(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】ボックスカルバートの製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20220601BHJP
E02D 29/07 20060101ALI20220601BHJP
E02D 29/09 20060101ALI20220601BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20220601BHJP
B28B 23/04 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E02D29/05 F
E02D29/07
E02D29/09
E03F3/04 A
B28B23/04
(21)【出願番号】P 2018071385
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000116769
【氏名又は名称】旭コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】狩野 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 健
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-298717(JP,A)
【文献】特開2006-022569(JP,A)
【文献】特開平02-008431(JP,A)
【文献】特開平09-004386(JP,A)
【文献】特開2006-037504(JP,A)
【文献】米国特許第04953280(US,A)
【文献】特開2009-097305(JP,A)
【文献】特公昭43-7272(JP,B1)
【文献】特開平6-185205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/05
E02D 29/07
E02D 29/09
E03F 3/04
B28B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継カップラーを備えたプレキャストコンクリート製のボックスカルバートの製造方法であって、
前記中継カップラーが、端部に第一雄ねじ溝が設けられた第一のPC鋼棒と、端部に第二雄ねじ溝が設けられた第二のPC鋼棒との間に介在し、前記第一雄ねじ溝と螺合する第一雌ねじ溝を設けた第一の挿入孔を有するとともに前記第二雄ねじ溝と螺合する第二雌ねじ溝を設けた第二の挿入孔を有し前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得る
ものであって、前記第一の挿入孔の軸心線と前記第二の挿入孔の軸心線とによってなす角度(劣角)が180°よりも小さい値に設定されている
ものであり、
前記ボックスカルバートが、底版と、この底版の左右両端部に立設された左右の側版と、これら左右の側版の上端部間に設けられた頂版とを有してなり、
前記頂版及び前記底版が、前記第一のPC鋼棒と、前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得る前記中継カップラーを備えているものであり、
前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを前記中継カップラーにより連結させた状態で、前記第一のPC鋼棒の外方端部のみをコンクリートにより作られた頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させるとともに前記中継カップラーを前記頂版本体及び前記底版本体の内部に形成した空間に移動可能に配設させておき、
前記第二のPC鋼棒の外方端部を緊張手段により牽引して、その後、当該第二のPC鋼棒の外方端部を頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させて、プレストレスが付与された頂版及び底版を得るようにしているボックスカルバートの製造方法。
【請求項2】
中継カップラーを備えたプレキャストコンクリート製のボックスカルバートの製造方法であって、
前記中継カップラーが、端部に第一雄ねじ溝が設けられた第一のPC鋼棒と、端部に第二雄ねじ溝が設けられた第二のPC鋼棒との間に介在し、前記第一雄ねじ溝と螺合する第一雌ねじ溝を設けた第一の挿入孔を有するとともに前記第二雄ねじ溝と螺合する第二雌ねじ溝を設けた第二の挿入孔を有し前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得る
ものであって、前記第一の挿入孔の軸心線と前記第二の挿入孔の軸心線とによってなす角度(劣角)が180°よりも小さい値に設定されている
ものであり、
前記ボックスカルバートが、底版と、この底版の左右両端部に立設された左右の側版と、これら左右の側版の上端部間に設けられた頂版とを有してなり、
前記頂版及び前記底版が、前記第一のPC鋼棒と、前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得る前記中継カップラーを備えているものであり、
前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを前記中継カップラーにより連結させた状態で、前記中継カップラーのみをコンクリートにより作られた頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させておき、
前記第一、第二のPC鋼棒の外方端部をそれぞれ緊張手段により同時に牽引し、その後、当該第一、第二のPC鋼棒の外方端部を頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させて、プレストレスが付与された頂版及び底版を得るようにしているボックスカルバートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボックスカルバートの頂版及び底版には、外部荷重を受けた際に端部から中央部に向かって次第に大きくなる内向きの曲げモーメントが発生するため、プレストレスにより外向きの曲げモーメントを発生させて当該曲げモーメントを相殺するためのPC鋼棒が、頂版及び底版の肉厚方向の中心を通る軸線よりもやや内側に偏位させて、水平方向に設けられているものが存在する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、ボックスカルバートの大型化や外部荷重の増大により内向きの曲げモーメントが更に大きくなると、PC鋼棒をより内側へ偏位させる必要があるが、外部荷重を受けると端部では中央部とは逆の外向きの曲げモーメントが生じるため、PC鋼棒を内側へ大きく偏位させることは、中央部に対しては有利であるが端部に対しては不利に働いてしまうという問題があった。
【0004】
また、この問題を解消するため、端部では軸線より外側、中間部では軸線より内側に偏位させて、曲線状にPC鋼材を配設させたボックスカルバートも存在する。このようにPC鋼材を配設することで、端部では外向きに生じる曲げモーメントに対して大きな抗力が作用し、中央部では内向きに生じる曲げモーメントに対して大きな抗力が作用する。このような曲線状に配設されるPC鋼材として、従来から、可とう性のあるPC鋼より線が用いられている。
【0005】
ところが、PC鋼より線を用いる場合には、少なくとも、緊張作業が完了した後にボックスカルバートの外側面から飛び出した部位を切断除去するという比較的困難な作業を強いられるという点、PC鋼より線が配設されたダクト内にグラウト材を注入し固定する工程において当該グラウト材がダクト内に完全に充填されないこと(いわゆるグラウト不良)が多いという点、及び、PC鋼より線は可とう性があり撓みやすいため所定の位置に正確に配設することがきわめて難しく、品質管理上問題があるという点、が懸念されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、一般的な直線状のPC鋼棒を好適な位置に配設させ得るボックスカルバートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に係る発明は、中継カップラーを備えたプレキャストコンクリート製のボックスカルバートの製造方法であって、前記中継カップラーが、端部に第一雄ねじ溝が設けられた第一のPC鋼棒と、端部に第二雄ねじ溝が設けられた第二のPC鋼棒との間に介在し、前記第一雄ねじ溝と螺合する第一雌ねじ溝を設けた第一の挿入孔を有するとともに前記第二雄ねじ溝と螺合する第二雌ねじ溝を設けた第二の挿入孔を有し前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得るものであって、前記第一の挿入孔の軸心線と前記第二の挿入孔の軸心線とによってなす角度(劣角)が180°よりも小さい値に設定されているものであり、前記ボックスカルバートが、底版と、この底版の左右両端部に立設された左右の側版と、これら左右の側版の上端部間に設けられた頂版とを有してなり、前記頂版及び前記底版が、前記第一のPC鋼棒と、前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得る前記中継カップラーを備えているものであり、前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを前記中継カップラーにより連結させた状態で、前記第一のPC鋼棒の外方端部のみをコンクリートにより作られた頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させるとともに前記中継カップラーを前記頂版本体及び前記底版本体の内部に形成した空間に移動可能に配設させておき、前記第二のPC鋼棒の外方端部を緊張手段により牽引して、その後、当該第二のPC鋼棒の外方端部を頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させて、プレストレスが付与された頂版及び底版を得るようにしているボックスカルバートの製造方法である。
【0010】
請求項2に係る発明は、中継カップラーを備えたプレキャストコンクリート製のボックスカルバートの製造方法であって、前記中継カップラーが、端部に第一雄ねじ溝が設けられた第一のPC鋼棒と、端部に第二雄ねじ溝が設けられた第二のPC鋼棒との間に介在し、前記第一雄ねじ溝と螺合する第一雌ねじ溝を設けた第一の挿入孔を有するとともに前記第二雄ねじ溝と螺合する第二雌ねじ溝を設けた第二の挿入孔を有し前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得るものであって、前記第一の挿入孔の軸心線と前記第二の挿入孔の軸心線とによってなす角度(劣角)が180°よりも小さい値に設定されているものであり、前記ボックスカルバートが、底版と、この底版の左右両端部に立設された左右の側版と、これら左右の側版の上端部間に設けられた頂版とを有してなり、前記頂版及び前記底版が、前記第一のPC鋼棒と、前記第二のPC鋼棒とを繋ぎ得る前記中継カップラーを備えているものであり、前記第一のPC鋼棒と前記第二のPC鋼棒とを前記中継カップラーにより連結させた状態で、前記中継カップラーのみをコンクリートにより作られた頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させておき、前記第一、第二のPC鋼棒の外方端部をそれぞれ緊張手段により同時に牽引し、その後、当該第一、第二のPC鋼棒の外方端部を頂版本体及び底版本体に対して移動不能に固定させて、プレストレスが付与された頂版及び底版を得るようにしているボックスカルバートの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、一般的な直線状のPC鋼棒を好適な位置に配設させ得るボックスカルバートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】同実施形態の中継カップラーを説明する断面図。
【
図5】他の実施形態の中継カップラーを説明する断面図。
【
図6】他の実施形態の中継カップラーを説明する正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~3を参照して説明する。
【0016】
ボックスカルバートAは、プレキャストコンクリート製のものである。ボックスカルバートAは、底版1と、底版1の左右両端部に立設された左右の側版2と、左右の側版2の上端部間に設けられた頂版3とを有している。
【0017】
底版1は、コンクリートにより作られた底版本体11と、底版本体11の内部に当該底版本体11に対して相対移動可能に配設された直線状をなす第一のPC鋼棒S1と、底版本体11の内部に当該底版本体11に対して相対移動可能に配設された直線状をなす第二のPC鋼棒S2と、第一、第二のPC鋼棒S1、S2とを繋ぐ中継カップラーCとを備えている。
【0018】
第一、第二のPC鋼棒S1、S2は、底版本体11に対して固着されないように構成されたいわゆるアンボンドタイプのものである。
【0019】
第一のPC鋼棒S1は、直線棒状のものである。第一のPC鋼棒S1の両端部には、雄ねじ溝である第一雄ねじ溝s11が設けられている。第一のPC鋼棒S1は、水平よりも傾いた姿勢をなして底版本体11内に配設されている。
【0020】
第二のPC鋼棒S2は、直線棒状のものである。第二のPC鋼棒S2の両端部には、雄ねじ溝である第二雄ねじ溝s21が設けられている。第二のPC鋼棒S2は、水平よりも傾いた姿勢をなして底版本体11内に配設されている。
【0021】
中継カップラーCは、金属製のものである。中継カップラーCは、底版本体11における左右方向中間部の内部に当該底版本体11に対して相対移動可能に配設されている。すなわち、中継カップラーCは、底版本体11に支持されたカップラーシースTの内部空間に位置されており、底版本体11に定着しないように構成されている。
【0022】
中継カップラーCは、端部に第一雄ねじ溝s11が設けられた第一のPC鋼棒S1と、端部に第二雄ねじ溝s21が設けられた第二のPC鋼棒S2との間に介在し、第一のPC鋼棒S1と第二のPC鋼棒S2とを繋ぎ得るものである。
【0023】
中継カップラーCは、第一雄ねじ溝s11と螺合する第一雌ねじ溝c11を設けた第一の挿入孔c1を有するとともに第二雄ねじ溝s21と螺合する第二雌ねじ溝c21を設けた第二の挿入孔c2を有している。そして、第一の挿入孔c1の軸心線j1と第二の挿入孔c2の軸心線j2とによってなす角度(劣角)αが180°よりも小さい値に設定されている。中継カップラーCは、ボックスカルバートAの大きさに応じて、第一の挿入孔c1の軸心線j1と第二の挿入孔c2の軸心線j2とによってなす角度(劣角)αが180°よりも小さい値に設定されているものであればよいが、より具体的には、180°よりも小さく、且つ、160°よりも大きい値に設定されている。
【0024】
以上に述べた、第一、第二のPC鋼棒S1、S2、及び、中継カップラーCを主体として、ボックスカルバートAにおける上下方向及び左右方向の中間部側に向かって凸をなす(ボックスカルバートAの外側に向かって凹をなす)形態の緊張体が構成されている。
【0025】
頂版3は、コンクリートにより作られた頂版本体31と、頂版本体31の内部に当該頂版本体31に対して相対移動可能に配設された直線状をなす第一のPC鋼棒S1と、頂版本体31の内部に当該頂版本体31に対して相対移動可能に配設された直線状をなす第二のPC鋼棒S2と、第一、第二のPC鋼棒S1、S2とを繋ぐ中継カップラーCとを備えている。第一、第二のPC鋼棒S1、S2や中継カップラーCについては、底版1において説明したものと同様であるため省略する。
【0026】
次いで、上述したボックスカルバートAの製造方法について説明する。
【0027】
まず、型枠(図示せず)内に、第一のPC鋼棒S1と第二のPC鋼棒S2とを中継カップラーCにより連結させた状態で配設し、その型枠内にコンクリートを流し込んで硬化させる。このとき、第一のPC鋼棒S1の外方端部のみをコンクリートにより作られた頂版本体31及び底版本体11に対して移動不能に固定させておくとともに中継カップラーCを頂版本体31及び底版本体11の内部に形成した空間に移動可能に配設させておく。具体的には、あらかじめ、頂版本体31及び底版本体11に固定されるアンカープレートHに、第一のPC鋼棒S1の外方端部を挿通させ、挿通した部分にナットntを螺着することにより挿通した部分がアンカープレートHから抜け出ないようしておく。中継カップラーCは、頂版本体31及び底版本体11の内部に配設されたカップラーシースTにより覆われており、当該カップラーシースTによって形成された空間内において移動可能に構成されている。
【0028】
次いで、型枠内に流し込んだコンクリートが硬化した後、第二のPC鋼棒S2の外方端部を緊張手段(図示せず)により牽引することにより、中継カップラーCにより連結されている第一のPC鋼棒S1及び第二のPC鋼棒S2をそれぞれ緊張する。この結果、中継カップラーC、及び、第一、第二のPC鋼棒S1、S2により構成された緊張体が全体として直線状になろうとして、頂版本体31及び底版本体11に対し端部では内側に向けて、中央部では外側に向けて曲げモーメントを発生させることになる。
【0029】
その後、当該第二のPC鋼棒S2の外方端部を頂版本体31及び底版本体11に対して移動不能に固定させて、プレストレスが付与された頂版3及び底版1を得るようにしている。つまり、緊張後の第二のPC鋼棒S2の外方端部にナットntを螺着し、そのナットntを頂版本体31及び底版本体11に固定されたアンカープレートHに支持させる。これにより、第二のPC鋼棒S2の外方端部は頂版本体31及び底版本体11に対して移動不能に固定されることになる。
【0030】
なお、上記の工程が終えた後に、カップラーシースT内にグラウト材であるPCグラウト(図示せず)を充填し、中継カップラーCをカップラーシースT内の所定位置に固定する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る中継カップラーC、ボックスカルバートA、及び、ボックスカルバートAの製造方法によれば、PC鋼より線を用いることなく、直線状の第一、第二のPC鋼棒S1、S2を用いて、頂版3及び底版1に作用する曲げモーメントを適切に相殺し得るものとなる。
【0032】
しかも、本実施形態に係る中継カップラーCであれば、大型のボックスカルバートを構築する際に、PC鋼より線に代えてPC鋼棒を無理なく適用することができるものとなる。また、直線状のPC鋼棒1本当りの長さは製造、運搬の関係上12m程度が限界であるが、この中継カップラーCを用いれば、PC鋼棒を継ぎ足すことにより内空幅が12mを超す大型のボックスカルバートを構築することができる。
【0033】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0034】
上述した実施形態では、中継カップラーCは、第一のPC鋼棒S1が螺着する部分と第二のPC鋼棒S2が螺着する部分とを一体に形成したものを示したが、このようなものには限られない。換言すれば、中継カップラーCにおいて、第一、第二の挿入孔c1、c2が形成される本体の構成や形態はどのようなものであってもよい。
【0035】
例えば、中継カップラーは、第一のPC鋼棒が螺着する部分と第二のPC鋼棒が螺着する部分とを別個に製造した後に双方を溶接等により剛結させた態様のものとしてもよい。
【0036】
また、中継カップラーは、金型によりあらかじめV字状に曲がった形態に形成されたものであってもよいし、直線状に形成した後に第一の挿入孔の軸心線と第二の挿入孔の軸心線とが所定の角度をなすようにV字状に曲げて形成されたものであってもよい。
【0037】
さらに、
図5に例示するように、中継カップラーCは、その外形が横長の直線状をなすものであってもよい。すなわち、中継カップラーCは、その外形がV字状に曲がったものである必要はない。中継カップラーCは、第一の挿入孔c1及び第二の挿入孔c2の相対位置が、第一の挿入孔c1の軸心線j1と第二の挿入孔c2の軸心線j2とによってなす角度(劣角)αが180°よりも小さい値になるように設定されていればよい。
【0038】
また、
図6に例示するように、中継カップラーCは、第一のPC鋼棒S1が螺着する本体部分1Cと第二のPC鋼棒S2が螺着する本体部分2Cとを別個に構成し、これらをヒンジ部Hを介して相対回動可能に構成したものであってもよい。すなわち、中継カップラーCは、第一のPC鋼棒S1が螺着する本体部分1Cに設けた第一の挿入孔c1と第二のPC鋼棒S2が螺着する本体部分2Cに設けた第二の挿入孔c2との相対位置が、第一の挿入孔c1の軸心線j1と第二の挿入孔c2の軸心線j2とによってなす角度(劣角)αが180°よりも小さい値になるように設定されている。なお、ヒンジ部Hの具体的な構成は種々の構成を採用することができるのは言うまでもない。
【0039】
上述した実施形態において説明したボックスカルバートの製造方法では、第二のPC鋼棒の外方端部のみを緊張手段により牽引する態様を示したが、このようなものには限られない。
【0040】
つまり、他のボックスカルバートの製造方法としては、例えば、
図4に示すように、第一、第二のPC鋼棒S1、S2における双方の外方端部を緊張手段により同時に牽引するようにしてもよい。すなわち、他のボックスカルバートAの製造方法は、第一のPC鋼棒S1と第二のPC鋼棒S2とを中継カップラーCにより連結させた状態で、中継カップラーCのみをコンクリートにより作られた頂版本体31及び底版本体11に対して移動不能に固定させておき、第一、第二のPC鋼棒S1、S2の外方端部をそれぞれ緊張手段により同時に牽引し、その後、当該第一、第二のPC鋼棒S1、S2の外方端部を頂版本体31及び底版本体11に対して移動不能に固定させて、プレストレスが付与された頂版3及び底版1を得るようにしている。この製造方法によれば、中継カップラーCはコンクリートにより作られた頂版本体31及び底版本体11に対して移動不能に固定させておくためカップラーシースTは不要となり、さらに、緊張後のグラウト作業も不要となる。
【0041】
また、
図7~9に一例を示すように、中継カップラーCを複数個使用することにより、頂版本体31(又は底版本体)において、直線状のPC鋼棒Sを三本以上繋ぐように構成したものであってもよい。
【0042】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
A…ボックスカルバート
1…底版
2…側版
3…頂版
11…底版本体
31…頂版本体
S1…第一のPC鋼棒
S2…第二のPC鋼棒
C…中継カップラー
c1…第一の挿入孔
c2…第二の挿入孔
j1…軸心線
j2…軸心線