逆傾斜面32bは、ボウル面8の垂線V6と、逆傾斜面32bとの成す角度a3が15度となるように形成されている。よって、逆傾斜面32bと、ボウル面8とは、鋭角の角度a4を形成している。
【0047】
図11においては、逆傾斜面32bの領域において、ボウル面8上に設けられる逆傾斜面内側端部32hに対し逆傾斜面外側端部32iが後方側にずれて配置され、逆傾斜面内側端部32hと逆傾斜面外側端部32iを結ぶ平面が外側向きの傾斜面を形成していることが示されている。
すなわち、
図5及び
図11に示すように、本実施形態においては、逆傾斜面32bは、逆傾斜面外側端部32iが、逆傾斜面内側端部32hよりもL3mmの距離後方側となるような位置に形成されている。例えば、L3mmは、0mmよりも大きく且つ5mm以下となるような範囲に形成されている。従って、逆傾斜面32bは、中央平面Pに向かわず外側向きに傾いている平面を形成している。
【0048】
また、
図9に示すように、棚部32の中央より上方側の領域における棚部32の傾斜面と直交する方向の断面において、逆傾斜面32bは、逆傾斜面内側端部32hが逆傾斜面外側端部32iよりも上方側に位置することにより形成されている。逆傾斜面外側端部32iが、逆傾斜面内側端部32hよりも下方側(低い位置)に位置するため、逆傾斜面32bは、小便器本体2の上下方向において、ボウル面8の外側に向けて傾けられて形成されている。逆傾斜面32bは、水平よりも外向きに傾けられて形成されている。
図9に示すように逆傾斜面32bは、逆傾斜面32bの面に直交する垂線V5が、中央平面Pから離れる外側の向き、すなわち中央平面Pと交差しない向きに向かって外方に延びるように逆傾斜面32bが外側向きに形成されている。
【0049】
図11に示すように、逆傾斜面32bは、その上端32lが、スプレッダ22から吐水され左右方向まで広がった洗浄水の両端が棚部32に到達する位置の近傍に形成されている。スプレッダ22から吐水され左右両端部方向まで広がった洗浄水が逆傾斜面32bの上端に集まるように到達し、逆傾斜面32bに流れ込みやすくなっている。また、逆傾斜面32bは、その下端が、棚部32の中間点32mの近傍に形成されている。例えば、逆傾斜面32bは、スプレッダ22から吐水されて左右側端部近傍まで広がった洗浄水の両端近傍の流れF1が、棚部32上に到達する部分から、棚部32の中間点32mの近傍まで形成されている。例えば、逆傾斜面32bは、棚部32において、棚部32の中間点32mの近傍より上方側において棚部32全体の長さLの4分の1程度の長さにわたって形成されている。例えば、棚部32の全長Lを500mmとすれば、逆傾斜面32bの長さは、125mm程度の長さに形成されている。
【0050】
棚部32は、上方から第1順傾斜面32aを形成し、第1順傾斜面32aの下端(逆傾斜面32bの上端32l)から下方側において、逆傾斜面32bを形成し、逆傾斜面32bの下端32mから下方側において、第2順傾斜面32cを形成するようになっている。すなわち、棚部32は、上方から順番に、上端側の順傾斜面を形成する第1順傾斜面32a、逆傾斜面32b、下端側の順傾斜面を形成する第2順傾斜面32cを有している。
【0051】
図4、
図5及び
図6に示すように、上面視で、逆傾斜面32bは、第1順傾斜面32aの位置よりも前方側に形成されている。また、上面視で、棚部32は、小便器1の後方側から、前方側に向かって、第1順傾斜面32a、逆傾斜面32b、第2順傾斜面32cの順に形成されている。
【0052】
本発明の一実施形態の小便器1の棚部32の逆傾斜面32bを配置することにより、洗浄水を逆傾斜面32bからボウル面8に向かって流下させることを抑制し、棚部32上を前方側の領域に向けて導くことができる。
また、逆傾斜面32bを第2順傾斜面32cの上流側に配置することにより、逆傾斜面32bからボウル面8に向かって流下させることを抑制した洗浄水を、第2順傾斜面32cからボウル面8に向かって徐々に流下させることができる。また、逆傾斜面32bを第1順傾斜面32aと第2順傾斜面32cとの間に配置することにより、第1順傾斜面32a及び第2順傾斜面32cから、洗浄水をボウル面8のより広い範囲にわたって流下させることができる。
【0053】
ボウル面8は、ボウル面8の前端部8eの領域において、右側の壁面と左側の壁面が鋭角を形成するように接続されている。ボウル面8の下部の前端部8eが鋭角に前方に突出することにより、使用者の足の間に前端部8eが位置しやすく、使用者が小便器1に近づいて用を足しやすくなっている。従って、ボウル面8の棚部32は、ボウル面8の前端部8eの近傍の領域において、右側の棚部32の向きと、左側の棚部32の向きとの成す角が鋭角に形成されている。
【0054】
ボウル面8の棚部32は、さらに、ボウル面8の前端部8eの領域において棚部32を右側の棚部32と左側の棚部32とに分断することにより棚部のない領域36を形成する凹部32nを備えている。
棚部32の凹部32nは、小便器本体2の中央の先端側に形成されている。棚部32の凹部32nは、棚部32を所定長さ離間させるように分断している。
図2に示すように、右側の棚部32の先端の右側棚部先端部32oと、左側の棚部32の先端の左側棚部先端部32pとの間が離間するように形成されている。
【0055】
凹部32nの棚部のない領域36は、右側棚部先端部32oと、左側棚部先端部32pとの内側(右側棚部先端部32oと、左側棚部先端部32pとの間)に形成されている。棚部のない領域36とは、右側棚部先端部32oと左側棚部先端部32pとを連続した平面によってほぼ平坦に接続するような棚部、又は、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの上面の一部を互いに延長して接続するような棚部も存在していない。さらに、棚部のない領域36においては、右側棚部先端部32oと左側棚部先端部32pとの間を接続する、比較的幅の狭い棚部も形成されていない。よって、棚部のない領域36においては、右側棚部先端部32o上に形成される流路と、左側棚部先端部32p上に形成される流路とを合流させるような平坦な流路を形成する棚部は形成されていない。
【0056】
凹部32nの棚部のない領域36は、その前端が、ボウル面8の前端部8eの内側向き面8fにより形成されている。
ボウル面8の前端部8eの内側向き面8fの棚部のない領域36の部分には棚部が形成されておらず、内側向き面8fの上縁部8gから下端部8hまで比較的平坦なボウル面8を形成している。ボウル面8は、内側向き面8fの上縁部8gから下端部8hまで、横向きに突出する棚部が存在しないような、比較的滑らかな曲線形状により形成されていてもよい。
【0057】
また、凹部32nの棚部のない領域36は、その左右両側が、左側棚部先端部32pから下方に延びる左側縦壁32qと、右側棚部先端部32oから下方に延びる右側縦壁32rとにより形成されている。
このように、凹部32nの棚部のない領域36は、左側縦壁32qと、右側縦壁32rとにより挟まれた凹形状の内側領域を形成している。凹部32nの棚部のない領域36の底面を形成する凹部底面36aは、ボウル面8の底面8iにより形成されている。ボウル面8の底面8iは、ボウル面8の最も低い部分の底面を形成している。ボウル面8の底面8iは、ボウル面8の下部において横向きに排出口10に延びる比較的平坦且つ緩やかな傾斜の曲面である。凹部32nの凹部底面36aをボウル面8の底面8iまで比較的低い位置に形成することができる。
図3に示すように、凹部底面36aとボウル面8の底面8iとはほぼ平坦に接続され、ほぼ面一の面(緩やかな曲面)を形成している。
従って、棚部のない領域36は、左右両側の右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの棚部の上面の位置が、凹部底面36aの高さから比較的高い高さ位置となっている。よって、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの棚部の上面と、凹部底面36aとの間において、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pのそれぞれの上面を中央向きに流れてくる洗浄水が、重力を受けて、棚部のない領域36内に向かって流れ落ち、これらの棚部先端部の上面より低い位置において合流する(衝突する)ように形成されている。
なお、変形例として、凹部底面36aは、ボウル面8の底面8iに限られず、ボウル面8の底面8iより高い位置に他の面として形成されていてもよい。
【0058】
従来の右側棚部先端部と、左側棚部先端部とが前端部において接続されている場合においては、左右両側の棚部を流下する洗浄水が合流する合流位置は、その小便器本体2の中央の棚部の接続位置となっている。このとき、先端部の上縁部から合流位置までの距離は、先端部の上縁部から右側棚部先端部又は左側棚部先端部近傍までの距離となっている。 これに対し、本発明において、右側棚部先端部32oと、左側棚部先端部32pとの間に棚部のない領域36が形成されている場合においては、左右両側の棚部32を流下する洗浄水が合流する合流位置C1は、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの上面より低い位置となっており、棚部のない領域36の内部の位置となっている。このとき、前端部8eの上縁部8gから合流位置C1までの距離は距離L1となっている。この上縁部8gから合流位置C1までの距離は距離L1は、従来の上縁部から合流位置までの距離よりも長くなっている。従って、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pを比較的高い位置に配置しようとする場合、例えば、前端部8eと、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pとの距離が10mm~60mmの範囲であるような場合にも、洗浄水が前端部8eを超えて外部に飛び出しにくくすることができる。
【0059】
左右から合流する(衝突する)洗浄水が各棚部先端部の上面より低い位置において合流するので、洗浄水が、仮に水の衝突による飛び散りを生じたとしても、前端部8eを乗り越えて小便器本体2の外側まで飛び出にくくなっている。また、洗浄水が、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pのそれぞれの上面から、合流位置C1に向かって、垂直方向下方向きの流れを形成していることから、合流した洗浄水から生じる水飛びについても下方向きに生じやすくなっており、洗浄水が、上方向きに、前端部8eを乗り越えて小便器本体2の外側まで飛び出にくくなっている。本発明においては、合流時において、合流する洗浄水の流れの垂直方向下方向きの方向成分が、従来の棚部が存在している場合における合流時と比べて、大きくなっている。
【0060】
次に、本発明の一実施形態による小便器の動作を説明する。
先ず、本発明の一実施形態による小便器1による小便洗浄動作の流れを説明する。
通常、使用者が小便器1の前に立つと、人体検知センサ24が使用者の存在を検出して検出情報を制御ユニット26に送り、制御ユニット26は使用者の存在を認識する。使用者が小便器1のボウル面8に放尿を終え、放尿を済ませた使用者が小便器1の前から立ち去り、制御ユニット26が非検出状態となると、制御ユニット26は使用者が小便器1から立ち去ったと判断して、制御ユニット26が小便洗浄を開始する。
【0061】
制御ユニット26は、小便洗浄動作においては、開閉弁18に制御信号を送って開閉弁18を開き、給水管14から供給される洗浄水を供給通路20に供給させる。供給通路20に供給された洗浄水は、スプレッダ22の吐水口部28から、ボウル面8の中央領域から広範囲の左右領域まで広がるように吐水される。
図1において、吐水口部28から吐水され、左右側端部近傍まで広がった洗浄水の流れF1を示す。
【0062】
スプレッダ22の吐水口部28は扇形形状に比較的広く開口するように形成されているので、吐水口部28から吐水される洗浄水は、ボウル面8の左右上方から中央下方まで広範囲に吐水される。
スプレッダ22から吐水された洗浄水は、ボウル面8の正面部8aの比較的深さの浅い凹曲面の形状により、ボウル面8の中央部から左右両端部方向まで導かれることができる。節水化の要請により洗浄水量が低減される場合において、スプレッダ22から吐水された洗浄水は、左右方向に広く吐水されるものの、水量が比較的少なく、水膜が薄く形成され、水勢も比較的弱いため、ボウル面8全体に効果的に水膜を形成できるように誘導される。
【0063】
スプレッダ22から吐水された洗浄水は、ボウル面8の正面部8a上を左右方向に広がるように流れながら流下し、棚部32に到達する。
棚部32の上端部領域に設けられた第1順傾斜面32aに流下した洗浄水は、その一部は、矢印F2に示すように、
図8に示すような第1順傾斜面32aの平坦面方向に沿って、棚部32上を前方側(逆傾斜面32b側)に向かって流れる。一方、第1順傾斜面32aに流下した洗浄水のうち他の部分は、矢印F3に示すように、第1順傾斜面32aの内側向きの傾きに沿って、さらに下方のボウル面8に広がるように流下する。第1順傾斜面32aは、逆傾斜面32bよりも高い位置に位置し、洗浄水が第1順傾斜面32aからボウル面8上を広がるように流下するので、逆傾斜面32bの下方側のボウル面8についても、第1順傾斜面32aから流下する洗浄水により十分に洗浄することができる。このように、第1順傾斜面32aからボウル面8に流下する洗浄水によりボウル面8の両側の領域を広範囲に洗浄することができる。
【0064】
流れF1に示すように、棚部32の上部領域に設けられた逆傾斜面32bに流下した洗浄水は、概ね、
図5及び
図9に示すように、矢印F4に示すように、外側向きに傾斜している逆傾斜面32b上から棚部32の下流側に向かって棚部32上を流れる。逆傾斜面32bは、ボウル面8に対し外向きに形成されているので、逆傾斜面32b上に存在する洗浄水は、内側のボウル面8に向かって流れにくくなっている。従って、洗浄水が逆傾斜面32bから内側のボウル面8に向かって流れることが抑制されている。洗浄水は、矢印F4に示すように、逆傾斜面外側端部32i側に寄って棚部32の下流側(第2順傾斜面32c側)に向かって流れやすくなっている。
逆傾斜面32bは、ボウル面8を流下してきた洗浄水の集まりやすい逆傾斜面32bの上端32lから、中間点32mまでの所定の距離にわたって形成されているので、洗浄水の流れが、矢印F4に示すような向きに指向され、逆傾斜面32bの終了後も下方の前方側に指向された流れを形成しやすくすることができる。
【0065】
流れF4に示すように、逆傾斜面32bの下端32mから第2順傾斜面32c流入した洗浄水は、その一部は、矢印F5に示すように、
図6及び
図10に示すような第2順傾斜面32cの平坦面方向に沿って、棚部32上を下端32kに向かって流れる。棚部32上を下端32kまで流下する洗浄水によりボウル面8の前方側の前端近傍の領域を広範囲に洗浄することができる。
一方、第2順傾斜面32cに流入した洗浄水のうち他の部分は、矢印F6に示すように、第2順傾斜面32cの内側向きの傾きに沿って、さらに下方のボウル面8に広がるように流下する。このように、第2順傾斜面32cからボウル面8に流下する洗浄水によりボウル面8の前方側の両側の領域を広範囲に洗浄することができる。
【0066】
このように、スプレッダ22の吐水口部28から吐水される洗浄水は、スプレッダ22から放射状方向に吐水された後、棚部32によって、ボウル面8の面上を左右両側の領域から前方側の領域まで洗浄できない部分を生じさせないように広範囲に流れ、ボウル面8を流下しながらボウル面8全体の良好な洗浄を行うことができる。
また、節水化に伴い洗浄水量が低減され、スプレッダ22によりボウル面に左右方向に広がるように吐水される洗浄水が比較的水勢が弱く且つ比較的水量の少ない薄い水膜を形成するような場合であっても、棚部32によって、ボウル面8の面上を左右両側の領域から前方側の領域まで洗浄できない部分を生じさせないように広範囲に流れ、ボウル面8を流下しながらボウル面8全体の良好な洗浄を行うことができる。
【0067】
図1乃至
図3において、流れF7に示すように、右側の棚部32の右側棚部先端部32oの上面から凹部32nに流入する洗浄水と、左側の棚部32の左側棚部先端部32pの上面から凹部32nに流入する洗浄水とが凹部32nの棚部のない領域36において合流される。凹部32nに流入する洗浄水は、棚部のない領域36において棚部が存在していないので、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pから斜め下方に自由落下するように流下する。この際、前方側の洗浄水の流れは、前端部8eの内側向き面8fに沿って流れながら、前端部8eの内側向き面8fを良好に洗浄することができ、且つ内側向き面8fに棚部が形成されていないので、内側向き面8fに沿って下端部8hまで流下することができる。
主に、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pから棚部のない領域36に流下する洗浄水は、やや下方の空中における合流位置(合流領域)C1においてぶつかり合うように混ざり合い凹部底面36aに向かって流下する。
また、比較的多くの洗浄水が、凹部32nの内側向き面8f、左側縦壁32q又は右側縦壁32rのいずれかに沿うように流れ落ちることとなるため、洗浄水同士が落下中に衝突又は合流した場合においても、衝突等による水跳ね、飛散等が生じにくく、生じたとしても前端部8eを乗り越えて外部に飛び出しにくくなっている。
【0068】
右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの上面より下方の合流位置C1において合流する洗浄水が、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの上面より合流位置C1まで落下している分、合流により洗浄水の飛散を生じさせる場合にも、前端部8eの上縁部8gを乗り越えにくくすることができ、洗浄水がボウル面8から外部に飛散することを抑制することができる。
右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの上面より棚部のない領域36に流下した洗浄水は、凹部底面36aに着水する。凹部底面36aはボウル面8の底面8iにより形成されているので、洗浄水は、右側棚部先端部32o及び左側棚部先端部32pの上面よりボウル面8の底面8iまでボウル面8内において可能な限り低くまで流下することができ、さらに、合流位置C1及び凹部底面36aへの着水位置が比較的低く位置される。従って、合流位置C1及び凹部底面36aの着水位置において生じやすい洗浄水の飛散が前端部8eの上縁部8gを超えて外部に到達することを抑制することができる。
【0069】
ボウル面8を流下した洗浄水は、排出口10より排出され、この下流の排水トラップ管路12を通過し、さらに下流の排水配管13に向かって流れる。スプレッダ22の吐水口部28からの所定の瞬間流量の吐水が一定時間継続されると、制御ユニット26は、開閉弁18を閉止して、スプレッダ22からの吐水を終了させ、小便洗浄動作を終了させる。
【0070】
次に、上述した本発明の第1実施形態による小便器の作用効果を説明する。
上述した本実施形態による小便器1によれば、節水化に伴い洗浄水量が低減され、スプレッダ22によりボウル面8に左右方向に広がるように吐水される洗浄水は比較的水勢が弱く且つ比較的水量の少ない薄い水膜を形成するような場合であっても、棚部32の第1順傾斜面32aが、ボウル面8の内側に向けられるように傾斜しているため、洗浄水を内側向きのボウル面8に向かって流下させることができ、ボウル面8の左右両側の領域を良好に洗浄することができ、さらに、棚部32の逆傾斜面32bが、内側向きのボウル面8に対して外側に向けられるように傾斜されているため、洗浄水を逆傾斜面32bからボウル面8に向かって流下させることを抑制し、洗浄水を棚部32上において前方側の領域に向けて導くことができ、ボウル面8の前方側の領域を良好に洗浄することができる。従って、ボウル面8全体を良好に洗浄することができる。
【0071】
また、本実施形態による小便器1においては、ボウル面8上で左右方向へ広がった洗浄水の両端が、棚部32に到達する位置の近傍に、逆傾斜面32bの上端が形成される。よって、洗浄水を逆傾斜面32bから内側に向かって流下させることを抑制し、棚部32上を前方側の領域に向けて導くことができる。従って、スプレッダ22から吐水される洗浄水の水勢が比較的弱くなる場合においても、洗浄水をより前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。従って、洗浄水量が低減される場合においても、ボウル面8全体を良好に洗浄することができる。
【0072】
また、本実施形態による小便器1においては、逆傾斜面32bの下端が、棚部32の中間点32mの近傍に形成されているので、洗浄水を逆傾斜面32bから内側に向かって流下させることを抑制し、且つ、棚部32の中間点32mの近傍までにおいて棚部32に沿って前方側の領域に向かう洗浄水の流れを形成することができ、洗浄水を前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。よって、スプレッダ22から吐水される洗浄水の水勢が比較的弱くなる場合においても、洗浄水をより前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。従って、洗浄水量が低減される場合においても、ボウル面8全体を良好に洗浄することができる。
【0073】
また、本実施形態による小便器1においては、棚部32の逆傾斜面32bが、洗浄水を逆傾斜面32bからボウル面8に向かって流下させることを抑制し、棚部32の逆傾斜面32b上に流れる洗浄水を、逆傾斜面32bの下端から棚部32の下端32kまで形成される第2順傾斜面32cにより、ボウル面8に向かって徐々に流下させ、ボウル面8の前方側の領域を良好に洗浄することができ、ボウル面8全体を良好に洗浄することができる。
【0074】
また、本実施形態による小便器1においては、棚部32は、上方から順に、第1順傾斜面32aと、逆傾斜面32bと、第2順傾斜面32cとが形成されているので、第1順傾斜面32aは、洗浄水の一部を、棚部32の上部からボウル面8を洗浄させるように、ボウル面8に沿って流下させることができる。また、逆傾斜面32bは、洗浄水を逆傾斜面32bから内側に向かって流下させることを抑制し、洗浄水を棚部32上において前方側の領域に向けて導くことができる。また、第2順傾斜面32cは、逆傾斜面32bによって前方側に導かれる洗浄水の一部を、棚部32の下部からボウル面8を洗浄させるように、ボウル面8に沿って流下させることができる。従って、ボウル面8の前方側の領域を良好に洗浄することができ、さらに、ボウル面8全体を良好に洗浄することができる。
【0075】
また、本実施形態による小便器1においては、洗浄水をスプレッダ22からボウル面8上において左右方向へ広がるように吐水させることができ、ボウル面8上において左右方向へ広がるように吐水された左右端近傍の洗浄水の水勢が比較的弱くなる場合においても、洗浄水をより前方側の領域に向けて導きやすくすることができる。従って、洗浄水量が低減される場合においても、ボウル面8全体を良好に洗浄することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 小便器
2 小便器本体
3 蓋
4 自動便器洗浄ユニット
6 収納室
7 前面
8 ボウル面
8a 正面部
8b 左側端部
8c 右側端部
8d 上端
8e 前端部
8f 内側向き面
8g 上縁部
8h 下端部
8i 底面
9 壁取付面
10 排出口
12 排水トラップ管路
13 排水配管
14 給水管
16 流量調整装置
18 開閉弁
20 供給通路
22 スプレッダ
24 人体検知センサ
26 制御ユニット
28 吐水口部
30 供給通路
32 棚部
32a 第1順傾斜面
32b 逆傾斜面
32c 第2順傾斜面
32d 第1順傾斜面内側端部
32e 第1順傾斜面外側端部
32f 第2順傾斜面内側端部
32g 第2順傾斜面外側端部
32h 逆傾斜面内側端部
32i 逆傾斜面外側端部
32j 上端
32k 下端
32l 上端
32m 中間点
32n 凹部
32o 右側棚部先端部
32p 左側棚部先端部
32q 左側縦壁
32r 右側縦壁
36 棚部のない領域
36a 凹部底面
a1 角度
a2 角度
a3 角度
a4 角度
C1 合流位置
G 床面
L 全長
L1 距離
L2 距離
P 中央平面
W 壁面