(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】パラレルリンクロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20220601BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J11/00 D
(21)【出願番号】P 2018052298
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神原 太郎
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030190(JP,A)
【文献】特開平08-118275(JP,A)
【文献】特開平09-044253(JP,A)
【文献】特開2014-121754(JP,A)
【文献】特開2013-052498(JP,A)
【文献】特開昭59-205283(JP,A)
【文献】特開昭64-012309(JP,A)
【文献】特開平04-344505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つ以上の複数のモータ部と、前記各モータ部の回転位置を検出して回転位置検出値を出力する回転位置検出部と、前記各モータ部の出力軸のねじりトルクを検出してトルク検出値を出力するトルク検出部と、を有して基台に固定される複数のモータ装置に、エンドエフェクタを取り付ける移動部が複数のリンク機構によって並列に連結されたパラレルリンクロボットであって、
前記各モータ装置を制御する制御手段は、
前記移動部に発生させる力の目標値と、前記各モータ部の前記各回転位置検出値と、を入力として、前記各モータ部へ指令する各トルク指令値を演算して出力する指令値演算手段と、
前記各トルク指令値から前記各トルク検出値をそれぞれ減算してトルク偏差を出力するトルク値減算手段と、
前記トルク偏差を入力として前記各モータ部へ制御指令を出力するモータ制御手段と、を含
み、
前記指令値演算手段が、前記移動部の移動先の目標値と、前記各モータ部の前記各回転位置検出値と、を入力として各回転位置指令値を演算して出力し、
前記制御手段は、
前記各回転位置指令値から前記各回転位置検出値をそれぞれ減算して回転位置偏差を出力する回転位置値減算手段と、
前記トルク値減算手段からの出力と、前記回転位置値減算手段からの出力とを切換える制御切換え手段と、を含み、
前記モータ制御手段は、前記制御切換え手段によって切換えられた前記回転位置偏差若しくは前記トルク偏差のいずれかに基づいて前記各モータ部へ制御指令を出力することを特徴とするパラレルリンクロボット。
【請求項2】
前記指令値演算手段が、前記制御切換え手段による切換え状態に応じて、速度制限値を前記モータ制御手段へ出力し、
前記モータ制御手段は、前記速度制限値に基づいて前記各モータ部へ制御指令を出力することを特徴とする請求項1に記載のパラレルリンクロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの1つであるパラレルリンクロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パラレルリンクロボットの機構は、例えばロボットを固定する基台に固定されたモータ装置と、モータ装置の可動部に連結されたアーム部を有するリンク機構と、リンク機構に連結されエンドエフェクタなどの作用部材が取り付けられて直交三軸方向へ移動可能な移動部(トラベリング部)で構成されている。
【0003】
パラレルリンクロボットは、直列に関節機構を配置したものと比較して、アーム部を繋ぐ関節毎にモータを設ける必要がなく、各アーム部と各モータを振り回す必要もないため軽量にできるという利点がある。また、パラレルリンクロボットは、アーム部を三角錐の構造にすることで非常に剛性が高くすることができ、エンドエフェクタを非常に高速で動かすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-272116号公報
【文献】特開2015-142952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構成を有するパラレルリンクロボットを機構部品等の組立てに使用する場合、エンドエフェクタにおいて押付力など、力を制御する使い方が望まれている。そこで特許文献1、特許文献2に開示されているように、エンドエフェクタに力センサを取り付けてエンドエフェクタに加わる反力を用いてフィードバック制御を行う方法が公知である。
【0006】
しかしながらこの方法では、パラレルリンクロボットのエンドエフェクタ付近に力センサを取り付けなければならないので、エンドエフェクタの重量が増加すると共に形状が制限されてしまい用途が限定されてしまうという課題があった。そしてアーム部が障害物に当たっても力センサではこれを検出しないので、人と協調作業をする工程にパラレルリンクロボットを配置することはできなかった。そこで発明者は、パラレルリンクロボットの各モータと一体的にトルクセンサを配置して、エンドエフェクタの力の制御を行う開発を行っている。
【0007】
本発明は上記のような問題点に鑑みなされたもので、構造的な制限を取り払い、さらにエンドエフェクタの力の制御を高精度に行うことを可能にするパラレルリンクロボットを提供するのが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のパラレルリンクロボットは、
少なくとも3 つ以上の複数のモータ部と、各モータ部の回転位置を検出して回転位置検出値を出力する回転位置検出部と、各モータ部の出力軸のねじりトルクを検出してトルク検出値を出力するトルク検出部と、を有して基台に固定される複数のモータ装置に、エンドエフェクタを取り付ける移動部が複数のリンク機構によって並列に連結されたパラレルリンクロボットであって、
各モータ装置を制御する制御手段は、
移動部に発生させる力の目標値と、各モータ部の各回転位置検出値と、を入力として、各モータ部へ指令する各トルク指令値を演算して出力する指令値演算手段と、
各トルク指令値から各トルク検出値をそれぞれ減算してトルク偏差を出力するトルク値減算手段と、
トルク偏差を入力として各モータ部へ制御指令を出力するモータ制御手段と、
を含んで構成されている。
【0009】
そして、指令値演算手段が、トルク指令値を、各モータ部の回転位置座標変数の微分を移動部の位置座標変数の微分に変換するヤコビ行列の転置行列を力の目標値に乗算して出力するように構成されている。
【0010】
また、ヤコビ行列が、各モータ部の現在の各回転位置から所定距離の1/2離間した前後の2つの位置に対応したそれぞれの移動部の位置の差を所定距離で除算して得られるように構成されている。
【0011】
また、指令値演算手段が、移動部の移動先の目標値と、各モータ部の各回転位置検出値と、を入力として各回転位置指令値を演算して出力し、
制御手段は、
各回転位置指令値から各回転位置検出値をそれぞれ減算して回転位置偏差を出力する回転位置値減算手段と、
トルク値減算手段からの出力と、回転位置値減算手段からの出力とを切換える制御切換え手段と、を含み、
モータ制御手段は、制御切換え手段によって切換えられた回転位置偏差若しくはトルク偏差のいずれかに基づいて各モータ部へ制御指令を出力するように構成されている。
【0012】
また、指令値演算手段が、制御切換え手段による切換え状態に応じて、速度制限値をモータ制御手段へ出力し、
モータ制御手段は、速度制限値に基づいて各モータ部へ制御指令を出力するように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパラレルリンクロボットによれば、移動部に発生させる力の目標値と、各モータ部の各回転位置検出値とを入力として、各モータ部へ指令する各トルク指令値を演算して出力する指令値演算手段を設け、各トルク検出値を減算してフィードバック制御を行っていることから、エンドエフェクタに係る構造的な制限を取り払い、さらにエンドエフェクタの力の制御を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るパラレルリンクロボットの全体斜視図
【
図2】本発明の実施形態に係るパラレルリンクロボットの機構部斜視図
【
図3】本発明の実施形態に係るパラレルリンクロボットの制御ブロック図
【
図4】本発明の実施形態に係るパラレルリンクロボットの機構部側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のパラレルリンクロボットを実施形態にて、図面を基に詳細な説明を行う。
図1は本発明の実施形態に係るパラレルリンクロボット18を斜め上側から見た斜視図であり、
図2は斜め下側から見た斜視図である。パラレルリンクロボット18は、基台1に取り付けられた機構部と制御手段100とで構成されている。
図1では機構部材と制御手段100との電気的接続は便宜上3本の線で描かれているが、実際には多芯のケーブル等によって複数の信号線の送受信や電源供給が行われている。
【0016】
まずパラレルリンクロボット18のメカニカルな部分から説明する。基台1は機構部を支持固定する平板状の金属部材であって、フレーム等を組んだ構造物に固定される。基台1の下面側には、3つのモータ装置11a~11cが、基台1の下側平面のある一点を中心として、120度の等間隔でかつ半径方向に同一寸法で放射状に、モータ部ブラケット13a~13cによって固定配置されている。
【0017】
モータ装置11a~11cは、モータ部2a~2cと、出力軸12a~12cのねじりトルクを検出してトルク信号を出力するトルク検出部4a~4cと、モータ部2a~2cの反負荷側にあって回転位置を検出して回転位置信号を出力する回転位置検出部3a~3cと、を有して構成されている。なおこのモータ部2a~2cとは、例えばモータと減速機を組み合わせたものである。そしてモータ部2a~2cに含まれるモータは例えば交流サーボモータである。またモータ部2a~2cに含まれる減速機は、正逆両方向に細かく回ってトルク制御を行うことから、例えばバックラッシュが基本的にない波動減速機を用いることが好ましい。
【0018】
回転位置検出部3a~3cはいわゆる光学式エンコーダであって、モータ部2a~2cの回転位置を検出して回転位置検出値を出力するものである。本実施形態では反射型光学式であるが、透過式であってもよいし、光学式に限らず磁力その他の方式によるものであっても良い。
【0019】
トルク検出部4a~4cは、モータ部2a~2cからの出力軸12a~12cに弾性変形をする起歪部を設け、その起歪部に歪みゲージを配置し、出力軸12a~12cが変形した際の歪み量を電気信号に変換してねじりトルクを得てトルク検出値として出力するものである。このモータ装置11a~11cの出力軸12a~12cに継続的な負荷が掛かることから、軸自体が時間に伴うクリープ変形を起こすことがあり、磁歪方式や光学的に歪みを検出する方式では正確なトルク値が得られない場合がある。磁歪方式や光学的に歪みを検出する方式と比較して歪みゲージを用いて検出を行うと、温度変化とクリープ変形に対する自己補償特性を付与することができるので、高精度なねじりトルク値が得られる。
【0020】
モータ装置11a~11cの出力軸12a~12cにはそれぞれ棒状の第1アーム15a~15cが連結されている。第1アーム15a~15cの腕方向の長さはそれぞれ同一寸法で構成され、第1アーム15a~15cの一端が接続部5a~5cで出力軸12a~12cに規制された角度範囲で回転できるように接続されている。そして第1アーム15a~15cの他端側には関節6a~6c及び関節7a~7cを介して略平行に2本並んだ棒状の第2アーム16a~16cがそれぞれ連結されている。第2アーム16a~16cの腕の長さもそれぞれ同一寸法で構成されている。
【0021】
そして第2アーム16a~16cは、関節6a~6c及び関節7a~7cを介して移動部14に連結されている。これらの関節6a~6c及び関節7a~7cにより、第2アーム16a~16cと移動部14は、揺動可能及び規制された角度範囲で回転可能となっている。なお接続部5a~5c、関節6a~6c及び関節7a~7cは、例えばボールやベアリング等を有したジョイントである。
【0022】
移動部14は直交三軸方向に移動可能な板状の部材であって、移動部14の中心から120度の角度間隔の箇所に、関節6a~6c及び関節7a~7cを介して第2アーム16a~16cが接続される。ゆえに、これらの接続部5a~5c、関節6a~6c、関節7a~7c、第1アーム15a~15c、第2アーム16a~16cは、モータ装置11a~11cと移動部14を並列に連結するリンク機構17である。移動部14には様々なエンドエフェクタ(不図示)が取り付けられる。本実施形態ではこの移動部14に力センサは取り付けを行わない構成であって、エンドエフェクタの形状や取り付け位置に対する制約が少ない。しかも移動部14及びエンドエフェクタ全体部の重量を軽くすることができて、これらを高速で駆動することが可能である。
【0023】
次いで
図3を参照してこのパラレルリンクロボット18の制御について説明する。パラレルリンクロボット18の制御は制御手段100によって行われる。制御手段100は、指令値演算手段106と、トルク値減算手段104a~104cと、回転位置値減算手段105a~105cと、制御切換え手段103a~103cと、モータ制御手段102a~102cと、駆動手段101a~101cとを含んで構成されている。
【0024】
指令値演算手段106は、各回転位置検出部3a~3cから出力された回転位置検出値θa、θb、θcと、移動部14の移動先の目標位置Prefと、移動部14に発生させたい力の目標値Frefと、を入力として、各モータ部2a~2cを制御するための指令値を算出する演算を行う。演算の詳細については後述する。
【0025】
指令値演算手段106は、各モータ部2a~2cを制御するための指令値として、各トルク指令値τa ref、τb ref、τc ref、各回転位置指令値θa ref、θb ref、θc ref、各速度制限値va limit、vb limit、vc limit、の信号を出力する。以下モータ装置11a~11cの制御は同様なので、モータ装置11aに関連した部分を代表して説明する。
【0026】
トルク値減算手段104aは、指令値演算手段106より出力されたトルク指令値τa refからトルク検出値τaを減算してトルク偏差を出力する。一方、回転位置値減算手段105aは、指令値演算手段106より出力された回転位置指令値θa refから回転位置検出値θaを減算して回転位置偏差を出力する。
【0027】
制御切換え手段103aは、トルク値減算手段104aから出力されたトルク偏差と、回転位置値減算手段105aから出力された回転位置偏差とを入力として、いずれかを選択するように切換えて出力する。そしてこの切換えは、制御切換え手段103a~103cで同時に行われ、制御切換え手段103a~103cはトルク偏差若しくは回転位置偏差のいずれかに一斉に切換えて出力する。
【0028】
モータ制御手段102aは、制御切換え手段103a~103cで切換えられたトルク偏差若しくは回転位置偏差のいずれかを入力として、この偏差をゼロにする制御の演算を行う。これと同時にモータ制御手段102aは、指令値演算手段106からの速度制限値va limitを入力として、モータ部2aの速度が速度制限値va limitを越えないようにする制御の演算も行う。なお指令値演算手段106が出力するモータ部2aの速度制限値va limitは、制御切換え手段103a~103cの切換え状態に応じたものである。そしてモータ制御手段102aは、駆動手段101aへモータ部2aを駆動する制御指令値を出力し、駆動手段101aはモータ部2aを電流制御により駆動する。前述したようにモータ装置11b~11cの制御もモータ装置11aと同様である。
【0029】
次いで
図4を参照して、指令値演算手段106が各トルク指令値τ
a ref、τ
b ref、τ
c refを算出する手法を説明する。
【0030】
移動部14に加わる外力をF=(F
x,F
y,F
z)
T、
モータ部2a~2cの駆動力(トルク)をτ=(τ
a,τ
b,τ
c)
T、
各モータ部2a~2cの座標をθ=(θ
a,θ
b,θ
c)
T、
各モータ部2a~2cの仮想変位をδθ=(δθ
a,δθ
b,δθ
c)
T、と定義すると、各モータ部2a~2cの駆動力による仮想仕事δW
τは、式1にて表される。
【数1】
そして移動部14の各仮想変位をδp=(δx,δy,δz)
Tと定義する。
【0031】
すると移動部14へ加わる外力による仮想仕事は、式2で表される。
【数2】
ここでδW
τ=-δW
f であるから式1と式2から式3が導かれる。
【数3】
【0032】
一方、モータ部の回転位置座標系θ=φの微分を移動部14の位置座標系pの微分へ変換するヤコビ行列をJ(φ)とすると、δp=J(φ)δθであるから、これの転置を取って δp
T=(J(φ)δθ)
T=δθ
T・J(φ)
T、となり、式4が導かれる。
【数4】
【0033】
したがってトルク指令値τ
refは、各モータ部2a~2cの各回転位置座標変数の微分を移動部14の位置座標変数の微分に変換するヤコビ行列J(φ)の転置行列を力の目標値F
refに乗算することで得ることができる。ゆえにトルク指令値τ
refは式5で表すことができる。
【数5】
【0034】
次にJ(φ)Tを求める方法について説明する。移動部14の座標系は各モータ部2a~2cの座標系の関数fで表される。(x,y,z)=f(θa,θb,θc)この関数fは幾何学的に設計値から算出される。移動部14の座標系は、モータ装置11a~11cの出力軸12a~12cの軸線を含むXY平面と、このXY平面に直交して鉛直上方向を正とするZ軸で定義されるものである。
【0035】
各関節点J
a(x
a,y
a,z
a)、J
b(x
b,y
b,z
b)、J
c(x
c,y
c,z
c)を中心とする半径R
a、R
b、R
cの球の交点Q(x,y,z)は次の式6~8の3元連立方程式を解くことで求められる。なお本実施形態のパラレルリンクロボット18において、3つのモータ装置11a~11cの出力軸12a~12cの軸線それぞれと、3つの第1アーム15a~15cの軸線の交点(モータ装置11a~11cの配置の中心)と、をXY平面上に投影したそれぞれの距離は、移動部14及び第2アーム16a~16cを連結している関節6a~6cの軸線それぞれと、移動部14の中心点とをXY平面上に投影したそれぞれの距離と全て同じ寸法である。もしこれらの距離を異なるものにした場合はその分のオフセットを幾何学的に行えば良い。
【数6】
【数7】
【数8】
【0036】
これらの式7及び式8から式6を減算して整理してx=A+Bz、y=C+Dzの形式で表し、これを式6に代入して整理することでzに関する2次方程式が得られる。2次方程式を解くためzの座標は2つ得られるが、各関節点は負の領域のみの移動であるから、負の座標の方を使用し、このzから球の交点Q(x,y,z)を求めることができる。
【0037】
指令値演算手段106は、現在のモータ部2a、2b、2cの座標軸φ=(φ
a、φ
b、φ
c)から所定距離δφの1/2、すなわちδφ/2離間した近傍点を以下のようなψ
1~ψ
6の6点で定義する。
ψ
1=(φ
a+δφ/2,φ
b,φ
c)、ψ
2=(φ
a―δφ/2,φ
b,φ
c)、
ψ
3=(φ
a,φ
b+δφ/2,φ
c)、ψ
4=(φ
a,φ
b-δφ/2,φ
c)、
ψ
5=(φ
a,φ
b,φ
c+δφ/2)、ψ
6=(φ
a,φ
b,φ
c-δφ/2)。この6点それぞれに対応する移動部14の位置P
iは、前述の球の交点を求める方法を用いて、P
i=(x
i、y
i、z
i)=f(ψ
i) (i=1~6)で求めることができる。ゆえにJ(φ)はδφ/2だけ離れた近傍2点でのf(ψ
i)の差を所定距離δφで除算し、その各x、y、z成分を演算することで求めることができる(式9)。但しf
x(ψ
i)、f
y(ψ
i)、f
z(ψ
i) (i=1~6)はそれぞれf(ψ
i)のx、y、z成分である。
【数9】
最終的には次式を計算することになる。
【数10】
【0038】
本実施形態においてはδφ=1x10-6程度の値を用いてJ(φ)を求めている。この方法では現在位置の前後の位置から割り出しているため、精度の高い指令値を求めることができる。
【0039】
ゆえに本発明の実施形態によれば、指令値演算手段106は、各回転位置検出部3a~3cから出力された回転位置検出値θa、θb、θcと、移動部14を移動させたい目標位置Prefと、移動部14に発生させたい力の目標値Frefと、を入力として、上記式により演算を行って、各トルク指令値τa ref、τb ref、τc ref、各回転位置指令値θa ref、θb ref、θc ref、の信号を出力する。制御切換え手段103aは、一例として移動部14が目標位置Prefに到達するまでは各回転位置指令値θa ref、θb ref、θc ref、による位置制御を選択し、移動部14が目標位置Prefに到達した時点で、各トルク指令値τa ref、τb ref、τc refによる力制御(トルク制御)を行うような切換えを行う。
【0040】
また制御切換え手段103aが、変形例として移動部14が目標位置Prefに到達するまでの期間に位置制御とゼロの力を目標とした力制御との切換えを高速で頻繁に行うと、移動部14が障害物に衝突したような場合にも瞬時に力を緩めることができる。このような制御方法でパラレルリンクロボット18の各アーム、各リンク機構及び対象物の破損などを防止することができる。そして移動部14が人間に当たった場合にも瞬時に力を緩めることができるので、人との協調作業を行うことも可能であり、パラレルリンクロボット18の配置の自由度を高めることができる。
【0041】
さらに移動部14には力センサを設けていないことから、軽量で高速な動作も可能で、移動部14に取り付けられるエンドエフェクタの形状に制限が少なく、また力の目標値Frefはx、y、z方向に自由に設定できるため、ピックアンドプレイスのみならず、鉛直面の孔への部品の圧入、立体的な部品への接着剤や塗料の刷毛塗りなど力の制御を必要とする広い範囲の作業に適用可能なパラレルリンクロボットを提供できる。
【0042】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることではなく、種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の活用例として、部品の圧入、接着剤や塗料の塗布など力の制御を必要とする装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :基台
2a、2b、2c :モータ部
3a、3b、3c :回転位置検出部
4a、4b、4c :トルク検出部
5a、5b、5c :接続部
6a、6b、6c :関節
7a、7b、7c :関節
11a、11b、11c :モータ装置
12a、12b、12c :出力軸
13a、13b、13c :モータ部ブラケット
14 :移動部
15a、15b、15c :第1アーム
16a、16b、16c :第2アーム
17 :リンク機構
18 :パラレルリンクロボット
100 :制御手段
101a、101b、101c :駆動手段
102a、102b、102c :モータ制御手段
103a、103b、103c :制御切換え手段
104a、104b、104c :トルク値減算手段
105a、105b、105c :回転位置値減算手段
106 :指令値演算手段