(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】階段支持構造
(51)【国際特許分類】
E04F 11/00 20060101AFI20220601BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E04F11/00
E04B1/348 L
(21)【出願番号】P 2017129960
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】古賀 博隆
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008581(JP,A)
【文献】特開2008-138414(JP,A)
【文献】特開2015-218448(JP,A)
【文献】特開2002-332708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00-11/17
E04B 1/94
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱及び梁の少なくとも一方を含む骨格部材に階段を支持させるための階段支持構造であって、
前記階段が取り付けられる取付部及び前記取付部を支持する支持部を有する金物と、
前記骨格部材に設けられ、前記金物の前記支持部が固定される固定部と、
前記骨格部材に取り付けられ、前記骨格部材と前記固定部に固定された前記金物の前記支持部とを被覆して階段側の空間と反階段側の空間とを区画する板状部材と、
を具備し、
前記金物の前記取付部は、前記板状部材を介して前記階段側の空間に突出され、
前記金物の前記取付部は、一対設けられ、
前記金物の前記支持部は、前記一対の前記取付部の間に介在され、
前記固定部は、前記金物の前記支持部を受けるために凹んだ凹み部を具備し、
前記固定部の前記凹み部は、凹み深さが前記支持部の厚みと一致するように形成され、
前記金物の前記支持部は、平面視で前記一対の前記取付部を介して前記固定部と連続した面一となるように前記凹み部に収容され、前記骨格部材と共に前記一対の前記取付部の間に亘って前記板状部材に当接される、
階段支持構造。
【請求項2】
前記固定部は、前記骨格部材のうち前記梁に設けられ、
前記固定部の前記凹み部は、前記梁の上下に開放するように形成される、
請求項1に記載の階段支持構造。
【請求項3】
前記板状部材は、前記金物の前記取付部が挿通される開口部を具備し、
前記開口部と前記取付部との間には、耐火パテが充填される、
請求項1または請求項2に記載の階段支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段を支持させるための階段支持構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、階段を支持させるための階段支持構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、住宅に複数のユニットからなる階段構造が設けられた技術が開示されている。当該技術において、例えば複数のユニットのうち踊り場ユニットは、室内側からスクリュー釘やビス等が壁材(板状部材)に打ち込まれることにより、当該壁材に固定される。こうして、踊り場ユニットは、壁材から室内側に突出するように支持される。
【0004】
こうして、特許文献1に記載の技術においては、耐火性を有する石膏ボードにより壁材を構成すると共に、当該壁材の室外側の空間が室内側へ露出しないため、耐火性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、壁材(石膏ボード)にスクリュー釘やビス等を打ち込んだ場合、人の上り下りに応じて階段が振動すると、スクリュー釘やビス等と壁材とが干渉することにより、当該壁材に割れや凹みが生じるおそれがある。このように、壁材に割れや凹みが生じると、耐火性が低下することとなる。
【0007】
本発明は以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、耐火性の向上を図ることができる階段支持構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の柱及び梁の少なくとも一方を含む骨格部材に階段を支持させるための階段支持構造であって、前記階段が取り付けられる取付部及び前記取付部を支持する支持部を有する金物と、前記骨格部材に設けられ、前記金物の前記支持部が固定される固定部と、前記骨格部材に取り付けられ、前記骨格部材と前記固定部に固定された前記金物の前記支持部とを被覆して階段側の空間と反階段側の空間とを区画する板状部材と、を具備し、前記金物の前記取付部は、前記板状部材を介して前記階段側の空間に突出され、前記金物の前記取付部は、一対設けられ、前記金物の前記支持部は、前記一対の前記取付部の間に介在され、前記固定部は、前記金物の前記支持部を受けるために凹んだ凹み部を具備し、前記固定部の前記凹み部は、凹み深さが前記支持部の厚みと一致するように形成され、前記金物の前記支持部は、平面視で前記一対の前記取付部を介して前記固定部と連続した面一となるように前記凹み部に収容され、前記骨格部材と共に前記一対の前記取付部の間に亘って前記板状部材に当接されるものである。
【0013】
請求項2においては、前記固定部は、前記骨格部材のうち前記梁に設けられ、前記固定部の前記凹み部は、前記梁の上下に開放するように形成されるものである。
【0014】
請求項3においては、前記板状部材は、前記金物の前記取付部が挿通される開口部を具備し、前記開口部と前記取付部との間には、耐火パテが充填されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、耐火性の向上を図ることができる。また、板状部材において金物を被覆する部分を他の部分と比較して室内側に凸となるのを抑制することができる。また、また、板状部材において金物を被覆する部分を他の部分と面一にすることができる。また、作業効率の向上を図ることができる。
【0021】
請求項2においては、作業効率の向上を図ることができる。
【0022】
請求項3においては、耐火性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る階段支持構造が適用された階段を示す図。
【
図2】(a)金物の構成を示す斜視模式図。(b)同じく、正面模式図。(c)同じく、平面模式図。
【
図3】(a)柱及び階段梁の構成の一部を示す正面模式図。(b)同じく、A-A断面模式図。
【
図5】柱、階段梁及び金物の組み付け状態を示す斜視模式図。
【
図6】柱、階段梁及び金物の組み付け状態を示す分解斜視模式図。
【
図7】(a)階段支持構造の構成の一部を示す正面模式図。(b)同じく、板状部材が固定される前の階段支持構造の構成の一部を示す正面模式図。
【
図8】(a)
図7(a)に示すB-B断面模式図。(b)同じく、一部拡大模式図。
【
図9】(a)本発明の第二実施形態に係る階段支持構造の金物の構成を示す正面模式図。(b)同じく、平面模式図。
【
図10】(a)本発明の第三実施形態に係る階段支持構造の断面模式図。(b)同じく、一部拡大模式図。
【
図11】(a)本発明の第四実施形態に係る階段支持構造の断面模式図。(b)同じく、一部拡大模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、上下方向及び左右方向を定義して説明を行う。
【0026】
本発明の一実施形態に係る階段支持構造1は、住宅の階段梁13に階段20を支持させるための構造である。まず、
図1及び
図3を用いて、本発明の一実施形態に係る階段支持構造1が適用された部屋(例えば、リビング)の壁部10及び階段20の構成について簡単に説明する。なお、本実施形態において、前記住宅は、例えば2階建ての木造住宅である。
【0027】
壁部10は、リビングを取り囲むように形成された壁である。壁部10は、リビングに面する壁材として、耐火性を有した石膏ボード11(板状部材)を有する。石膏ボード11は、複数の柱12に設けられた下地材に対して、釘等の固定部材を用いて固定される(不図示)。こうして、石膏ボード11は、リビングにおいて、室内側(階段20側)の空間と、室外側の空間と、を区画する。なお、石膏ボード11には、リビングの後端部に配置され、前方を向いた後側石膏ボード11Bや、リビングの左端部に配置され、右方を向いた左側石膏ボード11L等が含まれる。
【0028】
室外側の空間には、前記壁部10の一部として複数の柱12や当該複数の柱12の間に横架された階段梁13等が配置される(
図3参照)。なお、本実施形態において、室外側の空間のうち、後側石膏ボード11Bにより区画された室外側空間(すなわち、後側石膏ボード11Bの後方の室外側空間)にある複数の柱12や階段梁13の前側面は、前後方向位置が同一(すなわち、面一)となるように形成される。
【0029】
階段20は、耐火性を有する鋼製の階段である。階段20は、リビングの左後部(後側石膏ボード11Bと左側石膏ボード11Lとにより形成されるコーナー部)近傍に形成される。階段20は、互いに独立した階段下部21及び階段上部22により形成される。
【0030】
階段下部21の下端部は、一階部分と接合される(不図示)。階段下部21の上端部は、上下方向において一階部分と二階部分との中途部に位置する。階段下部21は、下端部から上端部まで平面視で時計回りに延びるように形成される。
【0031】
階段上部22の上端部は、二階部分と接合される(不図示)。階段上部22の下端部は、上下方向において一階部分と二階部分の中途部(階段下部21の上端部近傍)に位置する。階段上部22は、下端部から上端部まで前上方に直線状に延びるように形成される。なお、階段上部22は、階段支持構造1によって階段梁13に支持される。そこで、以下では、階段上部22の構成について、より詳細に説明する。
【0032】
階段上部22は、主として、ささら桁24と、段板25と、を具備する。
【0033】
ささら桁24は、後述する段板25を下方から支持するものである。ささら桁24は、左右一対設けられる。ささら桁24は、板面を左右方向へ向けた略板状に形成される。ささら桁24は、水平部27と、傾斜部28と、を具備する。
【0034】
水平部27は、ささら桁24の下端部を構成するものである。水平部27は、長手方向を前方へ向けた側面視略矩形状に形成される。水平部27は、後側石膏ボード11Bから前方に延びるように形成される。傾斜部28は、ささら桁24の下端部以外を構成するものである。傾斜部28は、長手方向を前上方へ向けた側面視略矩形状(より詳細には、側面視で長手側の一辺が凸凹した略矩形状)に形成される。傾斜部28の下端部は、水平部27の前端部に接合される。傾斜部28は、水平部27と一体的に形成される。
【0035】
段板25は、階段上部22を上り下りする人の足がのる部分である。段板25は、板面を上下方向へ向けた平面視略矩形状に形成される。段板25は、複数設けられ、それぞれささら桁24に載置される。具体的には、複数の段板25のうち一番下の段板25は、ささら桁24の水平部27に載置される。複数の段板25のうち一番下以外の段板25は、ささら桁24の傾斜部28(より詳細には、前記凸凹した部分)に、前上方向に互いに間隔をあけて載置される。
【0036】
このように構成された階段上部22(階段20)は、上述の如く階段支持構造1によって階段梁13に支持される。
【0037】
以下では、
図2から
図4を用いて、階段支持構造1を構成する各部材の構成について説明する。
なお、説明に使用される図面は模式図であり、各部材の大きさは説明の便宜上誇張して図示されている。
【0038】
階段支持構造1は、当該階段支持構造1を構成する部材として、主として、金物40と、固定部50と、後側石膏ボード11Bと、耐火パテ70と、を具備する。
【0039】
図2及び
図4に示す金物40は、平面視で前方が開放されたコの字状に形成されるものである。金物40は、金属板により構成され、比較的高い剛性を有する。金物40は、主として、取付部41と、支持部42と、を具備する。
【0040】
取付部41は、金物40のうち、階段上部22が取り付けられる部分である。取付部41は、板面を左右方向へ向けた略板状であって、側面視で略矩形状に形成される。取付部41は、平面視で長手方向が前後方向に延びるように形成される。取付部41には、複数(本実施形態においては、4つ)のボルト孔41aが形成される。取付部41は、厚さ(左右方向幅)が例えば6mmに形成される。取付部41は、左右一対設けられる。左右の取付部41は、同一の大きさ及び形状に形成される。左右の取付部41は、互いに所定の間隔をあけて配置される。左右の取付部41は、側面視で互いに重複するように形成される。
【0041】
支持部42は、金物40のうち、左右の取付部41を支持する部分である。支持部42は、板面を前後方向へ向けた略板状であって、正面視で略矩形状に形成される。こうして、支持部42の板面(前側面及び後側面)は、左右の取付部41の板面(左側面及び右側面)に対して直角となるように形成される。支持部42は、平面視で長手方向が左右方向に延びるように形成される。支持部42には、複数(本実施形態においては、8つ)のボルト孔42aが形成される。支持部42は、厚さ(前後方向幅)が例えば6mmに形成される。支持部42は、左右の取付部41の間に介在される。具体的には、支持部42の左端部は、左側の取付部41と接合される。また、支持部42の右端部は、右側の取付部41と接合される。こうして、左右の取付部41は、支持部42により互いに接続される。
【0042】
このような、左右の取付部41及び支持部42は、一体的に形成される。左右の取付部41及び支持部42(すなわち、金物40)は、一枚の細長い板状の部材のうち、長手方向の一端側及び他端側が、その他の部分に対して直角に曲げられることにより形成される。
【0043】
図3及び
図4に示す固定部50は、金物40の支持部42が固定される部分である。固定部50は、階段梁13に形成される。固定部50は、階段梁13の前側面が後方へ凹んだ凹み部51を具備する。
【0044】
凹み部51は、金物40の支持部42を受ける部分である。凹み部51は、正面視で階段梁13の左右中央部に形成される。凹み部51は、階段梁13の前側面が上下方向に沿って切り欠かれたように形成される。すなわち、凹み部51は、階段梁13から上方及び下方へ開放されるように形成される。凹み部51は、正面視で略矩形状に形成される。凹み部51の左右方向幅は、金物40の支持部42の左右方向幅と略同一に形成される。凹み部51の凹み深さ(前後方向幅)は、例えば6mm形成される。すなわち、凹み部51の凹み深さは、金物40の支持部42の厚さ(前後方向幅)と略同一に形成される。
【0045】
図4に示す後側石膏ボード11Bは、上述の如く、リビングの後端部に配置され、前方を向いた板状部材である。後側石膏ボード11Bは、室内側の空間と室外側の空間とを前後に区画する。後側石膏ボード11Bは、主として、室内側ボード61と、室外側ボード62と、開口部63と、を具備する。
【0046】
室内側ボード61及び室外側ボード62は、それぞれ板面を前後方向へ向けた板状部材である。室内側ボード61及び室外側ボード62は、それぞれ耐火性を有する石膏ボードにより構成される。室内側ボード61及び室外側ボード62の厚さ(前後方向幅)は、それぞれ例えば21mmに形成される。室内側ボード61及び室外側ボード62は、前後に対向して接合される。こうして、2枚の厚さ21mmの石膏ボードにより、1枚の石膏ボード(後側石膏ボード11B)が形成される。すなわち、後側石膏ボード11Bの厚さ(前後方向幅)は、全体として42mmに形成される。
【0047】
開口部63は、後側石膏ボード11Bを貫通する部分である。開口部63は、室内側の空間と室外側の空間とを連通する。開口部63は、正面視で上下方向に細長いスリット状に形成される。開口部63の上下方向幅(長手方向幅)は、金物40の取付部41の上下方向幅よりも若干大きく形成される。また、開口部63の左右方向幅(短手方向幅)は、金物40の取付部41の左右方向幅よりも若干大きく形成される。こうして、開口部63は、金物40の取付部41が挿通された場合に、当該取付部41と干渉しないように形成される。開口部63は、左右一対設けられる。左右の開口部63は、金物40の左右の取付部41とそれぞれ対応する位置に形成される。
【0048】
図4に示す耐火パテ70は、後側石膏ボード11Bの開口部63に金物40の取付部41が挿通された状態において、当該開口部63と取付部41との間に充填される。耐火パテ70は、開口部63と取付部41との間の密閉性を確保することができる。
【0049】
次に、
図4から
図8を用いて、階段支持構造1の構成(各部材の組み付け構成)について説明する。
【0050】
図5から
図7に示すように、まず金物40が階段梁13に固定される。具体的には、金物40が階段梁13の前方に配置され、当該金物40の支持部42と階段梁13の固定部50との互いの位置が合わせられる。その後、金物40が後方へ移動され、金物40の支持部42が固定部50の凹み部51に受けられ、当該凹み部51内に収容される。本実施形態において、
図7(b)に示すように、金物40は、固定部50(凹み部51内)の上下中央部に位置するように収容される。こうして、金物40の支持部42が固定部50の凹み部51内に収容され、支持部42と凹み部51の底面(前側面)とが当接された状態で図示せぬボルトがボルト孔42aに締結される。これにより、金物40の支持部42が固定部50の凹み部51に固定される。
【0051】
ここで、上述の如く、凹み部51の凹み深さと金物40の支持部42の厚さ(前後方向幅)とは、略同一(具体的には、6mm)に形成されている。すなわち、
図8に示すように、金物40の支持部42が固定部50の凹み部51に固定された状態で、金物40の支持部42の前側面は、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)の前側面、及び、柱12の前側面と、前後方向位置が同一(すなわち、面一)となるように形成される。
【0052】
こうして、金物40が階段梁13に固定されると、次に後側石膏ボード11Bが取り付けられる。具体的には、後側石膏ボード11Bが、柱12及び(金物40が固定された)階段梁13の前方に配置され、これらの部材との互いの位置が合わせられる。例えば、後側石膏ボード11Bの左右の開口部63が、金物40の左右の取付部41と前後方向に重複するように配置される。その後、後側石膏ボード11Bが後方へ移動され、
図8に示すように、後側石膏ボード11Bの後側面が、柱12の前側面、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)の前側面、及び、金物40の支持部42の前側面と当接され、これらの前側面を被覆することとなる。こうして、後側石膏ボード11Bは、金物40の支持部42等と当接された状態(支持部42等を被覆した状態)で、釘等の固定部材を用いて図示せぬ下地材を介して柱12に固定される(不図示)。
【0053】
ここで、上述の如く金物40の支持部42の前側面、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)の前側面、及び、柱12の前側面は、面一となるように形成されている。すなわち、
図8に示すように、後側石膏ボード11Bのうち、金物40の支持部42を被覆した部分、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)を被覆した部分、及び、柱12を被覆した部分は、それぞれ前後方向位置が同一(すなわち、面一)となるように形成される。換言すれば、後側石膏ボード11B全体(リビング後端部に配置され、前方を向いた壁部10)が面一となるように形成される。
【0054】
また、後側石膏ボード11Bが取り付けられると、
図4、
図7(a)及び
図8に示すように、後側石膏ボード11Bの開口部63に、金物40の取付部41が後方から挿通された状態となる。すなわち、金物40の取付部41は、室外側の空間から室内側の空間に突出される。こうして、リビング(室内側の空間)においては、後側石膏ボード11Bを隔てて室外側の空間に配置された各種の部材(具体的には、柱12や、階段梁13、金物40等)のうち、金物40の取付部41だけが開口部63を介して露出した状態となる。
【0055】
また、後側石膏ボード11Bの開口部63に金物40の取付部41が挿通された状態となると、
図4、
図7(a)及び
図8(b)に示すように、当該開口部63と取付部41との間に耐火パテ70が充填される。こうして、開口部63と取付部41との間の密閉性が耐火パテ70により確保される。換言すれば、リビング(室内側の空間)においては、金物40の取付部41が開口部63を介して露出した状態となるが、室内側の空間と室外側の空間とは互いに密閉された状態となる(連通しない)。
【0056】
こうして、リビングにおいて、金物40の取付部41が開口部63を介して露出した状態となると、当該取付部41に階段上部22が取り付けられる(
図1参照)。具体的には、取付部41と階段上部22のささら桁24の水平部27とが、左右方向に重複した状態となるように互いの位置が合わせられる。そして、図示せぬボルトがボルト孔41aに締結され、ささら桁24の水平部27(すなわち、階段上部22)が金物40の取付部41に取り付けられる。
【0057】
以上のように、本発明の一実施形態に係る階段支持構造1は、
住宅(建物)の階段梁13に階段20を支持させるための階段支持構造であって、
前記階段20が取り付けられる取付部41及び前記取付部41を支持する支持部42を有する金物40と、
前記階段梁13に設けられ、前記金物40の前記支持部42が固定される固定部50と、
前記階段梁13に取り付けられ、前記階段梁13と前記固定部50に固定された前記金物40の前記支持部42とを被覆して室内側(階段20側)の空間と室外側(反階段20側)の空間とを区画する後側石膏ボード11B(板状部材)と、
を具備し、
前記金物40の前記取付部41は、前記後側石膏ボード11B(板状部材)を介して前記階段20側の空間に突出されるものである。
【0058】
このような構成により、耐火性の向上を図ることができる。
【0059】
具体的には、例えばスクリュー釘やビス等の接合部材を室内側から後側石膏ボード11Bに打ち込むことなく階段20を階段梁13に支持させることができる。そのため、人の上り下りに応じて階段20が振動した場合であっても、前記スクリュー釘やビス等が後側石膏ボード11Bに干渉することがない。すなわち、人の上り下りに応じて、後側石膏ボード11Bに割れや凹みが生じるのを防止することができるため、耐火性の向上を図ることができる。
【0060】
また、階段支持構造1において、
前記固定部50は、前記金物40の前記支持部42を受けるために凹んだ凹み部51を具備するものである。
【0061】
このような構成により、後側石膏ボード11Bが取り付けられた場合に、後側石膏ボード11Bのうち、金物40の支持部42を被覆した部分が、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)を被覆した部分、及び、柱12を被覆した部分と、前後方向位置が大きく異なるのを抑制することができる。すなわち、後側石膏ボード11Bにおいて金物40を被覆する部分を、他の部分と比較して室内側に凸となるのを抑制することができる。これにより、リビングの壁部10における意匠性や利便性の向上を図ることができる。
【0062】
また、階段支持構造1において、
前記固定部50の前記凹み部51は、凹み深さが前記支持部42の厚みと一致するように形成されるものである。
【0063】
このような構成により、後側石膏ボード11Bが取り付けられた場合に、後側石膏ボード11Bのうち、金物40の支持部42を被覆した部分を、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)を被覆した部分、及び、柱12を被覆した部分と、前後方向位置が同一となるように形成することができる。すなわち、後側石膏ボード11Bにおいて金物40を被覆する部分を、他の部分と面一にすることができる。これにより、リビングの壁部10における意匠性や利便性のより一層の向上を図ることができる。
【0064】
また、階段支持構造1において、
前記固定部50は、前記骨格部材のうち階段梁13に設けられ、
前記固定部50の前記凹み部51は、前記階段梁13の上下に開放するように形成されるものである。
【0065】
このような構成により、金物40の支持部42を固定部50に固定する際に、当該支持部42と固定部50との位置合わせを容易とすることができる。また、上下方向の大きさが異なる複数種類の金物40を使用する場合であっても、1種類の階段梁13を準備しておけば、当該複数種類の金物40の支持部42を固定部50に固定することができる。このように、作業効率の向上を図ることができる。
【0066】
また、階段支持構造1において、
前記後側石膏ボード11B(板状部材)は、前記金物40の前記取付部41が挿通される開口部63を具備し、
前記開口部63と前記取付部41との間には、耐火パテ70が充填されるものである。
【0067】
このような構成により、リビング(室内側の空間)において、(室外側の空間に配置された金物40の)取付部41が開口部63を介して露出した状態となるが、室内側の空間と室外側の空間とを互いに密閉された状態とすることがでる(連通させないことができる)。こうして、耐火性の向上を図ることができる。
【0068】
また、階段支持構造1において、
前記金物40の前記取付部41は、一対設けられ、
前記金物40の前記支持部42は、前記一対の前記取付部41の間に介在されるものである。
【0069】
このような構成により、一つの支持部42を固定部50に固定することによって、2つの取付部41を、リビング(室内側の空間)に露出させることができる。こうして、作業性の向上を図ることができる。
【0070】
なお、階段梁13は、梁の実施の一形態である。
また、階段梁13は、骨格部材の実施の一形態である。
また、後側石膏ボード11Bは、板状部材の実施の一形態である。
また、室内側の空間は、階段側の空間の実施の一形態である。
また、室外側の空間は、反階段側の空間の実施の一形態である。
【0071】
以上、一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、本実施形態において、固定部50は階段梁13に形成されるものであったが、柱12に形成されてもよく、また階段梁13及び柱12の両方を跨ぐように形成されるものであってもよい。すなわち、本実施形態において、骨格部材の実施の一形態として階段梁13を例示していたが、骨格部材に、柱12を含ませることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、後側石膏ボード11Bは、2枚の石膏ボード(室内側ボード61及び室外側ボード62)から形成されていたが、1枚の石膏ボードから形成されてもよく、また3枚以上の石膏ボードから形成されてもよい。
【0074】
また、石膏ボードは、板状部材の実施の一形態であり、当該板状部材は石膏ボードに限定するものではない。ただし、防火の観点から、板状部材は、耐火性を有するものであることが望ましい。
【0075】
また、本実施形態においては、階段上部22の下端部(ささら桁24の水平部27)が金物40の取付部41に取り付けられる構成について説明したが、金物40の取付部41に取り付けられる階段の部分は、例えば階段上部22の上端部であったり、階段下部21の上端部や下端部であってもよく、限定するものではない。
【0076】
また、本実施形態においては、建物として2階建ての木造住宅に階段支持構造1が適用された場合について例示したが、当該階段支持構造1が適用される対象は、軽量鉄骨等の木造以外の構造の住宅やマンション等であってもよい。また、建物は、住宅に限定するものではなく、オフィスビルや病院等であってもよい。
【0077】
また、金物40の大きさや形状は、支持する階段20の大きさや形状に応じて任意のものを採用することができる。以下では、
図9を用いて、階段支持構造1の第二実施形態として、変更した金物40の構成について説明する。
【0078】
図9に示す第二実施形態に係る階段支持構造1において、第一実施形態と異なる点は、金物40の取付部41に底板41bが設けられる点である。底板41bは、板面を上下方向へ向けた板状部材であり、平面視略矩形状に形成される。底板41bは、取付部41の下端部に形成される。こうして、取付部41は、全体として正面視略L字状に形成される。このような構成によって、金物40の取付部41に階段上部22を取り付ける場合に、当該階段上部22の水平部27を取付部41の底板41bに載置させ、当該載置させた状態でボルトを締結することができる。こうして、金物40の取付部41に階段上部22を取り付ける場合の作業性の向上を図ることができる。
【0079】
なお、取付部41の形状が、正面視略L字状に形成された場合には、後側石膏ボード11Bの開口部63も、当該取付部41と同様に、正面視略L字状に形成されることが望ましい。このように、開口部63の形状も、第一実施形態に例示したように上下方向に細長いスリット状に限定することなく、取付部41の形状に応じて任意のものを採用することができる。
【0080】
さらに、金物40と同様に、階段梁13に形成された固定部50の構成も、本実施形態(第一実施形態)に例示したものに限定されない。以下では、
図10及び
図11を用いて、階段支持構造1の第三実施形態及び第四実施形態として、変更した固定部50の構成について説明する。
【0081】
図10に示す第三実施形態に係る階段支持構造1において、第一実施形態と異なる点は、固定部50の凹み部51の凹み深さが、金物40の支持部42の厚さ(前後方向幅)よりも大きく形成される点である。なお、このような構成であっても、後側石膏ボード11Bのうち、金物40の支持部42を被覆した部分を、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち凹み部51以外の部分)を被覆した部分、及び、柱12を被覆した部分と、前後方向位置が同一となるように形成することができる。すなわち、後側石膏ボード11Bにおいて金物40を被覆する部分を他の部分と面一にすることができる。これにより、リビングの壁部10における意匠性や利便性のより一層の向上を図ることができる。
【0082】
このように、第三実施形態に係る階段支持構造1において、
前記固定部50の前記凹み部51は、凹み深さが少なくとも前記支持部42の厚みよりも大きくなるように形成されるものである。
【0083】
このような構成により、リビングの壁部10における意匠性や利便性のより一層の向上を図ることができる。また、固定部50の凹み部51の凹み深さを、金物40の支持部42の厚さと略同一とする場合と比べて、精密な加工精度が要求されないため、作業効率の向上を図ることができる。また、厚み(前後方向幅)が異なる複数種類の金物40を使用する場合であっても、1種類の階段梁13を準備しておけば、後側石膏ボード11Bにおいて金物40を被覆する部分が室内側に凸となるのを防止することができる(他の部分と面一にすることができる)。
【0084】
図11に示す第四実施形態に係る階段支持構造1において、第一実施形態と異なる点は、固定部50が凹み部51を有さない点である。この場合、固定部50の前側面は、階段梁13のうち、金物40の支持部42が固定されていない部分の前側面と、前後方向位置が同一(面一)となるように形成される。
【0085】
なお、この場合においても、
図11に示すように、後側石膏ボード11Bのうち、金物40の支持部42を被覆した部分の厚みを、階段梁13(より詳細には、階段梁13のうち金物40の支持部42が固定されていない部分)を被覆した部分、及び、柱12を被覆した部分の厚みよりも薄くすることによって、当該後側石膏ボード11B全体を面一とすることができる。なお、
図11に示す構成においては、後側石膏ボード11Bを構成する室内側ボード61及び室外側ボード62のうち、室外側ボード62の厚みを薄くすることにより、後側石膏ボード11Bの支持部42を被覆した部分の厚み(前後方向幅)を薄くしている。
【符号の説明】
【0086】
1 階段支持構造
11B 後側石膏ボード
12 柱
13 階段梁
20 階段
40 金物
41 取付部
42 支持部
50 固定部