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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】凍結保存容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20220601BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A61J3/00 301
A61J1/10 333C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020017810
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021122493
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599029420
【氏名又は名称】田畑 泰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松澤 綾子
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 八州
(72)【発明者】
【氏名】田畑 泰彦
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-206178(JP,A)
【文献】特開2017-217195(JP,A)
【文献】特開平11-130097(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0038406(KR,A)
【文献】国際公開第2017/026131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、
前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする凍結保存容器。
【請求項2】
第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、
前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通位置に対応する前記収容室の中央部分に線状に連続配置されるとともに、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする凍結保存容器
【請求項3】
第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、
前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通位置に対応する前記収容室の中央部分に破線状に分散配置されるとともに、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする凍結保存容器
【請求項4】
第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、
前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通が部分的に可能な距離だけ離間して複数配置されるとともに、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする凍結保存容器
【請求項5】
前記ピペットを挿通させるために、前記収容室の少なくとも一部に連通するように、前記第1のシート状部材の周縁部と前記第2のシート状部材の周縁部とに溶着されるとともに、開閉可能な蓋部を有したポート部を、さらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の凍結保存容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞などの生体組織の凍結保存に用いられる細胞保存用バッグとして適用される凍結保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凍結保存容器は、再生医療や遺伝子治療、移植治療などの分野において、様々な用途に広く利用されている。即ち、生体組織より採取された細胞は、採取されてから再生医療などに実際に用いられるまでの間、凍結保存容器内に収容された状態で凍結され、凍結保存容器ごと保存される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
細胞の凍結保存に用いられる一般的な細胞保存用バッグの場合、凍結時には、細胞を懸濁させた保存液を内部に収容した状態で、液体窒素を用いて急速に凍結されるとともに、解凍時には、ぬるめの温水を用いて徐々に解凍されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-42212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような再生医療などの分野においては、細胞の要素構造と生物機能を壊さない程度に、保存液の凍結時間や解凍時間をできるだけ短くしたいという要求がある。
【0006】
細胞の要素構造と生物機能を壊すことなく、保存液の凍結時間や解凍時間を短くするためには、熱の伝わりが良くなるように、細胞保存用バッグを構成するシート状部材のシート厚をできるだけ薄くすればよい。シート状部材は、薄くなればなるほど熱を伝え易くなるため、超低温状態での使用にも耐え得る程度に、できるだけ薄くすることが望ましい。
【0007】
しかしながら、シート厚を薄くし過ぎると、保存液の体積の変化などにより細胞保存用バッグが膨らむなど、変形し易くなる。細胞保存用バッグの変形は、収容されている保存液の温度分布や濃度分布を不均一にする要因となり、凍結や解凍の均一性を損なう結果となる。このため、シート厚を薄くするだけでは、簡単には保存液の凍結時間や解凍時間を短くできないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シート厚を薄くした場合にも、生体由来のサンプルを含む液体を収容する収容室が必要以上に膨らむのを防止でき、該液体の凍結時間や解凍時間を短くすることが可能な凍結保存容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明の一態様の凍結保存容器は、第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の他の態様の凍結保存容器は、第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通位置に対応する前記収容室の中央部分に線状に連続配置されるとともに、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の他の態様の凍結保存容器は、第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通位置に対応する前記収容室の中央部分に破線状に分散配置されるとともに、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の他の態様の凍結保存容器は、第1のシート状部材の周縁部と第2のシート状部材の周縁部とが溶着されて、該周縁部を除く部分に、生体由来のサンプルを含む液体を収容可能な収容室が形成された袋体を備え、前記袋体内へのピペットの挿通が可能な凍結保存容器であって、前記袋体の内面には、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材との間が前記溶着よりも脆弱に圧着されてなり、前記液体の凍結時および解凍時に、前記収容室の形状が過度に変形するのを抑制する膨張抑制部が、前記ピペットの挿通が部分的に可能な距離だけ離間して複数配置されるとともに、前記ピペットの挿通に伴って分離可能に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様の凍結保存容器によれば、膨張抑制部を設けたことによって、第1のシート状部材および第2のシート状部材の厚さを薄くした場合にも、凍結時や解凍時に、収容室が変形し過ぎるのを抑制できるようになる。これにより、第1のシート状部材および第2のシート状部材の厚さをできる限り薄くすることが可能となる。したがって、生体由来のサンプルを含む液体の凍結時間や解凍時間をより短時間化できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート厚を薄くした場合にも、生体由来のサンプルを含む液体を収容する収容室が必要以上に膨らむのを防止でき、該液体の凍結時間や解凍時間を短くすることが可能な凍結保存容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)~(c)は、第1実施形態に係る凍結保存容器が適用される細胞保存用バッグの構成例を示す概略図である。
図2】(a)~(c)は、図1に示す細胞保存用バッグの使用例を示す概略図である。
図3】(a),(b)は、第2実施形態に係る細胞保存用バッグの構成例を示す概略図である。
図4】(a),(b)は、第3実施形態に係る細胞保存用バッグの構成例を示す概略図である。
図5】第4実施形態に係る細胞保存用バッグの構成例を示す概略平面図である。
図6】第5実施形態に係る細胞保存用バッグの構成例を示す概略平面図である。
図7】(a),(b)は、第6実施形態に係る細胞保存用バッグの構成例を示す概略図である。
図8】(a)~(c)は、図7に示す細胞保存用バッグの使用例を示す概略図である。
図9】(a)~(c)は、その他の実施形態に係る細胞保存用バッグの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、各実施の形態において、図面は、細胞保存用バッグの構成を模式的に示すものであって、実際のものとは異なるものであることに留意すべきである。
【0014】
<第1実施形態>
図1(a)~図1(c)は、本発明の第1実施形態に係る凍結保存容器が適用される細胞保存用バッグの構成例を概略的に示すものであって、図1(a)は上面図、図1(b)は正面図(平面図)、図1(c)は図1(b)の1c-1c線に沿う断面図である。また、図2(a)~図2(c)は、図1(a)~図1(c)に示す細胞保存用バッグの使用例を概略的に示すものであって、図2(a)は正面図、図2(b)は図2(a)の2b-2b線に沿う断面図、図2(c)は図2(a)の2c-2c線に沿う断面図である。
【0015】
図1(a)~図1(c)に示すように、本実施形態の細胞保存用バッグは、2枚の樹脂製のシート状部材101、103の周縁部分が相互に溶着されてなる構成の、容器本体(袋体)100を備えている。
【0016】
より詳しくは、容器本体100は、樹脂製の第1のシート状部材101の周縁部と樹脂製の第2のシート状部材103の周縁部とが溶着された周縁溶着部111を備えている。そして、周縁溶着部111によって囲まれた部分(空間領域)に、例えば図2(a)~図2(c)に示すように、生体由来のサンプルを含む保存液(液体)130が収容される収容室113が形成されている。生体由来のサンプルの具体例としては、細胞、細胞の3D凝集体、細胞シートやその積層体、生体組織およびその破砕物、細胞内オルガネラ、細胞外分泌物(エクソソームなど)、2種類以上の細胞からなる3D凝集体(オルガノイドなど)、細胞シートおよびその積層体である。
【0017】
容器本体100には、後述するピペット(スポイト)の挿通方向に沿って、凍結時および解凍時に、収容室113の形状が必要以上に大きく変形するのを抑制するための膨れ抑制部(膨張抑制部)109aが設けられている。即ち、複数本(ここでは、2本)の膨れ抑制部109aを設けることによって、容器本体100を構成する第1のシート状部材101および第2のシート状部材103が膨らみ難くなるように補強されている。
【0018】
また、容器本体100には、収容室113の少なくとも一部に連通するように、第1のシート状部材101の周縁部分と第2のシート状部材103の周縁部分との間に溶着されてなるポート部105が設けられている。ポート部105は、保存液130の出し入れを行うためのもので、例えば、片手での開閉が可能なスクリュー式のキャップ(蓋部)107を備えている。
【0019】
本実施形態においては、例えば図2(a)に示すように、2本の膨れ抑制部109aが、ポート部105からのピペット120の挿通が可能な距離だけ離間して配置されている。即ち、2本の膨れ抑制部109aは、例えば図1(b),図1(c)に示すように、第1のシート状部材101と第2のシート状部材103とが収容室113の中央部付近の2か所において、それぞれ、所定の距離を保ちつつ、互いに平行に、かつ、ほぼ線状に連続するようにして溶着されている。
【0020】
これにより、例えば図2(a)~図2(c)に示すように、ピペット120は、2本の膨れ抑制部109aに沿って収容室113内に挿通可能とされるとともに、先端部分が収容室113の最深部113aの近傍にまで容易に到達可能とされている。
【0021】
ここで、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103には、断熱能がないよう、例えば、0.3mm厚程度以下、好ましくは0.2mmよりも薄いEVA樹脂(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)などの可撓性を有する熱可塑性樹脂が用いられる。第1のシート状部材101および第2のシート状部材103の膜厚(シート厚)としては、細胞の要素構造と生物機能を壊したりすることなく、超低温状態での使用にも耐え得る程度まで最薄化できる。
【0022】
なお、EVA樹脂に限らず、例えば、環状オレフィン重合体(COC樹脂)などを用いることも可能である。
【0023】
凍結時、細胞保存用バッグは、収容室113内に生体由来のサンプルを含む保存液130を収容した状態において、例えば、-196℃の液体窒素内に沈められる。これにより、生体由来のサンプルを含む保存液130は、細胞保存用バッグごと凍結保存される。
【0024】
この場合、細胞保存用バッグは、2本の膨れ抑制部109aによって収容室113が必要以上に膨張することなく、生体由来のサンプルを含む保存液130を、ほぼ一様の温度勾配および濃度勾配を有して凍結させることが可能となる。
【0025】
一方、解凍時には、細胞保存用バッグが液体窒素内より取り出され、例えば、37℃程度に温度制御されたぬるめの温水に細胞保存用バッグごと浸される。これにより、収容室113内の凍結状態にある保存液130を、ほぼ一様の温度勾配および濃度勾配を有して解凍させることが可能となる。
【0026】
本実施形態によれば、例えば図2(a)~図2(c)に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時においては、2本の膨れ抑制部109aによって、収容室113が必要以上に膨らむのを抑制することが可能となる。しかも、2本の膨れ抑制部109aが、解凍時にピペット120による保存液130の出し入れ(特に、取り出し)を妨げることもない。
【0027】
即ち、本実施形態に係る細胞保存用バッグは、2本の膨れ抑制部109aによって、収容室113の断面を可能な限り薄く、しかも、ほぼ均一な厚さに保つことができるようになる。これにより、収容物である保存液130に対する凍結時および解凍時の熱の伝わりを、できるだけ均等にすることが可能となる。したがって、温度勾配や濃度勾配を招くことなく、保存液130の凍結時間や解凍時間をより短時間化できるようになる。
【0028】
特に、膨れ抑制部109aを、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103の一部を溶着させたことにより、使い捨てが可能な細胞保存用バッグを安価に提供できる。
【0029】
なお、第1実施形態に係る細胞保存用バッグにおいては、破線状に複数に分散配置してなる膨れ抑制部としても良い(図示省略)。
【0030】
いずれの場合においても、膨れ抑制部の数を増やすことによって、使用時の収容室113の断面をより薄くなるようにすることが可能である。
【0031】
<第2実施形態>
図3(a)および図3(b)は、本発明の第2実施形態に係る細胞保存用バッグ(使用前)の構成例を概略的に示すものであって、図3(a)は正面図、図3(b)は図3(a)の3b-3b線に沿う断面図である。なお、図3(a)および図3(b)において、第1実施形態の細胞保存用バッグと同一部分には、同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0032】
即ち、本実施形態の細胞保存用バッグは、例えば、第1のシート状部材101の中央部付近に取り付けられた第1の膨れ抑制部(第1抑制部)と、第2のシート状部材103の中央部付近に取り付けられた第2の膨れ抑制部(第2抑制部)と、によって、膨れ抑制部109bが構成されている。
【0033】
膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部は、図3(a)および図3(b)に示すように、ポート部105からのピペット(図示省略)の挿通が可能なように、それぞれ、所定の距離を保ちつつ、互いに平行に、かつ、ほぼ線状に連続するようにして配置されている。
【0034】
ここで、膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部は、例えば硬質プラスチックスなどの補強部材である。これにより、生体組織より採取された生体由来のサンプルを含む保存液(液体)130を収容可能な収容室113の形状が、凍結時および解凍時に、必要以上に変形しないように抑制することが可能となる。
【0035】
その他の構成は、第1実施形態で示した細胞保存用バッグとほぼ同様である。
【0036】
本実施形態によれば、例えば図3(a)および図3(b)に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時においては、膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部によって、収容室113が大きく膨らむのを容易に抑制することが可能となる。しかも、膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部が、解凍時にピペット120による保存液130の取り出しを妨げることもない。
【0037】
なお、膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部は、ピペット120の挿通方向に沿う方向に限らず、挿通方向と交差する方向、または、収容室113の対角方向に取り付けられるようにしても良い。
【0038】
また、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103のいずれか一方に取り付けられる場合に限らず、両方に取り付けられるようにしても良い。つまり、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103を、膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部を介して相互に接着させる構成とすることも可能である。
【0039】
また、膨れ抑制部109bを構成する第1,第2の膨れ抑制部は、いずれか一方または両方の、ほぼ同じ位置において対向配置するようにしても良い。
【0040】
いずれの場合においても、膨れ抑制部の数を増やすことによって、使用時の収容室113の断面がより薄くなるようにすることが可能である。
【0041】
<第3実施形態>
図4(a)および図4(b)は、本発明の第3実施形態に係る細胞保存用バッグ(使用前)の構成例を概略的に示すものであって、図4(a)は上面図、図4(b)は正面図である。なお、図4(a)および図4(b)において、第1実施形態の細胞保存用バッグと同一部分には、同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0042】
即ち、本実施形態の細胞保存用バッグは、例えば図4(a)および図4(b)に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時に収容室113の形状が必要以上に変形しないように、容器本体100を補強するための1本の膨れ抑制部109aが設けられている。この膨れ抑制部109aは、例えば、第1のシート状部材101と第2のシート状部材103とが収容室113の中央部付近において、ほぼ線状に連続するようにして溶着されている。
【0043】
また、容器本体100には、収容室113の少なくとも一部に連通するように、第1のシート状部材101の一縁部分と第2のシート状部材103の一縁部分との間に溶着されてなるポート部115が設けられている。このポート部115は、生体由来のサンプルを含む保存液130を内部(溜池部)115aに一時的に貯留するためのもので、例えば、片手での開閉が可能なスクリュー式のキャップ107を備えている。
【0044】
本実施形態においては、ポート部115内へのピペット(図示省略)の挿通により、生体由来のサンプルを含む保存液130の出し入れが可能とされる。そのため、収容室113内にピペットが挿通されないことから、収容室113の中央部付近に、第1のシート状部材101と第2のシート状部材103とがほぼ線状に連続するようにして溶着された1本の膨れ抑制部109aを設けることが可能である。
【0045】
その他の構成は、第1実施形態で示した細胞保存用バッグとほぼ同様である。
【0046】
本実施形態によれば、例えば図4(a)および図4(b)に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時においては、1本の膨れ抑制部109aによって、収容室113が必要以上に膨らむのを抑制することが可能となる。特に、ポート部115による収容室113の変形を抑制する効果も期待できる。しかも、1本の膨れ抑制部109aが、解凍時にピペット120による保存液130の取り出しの妨げとなることもない。
【0047】
なお、第3実施形態に係る細胞保存用バッグにおいては、1本の膨れ抑制部を破線状に複数に分散配置した構成としても良いし、ピペットの挿通方向によらず、複数の膨れ抑制部を配置する構成とすることもできる。
【0048】
また、膨れ抑制部109aに代えて、第2実施形態として示した膨れ抑制部109bを適用することも可能である。
【0049】
<第4実施形態>
図5は、本発明の第4実施形態に係る細胞保存用バッグ(使用前)の構成例を概略的に示す正面図である。なお、図5において、第1実施形態の細胞保存用バッグと同一部分には、同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0050】
即ち、本実施形態の細胞保存用バッグは、例えば図5に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時に収容室113の形状が必要以上に変形しないように、容器本体100を補強するための膨れ抑制部109cが設けられている。この膨れ抑制部109cは、ピペット(図示省略)の挿通方向に沿って、第1のシート状部材と第2のシート状部材とが収容室113の中央部付近において、ほぼ線状に連続するようにして圧着されている。
【0051】
本実施形態において、膨れ抑制部109cは、収容室113内へのピペットの挿通の妨げとなるのを回避するために、剥離可能な構成、例えば、第1のシート状部材と第2のシート状部材とを溶着よりも脆弱な圧着によって接合した構成とされている。
【0052】
例えば、凍結時には圧着状態とされて収容室113が膨らむのを抑制した膨れ抑制部109cは、ピペットの挿通に伴って剥離状態となることが可能とされている。
【0053】
その他の構成は、第1実施形態で示した細胞保存用バッグとほぼ同様である。
【0054】
本実施形態によれば、例えば図5に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時においては、膨れ抑制部109cによって、収容室113が必要以上に膨らむのを抑制することが可能となる。しかも、安価であり、膨れ抑制部109cを剥離可能な構成としたことにより、解凍時にピペットによる保存液の取り出しの妨げとなることもない。
【0055】
なお、膨れ抑制部109cは、例えば、着脱が繰り返し可能な線状の面ファスナーやチャック式またはマグネット式のジッパーなどでも良い。
【0056】
また、膨れ抑制部109cとしては、1本に限らず、複数の膨れ抑制部を備えた構成とすることも可能である(図示省略)。
【0057】
<第5実施形態>
図6は、本発明の第5実施形態に係る細胞保存用バッグ(使用前)の構成例を概略的に示す正面図である。なお、図6において、第4実施形態の細胞保存用バッグと同一部分には、同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0058】
即ち、本実施形態の細胞保存用バッグは、例えば図6に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時に収容室113の形状が必要以上に変形しないように補強するための膨れ抑制部109dが、破線状に複数に分散配置されている。
【0059】
その他の構成は、第4実施形態で示した細胞保存用バッグとほぼ同様である。
【0060】
本実施形態においては、膨れ抑制部109dを分散させて配置することによって、収容室113が膨らむのを容易に抑制しつつも、収容室113内へのピペット(図示省略)の挿通時にはより容易に剥離状態となり、保存液の取り出しの妨げとなるのを回避可能となる。
【0061】
<第6実施形態>
図7(a),図7(b)は、本発明の第6実施形態に係る細胞保存用バッグ(使用前)の構成例を概略的に示すものであって、図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)の7b-7b線に沿う断面図である。また、図8(a)~図8(c)は、図7(a),図7(b)に示す細胞保存用バッグの使用例を概略的に示すものであって、図8(a)は正面図、図8(b)は図8(a)の8b-8b線に沿う断面図、図8(c)は図8(a)の8c-8c線に沿う断面図である。なお、図7(a),図7(b)および図8(a)~図8(c)において、第5実施形態の細胞保存用バッグと同一部分には、同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0062】
本実施形態の場合、例えば図7(a),図7(b)に示すように、後述するピペットの挿通方向に沿って、複数(ここでは、4本)の膨れ抑制部109eが、それぞれ、所定の距離を保ちつつ、互いに平行に、かつ、ほぼ破線状に複数に分割配置した構成とされている。
【0063】
4本の膨れ抑制部109eは、例えば収容室113のほぼ中央部付近において、いずれも、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103を圧着した構成とされている。
【0064】
また、4本の膨れ抑制部109eは、所定の距離、例えば図8(a)~図8(c)に示すように、ポート部105からのピペット120の挿通が可能な距離よりも狭い間隔で配置されている。
【0065】
本実施形態においては、ピペット120の太さ(径)よりも膨れ抑制部109eの間隔が狭いので、収容室113内へのピペット120の挿通に伴って、膨れ抑制部109eが容易に剥離状態となる。これにより、膨れ抑制部109eは、収容室113が膨らむのを抑制しつつも、保存液130の取り出しの妨げとなるのを容易に回避可能となる。
【0066】
即ち、ポート部105から収容室113内へのピペット120の挿通に伴って、剥離状態となる程度の圧着により膨れ抑制部109eを形成するようにしたので、ピペット120の太さよりも狭い間隔で膨れ抑制部109eを配置することが可能となる。したがって、断面形状が変形し易い収容室113を、より多くの膨れ抑制部109eによって補強できるようになる。しかも、膨れ抑制部109eの間隔に応じて専用のピペットを新規に開発したりすることなく、既存のピペット120による保存液130の出し入れ、特に取り出しが容易に可能となる。
【0067】
なお、生体由来のサンプルを含む保存液130の収容は、ポート部105に近いところから、膨れ抑制部109eを剥離しないようにして行われる。
【0068】
本実施形態によれば、例えば図8(a)~図8(c)に示すように、使用時、特に凍結時および解凍時においては、4本の膨れ抑制部109eによって、収容室113が必要以上に膨らむのを抑制することが可能となる。しかも、4本の膨れ抑制部109aが、解凍時にピペット120による保存液130の取り出しを妨げることもなく、ピペット120の先端部分が、収容室113の最深部の近傍にまで容易に到達可能とされる。よって、既存のピペット120による保存液130の出し入れが可能な、安価な細胞保存用バッグとすることができる。
【0069】
なお、膨れ抑制部109eとしては、4本に限らず、また、膨れ抑制部が、ほぼ線状に連続するようにして配置された構成としても良い。
【0070】
<他の実施形態>
上記した各実施形態の細胞保存用バッグにおいては、いずれも、第1のシート状部材101と第2のシート状部材103とで形成される収容室113が、より十分な容量となるように構成することも可能である。
【0071】
即ち、例えば図9(a)に示すように、収容室113が十分な容量となるように、第1のシート状部材101に余裕を持たせた状態で、膨れ抑制部109を形成するようにしても良い。
【0072】
ここで、膨れ抑制部109は、上述の膨れ抑制部109a、109b、109c、109d、109eを総称したものとなっている。
【0073】
なお、例えば図9(b)に示すように、収容室113が十分な容量となるように、第2のシート状部材103に余裕を持たせた状態で、膨れ抑制部109を形成するようにしても良い。
【0074】
または、例えば図9(c)に示すように、収容室113が十分な容量となるように、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103に余裕を持たせた状態で、膨れ抑制部109を形成するようにしても良い。
【0075】
上述したように、本発明の各実施形態に係る細胞保存用バッグによれば、いずれの場合にも、凍結時および解凍時に、細胞保存用バッグの収容室113が必要以上に膨らむのを抑制できるようになる。
【0076】
即ち、第1のシート状部材101と第2のシート状部材103とからなる容器本体100の、生体由来のサンプルを含む保存液130を収容する収容室113に、膨れ抑制部109(109a,109b,109c,109d,109e)を備えるようにしている。これにより、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103のシート厚をより薄くした場合にも、凍結時および解凍時に収容室113が膨張し、形状が変形するのを抑制できるようになる。その結果、第1のシート状部材101および第2のシート状部材103のシート厚をできる限り薄くすることが可能となる。したがって、細胞を傷付けたり、細胞保存用バッグを壊したりすることなしに、保存液130に対する熱の伝わりを良くすることができ、保存液130の凍結時間や解凍時間を大幅に短縮できるようになるものである。
【0077】
なお、各実施形態においては、細胞保存用バッグとして、いずれもスクリュー式のキャップ107付きのポート部105、115を備えた構成を例示したが、これに限らず、シールなどを用いて密閉するものであっても良い。
【0078】
以上、実施の形態を例示して本発明の一態様について説明したが、一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0079】
100 容器本体(袋体)
101 第1のシート状部材
103 第2のシート状部材
105、115 ポート部
107 スクリュー式のキャップ(蓋部)
109、109a、109b、109c、109d、109e 膨れ抑制部(膨張抑制部)
111 周縁溶着部
113 収容室
120 ピペット
130 保存液(生体由来のサンプルを含む液体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9