(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/46 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
A47C7/46
(21)【出願番号】P 2017239009
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】沖田 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-086369(JP,A)
【文献】特開平10-033303(JP,A)
【文献】特開2011-092245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0082888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/46
B60N 2/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の腰部を支えるランバーサポート体又はその他の身体支持部材を可動体と成しており、前記可動体が位置調節可能に設けられている椅子であって、
前記可動体に連結した操作具と、前記可動体が移動可能なフリー状態と移動不能なロック状態とに切り換えるロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記操作具の移動軌跡を挟んだ両側で前記可動体を位置決めする一方、
前記可動体を移動させたい一方向及びその反対方向の両方向について前記可動体を移動させたい方向と略平行な方向に前記操作具が操作されたときに前記ロック状態を解除するように構成されている、椅子。
【請求項2】
前記ロック機構が作用する場所は、前記操作具を挟んだ両側で、前記操作具の移動方向に沿って多段に設けられている、請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記操作具の移動軌跡を挟んだ両側のそれぞれに、前記操作具とともに移動する弾性変形可能な係合突起部と、前記移動軌跡に沿って配列されて前記係合突起部が嵌脱する複数の係合凹部とを備え、前記操作具が操作されたときに前記係合突起部が前記係合凹部から離脱するように弾性変形することで前記ロック状態が解除される、請求項1又は2に記載の椅子。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記操作具が一方向に移動されると前記操作具とともに移動して前記係合突起部を弾性変形させる押え突起部を備える一方、
前記係合凹部は、前記操作具が前記一方向とは反対方向に移動されると前記係合突起部をカム作用で弾性変形させる傾斜ガイド面を備えている、請求項3に記載の椅子。
【請求項5】
前記可動体は、上下方向に位置調節可能な前記ランバーサポート体であって、前記係合突起部を有するストッパー部材を介して前記操作具に連結されており、
前記ロック機構は、前記操作具が下向きに移動されると前記押え突起部が前記係合突起部を弾性変形させる一方、前記操作具が上向きに移動されると前記係合突起部が前記係合凹部の前記傾斜ガイド面に当接しながら弾性変形するように構成されている、請求項4に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関し、特に、着座者の腰部を支えるランバーサポート体又はその他の身体支持部材を可動体と成しており、前記可動体が位置調節可能に設けられている椅子するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子において、着座者の腰部(腰椎部分)を後ろから支えることは、身体を適切な姿勢に保持する上で重要である。すなわち、着座者が机に向かって執務する場合、上半身をほぼ直立した姿勢に安定的に支持することは、内蔵の負担を軽減する上で重要である。
【0003】
そこで、背もたれにランバーサポート装置を設けることが行われている。しかし、椅子の使用者の身長はまちまちであり、また、支持高さについて好みの相違もある。そこで、ランバーサポート体を高さ調節式に構成することが行われている。
【0004】
ランバーサポート体の高さ調節手段としては、一般に、弾性変形によって係脱する係合突起と係合溝との組み合わせが採用されている。そして、ランバーサポート体に設けた昇降体を背もたれに固定的に設けた支持体で後ろから支持し、昇降体と支持体とのうち、いずれか一方には係合突起を設けて他方には係合溝を設けており、係合突起と係合溝とのうち一方を多段に形成することにより、高さ調節を可能にしている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
また、椅子においては、座を可動体として、座受け部材等に前後スライド自在に取り付けることにより、座の前後位置を調節できるようにしたり、座の前部を下側に巻き込み変形可能な構造にしたりすることにより、座の奥行き(或いは座の前後長さ)を調節できるようにすることが行われている(例えば特許文献2,3を参照)。
【0006】
いずれにしても、座が不用意に前後移動したり変形したりするのは好ましくないので、ロック機構を設けて、ロックを解除しないと前後調節や奥行き調節をできないようにしていることが多い。ロック機構には操作具が設けられており、人が操作具を手で動かすことでロックが解除される。
【0007】
ロック機構の操作具は回動式のレバーであることが多く、例えば特許文献2,3には、レバーを前後長手の軸心回りに回動する構成にして、着座した人が指先をレバーの先端に当て上に引くとレバーが回動し、ロックを解除することが開示されている。レバーはばねでロック姿勢に付勢されており、人が手を離すとレバーはロック姿勢に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5529501号公報
【文献】特開2003-9988号公報
【文献】特開2001-186954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、特許文献1では、弾性舌片に設けた浅い球面状の凸部(係合突起)を複数の凹条(係合溝)に選択的に弾性係合させることで、ランバーサポート体(可動体)の高さ調節が行われる。しかし、特許文献1ではロック機構が設けられておらず、単に球面状の係合突起を係合溝に弾性係合させているだけでは、例えば着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体に掛かったときに、操作部を操作していないにも関わらず、係合突起が係合溝から脱離してランバーサポート体が下方へずり下がり、ランバーサポート体の高さ位置が意図せずに変化することがあった。
【0010】
また、特許文献2,3では、座(可動体)が不用意に移動や変形するのを防止すべくロック機構が設けられている。しかし、特許文献2,3のようにロック状態を解除するためのレバーが上向きに起こし回動するものである場合、着座した人が座の前後位置を調節するに当たっては、手の平の一部を座の側部に当てた状態でレバーを上向きに起こし、次いで、レバーを起こした状態を保持しつつ手を前後いずれかの方向に移動させ、所望の位置に移動させてから指先をレバーから離す、という手順を採ることになる。
【0011】
しかるに、特許文献2,3では、レバーの起こし操作(回動操作)と座(可動体)の前後移動操作とで人が手を動かす方向が異なるため、人は、指先で引くというアクションと腕を前又は後ろに振るアクションとの2アクションをせねばならず、このため、操作の迅速性という点で問題があった。
【0012】
本発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の椅子は、着座者の腰部を支えるランバーサポート体又はその他の身体支持部材を可動体と成しており、前記可動体が位置調節可能に設けられている椅子であって、前記可動体に連結した操作具と、前記可動体が移動可能なフリー状態と移動不能なロック状態とに切り換えるロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記操作具の移動軌跡を挟んだ両側で前記可動体を位置決めする一方、前記可動体を移動させたい一方向及びその反対方向の両方向について前記可動体を移動させたい方向と略平行な方向に前記操作具が操作されたときに前記ロック状態を解除するように構成されているものである。ここで、「操作具の移動軌跡を挟んだ両側」とは、「操作具の実際の移動軌跡を挟んだ両側」の意味のほか、「ある方向から見て操作具の移動軌跡を挟んだ両側」の意味も含んでいる。
【0014】
本発明の椅子では、可動体を移動させたい方向と略平行な方向に操作具を動かすと、手の動きの初期の段階でロック状態が解除されてから可動体が動かされる。すなわち、可動体を所望の位置に動かそうとするとワンアクションにより、ロックの解除と可動体の移動とが行われる。このため可動体の移動調節を迅速に行うことができ、操作性が格段に優れていると共にユーザーフレンドリーである。
【0015】
また、本発明の椅子は、ロック機構が操作具の移動軌跡を挟んだ両側で可動体を位置決めすることで、位置調節後の可動体を確実に位置固定(ロック状態に)できる。これにより、例えば、可動体がランバーサポート体である場合に、着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体に掛かったとしても、ランバーサポート体の意図しない下方へずり下がりを防止でき、椅子の使用感を向上できる。
【0016】
本発明の椅子において、例えば、前記ロック機構が作用する場所は、前記操作具を挟んだ両側で、前記操作具の移動方向に沿って多段に設けられているようにしてもよい。ここで、「操作具を挟んだ両側」とは、「実際に操作具を挟んだ両側」の意味のほか、「ある方向から見て操作具を挟んだ両側」の意味も含んでいる。
【0017】
この態様によれば、操作具を挟んだ両側でロック機構が作用するので、位置調節後の可動体を確実に位置固定できる。また、例えば、操作具の移動に伴ってロック機構が作用する場所を移動させることで、操作具に連結した可動体とロック機構が作用する場所との位置関係を可動体の調節位置にかかわらず概ね一定にでき、安定した可動体の位置固定を実現できる。
【0018】
また、本発明の椅子において、例えば、前記ロック機構は、前記操作具の移動軌跡を挟んだ両側のそれぞれに、前記操作具とともに移動する弾性変形可能な係合突起部と、前記移動軌跡に沿って配列されて前記係合突起部が嵌脱する複数の係合凹部とを備え、前記操作具が操作されたときに前記係合突起部が前記係合凹部から離脱するように弾性変形することで前記ロック状態が解除されるようにしてもよい。
【0019】
この態様によれば、係合突起部の弾性変形を利用してロック状態が解除されるようにしたので、簡単な構成でロック機構を実現できる。
【0020】
さらに、上記態様において、例えば、前記ロック機構は、前記操作具が一方向に移動されると前記操作具とともに移動して前記係合突起部を弾性変形させる押え突起部を備える一方、前記係合凹部は、前記操作具が前記一方向とは反対方向に移動されると前記係合突起部をカム作用で弾性変形させる傾斜ガイド面を備えているようにしてもよい。
【0021】
この態様によれば、操作具とともに移動する押え突起部と、係合凹部に設けられた傾斜ガイド面とでロック状態を解除できるので、ロック機構を簡単な構成で実現できる。
【0022】
さらに、上記態様において、例えば、前記可動体は、上下方向に位置調節可能な前記ランバーサポート体であって、前記係合突起部を有するストッパー部材を介して前記操作具に連結されており、前記ロック機構は、前記操作具が下向きに移動されると前記押え突起部が前記係合突起部を弾性変形させる一方、前記操作具が上向きに移動されると前記係合突起部が前記係合凹部の前記傾斜ガイド面に当接しながら弾性変形するように構成されているようにしてもよい。
【0023】
この態様によれば、ランバーサポート体はストッパー部材を介して操作具に連結されており、操作具を下向き移動させてロック機構のロック状態を解除させないとランバーサポート体は下向き移動しないので、着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体に掛かったとしても、ランバーサポート体の意図しない下方へずり下がりを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、着座者の腰部を支えるランバーサポート体又はその他の身体支持部材を可動体と成しており、上記可動体が位置調節可能に設けられている椅子において、可動体の移動調節を迅速に行うことができると共に、位置調節後の可動体を確実に位置固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前から見た全体の斜視図、(B)は平面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
【
図2】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は側面図、(D)は背もたれのみの正面図である。
【
図3】背もたれを示す図で、(A)は背アウターシェルを表示した斜視図、(B)は背アウターシェルを省略した斜視図である。
【
図4】(A)は背もたれの分解斜視図、(B)は背クッション体を後ろから見た概略斜視図である。
【
図6】ランバーサポート装置周辺を示す正面図である。
【
図9】ランバーサポート体の取付け状態を示す斜視図である。
【
図10】(A)は操作レバー及びレバー上端部材を示す斜視図、(B)はストッパー部材、レバー上端部材及び操作レバーを示す斜視図である。
【
図11】ロック機構のベース部材を示す斜視図である。
【
図12】レバー下向き操作時のロック機構の動作を説明するための平面図である。
【
図13】レバー上向き操作時のロック機構の動作を説明するための平面図である。
【
図14】ロック機構の第1変形例を示す正面図である。
【
図15】同ロック機構のベース部材を示す斜視図である。
【
図16】ロック機構の第2変形例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図19】同ロック機構の要部を示す図であり、(A)は正面図、(B)はストッパー部材の斜視図、(C)は(A)のC-C視断面図、(D)は(A)のD-D視断面図である。
【
図20】同ロック機構のレバー下向き操作時の動作を説明するため図である。
【
図21】ロック機構の第3変形例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図22】(A)は
図16(A)のE-E視断面図、(B)は同ロック機構のレバー下向き操作時の動作を説明するため図である。
【
図24】ロック機構の第4変形例を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は(A)のF-F視断面図である。
【
図26】同ロック機構のレバー下向き操作時の動作を説明するため図である。
【
図27】ロック機構の第5変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は,オフィス用に多用されている回転椅子に適用している。以下の説明で、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これは、椅子に普通に腰掛けた人から見た状態として定義している。正面視は、椅子の着座者と対向した姿勢である。
【0027】
まず、
図1~5に基づいて椅子の概要を説明する。椅子の基本構成は従来と同様であり、
図1,2に示すように、主要構成要素として脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。なお、図示は省略するが、この実施形態の椅子には、オプション品として、肘掛け装置やハンガー、ヘッドレスト等を装着可能である。
【0028】
脚装置1はガスシリンダより成る脚支柱7を有している。脚支柱7は、放射状に広がる複数本の枝アーム8で支持されている。各枝アーム8の先端にはキャスタを設けている。
図2に示すように、脚支柱7の上端には固定ベース9が取り付けられており、固定ベース9のうち脚支柱7よりも手前側の部位に、傾動ベース10が左右横長の支軸11によって連結されている。これら固定ベース9と傾動ベース10とを主要部材として、座2と背もたれ3とが取り付くベース部が構成されている。
【0029】
固定ベース9と傾動ベース10とによって、座2が取り付く座受け部材(図示省略)が支持されている。また、傾動ベース10に、背もたれ3が取り付く背支持フレーム13を固定している。従って、背もたれ3は、傾動ベース10と一緒にロッキングする。図示していないが、固定ベース9の内部には、ロッキングに対して抵抗を付与するロッキングばねが配置されている。
【0030】
背もたれ3は、主要要素として、背アウターシェル23とその手前に配置された背クッション材24とを備えている。背クッション材24には、クロス等の表皮材が張られている。
図2(D)に明示するように、背もたれ3(或いは、背アウターシェル23及び背クッション材24)は、左右方向にはセンターエリア25と左右のサイドエリア26の3つのエリアに分かれていて、上下方向には、上段エリア27と中段エリア28と下段エリア29との3段のエリアに分かれている。
【0031】
従って、背もたれ3は、上段センターエレメントa、中段センターエレメントb、下段センターエレメントc、左右の上段サイドエレメントd、左右の中段サイドエレメントe、左右の下段サイドエレメントfの9枚のエレメントに分かれている。エレメントa~fは背アウターシェル23と背クッション材24とに共通した区分であり、背もたれ3の全体としてエレメントとして表示する場合は、単にa~fの符号を引用する。他方、背アウターシェル23及び背クッション材24の要素としてのエレメントを個別に表示する必要がある場合は、23,24に符号a~fを付記している。
【0032】
背クッション材24において、隣り合ったエレメント24a~24fの境界部には、前向きに開口した溝30が形成されている。溝30の個所は薄肉のヒンジ部になっている。従って、背クッション材24は単一の部材として製造されつつ、隣り合ったエレメント24a~24fは溝30によって区分されている。
【0033】
上段センターエレメントaと下段センターエレメントcとはやや横長の台形であり、中段センターエレメントbは縦横が同じ程度の逆台形である。また、上段サイドエレメントdは概ね逆台形であり、中段サイドエレメントeは上下に長い台形であり、下段サイドエレメントfは逆三角形である。従って、背もたれ3は、正面視で、上段エリア27と中段エリア28とによって窄まる形態になって、中段エリア28と下段エリア29とによって膨れた形態になっている。
【0034】
また、各サイドエレメントd~fは、各センターエレメントa~cに対して手前に向くように傾いている。従って、背もたれ3は、平面視では前向き凹の形態を成している。他方、背もたれ3は、側面視では、中段エリア28と下段エリア29とによって前向き凸の山形が形成されている。このため、背クッション材24の中段センターエレメント24bと下段センターエレメント24cとにより、着座者の腰部(腰椎部)を支える凸部Lが形成されている。
【0035】
他方、上段エリア27と中段エリア28とは、側面視において少し前向き凹部状に屈曲している。上段センターエレメントaと中段センターエレメントbとは、平坦状の形態と成したり、逆に、側面視で前向き凸状に屈曲させたりすることも可能である。
【0036】
背支持フレーム13は金属ダイキャスト品又は樹脂成形品であり、背もたれ3の後ろにおいて上向きに延びる背支柱13aを有している。そして、背支柱13aの上端に、背アウターシェル中段センターエレメント23bが左右横長のピンで連結されている。従って、ロッキング時に、背支柱13aは背もたれ3とは相対回動する。
【0037】
本実施形態では、人が背もたれ3にもたれ掛かっていないニュートラル状態を基準にして、着座者が、中段センターエレメントbと下段センターエレメントcとからなる凸部Lのみに腰部を当てると、中段センターエレメントbと下段センターエレメントcとは側面視で偏平な状態に伸びるように広がり変形し、かつ、サイドエレメントd,e,fは、着座者の身体を包み込む方向に回動する。
【0038】
他方、着座者が中段センターエレメントbと上段センターエレメントaとにもたれ掛かったロッキング状態では、サイドエレメントd,e,fは、センターエレメントa,b,cに対する夾角を広げるように回動する。すなわち、背もたれ3は、平面視で平坦な状態に向かうように広がり変形する。ロッキング時には、中段センターエレメントbと下段センターエレメントcとは、偏平な状態に近づくように相対回動する。従って、ロッキング時には、背もたれ3は全体として偏平な方向に変形する。
【0039】
背もたれ3は、
図3,4に示すような樹脂製の背インナーシェル31を備えている。背インナーシェル31は、前後に開口したフレーム構造になっており、背クッション材24は、インサート成形により、背インナーシェル31に固着(接着)されている。また、背クッション材24は、既述の溝30によって、各エレメント24a~24fに区分されている。換言すると、溝30の個所の薄肉部が、エレメント24a~24fの相互屈曲を許容するヒンジ部になっている。但し、上段センターエレメント24aと中段センターエレメント24bとは屈曲しないので、両者の間に位置した左右横長の溝30は、意匠的な目的で設けられている。
【0040】
背インナーシェル31は、背クッション材24の外周部の背面に重なるループ形態の周枠部32と、中段エレメント24b,24eの上端部に重なる左右長手の横長ジョイント部33と、周枠部32の上端部と横長ジョイント部33とに繋がった額状部34とから成っている。また、背インナーシェル31のうち溝30(ヒンジ部)の個所には、隣り合ったエレメント24a~24fが相対回動することを許容するため、側面視波形で正面視ジグザグ状のヒンジ部35を形成している。
【0041】
既述のとおり、背クッション材24は背インナーシェル31にインサート成形されている。そして、背インナーシェル31が、図示しないクリップによって背アウターシェル23に連結されている。例えば
図5において、背インナーシェル31には多数の貫通穴36が表示されているが、この貫通穴36は、クリップを取り付けるためのものである。他方、同じ
図5において、背アウターシェル23に、前向き突出したリブ状突起を符号37で多数表示しているが、このリブ状突起37にクリップが装着される。
【0042】
図5から理解できるように、背アウターシェル23は、上段センターエレメント23aと中段センターエレメント23bとが一体であるのを除いて、各エレメント23a~23fは別体の構造になっている。そして、隣り合ったエレメント23a~23fは、エラストマーよりなるバンドヒンジ55によって一体に繋がっている。バンドヒンジ55は、二色成形法又はインサート成形法によって形成されている。また、バンドヒンジ55は、エレメント23a~23fの前面に重なっており、かつ、バンドヒンジ55は少し裏側に露出している。このため、背アウターシェル23の裏面には、バンドヒンジ55の個所が溝の状態になって表れている。
【0043】
背アウターシェル23を構成する下段センターエレメント23cの下端は、座2が取り付いている座アウターシェル20(
図2(C)参照。)の後端に相対回動可能に連結されている。このような背もたれ3と座2との連結により、背もたれ3の姿勢が保持されている。また、背もたれ3と座2とが連結されていることにより、ロッキング時にセンターエレメントa~cが上下方向に引っ張られ、これに伴って、サイドエレメントd~fが回動する。これに類似した構成は、特表2015-519111号公報に開示されている。
【0044】
さて、この実施形態の椅子は、着座者の腰部の支持高さを調節するためのランバーサポート装置41を備えている。この点を、
図6以下の図面も参照して説明する。なお、この実施形態では、ロック機構70は、上下方向に対して前低後高姿勢で傾斜配置されているが、便宜上、
図6,12,13では、ロック機構70の前面(例えば後述するベース部材81の前面)に垂直な方向から見た状態を示している。
【0045】
図6~8から容易に理解できるように、ランバーサポート装置41は、背クッション材24に後ろから当たるランバーサポート体51と、ランバーサポート体51を上下動操作するための操作具としての操作レバー61と、操作レバー61を高さ調節自在に保持するロック機構70とを備えている。
【0046】
ランバーサポート体51は、例えば合成樹脂製であり、
図8,9に明示するように、板状で左右横長の形態である。また、ランバーサポート体51の左右両側面は丸みを帯びた形態になっている。更に、ランバーサポート体51は、側面視では前向き凸状に緩く湾曲している。なお、ランバーサポート体51は、正面視で楕円状に形成したり、円形に形成したりすることも可能である。ランバーサポート体51の左右長さは、背もたれ3の中段センターエレメントbの下部の左右長さと概ね同じ程度に設定している。但し、左右長さも上下幅も任意に設定できる。
【0047】
図8に示すように、ランバーサポート体51の上部のうち左右中間位置を挟んだ両側には、上向きに開口したスリット52を形成している。スリット52は、ランバーサポート体51が使用者の体圧で変形することを容易にするためのものであり、左右中間部に1本のみ形成したり、左右対称状に3本以上形成したりすることも可能である。
【0048】
図7,10のとおり、操作レバー61は、例えば合成樹脂製であり、上下に長い帯板状の形態を成しており、後ろに向けて反った弓なりの形状になっている。また、下端には、操作部の一例として、左右一対の摘み片62を横向きに突設している。操作レバー61の前面には、複数の横長溝63が上下に等間隔で配列されており、前後向きに弾性変形しやすいように構成されている。
【0049】
図6~9に示すように、ロック機構70は、操作レバー61の上端部に取り付けられるレバー上端部材71と、背アウターシェル23の中断センターエレメント23bの前面下部に取り付けられるベース部材81と、ベース部材81とレバー上端部材71とを連結するストッパー部材91を備えている。
【0050】
図10に示すように、操作レバー61のレバー上端部64には、前面中央部に前向きに突設されたレバーボス部65と、前面の左右上角部近傍位置から上向きに突設された左右一対のレバー係止爪66と、左右側面に左右外向きに突設された左右一対のレバー突起部67が形成されている。
【0051】
一方、レバー上端部材71は、例えば合成樹脂製であり、略四角板状の形態を有し、その背面72に、レバー上端部64が嵌り込むレバー取付け凹部73を備えている。レバー取付け凹部73は、レバー突起部67が嵌り込む一対の切欠き部73aと、レバーボス部65が嵌り込むボス保持部73bを備えている。また、レバー上端部材71には、レバー係止爪66が係合される一対の係合穴74が設けられており、係合穴74に設けられた段差部74aの手前側(前側)にレバー係止爪66が配置される。
【0052】
レバー上端部材71の前面75には、先端面が略T字形のストッパー保持部76が形成されている。レバー上端部64をレバー取付け凹部73に嵌め込み、前側から前向き突出部73eに挿通したビス100をレバーボス部65にねじ込むことで、レバー上端部64にレバー上端部材71が回転不能に取り付けられる。
【0053】
また、レバー上端部材71の前面75の左右両縁部に、前向きに突設された一対のストッパー押え突起部77が形成されている。ストッパー押え突起部77は、前面75側から見て(正面視で)、下端側が尖った略くさび形を有している。レバー上端部材71の手前側に、ストッパー部材91が配置される。
【0054】
ストッパー部材91は、例えば合成樹脂製であり、係合突起部としての左右一対の爪部92と、爪部92の上端部同士を連結するベース部93と、ベース部93の左右下角部から下向きに突設された左右一対の保持部ガイド部94を備えている。爪部92は、弾性変形可能に設けられており、ベース部93の側面下部から左右外向きに延びる基端部位92aと、基端部位92aの先端部から下方へ延びる下垂部位92bと、下垂部位92bの先端部から左右外側へ向けて斜め下方へ延びる傾斜部位92cと、傾斜部位92cの先端部から左右内側へ延びる下端部位92dと、下端部位92dの先端部から上方へ延びる折り返し部位92dとを備える。傾斜部位92cとの下端部位92d連結箇所である屈曲部位92fが爪部92において最も左右外側に位置している。また、傾斜部位92cの上面(左右外側の面)には、後述するレバー下向き操作時にストッパー押え突起部77の引っ掛かりを向上させる凹状の段差92gが形成されている。
【0055】
ストッパー部材91の左右一対の保持部ガイド部94,94は、レバー上端部材71のストッパー保持部76の上部幅寸法よりもわずかに大きい間隔を空けて設けられている。ベース部93と保持部ガイド部94,94で囲まれた空間にストッパー保持部76が嵌め込まれる。これにより、ストッパー部材91は、レバー上端部材71に対して相対的に上下移動可能に、レバー上端部材71に取り付けられる。
【0056】
図12(A)にも示すように、ストッパー部材91がレバー上端部材71に取り付けられた状態で、爪部92の下垂部位92bは、レバー上端部材71のストッパー押え突起部77よりも左右内側に位置し、傾斜部位92cは、ストッパー押え突起部77の下方に位置している。また、爪部92が弾性変形していない状態、かつ、ストッパー押え突起部77の下端部が傾斜部位92cに当接している状態において、ストッパー保持部76の上端部とベース部93の下端部との間に隙間Sが形成されるように設計されている。
【0057】
また、ストッパー部材91のベース部93の中央部には、表裏に貫通するランバーサポート体連結用穴95が形成されている。
図7~9に示すように、ランバーサポート体51には、上端部中央部位から後向きに突出する連結用突起部53が設けられている。連結用突起部53は、その先端部が上向きに屈曲する略L字形を有する。連結用突起部53の先端部をストッパー部材91のランバーサポート体連結用穴95に挿入した後、連結用突起部53を支点としてランバーサポート体51を下向き回動させることで、連結用突起部53の基端部側がランバーサポート体連結用穴95内に挿通される。これにより、ランバーサポート体51はストッパー部材91に抜け不能に連結される。
【0058】
図11に示すように、ロック機構70のベース部材81は、例えば合成樹脂製であり、略四角枠状の形状を有し、上下方向に延びる左右一対のガイド部82,82と、ガイド部82,82の上端部同士を連結する上連結部83と、ガイド部82,82の下端部同士を連結する下連結部84を備えている。ガイド部82の左右内側側壁82aに、上下方向に並ぶ複数の突起部86が形成されており、上下方向で隣り合う突起部86,86の間に係合凹部85が形成されている。左右のガイド部82,82において、係合凹部85及び突起部86は同じ数だけ同一ピッチで形成されている。
【0059】
図12(A)に示すように、左右方向で対峙する係合凹部85,85は、ストッパー部材91の爪部92が弾性変形していない状態で係合凹部85内に爪部92の屈曲部位92fが配置されるような間隔を空けて配置されている。各係合凹部85の下面85a(突起部86の上面)は、左右内側側壁82a(レバー上端部64の移動方向と平行な面)に対して略直交している。各係合凹部85の上面(突起部86の下面)は、上端側ほど左右内側に位置するように傾斜する傾斜ガイド面85bを構成している。
【0060】
係合凹部85及び突起部86よりも背面側で左右内向きに突設されたレバー側面案内部87が設けられている。レバー側面案内部87は、上下方向に延びて設けられ、突起部86の背面側端部に連結しており、係合凹部85の背面側を閉じている。左右のレバー側面案内部87,87の間隔は、レバー上端部材71の左右幅寸法よりもわずかに大きい寸法に設けられており、レバー側面案内部87は、レバー側面案内部87,87の間で上下移動するレバー上端部材71の回転を防止する。
【0061】
また、レバー側面案内部87の左右内側側壁の背面側縁部に、左右内向きに突設されたレバー背面案内部88が設けられている。上下方向に延びるレバー背面案内部88は、レバー側面案内部87,87の間で上下移動するレバー上端部材71がベース部材81よりも背面側へ移動するのを規制する。なお、レバー背面案内部88は、レバー側面案内部87の左右内側側壁の中途部から上端部にわたって形成されており、レバー背面案内部88よりも下方位置で、背面側からレバー上端部材71を左右のレバー側面案内部87,87の間に配置可能になっている。
【0062】
図6,7に示すように、ベース部材81の下連結部84は、レバー上端部材71及びストッパー部材91の下方側への移動可能範囲を制限する。また、下連結部84の前面には、手前側(前側)へ向けて突出する左右横長の横長突起部89が設けられている。横長突起部89は、
図7に示すように、ランバーサポート体51の背面側への移動を制限して、ランバーサポート体51とバンドヒンジ38との間に適度な間隔が形成されるように機能している。
【0063】
次に、
図8,9も参照しながら、背アウターシェル23の中段センターエレメント23bへのロック機構70及びランバーサポート体51の組付けについて説明する。ランバーサポート体51は、背もたれ3の背面を構成する背アウターシェル23の手前に配置される。そこで、
図7,8に示すように、背アウターシェル23の中段センターエレメント23bの下端に左右横長のレバー挿通穴42を設けて、レバー挿通穴42から操作レバー61を下方に露出させている。換言すると、操作レバー61は、レバー挿通穴42に下方から背もたれ3の内部に差し込んでおり、操作レバー61の差し込み深さが変わることにより、ランバーサポート体51の高さが変化する。なお、レバー挿通穴42は、中段センターエレメント23bの下端に設けた前向きの下リブ43に形成している(レバー挿通穴42は、前向きに切り開かれた状態であってもよい。)。
【0064】
操作レバー61がレバー挿通穴42に下方から差し込まれて中段センターエレメント23bの手前側に露出するレバー上端部64に、手前側からレバー上端部材71が取り付けられてビス100にて固定される。レバー上端部材71には、手前側からストッパー部材91が取り付けられる。
【0065】
図8に示すように、背アウターシェル23の中段センターエレメント23bの下端部に、下リブ43と左右の内側縦長補強リブ44,44とで囲われたベース取付部45が形成されており、ロック機構71のベース部材81はベース取付部45にずれ不能に配置されている。ベース取付部45にベース部材81を配置する際に、左右のガイド部82,82の間に、最も下段の係合凹部85にストッパー部材91の爪部92が嵌め込まれるように位置合わせして、背面側からレバー上端部材71及びストッパー部材91が配置される。ベース部材81内に配置されたレバー上端部材71及びストッパー部材91は、レバー側面案内部87及びレバー背面案内部88に平行なレバー移動方向105(
図6,7参照)に概ね沿って移動される。レバー移動方向105は操作具の移動方向である。
【0066】
ベース取付部45の下端の左右隅角部には、略正面角形の段部46が設けられている。一方、
図11に示すように、ベース部材81のガイド部82の背面下端部には、段部46に嵌合する凹部82bを形成し、凹部82bに挿通したネジ101を段部46の個所にねじ込んで、ベース部材81の下部を固定している。
【0067】
また、ベース部材81の上連結部83には、ネジ挿通穴83aが設けられており、ベース取付部45の上部に対して中段センターエレメント23bの背面側から挿通されるネジ102にネジ挿通穴83aを挿通した後、ネジ102にナット103が取り付けられることで、ベース部材81の上部が固定される。なお、ネジ102及びナット103は、背もたれ3に負荷がかかっていないフリー状態で背アウターシェル23と背支柱13aとの間隔を所定間隔に保持するゴム等からなる弾性部材104(
図2(C)参照)を中段センターエレメント23bに固定する固定部材としても機能している。
【0068】
図9に示すように、中段センターエレメント23bに取り付けられたベース部材81に保持されるストッパー部材91にランバーサポート体51が取り付けられる。
図11にも示すように、ベース部材81のガイド部82の左右外側側壁には上下縦長のガイド溝82cが形成されている。一方、ランバーサポート体51の背面の上縁部には、スリット52の外側の位置に、後向きに突出する左右一対の上部突起部54が設けられている。そして、各上部突起部54の左右内側側壁には、左右内向きに突出する内向き突起部55が設けられている。また、ランバーサポート体51の背面の下縁部には、後向きに突出する左右一対の下部突起部56が設けられている。
【0069】
ベース部材81のガイド溝82cはガイド部82の上端面に開口しており、ガイド溝82cに上方側からランバーサポート体51の内向き突起部55が差し込まれることで、ランバーサポート体51はベース部材81に上下移動可能に取り付けられる。また、上述のように、ランバーサポート体51の連結用突起部53がストッパー部材91のランバーサポート体連結用穴95に挿通されることで、ランバーサポート体51がストッパー部材91及びレバー上端部材71を介して操作レバー61に連結される。
【0070】
また、背アウターシェル23の中段センターエレメント23bの前面には、上述の内側縦長補強リブ44,44の左右外側に、左右一対の外側縦長補強リブ47,47が設けられており、内側縦長補強リブ44と外側縦長補強リブ47との間に、上部ガイド溝48が形成されている。また、下段センターエレメント23cの前面上部には、左右一対の下段内側縦長補強リブ49a,49aの左右外側に、左右一対の下段外側縦長補強リブ49b,49bが設けられており、縦長補強リブ49aと49bとの間に、下ガイド溝49が形成されている。
【0071】
ランバーサポート体51がベース部材81及びストッパー部材91に取り付けられた状態で、上部突起部54は上ガイド溝48内に配置される。また、下部突起部56は下ガイド溝49内に配置される。これにより、ランバーサポート体51は、左右方向にずれることなく、上下方向に移動可能に配置されている。
【0072】
次に、
図12,13も参照しながら、ロック機構70の動作について説明する。
図12(A)は、操作レバー61が操作されていない状態を示している。操作レバー61の左右において、多段の係合凹部85のうちいずれか1つの係合凹部85に、ストッパー部材91の爪部92の屈曲部位92fが嵌り込んでいる。そして、屈曲部位92fの下面(下端部位92dの左右外側端部の下面)が係合凹部85の下面85aが対峙している。
【0073】
図12(A)に示す状態で、例えば着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体51に掛かって、ランバーサポート体51及びこれに連結するストッパー部材91に下向きの負荷が掛かったとしても、爪部92の屈曲部位92fが係合凹部85の下面85aに当接することで、ストッパー部材91の下向き移動が阻止され、ひいてはランバーサポート体51の下向き移動が阻止される。そして、ロック機構70は、手前側(正面側)から見て操作レバー61を挟んだ両側で、ストッパー部材91及びランバーサポート体51を位置決めしながら、これらの部材の下向き移動を阻止するので、位置調節後のランバーサポート体51を確実に位置固定できる。
【0074】
なお、上述のように、ストッパー部材91はレバー上端部材71に上下移動可能に取り付けられている一方、ベース部93とストッパー保持部76との間に隙間Gが設けられている。したがって、
図12(A)に示す状態では、ストッパー部材91に下向きの負荷がかかったとしても、レバー上端部材71には下向きの負荷が伝わらず、レバー上端部材71は下向き移動しない。
【0075】
次に、
図12を参照しながら、操作レバー61の下向き操作時のロック機構70の動作について説明する。
図12(A)に示すロック状態から、ランバーサポート体51を下向き移動させるべく操作レバー61が下向きに引っ張り操作されると、操作レバー61のレバー上端部64に固着されたレバー上端部材71が操作レバー61とともにレバー移動方向105に沿って下向き移動する。レバー下向き操作の初期状態では、
図12(B)に示すように、レバー上端部材71のストッパー押え突起部77がストッパー部材91の爪部92の傾斜部位92cを押し下げる。爪部92は、傾斜部位92cの上面のカム作用によって、屈曲部位92fが左右内向きに移動するように、弾性変形する。
【0076】
レバー下向き操作が継続されると、爪部92の屈曲部位92fが係合凹部85の下面85aよりも(換言すれば突起部86の先端よりも)左右内側に移動するまで爪部92が弾性変形する。そして、ストッパー押え突起部77が爪部92を押し下げることで、屈曲部位92fが突起部86の先端を乗り越え、爪部92の復元力で屈曲部位92fが1つ下の係合凹部85に嵌り込む(
図12(C)参照)。これに伴って、ストッパー部材91に連結されたランバーサポート体51の高さ位置が下向きに変更される。ここで、ストッパー押え突起部77の下端が爪部92の段差92gに当接することで、ストッパー押え突起部77の下向きの力が爪部92に伝わりやすくなるように構成されている。
【0077】
なお、爪部92の下端部位92dの左右方向寸法は、ストッパー保持部76とストッパー押え突起部77との間の隙間寸法よりも大きく設定されている。したがって、仮にストッパー押え突起部77の下端が段差92gを超えてしまった場合であっても、ストッパー部材91がレバー上端部材71から上向きに抜けることは無い。
【0078】
次に、操作レバー61の上向き操作時のロック機構70の動作について説明する。例えば
図12(C)に示すロック状態から、ランバーサポート体51を上向き移動させるべく操作レバー61が上向きに押し上げ操作されると、レバー上端部材71が操作レバー61とともにレバー移動方向105に沿って上向き移動する。そして、
図13(A)に示すようにストッパー保持部76の上端がベース部93の下端に当接し、隙間S(
図12(A)参照)がなくなる。
【0079】
レバー上向き操作が継続されると、
図12(B)に示すように、ストッパー保持部76がストッパー部材91を押し上げる。爪部92の傾斜部位92cの下端部(屈曲部位92fの上部)が係合凹部85の傾斜ガイド面85bに当接する。爪部92は、傾斜ガイド面85bのカム作用によって、屈曲部位92fが左右内向きに移動するように、弾性変形する。
【0080】
さらにレバー下向き操作が継続されると、爪部92の屈曲部位92fが係合凹部85の傾斜ガイド面85bよりも(換言すれば突起部86の先端よりも)左右内側に移動するまで爪部92が弾性変形し、屈曲部位92fが突起部86の先端を乗り越える。爪部92の復元力で、屈曲部位92fが1つ上の係合凹部85に嵌り込む(
図13(C)参照)。これに伴って、ストッパー部材91に連結されたランバーサポート体51の高さ位置が上向きに変更される。
【0081】
このように、操作レバー61を上向き又は下向きに操作することで、ランバーサポート体51の上下方向位置を調節可能に構成されている。
【0082】
この実施形態の椅子では、着座者の腰部を支えるランバーサポート体51を可動体と成しており、ランバーサポート体51が位置調節可能に設けられている。また、ランバーサポート体51に連結した操作具としての操作レバー61と、ランバーサポート体51が移動可能なフリー状態と移動不能なロック状態とに切り換えるロック機構70が設けられている。ロック機構70は、手前側(正面側)から見て、操作レバー61を挟んだ両側(操作レバー61の移動軌跡を挟んだ両側とも言える)でランバーサポート体51を位置決めする。また、ロック機構70は、ランバーサポート体51を移動させたい方向と略平行な方向に操作レバー61が操作されたときに上記ロック状態を解除するように構成されている。
【0083】
そして、この実施形態の椅子では、ランバーサポート体51を移動させたい方向と略平行な方向に操作レバー61を動かすと、手の動きの初期の段階でロック状態が解除されてからランバーサポート体51が動かされる。すなわち、ランバーサポート体51を所望の位置に動かそうとするとワンアクションにより、ロックの解除とランバーサポート体51体の移動とが行われる。このためランバーサポート体51の移動調節を迅速に行うことができ、操作性が格段に優れていると共にユーザーフレンドリーである。
【0084】
また、この実施形態の椅子は、ロック機構70が操作レバー61を挟んだ両側でランバーサポート体51を位置決めすることで、位置調節後のランバーサポート体51を確実に位置固定(ロック状態に)できる。これにより、例えば着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体51に掛かったとしても、ランバーサポート体51の意図しない下方へずり下がりを防止でき、椅子の使用感を向上できる。
【0085】
また、この実施形態の椅子では、ロック機構70が作用する場所(この実施形態では爪部92が係合凹部85に嵌り込む箇所)は、操作レバー61を挟んだ両側で、操作レバー61のレバー移動方向に沿って多段に設けられており、操作レバー61を挟んだ両側でロック機構70が作用する。したがって、位置調節後のランバーサポート体51を確実に位置固定できる。また、操作レバー61の移動に伴ってロック機構70が作用する場所が移動するので、操作レバー61に連結したランバーサポート体51とロック機構70が作用する場所との位置関係をランバーサポート体51の調節位置にかかわらず概ね一定にでき、安定したランバーサポート体51の位置固定を実現できる。
【0086】
また、ロック機構70は、操作レバー61の移動軌跡を挟んだ両側のそれぞれに、操作レバー61とともに移動する弾性変形可能な係合突起部としての爪部92と、上記移動軌跡に沿って配列されて爪部92が嵌脱する複数の係合凹部85とを備えている。そして、操作レバー61が操作されたときに爪部92が係合凹部85から離脱するように弾性変形することでロック状態が解除される。つまり、爪部92の弾性変形を利用してロック状態が解除されるようにしたので、簡単な構成でロック機構70を実現できる。
【0087】
さらに、ロック機構70は、操作レバー61が一方向に移動されると操作レバー61とともに移動して爪部92を弾性変形させるストッパー押え突起部77を備えている。また、前記係合凹部85は、操作レバー61が上記一方向とは反対方向に移動されると爪部92をカム作用で弾性変形させる傾斜ガイド面85bを備えている。ロック機構70では、操作レバー61とともに移動するストッパー押え突起部77と、係合凹部85に設けられた傾斜ガイド面85bとでロック状態が解除されるので、ロック機構70を簡単な構成で実現できる。
【0088】
さらに、上下方向に位置調節可能な前記ランバーサポート体51は、爪部92を有するストッパー部材91を介して操作レバー61に連結されている。ロック機構70は、操作レバー61が下向きに移動されるとストッパー押え突起部77が爪部92を弾性変形させるように構成されている。また、ロック機構70は、操作レバー61が上向きに移動されると爪部92が係合凹部85の傾斜ガイド面85bに当接しながら弾性変形するように構成されている。そして、操作レバー61を下向き移動させてロック機構70のロック状態を解除させないとランバーサポート体51は下向き移動しないので、着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体51に掛かったとしても、ランバーサポート体51の意図しない下方へずり下がりを防止できる。
【0089】
次に、
図14,15も参照しながら、他の実施形態について説明する。この実施形態では、
図1~
図13に示した上記実施形態と比較して、ロック機構70のベース部材81の形態が相違している(ロック機構の第1変形例)。この実施形態と上記実施形態とで共通している部分については、図面では共通した符号を示しており、必要がない限り説明は省略する。
【0090】
この実施形態のベース部材81は、ベース部材81に組み付けられたレバー上端部材71及びストッパー部材91の手前側への移動を規制する左右一対のレバー前面案内部90,90を備えている。レバー前面案内部90,90は、ガイド部82,82の間で、互いに間隔を空けて前後縦長に設けられている。レバー前面案内部90は、レバー側面案内部87及びレバー背面案内部88と平行に設けられている。レバー前面案内部90とレバー背面案内部88との間の空間は、その空間内でレバー上端部材71及びストッパー部材91が上下移動可能な程度の寸法で設けられている。なお、図示は省略しているが、ストッパー部材91のランバーサポート体連結用穴95には、ランバーサポート体51の連結用突起部53(
図7~9等参照)が連結される。
【0091】
図14に示すように、レバー前面案内部90は、ベース部材81が背アウターシェル23の中段センターエレメント23bに組み付けられた状態で、レバー上端部材71及びストッパー部材91の手前側への移動を規制する。したがって、椅子の使用時や組立作業時に、レバー上端部材71及びストッパー部材91がベース部材81から脱離することを確実に防止できる。これにより、椅子の使用感や組立作業効率が向上する。
【0092】
また、この実施形態のストッパー部材91は、ベース部93の前面下端部から下方へ延出された保持部カバー部96を備えている。保持部カバー部96の上下方向寸法は、保持部ガイド部94の上下方向寸法よりも短く設定されており、保持部カバー部96は左右の保持部ガイド部94,94の前面上部位(前面基端部位)同士を連結している。
【0093】
図14,15(A)に示すように、保持部カバー部96は、レバー上端部材71のストッパー保持部76の上端部位を覆っている。つまり、ベース部93とストッパー保持部76との間の隙間S(
図12参照)は、保持部カバー部96で覆われている。これにより、例えば背クッション材24(
図7等参照)等の異物が隙間Sに入り込むことに起因するロック機構70の動作不良を防止できる。
【0094】
次に、
図16~20を参照しながら、ロック機構の第2変形例について説明する。ロック機構200は、ベース部材201と、ベース部材201の手前側で上下移動可能に配置されるレバー案内部材211及び操作レバー221と、レバー案内部材211及び操作レバー221の手前側で前後移動可能に配置されるストッパー部材231と、ストッパー部材231を前後移動可能に保持するカバー部材241とを備えている。
【0095】
ベース部材201は、その前面202に、レバー案内部材211の側縁部212を上下移動可能に保持する複数の案内部材保持爪部203と、レバー案内部材211を左右移動不能に保持するための上下縦長のレール部204が突設されている。なお、ベース部材201は、
図16~18に示すような上下縦長の板形状のものであってもよいし、例えば背アウターシェル23の中段センターエレメント23b(
図5,8等参照)などの椅子の背もたれを構成する部材であってもよい。
【0096】
レバー案内部材211は、上下に長い帯板状の形態を成しており、その背面に、ベース部材201のレール部204に嵌る上下縦長のレール案内溝部213を備えている。レバー案内部材211の前面には、操作レバー221を上下移動可能に保持する上下縦長のレバー案内溝部214と、レバー案内溝部214の左右両側に配置された複数の案内部材突起部215が設けられている。案内部材突起部215は上下方向に等間隔に配列されており、上下方向で隣り合う案内部材突起部215,215の間に係合凹部216が形成されている。レバー案内部材211の上端部には、ロック機構200の手前側に配置されるランバーサポート体51が連結される。
【0097】
操作具としての操作レバー221は、上下に長い帯板状の形態を成しており、その下端部に環状の操作部222が設けられている。操作レバー221の前面には、複数のレバー突起部223が上下方向に等間隔に配列されており、上下方向で隣り合うレバー突起部223,223の間に解除用凹部224が形成されている。これらの解除用凹部224は、レバー案内部材211の係合凹部216の配列ピッチの2倍の配列ピッチで配列されている。
【0098】
操作レバー221は、前面を手前側に向けてレバー案内部材211のレバー案内溝部214内に上下移動可能に配置される。そして、レバー案内部材211及び操作レバー221は、ベース部材201の前面202に平行なレバー移動方向(操作具の移動方向)251に沿って、それぞれ上下移動可能に配置されている。なお、操作レバー221の上端部に設けられた横長棒状のレバー側連結部225は、ばねやゴム等の弾性部材226(ここでは引張コイルばね)を介して、レバー案内部材211の上端部に設けられた横長棒状の案内部材側連結部217に連結されている。
【0099】
ストッパー部材231は、左右横長の略四角柱状の形態を成している。ストッパー部材231の前面には、その中央部に左右横長の解除用突起部232が設けられ、解除用突起部232の両側に左右横長の係合突起部233が設けられている。ストッパー部材231の左右両側面には、左右外向きに略四角柱形状の外向き突起部234が突設されている。ストッパー部材231は、レバー案内部材211及び操作レバー221の手前側で、突起部232,233をレバー案内部材211及び操作レバー221に向けて配置される。
【0100】
カバー部材241は、左右一対の取付部242と、取付部242の左右内側端部から左右内側へ向けて延設された略L字形の案内部材押え部243と、案内部材押え部243の左右内側端部から手前側へ延設された側壁部244と、左右の側壁部244同士を連結するカバー部245を備えている。側壁部244には、前後方向中途部から背面側に向かって、略前後方向に延びるストッパー案内溝246が形成されている。なお、ストッパー案内溝246は、取付部242の左右外側端部から案内部材押え部243にわたって左右横長に形成された溝につながっている。
【0101】
カバー部材241は、取付部242に手前側から挿通される取付ねじ247によってベース部材201の前面202に取り付けられる。ストッパー部材231は、外向き突起部234がストッパー案内溝246内に挿通されることで、前後移動可能に支持されるとともに、外向き突起部234を回転軸とする方向では回転不能に配置される。ストッパー部材231は、ストッパー部材231とカバー部245との間に設けられた左右一対の弾性部材250(ここでは圧縮コイルばね)により、レバー案内部材211及び操作レバー221に押圧されている。ストッパー部材231のうち、解除用突起部232は解除用凹部224内に位置し、係合突起部233は、係合凹部216内に位置している。
【0102】
図19(C)に示すように、解除用突起部232の解除用突起部上面232aと、解除用凹部224の解除用凹部上壁面224a(レバー突起部223の下面)は、それぞれ、手前側ほど(前側ほど)レバー移動方向251の上向き側に位置するように、レバー移動方向251に対して傾斜している。また、解除用突起部下面232bと、解除用凹部下壁面224b(レバー突起部223の上面)は、それぞれ、手前側ほどレバー移動方向251の下向き側に位置するように、レバー移動方向251に対して傾斜している。
【0103】
図19(D)に示すように、係合突起部233の係合突起部上面233aと、係合凹部216の係合凹部上壁面216a(案内部材突起部215の下面)は、それぞれ、レバー移動方向251に略直交している。また、係合突起部下面233bと、係合凹部下壁面216b(案内部材突起部215の上面)は、それぞれ、手前側ほどレバー移動方向251の下向き側に位置するように、レバー移動方向251に対して傾斜している。
【0104】
図19(C),(D)は、ロック機構200のロック状態を示している。解除用突起部232の先端側が解除用凹部224内に位置しているとともに、解除用突起部232の先端が解除用凹部224の底壁に当接している。また、係合突起部233の先端側が係合凹部216内に位置しているとともに、係合突起部233の先端が係合凹部216の底壁に当接している。そして、係合突起部上面233aと係合凹部上壁面216aとが対向配置されている。係合突起部上面233a及び係合凹部上壁面216aは、それぞれレバー移動方向251に略直交しているので、可動体の一例としてのランバーサポート体51に下向きの力がかかっても、係合凹部上壁面216aが係合突起部上面233aに当接することで、レバー案内部材211の下向き移動が阻止され、ひいてはランバーサポート体51の下向き移動が阻止される。
【0105】
次に、
図20を参照しながら、操作レバー221の下向き操作時のロック機構200の動作について説明する。ロック状態から、操作レバー221が下向きに引っ張り操作されると、レバー下向き操作の初期状態では、操作レバー221が下向き移動する一方で、係合凹部上壁面216aが係合突起部上面233aに当接していることでレバー案内部材211の下向き移動は阻止される。
図20(C-1),(D-1)に示すように、ストッパー部材231の解除用突起部232の直上に位置するレバー突起部223(解除用凹部上壁面224a)が解除用突起部上面232aをカム作用により前側へ押し上げる。これにより、弾性部材250が収縮してストッパー部材231全体が押し上げられ、係合突起部233が係合凹部216から離脱する。
【0106】
レバー下向き操作が継続されると、操作レバー221の背面中央部に後向きに突設された連動用突起部227(
図17参照)がレバー案内部材211の中央部に設けられた連動用穴218の下壁に当接し、レバー案内部材211が操作レバー221とともに下向き移動する。ストッパー部材231は、解除用突起部232の先端がレバー突起部223の先端部表面に沿って移動するように、前後移動する。解除用突起部232の先端がレバー突起部223を乗り越える際に、1つの案内部材突起部215が係合突起部233の後側を下向きに通過する(
図20(C-2),(D-2)参照)。
【0107】
さらにレバー下向き操作が継続されると、係合突起部233の先端部が1つ上段側の案内部材突起部215の表面に沿って移動しながら、ストッパー部材231がレバー案内部材211及び操作レバー221へ向かって移動する。そして、
図19(C),(D)に示すロック状態から見て、係合突起部233が2つ上段側の係合凹部216に嵌り込み、解除用突起部232が1つ上段側の解除用凹部224に嵌り込む。レバー案内部材211及びこれに連結されたランバーサポート体51が係合凹部216の2段分(解除用凹部224の1段分)の間隔だけ下向きに位置変更されるとともに、ロック機構200がレバー案内部材211をロック可能な状態になる。
【0108】
そして、レバー下向き操作が解除されると、弾性部材226の復元力で、操作レバー221がレバー案内部材211に対して上向き移動する。連動用突起部227が連動用穴218の下壁から離れる一方で、操作レバー221のレバー上端部228がレバー案内溝部214の上壁面214aに当接し、操作レバー221とレバー案内部材211の位置関係は
図17に示したようになる。
【0109】
一方、操作レバー221の上向き操作時には、操作レバー221のレバー上端部228がレバー案内溝部214の上壁面214aに当接することで、レバー上向き操作の開始直後からレバー案内溝部214が操作レバー221とともに上向き移動する。操作レバー221が上向きに押し上げ操作されると、ストッパー部材231の解除用突起部232の直下に位置するレバー突起部223(解除用凹部下壁面224b)が解除用突起部下面232bを前側に向けて押し上げる。これにより、弾性部材250が収縮してストッパー部材231全体が押し上げられ、係合突起部233が係合凹部216から離脱する。
【0110】
レバー上向き操作が継続されると、ストッパー部材231の解除用突起部232の先端がレバー突起部223を乗り越えることで1つの案内部材突起部215が係合突起部233の後側を上向きに通過する。その後、係合突起部233の先端が1つ下段側の案内部材突起部215の先端に当接しながら、当該案内部材突起部215が係合突起部233の後側を上向きに通過する。そして、レバー上向き操作前の状態から見て、係合突起部233が2つ下段側の係合凹部216に嵌り込み、解除用突起部232が1つ下段側の解除用凹部224に嵌り込む。これより、レバー案内部材211及びこれに連結されたランバーサポート体51が係合凹部216の2段分(解除用凹部224の1段分)だけ上向きに位置変更されるとともに、ロック機構200がレバー案内部材211をロック可能な状態になる。
【0111】
このように、ロック機構200は、操作レバー221が上向き又は下向きに操作されることで、ランバーサポート体51の上下方向位置を調節可能に構成されている。なお、レバー案内部材211及びストッパー部材231において、係合凹部下壁面216b及び係合突起部下面233bが、係合凹部上壁面216a及び係合突起部上面233aと同様に、レバー移動方向251にそれぞれ略直交しているようにしてもよい。これにより、可動体の一例としてのランバーサポート体51に上向きの力がかかっても、係合凹部上壁面216aが係合突起部上面233aに接触することで、レバー案内部材211の上向き移動が阻止され、ひいてはランバーサポート体51の上向き移動が阻止される。
【0112】
次に、
図21~23を参照しながら、ロック機構の第3変形例について説明する。ロック機構300は、ベース部材301と、ベース部材301の手前側で上下移動可能に配置される操作レバー311と、ベース部材301及び操作レバー311の手前側で前後移動可能に配置されるストッパー部材321とを備えている。
【0113】
ベース部材301は、前向き及び下向きに開口する上下縦長の略直方体箱形状を有しており、操作レバー311の背面を支持する板状の背面部302と、操作レバー311の左右方向への移動を阻止する左右一対の側壁部303と、操作レバー311の上向き移動範囲を制限する天壁部304を備えている。背面部302の前面に、操作レバー311の背面に接触する左右一対のレール部305が上下縦長に設けられている。
【0114】
側壁部303に、操作レバー311を上下方向に案内するためのレバー案内溝306が上下縦長に設けられている。例えば、ベース部材301は、天壁部304が上方側に位置するようにして、背アウターシェル23の中段センターエレメント23b(
図5,8等参照)などの椅子の背もたれを構成する部材に、当該部材に背面部302を向けた状態で取り付けられる。
【0115】
操作具としての操作レバー311は、上下に長い帯板状の形態を成している。操作レバー311の上端部の左右両側部に、左右外側に向けて突設された外向き突起部312が設けられている。また、操作レバー311の前面の上端寄り部位には、ストッパー部材321を上下移動させるための上下一対の傾斜ガイド面313,314を有するロック解除用突起部315が前向きに突設されている。
【0116】
傾斜ガイド面313,314は、ロック解除用突起部315の一方の側壁から他方の側壁にわたって形成された側方視で略V字形の前向き開口凹部の壁面で構成されている。上方側に位置する上側傾斜ガイド面313は、レバー案内溝30の長手方向と平行なレバー移動方向(操作具の移動方向)331に対して、開口側ほど上側に位置するように傾斜している。また、下方側に位置する下側傾斜ガイド面314は、開口側ほど下側に位置するように傾斜している。
【0117】
操作レバー311は、ロック解除用突起部315を手前側にして、ベース部材301の側壁部303に設けられたレバー案内溝306に外向き突起部312が挿通された状態で、ベース部材301の内部に配置される。
【0118】
ストッパー部材321は、側方視で後向きに開口する略U字形に設けられた左右一対の側部322,322と、側部322,322同士を連結する係合部323を備えている。側部322は、ベース部材301の左右の側壁部303の左右外側に配置されて、ストッパー部材321の左右方向の移動を規制する。係合部323は、左右横長の略四角柱の形態を成しており、側部322,322のうち手前側に位置して上下方向に延びる側部前部位322aの中央部同士を連結している。また、ストッパー部材321には、ロック機構300の手前側に配置されるランバーサポート体51が連結される。
【0119】
ベース部材301の側壁部303の前面に、前向きに開口する複数の係合凹部307が上下方向に多段に等間隔で配列されている。
図22に示すように、左右の側壁部303において、いずれかの係合凹部307にストッパー部材321の係合部323の左右端部が嵌り込む。係合部323は、操作レバー311の上下の傾斜ガイド面313,314の間に位置するように配置される。また、傾斜ガイド面313,314の開口側端部(手前側端部)は、操作レバー311がベース部材301内に配置された状態で、側壁部303の前面よりも手前側に位置している。
【0120】
ストッパー部材321の側部前部位322aの上下両端部には、左右外向きに上下一対のストッパー側連結部324が突設されている。ストッパー側連結部324は、ばねやゴム等の弾性部材325(例えば引張コイルばね)を介して、操作レバー311の外向き突起部312の先端部に設けられたレバー側連結部316に連結されている。
【0121】
ロック機構300がロック状態のときは、ストッパー部材321の係合部323がベース部材301の係合凹部307に嵌り込む一方、係合部323の上下両面及び係合凹部307の上下両壁面がレバー移動方向331に略直交しているので、ストッパー部材321に略上下方向の力が掛かっても、ストッパー部材321は移動不能に保持される。例えば、ストッパー部材321に連結される可動体の一例としてのランバーサポート体51に下向き又は下向きの力がかかっても、ストッパー部材321の移動が阻止され、ひいてはランバーサポート体51の移動が阻止される。
【0122】
一方、ロック機構300は、操作レバー311が上向き又は下向きに操作されると、レバー操作初期段階でロック状態を解除し、可動体としてのランバーサポート体51が連結されるストッパー部材321の上下移動をフリーな状態にする。
【0123】
例えば、操作レバー311が下向きに引っ張り操作されると、
図22(B)に示すように、レバー下向き操作の初期状態で、上側傾斜ガイド面313がストッパー部材321の係合部323を前向きに押し上げる。これにより、弾性部材325が伸長ながら、係合部323が係合凹部307から離脱する。
【0124】
レバー下向き操作が継続されると、係合凹部307から離脱した係合部323が上側傾斜ガイド面313に下向きに押されて、係合部323の左右両端部が左右の側壁部303の前面に当接しながら、ストッパー部材321が下向き移動する。そして、レバー下向き操作前の状態から見て、係合部323が1つ下段側の係合凹部307に嵌り込む。これにより、ストッパー部材321及びこれに連結されたランバーサポート体51が係合凹部307の1段分の間隔だけ下向きに位置変更されるとともに、ロック機構300がロック状態になる。
【0125】
他方、操作レバー311の上向き操作時には、レバー上向き操作の初期状態で、下側傾斜ガイド面314がストッパー部材321の係合部323を前向きに押し上げ、係合部323が係合凹部307から離脱する。そして、レバー上向き操作が継続されると、係合凹部307から離脱した係合部323が下側傾斜ガイド面314に上向きに押されて、係合部323が1つ上段側の係合凹部307に嵌り込む。これにより、ストッパー部材321が係合凹部307の1段分の間隔だけ上向きに位置変更されるとともに、ロック機構300がロック状態になる。このように、ロック機構300は、操作レバー311が上向き又は下向きに操作されることで、ランバーサポート体51の上下方向位置を調節可能に構成されている。
【0126】
次に、
図24~26を参照しながら、ロック機構の第4変形例について説明する。ロック機構400は、ベース部材401と、ベース部材401の手前側で上下移動可能に配置される操作レバー411と、ベース部材401及び操作レバー411の手前側で前後移動可能に配置されるストッパー部材421とを備えている。
【0127】
ベース部材401は、前向き及び下向きに開口する上下縦長の略直方体箱形状を有しており、操作レバー411の背面を支持する板状の背面部402と、操作レバー411の左右方向への移動を阻止する左右一対の側壁部403と、操作レバー411の上向き移動範囲を制限する天壁部404を備えている。背面部402の前面に、操作レバー411の背面に接触する左右一対のレール部405が上下縦長に設けられている。
【0128】
側壁部403には、左右内側かつ手前の角部が上下方向に切り欠かれて、ストッパー部材421を上下方向に案内するためのストッパー案内段差部406が上下縦長に設けられている。つまり、側壁部403は上下方向から見て略L字形の形態を有する。側壁部403の前面に、ストッパー部材421の側辺部422を上下移動可能に保持する複数のストッパー保持爪部407が左右内向きに突設されている。例えば、ベース部材401は、天壁部404が上方側に位置するようにして、背アウターシェル23の中段センターエレメント23b(
図5,8等参照)などの椅子の背もたれを構成する部材に、当該部材に背面部402を向けた状態で取り付けられる。
【0129】
操作具としての操作レバー411のレバー本体412は、上下に長い帯板状の形態を成している。レバー本体412の前面の上端寄り部位に、上端側から順に、左右横長の上側突起部413、ロック解除用突起部414及び下側突起部415が前向きに突設されている。上側突起部413はレバー本体412の上端に設けられている。突起部413,414,415は、上下方向に間隔を空けて配置されている。
【0130】
操作レバー411は、レバー本体412の背面がレール部405に当接するようにして、突起部413,414,415を手前側に向けて、ベース部材401の内部に配置される。ロック解除用突起部414はレバー本体412よりも幅広に形成されている。ロック解除用突起部414の左右両縁部は、操作レバー411がベース部材401に配置された状態で、ストッパー案内段差部406の左右内側縁部の手前側に配置される。
【0131】
ストッパー部材421は、正面視で上下方向に長い略長方形枠状の形態を有し、左右一対の側辺部422,422と、側辺部422,422の上端部同士を連結する上辺部423と、側辺部422,422の下端部同士を連結する下辺部424を備えている。ストッパー部材421は例えば樹脂製であり、少なくとも側辺部422の中央部が左右内側へ弾性変形可能に設けられている。
【0132】
側辺部422の上下中央部に左右外向きに突出する係合突起部425が設けられている。係合突起部425の側面の輪郭は、手前側から見て丸みを帯びている。上辺部423及び下辺部424には、前向きに突設された弾性部材支持部426と、後向きに突設された案内突起部427がそれぞれ設けられている。また、ストッパー部材421には、ロック機構400の手前側に配置されるランバーサポート体51が連結される。
【0133】
ストッパー部材421は、操作レバー411の手前側で、ロック解除用突起部414を左右の側辺部422で挟むようにして、上側突起部413と下側突起部415の間に配置される。上側突起部413と上辺部423との間と、下側突起部415と下辺部424との間に、それぞれ隙間が設けられるように設定されている。
【0134】
上下の弾性部材支持部426とロック解除用突起部414との間には、ばねやゴム等の弾性部材428(例えばコイルばね)がそれぞれ配置される。上下2つの弾性部材428のばね力により、ロック解除用突起部414が上辺部423と下辺部424との中間、かつ左右の係合突起部425の間に位置するように設定されている。上下2つの弾性部材428は、例えば同じばねで構成される。
【0135】
なお、レバー本体412の前面には、突起部413,414,415の間の位置に上下方向に延びる上下一対のストッパー案内溝416が設けられている。ストッパー部材421に後向きに突設された上下一対の案内突起部427がそれぞれストッパー案内溝416に嵌り込むことで、上辺部423及び下辺部424は左右移動不能に保持される。
【0136】
ベース部材401の側壁部403の前面に、前向きに開口する複数の係合凹部408が上下方向に多段に等間隔で配列されている。左右の側壁部403において、ストッパー案内段差部406とストッパー保持爪部407との間の空間にストッパー部材421の側辺部422が配置されて、いずれかの係合凹部408に係合突起部425が嵌り込む。ストッパー部材421は、ストッパー案内段差部406及びストッパー保持爪部407により、上下方向に移動可能かつ前後方向に抜け不能に、ベース部材401に保持される。操作レバー411及びストッパー部材421は、側壁部403及びレバー本体412の長手方向に平行なレバー移動方向(操作具の移動方向)431に概ね沿って移動される。
【0137】
ロック機構400がロック状態のときは、ストッパー部材421の係合突起部425がベース部材401の係合凹部408に嵌り込む一方、操作レバー411のロック解除用突起部414が左右の係合突起部425の間に位置している。そして、ストッパー部材421に略上下方向の力が掛かっても、ロック解除用突起部414が側辺部424及び係合突起部425の左右内向移動を阻止し、係合突起部425が係合凹部408に嵌り込んだ状態が維持される。つまり、ロック状態では、ストッパー部材421は移動不能に保持される。例えば、ストッパー部材421に連結される可動体の一例としてのランバーサポート体51に下向き又は下向きの力がかかっても、ロック状態ではストッパー部材421の移動が阻止され、ひいてはランバーサポート体51の移動が阻止される。
【0138】
一方、ロック機構400は、操作レバー411が上向き又は下向きに操作されると、レバー操作初期段階でロック状態を解除し、可動体としてのランバーサポート体51が連結されるストッパー部材421の上下移動をフリーな状態にする。
【0139】
例えば、
図26(A)に示すロック状態から操作レバー411が下向きに引っ張り操作されると、
図26(B)に示すように、レバー下向き操作の初期状態で、ロック解除用突起部414が下向きに移動して左右の係合突起部425の間の位置から退避する。これにより、側辺部422は左右内向きに弾性変形可能な状態になる。なお、操作レバー411の下向き移動に伴って、ロック解除用突起部414だけでなく、上側突起部413、下側突起部415もベース部材401に対して相対的に下向き移動する。また、上側の弾性部材428は上下に伸長し、下側の弾性部材428は上下に収縮する。
【0140】
レバー下向き操作が継続されると、上側突起部413がストッパー部材421の上辺部423に当接し、ストッパー部材421を下向きに押す。ストッパー部材421が下向きに押されることで、丸みを帯びた係合突起部425の側面(傾斜ガイド面)のカム作用で側辺部422が左右内向き凸状に弾性変形し、係合突起部425が係合凹部408から離脱する。
【0141】
さらにレバー下向き操作が継続されると、係合突起部425の先端部がストッパー案内段差部406の側壁に当接しながら、ストッパー部材421が下向き移動する。そして、レバー下向き操作前の状態から見て、係合突起部425が1つ下段側の係合凹部408に嵌り込む。これにより、ストッパー部材421及びこれに連結されたランバーサポート体51が係合凹部408の1段分の間隔だけ下向きに位置変更される。レバー操作が解除されると、弾性部材428の復元力により、ロック解除用突起部414が左右の係合突起部425の間に位置され、ロック機構400がロック状態になる。
【0142】
他方、操作レバー411の上向き操作時には、レバー上向き操作の初期状態で、ロック解除用突起部414が上向きに移動して左右の係合突起部425の間の位置から上向きに退避し、下側突起部415がストッパー部材421の下辺部424に当接してストッパー部材421を上向きに押す。そして、丸みを帯びた係合突起部425の側面(傾斜ガイド面)のカム作用で側辺部422が左右内向き凸状に弾性変形し、係合突起部425が係合凹部408から離脱する。
【0143】
そして、レバー上向き操作が継続されると、ストッパー部材421がさらに上向き移動して、係合突起部425が1つ上段側の係合凹部408に嵌り込む。これにより、ストッパー部材421が係合凹部408の1段分の間隔だけ上向きに位置変更される。また、レバー操作が解除されると、弾性部材428の復元力により、ロック解除用突起部414が左右の係合突起部425の間に位置され、ロック機構400がロック状態になる。このように、ロック機構400は、操作レバー411が上向き又は下向きに操作されることで、ランバーサポート体51の上下方向位置を調節可能に構成されている。
【0144】
なお、
図24では、最も上段の係合凹部408に係合突起部425が嵌り込むようにストッパー部材421が例えば作業者の指によって配置され、操作レバー411がベース部材401内での上向き移動範囲の上限位置に配置されている状態を示している。
【0145】
以上説明したように、上記変形例のロック機構200,300,400は、着座者の腰部を支えるランバーサポート体51を可動体と成しており、ランバーサポート体51が位置調節可能に設けられている。また、ロック機構200,300,400は、ランバーサポート体51に連結した操作具としての操作レバー221,311,411と、ランバーサポート体51が移動可能なフリー状態と移動不能なロック状態とに切り換える。ロック機構200,300,400は、手前側(正面側)から見て、操作レバー221,311,411を挟んだ両側(操作レバー221,311,411の移動軌跡を挟んだ両側とも言える)でランバーサポート体51を位置決めする。また、ロック機構200,300,400は、ランバーサポート体51を移動させたい方向と略平行な方向に操作レバー411が操作されたときに上記ロック状態を解除するように構成されている。
【0146】
そして、ロック機構200,300,400では、ランバーサポート体51を移動させたい方向と略平行な方向に操作レバー221,311,411を動かすと、手の動きの初期の段階でロック状態が解除されてからランバーサポート体51が動かされる。すなわち、ランバーサポート体51を所望の位置に動かそうとするとワンアクションにより、ロックの解除とランバーサポート体51体の移動とが行われる。このためランバーサポート体51の移動調節を迅速に行うことができ、操作性が格段に優れていると共にユーザーフレンドリーである。
【0147】
また、ロック機構200,300,400は、操作レバー221,311,411を挟んだ両側でランバーサポート体51を位置決めすることで、位置調節後のランバーサポート体51を確実に位置固定(ロック状態に)できる。これにより、例えば着座者の体圧が手前側斜め上方向からランバーサポート体51に掛かったとしても、ランバーサポート体51の意図しない下方へずり下がりを防止でき、椅子の使用感を向上できる。
【0148】
また、ロック機構200,300,400が作用する場所は、操作レバー221,311,411を挟んだ両側で、レバー移動方向251,331,431に沿って多段に設けられており、操作レバー221,311,411を挟んだ両側でロック機構200,300,400が作用する。したがって、位置調節後のランバーサポート体51を確実に位置固定できる。また、ロック機構300,400では、操作レバー311,411の移動に伴ってロック機構300,400が作用する場所が移動するので、操作レバー311,411に連結したランバーサポート体51とロック機構300,400が作用する場所との位置関係をランバーサポート体51の調節位置にかかわらず概ね一定にでき、安定したランバーサポート体51の位置固定を実現できる。
【0149】
次に、
図27を参照しながら、椅子のさらに他の実施形態(ロック機構の第5変形例)について説明する。この実施形態では、
図1~
図13に示した上記実施形態と比較して、ロック機構70の形態が相違している。この実施形態のロック機構70は、操作レバー61を上向き操作しないと、ストッパー部材91が上向き移動しないように構成されている。この実施形態と上記実施形態とで共通している部分については、図面では共通した符号を示しており、必要がない限り説明は省略する。
【0150】
この実施形態では、ストッパー部材91は、おおまかには、
図1~
図13の実施形態のストッパー部材91を上下対称に2つ配置し、上下の下端部位92d同士及び屈曲部位92f同士を一体化した形態を有する。つまり、この実施形態のストッパー部材91は、上下左右4つの爪部92と、上下2つのベース部93と、上下左右4つの保持部ガイド部94を備えている。なお、ランバーサポート体連結用穴95は、上側のベース部93に形成されており、下側のベース部93には形成されていない。
【0151】
ストッパー部材91の左右2つの屈曲部位92fは、左右外向きに突出しており、爪部92のうち最も左右外側に位置している。また、屈曲部位92fの下面92fa及び92fbは、それぞれレバー移動方向105に略直交している。
【0152】
ベース部材81の係合凹部85において、下面85aがレバー移動方向105に直交しているだけでなく、上面85cもレバー移動方向105に直交している。係合凹部85にストッパー部材91の屈曲部位92fが嵌り込んでいる。
【0153】
レバー上端部材71は、
図1~
図13の実施形態よりも上下方向に長く形成されており、下側の左右の爪部92の下方位置に、上向き尖形のストッパー押え突起部77をそれぞれ備えている。つまり、この実施形態では、レバー上端部材71は、下向き尖形のストッパー押え突起部77を2つと、上向き尖形のストッパー押え突起部77を2つ備え、合計4つのストッパー押え突起部77を備えている。
【0154】
操作レバー61の下向き操作時には、
図1~
図13の実施形態と同様に、下向き尖形のストッパー押え突起部77が直下の爪部92の傾斜部位92cを下向きに押し下げる。そして、傾斜部位92cの上面のカム作用によって上下の爪部92が左右内向きに湾曲し、屈曲部位92fが左右内向きに移動して係合凹部85から離脱し、ロック状態が解除される。レバー下向き操作が継続されると、ストッパー押え突起部77が爪部92を押し下げて(又は、レバー上端部材71のストッパー保持部76の下端部位がストッパー部材91の下側のベース部93を押し上げて)、ストッパー部材91が下向き移動する。
【0155】
一方、操作レバー61の上向き操作時には、レバー上向き操作の初期段階で、上向き尖形のストッパー押え突起部77が直上の爪部92の傾斜部位92cを上向きに押し上げる。そして、傾斜部位92cの下面のカム作用によって上下の爪部92が左右内向きに湾曲し、屈曲部位92fが左右内向きに移動して係合凹部85から離脱し、ロック状態が解除される。
【0156】
レバー上向き操作が継続されると、左右の上向き尖形のストッパー押え突起部77が左右の爪部92を押し上げる(又は、レバー上端部材71の上端部位がストッパー部材91の上側のベース部93を押し上げる)。そして、ストッパー部材91が上向き移動して、爪部92の傾斜部位92cが1つ上段側の係合凹部85に嵌り込む。これにより、ストッパー部材91及びこれに連結されたランバーサポート体51(
図6~8等参照)が上方側へ位置変更された状態になる。
【0157】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は他にも様々に具体化でき、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0158】
例えば、本発明は、着座者の腰部を支えるランバーサポート体又はその他の身体支持部材を可動体と成しており、前記可動体が位置調節可能に設けられている椅子に関するものであるが、ここで、椅子とは人が腰掛けるものを総称している。したがって、ベンチや車椅子なども含まれる。また、可動体を成す身体支持部材には、ランバーサポート体の他に、背もたれ全体や、座、オプション品としてのヘッドレスト、肘当て、ショルダーレストなどが含まれる。
【符号の説明】
【0159】
51 ランバーサポート体(可動体)
61 操作レバー(操作具)
70 ロック機構
77 ストッパー押え突起部(押え突起部)
85 係合凹部
85b 傾斜ガイド面
92 爪部(係合突起部)
105 レバー移動方向
200 ロック機構
251 レバー移動方向
300 ロック機構
331 レバー移動方向
400 ロック機構
431 レバー移動方向