(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】セントルおよびセントル移動方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
(21)【出願番号】P 2018188505
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】清水 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】刀根 航平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 文夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 忠司
(72)【発明者】
【氏名】小谷 拓也
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214747(JP,A)
【文献】特開平07-091050(JP,A)
【文献】特開平03-096598(JP,A)
【文献】特開昭61-183600(JP,A)
【文献】特開2014-015778(JP,A)
【文献】特開2010-053653(JP,A)
【文献】実開昭52-148439(JP,U)
【文献】実開昭63-141293(JP,U)
【文献】特開平09-221707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上り勾配のトンネル施工において用いられるセントルであって、
トンネル底面に載置されるレール上を走行可能にセントル自身の下部に設けられた車台と、
前記レール上を前記車台の車輪で走行する走行高さと前記レール上方に前記車輪が離隔した離隔高さとにセントル自身を昇降可能に設けられたセントル昇降ジャッキと、
前記上り勾配の低い側から前記車台を支持可能に且つ前記レールの把持および把持解除が可能に設けられた前部クランプジャッキと、
前記上り勾配の低い側から前記レールの把持および把持解除が可能に設けられた後部クランプジャッキと、
該後部クランプジャッキとセントル後部との間に伸縮可能に介装された推進用ジャッキ70と、
を備えることを特徴とするセントル。
【請求項2】
上り勾配のトンネル施工においてセントルを移動する方法であって、
請求項1に記載のセントルを用い、前記上り勾配の低い側から高い側に向けて前記セントル自身と前記レールとを交互に移動することを特徴とするセントル移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セントルを移動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セントルは、トンネル底面に設置されるレール上を、セントル自身の下部に設けられた台車の車輪によって走行可能に構成される(例えば特許文献1参照)。
ここで、セントルの走行に際し、急勾配トンネルでのトンネル覆工工事では、セントルを移動させるためにウィンチ等が使用され、ワイヤによる牽引移動方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウィンチを使ったワイヤによる牽引では、ワイヤが切れるとセントルが逸走してしまう。また、ワイヤによる牽引では、補助のウィンチやチルホールなどが併用されるものの、それぞれに反力となる基礎等が必要となり、セントルを移動させるために要する手間が多いという問題がある。
【0005】
また、ワイヤによる牽引では、ワイヤが切れて、万一、作業者にワイヤが当ると負傷するおそれがある。そのため、ワイヤの内角には作業者を入れることができず、セントル移動時に、セントル本体が周辺物と接触しないかなどの確認作業が困難であるという問題がある。
【0006】
また、ワイヤによる牽引では、セントルが走行するレールは、セントルの移動に合わせてバックホウやユニック等の作業機を用いて、セントル後方の不要になったレール部材をセントル前方に敷設替えする作業が必要となるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ワイヤによる牽引によらず、セントルの逸走を防止し得るセントルおよびセントル移動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセントルは、上り勾配のトンネル施工において用いられるセントルであって、トンネル底面に載置されるレール上を走行可能にセントル自身の下部に設けられた車台と、前記レール上を前記車台の車輪で走行する走行高さと前記レール上方に前記車輪が離隔した離隔高さとにセントル自身を昇降可能に設けられたセントル昇降ジャッキと、前記上り勾配の低い側から前記車台を支持可能に且つ前記レールの把持および把持解除が可能に設けられた前部クランプジャッキと、前記上り勾配の低い側から前記レールの把持および把持解除が可能に設けられた後部クランプジャッキと、該後部クランプジャッキとセントル後部との間に伸縮可能に介装された推進用ジャッキと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセントル移動方法は、上り勾配のトンネル施工においてセントルを移動する方法であって、本発明の一態様に係るセントルを用い、前記上り勾配の低い側から高い側に向けて前記セントル自身と前記レールとを交互に移動することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るセントルおよびこれを用いたセントル移動方法によれば、上り勾配のトンネルにおいてセントルを移動するに際し、複数の油圧ジャッキを用いてレールの把持およびその解放の動作と、セントルに対する押し引きの動作とにより、セントル自身およびレールを移動させることができる。
よって、本発明によれば、油圧ジャッキによる移動および姿勢管理なので、ワイヤによる牽引によらず、セントルの逸走を確実に防止できる。そのため、ワイヤによる牽引に比べ、セントルに近寄っても安全であり、労働災害発生の危険も低減できる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るセントル移動方法によれば、セントルを走行させるレールを、複数のジャッキによる移動および姿勢管理のみで前方に順次に移動して再敷設できる。そのため、レールを移動・敷設するためのレール移動作業用の重機が不要であり、また、セントル後方のレールの切り離し作業、並びに、セントル前方でのレールの接続作業を無くすことができる。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、ワイヤによる牽引によらず、セントルの逸走を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一態様に係るセントルの一実施形態を説明する模式図であり、同図(a)はその側面図、(b)は平面図である。
【
図2】
図1に示すセントルの模式的横断面図であり、同図左半部の断面は
図1(a)でのI-I線に沿ったもの、右半部の断面は
図1(a)でのII-II線に沿ったものである。
【
図3】
図1に示すセントル移動装置のシステム構成を説明する図である。
【
図4】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態1)である。
【
図5】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態2)である。
【
図6】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態3)である。
【
図7】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態4)である。
【
図8】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態5)である。
【
図9】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態6)である。
【
図10】本発明の一態様に係るセントルによるセントル移動方法の一実施形態を説明する模式図(状態7)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のセントル10は、上り勾配(水平面に対する傾斜角θ)のトンネル施工において用いられる。セントル10は、門型のガントリ20と、正面視がアーチ型の主型枠30と、を備える。主型枠30は、一定幅の同形の型枠部材31~34をトンネル長手方向で複数(本実施形態では4個)互いに連結して構成されている。
【0016】
主型枠30は、
図2に示すように、ガントリ20の上側を覆うように配置され、トンネル長手方向に一定の長さを有する。主型枠30の外周壁とトンネルTの内壁(一次覆工コンクリートの内壁)との間に、二次覆工コンクリートを注入するための打設空間Sが画成される。
【0017】
各型枠部材31~34は、同図に示すように、頂部に位置する上部フォーム41と、上部フォーム41の両端下面に回動可能に連結されて両側に位置する側部フォーム42と、側部フォーム42の下端に回動可能に連結された下部フォーム43と、を有する。
【0018】
上部フォーム41は、支持梁35によって支持される。支持梁35は、ガントリ20の頂部上に、前後方向に複数設けられ不図示のジャッキによって昇降可能に支持される。側部フォーム42と下部フォーム43は、それぞれフォーム用ジャッキ44~47等によってガントリ20に内外方向に回動可能に連結される。
【0019】
各型枠部材31~34は、フォーム用ジャッキ44~47等の伸長駆動により上部フォーム41が上昇させられ、側部フォーム42と下部フォーム43が外方に張り出される。これにより、主型枠30全体が拡径状態とされ、打設空間Sが画成されるようになっている。
【0020】
また、各型枠部材31~34は、フォーム用ジャッキ44~47等の短縮駆動により上部フォーム41が下降させられ、側部フォーム42と下部フォーム43が内方に収容される。これにより、主型枠30全体が縮径状態とされ、トンネルTの内周壁から内方に離隔するようになっている。
【0021】
ここで、ガントリ20は、
図1および
図2に示すように、その前後端の走行脚部21、22の下端に車台23、24を備える。車台23、24は、レールR上に載置される車輪23w、24wを有し、トンネル底面に載置されるレールR上を、切羽の進行に伴って、走行可能にセントル自身の下部に設けられる。
【0022】
また、ガントリ20は、
図1および
図2に示すように、ガントリ20の前後方向の適所に複数の支持脚部25、26を有する。各支持脚部25、26の下端には、セントル昇降ジャッキ27、28が設けられている。セントル昇降ジャッキ27、28は、車台23、24の車輪23w、24wによりレールR上を走行可能な走行高さと車輪23w、24wがレールR上方に離隔した離隔高さとにセントル10自身を昇降可能に設けられている。
【0023】
そして、本実施形態のセントル移動方法では、セントル移動装置として、上記車台23、24およびセントル昇降ジャッキ27、28を含み、
図3にセントル移動装置のシステム構成を示すように、計6基の専用油圧ジャッキ(移動・逸走防止用2+2基、逸走防止用2基)を用いる。
【0024】
詳しくは、本実施形態のセントル10は、
図3に示すように、油圧ポンプを制御する制御ユニット90をガントリ20の適所に備える。制御ユニット90には、油圧配管を介して必要な複数の油圧機器が接続される。
本実施形態では、上記6基の油圧ジャッキとして、
図1および
図3に示すように、左右一対の前部クランプジャッキ50と、左右一対の後部クランプジャッキ60と、左右一対の推進用ジャッキ70と、を備えている。
【0025】
また、制御ユニット90には、信号線を介して遠隔操作器80が接続される。
図3に示す例では、第一遠隔操作器80と第二遠隔操作器81との二台が接続された状態を示している。各遠隔操作機には、上記6基の油圧ジャッキに対応するスイッチが設けられており、その対応するスイッチをオペレータが操作することによって、対応する油圧ジャッキを駆動可能になっている。
【0026】
図1に示すように、前部クランプジャッキ50は、上り勾配の低い側から車台24を支持可能に且つレールRの把持および把持解除が可能に設けられる。後部クランプジャッキ60は、上り勾配の低い側からレールRの把持および把持解除が可能に設けられる。そして、推進用ジャッキ70は、後部クランプジャッキ60とセントル10の後部との間に伸縮可能に介装される。
【0027】
前部クランプジャッキ50および後部クランプジャッキ60には、不図示の受座とクランプ金具とでレールRを挟持可能な定着装置が内蔵されている。受座とクランプ金具とでレールRを挟持して反力を得ることができる。前部クランプジャッキ50は、いわゆる惜しみクランプとして用いられ、レールRをクランプすることによって反力を得て、前部の車台24を支持することによりセントル10の逸走を防止する。
【0028】
推進用ジャッキ70は、押引可能な複動型の油圧ジャッキであり、軸方向両端にクレビスがそれぞれ付設されている。これにより、後部クランプジャッキ60と推進用ジャッキ70との組み合わせにより、セントル10およびレールRの押し・引きの両方に使用可能になっている。
【0029】
なお、セントル10と前部クランプジャッキ50の相互接続部、並びに、セントル10と推進用ジャッキ70の相互接続部、および、推進用ジャッキ70と後部クランプジャッキ60の相互接続部は、それぞれヒンジ構造となっており、その相互接続部の遊びによって、セントル10の昇降時の姿勢保持とその時の移動用ジャッキの姿勢の回動量に応じた変位(歪みやこじれ)が吸収(解消)される。
【0030】
制御ユニット90は、油圧ポンプおよびコンピュータを含んで構成された油圧制御部であり、セントル10の逸走を防止するためのインターロック機能を有する。つまり、制御ユニット90は、4基のクランプジャッキ50、60のうち、前部クランプジャッキ50または後部クランプジャッキ60が緩んでいるとき(レールを把持していないとき)には、残る2基の後部クランプジャッキ60または前部クランプジャッキ50を緩める操作(レールの把持を解除する操作)をしても、当該クランプジャッキの油圧が抜けないにように構成され、これにより、セントルの逸走が確実に防止されている。
【0031】
また、制御ユニット90は、各クランプジャッキ50、60が、把持に必要なクランプ圧力を所定圧力以上に保持する機能を有する。制御ユニット90は、各クランプ圧力が所定圧力を下回った場合、自動的に油圧ポンプを起動して各クランプジャッキ50、60に必要なクランプ圧力を加圧し、所定圧力以上に達したら再度油圧ポンプを停止するようになっている。
【0032】
次に、本実施形態のセントル10およびレールRの移動方法による動作について、
図4~
図10を適宜参照しつつ説明する。なお、以下、遠隔操作に際し、上記二台の遠隔操作器80、81を特に区別せず、第一遠隔操作器80を単に遠隔操作器80と呼称して動作を説明する。
【0033】
まず、レールRの移動方法について説明する。
各部ジャッキの初期状態では、セントル昇降ジャッキ27、28は収容状態とされ、車台23、24は低い位置(走行高さ)にある。そのため、セントル10は、車輪23w、24wによって走行可能な状態にある。
オペレータは、遠隔操作器80のクランプボタンを操作し、前部および後部クランプジャッキ50、60をレールRの把持状態にして前後の車台23、24を支持状態にする。これにより、前部クランプジャッキ50は、把持状態(セントル前部支持状態)とされる。また、後部クランプジャッキ60も、把持状態(セントル後部支持状態)とされる。
【0034】
したがって、上記初期状態では、前後のクランプジャッキ50、60がいずれもレール把持状態とされているので、車輪走行状態にあっても、セントルの逸走が確実に防止される。このとき、推進用ジャッキ70は伸長状態とされている。制御ユニット90は、稼動時には、圧油の状態を常時監視し、所定圧力(例えば60MPa)以上に油圧が上昇したら油圧ポンプを自動停止する。
【0035】
上記初期状態から、オペレータは、
図4に示すように、前後のセントル昇降ジャッキ27、28を張り出してガントリ20を地上に対して支持する(以下、「状態1」ともよぶ)。この「状態1」で、セントル10が通常の二次覆工コンクリート打設工程に移行する。「状態1」のとき、車台23、24は、レールRの上方に車輪23w、24wが浮いた車輪離隔状態となる。この「状態1」では当然に走行不能なので、セントルの逸走は防止されている。
【0036】
なお、同図に示す符号Pの矢印は、セントル昇降ジャッキ27、28を張り出したイメージを示し、また、同図に示す符号Uの矢印は、セントル10が上昇して離隔高さに位置するイメージを示している。また、同図に示す符号Cは、クランプジャッキ50、60がクランプ状態にあるイメージを示し、符号Eは、推進用ジャッキ70が伸長状態にあるイメージを示している(以下、同じ)。
【0037】
「状態1」のとき、レールRに対するガントリ20の自重による押圧が解除されるため、地上に載置された状態のレールRが移動可能となる。なお、二次覆工コンクリートの打設工程自体は周知の工法によるため、説明を省略する。
【0038】
次いで、「状態1」から、オペレータは、遠隔操作器80を操作し、
図5に示すように、前部クランプジャッキ50をアンクランプして前部の車台24を非支持状態にする(以下、「状態2」ともよぶ)。この「状態2」で、前部クランプジャッキ50をアンクランプする際、制御ユニット90が自動的に油圧ポンプを起動する。制御ユニット90は、クランプ圧力を常時監視し、前部クランプジャッキ50のクランプ圧力がゼロになったら自動的に油圧ポンプを停止する。
【0039】
なお、制御ユニット90は、前部クランプジャッキ50がアンクランプ状態である場合には、オペレータが誤って遠隔操作器80のアンクランプボタンを押しても、後部クランプジャッキ60がアンクランプされないインターロック機能を有するので、セントルの逸走が確実に防止される。
【0040】
次いで、オペレータは、遠隔操作器80を操作し、
図6に示すように、ガントリ20の後部に設けられた推進用ジャッキ70を短縮駆動する(以下、「状態3」ともよぶ)。これにより、後部クランプジャッキ60に把持された状態のレールRは、ジャッキ短縮長に応じた長さだけ引かれて前方に移動する。なお、同図に示す符号Uは、クランプジャッキ50、60がアンクランプ状態にあるイメージを示し、符号Sは、推進用ジャッキ70が短縮状態にあるイメージを示している(以下、同じ)。
【0041】
次に、セントル10の移動方法について説明する。
二次覆工コンクリート打設工程後に、オペレータは、
図7に示すように、セントル昇降ジャッキ27、28を収容してガントリ20を下降させる(以下、「状態4」ともよぶ)。これにより、レール上に車輪23w、24wが当接し、レールRは、ガントリ20の自重による押圧が付与されて固定される。なお、同図に示す符号Nの矢印は、セントル昇降ジャッキ27、28を収容するイメージを示し、また、同図に示す符号Dの矢印は、セントル10が下降して走行高さに位置するイメージを示している。
【0042】
車台23、24はレールR上に車輪23w、24wが載置されて走行状態となる。このとき、後部クランプジャッキ60はレールRの把持状態(セントル後部支持状態)にある。そのため、車輪走行状態にあっても、セントルの逸走が確実に防止される。
【0043】
次いで、オペレータは、遠隔操作器80の推進スイッチを押す。これにより、
図8に示すように、推進用ジャッキ70が後部クランプジャッキ60を反力として伸長し、セントル10がレールRに沿って走行して前方に移動する(以下、「状態5」ともよぶ)。
【0044】
ここで、制御ユニット90は、左右二台の推進用ジャッキ70に対する圧油の吐出速度を同じにするように構成され、これにより、左右二台の推進用ジャッキ70は、相互の推進反力が違っていても、左右のジャッキの伸長速度が同じになる。制御ユニット90は、推進用ジャッキ70が伸長してストロークエンドまで伸長を完了した後に、油圧ポンプを自動停止する。
【0045】
次いで、オペレータは、遠隔操作器80を操作し、前部クランプジャッキ50用のクランプボタンを押す。これにより、制御ユニット90は、油圧ポンプを起動させ、
図9に示すように、前部クランプジャッキ50を把持状態にする(以下、「状態6」ともよぶ)。制御ユニット90は、前部クランプジャッキ50の把持圧力が所定圧力(例えば60MPa)以上に油圧が上昇したら油圧ポンプを自動停止する。
【0046】
次いで、オペレータは、遠隔操作器80を操作し、後部クランプジャッキ60用のアンクランプボタンを押す。これにより、制御ユニット90が自動的に油圧ポンプを起動し、後部クランプジャッキ60をアンクランプにする。制御ユニット90は、クランプ圧力がゼロになったら油圧ポンプを自動的に停止する。
【0047】
次いで、オペレータは、遠隔操作器80を操作して、推進用ジャッキ70の後退スイッチを押す。これにより、制御ユニット90が自動的に油圧ポンプを起動し、
図10に示すように、推進用ジャッキ70がジャッキストロークを短縮する(以下、「状態7」ともよぶ)。
【0048】
これにより、後部クランプジャッキ60自体がレールRに沿って前方に移動する。次いで、オペレータは、遠隔操作器80を操作し、後部クランプジャッキ60を再び把持状態にする。以下、上記「状態1」~「状態7」を繰り返すことにより、上り勾配の低い側から高い側に向けてセントル10とレールRとを移動できる。
【0049】
このようにして、本実施形態のセントル10は、上り勾配のトンネルTにおいて、前後に設けた複数のクランプジャッキ50、60を用いてレールRの把持およびその解放を行う動作と、セントル昇降ジャッキ27、28により車台23、24の車輪23w、24wを走行高さおよび離隔高さに位置させる動作と、推進用ジャッキ70の伸縮によるセントル10に対する押し引きの動作との組み合わせにより、上り勾配の低い側から高い側に向けてセントル10自身およびレールRを交互に連続して安全に移動させることができる。
【0050】
次に、本実施形態のセントル10およびレールRの移動方法による作用効果について説明する。
本実施形態のセントル移動方法では、上述したように、状態1~7を順に繰り返すことにより、セントル10自身とレールRとを交互に複数の油圧ジャッキで移動しつつ、セントル10の逸走を確実に防止できる。これにより、本実施形態のセントル10およびセントル移動方法によれば、急勾配な場所であっても、ワイヤによる牽引によらず、セントル移動作業を安全に行える。
【0051】
また、本実施形態セントル10およびセントル移動方法では、セントル10の自重を反力として走行時のレールRおよび自身のレール上での姿勢を保持できる。そのため、基礎等の反力支持部材を別途設置する必要がなくその手間が省ける。
【0052】
さらに、本実施形態のセントル10およびセントル移動方法によれば、セントル後方に位置するレールRをセントル10の走行方向に沿って前方に送ることができる。そのため、レールRの前送り作業やレール移動用の設備、敷設工程を短縮できる。また、レール部材の数を最小限で済ませることがきできるため経済的である。
【0053】
なお、本発明に係るセントル移動方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 セントル
20 ガントリ
21、22 走行脚部
23、24 車台
23w、24w 車輪
25、26 支持脚部
27、28 セントル昇降ジャッキ
30 主型枠
31~34 型枠部材
35 支持梁
41 上部フォーム
42 側部フォーム
43 下部フォーム
44~47 フォーム用ジャッキ
50 前部クランプジャッキ
60 後部クランプジャッキ
70 推進用ジャッキ
80 遠隔操作器
90 制御ユニット
R レール
S 打設空間