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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】超音波接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20220601BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B23K20/10
B29C65/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020558250
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043483
(87)【国際公開番号】W WO2020105434
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018217546
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518347587
【氏名又は名称】株式会社LINK-US
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光行 潤
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-323620(JP,A)
【文献】特開2017-64779(JP,A)
【文献】特開平10-52768(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031660(WO,A1)
【文献】特開2007-319876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、当該第1部材と対向する位置に配置された第2部材との間に重ねられた複数のワークを、当該第1部材が押圧する方向に垂直な第1方向の振動成分と当該第1方向に直交する第2方向の振動成分とを複合させた超音波振動によって当該第1部材を振動させることにより、当該複数のワークを接合する超音波接合装置であって、
前記第1部材に前記超音波振動を伝達する超音波振動伝達部を備え、
前記超音波振動伝達部の先端部に前記第1部材が取り付けられ、当該先端部の当該第1部材と干渉しない位置に着脱可能な振動調整部材が取り付けられ、
前記振動調整部材を取り付ける取付部は、少なくとも前記超音波振動伝達部の前記先端部の中心に対して前記第1部材と反対側の位置に設けられていることを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波接合装置において、
前記超音波振動伝達部の前記先端部には、複数の前記取付部が設けられ、
前記複数の取付部に、それぞれ前記振動調整部材が取り付けられていることを特徴とする超音波接合装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波接合装置において、
前記振動調整部材を取り付ける複数の取付部が前記超音波振動伝達部の前記先端部の中心に対して対称の位置に設けられていることを特徴とする超音波接合装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の超音波接合装置において、
前記取付部は、凹部又は孔部であり、
前記凹部又は前記孔部は雌ネジの溝が形成され、前記振動調整部材は雄ネジ部を有していることを特徴とする超音波接合装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波接合装置において、
重量を調整可能なスペーサを備え、
前記振動調整部材と前記超音波振動伝達部の外周との間に、前記スペーサが配置されていることを特徴とする超音波接合装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の超音波接合装置において、
前記第1部材は、接合用チップであり、
前記第2部材は、アンビルであることを特徴とする超音波接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動により金属、プラスチック等のワークを接合する超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品パック等に用いられるプラスチック、又は電池部品等の金属を接合するため、超音波接合が利用されている。一般的な超音波接合装置は、接合用チップ(工具)の先端を超音波振動させ、接合対象物(ワーク)に繰り返し圧力を加えることにより接合する。
【0003】
例えば、下記の特許文献1の超音波加工装置は、超音波コーンに縦波用超音波振動子と複合振動変換用超音波ホーンが、接続ねじによってそれぞれ接続されている。また、複合振動変換用超音波ホーンの先端には、溶接チップが設置され、被溶接金属材は、溶接チップとアンビル及び加圧装置によって挟持、加圧される。
【0004】
また、複合振動変換用超音波ホーンには、斜めスリットが設けられている。この斜めスリットは、縦振動の節部における複合振動変換用超音波ホーンの周方向複数位置に等間隔をなして設けられており、縦振動モードは、ベクトル的に縦振動と捩り振動の複合振動モードに変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開平8-294673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような複合振動変換用超音波ホーンでは、ワークに応じて長さ又は太さが異なる複数種類のホーンチップを使用することがある。しかしながら、ホーンチップの種類に応じて、適切な楕円比率及び振幅に調整することが難しいという問題があった。
【0007】
所望の楕円比率及び振幅を得るため、ホーンチップの種類に応じた複合振動変換用超音波ホーンを準備することは可能であるが、準備の手間とコスト的な負担が大きくなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複合振動の楕円比率及び振幅を容易に変化させることができる超音波接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1部材と、当該第1部材と対向する位置に配置された第2部材との間に重ねられた複数のワークを、当該第1部材が押圧する方向に垂直な第1方向の振動成分と当該第1方向に直交する第2方向の振動成分とを複合させた超音波振動によって当該第1部材を振動させることにより、当該複数のワークを接合する超音波接合装置であって、前記第1部材に前記超音波振動を伝達する超音波振動伝達部を備え、前記超音波振動伝達部の先端部に前記第1部材が取り付けられ、当該先端部の当該第1部材と干渉しない位置に着脱可能な振動調整部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の超音波接合装置では、第1部材と第2部材との配置方向(水平方向、傾斜方向)に関係なく、第1部材をワークに押し当てて、当該押圧の方向に垂直な第1方向の成分と第1方向に垂直な第2方向の成分を複合させた超音波振動(複合振動)により第1部材を振動させる。これにより、本装置は、ワーク表面の不純物を除去しつつ接合を行うことができる。
【0011】
この超音波接合装置では、超音波振動伝達部の先端部に第1部材が取り付けられ、当該先端部のうち、第1部材と干渉しない位置に、振動調整部材が着脱可能に取り付けられている。振動調整部材を取り付けると、その位置、重量等により第1部材の振幅及び共振周波数が変化し、複合振動の縦横比率が変化する。すなわち、本装置は、振動調整部材を第1部材、ワークの種類等に応じて調整することで、複合振動を容易に変化させることができる。
【0012】
本発明の超音波接合装置において、前記振動調整部材を取り付ける取付部が前記超音波振動伝達部の前記先端部の中心に対して前記第1部材と反対側の位置に設けられていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、超音波振動伝達部の先端部下方に第1部材が取り付けられ、当該先端部の中心に対して反対側の位置に振動調整部材の取付部が設けられている。本装置は、振動調整部材の重量により、特に、第1部材の長軸方向の成分を発生させて、複合振動を変化させることができる。
【0014】
また、本発明の超音波接合装置において、前記振動調整部材を取り付ける複数の取付部が前記超音波振動伝達部の前記先端部の中心に対して対称の位置に設けられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、超音波振動伝達部の先端部下方に接合用チップが取り付けられ、当該先端部の中心に対して対称の位置に振動調整部材の複数の取付部が設けられている。本装置は、例えば、水平方向の対称位置に振動調整部材を取り付けることで、第1部材の長軸方向に垂直な成分(第1部材の水平方向の成分)のバランスを調整して、複合振動を変化させることができる。
【0016】
また、本発明の超音波接合装置において、前記取付部は、凹部又は孔部であり、前記凹部又は前記孔部は雌ネジの溝が形成され、前記振動調整部材は雄ネジ部を有していることが好ましい。
【0017】
超音波振動伝達部に設けられた取付部は、雌ネジの溝が形成された凹部又は孔部(貫通孔)を有している。また、振動調整部材は、雄ネジ部を有している。これにより、本装置は、凹部又は孔部に対して振動変動部材を確実に結合するとともに、振動調整部材の突出長を調整して、複合振動を変化させることができる。
【0018】
また、本発明の超音波接合装置において、重量を調整可能なスペーサを備え、前記振動調整部材と前記超音波振動伝達部の外周との間に、前記スペーサが配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明の超音波接合装置は、振動調整部材と超音波振動伝達部の外周との間に、重量を調整可能なスペーサを備えている。これにより、本装置は、振動調整部材のサイズを変更することなく、スペーサの形状、厚み等を変更することで重量を変化させ、複合振動を変化させることができる。
【0020】
また、本発明の超音波接合装置において、前記第1部材は、接合用チップであり、前記第2部材は、アンビルであることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、第1部材は接合用チップであり、例えば、超音波振動伝達部の先端部下方に接合用チップを取り付け、先端部上方に着脱可能な振動調整部材を取り付ける。これにより、本装置は、複合振動を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る超音波接合装置の全体構成を説明する図。
図2A図1の超音波接合装置の超音波LTホーンを説明する図(1)。
図2B図1の超音波接合装置の超音波LTホーンを説明する図(2)。
図3A】超音波LTホーンの先端部に対する調整ネジの取り付け方の例(1)。
図3B】超音波LTホーンの先端部に対する調整ネジの取り付け方の例(2)。
図3C】超音波LTホーンの先端部に対する調整ネジの取り付け方の例(3)。
図4】ホーンチップの複合振動の測定方法について説明する図。
図5A】ホーンチップの複合振動の測定結果(調整ネジ無し)について説明する図。
図5B】ホーンチップの複合振動の測定結果(条件1)について説明する図。
図5C】ホーンチップの複合振動の測定結果(条件2)について説明する図。
図5D】ホーンチップの複合振動の測定結果(条件3)について説明する図。
図5E】ホーンチップの複合振動の測定結果(条件4)について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の超音波接合装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
初めに、図1を参照して、本発明の実施形態に係る超音波接合装置1の全体構成を説明する。超音波接合装置1は、金属板等の接合対象物(ワーク)を後述する超音波複合振動を利用して接合(溶接)する装置である。超音波接合装置1は、主にリチウムイオン電池、半導体素子等の電極、同種又は異種の金属の接合に用いられる。
【0025】
超音波接合装置1は、超音波振動子(Langevin Type)2と、超音波拡大ホーン3と、超音波LTホーン4と、ホーンチップ6と、アンビル7とで構成されている。また、発振装置8、加圧装置10、センサ12、制御装置13、表示装置14も超音波接合装置1の一部である。
【0026】
電源(図示省略)から発振装置8に電源電圧を印加すると、超音波振動子2の+電極及び-電極に電圧信号が伝達され、超音波振動子2が振動し、超音波振動(約20KHz)が発生する。超音波振動子2で発生した超音波振動は、超音波振動子2の一端部に取り付けられた円筒状の超音波拡大ホーン3に伝達され、振動振幅が拡大される。さらに、超音波振動は、超音波拡大ホーン3の一端部(超音波振動子2でない側の端部)に取り付けられた円筒状の超音波LTホーン4(本発明の「超音波振動伝達部」に相当)に伝達される。
【0027】
ここまで、超音波振動子2で発生した超音波振動は、超音波拡大ホーン3と超音波LTホーン4の長軸方向に伝達されたが(超音波の縦振動)、超音波LTホーン4の複数の斜めスリット4aにより、縦振動から横振動に変換した振動成分が生じる。そして、超音波振動(複合振動)は、超音波LTホーン4の一端部(超音波拡大ホーン3でない側の端部)にネジ止めされたホーンチップ6(本発明の「接合用チップ」及び「第1部材」に相当)に伝達される。
【0028】
図示するように、超音波LTホーン4の先端部4bは、中央部分がくり抜かれたリング形状(円筒形状)となっている。詳細は後述するが、先端部4bは、正面視したときの上下左右の位置にネジ孔が形成されており、上の位置のネジ孔に調整ネジ5(本発明の「振動調整部材」に相当)が取り付けられ、下の位置のネジ孔にホーンチップ6が取り付けられている。なお、超音波拡大ホーン3の先端部は円筒形状に限られず、多角形状でもよい。また、円柱又は多角柱でもよい。
【0029】
調整ネジ5は、ネジの長さ、太さ、頭部の大きさを変更することができる。これにより、調整ネジ5の重量が変化するため、複合振動の振幅、共振周波数等が変化し、更には、複合振動の楕円比率を変化させることができる。
【0030】
ホーンチップ6は、円錐台状の基体部6aと、接合時にワークWと接触する先端部6bとからなる。発振装置8で超音波振動の位相を調整することにより、超音波LTホーン4の一端部で複合振動(例えば、楕円振動)が生じ、ホーンチップ6の先端部6bがワークWの表面を楕円軌道を描いて振動する。この振動はワークWの表面の不純物を排除し、さらにワークWの表面の塑性変形を促進する。なお、ホーンチップ6は様々な形状があり、ワークWの種類に応じて交換して使用することができる。
【0031】
複合振動について補足すると、これは、ホーンチップ6の先端部6bがワークWを押圧したとき、押圧の方向に垂直な第1方向の振動成分と、第1方向に直交する第2方向の振動成分とを複合させた振動である。第1方向の振動成分と第2方向の振動成分が1:1であれば円形振動、2:1ならば楕円振動となる。
【0032】
また、超音波拡大ホーン3のフランジ部3aに剛性の高い加圧用ブロック(図示省略)が接触している。このため、制御装置13により加圧装置10を制御し、昇降動作する加圧用ブロックを介して超音波接合装置1を垂直方向に移動させることができる。そして、台座であるアンビル7(本発明の「第2部材」に相当)上にワークWを載置しておくことで、ホーンチップ6の先端部6bがワークWに接触して静圧力(接合時は200~800N)が加わるようになっている。
【0033】
さらに、加圧用ブロックの変位を検出するセンサ(ストロークセンサ)12があり、ホーンチップ6のワークWの押し込み量を取得している。センサ12は、接合時のホーンチップ6の垂直方向の座標変化を制御装置13にフィードバック(破線は帰還信号)することで、押し込み量が一定に保持される。このため、加圧装置10には、応答速度が速いアクチュエータが用いられている。
【0034】
押し込み量は、表示装置14から作業者が設定することができる。また、センサ12に加えて圧力センサを備え、静圧力を一定に保持するように制御してもよい。このように、超音波接合装置1は、ワークWの接合時に押し込み量又は静圧力を調整しながら複合振動を与えることで、確実に接合(固相接合)が促進される。
【0035】
ここで、固相接合について補足すると、例えば、金属原子は、その表面が油脂、酸化被膜等で覆われ、原子同士の接近が妨げられた状態となっている。超音波接合では、金属に超音波振動を与えて、金属表面に強力な摩擦力を発生させる。これにより、金属表面の酸化被膜等が除去され、接合面に清浄かつ活性化した金属原子が現れる。
【0036】
この状態で、さらに金属表面に超音波振動を与えることにより、摩擦熱による温度上昇で原子の運動が活発となり、原子間の相互引力が発生し、固相接合の状態が生成される。
【0037】
次に、図2A図2Bを参照して、超音波LTホーン4の詳細について説明する。
【0038】
図2Aに示すように、超音波LTホーン4の先端部4bはリング形状(円筒形状)となっており、先端部4bの円筒中心軸Y(中心O)の方向から見た上下左右の位置に貫通孔であるネジ孔4b1~4b4(本発明の「取付部」に相当)が設けられている。また、ネジ孔4b1~4b4には雌ネジ(例えば、M6)の溝が形成されており、先端部4b下方のネジ孔4b3はホーンチップ6用のネジ孔となっている。
【0039】
ホーンチップ6の取付部6cは雄ネジ部となっているため、ホーンチップ6は、ネジ孔4b3にネジを締め付ける形で取り付け、工具で固定する。また、ネジ方式とすることで、目的に合わせたホーンチップへの交換も容易となる。
【0040】
調整ネジ5は、頭部5aと取付部5bとで構成され、取付部5bには雄ネジの溝が形成されている。このため、調整ネジ5は、ホーンチップ6の反対側に位置するネジ孔4b1にネジを締め付ける形で取り付け、工具で固定する。調整ネジ5は、ホーンチップ6と干渉しないネジ孔4b1,4b2,4b4の何れかに取り付ければよい。
【0041】
超音波LTホーン4の先端部4bにおいて、ホーンチップ6と干渉しない位置とは、先端部4bの上述の上下左右の位置に限られない。図2Bに示すように、円筒中心軸Yの方向から見た斜め45度の位置にネジ孔4b5~4b8を設けてもよい。ネジ孔4b3はホーンチップ6を取り付けるため必要となるが、図示するように、この場合、ネジ孔4b1,4b2,4b4(図2A参照)は無くてもよい。
【0042】
超音波接合装置1は、何れの位置に調整ネジ5を取り付けた場合も、複合振動の共振周波数が変化し、楕円比率、振幅等が変化する。特に、ホーンチップ6における複合振動の振幅を大きくするためには、ホーンチップ6の長さを半波長の整数倍にすると効果的である。
【0043】
超音波LTホーン4の先端部4bに、複数の調整ネジ5を取り付けてもよい。以下では、図3A図3Cを参照して、調整ネジ5の取り付けの方の例を説明する。
【0044】
まず、図3Aに示すように、先端部4bの水平方向の対称位置にあるネジ孔4b2,4b4に、それぞれ調整ネジ5A,5Bを取り付けることができる。これにより、超音波接合装置1は、ホーンチップ6の長軸方向に垂直な成分(ホーンチップ6の水平方向の成分)を調整して、複合振動を変化させることができる。
【0045】
なお、ホーンチップ6を共振周波数で振動させ、所望の楕円振動を得るためには、水平方向のバランスを僅かに崩すことが効果的であり、実験によっても確かめられている。従って、調整ネジ5A,5Bは、必ずしも同じ重量、同じ長さでなくてもよく、適宜変更すると良い。
【0046】
次に、図3Bに示すように、先端部4bの3つのネジ孔4b1,4b2,4b4に、それぞれ調整ネジ5,5A,5Bを取り付けることができる。これにより、超音波接合装置1は、ホーンチップ6の長軸方向の成分と、長軸方向に垂直な成分とを調整して、複合振動を変化させることができる。
【0047】
先端部4bに3個の調整ネジ5,5A,5Bを取り付けることで、先端部4b全体の重量も変化する。従って、超音波接合装置1は、図3Aのように2個の調整ネジ5A,5Bを取り付けた場合と比較して、異なる複合振動を作ることができる。
【0048】
また、図3Cに示すように、先端部4bのネジ孔4b1に調整ネジ5を取り付ける際、間にスペーサ9を挟んでもよい。スペーサ9は、図示するような先端部4bの形状に合わせた金属板、又は円形のワッシャ(座金)とすることができ、形状又は(及び)厚みにより重量を調整することができる。
【0049】
図3A図3Bのように、複数の調整ネジを用いる場合、調整ネジのサイズが共通であっても、スペーサ9の有無又はそのサイズにより、重量、バランス等を異ならせる。これにより、超音波接合装置1は、複合振動を変化させることができる。
【0050】
次に、図4図5A図5Eを参照して、ホーンチップ6の複合振動の測定方法と測定結果について説明する。
【0051】
まず、図4に示すように、超音波LTホーン4の先端部4b下方(ネジ孔4b3)にホーンチップ6を取り付け、先端部4b上方(ネジ孔4b1)、すなわち、ホーンチップ6の反対側の位置に調整ネジ5を取り付ける。今回、先端部4bと調整ネジ5の間に円形のスペーサ9’を挟んで重量を調整する。
【0052】
ホーンチップ6の複合振動の測定には、レーザドップラー振動計L1,L2を用いる。ホーンチップ6の先端にレーザドップラー振動計L1,L2からレーザ(例えば、He-Neレーザ)を照射し、周波数の変化Δfを測定する。
【0053】
より詳細には、レーザドップラー振動計L1は、ホーンチップ6のx軸方向の振動をモニタする。一方、レーザドップラー振動計L2は、ホーンチップ6のy軸方向の振動をモニタする。そして、レーザドップラー振動計L1の出力をオシロスコープOのCH2に、レーザドップラー振動計L2の出力をCH1に、それぞれ入力する。これにより、両出力による波形として、表示部Mに楕円振動が表示される。
【0054】
まず、図5Aに、比較例として、調整ネジ5及びスペーサ9’を取り付けなかった場合(共振周波数f=38.9174kHz)の波形を示す。ここでは、直線に近い形状の楕円振動が得られた。なお、横軸がレーザドップラー振動計L2のy軸方向の変位、縦軸がレーザドップラー振動計L1のx軸方向の変位である。
【0055】
次に、図5B図5Cは、超音波LTホーン4の先端部4b上方(ネジ孔4b1)に調整ネジ5及びスペーサ9’を取り付けた場合の波形を示している。図5Bは、調整ネジ5と厚さ4mmのスペーサ9’を取り付けた場合(共振周波数f=39.0933kHz)であるが、図5Aと比較して楕円形が膨らみ、傾きが大きくなった。
【0056】
また、図5Cは、超音波LTホーン4の先端部4b上方(ネジ孔4b1)に調整ネジ5と厚さ6mmのスペーサ9’を取り付けた場合(共振周波数f=38.9579kHz)であるが、図5Bと比較して楕円形がつぶれ、傾きが小さくなった。このように、スペーサ9’の僅かな重量の違いでも、共振周波数が変化して楕円比率が変化するという結果が得られた。
【0057】
次に、図5D図5Eは、超音波LTホーン4の先端部4b右側(ネジ孔4b2)に調整ネジ5及びスペーサ9’を取り付けた場合(共振周波数f=38.8439kHz)の波形を示している。図5Dは、調整ネジ5と厚さ3mmのスペーサ9’を取り付けた場合である。この場合、図5Bと比較しても楕円形が膨らみ、傾きは逆方向となった。
【0058】
図5Eは、図5Dと同条件であるが、図5Dとは異なる共振周波数における波形を示している。このように、同じ条件下でも、1次共振点か2次共振点かにより楕円比率、傾きが異なるという結果が得られた。以上のように、超音波接合装置1は、超音波LTホーン4の先端部4bに調整ネジ5(5A,5B)又は(及び)スペーサ9(9’)を取り付けることで、複合振動の振幅、楕円比率等を容易に変更することができる。
【0059】
上記説明は、本発明の実施形態の一部であり、これ以外にも種々な実施形態が考えられる。例えば、本発明の「振動調整部材」は、調整ネジに限られない。振動調整部材が雄ネジ部を有していない円柱型である場合、超音波LTホーンの先端部に複数段の係合溝を有する凹部を形成してもよい。これにより、円柱の先端部の外周に対する突出長を調整することができる。
【0060】
また、本発明の「取付部」は、凹部又は孔部に限られない。例えば、超音波LTホーンの先端部に雄ネジ部を有する突起を設けてもよい。このとき、振動調整部材に雌ネジの溝を形成すれば、先端部に対して振動調整部材を確実に取り付けることができる。
【0061】
上述のホーンチップは、先端部が短いもの、端面に凹部又は凸部が形成されているもの等、様々な種類があるが、何れも取付部(ネジ)で超音波LTホーンの先端部に取り付けることができる。なお、この場合、先端部の取り付け位置が振動ノードとならないように注意する。
【符号の説明】
【0062】
1…超音波接合装置、2…超音波振動子、3…超音波拡大ホーン、3a…フランジ部、4…超音波LTホーン、4a…斜めスリット、4b…先端部、4b1~4b8…ネジ孔、5,5A,5B…調整ネジ、5a…頭部、5b…取付部、6…ホーンチップ、6a…基体部、6b…先端部、6c…取付部、7…アンビル、8…発振装置、9,9’…スペーサ、10…加圧装置、12…センサ、13…制御装置、14…表示装置、W…ワーク。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E