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特許7082361地域内共助巡回支援システム、地域内共助巡回支援装置、地域内共助巡回支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】地域内共助巡回支援システム、地域内共助巡回支援装置、地域内共助巡回支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20220601BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20220601BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20220601BHJP
【FI】
G06Q10/04 310
G06Q50/26
G06N99/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017003417
(22)【出願日】2017-01-12
(65)【公開番号】P2018112929
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2019-11-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年10月15日 第25回地理情報システム学会学術研究発表大会講演論文集 講演番号C-4-4
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」、「首都圏複合災害への対応・減災支援技術」、「アプリケーションの技術開発支援ならびに実証実験」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】508169476
【氏名又は名称】株式会社ベクトル総研
(74)【代理人】
【識別番号】100175064
【弁理士】
【氏名又は名称】相澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】大佛 俊泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 将
(72)【発明者】
【氏名】沖 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】末松 孝司
【審査官】緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-241340(JP,A)
【文献】特開2003-026335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0059227(US,A1)
【文献】特開2008-033433(JP,A)
【文献】特開2004-062363(JP,A)
【文献】特開平10-105611(JP,A)
【文献】特開2012-203532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0302092(US,A1)
【文献】特開2013-033346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06N 3/00-3/12,7/08-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援装置であって、
複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部と、
前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチング部と、
前記巡回者が前記マッチング部により割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部と、
前記巡回路決定部が決定した前記巡回路を出力する出力部と、を有し、
前記マッチング部は、前記巡回者と前記巡回先との実距離及び親密度α(0<α<1)に基づいて定義される距離指標L:
距離指標L=実距離×(1-α)
を用いて前記巡回先の割り当てを行う
地域内共助巡回支援装置。
【請求項2】
複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援装置であって、
複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部と、
前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチング部と、
前記巡回者が前記マッチング部により割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部と、
前記巡回路決定部が決定した前記巡回路を出力する出力部と、を有し、
前記巡回路決定部は、ある前記巡回者iとある前記巡回先jとの実距離Dij前記巡回者iと前記巡回先jとが親密であるほど大きな値をとる親密度Fijと、前記巡回先jに早く向かう必要性が高いほど大きな値をとる緊急度Uijと、に基づいて定義される効率性指標Yijを全ての前記巡回者i及び前記巡回先jについて計算し、全ての前記効率性指標Yijを合算した指標Yが最大となるように前記巡回路の決定を行う
地域内共助巡回支援装置。
【請求項3】
前記巡回路決定部は、複数の前記巡回者の最大巡回時間Z1、複数の前記巡回者の平均巡回時間Z2又は複数の前記巡回者の負担格差Z3:
負担格差Z3=(最大巡回時間Z1-複数の前記巡回者の最小巡回時間)/最大巡回時間Z1
のいずれかが所定の閾値を超える場合、前記マッチング部による前記巡回先の割り当て又は前記巡回路決定部による前記巡回路の決定を再度実行させる
請求項1又は2記載の地域内共助巡回支援装置。
【請求項4】
前記マッチング部は、所定の属性グループに属する前記巡回者と前記巡回先との間でのみクローズドマッチングを行い、
前記巡回者又は前記巡回先が複数の前記属性グループに属している場合には、前記属性グループに設定された優先順位の高い順に前記クローズドマッチングを行う
請求項1乃至3いずれか1項記載の地域内共助巡回支援装置。
【請求項5】
前記マッチング部は、所定の属性グループに属する前記巡回者と前記巡回先との間でのみクローズドマッチングを行い、
好適な結果が得られなかった場合には、複数の前記属性グループを統合して前記クローズドマッチングを行う
請求項1乃至3いずれか1項記載の地域内共助巡回支援装置。
【請求項6】
複数の巡回者及び複数の巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部と、
前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチング部と、
前記巡回者が前記マッチング部により割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部と、
前記巡回路決定部が決定した前記巡回路を出力する出力部と、を有し、
前記マッチング部は、前記巡回者と前記巡回先との実距離及び親密度α(0<α<1)に基づいて定義される距離指標L:
距離指標L=実距離×(1-α)
を用いて前記巡回先の割り当てを行う
地域内共助巡回支援装置と、
前記出力部から前記巡回路を受信し、少なくとも前記巡回者が次に訪問すべき前記巡回先を出力する端末装置と、を含む
地域内共助巡回支援システム。
【請求項7】
複数の巡回者及び複数の巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部と、
前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチング部と、
前記巡回者が前記マッチング部により割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部と、
前記巡回路決定部が決定した前記巡回路を出力する出力部と、を有し、
前記巡回路決定部は、ある前記巡回者iとある前記巡回先jとの実距離Dij、前記巡回者iと前記巡回先jとが親密であるほど大きな値をとる親密度Fijと、前記巡回先jに早く向かう必要性が高いほど大きな値をとる緊急度Uijと、に基づいて定義される効率性指標Yijを全ての前記巡回者i及び前記巡回先jについて計算し、全ての前記効率性指標Yijを合算した指標Yが最大となるように前記巡回路の決定を行う
地域内共助巡回支援装置と、
前記出力部から前記巡回路を受信し、少なくとも前記巡回者が次に訪問すべき前記巡回先を出力する端末装置と、を含む
地域内共助巡回支援システム。
【請求項8】
複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援方法であって、
コンピュータが、
複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力ステップと、
前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチングステップと、
前記巡回者が前記マッチングステップで割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定ステップと、
前記巡回路決定ステップで決定した前記巡回路を出力する出力ステップと、を有し、
前記マッチングステップでは、前記巡回者と前記巡回先との実距離及び親密度α(0<α<1)に基づいて定義される距離指標L:
距離指標L=実距離×(1-α)
を用いて前記巡回先の割り当てを行う
地域内共助巡回支援方法。
【請求項9】
複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援方法であって、
コンピュータが、
複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力ステップと、
前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチングステップと、
前記巡回者が前記マッチングステップで割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定ステップと、
前記巡回路決定ステップで決定した前記巡回路を出力する出力ステップと、を有し、
前記巡回路決定ステップでは、ある前記巡回者iとある前記巡回先jとの実距離Dij前記巡回者iと前記巡回先jとが親密であるほど大きな値をとる親密度Fijと、前記巡回先jに早く向かう必要性が高いほど大きな値をとる緊急度Uijと、に基づいて定義される効率性指標Yijを全ての前記巡回者i及び前記巡回先jについて計算し、全ての前記効率性指標Yijを合算した指標Yが最大となるように前記巡回路の決定を行う
地域内共助巡回支援方法。
【請求項10】
コンピュータに請求項8又は9記載の方法を実行させるためのプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地域内共助巡回支援システム、地域内共助巡回支援装置、地域内共助巡回支援方法及びプログラムに関し、例えば災害発生時等において効率的かつ動的に地域内巡回を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大地震をはじめとする災害発生直後等は、火災や家屋倒壊などが同時多発的に発生し、消防隊や救急隊が不足することが予想される。このとき、怪我の手当や安否確認といった救助、救出、支援を必要とする地域内の人など(巡回先という)を、家族や地域住民など(巡回者という)が巡回する必要が生じる。このような巡回ニーズに十分対応するには、巡回先を漏れなく効率的に巡回できるよう、巡回者による共助が重要である。
【0003】
しかしながら、災害はいつ発生するか分からないため、事前に巡回者に任務を割り当てたとしても、必ずしも当該任務に就けるとは限らない。また、巡回者となる人員や物資、そして、巡回先となるこれらを必要とする人や場所は、災害発生等を契機としてはじめて明らかとなる場合も多く、また時間の経過に応じて動的に変化することも多いため、事前に策定した行動ルールや、SNSなどの既存の情報通信手段による情報共有だけでは、多様な巡回ニーズに十分対応できない。
【0004】
同様の問題は、支援物資や人員の割り当て、瓦礫処理の際の人員や機材配置、その他復旧・復興活動のためのタスク配分、及び自治体、NPO、警備会社、事業所など様々な事業主体による見回り、点検、監視、処理業務などにおいても生じうる。かかる背景により、巡回者を迅速かつ動的に最適配置することが必要とされている。
【0005】
特許文献1には、複数のグループ(上述の巡回者に相当)が、複数の訪問先(上述の巡回先に相当)を分担して訪問するための訪問計画を算出する方法が開示されている。より具体的には、予め訪問計画が策定されている状態で、未割当訪問先が新規に発生した場合、予め定義されたコストが最小になるような方法で、未割当訪問先の割当先グループを決定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】特許第3739610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の方法は、最初の訪問計画は予め決定されていることを前提としており、初期段階を含めた全ての段階での訪問計画を策定することはできない。また、未割当訪問先をコストが最小となるグループに割り当てるにとどまり、巡回路全体を再度最適化するものではない。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、複数の巡回者による地域内巡回計画を、効率的かつ動的に策定することができる地域内共助巡回支援システム、地域内共助巡回支援装置、地域内共助巡回支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置は、複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援装置であって、複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部と、前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチング部と、前記巡回者が前記マッチング部により割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部と、前記巡回路決定部が決定した前記巡回路を出力する出力部と、を有する。
【0010】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置では、前記マッチング部は、ファジィクラスタリングにより前記割り当てを行い、前記巡回路決定部は、前記ファジィクラスタリングにより確定的に割り当てられた前記巡回先、および、前記ファジィクラスタリングにより確定的に割り当てられなかった前記巡回先を、前記巡回路に係る所定の評価指標が最大となるような前記巡回者に割り当てる。
【0011】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置では、前記マッチング部は、少なくとも前記巡回者と前記巡回先との距離に基づいて前記割り当てを行う。
【0012】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置では、前記マッチング部は、少なくとも前記巡回者と前記巡回先との距離及び親密度に基づいて前記割り当てを行う。
【0013】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置では、前記巡回路決定部は、少なくとも前記巡回者の移動距離に基づいて最適な前記巡回路を決定する。
【0014】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置では、前記巡回路決定部は、前記巡回者の移動距離、並びに、前記巡回者と前記巡回先との親密度及び前記巡回者の緊急度のうち、少なくともいずれか一方に基づいて最適な前記巡回路を決定する。
【0015】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置では、前記巡回路決定部はさらに、前記巡回者の巡回時間(巡回路の移動時間及び巡回先での処理時間を含む)に基づいて前記巡回路を評価し、前記評価の結果が所定の基準を満たさない場合に、前記マッチング部が割り当てた前記巡回者と前記巡回先との組み合わせを変更し、再度、最適な前記巡回路を決定する。
【0016】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援システムは、複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部と、前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチング部と、前記巡回者が前記マッチング部により割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部と、前記巡回路決定部が決定した前記巡回路を出力する出力部と、を有する地域内共助巡回支援装置と、前記出力部から前記巡回路を受信し、少なくとも前記巡回者が次に訪問すべき前記巡回先を出力する端末装置と、を含む。
【0017】
他の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援方法は、複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援方法であって、コンピュータが、複数の前記巡回者及び複数の前記巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力ステップと、前記巡回者に対し複数の前記巡回先を割り当てるマッチングステップと、前記巡回者が前記マッチングステップで割り当てられた複数の前記巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定ステップと、前記巡回路決定ステップで決定した前記巡回路を出力する出力ステップと、を有する。
【0018】
他の実施の形態にかかるプログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、複数の巡回者による地域内巡回計画を、効率的かつ動的に策定することができる地域内共助巡回支援装置、地域内共助巡回支援方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】地域内共助巡回支援装置100の構成を示すブロック図である。
図2】マッチング部131及び巡回路決定部133の動作を示す図である。
図3】マッチング部131によるファジィクラスタリングの概念図である。
図4】マッチング部131による親密度を考慮したマッチング処理の概念図である
図5】巡回路決定部133による親密度や緊急度を考慮した巡回路決定処理の概念図である。
図6】巡回路決定部133による未担当巡回先の解消処理の概念図である。
図7】効率性指標Yの特徴を説明する図である。
図8】地域内共助巡回支援装置100の動作を示すフローチャートである。
図9】地域内共助巡回支援システム10の構成を示す図である。
図10】地域内共助巡回支援システム10の動作実験の結果を示す図である。
図11】地域内共助巡回支援システム10の動作実験の結果を示す図である。
図12】地域内共助巡回支援システム10の動作実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、図1のブロック図を用いて、本発明の実施の形態にかかる地域内共助巡回支援装置100の構成について説明する。地域内共助巡回支援装置100は、入力部110、マッチング部131、巡回路決定部133、出力部150を有する。典型的には、地域内共助巡回支援装置100はCPU(中央処理装置)、揮発性及び不揮発性メモリ等により構成される記憶装置、及びキーボード、ディスプレイ及び通信デバイス等により構成される入出力装置を備えたコンピュータである。CPUが記憶装置に予め格納されたプログラムを実行することにより、上述の各処理部が論理的に実現される。地域内共助巡回支援装置100は、単一のコンピュータに実装されても良く、通信可能に接続された複数のコンピュータに分散的に実装されても良く、あるいは機能の一部又は全部をクラウド上のリソースを用いて実装することとしても良い。
【0022】
入力部110は、巡回者及び巡回先の位置情報、巡回者の能力に関する情報(資格、スキル、体力、能力など)、巡回先の状況に関する情報(緊急度、優先度など)、巡回者と巡回先との関係に関する情報(親密度、交流度など)、及びその他の制約条件にかかる情報(道路の閉塞箇所、交通渋滞の発生箇所など)の入力を受け付ける。これらの情報は、初期段階で入力されるだけでなく、任意のタイミングで適宜追加、更新及び削除され得る。例えば、入力部110は、巡回先の追加又は減少、巡回者の追加又は減少、新たな制約条件の発生、巡回者と巡回先との組み合わせの変更などリアルタイムに発生する諸情報の入力を随時受け付ける。これらの情報は、ユーザが入出力デバイスを介して入力しても良いし、外部システム等から通信デバイスを介して入力されても良い。
【0023】
マッチング部131は、巡回者と巡回先との組み合わせを決定する処理を行う(図2左図)。図2以降の各図において、星印は巡回者、丸印は巡回先を表している。すなわち、マッチング部131は、誰が誰を支援するのかを、様々な要素を考慮して自動的に決定する。本実施の形態では、巡回者から巡回先までの距離を指標として巡回先をクラスタリングするファジィc-means法(参考文献1)を用いて、初期段階のマッチングを行う。図3を用いて、ファジィc-means法に代表されるファジィクラスタリング手法の概念について説明する。ファジィクラスタリングによれば、通常のクラスタリング手法(典型的にはk-means法)のように巡回先(特に複数のクラスタの境界近くに存在する巡回先)のクラスタへの帰属を固定的に決定することなく、複数のクラスタに所定の帰属度で帰属させることで曖昧性を持たせることができる。これにより、解の硬直化(局所解に収束してしまうこと)を回避できる。なお、すべてのクラスタへの帰属度が小さく、帰属が曖昧となる巡回先は、後述の巡回路決定部133の処理によって最終的な帰属クラスタ、すなわち担当の巡回者が割り当てられる。これにより、巡回者からの実距離、より具体的にはネットワーク距離又は直線距離が短い巡回先のグループが、巡回者ごとに形成される。
参考文献1:渡邉浩和外4名,「ファジィc-means法を用いた複数巡回セールスマン問題の一解法」,2001年,日本ファジィ学会誌 13(1),第119-126頁
【0024】
さらに好ましくは、マッチング部131は、巡回者と巡回先との実距離に加え、両者の親密度も考慮してクラスタリングを行うことができる。親密度とは、巡回者と巡回先との親密さの度合いを表す指標である。例えば、親密度指数をα(0<α<1)と定義すると、家族や知り合いのように親しい間柄の巡回先については、巡回者から見た親密度αは大きく、すなわちより1に近い値となる。そして、距離指標Lを例えば以下のように定義する。この距離指標Lを用いてファジィc-means法によるクラスタリングを実施する。
距離指標L=実距離×(1-α) α:親密度指数(0<α<1)
【0025】
図4は、親密度を考慮したマッチングの概念図である。実距離のみを考慮したマッチングでは異なるクラスタに分類される巡回者と巡回先であっても、親密度が高いペアであれば、親密度も考慮したマッチングでは同じクラスタに分類されやすくなる。発明者の調査によれば、共助に向かう際に、家族や知り合いなど親密度の高い人を優先的に助けよう とする人が多い。よって、親密度を考慮するならば、巡回者にとって重要度が高いと思われる巡回先を割り当てやすくなり、巡回の効率が向上することが期待される。
【0026】
巡回路決定部133は、マッチング部131が形成したグループ内での巡回路、すなわち巡回者が担当の巡回先を回るルートを決定する処理を行う(図2右図)。本実施の形態では、巡回路決定部133は、効率性指標Yの最大化を目的とする遺伝的アルゴリズムを用いる。遺伝的アルゴリズム自体は公知であるためここではその詳細な説明は省略するが、本実施の形態は、巡回者がスタート地点に戻らないことが一般的な巡回セールスマン問題との相違点である。また、本実施の形態は、効率性指標Yの構成に特徴がある。
【0027】
例えば、巡回者iが巡回先jに至るまでの実距離の効率性指標Dij、親密度の効率性指標Fij、緊急度の効率性指標Uijをそれぞれ設定し、これらの効率性指標の線形和を効率性指標Yijとすることができる。緊急度Uijは、例えば負傷者であったり、火災が接近したりしている巡回先に早く向かう場合にはより大きな値となる。効率性指標Yが大きいほど,効率的な地域内巡回であることを意味する。なお、上述の効率性指標Yの構成はあくまで一例であり、他にも例えば巡回先の属性(性別、年齢、要介護度、障害等級など)、巡回者の属性(性別、年齢、特殊技能、資格など)、巡回先の支援に必要な巡回者の数(巡回先が寝たきり、歩行介助、付き添いを要する場合には巡回者を2人以上必要とするなど)などを反映する指標を組み込むことが可能である。これにより、経路長だけでなく、親密度や緊急度などをも考慮した最適な巡回路を算出することができる。巡回路決定部133は、全ての巡回者iについて、全ての巡回先jに対する効率性指標Yijを算出する。そして、全てのYijを合算して効率化指標Yを得る。このYが最大となる巡回路の組み合わせが、効率化指標Yの観点からは最も効率の良い巡回路となる。図7に、Y、Yij、Dij、Fij及びUijの関係を示す。
【0028】
図5は、親密度や緊急度を考慮した巡回路決定の概念図である。実距離のみに基づけば、最も効率の良い巡回路は左図のようになる。一方、緊急度や親密度も考慮すると、右図のような巡回路となる。右図の巡回路は移動距離の観点では左図に劣るが、重傷者など緊急度の高い巡回先や家族など親密度の高い巡回先を優先又は担当できるため、避難成功者を最大化でき、結果的に効率の良い巡回ができるという効果が期待される。
【0029】
ここで、巡回路決定部133は、マッチング部131において複数のクラスタに曖昧に割り当てられた巡回先が存在する場合は(図6。四角印は曖昧に割り当てられた巡回先を示す)、当該巡回先をまず当該複数のクラスタの1つに割り当てて巡回路を計算する。その後、巡回路決定部133は、当該巡回先を当該複数のクラスタのうち他のクラスタに割り当てて巡回路を計算する。かかる計算を繰り返し実施して、巡回路決定部133は、当該巡回先を当該複数の全てのクラスタに割り当てた場合の効率性指標Yを求める。そして、効率性指標Yが最も大きかった際の当該巡回先の割り当てクラスタに、当該巡回先を実際に割り当てる。
【0030】
次に、好ましくは、巡回路決定部133は、ここまでで最も効率が良いと評価された巡回路について、以下の効率性指標Zを計算する。本実施の形態では、効率性指標Zとしては、最大巡回時間Z1、平均巡回時間Z2、巡回者の負担格差を表すZ3を考慮する。最大巡回時間Z1とは、巡回者が全ての巡回先を巡回するのに要した時間(巡回時間)が、全ての巡回者のうち最も長かった者の巡回時間である。平均巡回時間Z2とは、全ての巡回者の巡回時間の平均値である。ここでいう巡回時間には、巡回者が巡回路を移動するために要した時間のほか、巡回先での処理時間も含まれる。Z3は以下の式で計算される。
効率性指標Z3=(最大巡回時間-最小巡回時間)/最大巡回時間
ここで最小巡回時間とは、巡回時間が全ての巡回者のうち最も短かった者の巡回時間である。
実際の応用場面では、効率性指標Z1は、ひとりの巡回者が運べる(又は1台の車に搭載できる)最大の支援物資量等に置き換えて考えることもできる。また、効率性指標Z2は、巡回者数を乗じれば巡回時間の合計値となることから、支援物資の総量に置き換えて考えることもできる。
【0031】
巡回路決定部133は、効率性指標Z1、Z2及びZ3がそれぞれ十分に適当な値であるかどうかを判定する。具体的には、効率性指標Z1、Z2及びZ3の値が、それぞれ予め定められた閾値以下であるか否かを判定する。閾値以下であれば、その巡回路は効率性指標Zの観点からも十分効率的であると判断される。仮に閾値を超えている場合は、巡回者の負担格差が大きすぎるか、最大又は平均の巡回時間が長すぎると判断される。この場合、巡回路決定部133は、最大巡回時間を要する巡回者が担当する巡回先の1つを、他の巡回者に担当させるようグループ構成を変更する。あるいは、曖昧性を定義するパラメータを変えて再度マッチング部131によるクラスタリングを行っても良い。その上で、再度、巡回路の決定から効率性指標Zの計算までの一連の処理を実行する。巡回路決定部133は、効率性指標Zが閾値を下回るまで、これらの処理を繰り返し試行する。
【0032】
ここまでの一連の処理により、最も巡回効率の良いグループ、すなわち巡回者と巡回先との組み合わせと、巡回路とが決定する。出力部150は、決定したグループ及び巡回先を所定の出力先に出力する。例えば、巡回者の所持する端末装置に、グループ及び巡回先に関する情報を送信し、画面表示させる。
【0033】
なお、災害等の発生後、状況の変化に応じて、入力部110には、巡回先の追加又は減少、巡回者の追加又は減少、新たな制約条件の発生、巡回者と巡回先との組み合わせの変更などに関する情報が随時入力される。この場合、マッチング部131及び巡回路決定部133は、新しい入力情報を用いて、グループ及び巡回路の決定にかかる一連の処理を再実行する。そして、出力部150は、グループ及び巡回路に関する情報が更新されたならば、更新された情報を随時出力する。これにより、地域内共助巡回支援装置100は、状況の変化に適応した最適な情報を、動的かつ迅速に提供することができる。
【0034】
図8のフローチャートを用いて、本実施の形態における地域内共助巡回支援装置100の動作について再度説明する。
S1:データの入力
入力部110が、巡回者、巡回先、及びその他制約条件に関する情報の入力を受け付ける。
S2:マッチング
マッチング部131が、巡回者と巡回先とのマッチングを行う。典型的にはファジィクラスタリング手法を用い、巡回者と巡回先との実距離に基づくマッチングを行う。好ましくは、親密度などにより実距離に重み付けを行い、距離を伸縮させてマッチングに反映させる。
S3:巡回路の決定
巡回路決定部133が、遺伝的アルゴリズムなどを用いて巡回路を決定する。
S4:効率性指標Yの計算
巡回路決定部133が、効率性指標Yを最大化するよう巡回路を組み替える。
S5:未担当の解消
巡回者が割り当てられていない巡回先が存在する場合、巡回路決定部133が、効率性指標Yが最大となる巡回者に当該巡回先を割り当てる。すなわち、割当先の巡回者を変えながらS3以降の計算を反復し、最も大きい効率性指標Yが得られた巡回路を最適な巡回路と決定する。なお、巡回者が割り当てられていない巡回先が存在しない場合は、S4で生成された巡回路を最適な巡回路と決定する。
S6:効率性指標Zの計算
巡回路決定部133が、効率性指標Zを計算する。
S7:最適性評価
巡回路決定部133が、S6で計算した効率性指標Zが十分適当か、具体的には所定の閾値以内に収まっているか否か判定する。適当である場合はS8に遷移する。適当でない場合は巡回者と巡回先の組み合わせを適宜変更し、再度S3以降の処理を実施する。又は、曖昧性を制御するパラメータを変更するなどし、再度S2以降の処理を実施する。
S8:計算結果の出力
出力部150が、S5で最適と判断された巡回路と、その際の巡回者と巡回先との組み合わせを出力する。
S9:更新情報の入力
入力部110が、巡回者、巡回先、及びその他制約条件に関する情報の追加、更新及び削除を随時受け付ける。更新情報が入力されたなら、S2以降の計算を直ちに実行する。
【0035】
<実施例>
発明者は、地域内共助巡回支援装置100を含む地域内共助巡回支援システム10を使用したフィールド実験を実施した。まず、本実験で使用した地域内共助巡回支援システム10の基本構成を図9に示す。地域内共助巡回支援システム10は、地域内共助巡回支援装置100と、複数の巡回者それぞれが所持する端末装置200とを含む。地域内共助巡回支援装置100として災害発生想定地域から遠隔にあるクラウドサーバを利用することで、災害発生直後にシステムが物理的損傷を受けて停止することのない構成とした。また、端末装置200は、アプリケーションを事前にインストールする労力や時間を削減し、ハードウェアやオペレーティングシステムの種類などに依存しない仕様とするため、Webアプリケーションとして実装した。
【0036】
地域内共助巡回支援システム10の特徴のひとつにリアルタイム性がある。この特徴を活かすため、地域内共助巡回支援装置100と端末装置200との間の通信にNode.jsやWebSocketなどのリアルタイム通信技術を用いることで、情報同期の遅延時間を抑制した。また、地域内共助巡回支援装置100をイベント駆動型にすることで,同時接続可能数を増大させ、端末装置200に対する高速なレスポンスを可能とした。地域内共助巡回支援装置100の出力部150は、マッチング部131及び巡回路決定部133によって情報が更新されると、全ての端末装置200に対して当該情報をプッシュ配信する。これにより、即座に情報の同期がなされ、地域内共助巡回支援装置100の負荷も小さく、災害時の脆弱な通信ネットワーク環境下でも正常な稼動が期待できる。
【0037】
巡回者は、災害発生後に端末装置200を起動する。これにより、端末装置200は地域内共助巡回支援装置100の入力部110に対し、新たな巡回者を追加する旨の通知を直ちに送信する。この際、端末装置200の位置情報や巡回者の属性に関する情報等も併せて送信する。マッチング部131は、直ちに新たな巡回者と巡回先とのマッチングを行う。巡回路決定部133は、最適な巡回路を決定した後、出力部150を介して、巡回者の位置から最初の巡回先までの最短経路、および、最初の巡回先から最後の巡回先までの最短経路を端末装置200の画面上に表示させる。好ましくは、端末装置200は、公知のナビゲーション技術を用いて、地図アプリ上で巡回先までのナビゲーションを行う。巡回者は、巡回先の安否確認などが完了したなら、端末装置200上の「完了ボタン」を押下する。入力部110がこれを検知すると、出力部150が次の巡回先への最短経路を端末装置200に出力する。
【0038】
フィールド実験の概要は以下のとおりである。本実験では、4名の巡回者からなる2つのグループが、仮想的に設定した25名の巡回先(例えば、寝たきりの高齢者など)をそれぞれ巡回し、安否確認を行うことをミッションとする。第1のグループの4名の巡回者は、上述の地域内共助巡回支援システム10を用いて巡回を行う。巡回先の担当の割り当て及び巡回路の設定は、地域内共助巡回支援装置100が行う。第2のグループの4名の巡回者は、既存のメッセージングアプリと地図アプリとを用いて巡回を行う。この地図アプリ上では、巡回先の位置を確認できるようになっている。巡回者は、メッセージングアプリを用いて他の巡回者と連絡を取って巡回先の担当を調整しつつ、自ら巡回路を選択する。2つのグループの巡回者の初期位置と巡回先の位置は同一とした。
【0039】
2つのグループの巡回者の移動軌跡を図10及び図11に示す。図10に示すように、第2のグループは、複数の巡回者の動線が一部交錯しており、また、不効率な巡回となっている。これに対して、図11に示すように、第1のグループは、これらの不効率性を抑えて効率的な巡回経路となっている。図12に、実験開始からの経過時間と安否確認完了人数との関係をグラフで示す。第2のグループは25名の安否確認に60分以上を要しているのに対し、第1のグループは30分で完了しており、地域内共助巡回支援システム10が効率的な安否確認に役立つことを定量的に確認できる。
【0040】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。例えば、上述の実施の形態では、マッチング部131はファジィc-means法を用いてクラスタリングを行ったが、本発明はこれに限定されるものでなく、他の任意の手法で巡回先を巡回者に割り当てても良い。また、上述の実施の形態では、マッチング部131は実距離に加えて親密度を考慮したが、親密度を考慮しないこととしてもよく、あるいは親密度に加えて又は代えて他の任意の指標を考慮することとしても良い。また、上述の実施の形態では、巡回路決定部133は、効率性指標Y及びZを用いて巡回路を評価したが、これらの指標に含まれる要素や指標値の算出方法は適宜変更して差し支えない。また、これらの指標に加えて又は代えて他の任意の指標を考慮することとしても良い。
【0041】
さらに、上述の実施の形態では、マッチング部131は全ての巡回者及び巡回先を対象としてマッチングを行った(オープンマッチングという)が、巡回者と巡回先との組み合わせを予め限定することとしても良い。例えば、巡回者及び巡回先は、1以上の属性グループに所属するよう予め定義する。属性グループとは、典型的には、家族、友人、地域などのクローズドなコミュニティである。この場合、マッチング部131は、この属性グループ内の巡回者及び巡回先のみを対象にマッチングを行う(クローズドマッチングという)。
【0042】
さらに、巡回者又は巡回先が複数の属性グループに所属している場合には、巡回者又は巡回先はそれらの属性グループに優先順位を設定することができる。この場合、マッチング部131は、巡回者又は巡回先にとって優先順位の高い属性グループからクローズドマッチングを試みる。これにより、巡回者は、例えば災害時に支援活動に参加する属性グループの優先順位を予め決めておき、その優先順位に従って支援活動を行うことができる。また、巡回先の人は、困っていることの内容(例えばプライバシーに関わるものか、緊急性の高いものか)に応じて、支援要請を行う属性グループを変えることが可能となる。
【0043】
さらに、マッチング部131は、複数の属性グループを統合してクローズドマッチングを行うこともできる。例えば、ある属性グループ内でクローズドマッチングを行った後、巡回路決定部133において好適な効率性指標を得られなかった場合に、マッチング部131は、例えば隣接する地域といった他の属性グループを当初の属性グループと統合し、統合した属性グループ内で再度クローズドマッチングを行い、巡回路決定部133に再度巡回路を算出させる。これにより、より良い巡回路を得られる可能性がある。このように、マッチング部131は、状況に応じて複数の属性グループを統合したり、又はオープンマッチングに切り替えたりすることで、最適な解を導出することが可能である。
【0044】
また、上述のように、地域内共助巡回支援装置100、入力部110、マッチング部131、巡回路決定部133、出力部150、端末装置200、及び地域内共助巡回支援システム10の全部又は一部は、固定的なハードウェアとして実現し得るだけでなく、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより論理的に実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0045】
100 地域内共助巡回支援装置
110 入力部
131 マッチング部
133 巡回路決定部
150 出力部
200 端末装置
10 地域内共助巡回支援システム
図1
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図5
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図9
図10
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図12