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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220601BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220601BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B27/30 Z
B32B17/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2017511369
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2017004092
(87)【国際公開番号】W WO2017135447
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2016021342
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016021343
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016021344
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016021345
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 奈美
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】可児 孝平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
(72)【発明者】
【氏名】武田 祐磨
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/108118(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/108119(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/147302(WO,A1)
【文献】特開2015-117142(JP,A)
【文献】国際公開第2011/078314(WO,A1)
【文献】特開2011-207762(JP,A)
【文献】国際公開第2011/081191(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/081190(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/115198(WO,A1)
【文献】特開2012-001406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 27/30
B32B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、
第1の層と、
前記第1の層の第1の表面に積層された第2の層とを備え、
前記第1の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、
前記第2の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が12モル%以上であり、
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が35重量部以下であり、
前記第1の層中の前記可塑剤が、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートであり、
前記第2の層中の前記可塑剤が、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートであり、
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWaとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXaとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、前記合わせガラス用中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、前記合わせガラス用中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZとしたときに、中間膜は、Z≦-1.7Xa-0.45Y+58を満たし、かつ、中間膜は、下記の第1の構成及び下記の第2の構成の内の少なくとも一方を満たす、合わせガラス用中間膜。
第1の構成:Y≧2
第2の構成:Wa>23、かつ、Xa≦11.5
【請求項2】
前記第1の構成を満たす、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第2の構成を満たす、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が24モル%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項1~4のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が50重量部以上、100重量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部を超える、請求項1~6のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低い、請求項1~7のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、
前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第3の層を備え、
前記第3の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、
前記第3の層中の前記可塑剤が、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートであり、
前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWbとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXbとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、前記合わせガラス用中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、前記合わせガラス用中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZとしたときに、中間膜は、Z≦-1.7Xb-0.45Y+58を満たし、かつ、中間膜は、前記第1の構成及び下記の第3の構成の内の少なくとも一方を満たす、請求項1~8のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
第3の構成:Wb>23、かつ、Xb≦11.5
【請求項10】
前記第3の構成を満たす、請求項9に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも多く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量よりも多い、請求項9又は10に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量が50重量部以下である、請求項9~11のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部を超え、
前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部を超える、請求項9~12のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項14】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低い、請求項9~13のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項15】
Z≧-1.7Xa-0.45Y+40を満たす、請求項1~14のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項16】
Z≧-1.7Xa-0.45Y+40を満たし、
Z≧-1.7Xb-0.45Y+40を満たす、請求項9~14のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項17】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1~16のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜としては、1層の構造を有する単層の中間膜と、2層以上の構造を有する多層の中間膜とがある。
【0004】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部を超える可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0005】
さらに、下記の特許文献1には、上記遮音層と他の層とが積層された多層の中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部以下である可塑剤とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-070200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
合わせガラスは、20℃付近の環境だけでなく、30℃付近の環境に晒されることが多い。近年、20℃付近での遮音性だけでなく、30℃付近での遮音性に優れている合わせガラスを得ることができる中間膜が望まれている。
【0008】
特許文献1に記載のような従来の中間膜を用いた合わせガラスでは、合わせガラス作製後に30℃での遮音性が低下してしまい、30℃での合わせガラスの遮音性が十分に高くならないことがある。さらに、従来の中間膜を用いた合わせガラスでは、20℃及び30℃の双方での合わせガラスの遮音性が十分に高くならないことがある。
【0009】
本発明の目的は、30℃での合わせガラスの遮音性を高めることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、好ましい中間膜として、20℃及び30℃の双方での合わせガラスの遮音性を高めることもできる合わせガラス用中間膜を提供する。こまた、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、第1の層と、前記第1の層の第1の表面に積層された第2の層とを備え、前記第1の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、前記第2の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWaとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXaとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、前記合わせガラス用中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、前記合わせガラス用中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZとしたときに、中間膜は、Z≦-1.7Xa-0.45Y+58を満たし、かつ、中間膜は、下記の第1の構成及び下記の第2の構成の内の少なくとも一方を満たす、合わせガラス用中間膜(本明細書において、「中間膜」と略記することがある)が提供される。
【0011】
第1の構成:Y≧2
【0012】
第2の構成:Wa>23、かつ、Xa≦11.5
【0013】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜は、前記第1の構成を満たす。
【0014】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜は、前記第2の構成を満たす。
【0015】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が24モル%未満である。
【0016】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも多い。
【0017】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が50重量部以上、100重量部以下である。
【0018】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が50重量部以下である。
【0019】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部を超える。
【0020】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低い。
【0021】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、3層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第3の層を備え、前記第3の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWbとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXbとし、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、前記合わせガラス用中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、前記合わせガラス用中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZとしたときに、中間膜は、Z≦-1.7Xb-0.45Y+58を満たし、かつ、中間膜は、前記第1の構成及び下記の第3の構成の内の少なくとも一方を満たす。
【0022】
第3の構成:Wb>23、かつ、Xb≦11.5
【0023】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、中間膜は、前記第3の構成を満たす。
【0024】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも多く、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量は、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量よりも多い。
【0025】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が50重量部以下であり、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量が50重量部以下である。
【0026】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部を超え、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第3の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部を超える。
【0027】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低い。
【0028】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、Z≧-1.7Xa-0.45Y+40を満たす。
【0029】
本発明に係る中間膜のある特定の局面では、Z≧-1.7Xa-0.45Y+40を満たし、Z≧-1.7Xb-0.45Y+40を満たす。
【0030】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であり、第1の層と、上記第1の層の第1の表面に積層された第2の層とを備え、上記第1の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、上記第2の層が、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含み、上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWaとし、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXaとし、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、上記合わせガラス用中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記合わせガラス用中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZとしたときに、中間膜は、Z≦-1.7Xa-0.45Y+58を満たし、かつ、中間膜は、第1の構成及び第2の構成の内の少なくとも一方を満たすので、30℃での合わせガラスの遮音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明に係る合わせガラス用中間膜(本明細書において、「中間膜」と略記することがある)は、2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、2層の構造を有していてもよく、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよく、4層以上の構造を有していてもよい。
【0035】
本発明に係る中間膜は、第1の層と、第2の層とを備える。上記第2の層は、上記第1の層の第1の表面に積層されている。上記第1の層は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む。上記第2の層は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む。上記第2の層は最外層(表面層)であってもよく、上記第2の層の上記第1の層が積層されている面の反対側に他の層が積層されていてもよい。上記第2の層は合わせガラス部材に積層される層であることが好ましい。上記第2の層の上記第1の層側とは反対の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る中間膜において、上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWa(モル%)とし、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXa(モル%)とし、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZ(重量部)とする。本発明に係る中間膜は、下記の式(Ca)を満たす。
【0037】
Z≦-1.7Xa-0.45Y+58 …式(Ca)
【0038】
さらに、本発明に係る中間膜は、下記の第1の構成及び下記の第2の構成の内の少なくとも一方を満たす。
【0039】
第1の構成:Y≧2 …式(A1)(上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が2モル%以上である)
【0040】
第2の構成:Wa>23 …式(Aa2)、かつ、Xa≦11.5 …式(Ba2)
【0041】
本発明に係る中間膜では、上記の構成が備えられているので、30℃での合わせガラスの遮音性を高めることができる。さらに、本発明では、20℃での合わせガラスの遮音性も高めることができる。すなわち、本発明では、20℃及び30℃の双方の合わせガラスの遮音性を高めることができる。
【0042】
本発明者らは、20℃及び30℃での遮音性の低下が、層間での可塑剤の移行の程度により影響されることを見出し、上記の2つの式(A1)及び(Ca)を満足するか、又は、上記の3つの式(Aa2)、(Ba2)及び(Ca)を満足することで、20℃及び30℃での遮音性が効果的に高くなることを更に見出した。
【0043】
本発明に係る中間膜は、第3の層を備えることが好ましい。上記第3の層は、上記第1の層の上記第1の表面と反対の第2の表面に積層される。上記第3の層は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことが好ましい。上記第3の層は最外層(表面層)であってもよく、上記第3の層の上記第1の層が積層されている面の反対側に他の層が積層されていてもよい。上記第3の層は合わせガラス部材に積層される層であることが好ましい。上記第3の層の上記第1の層側とは反対の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る中間膜は、上記第1の構成及び上記第2の構成の内の少なくとも一方を満たしていればよく、上記第1の構成を満たしていてもよく、上記第2の構成を満たしていてもよい。本発明に係る中間膜は、上記第1の構成と上記第2の構成とのうち、上記第1の構成のみを満たしていてもよく、上記第2の構成のみを満たしていてもよく、上記第1の構成と上記第2の構成との双方を満たしていてもよい。
【0045】
本発明に係る中間膜において、上記第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率をWb(モル%)とし、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率と、上記第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準での水酸基の含有率との差の絶対値をXb(モル%)とし、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のモル%基準でのアセチル化度をYとし、上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量をZ(重量部)とする。20℃及び30℃での遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る中間膜は、下記の式(Cb)を満たすことが好ましい。
【0046】
Z≦-1.7Xb-0.45Y+58 …式(Cb)
【0047】
20℃及び30℃での遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る中間膜は、上記第1の構成及び下記の第3の構成の内の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
【0048】
第3の構成:Wb>23 …式(Ab3)、かつ、Xb≦11.5 …式(Bb3)
【0049】
本発明に係る中間膜は、上記第1の構成及び上記第3の構成の内の少なくとも一方を満たすことが好ましく、上記第1の構成を満たしていてもよく、上記第3の構成を満たしていてもよい。本発明に係る中間膜は、上記第1の構成と上記第3の構成とのうち、上記第1の構成のみを満たしていてもよく、上記第3の構成のみを満たしていてもよく、上記第1の構成と上記第3の構成との双方を満たしていてもよい。
【0050】
上記の2つの式(A1)及び(Cb)を満足するか、又は、上記3つの式(Ab3)、(Bb3)及び(Cb)を更に満足することで、20℃及び30℃での遮音性がより一層効果的に高くなる。
【0051】
上記式(A1)、(Aa2)、(Ab3)、(Ba2)、(Bb3)、(Ca)及び(Cb)をそれぞれ満たすことによる具体的な効果について以下説明する。
【0052】
上記式(A1)は、遮音性に特に影響する。具体的には、上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が高くなるほど遮音性は向上するため、本発明ではアセチル化度を式(A1)のように制御することで遮音性を高めることができる。
【0053】
上記式(Aa2)及び(Ab3)は、合わせガラスの耐貫通性に影響する。具体的には、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量の含有率が大きくなるほど合わせガラスの耐貫通性は高くなるため、本発明では水酸基量を式(Aa2)及び(Ab3)のように制御することで耐貫通性を高めることができる。
【0054】
上記式(Ba2)及び(Bb3)は、合わせガラスの透明性、中間膜のリサイクル性の向上に影響する。中間膜を得るために、中間膜を得るために少なくとも1回用いられた回収材料(回収中間膜)が再利用されることがある。中間膜を得るために少なくとも1回用いられた回収材料(回収中間膜)としては、中間膜の製造工程で発生する中間膜の両端の不要部分(耳)、合わせガラスの製造工程で発生する中間膜の周囲の不要部分(トリム)、合わせガラスの製造工程にて発生した合わせガラスの不良品からガラス板を分離し、除去して得られる合わせガラス用中間膜、並びに使用済の車両及び老朽化した建築物を解体することで得られた合わせガラスから、ガラス板を分離し、除去して得られる中間膜等が挙げられる。なお、中間膜の製造工程で発生する不要となった中間膜も、中間膜を得るために少なくとも1回用いられた回収材料に相当する。中間膜材料を再混練した後のヘイズが低いと、使用できる回収中間膜量が増加し、リサイクル性を高めることができる。離れている層同士の水酸基の含有率の差が近い中間膜は、回収した時にヘイズを低くすることができる。本発明では、水酸基の含有率の差を式(Ba2)及び(Bb3)のように制御することで再混練後のヘイズを低くすることができ、リサイクル性を高めることができる。
【0055】
上記式(Ca)及び(Cb)は、30℃での遮音性に特に影響する。合わせガラスの製造時に、積層した合わせガラスと中間膜を加圧下で圧着する。圧着後、上記第2の層及び第3の層中の可塑剤が、より可塑剤との親和性が高い上記第1の層中へと移行する。その結果、遮音性の効果が得られる温度範囲は低温側へと変化する。中間膜を用いた合わせガラスでは、20℃付近の環境だけでなく、30℃付近の環境に晒されることも多い。本発明では、上記第1の層と第2の層中、並びに、上記第1の層と上記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率の差、第1の層中のアセチル化度、中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量を適切に調整することにより、遮音性の効果が得られる温度範囲を低温側に下げ過ぎることなく、30℃付近での遮音性の低下を防ぎ、30℃付近での遮音性を高めることができる。
【0056】
30℃での遮音性を更により一層良好にする観点からは、本発明に係る中間膜は、下記の式(Da)を満たすことが好ましく、下記の(Db)を満たすことが好ましい。
【0057】
Z≦-1.7Xa-0.45Y+57.5…式(Da)
Z≦-1.7Xb-0.45Y+57.5…式(Db)
【0058】
30℃での遮音性を特に良好にする観点からは、本発明に係る中間膜は、下記の式(Ea)を満たすことが好ましく、下記の(Eb)を満たすことが好ましい。
【0059】
Z≦-1.7Xa-0.45Y+57…式(Ea)
Z≦-1.7Xb-0.45Y+57…式(Eb)
【0060】
20℃での遮音性をより一層良好にする観点からは、上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記中間膜中の可塑剤全体の含有量が下記の式(Fa)を満たすことが好ましく、下記の(Fb)を満たすことが好ましい。
【0061】
Z≧-1.7Xa-0.45Y+40 …式(Fa)
Z≧-1.7Xb-0.45Y+40 …式(Fb)
【0062】
20℃での遮音性を更により一層良好にする観点からは、上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記中間膜中の可塑剤全体の含有量が下記の式(Ga)を満たすことが好ましく、下記の(Gb)を満たすことが好ましい。
【0063】
Z≧-1.7Xa-0.45Y+42.5 …式(Ga)
Z≧-1.7Xb-0.45Y+42.5 …式(Gb)
【0064】
20℃での遮音性を特に良好にする観点からは、上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記中間膜中の可塑剤全体の含有量が下記の式(Ha)を満たすことが好ましく、下記の(Hb)を満たすことが好ましい。
【0065】
Z≧-1.7Xa-0.45Y+45 …式(Ha)
Z≧-1.7Xb-0.45Y+45 …式(Hb)
【0066】
上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂全体100重量部に対する、上記中間膜中の可塑剤全体の重量部基準での含有量Zについて説明する。
【0067】
上記中間膜を縦0.5cm、横5cmに切断し、上記第2の層、上記第1の層、及び、上記第3の層が積層された3層構造の場合は、上記中間膜を、23±2℃、湿度25±5%の環境下に、12時間放置した後、上記第2の層を上記第1の層から剥離し、次いで、上記第3の層を上記第1の層から剥離する。剥離された上記第1の層の重量を分析用電子天びん(エー・アンド・デイ社製「GH-200」)を用いて測定し、剥離された上記第1の層の重量をX1(mg)とする。剥離された上記第1の層を、ガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC-2014」)を用いて、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計に占めるポリビニルアセタール樹脂の含有率(R1)、及び、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計に占める可塑剤の含有率(P1)を測定する。測定条件は以下の通りとする。
カラム:DB-5MS 0.25mm×30m、0.25μm膜厚
カラム温度:120℃-10℃/分-320℃
注入口温度:250℃
検出器温度:320℃
キャリアー:He 1.1mL/分
注入量:1.0μL
スプリット比:10:1
【0068】
測定は以下のようにして行われてもよい。中間膜を縦0.5cm、横5cmに切断する。第2の層、第1の層、及び、第3の層が積層された3層構造の場合は、上記中間膜を、23±2℃、湿度25±5%の環境下に、12時間放置した後、第2の層を第1の層から剥離し、次いで、第3の層を第1の層から剥離する。剥離された上記第1の層について、ガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC-2014」)を用いて、上記第1の層中の熱可塑性樹脂100重量部に対する可塑剤の重量部基準での含有量Q1を測定する。
【0069】
なお、上記R1は上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の含有量を、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計の含有量で除算することにより算出し、上記P1は上記第1の層中の可塑剤の含有量を、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計の含有量で除算することにより算出する。同様にして、上記第2の層の重量X2(mg)、上記第2の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計に占めるポリビニルアセタール樹脂の含有率(R2)、及び、上記第2の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計に占める可塑剤の含有率(P2)を測定する。同様にして、上記第3の層の重量X3(mg)、上記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計に占めるポリビニルアセタール樹脂の含有率(R3)、及び、上記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の合計に占める可塑剤の含有率(P3)を測定する。更に、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂の含有量をX1(mg)×R1、上記第2の層中のポリビニルアセタール樹脂の含有量をX2(mg)×R2、及び、上記第3の層中のポリビニルアセタール樹脂の含有量をX3(mg)×R3として算出し、上記中間膜中のポリビニルアセタール樹脂の含有量をX1(mg)×R1+X2(mg)×R2+X3(mg)×R3とする。同様にして、上記第1の層中の可塑剤の含有量をX1(mg)×P1、上記第2の層中の可塑剤の含有量をX2(mg)×P2、及び、上記第3の層中の可塑剤の含有量をX3(mg)×P3として算出し、上記中間膜中の可塑剤の含有量をX1(mg)×P1+X2(mg)×P2+X3(mg)×P3とする。この結果から、上記中間膜中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する、上記中間膜中の上記可塑剤の含有量Zを、[{X1(mg)×P1+X2(mg)×P2+X3(mg)×P3}/{X1(mg)×R1+X2(mg)×R2+X3(mg)×R3}]×100により算出する。上記中間膜が4層以上の多層構造を有する場合は、上記第1の層、上記第2の層、及び、上記第3の層を特定し、3層構造を有する場合と同様に上記中間膜中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する、上記中間膜中の上記可塑剤の含有量Zを測定することが好ましい。なお、上記第1の層、上記第2の層、及び、上記第3の層の少なくとも一層に着色領域を含み、かつ中間膜の平面方向の一部のみに着色領域を有する場合は、着色領域を含まないように、上記中間膜を縦0.5cm、横5cmに切断したうえで、上記中間膜中の上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する、上記中間膜中の上記可塑剤の含有量Zを測定することが好ましい。
【0070】
また、以下の方法で測定することもできる。中間膜を15g採取する。縦3mm×横3mm巾に切り取り、アルミニウム皿(アズワン社製 5-361-02)に入れる。真空オーブンで50℃2時間真空乾燥させる。23℃の室内で、ガラス製のデシケータにアルミニウム皿を入れて30分間冷却した後、精密天秤でアルミニウム皿と中間膜の合計重量A(g)を計測する。アルミニウム皿から円筒濾紙(ADVANTEC No.84)に中間膜を移し入れる。空のアルミニウム皿の重量B(g)を計測する。丸底フラスコをオーブンに入れて、120℃で2時間乾燥させる。23℃の室内で、デシケータに丸底フラスコを入れて30分間冷却してから、精密天秤で丸底フラスコの重量C(g)を計測する。上記丸底フラスコにジエチルエーテルを150ml測り、入れる。ソックスレー抽出器を丸底フラスコに取り付ける。水温50℃の水浴にソックスレー抽出器を取り付けた丸底フラスコを入れ、10時間加熱還流する。加熱還流後の丸底フラスコをオーブンに入れ、120℃で2時間乾燥させてジエチルエーテルを完全に取り除く。23℃の室内で、ガラス製のデシケータに丸底フラスコを入れて30分間冷却してから、精密天秤で丸底フラスコと抽出液の合計重量D(g)を計測する。この結果から、上記中間膜中の上記熱可塑性樹脂100重量部に対する、上記中間膜中の上記可塑剤の含有量Zを、[(D-C)/{(A-B)-(D-C)}×100]により算出する。
【0071】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0072】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
【0073】
図1に示す中間膜11は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第1の層1の第1の表面1aに、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0074】
以下、本発明に係る中間膜を構成する上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0075】
(ポリビニルアセタール樹脂)
上記第1の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含む。上記第2の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、熱ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含む。上記第3の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70~99.9モル%である。
【0077】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0078】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0079】
上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、4又は5であることが好ましい。
【0080】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等が挙げられる。アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上、好ましくは28モル%以下、より好ましくは27モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また28モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0082】
20℃及び30℃の双方の合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、23モル%を超えることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31.5モル%以上、更に好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは38モル%以下、更に好ましくは37モル%以下、特に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、曲げ剛性がより一層高くなり、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0083】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、及び上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは4モル%以上、特に好ましくは5モル%以上、最も好ましくは6モル%以上である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、及び、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、上記第1の構成及び上記第2の構成のうち上記第1の構成のみを満たす場合には、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは11.5モル%以下であり、上記第1の構成及び上記第2の構成のうちのいずれか又はいずれも満たす場合には、好ましくは11モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは9.5モル%以下、特に好ましくは8.5モル%以下である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、より一層好ましくは11.5モル%以下、更に好ましくは11モル%以下、更に一層好ましくは10モル%以下、特に好ましくは9.5モル%以下、最も好ましくは8.5モル%以下である。
【0084】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0085】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、上記第1の構成及び上記第2の構成のうち上記第2の構成のみ満たす場合には、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上であり、上記第1の構成及び上記第2の構成のうちのいずれか又はいずれも満たす場合には、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは24モル%未満、最も好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。
【0086】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0087】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0088】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0089】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0090】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0091】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0092】
合わせガラスの耐貫通性をより一層良好にする観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、アセチル化度(a)が8モル%未満であり、かつアセタール化度(a)が65モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(A)であるか、又はアセチル化度(b)が8モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(B)であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)であってもよく、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)であってもよい。
【0093】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)のアセチル化度(a)は8モル%未満、好ましくは7.9モル%以下、より好ましくは7.8モル%以下、更に好ましくは6.5モル%以下、特に好ましくは6モル%以下、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは2モル%以上、特に好ましくは5モル%以上、最も好ましくは5.5モル%以上である。上記アセチル化度(a)が0.1モル%以上、8モル%未満であると、可塑剤の移行を容易に制御でき、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0094】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)のアセタール化度(a)は65モル%以上、好ましくは66モル%以上、より好ましくは67モル%以上、更に好ましくは67.5モル%以上、特に好ましくは75モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは84モル%以下、更に好ましくは83モル%以下、特に好ましくは82モル%以下である。上記アセタール化度(a)が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度(a)が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂(A)を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0095】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の水酸基の含有率(a)は好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21モル%以上、最も好ましくは23モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは29モル%以下、特に好ましくは28モル%以下である。上記水酸基の含有率(a)が上記下限以上であると、上記第2の層の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率(a)が上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0096】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセチル化度(b)は、8モル%以上、好ましくは9モル%以上、より好ましくは9.5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは10.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは26モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記アセチル化度(b)が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセチル化度(b)が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂(B)を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0097】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度(b)は好ましくは50モル%以上、より好ましくは53モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、好ましくは78モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは72モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度(b)が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度(b)が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂(B)を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0098】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基の含有率(b)は好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21モル%以上、最も好ましくは23モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは29モル%以下、特に好ましくは28モル%以下である。上記水酸基の含有率(b)が上記下限以上であると、上記第2の層の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率(b)が上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0099】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(B)はそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0100】
(可塑剤)
上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含む。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含む。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、またポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤(1)と上記可塑剤(2)と上記可塑剤(3)とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記可塑剤(1)、上記可塑剤(2)及び上記可塑剤(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0102】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0103】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0104】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0105】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0106】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0107】
【化1】
【0108】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基であることが好ましく、炭素数6~10の有機基であることがより好ましい。
【0109】
上記可塑剤は、ジ-(2-ブトキシエチル)-アジペート(DBEA)、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートを含むことが更に好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことが特に好ましい。
【0110】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)、並びに上記ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは24重量部以上、最も好ましくは25重量部を超え、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、より一層好ましくは40重量部以下、更に好ましくは35重量部以下、特に好ましくは32重量部以下、最も好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、曲げ剛性がより一層高くなる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であっても、中間膜が、上記の2つの式(A1)及び(Ca)を満たすか、又は、上記の3つの式(Aa2)、(Ba2)及び(Ca)を満たすことで、30℃付近での遮音性を高めることができる。
【0111】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、好ましくは40重量部以上、より好ましくは45重量部以上、より一層好ましくは50重量部以上、更に好ましくは55重量部以上、特に好ましくは60重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、特に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記含有量(1)が上記下限以上であっても、中間膜が、上記の2つの式(A1)及び(Ca)を満たすか、又は、上記の3つの式(Aa2)、(Ba2)及び(Ca)を満たすことで、30℃付近での遮音性を高めることができる。
【0112】
合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0113】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0114】
(遮熱性化合物)
上記中間膜は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記遮熱性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記遮熱性化合物は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0116】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性化合物である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0117】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0118】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0119】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0120】
上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0121】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性化合物である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0122】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0123】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0124】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0125】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0126】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0127】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0128】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0129】
上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0130】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、中間膜と合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0131】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0132】
また、上記金属塩Mは、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2~16の有機酸のマグネシウム塩であることがより好ましく、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0133】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0134】
上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜と合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0135】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0136】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0137】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤等が挙げられる。
【0138】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0139】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤であり、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0140】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0141】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0142】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0143】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0144】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0145】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0146】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0147】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0148】
期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0149】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0150】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0151】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0152】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0153】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0154】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0155】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0156】
(他の成分)
中間膜、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0157】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、第1の層のガラス転移温度は好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下、特に好ましくは0℃以下である。第1の層のガラス転移温度は好ましくは-20℃以上である。
【0158】
上記中間膜の一端と他端との距離は、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上であり、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下である。中間膜が長さ方向と幅方向とを有する場合には、一端と他端との距離は、中間膜の長さ方向の距離である。中間膜が正方形の平面形状を有する場合には、一端と他端との距離は、対向し合う一端と他端との距離である。
【0159】
上記中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性が高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0160】
中間膜の厚みをTとする。上記第1の層の厚みは、好ましくは0.0625T以上、より好ましくは0.1T以上、好ましくは0.4T以下、より好ましくは0.375T以下、更に好ましくは0.25T以下、更に好ましくは0.15T以下である。上記第1の層の厚みが0.4T以下であると、曲げ剛性がより一層良好になる。
【0161】
上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.3T以上、より好ましくは0.3125T以上、更に好ましくは0.375T以上、好ましくは0.9375T以下、より好ましくは0.9T以下である。上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、0.46875T以下であってもよく、0.45T以下であってもよい。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0162】
上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、更に好ましくは0.85T以上、好ましくは0.9375T以下、より好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0163】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0164】
本発明に係る中間膜の製造方法としては特に限定されない。本発明に係る中間膜の製造方法としては、単層の中間膜の場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。本発明に係る中間膜の製造方法としては、多層の中間膜の場合に、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、例えば、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0165】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0166】
上記中間膜は、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記中間膜は、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0167】
(合わせガラス)
図2は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0168】
図2に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11とを備える。中間膜11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0169】
中間膜11の第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11の第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層2の外側の表面2aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0170】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に係る合わせガラス用中間膜である。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。
【0171】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0172】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0173】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0174】
本発明に係る中間膜の使用により、合わせガラスの厚みが薄くても、合わせガラスの曲げ剛性を高く維持することができる。合わせガラスを軽量化したり、合わせガラスの材料を少なくして環境負荷を低減したり、合わせガラスの軽量化によって自動車の燃費を向上させて環境負荷を低減したりする観点からは、上記ガラス板の厚みは、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.8mm以下、より一層好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1mm以下、更に一層好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.7mm以下である。
【0175】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70~110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120~150℃及び1~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、第1の層と第2の層と第3の層とを積層してもよい。
【0176】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0177】
透明性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラスの上記可視光線透過率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。合わせガラスの可視光線透過率は、JIS R3211(1998)に準拠して測定できる。本発明の合わせガラス用中間膜を、JIS R3208に準拠した、厚さ2mmの2枚のグリーンガラス(熱線吸収板ガラス)の間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの可視光線透過率は70%以上であることが好ましい。可視光線透過率は、より好ましくは75%以上である。
【0178】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0179】
以下の材料を用意した。
【0180】
(ポリビニルアセタール樹脂)
下記の表1,2に示すポリビニルアセタール樹脂を用いた。用いたポリビニルアセタール樹脂では全て、アセタール化に、炭素数4のn-ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0181】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
【0182】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0183】
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0184】
(実施例1)
第1の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤(3GO)60重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第1の層を形成するための組成物を得た。
【0185】
第2の層及び第3の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤(3GO)35重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物を得た。
【0186】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物と、第2の層及び第3の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第2の層(厚み340μm)/第1の層(厚み100μm)/第3の層(厚み340μm)の積層構造を有する中間膜(厚み780μm)を作製した。
【0187】
合わせガラスAの作製(遮音性測定用):
得られた中間膜を縦30cm×横2.5cmの大きさに切断した。次に、JIS R3208に準拠したグリーンガラス(縦30cm×横2.5cm×厚さ2mm)2枚の間に、中間膜を挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、予備圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスAを得た。
【0188】
(実施例2~、参考例1017、実施例18~23及び比較例1~2)
第1の層を形成するための組成物と第2の層及び第3の層を形成するための組成物とに用いるポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の種類と配合量とを下記の表1,2に示すように設定したこと、並びに第1の層、第2の層及び第3の層の厚みを下記の表1,2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。また、実施例2~、参考例1017、実施例18~23及び比較例1~2では、実施例1と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、実施例1と同様の配合量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.2重量部)で配合した。
【0189】
(評価)
(1)30℃での遮音性の変化
得られた合わせガラスを23℃の環境下にて24時間保管した。24時間保管した合わせガラスを30℃の恒温槽で1時間保管した後、ISO 16940:2008に従って、30℃の恒温槽中での機械インピーダンスを中央加振法で測定した。得られた伝達関数から、24時間後の1次モードでの損失係数ηaを半値幅法で算出した。また、得られた合わせガラスを23℃の環境下にて12週間保管したこと以外は上記と同様にして、12週間後の1次モードでの損失係数ηbを算出した。
【0190】
24時間後の1次モードでの損失係数ηaと12週間後の1次モードでの損失係数ηbから、30℃での遮音性の変化率を次式の様に算出した。
【0191】
30℃での遮音性の変化率=(ηb-ηa)/ηa×100
【0192】
(2)20℃での遮音性
得られた合わせガラスを23℃の環境下にて12週間保管した。12週間保管した合わせガラスを20℃の恒温槽で1時間保管した後、ISO 16940:2008に従って、20℃の恒温槽中での機械インピーダンスを中央加振法で測定した。得られた伝達関数から、12週間後の1次モードでの損失係数ηcを半値幅法で算出した。算出したηcから、20℃での遮音性を下記の基準で判定した。
【0193】
[20℃での遮音性の判定基準]
○○:ηcが0.2以上
○:ηcが0.15以上かつ0.2未満
×:ηcが0.15未満
【0194】
(3)30℃での遮音性
上記で測定した12週間後の30℃での1次モードでの損失係数ηbから、30℃での遮音性を記の基準で判定した。
【0195】
[30℃での遮音性の判定基準]
○○:ηbが0.2以上
○:ηbが0.15以上かつ0.2未満
×:ηbが0.15未満
【0196】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。なお、下記の表1,2では、ポリビニルアセタール樹脂、及び可塑剤以外の配合成分の記載は省略した。
【0197】
【表1】
【0198】
【表2】
【符号の説明】
【0199】
1…第1の層
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第2の層
2a…外側の表面
3…第3の層
3a…外側の表面
11…中間膜
11a…第1の表面
11b…第2の表面
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31…合わせガラス
図1
図2