IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘレナ ラボラトリーズ コーポレーションの特許一覧

特許7082467in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法
<>
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図1
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図2
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図3
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図4A
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図4B
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図5A
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図5B
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図5C
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図5D
  • 特許-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法 図5E
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動用の組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20220601BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20220601BHJP
   G01N 33/559 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01N27/26 381Z
G01N27/26 381D
G01N27/447 315H
G01N27/447 315Z
G01N27/447 325A
G01N27/447 325C
G01N33/559
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2017201797
(22)【出願日】2017-10-18
(62)【分割の表示】P 2015515158の分割
【原出願日】2013-05-29
(65)【公開番号】P2018028549
(43)【公開日】2018-02-22
【審査請求日】2017-11-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】61/652,608
(32)【優先日】2012-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/779,567
(32)【優先日】2013-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591006911
【氏名又は名称】ヘレナ ラボラトリーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】グアダーニョ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】サマーズ,エリン
【合議体】
【審判長】福島 浩司
【審判官】蔵田 真彦
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0106153(US,A1)
【文献】特表平9-508209(JP,A)
【文献】特開2005-181299(JP,A)
【文献】特開2011-039002(JP,A)
【文献】特開2009-168819(JP,A)
【文献】特開2008-232927(JP,A)
【文献】特表平10-507514(JP,A)
【文献】特開平04-232850(JP,A)
【文献】特開2007-024610(JP,A)
【文献】須藤加代子,”Immunofixation electrophoresis”,臨床検査,1979,Vol.23,No.9,p.881-887
【文献】大竹皓子,”Immunofixation電気泳動法”,検査と技術,1979,Vol.7,No.4,p.339-346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施するための方法であって、
ある容量の生体サンプルである試験サンプルとある容量のキャリブレーティングサンプルとを混和して最終容量を形成する工程、ここで、前記キャリブレーティングサンプルの容量は既知濃度のキャリブレータを含み、前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比を含む;
電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程、ここで、前記充填画分は前記最終容量の画分である;
前記試験サンプルの成分と前記キャリブレータが共通する分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通する分離レーンに沿って充填画分を分離する工程、ここで、分離が完了した後に、試験サンプルの成分とキャリブレータがそれぞれ、検出可能なシグナルを発生させることができ、または発生させる原因となるシグナル発生分子と結合され、ここで、試験サンプルの成分とキャリブレータは、互いに識別可能であるシグナル発生分子に結合される;
前記共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程、ここで、前記キャリブレータ及び分離された成分は、前記検出する工程の前に固定され、前記固定は、前記キャリブレータ及び分離された成分と、第1抗体またはそのフラグメントと第2抗体またはそのフラグメントとを含む抗血清とを接触させ、前記第1抗体またはそのフラグメントが前記キャリブレータと結合し、前記第2抗体またはそのフラグメントが前記分離された成分と結合することを含む;
前記検出する工程に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とのレベルを測定し、in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施する工程;及び
キャリブレータの測定されたレベル、試験サンプルの分離された成分の測定されたレベルと、試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比に基づいて、前記最終容量中の試験サンプル成分の濃度を計算する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
試験サンプルの分離された成分及び/またはキャリブレータと、シグナル発生分子と相互作用する能力のある試薬とを接触させる工程、ここで、前記シグナル発生分子は、試薬と接触すると検出可能なシグナルを発生させ、ここで、前記検出する工程は、前記検出可能なシグナルを検出する工程を含む;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験サンプルの成分が少なくとも二つの異なる成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも二つの前記成分のそれぞれが異なる検出可能なシグナルに結合しており、前記検出可能なシグナルのそれぞれは互いに識別可能である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出可能なシグナルは、放射線測定、比色分析、発光または蛍光分析手段により検出可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試験サンプルの一つ以上の前記成分がリポタンパク質粒子またはその一部を含み、前記検出する工程は、前記リポタンパク質粒子またはその一部を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リポタンパク質粒子またはその一部が、アポリポタンパク質A、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質C、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、高密度リポタンパク質、中間密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、超低密度リポタンパク質、カイロミクロン、リポタンパク質X、その酸化変異体及び混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記付着させる工程は、電気泳動コームを使用して実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリブレータがフルオロフォアである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリブレータがタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリブレータがアルブミンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルブミンがシグナル発生分子に結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルブミンがフルオロフォアに結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリブレータは、前記試験サンプルの成分よりも早い速度でゲル電気泳動の間に電気泳動ゲル上を移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリブレータは、前記リポタンパク質粒子よりも早い速度でゲル電気泳動の間に電気泳動ゲル上を移動する、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記キャリブレータ及び分離された成分は、免疫固定技法により固定され、前記免疫固定技法は、
第一の抗体またはそのフラグメントがキャリブレータと結合し、且つ第二の抗体またはそのフラグメントが分離された成分と結合するように、前記キャリブレータ及び分離された成分を、第一の抗体またはそのフラグメント及び第二の抗体またはそのフラグメントを含む抗血清と接触させる工程;及び
電気泳動ゲルを洗浄して、前記ゲル中の結合していない材料を除去する工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリブレータが、フルオロフォアに結合している、タンパク質又はポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施するための方法であって、
ある容量の生体サンプルである試験サンプルとある容量のキャリブレーティングサンプルとを混和して最終容量を形成する工程、ここで、前記キャリブレーティングサンプルの容量は既知濃度のキャリブレータを含み、前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比を含む;
電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程、ここで、前記充填画分は前記最終容量の画分である;
前記試験サンプルの成分と前記キャリブレータが共通する分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通する分離レーンに沿って充填画分を分離する工程、ここで、分離が完了した後に、試験サンプルの成分とキャリブレータがそれぞれ、検出可能なシグナルを発生させることができ、または発生させる原因となるシグナル発生分子と結合される
試験サンプルの分離された成分及び/またはキャリブレータと、シグナル発生分子と相互作用する能力のある試薬とを接触させる工程、ここで、前記シグナル発生分子は、試薬と接触すると検出可能なシグナルを発生させる;
前記共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程、ここで、前記検出する工程は、前記検出可能なシグナルを検出する工程を含み、前記キャリブレータ及び分離された成分は、前記検出する工程の前に固定され、前記固定は、前記キャリブレータ及び分離された成分と、第1抗体またはそのフラグメントと第2抗体またはそのフラグメントとを含む抗血清とを接触させ、前記第1抗体またはそのフラグメントが前記キャリブレータと結合し、前記第2抗体またはそのフラグメントが前記分離された成分と結合することを含む;
前記検出する工程に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とのレベルを測定し、in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施する工程;及び
キャリブレータの測定されたレベル、試験サンプルの分離された成分の測定されたレベルと、試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比に基づいて、前記最終容量中の試験サンプル成分の濃度を計算する工程
を含む、
前記方法。
【請求項19】
in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施するための方法であって、
ある容量の生体サンプルである試験サンプルとある容量のキャリブレーティングサンプルとを混和して最終容量を形成する工程、ここで、前記キャリブレーティングサンプルの容量は既知濃度のキャリブレータを含み、前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比を含み、ここで、前記キャリブレータが、シグナル発生分子に結合しているアルブミンを含む;
電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程、ここで、前記充填画分は前記最終容量の画分である;
前記試験サンプルの成分とキャリブレータが共通する分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通する分離レーンに沿って充填画分を分離する工程、ここで、分離が完了した後に、試験サンプルの成分が、検出可能なシグナルを発生させることができ、または発生させる原因となるシグナル発生分子と結合される
前記共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程、ここで、前記キャリブレータ及び分離された成分は、前記検出する工程の前に固定され、前記固定は、前記キャリブレータ及び分離された成分と、第1抗体またはそのフラグメントと第2抗体またはそのフラグメントとを含む抗血清とを接触させ、前記第1抗体またはそのフラグメントが前記キャリブレータと結合し、前記第2抗体またはそのフラグメントが前記分離された成分と結合することを含む;
前記検出する工程に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とのレベルを測定し、in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施する工程;及び
キャリブレータの測定されたレベル、試験サンプルの分離された成分の測定されたレベルと、試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比に基づいて、前記最終容量中の試験サンプル成分の濃度を計算する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2012年5月29日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/652,608号及
び2013年3月13日出願の同第61/779,567号の優先権の利益を請求する。これらはそれぞれ
、本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【0002】
[0002]本発明は、ゲル電気泳動の分野、特に電気泳動マトリックス内部におけるin-situキャリブレーション(calibration)に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]電気泳動は、サイズ、電荷、及び他の物理的特性に基づいて帯電した種を分離するために使用される技法である。電気泳動では、帯電した種は電場の影響下で、導電性の電気泳動媒体、これはゲルであってもよいが(しかし、ゲルである必要はない)、その中を通って移動する。電気泳動媒体の両側に配置された活性化電極は、移動用の駆動力を提供する。その電荷及び質量などの分子の特徴は、電場がどのくらい急速に分子を電気泳動媒体の中を移動させるかを決定する。
【0004】
[0004]多くの重要な生体分子、たとえばアミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド及び核酸は、イオン化可能な基をもつ。これらのイオン化可能な基のため、任意の所定のpHでは、多くの生体分子は溶液中で電気的に帯電した種として存在する。電気的に帯電した種により、医師及び化学者は、電気泳動を利用して核酸及びタンパク質を分離することができる。
【0005】
[0005]電気泳動を使用して、分子、生体分子またはその他の分子を分離することは、電荷及び質量などの様々な力(force)に依存する。タンパク質またはDNAなどの生体サンプルを緩衝液中で混合し、電気泳動媒体に適用すると、これらの二つの力は共に挙動する。電気泳動を利用して分離を実行することが可能である。というのも、電場の中を通って分子が移動する速度は、電場の強さ、電荷、分子のサイズ及び形状、並びに分子がその中を移動している緩衝液のイオン強度及び温度に依存するからである。電気泳動の間、印加された電場は、分子電荷に基づいて分子を電気泳動媒体の細孔の中を通して移動させる。一方の電極の電位は分子をはじき、その間、もう一方の電極の電位が同時に分子を引き付ける。電気泳動媒体の摩擦力も、サイズによって分子を分離するのに役立つ。通常、印加した電場を取り去った後、分子を染色することができる。染色後、分離された高分子は、電気泳動媒体の一端からもう一方の端まで広がった一連のバンドに見ることができる。これらのバンドが十分に明瞭である場合には、高分子を固定し、電気泳動媒体を洗浄してバッファを除去することにより、これらの領域の分子を別個に調査及び研究することができる。
【0006】
[0006]ポリアクリルアミドまたはアガロースの電気泳動ゲルなどの電気泳動ゲルの成形(casting)は、通常、ゲル表面に一連のサンプルウェル(sample wells)をつくることに
よって実施する。分析すべき液体混合物は、通常、ピペット、シリンジニードル、電気泳動コームまたは同様のサンプル供給装置を使用してウェルに充填する。しかしながら、サンプルバンド間の分解能は適用したサンプル幅で決まり、少ないサンプル容量は表面張力の影響を受け(て、特定のウェルにサンプルを充填するのに望ましい分解能を超えてミセ
ル直径をつくるので)、そのようなバンド分解能は低く、変動し易い。さらに多量に適用
しないように、2-D-様アプローチ(2-D-like approach)では微小容量を適用することが多い。さらに、ゲル内部のサンプル運動は、自由溶液化学と比べて限定されており;寸法に数個のサンプルレーンだけがある場合が多い局部領域を除いて、自由度が減弱されると、
均一な生成物または付加物の展開に悪影響を与える。これらの理由により、1uLレベルで
のサンプル再現性は不正確すぎて、臨床的/分析的に許容可能でないことが多い。
【0007】
[0007]さらに、外測法を使用せずに電気泳動マトリックス内で分離された試験サンプル画分(fraction)濃度を測定するのは非常に困難である。電気泳動アッセイ内にそのような参照内部標準を組み込む試みはうまくいかなかった。親和性及び染料結合特性は変動しやすいため、多価抗血清及び多種タンパク質では従来の試みは失敗した。同一性参照(identity reference)及び位置参照(positional reference)の定性マーカーは利用可能であるが、外測法に依存せずに電気泳動的に分離された画分の濃度を絶対的に定量できるであろう参照内部標準は他には使用されていない。
【0008】
[0008]どんな技術もこの領域では確実ではない。電気泳動は「全」化学分析の解析的派生物であり、依然として派生物のままであり、サンプルの全ての成分が同一処理を受ける。成分は沈殿、捕捉でも他の方法によっても除去されず;これらは同一基板上で分離され、プロセスを逆行することにより再結合することができる。このことは、絶対量値を生み出すための電気泳動の能力を制限してきた。慣用の電気泳動では相対濃度を測定する。すなわち、慣用の電気泳動では、電気泳動図を生み出すためにシグナルに変換された検出バンド由来の曲線より下の面積として、画分の百分率を計算する。特に電気泳動後、染色されたゲルは密度計の光学系を通過して、分離されたバンドの電気泳動図、視覚ダイヤグラムまたはグラフを作る。密度計は、透明処理されたか、透明であるが染色されたゲルなどの、固体サンプルを通して透過した光を測定する特別な分光光度計である。光学密度測定を使用して、密度計はバンドをピークとして表す。これらのピークはグラフまたは電気泳動図を構成し、チャート式記録計またはコンピューターディスプレイ上にプリントされる。吸光度及び/または蛍光発光は密度計で測定することができる。積算器またはマイクロ
プロセッサはそれぞれのピーク下の面積を求め、全サンプルの百分率としてそれぞれ報告する。たとえば、電気泳動を血清蛋白質の分離に使用する場合、それぞれのバンドの濃度はこの百分率と全タンパク質濃度から導かれる;電気泳動が酵素の分離に使用されている場合、それぞれのバンドの酵素活性は、この百分率と全酵素活性から導かれる。
【0009】
[0009]従って、慣用の電気泳動では、サンプル内で検出された全バンドに関して相対百分率の値を割り当てられるだけである。たとえば、コレステロールに関して多くのバンドを展開する場合、相対的割合は密度計により提供され、外部から提供された総コレステロール値は絶対濃度を決定するために画分の間に比例して配分される。たとえば、二つのバンドは密度計により検出される-第一のバンドは検出された全シグナルの25%であり、第
二のバンドは75%であるとする。全被検物濃度が200mg/mLであるとすると、第一のバンド
は50mg/mL(0.25×200mg/mL)であり、第二のバンドは150mg/mL(0.75×200mg/mL)である。
ゲル上及び/またはそれぞれのサンプル中に、キャリブレータ(較正器)(calibrator)
を提供する方法は全く存在しない。
【0010】
[0010]電気泳動パターンはその解像度に左右されるため、及び上記の問題点のため、ゲル電気泳動技術に関連するサンプル内部の変動性及びサンプル間の誤差を取り除く方法及び/またはシステムに関する要求は大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011]本発明は、当業界におけるこれら及び他の欠点を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]本発明の一つの側面は、in-situキャリブレーション(較正)(calibration)を用いて電気泳動を実施するための方法に関する。本方法は、ある容量の(a volume of)試
験サンプルとある容量若しくは量(quantity)のキャリブレーティングサンプル(較正サンプル)(calibrating sample)とを混和して最終容量を形成する工程を含み、ここでキャリブレーティングサンプルの前記容量若しくは量は既知濃度のキャリブレータ(較正器)(calibrator)を含み、前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知比を含む。また本方法は、電気泳動ゲルのウェル(受入ウェル)(receiving well)に充填画分(ローディング画分)(loading fraction)を付着させる工程(depositing)であって、ここで前記充填画分は前記最終容量の画分である、前記工程、及び前記試験サンプルの成分とキャリブレータが共通の分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通の分離レーンに沿って充填画分を分離する工程を含む。また本方法は、前記共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程、及び前記検出する工程に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とのレベルを測定し、これによりin-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施す
る工程を含む。
【0013】
[0013]本発明は、顕著且つ意外な利点を提供する。簡単な例では、測定すべき既知濃度の被検物(即ちキャリブレータ)に、試験サンプルの未知成分と同一レポーターであらかじめタグ付けする。タグ付けした内部標準及び未知成分を容量測定で混和し、キャリブレータと未知サンプルの両方を同時に適用し、電気泳動する。未知画分を表示する電気泳動図を分析して、参照内部標準(即ちキャリブレータ)に対して未知成分の濃度を計算する。従って、内部にタグ付したキャリブレータの既知濃度と、キャリブレータとサンプルの確定した容量比が与えられると、当業者に公知の一点キャリブレータ計画を使用して、未知の被検物の濃度を計算することができる。本出願に開示された試みでは、方法と方法の間の濃度変数及び外部試験の必要性を排除し、且つサンプル内の対照と信頼性を高め、時間、コストと方法と方法の間の変動を軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0014]図1は、本明細書に記載の電気泳動を実施するために提供される例示的な初期容量の試験サンプル(たとえば生体サンプル)とキャリブレーティングサンプルを示す略図である。この実施例における生体サンプルは、対象の一つ以上の(単数または複数種類の未知または被検体)成分を含み、キャリブレーティングサンプルは、本明細書に記載のキャリブレータを含む。キャリブレーティングサンプルの容量は、既知濃度のキャリブレータを含む。試験サンプルの容量は、対象である未知濃度の一つ以上の成分を含む。試験サンプルの容量とキャリブレーティングサンプルの容量はそれぞれ公知である。模式的に示されているように、試験サンプルの容量とキャリブレーティングサンプルの容量を混和または混合して、最終既知容量とする(即ち、キャリブレーティングサンプルの容量+試験サンプルの容量)。
図2】[0015]図2は、例示的な電気泳動装置とコームアプリケーターを示す略図である。混合したサンプルをゲルへ適用するのは、電気泳動コームを使用して実施することができる。コームは一次元に整列した歯を含むことができ、それぞれの歯は約1マイクロリットルのサンプルを、電気泳動コームの歯に対応するそれぞれの電気泳動レーンの一つのスタートラインに送達することができる。図2に示されているように、ゲルは適用されたサンプルの両側で電極と接触する。装置は、その容量の中に図2に示されている電気泳動装置を含むハウジングを含むことができ、ゲル電気泳動を実施する前にこれにバッファ溶液を充填する。
図3】[0016]図3は、ゲル電気泳動を実施した後、試験サンプルの一つ以上の成分とキャリブレータとを分離する、例示的な電気泳動ゲルを示す略図である。この例示的な態様に示されているように、それぞれのレーンのキャリブレータと試験サンプルの一つ以上の成分は、ゲル電気泳動により分離し、蛍光物質でラベルして、見えるようにする。
図4A】[0017]図4A~4Bは、ゲル電気泳動を実施した後、例示的な電気泳動ゲルにおける蛍光強度の検出を示す略図である。図4Aは、電気泳動サンプルレーン内の試験サンプルの成分または未知物(IU)上の蛍光物質(または蛍光タグ)由来の蛍光強度(I)を検出するための検出デバイスの使用を示す。図4Bは、図4Aで検出するために示される試験サンプルの成分と同一レーン内の既知キャリブレータサンプル(IC)上の蛍光物質(または蛍光タグ)由来の蛍光強度の検出を示す。キャリブレータの既知濃度及び既知容量と共に、二つの測定した強度を使用して、前記一つ以上の成分の濃度を計算することができる。図4A及び4Bに示されているように、検出デバイスは、例えば光学検出ソフトウエアを含む、計算装置を含むことができる。
図4B図4A~4Bは、ゲル電気泳動を実施した後、例示的な電気泳動ゲルにおける蛍光強度の検出を示す略図である。図4Aは、電気泳動サンプルレーン内の試験サンプルの成分または未知物(IU)上の蛍光物質(または蛍光タグ)由来の蛍光強度(I)を検出するための検出デバイスの使用を示す。図4Bは、図4Aで検出するために示される試験サンプルの成分と同一レーン内の既知キャリブレータサンプル(IC)上の蛍光物質(または蛍光タグ)由来の蛍光強度の検出を示す。キャリブレータの既知濃度及び既知容量と共に、二つの測定した強度を使用して、前記一つ以上の成分の濃度を計算することができる。図4A及び4Bに示されているように、検出デバイスは、例えば光学検出ソフトウエアを含む、計算装置を含むことができる。
図5A】[0018]図5A~5Eは、本発明の一態様に従ったin-situキャリブレーションを用いてゲル電気泳動を実施した結果を示す。特に未知濃度のリポタンパク質を含む四つの血清サンプルを、それぞれ公知濃度の蛍光標識化アルブミンと混合した。サンプルをゲル電気泳動にかけ、次いでフルオレセイン標識化抗-apoB抗体と接触させた。得られたゲルの画像を図5Aに示す。サンプル1~4それぞれに対応する画像は、それぞれ図5B~5Eで再現する。次いでゲルを蛍光光度計でスキャンし、得られたピークを図5B~5Eに示されるようにプロットした。図5B~5Eにおいて、LDL、VLDL、Lp(a)及びキャリブレータは左側のゲルの画像で視覚的に同定され、本発明に従って分離された成分の定量結果は右側に示す。
図5B図5A~5Eは、本発明の一態様に従ったin-situキャリブレーションを用いてゲル電気泳動を実施した結果を示す。特に未知濃度のリポタンパク質を含む四つの血清サンプルを、それぞれ公知濃度の蛍光標識化アルブミンと混合した。サンプルをゲル電気泳動にかけ、次いでフルオレセイン標識化抗-apoB抗体と接触させた。得られたゲルの画像を図5Aに示す。サンプル1~4それぞれに対応する画像は、それぞれ図5B~5Eで再現する。次いでゲルを蛍光光度計でスキャンし、得られたピークを図5B~5Eに示されるようにプロットした。図5B~5Eにおいて、LDL、VLDL、Lp(a)及びキャリブレータは左側のゲルの画像で視覚的に同定され、本発明に従って分離された成分の定量結果は右側に示す。
図5C図5A~5Eは、本発明の一態様に従ったin-situキャリブレーションを用いてゲル電気泳動を実施した結果を示す。特に未知濃度のリポタンパク質を含む四つの血清サンプルを、それぞれ公知濃度の蛍光標識化アルブミンと混合した。サンプルをゲル電気泳動にかけ、次いでフルオレセイン標識化抗-apoB抗体と接触させた。得られたゲルの画像を図5Aに示す。サンプル1~4それぞれに対応する画像は、それぞれ図5B~5Eで再現する。次いでゲルを蛍光光度計でスキャンし、得られたピークを図5B~5Eに示されるようにプロットした。図5B~5Eにおいて、LDL、VLDL、Lp(a)及びキャリブレータは左側のゲルの画像で視覚的に同定され、本発明に従って分離された成分の定量結果は右側に示す。
図5D図5A~5Eは、本発明の一態様に従ったin-situキャリブレーションを用いてゲル電気泳動を実施した結果を示す。特に未知濃度のリポタンパク質を含む四つの血清サンプルを、それぞれ公知濃度の蛍光標識化アルブミンと混合した。サンプルをゲル電気泳動にかけ、次いでフルオレセイン標識化抗-apoB抗体と接触させた。得られたゲルの画像を図5Aに示す。サンプル1~4それぞれに対応する画像は、それぞれ図5B~5Eで再現する。次いでゲルを蛍光光度計でスキャンし、得られたピークを図5B~5Eに示されるようにプロットした。図5B~5Eにおいて、LDL、VLDL、Lp(a)及びキャリブレータは左側のゲルの画像で視覚的に同定され、本発明に従って分離された成分の定量結果は右側に示す。
図5E図5A~5Eは、本発明の一態様に従ったin-situキャリブレーションを用いてゲル電気泳動を実施した結果を示す。特に未知濃度のリポタンパク質を含む四つの血清サンプルを、それぞれ公知濃度の蛍光標識化アルブミンと混合した。サンプルをゲル電気泳動にかけ、次いでフルオレセイン標識化抗-apoB抗体と接触させた。得られたゲルの画像を図5Aに示す。サンプル1~4それぞれに対応する画像は、それぞれ図5B~5Eで再現する。次いでゲルを蛍光光度計でスキャンし、得られたピークを図5B~5Eに示されるようにプロットした。図5B~5Eにおいて、LDL、VLDL、Lp(a)及びキャリブレータは左側のゲルの画像で視覚的に同定され、本発明に従って分離された成分の定量結果は右側に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0019]本発明の一つの側面は、in-situキャリブレーションを使用して電気泳動を実施
する方法に関する。本方法は、ある容量の試験サンプルをある容量若しくは量のキャリブレーティングサンプルと混和して最終容量を形成する工程を含み、ここでキャリブレーティングサンプルの前記容量または量は、既知濃度のキャリブレータを含み、前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知比を含む。また本方法は、電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程であって、ここで前記充填画分は最終容量の画分である、前記工程、及び前記試験サンプルの成分とキャリブレータが共通する分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通する分離レーンに沿って充填画分を分離する工程、を含む。また本方法は、共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程、及び前記検出に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分のレベルを測定し、それによってin-situキャリブレ
ーションを用いて電気泳動を実施する工程、を含む。
【0016】
[0020]試験サンプルは生体サンプルであってもよい。好適な生体サンプルまたは生物サンプルとしては、ヒト生体マトリックス、尿、血漿、血清及びヒトリポタンパク質画分が挙げられる。たとえば、サンプルは新鮮血若しくは保存血液または、血液画分であってもよい。サンプルは、本発明のアッセイに関して特別に得られた血液サンプルまたは、本明細書に記載の方法に従って使用するために副次標本をとることができる別の目的に関して得られた血液サンプルであってもよい。たとえば、生体サンプルは全血であってもよい。全血は、標準的な臨床手順を使用して被験者から得ることができる。生体サンプルは血漿であってもよい。血漿は、抗凝固処理した血液を遠心分離することにより全血サンプルから得ることができる。生体サンプルは血清であってもよい。サンプルは好適なバッファ溶液中で希釈することにより必要により予備処理し、所望により濃縮し、またはこれらに限定されないが、超遠心分離法、高速高性能(fast performance)液体クロマトグラフィー(FPLC)または沈降(precipitation)などの方法を幾つでも使用することにより分画すること
ができる。リン酸塩、Trisなどの様々なバッファの一つを、生理学的~アルカリpHで使用する、多くの標準的な多くの水性バッファのいずれかを使用することができる。
【0017】
[0021]上記のように、本方法はある容量の試験サンプルとある容量または量のキャリブレーティングサンプルとを混和して最終容量を形成する工程を含み、ここで前記キャリブレーティングサンプルの前記容量は既知濃度のキャリブレータを含み、且つ前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知比(たとえば容量比)を含む。
【0018】
[0022]当業者には理解されるように、本方法は、ある容量のキャリブレータを使用して、またはたとえば既知量のキャリブレータを使用して実施することができる。本明細書の記載を通して、ある容量のキャリブレータ(a volume of calibrator)を参照する際には、既知量のキャリブレータ(a known quantity of calibrator)を代わりに使用することがで
きると理解されよう。たとえば、キャリブレータは、サンプルカップまたはウェルの壁上で乾燥し、試験サンプルの前記容量を添加して再溶解させることができる。特に、サンプルウェル内でキャリブレータを乾燥させた後、残存する残渣は、キャリブレータ、例えば蛍光タグ付けキャリブレータの濃度を、容量に影響を与えることなく保持する。サンプルを添加すると、タグ付けしたキャリブレータは、脂質粒子濃度に影響を与えることなく、サンプル-キャリブレータ「混合物(mix)」の最終容量内に再構築され、含まれる。電気泳動サンプルウェルは、利便性及び単純性のためにサンプル付着に先立ってこの様式で準備することができる。本発明の別の側面は、この様式で準備された電気泳動ゲル、並びにそのようなゲルを含むキット及び、本明細書に記載の方法を実施するために使用説明書に関する。
【0019】
[0023]最終容量を形成するために試験サンプルの前記容量とある容量のキャリブレーティングサンプルを混和することは、任意の好適な手段により実施することができる。キャリブレーティングサンプル内のキャリブレータ濃度が既知であり、且つ最終容量が試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知比(たとえば容量比)を含む限りは、キャリブレーティングサンプルの前記容量をある量の試験サンプルに添加することができるか、またはある容量の試験サンプルをある容量のキャリブレーティングサンプルに添加することができる。このようにして、最終容量中の試験サンプル成分の濃度の計算が可能である。
【0020】
[0024]たとえば、貯蔵内部標準(キャリブレータ)を、分析すべきサンプルと(たとえば
容量測定で)混合する(図1を参照されたい)。標準と未知サンプルのレポーター(reporter)と化学量論の両方をキャラクタリゼーションすることができる。分離した画分は、たと
えば密度計を使用して走査する。電気泳動図の対応する曲線下の面積を、内部参照標準により得られるシグナルと比較する。既知容量比(すなわち線形性)が与えられると、一点キャリブレーション(single point calibration)、従ってin-situキャリブレータを使用し
て試験サンプル中の成分の濃度を決定できる能力が可能である。
【0021】
[0025]単純な例では、既知濃度の測定すべき被検体(即ちキャリブレータ)を、試験サンプルの未知成分と同一レポーターであらかじめタグ付することができる。タグ付したキャリブレータと未知成分を容量分析的に混和し、キャリブレータと未知サンプルの両方を同時に適用して電気泳動にかける。未知画分を示す電気泳動図を分析して、内部参照標準(
すなわちキャリブレータ)に対して未知成分の濃度を計算する。従って、内部的にタグ付
したキャリブレータの既知濃度と、キャリブレータとサンプルの定義された容量比が与えられると、単一の参照内部標準を使用する一点キャリブレータ計画(即ち、単一の参照内
部標準を使用するキャリブレーション、これは当業者に公知である)を使用して、未知被
検体濃度を計算することができる。この試みにより、方法と方法の間で濃度が変動し易いこと及び外部試験の必要性(たとえば、全被検出体濃度を提供するために)を除去し、サンプル内部の対照を強化し、信頼性を高める。
【0022】
[0026]従って、本方法は、キャリブレータの測定したレベルに基づいて最終容量内の試験サンプル成分の濃度、試験サンプルの分離された成分の測定レベル、及び試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知比(たとえば容量比)を計算する工程も含む。
【0023】
[0027]たとえば、対象となる一つ以上の生体分子を含む既知容量の試験物質を試験管に入れることができる。第二の試験管は、蛍光でタグ付したアルブミンなどの、既知容量及び既知濃度の蛍光でタグ付したキャリブレータのキャリブレーティングサンプルを含むことができる。キャリブレータの初期濃度はCCiと、キャリブレータの初期容量または量はVCiと表すことができる。未知(この例では、対象の一つ以上の生体分子)の初期濃度はCUi
と、未知物の初期容量はVUiと表すことができる。
【0024】
[0028]キャリブレーティングサンプルと、試験サンプル(対象となる一つ以上の生体分
子を含む)の初期容量(または量)は、
【0025】
【数1】
【0026】
であるように、初期容量、VFと最終濃度CCf及びCUfとなるように混合することができる。
【0027】
[0029]既知の混和容量と既知のキャリブレータ濃度の混和サンプルは、充填サンプル(ローディングサンプル)(loading sample)という。この充填サンプルは電気泳動ゲルに適用することができ、電気泳動を実施し、未知物からキャリブレータと、互いに未知成分を分離することができる。
【0028】
[0030]試験サンプル中の対象となる一つ以上の未知成分を認識する、またはこれと結合する標識化抗体を含む抗血清をゲルに適用し、短時間、インキュベートさせることができる。次いでゲルを洗浄して、ゲル内/上の結合していない抗体及び/または物質を除去することができる。このようにして、ゲル中の対象の(単数または複数種類の)未知物は、キャリブレータと同一タグでタグ付した抗体と結合することができる。
【0029】
[0031]この例において、検出計または装置は、抗体及びキャリブレータ上の蛍光タグを検出するように形成することができる。たとえば、蛍光検出ユニットを使用して蛍光タグを励起し、タグ由来の蛍光強度を測定することができる。未知物上のタグ付け抗体由来の蛍光強度は、IUと表され、キャリブレータ由来の蛍光強度はICと表される。未知物質とキャリブレータは同一タグで標識化することができ、キャリブレータは直接、未知物質は結合した抗体により連結されて、それぞれに由来する蛍光強度は、異なる数の粒子の性質だけ異なる。粒子の数は、濃度と直接関連し、これはキャリブレータに関しては公知である。従って未知物質の初期濃度CUfは、以下の関係に従って計算することができる:
【0030】
【数2】
【0031】
[0032]上記のように、本方法は、電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程を含み、ここで前記充填画分は最終容量の画分である、前記工程、及び試験サンプルの成分とキャリブレータが共通する分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通する分離レーンに沿って充填画分を分離する工程、を含む。
【0032】
[0033]ゲル電気泳動は、一次元または二次元で実施することができる。等電点電気泳動法も実施することができる。
【0033】
[0034]本発明で使用するのに好適な電気泳動ゲル支持体は当業者に公知である。たとえば、好適なゲル支持体としては、アガロースまたはポリアクリルアミドが挙げられるが、
これらに限定されない。SDS-PAGE(ポリアクリルアミド)ゲルは、そのサイズをベースとしてタンパク質を分離する。SDSは負の電荷でタンパク質をコーティングするからである。
アガロースゲル上でのタンパク質の分離は電荷による。
【0034】
[0035]大小様々の電気泳動ゲルは、様々な数(たとえば、一つ、二つ、三つ、四つ、五
つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十など)のレーンを含むことができる。一人の個体または
被験者由来の生体サンプルをプローブして、多様な成分を同定することができるか、及び/または多様な個体由来の血清を試験することができる。様々なサイズのゲルにおいて電
気泳動を実施するためのプロトコルは、ゲルのサイズでの分離を最適化するように変形した以外には、同様であろう。
【0035】
[0036]上記のように、本方法は、電気泳動ゲル上に充填画分を付着させる工程も含むことができる。本方法は、電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程を含むことができる。また本方法は、ウェルを使用することなく、電気泳動ゲル上に充填画分を付着させる工程を含むことができる。付着は、電気泳動コーム、ピペット(たとえば、マイクロ
ピペット)などで実施することができる。電気泳動コームは付着させるのに特に有用であ
る。なぜなら、コームの歯がゲル支持体上にサンプルの細いラインを付着させて、サンプルの拡散を減らすことができるからである。ゲルにサンプルリザーバがないゲルシステムでは、サンプルを付着させるのにピペットを使用すると、サンプルが二次元で拡散する円形物になるだろう。サンプルが拡散すると、電気泳動後に最終ゲルの解像度が損なわれるだろう。なぜなら、サンプル分子は円形物の全ての点で始まるからである。サンプルを一次元コーム歯(図2を参照されたい)で付着させることにより、拡散が減り、サンプル分子は一本のラインから出発する;優れた解像度結果と、ゲル当たり短いレーン/より多くの
サンプルが可能である。
【0036】
[0037]上記のように、本方法は、共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程、及び前記検出工程に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分のレベルを測定する工程、を含む。
【0037】
[0038]分離されたキャリブレータ及び試験サンプルの成分、並びに分離されたキャリブレータ及び試験サンプルの成分の検出の例の略図を図3、4A及び4Bに示す。
【0038】
[0039]好適な検出方法としては、たとえば測定すべき被分析物(即ち、抗体標的)、またはその一部(たとえば、キャリブレータまたは試験サンプルの分離された成分、またはそ
の一部)と結合する一つ以上の抗体を使用することが挙げられる。抗体は、検出可能なシ
グナルを発生させることができる、または発生させる原因となる(capable of producing
or causing production of a detectable signal)シグナル発生分子(signal producing molecule)と結合して、抗体標的に結合した抗体を検出可能にする。抗体標識に結合した抗体も、一次抗体を認識する二次抗体を使用することにより検出し、測定することができる。ここで前記二次抗体は検出可能なシグナルを発生させることができる、または発生させる原因となるシグナル発生分子と結合し、抗体標的に結合した抗体を検出可能にする。
【0039】
[0040]上記のように、態様によっては、試験サンプルの一つ以上の成分及び/またはキ
ャリブレータは、例えば免疫固定技術によって電気泳動ゲルに固定することができる。この技術は、ゲル電気泳動により分離された一つ以上の成分とキャリブレータと抗血清とを接触させることを含む。抗血清は、第一の抗体またはそのフラグメントがキャリブレータと結合するように、第一の抗体またはそのフラグメントを含むことができる。抗血清は、第二の抗体またはそのフラグメントが(単数または複数種類の)一つ以上の分離された成分と結合するように、第二の抗体またはそのフラグメントも含むことができる。この技術は
、ゲル中の結合しなかった物質を取り除くために、電気泳動ゲルを洗浄することも含むことができる。
【0040】
[0041]本明細書中に記載するように、「抗体」なる用語は、天然源または組み換え源から誘導された完全免疫グロブリン並びに、完全免疫グロブリンの免疫活性部分(即ち抗原
結合部分)を含むものとする。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗
体、細胞間抗体、抗体フラグメント(たとえばFv、Fab、及びF(ab)2)、並びに一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体及びヒト化抗体(Ed Halow及びDavid Lane, USING ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999年);Houstonら、”Protein
Engineering of Antibody Binding Sites:Recovery of Specific Activity in an Anti-Digoxin Single-Chain Fv Analogue Produced in Escherichia coli," Proc Natl Acad Sci USA 85:5879-5833(1988年);Birdら、”Single-Chain Antigen-Binding Proteins,"
Science 242:423-426(1988年)、これらはその全体が参照として含まれる)などの様々な形状で存在することができる。
【0041】
[0042]モノクローナル抗体の産生方法は、当業界で公知の方法を使用して実施することができる(MONOCLONAL ANTIBODIES-PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATIONS(Mary A. Ritter及びHeather M. Ladyman編、1995年)、これはその全体が参照として含まれる)。ポリクローナル抗体を作るための手順も公知である(Ed Harlow及びDavid Lane, USING ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988年)これはその全体が参照として含まれる)。
【0042】
[0043]全抗体に加えて、本発明はそのような抗体の結合タンパク質を包含する。そのような結合タンパク質としては、一価Fabフラグメント、Fvフラグメント(たとえば一本鎖抗体、scFv)、単一変数VH及びVLドメイン、並びに二価F(ab')2フラグメント、Bis-scFv、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(triabody)、ミニボディ(minibody)などが挙げ
られる。これらの抗体フラグメントは、慣用法、例えばその全体が参照として含まれる、James Goding, MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE 98-118(Academic Press,1983年)及びEd Harlow及びDavid Lane, ANTIBORIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory, 1988年)に記載のようなタンパク質分解フラグメンテーション
手順、または当業者に公知の他の方法により製造することができる。
【0043】
[0044]好適なキャリブレータとしては、試験サンプルの成分からゲル電気泳動により分離し、検出することができる物質が挙げられる。キャリブレータ及び/または試験サンプ
ルの成分はそれぞれ、検出可能なシグナルを発生させることができる、または発生させる原因となるシグナル発生分子に直接結合することができるか、シグナル発生分子で標識化することもできる。キャリブレータ及び試験サンプル成分のそれぞれに直接または間接的に結合したシグナル発生分子は、互いに見分けることが可能である。さらにシグナル発生分子は、任意の組み合わせでキャリブレータ及び試験サンプルの成分のそれぞれに直接または間接的に結合することができる。たとえば、キャリブレータは(たとえば、蛍光材料
であらかじめタグ付けした)シグナル発生分子に直接結合することができ、試験サンプル
の成分はシグナル発生分子に間接的に結合することができる。あるいは、試験サンプルの二つ以上の成分はそれぞれ、シグナル発生分子に直接または間接的に結合することができる。
【0044】
[0045]キャリブレータはタンパク質であってもポリペプチドであってもよい。たとえばキャリブレータはアルブミンであってもよい。キャリブレータは検出可能なシグナルを発生させる、または発生させることができる化合物であってもよい。たとえば、キャリブレータは、蛍光物質、発光物質(luminescent substance)、生物発光物質、または本明細書
に記載の任意の他の好適なシグナル発生分子であってもよい。
【0045】
[0046]キャリブレータは、電気泳動ゲルにおいて試験サンプルの成分と識別可能である。たとえば、キャリブレータは、試験サンプルに結合した識別可能なシグナル発生分子であるか、またはシグナル発生分子に結合することができる。キャリブレータは試験サンプルの成分より速い速度でゲル電気泳動の間に電気泳動ゲル上で移動することができるか、またはキャリブレータは、試験サンプルの成分よりも遅い速度で電気泳動の間に電気泳動ゲル上で移動することができる。
【0046】
[0047]検出可能なシグナルを発生させることができる、または発生させる原因となる好適なシグナル発生分子は、当業者に公知であろう。検出可能なシグナルとしては、放射測定、比色定量測定、蛍光測定、サイズ分離若しくは沈降手段、または当業界で公知の他の手段により検出及び/または測定に好適な任意のシグナルが挙げられる。
【0047】
[0048]検出可能なシグナルを発生させることができる、または発生させる原因となるシグナル発生分子の例としては、様々な酵素、接合団(prosthetic group)、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。シグナル発生分子は、当業界で公知の技術を使用して抗体に直接、または中間体(たとえば、当業界で公知のリンカー)を介して間接的に連結(couple)または結合(conjugate)することができる。たとえば、本発明に従った診断として使用するために抗体に結
合することができる金属イオンに関しては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。さ
らなる例としては、様々な酵素が挙げられるが、これらに限定されない。酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダ
ーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されず;接合団複合体、例えばストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられるが、これらに限定されない。発光材料の例としてはルミノールが挙げられるが、これらに限定されない。生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられるが、これらに限定されない。放射性材料の例としては、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、(153Gd、159Gd)5ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホロミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテニウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pa)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イット
リウム(90Y)、亜鉛(65Zn)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては
、様々な陽電子放出断層撮影法(positron emission tomography)を使用する陽電子放出金属及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。
【0048】
[0049]また本方法は、試験サンプルの分離された成分及び/またはキャリブレータと、
シグナル発生分子と相互作用し得る試薬とを接触させる工程を含むことができ、ここで前記シグナル発生分子は試薬と接触すると検出可能なシグナルを発生させ、前記検出は、前記検出可能なシグナルの検出を含む。たとえば、ルシフェラーゼが適切なルシフェリン基質に作用すると、光が放出される。酵素(たとえばルシフェラーゼ)、フルオロフォアまたは発色団などの検出可能なシグナルまたは部分に結合する第二の抗体も使用することができる。
【0049】
[0050]試験サンプルの成分とキャリブレータを検出するために使用するシグナル発生分
子は、互いに識別可能である。試験サンプルの成分とキャリブレータは、互いに識別可能であるシグナル発生分子に結合することができる。このことにより、試験サンプルの成分とキャリブレータに直接または間接的に結合した少なくとも二つのシグナル発生分子のカクテル化(cocktailing)が可能になる。また、このことにより、異なる、または識別可能
な検出可能なシグナルを発生させる、または発生させることができる試験サンプルの異なる成分(たとえば、リポタンパク質粒子若しくはその一部)とキャリブレータに直接または間接的に二つ以上のシグナル発生分子をカクテル化するのが可能になる。そのようなカクテル化の例は、その全体が参照として含まれる、2013年2月28日出願の米国仮特許出願第61/770,406号、”Fluorescent In-Situ Detection of Lipid Particle Apolipoproteins within Primary Electrophoretic Matrix"に記載されている。
【0050】
[0051]たとえば、上記のように、シグナル発生分子は蛍光性材料を含むことができる。分子内で蛍光タグ付すること及び天然の蛍光を検出することは、当業界で十分公知の分析化学及び生物学方法である。蛍光を検出するのに使用される装置としては、以下の構成要素を含むことができる。白熱電球またはレーザーなどの広い光学帯域幅をもつ光源を刺激光源として使用する。光学フィルターを使用して、所望の刺激波長における光を選択し、サンプル上に光を向ける。光学フィルターは本質的に任意の波長で利用可能であり、所望の伝達波長のわずかな部分に薄いフィルムの層を付着させることにより通常構成される。次いで光学フィルターを出る光はサンプルに適用されて、蛍光分子を刺激する。
【0051】
[0052]次いで前記分子は、その特徴的な蛍光波長で光を放出する。この光は、好適なレンズを通して集められ、次いで特徴的な波長の中心にある第二の光学フィルターの中を通過してから、高電子倍増管、光電導セル、または半導体光検出器などの検出装置に運ばれる。従って、所望の特徴的な波長の光だけが検出されて、蛍光分子の存在を決定する。従って、試験サンプルの成分とキャリブレータは、異なる、検出可能な蛍光波長で光を放出する蛍光分子に直接または間接的に結合することができる。
【0052】
[0053]蛍光タグは、これらが光学的に明瞭であるように、単一領域で多重化(multiplex)することができる。たとえば5つの異なる蛍光タグ、赤、緑、青、黄及び橙を同一の限定領域に適用して、独立して検出して、光学検出ソフトウエアにより識別することができる。たとえば、ライフテクノロジーズ・アレキサ・フルオロ(Life Technologies Alexa Fluor)製品ラインは、標識に対して異なる抗体をタグ付するために組み合わせることができ
る少なくとも19種類の異なるダイを含み、特有の抗原を同定する。
【0053】
[0054]試験サンプルの成分は、少なくとも二つの異なる成分、少なくとも三つの異なる成分、少なくとも四つの異なる成分、少なくとも五つの異なる成分、少なくとも六つの異なる成分、少なくとも七つの異なる成分、少なくとも八つの異なる成分などを含むことができる。従って、試験サンプルの様々な成分はそれぞれ、互いに及び、キャリブレータに直接または間接的に結合したシグナル発生分子と識別可能なシグナル発生分子に直接または間接的に結合することができる。
【0054】
[0055]光学システムは、光学シグナルを定量し、そのシグナル値を自動的に標準化して、相対密度または粒子数を生み出すことができる。たとえば、それぞれのダイの消光/放
出係数または量子相対性(quantum relativity)を標準化することにより、濃度または数(
たとえばリポタンパク質粒子数)の相対値を決定することができる。
【0055】
[0056]このシステム及び方法はまた、検出可能なシグナルを検出するためのデバイスまたはそのデバイスの使用を含むことができ、ここで前記検出は、試験サンプルの特異的な成分またはキャリブレータのレベルを示す。このデバイスは、シグナル発生分子の検出に基づいて、試験サンプルの特異的な成分(たとえば特異的なアポリポタンパク質及び/また
はリポタンパク質粒子)及び/またはキャリブレータのレベルも定量することができる。
【0056】
[0057]試験サンプルの一つ以上の成分は、リポタンパク質粒子またはその一部を含むことができ、ここで前記検出は、前記リポタンパク質粒子またはその一部の検出を含む。
【0057】
[0058]リポタンパク質粒子またはその一部は、アポリポタンパク質A、アポリポタンパ
ク質B、アポリポタンパク質C、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、高密度リポタンパク質、中間密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、超低密度リポタンパク質、カイロミクロン、リポタンパク質X、その
酸化変異体及び混合物からなる群から選択することができる。
【0058】
[0059]本明細書中で使用する「リポタンパク質粒子」、「脂質タンパク質粒子」、「脂質粒子」などの用語は、タンパク質と脂質の両方を含む粒子をさす。リポタンパク質粒子の例としては、以下により詳細に記載する。
【0059】
[0060]本明細書中で使用する「リポタンパク質粒子数」なる用語は、体液中に存在するリポタンパク質の粒子の数をさす。
【0060】
[0061]本明細書中で使用する「アポリポタンパク質」なる用語は、脂質と結合してリポタンパク質粒子を形成するタンパク質をさす。アポリポタンパク質種の例は、以下より詳細に記載する。アポリポタンパク質の特徴的な性質は、リポタンパク質に対するその化学量論的関係であり、以下より詳細に記載するように、リポタンパク質粒子数の推定値を与える。
【0061】
[0062]基礎知識として、脂肪酸、コレステロール、モノアシルグリセロール、及び胆汁酸は腸で吸収される。胆汁酸は腸の胆汁(intestinal bile)で見られ、ミセルを形成して
脂肪を乳化することによって脂肪の消化を助ける。胆汁酸は、食後に胆汁酸が腸に分泌されるまで、胆嚢に貯蔵される。腸の上皮細胞は、トリアシルグリセロールを合成する。コレステロールの一部はエステル化されて、コレステロールエステルを形成する。腸細胞はトリアシルグリセロール、コレステロールエステル、リン脂質、遊離コレステロール及びアポリポタンパク質からカイロミクロンを形成する。
【0062】
[0063]本発明に従って検出することができる具体的なリポタンパク質粒子またはその一部としては、アポリポタンパク質A、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質C、アポ
リポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、高密度リポタンパク質、中間密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、超低密度リポタンパク質、カイロミクロン、リポタンパク質X、その酸化変異体及び混合物が挙げられる
が、これらに限定されない。
【0063】
[0064]アポリポタンパク質はリポタンパク質粒子のタンパク質成分である。アポリポタンパク質は、コレステロールエステルとトリアシルグリセリドを含むリポタンパク質粒子を被覆する。リポタンパク質粒子のコートは、エステル化されていないコレステロール、リン脂質及びアポリポタンパク質から作られる。アポリポタンパク質の特徴的な性質は、リポタンパク質に対するその化学量論的関係であり、リポタンパク質粒子数の推定値を与える。これらのリポタンパク質粒子は、血流を通して疎水性成分を循環させる一つの方法を提供する。様々なリポタンパク質粒子としては、カイロミクロン-P、VLDL-P、IDL-P、LDL-P、Lp(a)-P及びHDL-Pが挙げられる。リポタンパク質はサイズ、形状、密度、アポリポタンパク質組成及び脂質組成が様々である。それぞれのクラスでは様々に多様性があり、それぞれのクラスは似たような物理的特性を共有する。条件を変動させることによって、クラスの中の様々な粒子を可視化することが可能である。そのようにする臨床的利点があ
る。というのは、たとえば一つのクラスはアテローム生成的(artherogenic)であり、一つのクラスはアテローム形成抑制的(artheroprotective)であるかもしれないからである。
【0064】
[0065]アポリポタンパク質A(ApoA)ファミリーは、HDL-P及びトリグリセリド-リッチリ
ポタンパク質粒子に見られる主なタンパク質を構成する。HDLの一部としてのApoAは、肝
外組織からの遊離コレステロールの引抜きに関与し、レシチンアシルトランスフェラーゼの活性化に影響を与える。アポリポタンパク質Aは組織からHDLへコレステロール移動を駆動する酵素を活性化し、HDL認識及び肝臓におけるレセプター結合に関与している。
【0065】
[0066]アポリポタンパク質Aには多くの形がある。最も一般的な形は、Apo A-I及びApo A-IIである。アポリポタンパク質A(A-I、A-II及びA-IV)は、カイロミクロン及びHDLに知
見される。Apo-Iは、HDLに結合する主なアポリポタンパク質Aである。Apo A-Iは、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼの活性化の原因であり、Apo A-IIはその活
性化を調整する。レシチン-コレステロールトランスフェラーゼは、遊離コレステロール
をコレステロールエステルに転換する。脂肪が腸に吸収されると、Apo A-IV分泌作用は増加する。Apo A-IVは、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼの活性化でも
機能することができる。
【0066】
[0067]Apo A-IはApo A-IIよりも高い割合で見られる(約3対1)。より低レベルのApo Aは通常、心臓血管疾患(CVD)及び末梢血管の疾患の存在と相互関係がある。Apo A-Iは、HDL-コレステロール(HDL-C)よりもアテローム生成リスクの優れた予測基準因子(predictor)であるかもしれない。特定の遺伝子疾患はApo A-I欠損症及び、関連する低レベルのHDL粒子を生じる。これらの患者は高いLDL粒子をもつ高脂血症の傾向もある。これは、アテロー
ム性動脈硬化症の加速度の一因となる。Apo Aレベルは、(家族性高密度リポタンパク質欠損症としても公知の)アルファ・リポタンパク質血症では非常に低いかもしれない。
【0067】
[0068]マクロファージからのコレステロール流出におけるHDL及びその主なアポリポタ
ンパク質Apo A-Iの役割は、広く研究されてきた。HDLはApo A-I結合と競合するが、Apo A-IはHDL結合に関して競合相手ではない。この観察は、HDL及びApo A-Iは、異なる受容体により少なくとも一部マクロファージに結合していることを示唆する。たとえばプレ-β-HDL及び脂質-遊離Apo A-Iは、スカベンジャー受容体(SR-BI)に対しては悪いリガンドであり、このことは、Apo A-IによるHDL結合の競争がないことを説明している。逆に、Apo A-IはHDLから解離する場合もあり、脂質-遊離Apo A-IはHDLによるApo A-I結合サイトでの競合で利用可能であることが知見された。Lorenziら、”Apolipoprotein A-I but not high-density lipoproteins are internalized by RAW macrophages :roles of ATP-binding
cassette transporter A1 and scavenger receptor." BIJ Mol Med. 86:171-183(2008年)は、本明細書中、その全体が参照として含まれる。HDLの別の成分であるApo A-IIは、動物モデルで前アテローム生成的(pro-atherogenic)であることが知見された。Meyersら、
”Pharmacologic elevation of high-density lipoproteins:recent insights on mechanism of action and atheroscerosis protection.", Curr Opin Cardiol.19(4):366-373(2004年)は、本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【0068】
[0069]アポリポタンパク質B(Apo B-100及びApo B-48)は、LDLのタンパク質成分である
。Apo Bの一分子は、各LDLのリン脂質層に存在する。90%を超えるLDL粒子はApo Bから構成される。Apo Bは、LDL複合体内部でコレステロールを可溶化する働きをして、これは順に動脈壁上に続いてLDLコレステロールを付着させるLDLの輸送能力を高める。付着すると、心臓血管疾患の一因となる。Apo Bは、カイロミクロン、VLDL、IDL及びLp(a)のタンパ
ク質成分でもある。Apo Bは、二つのイソ型:Apo B-100(肝細胞で合成)及びApo B-48(カ
イロミクロンの構造タンパク質)をもつ大きな両親媒性ヘリカルグリコタンパク質である
。カイロミクロンはApo B-48を含み、Apo Bを含む他のリポタンパク質粒子はApo B-100を
含む。
【0069】
[0070]Apo Bはリポタンパク質粒子上に働く酵素の活性を調整し、リポタンパク質粒子
複合体の構造完全性を維持し、特異的細胞-表面受容体のリガンドとして作用することに
よってリポタンパク質粒子を取り込み易くする。リポタンパク質粒子で作用する酵素としては、リポタンパク質リパーゼ、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ、
肝臓-トリグリセリドリパーゼ、及びコレステロールエステルトランスフェラーゼタンパ
ク質が挙げられるが、これらに限定されない。高リポタンパク血症では上昇レベルのApo Bが知見される。Apo B-100は、無βリポタンパク血症の形状では存在しない。高レベルのApo B-100は高リポタンパク血症、急性狭心症、及び心筋梗塞で存在するかもしれない。Apo B-48は、カイロミクロン停滞病(chylomicron retention disease)では腸に留まる。
【0070】
[0071]高血漿濃度のApo B-含有リポタンパク質粒子は、アテローム性動脈硬化症の発症のリスク増大と関連する。症例管理研究から、血漿Apo B濃度は、冠状動脈性心疾患(CHD)の患者を識別する際に他の血漿脂質及びリポタンパク質粒子よりもずっと特徴的であることを知見した。De Backerら、"European Guidelines on Cardiovascular Disease Prevention in Clinical Practice. Third Joint Task Force of European and other Societies on Cardiovascular Disease Prevention in Clinical Practice," Eur Heart J24:1601-1610(2003年);Walldius&Jungner、"Apolipoprotein B and Apolipoprotein A-I:Risk Indicators of Coronary Heart Disease and Targets for Lipid-modifying Therapy,"
J Intern Med 255(2):188-205(2004年);Walldiusら、"The apoB/apoA-I ratio:A Strong, New Risk Factor for Cardiovascular Disease and a Target for Lipid-Lowering Therapy--A Review of the Evidence," J Intern Med.259(5):493-519(2006年);Yusuf
ら、"Effect of Potentially Modifiable Risk Factors Associated with Myocardial Infarction in 52 Countries (the INTERHEART Study):Case-control Study," Lancet 364:937-52(2004年)、これらは本明細書中、その全体が参照として含まれる。CHDリスクを
測定する際のApo Bの有用性は、プロスペクティブ研究によって確認されてきたが、リス
クを予測する際にApo B濃度が血清脂質よりも優れているかという程度は変動しやすい。Apo Bは、超低密度リポタンパク質粒子(VLDL-P)、中間密度リポタンパク質粒子(IDL-P)、
低密度リポタンパク質粒子(LDL-P)及びリポタンパク質(a)粒子(Lp(a)-P)などの全てのア
テローム生成的または潜在的にアテローム生成的である粒子の成分であり、それぞれの粒子はApo Bを一分子含む。従って、Apo Bは、循環血液中にアテローム生成的リポタンパク質粒子の数の直接的尺度を提供する。全Apo Bは均質ではない。全Apo Bは、上記の様々な粒子中でApo Bの存在によって影響を受けるだろう。粒子を分離せずに全Apo Bだけを測定すると、どの粒子が関係しているかは示さない。
【0071】
[0072]現在、Apo Bは、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)よりも心血管疾患(CVD)のもっと強い前兆であるという明らかな統一見解があり、米国糖尿病学会(American
Diabetes Association:ADA)及び米国心臓病学会(American College of Cardiology:ACC)の最近のコンセンサス会議報告では、Apo Bの測定の重要性を認めている(Kannelら、"Cholestrol in the Prediction of Atherosclerotic Disease," Ann Intern Med 90:85-91(1979年)及びJeyarajahら、"Lipoprotein Particle Analysis by Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy," Clin Lab Med 26:847-70(2006年)を参照されたい。これらは本
明細書中、その全体が参照として含まれる)。Apo B及びLDL-Pの増大レベルは、個体の心
血管疾患のリスクが増大したことを意味する。Apo B及びLp(a)-Pの増大レベルは、個体の心血管疾患のリスクが増大したことを意味する。
【0072】
[0073]さらに、Apo B/Apo A-I比は、アポリポタンパク質に関連した死亡率リスク(AMORIS)(Walldius&Jungner、"Apolipoprotein B and Apolipoprotein A-I:Risk Indicators of Coronary Heart Disease and Targets for Lipid-modifying Therapy," J Intern Med
255(2):188-205(2004年);Walldiusら、"The apoB/apoA-I ratio:A Strong, New Risk
Factor for Cardiovascular Disease and a Target for Lipid-Lowering Therapy--A Review of the Evidence," J Intern Med. 259(5):493-519(2006年);Wallidusら、"Stroke Mortality and the Apo B/Apo A-I Ratio:Results of the AMORIS Prospective Study." J Intern Med.259:259-966(2006年)を参照されたい。これらは本明細書中、その全体が参照として含まれる。)及びINTERHEART(Yusufら、"Effect of Potentially Modifiable Risk Factors Associated with Myocardial Infarction in 52 Countries(the INTERHEART Study):Case-control Study," Lancet 364:937-52(2004年)、及びYusufら、"Obesity and the risk of myocardial infarction in 27,000 participants from 52 countries:a case-control study," Lancet 366:1640-9(2005年)、これらは本明細書中、その
全体が参照として含まれる)研究に見られるように、心筋梗塞(MI)、発作及び他のCV兆候
のリスクに強く関連していることが示されている。
【0073】
[0074]アポリポタンパク質C(Apo C-I、C-II、C-III)は、カイロミクロン粒子、VLDL粒
子、IDL粒子及びHDL粒子の成分である。Apo C-IIはリポタンパク質リパーゼのアクチベータであり、欠損によりカイロミクロン及びトリアシルグリセロールが蓄積する。高レベルのApo C-IIはアンギナ及び心筋梗塞の指標である。アポリポタンパク質C-II(Apo C-II)は、消化管から吸収された大粒子(large particle)に見られる特殊なタイプのタンパク質である。殆どコレステロールからなる超低密度リポタンパク質粒子(VLDL-P)にも知見される。Apo C-IIは、キャピラリー中でリポタンパク質リパーゼ(LPL)の活性化の原因であるア
ポリポタンパク質であるので、カイロミクロン粒子とVLDL-Pの異化作用を開始する。これはHDL-Pにも知見される。このApo C-IIの欠損は、絶食の間に深刻な(grave)高リポタンパク血症及び高カイロミクロン血症を示す。
【0074】
[0075]Apo C-II測定は、高い血中脂質(高脂血症)の特異的なタイプまたは原因を決定し易くすることができる。家族性リポタンパク質リパーゼ欠損症の人は、大量のApo C-IIをもつかもしれない。高いApo C-IIレベルに関連するかもしれない他の疾患としては、狭心症及び心臓麻痺が挙げられる。低Apo C-IIレベルは、家族性Apo C-II欠損症と呼ばれるまれな疾患の人で見られる。
【0075】
[0076]アポリポタンパク質C-III(Apo C-III)は、超低密度リポタンパク質粒子(VLDL-P)で見られる。Apo C-IIIは、リポタンパク質リパーゼと肝性リパーゼを阻害し、トリグリ
セリド-リッチ粒子の肝取り込みを阻害すると考えられる。Apo C-IVは少なくともVLDL-P
及びHDL-Pで見つかる。
【0076】
[0077]Apo A-I、Apo C-III及びApo A-IV遺伝子は、ラットとヒトのゲノムの両方で密接に結びついている。A-IとA-IV遺伝子は同一ストランドから転写され、A-IとC-III遺伝子
は集中的に(convergently)転写される。Apo C-IIIレベルの上昇は、高リポタンパク血症
を誘発する。
【0077】
[0078]アポリポタンパク質DはHDLの少量成分である。高濃度のApo Dは、ひどい(gross)乳腺嚢胞症及びアルツハイマー病などの様々な疾患と相関する。
【0078】
[0079]アポリポタンパク質E(Apo E-2、E-3、及びE-4)はカイロミクロン及びIDLで見つ
かる。Apo Eは肝細胞と体皮細胞上の受容体と結合する。Apo Eは、トリグリセリド-リッ
チリポタンパク質粒子構成成分の正常な異化作用に必須である。Apo Eはリポタンパク質
粒子代謝及び心血管疾患においてその重要性が最初に認められた。これは、脂質の組織への輸送、臓器から肝臓へのコレステロールの輸送、VLDL及びカイロミクロンを除去することによるリポタンパク質粒子代謝、及びアテローム性動脈硬化症の形成に影響を及ぼす。リポタンパク質粒子のApo E部分は、Apo Eリポタンパク質粒子のLDL受容体への結合を媒
介する。LDL-Pに結合したApo Eは、血小板上のサイトに結合することによってアゴニストにより誘発された血小板凝集を阻害する。Apo E遺伝子の三つの異なる対立遺伝子、Apo E
e2、e3及びe4が存在する。Apo E e4は、後期発生アルツハイマー病の増大リスクと関連
する。
【0079】
[0080]アポリポタンパク質Hはカルジオリピンと結合するように機能する。抗-カルジオリピン抗体は、梅毒、硬化症、及び狼瘡並びに、抗体がApo Hを活性化する必要があり、
血小板によるセロトニン放出を阻害し、血小板の凝集を妨げる疾患で見つかる。Apo Hは
、血小板によるセロトニン放出を阻害し、血小板の凝集を妨げる。
【0080】
[0081]リポタンパク質粒子のプロフィールは、様々な個体でも、同一個体でも様々な時間によって異なる。カイロミクロンは、腸で産生され、消化された脂肪を組織へ輸送する。リポタンパク質リパーゼはトリアシルグリセロールを加水分解して、脂肪酸を形成する。カイロミクロンは最も大きな浮揚性粒子の一つである。VLDLは、肝臓でカイロミクロンが代謝されるときに遊離脂肪酸から形成される。リポタンパク質リパーゼはトリアシルグリセロールを加水分解して脂肪酸を形成する。IDLはVLDLの加水分解されていないトリア
シルグリセロールである。IDLは肝性リパーゼによりLDLになる。HDLは末梢組織から肝臓
へコレステロールの輸送に関与する。HDLは肝臓及び腸で合成される。
【0081】
[0082]LDL粒子はLDL受容体に結合する。受容体が結合すると、LDLは血液から除去され
る。細胞は膜及びホルモン合成のためにLDL内部のコレステロールを使用する。LDLは動脈上にLDLコレステロールを付着させ、これが心血管疾患の一因になる。LDLが動脈壁内部に蓄積すると、LDLは炎症を起こす。マクロファージは炎症部位にひきつけられて、LDLを取り込むときに泡沫細胞を形成して、さらに炎症を起こす。より小さく、密なLDLは、より
大きな浮揚性LDLよりもより多くのコレステロールエステルを含む。
【0082】
[0083]リポタンパク質(a)粒子(LP(a)-P)の構造は、ジスルフィド結合によってアポリポタンパク質Bにアポリポタンパク質Aが結合したLDL-様粒子の構造である。リポタンパク質(a)粒子は、凝固に関与するので、免疫細胞を刺激して、動脈壁上にコレステロールを付
着させるかもしれない。高リポタンパク質(a)-Pレベルは、心血管疾患の危険性がより高
いことを示す。具体的には、心血管疾患は、より小さなアテローム性Lp(a)-Pイソ形と関
連するかもしれないので、よりゆっくりと移動させるための高レベル、より陰極のLp(a)-Pバンドは、心血管疾患のより高いリスクの指標かもしれない。従って、Lp(a)-Pは、診断的及び統計学的リスク評価で有用である。Lp(a)-Pのレベルは、アテローム生成事象では
増加する。
【0083】
[0084]Lp(a)-Pは、血栓症とアテローム性動脈硬化症の間の関連性をもつかもしれず、
線維素溶解カスケード(fibrinolytic cascade)におけるプラスミノーゲン作用を妨げる。多くの研究で、高血漿Lp(a)-P濃度対末梢血管疾患、脳血管疾患及び若年性冠動脈疾患(premature coronary disease)などの様々な心血管疾患の関係が立証されてきた。特に古い
アメリカの大規模研究の一つは、Lp(a)-Pの増大レベルは、発作、血管疾患による死、及
び男性におけるあらゆる原因による死亡の増大リスクを予測する(本明細書中、その全体
が参照として含まれる、Friedら、"The Cardiovascular Health Study:Design and Rationale," Ann. Epidemiol. 3:263-76(1991年)を参照されたい)。
【0084】
[0085]低密度リポタンパク質コレステロール、(LDL-C)は、心血管リスクを評価するた
めの測定に関して使用されてきた。しかしながら、HDL-Cの変異性のため、Apo Bは循環するLDL粒子数(LDL-P)のより優れた尺度であり、Apo BとLDL粒子は1:1化学量論があるので、従来のLDL-Cよりも信頼性のあるリスク指標である。総Apo Bの合計は、LDL-PのApo B補数(complement)(大きな浮揚性粒子と小さな密な粒子)、+VLDL+IDL+Lp(a)-P+カイロ
ミクロンが挙げられるが、これらに限定されない。Apo Bレベルと関連するリポタンパク
質粒子の測定は、個々の測定または従来のLDL-Cアッセイ以上にアテローム硬化性心疾患
のリスクに追加情報を提供する。空腹時血漿インスリンレベルとLDL粒子サイズの測定も
、有用な情報を提供する。
【0085】
[0086]上記のリポタンパク質の酸化変異型も検出することができる。リポタンパク質の酸化変異型は、アテローム発生の一因であり、酸化は増大した細胞内カルシウム、低下したエネルギー産生、サイトカインの活性化、膜の損傷を引き起こし、すべてアポトーシス、ネクローシス及び最終的には細胞死となる。酸化は通常、反応性ラジカルがLDL粒子上
で多価不飽和脂肪酸から水素原子を取り除くときにはじまる。脂質ペルオキシルラジカル及びアルコキシルラジカルが形成し、次いでこれは近くの脂肪酸で酸化を開始して、脂質過酸化反応を伝播する。リポタンパク質のこれらの酸化形は、天然のリポタンパク質よりもより迅速にマクロファージにより取り除かれ、これによってマクロファージコレステロールが蓄積して、続いて泡沫細胞が形成して、組織マクロファージと内皮細胞の運動性が阻害される。この事象のカスケードは血管機能不全となり、アテローム性動脈硬化症を形成し、活性化させる。
【0086】
[0087]電気泳動ゲルにおけるリポタンパク質粒子またはその一部の存在は、検出可能なシグナルまたは部分を測定することによって定量化することができる。次いで粒子数は、公知の化学量論の関係(たとえばApo BとLDL粒子の1:1化学量論)に従って計算することができる。粒子数は、サンプル中の総脂質粒子または脂質粒子濃度のクラスを特徴付ける個別分析と比較することによって定量化することができる。そのような個別分析は、超遠心分離法、NMR、またはサンプル中の粒子の濃度または総粒子数を特徴付けられる任意の
他の分析法であってもよい。脂質粒子電気泳動及び脂質粒子定量化で使用される前記サンプルは、同一サンプルの異なるアリコートであってもよい。
【0087】
[0088]従って、本発明の別の側面は、in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を
実施する方法を実施することにより、生体サンプル中に存在する特異的なアポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子のレベルを評価する方法であって、ここで前記試験
サンプルの成分としては、リポタンパク質粒子またはその一部が挙げられ、前記検出は、前記リポタンパク質粒子またはその一部を検出することを含む。
【0088】
[0089]このようにして、生体サンプル中に存在する特異的なアポリポタンパク質及び/
またはリポタンパク質粒子のレベルを評価することによって、被験者に心血管疾患の増大リスクがあるかを決定することができる。また本方法は、被験者が心血管疾患の増大リスクがあるかを決定するために、アポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子を対
照または参照値に関連付ける工程も含むことができる。
【0089】
[0090]評価は、電気泳動ゲル上に生体サンプルを付着させ、ゲル電気泳動を実施することにより、生体サンプル中に存在するリポタンパク質粒子を分離する工程;電気泳動ゲル上に個々の反応性アポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子とキャリブレータ
のシグナル発生分子により発生した検出可能なシグナルを検出する工程;及び前記検出する工程に基づき、生体サンプル中に存在する様々なアポリポタンパク質及び/またはリポ
タンパク質粒子のレベルを決定する工程、を含むことができる。上記のように、シグナル発生分子は、アポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子及びキャリブレータに
直接または間接的に(たとえば抗体を介して)結合することができる。間接的に(たとえば
抗体を介して)結合する場合、評価は、リポタンパク質-抗体-シグナル発生分子複合体及
び/またはキャリブレータ-抗体-シグナル発生分子複合体を形成するのに好適な条件下で
、シグナル発生分子に結合した抗体と生体サンプルとを接触させる工程、及びゲルを洗浄して、結合しなかった抗体を除去若しくは実質的に除去する、及び電気泳動ゲル上の個々
のアポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子とキャリブレータのシグナル発生
分子により発生した検出可能なシグナルを検出する工程も含むことができる。また上記のように、本方法は、一次抗体及び二次抗体を使用して実施することもでき、ここで前記二次抗体はシグナル発生分子に結合する。この態様において、評価は、リポタンパク質-一
次抗体複合体及び/またはキャリブレータ-一次抗体複合体を形成するのに好適な条件下で、生体サンプルと一次抗体とを接触させて、ゲルを洗浄して、結合しなかった抗体を除去若しくは実質的に除去する工程;リポタンパク質-一次抗体-二次抗体-シグナル発生分子
複合体及び/またはキャリブレータ-一次抗体-二次抗体シグナル発生分子複合体を形成す
るのに好適な条件下で、リポタンパク質-一次抗体複合体及び/またはキャリブレータ-一
次抗体と二次抗体とを接触させて、結合しなかった二次抗体を除去若しくは実質的に除去する工程;及び電気泳動ゲル上のそれぞれのアポリポタンパク質及び/またはリポタンパ
ク質粒子及びキャリブレータのシグナル発生分子により発生した検出可能なシグナルを検出する工程も含むことができる。
【0090】
[0091]上記のように、キャリブレータ及び試験サンプルの成分(たとえば一つ以上のア
ポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子)に直接または間接的に結合したシグナル発生分子は、互いに識別可能である。さらに、シグナル発生分子は、任意の組み合わせでキャリブレータ及び試験サンプルの成分(たとえば一つ以上のアポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子)のそれぞれに直接または間接的に結合することができる。た
とえば、キャリブレータは、シグナル発生分子(たとえば蛍光物質であらかじめタグ付け
したもの)に直接結合することができ、試験サンプルの成分は、シグナル発生分子に間接
的に結合することができる。あるいは試験サンプル(たとえば一つ以上のアポリポタンパ
ク質及び/またはリポタンパク質粒子)の二つ以上の成分は、それぞれシグナル発生分子に直接的にまたは間接的に結合することができる。
【0091】
[0092]脂質に関連する健康リスク、心血管病態、及び心血管疾患のリスクの文脈における相関関係とは、当業界で公知のように、得られるリポタンパク質サイズ分布と国民死亡表(population mortality)及びリスク因子との統計的相関関係をさす。心血管リスク(た
とえば治療的介入に対する反応性に関して)の文脈における相関関係とは、二つの時間点(たとえば、治療的介入を実施する前と実施した後)におけるリポタンパク質サイズ分布の
比較をさす。
【0092】
[0093]相関は、被験者に心血管疾患の増大リスクがあるかを決定するために、所定のレベルの様々なアポリポタンパク質及び/またはリポタンパク質粒子を対照または参照値と
関連付ける工程を含むことができる。
【0093】
[0094]相関は、被験者を、心血管疾患を発症または罹患していることに関して高いリスク、中程度のリスク及び低いリスク(または最善(optimal))群からなる群から選択される
リスク分類に分類する工程も含むことができる。リスクを決定するために生化学的マーカー(たとえばコレステロール及びリポタンパク質レベルがあるが、これらに限定されない)のカットオフ値に関しては十分に確立された推奨値がある。たとえば抗-Apo B結合/検出
は、Lp(a)-P及びLDL-Pに基づくリスク分類を割り当てるためのカットオフ推定値と関連しているかもしれない。たとえばそのようなリスク分類を割り当てるためのカットオフ値は以下のようであってもよい:Lp(a)-P:<75nmmol/L最善、76-125nmol/l中間リスク、>126nmmol/L高リスク;LDL-P:<10000nmol/L最善、1000-1299nmol/L中間リスク、>1300nmol/L高リスク。
【0094】
[0095]上記の一つ以上の様々なリポタンパク質粒子またはその一部は、少なくともアポリポタンパク質B及び低密度リポタンパク質を含むことができる。検出されたアポリポタ
ンパク質Bと低密度リポタンパク質粒子の増大レベルは、個体に心血管疾患の増大リスク
があることを示す。Apo BとVLDLとの間には1:1化学量論があるので、増大したApo Bは算術的にVLDL-Pと関連する。
【0095】
[0096]様々なリポタンパク質粒子またはその一部は、少なくともアポリポタンパク質B
及びリポタンパク質(a)を含むことができる。検出されたリポタンパク質(a)粒子とLp(a)-P-イソ形型の増大レベルは、個体に心血管疾患の増大リスクがあることを示す。
【0096】
[0097]また本発明は、決定された心血管疾患のリスクをベースとして治療法を選択することを含む。たとえば、個体は、本明細書に記載の方法に従って増大したリスクであると決定することができ、次いで、増大したリスクに基づいて治療法を選択することができる。
【0097】
[0098]選択された治療法は、薬剤または栄養補助食品(supplement)を含むことができる。好適な薬剤または栄養補助食品としては、当業界で公知のように、血清コレステロールを下げる、LDL、IDL、及びVLDL、Lp(a)を低下させる及び/またはHDLを上昇させる目的に
関して投与されるものが挙げられる。
【0098】
[0099]好適な薬剤の例としては、抗炎症薬、抗血栓剤、抗血小板薬、線維素溶解薬、脂質低下薬、直接トロンビン阻害薬、糖たんぱく質IIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子に結合し、そのような分子に白血球が付着する能力を阻害する薬剤、カルシウムチャネル遮断薬、ベータアドレナリン受容体遮断薬、アンギオテンシン系阻害薬またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0099】
[00100]選択された治療法は、決定された心血管疾患のリスクに基づいて生活様式の選
択肢を作成または維持に関する勧告を与える工程も含むことができる。生活様式の選択肢としては、食事の変更、運動の変更、喫煙を減らす若しくは辞める、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0100】
[0100]中でも、選択された処置療法の記載を含むレポートを報告することができる。態様によっては、リポタンパク質被検体はそのようなレポートで報告する。リポタンパク質及び他の脂質分析の文脈において、レポートは、患者、臨床医、他の医療供給者、疫学者などに対して提供されたレポートをさし、これは個体からの血漿標本などの、生体標本の分析結果を含む。レポートは、当業界で公知のように、印刷された形態若しくは電子的形態、またはその中のデータを分析、再調査及び/またはアーカイブに保管するのに便利な
任意の形態であることができる。レポートは、これらに限定されないが、名前、住所、性別、識別情報(たとえば、社会保障番号、保険番号)などを含む、レポートの各被験者についての識別情報を含むことができる。レポートは、これらに限定されないが、トリグリセリド、総コレステロール、LDLコレステロール及び/またはHDLコレステロールなどの、サ
ンプル中の脂質の生化学的キャラクタリゼーションを含むことができる。さらにレポートは、リポタンパク質のキャラクタリゼーション、従って本明細書中に提供される方法により製造したサンプルで実施した参照範囲を含むことができる。「参照範囲(reference range)」などの用語は、個体の母集団で通常観察される正常範囲を表すために、当業界で公
知の生体サンプルの成分濃度をさす。分析レポートにおけるリポタンパク質の典型的なキャラクタリゼーションとしては、VLDL、IDL、Lp(a)-P、LDL及びHDL並びにそれらのサブクラスに関する濃度及び参照範囲を含むことができる。さらにレポートは、リポタンパク質サイズ分布の傾向を含むことができる。
【0101】
[0101]また本発明はさらに、被験者に選択された処置療法を行うことを含むことができる。従って、本発明のさらなる側面は、決定された心血管疾患の増大したリスクのある被験者を処置する方法に関する。
【0102】
[0102]また本発明は、心血管疾患を発症するリスクをモニターする方法に関する。本方法は、被験者に最初の時間点で心血管疾患の増大したリスクがあるかどうかを決定する、及び一つ以上のその後の時間点で(たとえば、治療的介入の前後または、治療的介入の間
のその経過時間点で)決定を繰り返すことを含む。それぞれの経過時間点において決定さ
れたリスクは、被験者が心血管疾患を発症するリスクが増加したかまたは低下したかを評価するために、一つ以上の初期の時間点からの決定されたリスクと比較し、これにより心血管疾患を発症するリスクをモニターする。この方法は、心血管疾患を発症する決定されたリスクをベースとしてリスク分類に割り当てる、及び経過時間点で割り当てられたリスク分類を比較する(たとえば、第一の時間点で決定された第一のリスク分類と、第二の時
間点でとられた第二のリスク分類とを比較する)、これにより心血管疾患を発症するリス
クをモニターすることを含むことができる。
【実施例
【0103】
実施例1-in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動
【0104】
[0103]in-situキャリブレーションを用いるゲル電気泳動は、上記の材料及び方法を使
用して実施した。特に、未知濃度のリポ粒子(lipoparticle)を含む四つの血清サンプルを、キャリブレータである、各々の既知濃度のフルオレセイン-標識化アルブミンと混合し
た。
【0105】
[0104]次いでサンプルをゲル電気泳動にかけた。特にサンプル75μLを、サンプルカッ
プの壁で予め乾燥しておいた既知濃度のキャリブレータを含んでいたそれぞれのサンプルウェルに調合した。サンプルを付着させる際に、キャリブレータを未知サンプルで再溶解化させて、サンプル対キャリブレータの既知比で最終容量を形成した。この実験では、四つのサンプルをそれぞれ、単一の電気泳動レーンに沿って別々の電気泳動ウェルに充填した。次いで試験サンプルの成分とキャリブレータがそれぞれの分離レーンに沿ってサイズ及び電荷により互いに分離されるように、ゲルに充填したサンプルの一部を電気泳動ゲルのそれぞれの共通分離レーンに沿って分離した。
【0106】
[0105]分離が完了したら、抗-apo B及び抗-BSA-アルブミン「カクテル」抗血清を、サ
ンプルが流れたレーンに適用した。この場合、抗-apoB抗体は、アルブミン対照と同一フ
ルオレセインで標識化した。しかしながら、上記のように、キャリブレータ(たとえばア
ルブミン)は、抗-apoB抗体とは異なるシグナル発生分子で標識化することができただろう。この抗-apoB抗体は、サンプルのリポタンパク質表面上のapoBタンパク質に付着した。LDL、VLDL及びLp(a)-Pは、apoBを含む。従って、抗-apoB抗体に結合したこれらのリポタンパク質及び抗-BSA-アルブミン抗体に結合したBSAアルブミンキャリブレータは、ゲルマトリックス内部に「固定」された。残っている抗-血清は、典型的なブロッティング-プレシング・プロトコル(blotting-pressing protocol)により除去し、続いて過剰の結合していない抗血清を除去するために好適な液体中で再水和した。このプロセスは、結合していない抗血清を適切に除去するために繰り返すことができる。この場合、再水和溶液は、IFF
洗浄プロトコルに一般的なTris緩衝塩溶液であった。得られたゲルの画像を図5Aに示す
【0107】
[0106]次いで乾燥後にゲルを蛍光光度計(BioRad ChemiDoc MPイメジャー)で走査し、得られたピークを、図5B~5Eに示すようにプロットした。ゲルは乾燥する必要がないことに注意すべきである。図5B~5Eにおいて、LDL、VLDL、Lp(a)-P及びキャリブレータは、左側のゲルの画像に目に見えるように識別され、本発明に従って分離された成分の定量結果は、それぞれサンプル1~4の右側に示されている。本明細書中に記載のように、相対濃度を出し、キャリブレータの既知濃度を使用して、絶対濃度または粒子数に変換した。
【0108】
[0107]本明細書において好ましい態様について示し、記載してきたが、当業者には、本明細書の趣旨から逸脱することなく様々な変形、付加、置換などが可能であることが明らかである。従ってこれらは請求の範囲に定義された本発明の範囲内であるとみなされる。
これに限定されるものではないが、本発明は以下の態様の発明を包含する。
(1)in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施するための方法であって:
ある容量の試験サンプルとある容量のキャリブレーティングサンプルとを混和して最終容量を形成する工程であって、前記キャリブレーティングサンプルの容量は既知濃度のキャリブレータを含み、前記最終容量は試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比を含む、前記工程;
電気泳動ゲルのウェルに充填画分を付着させる工程であって、前記充填画分は前記最終容量の画分である、前記工程;
前記試験サンプルの成分とキャリブレータが共通する分離レーンに沿って互いに分離されるように、電気泳動ゲルの共通する分離レーンに沿って充填画分を分離する工程;
前記共通する分離レーン内でキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とを検出する工程;及び
前記検出する工程に基づいてキャリブレータと試験サンプルの分離された成分とのレベ
ルを測定し、in-situキャリブレーションを用いて電気泳動を実施する工程、
を含む前記方法。
(2)キャリブレータの測定されたレベル、試験サンプルの分離された成分の測定されたレベルと、試験サンプル対キャリブレーティングサンプルの既知容量比に基づいて、前記最終容量中の試験サンプル成分の濃度を計算する工程をさらに含む、(1)に記載の方法。
(3)試験サンプルの成分とキャリブレータがそれぞれ、検出可能なシグナルを発生させることができる、または発生させる原因となるシグナル発生分子と結合する、(1)に記載の方法。
(4)前記方法は、試験サンプルの分離された成分及び/またはキャリブレータと、シグナル発生分子と相互作用する能力のある試薬とを接触させる工程をさらに含み、前記シグナル発生分子は、試薬と接触すると検出可能なシグナルを発生させ、前記検出する工程は、前記検出可能なシグナルを検出する工程を含む、(3)に記載の方法。
(5)前記試験サンプルの成分とキャリブレータは、互いに識別可能であるシグナル発生分子に結合する、(3)に記載の方法。
(6)前記試験サンプルの成分が少なくとも二つの異なる成分を含む、(3)に記載の方法。
(7)少なくとも二つの前記成分のそれぞれが異なる検出可能なシグナルに結合し、前記検出可能なシグナルのそれぞれは互いに識別可能である、(6)に記載の方法。
(8)前記検出可能なシグナルは、放射線測定、比色分析、発光または蛍光分析手段により検出可能である、(3)に記載の方法。
(9)前記試験サンプルの一つ以上の前記成分がリポタンパク質粒子またはその一部を含み、前記検出する工程は、前記リポタンパク質粒子またはその一部を検出する工程を含む、(1)に記載の方法。
(10)前記リポタンパク質粒子またはその一部が、アポリポタンパク質A、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質C、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質H、リポタンパク質(a)、高密度リポタンパク質、中間密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、超低密度リポタンパク質、カイロミクロン、リポタンパク質X、その酸化変異体及び混合物からなる群から選択される、(9)に記載の方法。
(11)前記付着させる工程は、電気泳動コームを使用して実施する、(1)に記載の方法。
(12)前記キャリブレータがフルオロフォアである、(1)に記載の方法。
(13)前記キャリブレータがタンパク質を含む、(1)に記載の方法。
(14)前記キャリブレータがアルブミンを含む、(13)に記載の方法。
(15)前記アルブミンがシグナル発生分子に結合する、(14)に記載の方法。
(16)前記アルブミンがフルオロフォアに結合する、(14)に記載の方法。
(17)前記キャリブレータは、前記試験サンプルの成分よりも早い速度でゲル電気泳動の間に電気泳動ゲル上を移動する、(1)に記載の方法。
(18)前記キャリブレータは、前記リポタンパク質粒子よりも早い速度でゲル電気泳動の間に電気泳動ゲル上を移動する、(9)に記載の方法。
(19)前記試験サンプルが生体サンプルである、(1)に記載の方法。
(20)前記キャリブレータ及び分離された成分は、前記検出する工程の前に固定される、(1)に記載の方法。
(21)前記キャリブレータ及び分離された成分は、免疫固定技法により固定され、前記免疫固定技法は、
前記キャリブレータ及び分離された成分を、第一の抗体またはそのフラグメント及び第二の抗体またはそのフラグメントを含む抗血清と接触させる工程であって、前記第一の抗体またはそのフラグメントがキャリブレータと結合し、且つ前記第二の抗体またはそのフラグメントが分離された成分と結合するように接触させる、前記工程;及び
電気泳動ゲルを洗浄して、前記ゲル中の結合していない材料を除去する工程、を含む、(20)に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E