(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ソフトウェアの更新方法及びその更新システム
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20220601BHJP
【FI】
G06F8/65
(21)【出願番号】P 2021194962
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2021-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501403863
【氏名又は名称】株式会社オーイーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一郎
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-047875(JP,A)
【文献】特開2009-102003(JP,A)
【文献】特開2021-039681(JP,A)
【文献】特開2019-074800(JP,A)
【文献】特開2017-084001(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150565(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/035597(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設けられたサーバに無線ネットワークを介して接続可能であって、通信コア用ソフトウェアが記録された通信コアROMを有する通信コアと、
制御装置を制御するためのメインコア用ソフトウェアが記録されたメインコアROMを有するメインコアと、を備え、
上記通信コアと上記メインコアとは、別個の基板に搭載されるとともに、上記通信コアと上記メインコアの間はシリアル通信によりデータ通信が可能な制御システムにおいて、上記メインコア用ソフトウェアの更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行するソフトウェアの更新方法であって、
上記制御装置が稼働しているときに、上記通信コアは上記サーバに接続し、このサーバに格納されたメインコア用更新ファイルをダウンロードし、この通信コアに設けられた補助記憶媒体に記録し、
上記更新処理の実行は、
上記メインコアが上記通信コアに対して、上記メインコア用ソフトウェアを更新する旨を通知し、
その後、上記補助記憶媒体に記録された上記メインコア用更新ファイルを用いて、上記通知を受けた上記通信コアが上記メインコア用ソフトウェアを更新するソフトウェアの更新方法。
【請求項2】
上記制御装置が稼働しているときに、上記通信コアは上記サーバに接続し、このサーバに格納された通信コア用更新ファイルをダウンロードし、上記補助記憶媒体に記録し、
上記通信コア用ソフトウェアの更新処理の実行は、上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、
上記補助記憶媒体に記録された上記通信コア用更新ファイルを用いて、上記通信コアが、上記通信コア用ソフトウェアを更新する請求項1に記載のソフトウェアの更新方法。
【請求項3】
上記メインコアROMに上記制御装置の制御及びまたは上記通信コアの制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルが記録され、
上記制御装置が稼働しているときに、上記通信コアは上記サーバに接続し、このサーバに格納されたプロパティ更新ファイルをダウンロードし、上記補助記憶媒体に記録し、
上記プロパティファイルの更新処理の実行は、上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、
上記補助記憶媒体に記録された上記プロパティ更新ファイルを用いて、上記通信コアが、上記プロパティファイルを更新する請求項1または請求項2に記載のソフトウェアの更新方法。
【請求項4】
外部に設けられたサーバに無線ネットワークを介して接続可能な通信コアと、
制御装置を制御するためのメインコアと、を備え
上記通信コアと上記メインコアとは、別個の基板に搭載されるとともに、上記通信コアと上記メインコアの間はシリアル通信によりデータ通信が可能な制御システムにおいて、上記メインコアに搭載されたメインコアROMに記録されたメインコア用ソフトウェアを更新する更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行するソフトウェアの更新システムであって、
上記メインコア用ソフトウェアの更新は、上記通信コアが上記メインコアROMにアクセスし、更新を行うソフトウェアの更新システム。
【請求項5】
通信コアに搭載された通信コアROMに記録された通信コア用ソフトウェアを更新する更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、
上記通信コア用ソフトウェアの更新は、上記通信コアが上記通信コアROMにアクセスし、更新を行う請求項4に記載のソフトウェアの更新システム。
【請求項6】
上記メインコアROMに上記制御装置の制御及びまたは上記通信コアの制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルが記録され、
上記プロパティファイルを更新する更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、
上記プロパティファイルの更新は、上記通信コアが上記メインコアROMにアクセスし、更新を行う請求項4または請求項5に記載のソフトウェアの更新システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウェアの更新方法及びその更新システム、詳しくは、車両用電子制御装置等の産業用・民生用機器で動作するプログラムの更新を行うソフトウェアの更新技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転支援機能や自動運転技術の進展、土木・介護等の幅広い業界でのICT機器の活用、新型コロナウイルス感染症による情報通信機器の需要増等により、これらを支える電子制御装置(ECU:Electric Control Unit)に搭載されるソフトウェアの規模が増大している。それに伴い、ソフトウェアの不具合に起因するリコールの回数だけでなく、1回のリコールあたりに対応が必要な台数も増加している。このような状況下において、制御プログラムやBIOSなど、ECUに搭載されるソフトウェアを遠隔で更新する技術へのニーズが高まっている。
【0003】
例えば、自動車用のECUに搭載されるソフトウェアを更新する場合には、一昔前はディーラ等で整備士が更新作業を行う必要があったが、ソフトウェアを無線(OTA: Over the Air)で更新する技術が開発され、ECUに搭載されるソフトウェアをOTAで自動更新することが可能となった。
自動車にOTA技術を適用する場合、ソフトウェアの更新データは、OTAセンターと呼ばれるデータセンターから自動車に配信される。更新データは、自動車の通信機器とゲートウェイを通って、自動車を制御するECUに送られる。そして、ECUでソフトウェアを更新する。
【0004】
OTA技術では、ECUを専門技術者による更新を必要としないため、現在社会に欠かせない技術であるといえるが、たとえば、何らかの制御がECUによって行われている段階での更新作業は、更新処理の失敗等により、ECUによる制御ができない時間帯が発生することによる影響(リスク)を考慮する必要があり、リスク回避(低減)のために、ECUによる制御が行われていない時間帯においてソフトウェアを更新する技術は各種提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-131729号公報
【文献】特開2021-47637号公報
【文献】特開2020-201986号公報
【文献】特開2020-164113号公報
【文献】特開2020-149345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~5に記載の技術においては、いずれも、通信コア(外部サーバと接続する通信部材)からダウンロードした更新用プログラムを補助記憶媒体に格納し、メインコアに相当する部材(制御プログラムにより各種制御を行う部材)自らがこの補助記憶媒体にアクセスし、メインコアによって自身のROMに記録されたソフトウェアの更新を行っている。
この方法によれば、メインコアに更新プログラムを送信しなければならず、その伝送速度が遅いことから更新にかかる時間が長期にわたり、メインコアによる制御が必要となる時間がきたときに、その制御ができないリスクが生じる。特に、この更新プログラムの容量が大きいほど、そのリスクは大きくなる。このため、当該リスク対応が必要となる。
【0007】
また、メインコアは制御すべきものが多く、その処理に必要な制御プログラムも複雑化する。制御プログラムが複雑化することにより、システムエラーが生じるリスクが高くなる。当該リスク対応も別途必要であった。
【0008】
そこで、発明者らは、メインコアと通信コアとの負荷と通信コアとメインコアとの間の伝送速度に着目した。そして、通信コアに記憶装置を設け、通信コアがメインコアのROMにアクセスし、メインコア用ソフトウェアを更新することにより、これらの課題を解決することができることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、更新にかかる時間を短縮し、メインコアによる制御が必要となる時間がきたときに、その制御ができないリスクを低減することを目的とする。
加えて、メインコア用ソフトウェアを単純化し、システムエラーが生じるリスクを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、外部に設けられたサーバに無線ネットワークを介して接続可能であって、通信コア用ソフトウェアが記録された通信コアROMを有する通信コアと、制御装置を制御するためのメインコア用ソフトウェアが記録されたメインコアROMを有するメインコアと、を備え、上記通信コアと上記メインコアとは、別個の基板に搭載されるとともに、上記通信コアと上記メインコアの間はシリアル通信によりデータ通信が可能な制御システムにおいて、上記メインコア用ソフトウェアの更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行するソフトウェアの更新方法であって、上記制御装置が稼働しているときに、上記通信コアは上記サーバに接続し、このサーバに格納されたメインコア用更新ファイルをダウンロードし、この通信コアに設けられた補助記憶媒体に記録し、上記更新処理の実行は、上記メインコアが上記通信コアに対して、上記メインコア用ソフトウェアを更新する旨を通知し、その後、上記補助記憶媒体に記録された上記メインコア用更新ファイルを用いて、上記通知を受けた上記通信コアが上記メインコア用ソフトウェアを更新するソフトウェアの更新方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記制御装置が稼働しているときに、上記通信コアは上記サーバに接続し、このサーバに格納された通信コア用更新ファイルをダウンロードし、上記補助記憶媒体に記録し、上記通信コア用ソフトウェアの更新処理の実行は、上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、上記補助記憶媒体に記録された上記通信コア用更新ファイルを用いて、上記通信コアが、上記通信コア用ソフトウェアを更新する請求項1に記載のソフトウェアの更新方法である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、上記メインコアROMに上記制御装置の制御及びまたは上記通信コアの制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルが記録され、上記制御装置が稼働しているときに、上記通信コアは上記サーバに接続し、このサーバに格納されたプロパティ更新ファイルをダウンロードし、上記補助記憶媒体に記録し、上記プロパティファイルの更新処理の実行は、上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、上記補助記憶媒体に記録された上記プロパティ更新ファイルを用いて、上記通信コアが、上記プロパティファイルを更新する請求項1または請求項2に記載のソフトウェアの更新方法である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、外部に設けられたサーバに無線ネットワークを介して接続可能な通信コアと、制御装置を制御するためのメインコアと、を備え上記通信コアと上記メインコアとは、別個の基板に搭載されるとともに、上記通信コアと上記メインコアの間はシリアル通信によりデータ通信が可能な制御システムにおいて、上記メインコアに搭載されたメインコアROMに記録されたメインコア用ソフトウェアを更新する更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行するソフトウェアの更新システムであって、上記メインコア用ソフトウェアの更新は、上記通信コアが上記メインコアROMにアクセスし、更新を行うソフトウェアの更新システムである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、通信コアに搭載された通信コアROMに記録された通信コア用ソフトウェアを更新する更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、上記通信コア用ソフトウェアの更新は、上記通信コアが上記通信コアROMにアクセスし、更新を行う請求項4に記載のソフトウェアの更新システムである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、上記メインコアROMに上記制御装置の制御及びまたは上記通信コアの制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルが記録され、上記プロパティファイルを更新する更新処理を上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行し、上記プロパティファイルの更新は、上記通信コアが上記メインコアROMにアクセスし、更新を行う請求項4または請求項5に記載のソフトウェアの更新システムである。
【0016】
本発明は、OTA技術を活用したソフトウェアの更新方法およびソフトウェアの更新システムに関する。メインコア用ソフトウェアの更新処理は、上記制御装置が非稼働状態のときにのみ実行される。更新処理は、通信コアがメインコアROMに直接アクセス、メインコア用ソフトウェアの更新を行う。
メインコアと通信コアとの間のデータ伝送はシリアル通信によるものであるため、データ伝送速度は遅い。そこで、メインコアにメインコア用更新プログラムを送信するのではなく、直接メインコアROMにアクセスして、メインコア用ソフトウェアを更新することで、更新作業に必要な時間を短縮することができる。
【0017】
加えて、通信コアは、外部サーバ及びメインコアとの間の通信を行うのみであり、処理量はメインコアと比べて圧倒的に少ない。そこで、メインコア用ソフトウェアの更新を通信コアに行わせることにより、メインコア用ソフトウェアの更新におけるメインコアの処理量を削減することができる。つまり、メインコア用ソフトウェアの更新に必要な処理をメインコア用ソフトウェアに持たせる必要がなく、メインコア用ソフトウェアの複雑化を避けることが可能となる。これにより、メインコア用ソフトウェアの容量は小さくなるだけでなく、システムエラーの発生を抑制することも可能となる。
【0018】
特に、請求項2に記載の発明によれば、制御システムに搭載されているソフトウェアの更新すべてを通信コアに行わせるため、更新作業に必要な時間の短縮化、メインコア用ソフトウェアの容量の最小化、システムエラーの抑制効果が顕著となる。
【0019】
通信コアとは、通信用マイコンをコアとする通信ボードである。サーバと通信コアとの間の接続は無線ネットワークによるもの、特にWiFi(登録商標)接続や、(第4世代または第5世代)移動通信システム等である方が好ましい。高速でのデータ通信が可能であるためである。
メインコアとは、高性能汎用マイコンをコアとするメインボードである。通信コアとメインコアとの間は、シリアル通信が可能なケーブル接続されている。
なお、一般的な制御システムには、通信コアやメインコアの他に、センサや電源を管理する制御ボードを有している。
制御システムの種類はOTA技術を活用でき、通信コアとメインコアとが独立しているものであれば特に問わず、OTA技術の代表格である車載器以外にもIoT機器、ICT機器全般についても適用可能である。
【0020】
なお、請求項3に記載の発明のように、メインコア用ソフトウェアや通信コア用ソフトウェアだけでなく、メインコア用ROMに記録された、制御装置の制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルの更新にも本技術を適用することができる。例えば、メインコアと測定センサがブルートゥース(登録商標)接続されているような場合、測定センサとのペアリングについてプロパティファイルにペアリング情報を格納しておく。そして、新たに別の測定センサとペアリングさせる場合に、プロパティ更新ファイルに新たにペアリングさせようとする測定センサのペアリング情報を格納させ、OTA技術により、メインコアROMに記録されているプロパティファイルを更新する。これにより、制御システムを操作せずに、自動的に新しい機器とのペアリングを行うことも可能とする。これにより、機器の交換時の設定ファイルの書換え作業の作業負担が軽減される。
【0021】
プロパティファイルとは、制御システムの種類・機能・性能、周辺機器の種類・機能・性能などにより、メインコアによる制御に必要なパラメータが格納され、メインコア用ソフトウェアを実行する際に読み込まれるものや、通信コアによる制御に必要なパラメータが格納され、通信コア用ソフトウェアを実行する際にも読み込まれるもの、メインコア用ソフトウェアと通信コア用ソフトウェアを実行する際に読み込まれるものを指す。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、メインコア用ソフトウェアの更新処理は、制御装置が非稼働状態のときにのみ実行されるが、更新処理は、通信コアがメインコアROMに直接アクセス、メインコア用ソフトウェアの更新を行う。そして、メインコアにメインコア用更新プログラムを送信するのではなく、通信コアが直接メインコアROMにアクセスして、メインコア用ソフトウェアを更新することで、更新作業に必要な時間を短縮することができる。
【0023】
加えて、メインコア用ソフトウェアの更新を通信コアに行わせることにより、メインコア用ソフトウェアの更新におけるメインコアの処理量を削減することができる。つまり、メインコア用ソフトウェアの更新に必要な処理をメインコア用ソフトウェアに持たせる必要がなく、メインコア用ソフトウェアの複雑化を避けることが可能となる。これにより、メインコア用ソフトウェアの容量は小さくなるだけでなく、システムエラーの発生を抑制することも可能となる。
【0024】
特に、請求項2、請求項5に記載の発明によれば、制御装置に搭載されているソフトウェアの更新すべてを通信コアに行わせるため、更新作業に必要な時間の短縮化、メインコア用ソフトウェアの容量の最小化、システムエラーの抑制効果が顕著となる。
【0025】
さらに、請求項3、請求項6に記載の発明によれば、メインコア用ソフトウェアや通信コア用ソフトウェアだけでなく、メインコア用ROMに記録された、制御装置の制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルの更新にも本技術を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1に係るソフトウェアの更新システムを含めた制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るソフトウェアの更新システムによる制御プログラムの更新方法示す概略フロー図である。
【
図3】本発明の実施例2に係るソフトウェアの更新システムの機能を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る制御装置について
図1及び
図2を参照にしながら説明する。なお、本実施例1では、自動車用制御システムとして記載するが、本発明にあっては、自動車用でなくても例えば、工場の生産ラインに配置されるインラインロボットや、集合施設に導入されるゲートウェイ装置等においても、ソフトウェアの更新という側面では共通するため、本発明の適用は可能であることはいうまでもない。
【0028】
本発明の実施例1に係る制御システムは、OTAによって車両に搭載されたECUのプログラムを更新するソフトウェア更新システムの一例を示している。本実施形態におけるソフトウェア更新システムは、車両と、サーバ(OTA基地局)とを含む。車両にはメインコア(ECU)と、通信コア(無線通信機)とで対をなす制御システムが複数搭載可能である。
【0029】
メインコアは、車両に搭載された各種車載機器に対応して設けることが可能である。メインコアは、車両の諸機能を実現するために必要な制御を行う。なお、
図1では一部の制御装置のみを図示しているが、実際の車両には他にも多数の制御装置が搭載可能である。
メインコアは、制御に必要なプロセッサ、メインコアROM等が搭載された、いわゆる高性能マイコンであり、必要に応じて周辺機器(制御装置)が接続される。メインコアROMには、メインコア用制御プログラムが格納され、このメインコア用制御プログラムに沿ってプロセッサが処理を行うことにより、そのメインコアが制御すべき制御装置を制御する。
【0030】
このメインコアROMには、メインコア用制御プログラムだけでなく、メインコアによる制御及び通信コアの制御に必要なパラメータが格納されたプロパティファイルが格納されている。メインコア用制御プログラムや後述する通信コア用プログラムを実行する際に制御の内容や制御装置に接続される機器(周辺機器)の固有番号、無線通信に必要な情報など、状況に応じて変動する可能性のあるパラメータを、プログラムとは別にプロパティファイルに格納する。これにより、メインコア用プログラム、通信コア用プログラムを更新せずに、プロパティファイルを更新することで新たな制御、新たな(周辺)機器の接続などが可能となる。
【0031】
通信コアは、無線でのネットワーク接続を行い、サーバとの間でデータの送受信を行う。また、通信コアとメインコアとの間は、シリアル通信によるデータ伝送が可能となっている。
通信コアは、サーバとの通信そして、メインコアとの通信に必要なプロセッサ、通信コアROM等が搭載された無線通信装置及び、補助記憶媒体、及びこの補助記憶媒体の読み書きが可能な読書装置が搭載されている。通信コアROMには、通信コアの役割を果たすために必要な制御が記載された通信コア用制御プログラムが格納され、この通信コア用制御プログラムに沿って、プロセッサが処理を行うことにより、通信コアの機能を発揮することができる。
【0032】
このように構成された制御システムにおいて、メインコア用制御プログラム、通信コア用制御プログラム及びプロパティファイル(合わせて、単に「制御プログラム」と記載する。)を更新する方法について以下説明する。
【0033】
(バージョンの確認)
まず、制御装置学童状態にある稼働時間帯の場合には、通信コアは、制御プログラムのバージョンインコア用プログラムのバージョン、プロパティファイルのバージョン及び通信コア用プログラムのバージョン(制御プログラムのバージョン)を確認し、無線通信を利用して、サーバ(OTA基地局)にアクセスする。その後、通信コアはサーバに対して、制御プログラムの最新バージョンの送付を求める。サーバは、通信コアに制御プログラムの最新バージョンを送付する。
【0034】
通信コアは、メインコアROMに格納されているメインコア用制御プログラムのバージョンと、サーバから送られてきた制御プログラムの最新バージョンのうち、メインコア用制御プログラムのバージョン(以下、「メインコア用制御プログラムの最新バージョン」と記載する。)と対比する。
メインコアROMに格納されているメインコア用制御プログラムのバージョンと、メインコア用制御プログラムの最新バージョンとが、一致する場合には、メインコア用制御プログラムの更新は不要と判断する。
メインコア用制御プログラムの最新バージョンが、メインコアROMに格納されているメインコア用制御プログラムのバージョンと一致しない場合は、メインコア用制御プログラムの更新は必要と判断する。通信コアはサーバに、メインコア用制御プログラムのパッチファイル(メインコア用更新ファイル、以下、「メインコア用パッチファイル」と記載する。)の送付を求める。メインコア用パッチファイルの送付が求められたサーバは、通信コアに、メインコア用パッチファイルを送付する。通信コアは、メインコア用パッチファイルを受け取り、このメインコア用パッチファイルを補助記憶媒体に保存する。
【0035】
通信コアは、メインコアROMに格納されているプロパティファイルのバージョンと、サーバから送られてきた制御プログラムの最新バージョンのうち、プロパティファイルのバージョン(以下、「プロパティファイルの最新バージョン」と記載する。)と対比する。
メインコアROMに格納されているプロパティファイルのバージョンと、プロパティファイルの最新バージョンとが、一致する場合には、プロパティファイルの更新は不要と判断する。
プロパティファイルの最新バージョンが、メインコアROMに格納されているプロパティファイルのバージョンと一致しない場合は、プロパティファイルの更新は必要と判断する。通信コアはサーバに、プロパティファイルのパッチファイル(プロパティファイル用更新ファイル、以下「プロパティファイル用パッチファイル」と記載する。)の送付を求める。プロパティファイル用パッチファイルの送付が求められたサーバは、通信コアに、プロパティファイル用パッチファイルを送付する。通信コアは、プロパティファイル用パッチファイルを受け取り、このプロパティファイル用パッチファイルを補助記憶媒体に保存する。
【0036】
通信コアは、通信コアROMに格納されている通信コア用制御プログラムのバージョンと、サーバから送られてきた制御プログラムの最新バージョンのうち、通信コア用制御プログラムのバージョン(以下、「通信コア用制御プログラムの最新バージョン」と記載する。)と対比する。
通信コアROMに格納されている通信コア用制御プログラムのバージョンと、通信コア用制御プログラムの最新バージョンとが、一致する場合には、通信コア用制御プログラムの更新は不要と判断する。
通信コア用制御プログラムの最新バージョンが、通信コアROMに格納されている通信コア用制御プログラムのバージョンと一致しない場合は、通信コア用制御プログラムの更新は必要と判断する。通信コアはサーバに、通信コア用制御プログラムのパッチファイル(通信コア用更新ファイル、以下「通信コア用パッチファイル」と記載する。)の送付を求める。通信コア用パッチファイルの送付が求められたサーバは、通信コアに、通信コア用パッチファイルを送付する。通信コアは、通信コア用パッチファイルを受け取り、この通信コア用パッチファイルを補助記憶媒体に保存する。
【0037】
(メインコア用制御プログラムの更新)
エンジンの回転数や、タイヤの回転数等により、制御装置が非稼働状態にあると判断した場合、メインコアは、通信コアに対して、メインコア用制御プログラムの更新の必要性を有するか確認する。通信コアは、補助記憶媒体にメインコア用パッチファイルが存在しているか確認する。
補助記憶媒体にメインコア用パッチファイルが格納されていない場合には、メインコア用制御プログラムの更新が不要と判断し、次のステップに進む。
補助記憶媒体にメインコア用パッチファイルが格納されている場合には、メインコア用制御プログラムの更新が必要と判断し、通信コアは、補助記憶媒体に保存されたメインコア用パッチファイルを読み込み、このメインコア用パッチファイルに記載された更新プログラムをメインコアROMに格納されたメインコア用制御プログラムに対して実行する。
メインコア用制御プログラムの更新終了後、メインコア用制御プログラムのバージョンをアップした旨を記憶し、次のステップに進行する。
【0038】
(プロパティファイルの更新)
制御装置が非稼働状態にあると判断した場合、メインコアは、通信コアに対して、プロパティファイルの更新の必要性を有するか確認する。通信コアは、補助記憶媒体にプロパティファイル用パッチファイルが存在しているか確認する。
補助記憶媒体にプロパティファイル用パッチファイルが格納されていない場合には、プロパティファイルの更新が不要と判断し、次のステップに進む。
補助記憶媒体にプロパティファイル用パッチファイルが格納されている場合には、プロパティファイルの更新を必要と判断し、通信コアは、補助記憶媒体に保存されたプロパティファイル用パッチファイルを読み込み、このプロパティファイル用パッチファイルに記載された更新プログラムをメインコアROMに格納されたプロパティファイルに対して実行する。
プロパティファイルの更新終了後、プロパティファイルのバージョンをアップした旨を記憶し、次のステップに進行する。
【0039】
(通信コア用制御プログラムの更新)
制御装置が非稼働状態にあると判断した場合、通信コアは、補助記憶媒体に通信コア用パッチファイルが存在しているか確認する。
補助記憶媒体に通信コア用パッチファイルが格納されていない場合には、通信コア用制御プログラムの更新が不要と判断し、次のステップに進む。
補助記憶媒体に通信コア用パッチファイルが格納されている場合には、通信コア用制御プログラムの更新が必要と判断し、通信コアは、補助記憶媒体に保存された通信コア用パッチファイルを読み込み、この通信コア用パッチファイルに記載された更新プログラムを通信コアROMに格納された通信コア用制御プログラムに対して実行する。
通信コア用制御プログラムの更新終了後、通信コア用制御プログラムのバージョンをアップした旨を記憶し、次のステップに進行する。
【0040】
(パッチファイルの削除と再起動)
メインコア用制御プログラムのバージョンをアップした旨を記憶している場合には、補助記憶媒体に保存されているメインコア用パッチファイルを削除するとともに、メインコアのシステムを再起動させる。
また、通信コア用制御プログラムのバージョンをアップした旨を記憶している場合には、補助記憶媒体に保存されている通信コア用パッチファイルを削除するとともに、通信コアのシステムを再起動させる。
プロパティファイルのバージョンをアップした旨を記憶している場合には、補助記憶媒体に保存されているプロパティファイルを削除するとともに、メインコアのシステム及び通信コアのシステムを再起動させる。
メインコア用制御プログラムのバージョンをアップした旨を記憶していない場合には、メインコア用制御プログラムの更新がされていないため、メインコアのシステムを再起動させる必要はない。
また、通信コア用制御プログラムのバージョンをアップした旨を記憶していない場合には、通信コア用制御プログラムの更新がされていないため、通信コアのシステムを再起動させる必要はない。
メインコアと通信コアのシステムはそれぞれ独立しているため、更新したコアのみを再起動させることで、制御プログラムの更新を完了させることができる。
なお、プロパティファイルは、メインコアの制御、通信コアの制御のいずれにも用いられることから、プロパティファイルの更新後は、両者のシステムを再起動させる必要がある。
【0041】
(実施例2)
実施例1においては、メインコアと通信コアの制御プログラムの更新という側面で説明したが、機器の増設や変更によるシステムの最適化についても、本発明の適用は可能である。実施例2では、車両に搭載されたメインコアにおいて、ブルートゥース(登録商標)を用いて、携帯情報端末とペアリングする場合についての本発明の適用例について説明する。
【0042】
メインコアと携帯情報端末とをペアリングして用いる場合、メインコアには携帯情報端末のペアリング情報が必要となる。そこで、プロパティファイル中に、携帯情報端末のペアリング情報を埋め込み、実施例1に記載の方法により、プロパティファイルを更新させることにより、携帯情報端末とメインコアとが自動的にペアリングされ、携帯情報端末を通じたECUの制御を行うことが可能となる。
【0043】
この場合、サーバに保存されるパッチファイルが、メインごとに割り当てられた個別識別番号によってタグ付けされ、通信コアは、メインコアの個別識別番号をサーバに送信するとともに、サーバでは、個別識別番号によってタグ付けされたパッチファイルを通信コアに送付することが必要である。
このほかは、実施例1と同様であるため、省略する。
【要約】
【課題】プログラム等の更新にかかる時間を短縮し、メインコアによる制御が必要となる時間がきたときに、その制御ができないリスクを低減するとともに、メインコア用ソフトウェアを単純化し、システムエラーが生じるリスクを低減する。
【解決手段】メインコア用ソフトウェアの更新処理は、制御装置が非稼働状態のときにのみ実行される。更新処理は、メインコアにメインコア用更新プログラムを送信せずに、通信コアが直接メインコアROMにアクセスして、メインコア用ソフトウェアを更新する。メインコア用ソフトウェアの更新を通信コアに行わせ、メインコア用ソフトウェアの更新に必要な処理を通信コア用ソフトウェアに持たせる。
【選択図】
図2