(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】家具の床固定装置
(51)【国際特許分類】
A47B 91/08 20060101AFI20220601BHJP
A47B 97/00 20060101ALI20220601BHJP
B01L 9/02 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
A47B91/08
A47B97/00 E
B01L9/02
(21)【出願番号】P 2018007018
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-09-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年11月30日、宝化成機器株式会社において、床固定装置を備える実験台を宝化成機器株式会社に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】吉松 圭介
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-027345(JP,U)
【文献】登録実用新案第3173493(JP,U)
【文献】特開2001-161475(JP,A)
【文献】特開平09-098842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/08
A47B 97/00
B01L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部にアジャスタを備える柱状の脚を有する家具の前後又は左右で一対の脚を一体的に床に固定する家具の脚の床固定装置であって、
前記床固定装置は、
前記一対の脚における夫々のアジャスタに被さる断面が略逆凹状をなし且つ前記アジャスタと脚を結合しているアジャスタ軸を挿入できる切欠状の軸挿入部が前記逆凹状の上面
壁に形成されたアジャスタ押え部を両端部に一体に備えた前記一対の脚の距離に見合う長さを有する床に固定される床固定ベースと、
前記アジャスタ押え部を含む床固定ベースに被せて固定される長さが前記アジャスタ押え部より長く且つ断面が略逆凹状なす部材であって、その端部に前記軸挿入部と交差する向きの軸挿入用の切欠を備える前記アジャスタ軸を拘束する軸拘束部材と
を少なくとも備えていることを特徴とする床固定装置。
【請求項2】
前記床固定ベースは、前記アジャスタ押え部を除いた部分の断面が略凹状であり、当該床固定ベースに被せられた前記軸拘束部材は、
前記床固定ベースの底壁に設けたボルト穴をカバーする請求項1の床固定装置。
【請求項3】
前記アジャスタ軸は、前記アジャスタ押え部の軸挿入部と該アジャスタ押え部に被せた前記軸拘束部材の切欠に略当接して固定される請求項1又は2の床固定装置。
【請求項4】
前記アジャスタ押え部の上面壁と立壁、および前記アジャスタ押え部に被せた前記軸拘束部材の上面壁と立壁は、下面側が開放された2重壁の下向き箱状を形成する請求項1~3のいずれかの床固定装置。
【請求項5】
一対の前記アジャスタ押え部に夫々に被せられる左右のアジャスタにおける前記軸拘束部材は、その2つで前記アジャスタ押え部と床固定ベースの全長に被さる長さを有するか、又は2つの中間に断面絡逆凹状の中間部材を介在させて前記アジャスタ押え部を含む床固定ベースの全長に被さる請求項1~4のいずれかの床固定装置。
【請求項6】
家具は実験台又は作業台であって夫々に駆動力によって伸縮する4本の脚を備える請求項5の床固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脚を有する家具の床固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家具の床固定装置としては、従来から転倒防止や移動防止を主な目的として、家具の脚下端部(アジャスタを含む。以下、同じ)を固定金具等によって前記家具が設置されている床に固定することが、特許文献1を始めとして数多く提案されている。
【0003】
従来の床固定装置には、個々の脚下端部を個々に固定金具等で床に固定する手法のもの(特許文献1~3参照)と、前後(又は左右)の一対の脚の下端部を一つの固定手段で床に固定する手法のもの(特許文献4~7参照)がある。
【0004】
上記従来の床固定装置において、個々の脚下端部ごとに固定金具等で床に固定する手法のもの(特許文献1から3)は、例えば、独立した4本脚を備えた作業台のような家具では、水平方向の外力が脚に作用すると、隣合う脚下端部間の距離に変化が生じて、例えば天板表面の水平度が維持できなくなる場合がある。
【0005】
これに対し、前後、又は左右で一対の脚下端部を一つの固定手段で床に固定するようにした床固定装置(特許文献4~7)では、平常時に隣り合う脚下端部間の距離を一定に維持できるが、水平方向の外力に対する強度や剛性が、構造上十分でないと、脚下端部間の距離が変動してしまう恐れがある。従来の床固定装置は、上記問題点のほか床固定装置の外面にその構成部材による凹凸が露出しているので、歩行等の邪魔になると共に見映えも優れないという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-315811号公報
【文献】特許第3603707号公報
【文献】特許第5107311号公報
【文献】特開平9-201245号公報
【文献】特開平11-244076号公報
【文献】実公平1-16438号公報
【文献】実公昭48-40860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば作業台のように4本の脚を有する家具における個々の脚や一対の脚を床に固定する従来の床固定装置の問題点に鑑み、床固定装置の外面に尖鋭な凸起物等がなく、しかも脚に水平方向の大きな外力が作用することがあっても一対の脚の脚間距離に変化を生じさせない十分な強度、剛性を備えた床固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明床固定装置の構成は、下部にアジャスタを備える柱状の脚を有する家具における前後又は左右で一対の脚を一体的に床に固定する脚の床固定装置であって、前記床固定装置が、前記一対の脚における夫々のアジャスタに被さる断面が略逆凹状をなし且つ前記アジャスタと脚を結合しているアジャスタ軸を挿入できる切欠状の軸挿入部が前記逆凹状の上面に形成されたアジャスタ押え部と、前記一対の脚の距離に見合う長さを有し両端部に前記アジャスタ押え部を一体に備えて床に固定される床固定ベースと、前記アジャスタ押え部を含む床固定ベースに被せて固定される部材であって断面が略逆凹状なし且つ前記軸挿入部と交差する向きの軸挿入用の切欠部を備える前記アジャスタ軸を拘束する軸拘束部材と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記床固定ベースは、断面が略凹状、略逆凹状、略口状、または板状等のいずれであってもよく、形状は特に限定されるものではない。断面が略凹状、略逆凹状、又は略口状であれば、長さ方向での圧縮、引張のいずれの外力に対しても大きな耐力を発揮する。なお、断面が略凹状の場合には、後述するように床へのアンカーボルトの固定が簡単にできる。
【0010】
本発明においては、前記アジャスタ押え部の切欠状の軸挿入部と、該アジャスタ押え部に被せた軸拘束部材の軸挿入用の切欠とによって、前記アジャスタ軸を包囲して拘束する。これによりアジャスタ位置が固定され、床固定装置からアジャスタと一体の脚の下端部が逸脱することはない。
【0011】
また、前記アジャスタ押え部の上面壁と立壁、および前記アジャスタ押え部に被せた軸拘束部材の上面壁と立壁は、2重壁になって下面側が開放された下向き箱状を形成している。
【0012】
本発明において、一対のアジャスタ押え部に夫々に被せられる2つの軸拘束部材は、その2つでアジャスタ押え部を含む床固定ベースの全長に被さる長さのものであってよい。また、前記2つの軸拘束部材は、その合計長さが両端のアジャスタ押え部を含む床固定ベースの全長より短く形成されたものを用い、その中間に、断面絡逆凹状の中間部材を介在させるようにしてもよい。
【0013】
本発明床固定装置を適用する家具の例としては、実験台、又は作業台があり、また前記実験台又は作業台は、夫々が駆動力によって伸縮する4本の脚を備えたものであってもよい。
なお、本発明は、アジャスタを備えない脚下端部に適用することも可能である。この場合の脚下端部は、図示しないが、脚の下端部がその脚下端とそれより上方部位の境界が小径の首部を介して形成されており、前記首部より下方がアジャスタに相当し前記首部がアジャスタ軸に相当するものとして、前記のアジャスタ押え部、床固定ベース、軸拘束部材を適用すればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、下部にアジャスタを備える4本の柱状の脚を有する家具における前後又は左右で一対をなす脚を、アジャスタ抑え部と床固定ベースとアジャスタ軸の拘束部材を備えて床固定装置を構成したので、この床固定装置によって一対の脚を一体的に床に固定することができ、よって前記脚に地震の全水平方向の揺れによる大きな外力が作用しても、前記一対の脚の下端部間の距離が変動することはない。また、前記床固定装置は、外面に構成部材による突起物がないから歩行の邪魔にならず、見映えを損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明床固定装置において両端にアジャスタ押え部を備えた床固定ベースの一部を断面にした概略を示す正面図。
【
図4】本発明床固定装置のアジャスタ軸に対する軸拘束部材の平面図。
【
図6】本発明床固定装置における中間部材の平面図。
【
図8】本発明床固定装置を適用する脚の下端部を拡大した正面図。
【
図9】一対の脚下端部のアジャスタにアジャスタ押え部を両端に備える床固定ベースを装着する前の斜視図。
【
図10】一対の脚下端部のアジャスタにアジャスタ押え部を被せる態様で装着した床固定ベースに、2つの軸拘束部材を被せる態様で架装している状態の斜視図。
【
図11】
図10の2つの軸拘束部材の夫々の軸挿入用の切欠に一対の脚のアジャスタ軸をそれぞれに挿入して当該2つの軸拘束部材を床固定ベースに架装した状態の斜視図。
【
図12】
図11の2つの軸拘束部材の対向面間に形成される床固定ベース上のすき間に、中間部材を架装した状態の斜視図。
【
図13】
図12の床固定ベースに架装された左右の軸拘束部材と中間部材を、それぞれの立壁において、床固定ベースの立壁にビス止め固定し、床固定ベースと軸拘束部材と中間部材を一体化した本発明床固定装置の斜視図。
【
図14】床固定ベースが備えるアジャスタ押え部の断面略逆凹状の内部に収まったアジャスタの状態を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図を参照して本発明床固定装置の実施の形態例について説明する。
図1~
図7、並びに、
図9~
図13において、1は、長さ方向の両端部に対称形態のアジャスタ押え部2,3を一体に備えた床固定ベースである。図示した床固定ベース1は、断面略凹状の鋼材で形成されており底壁1aと前後の立壁1b、1cによって断面略凹状に形成されている。
【0017】
前記の底壁1aには、床に立設するアンカーボルト用の2つのボルト穴1dが形成され、前後の立壁1b、1cの長さ方向の中間部と両端近傍には、後述する軸拘束部材4と中間部材5をビス止め固定するためのビス穴1e、1fが設けられている。
【0018】
床固定ベース1の両端に位置しこの床固定ベース1と一体化されているアジャスタ押え部2,3は、対称形態の同じ構造であるから、ここでは一方のアジャスタ押え部2について説明する。なお、アジャスタ押え部3の構成は、アジャスタ押え部2の構成に用いた符号の数字2を数字3に置き換えて読むものとする。
【0019】
アジャスタ押え部2は、上面壁2aの外周の3辺から下向きに3つの立壁2b、2c、2dを備え、断面が略逆凹状で概ね浅底の箱を伏せた形態である。なお、アジャスタ押え部の3つの立壁2b~2dのうち立壁2cは、当該アジャスタ押え部2の構成部材で形成するか、或は前記床固定ベース1の立壁1cを延ばして形成するかは、任意である。
【0020】
前記アジャスタ押え部2の上面壁2aには、前記立壁2dと平行な向きに窪んだ平面視略U状をなす切欠状の軸挿入部2fが形成されている(
図3参照)。また、前記軸挿入部2fは、
図8に示す家具の脚Lgの下端に設けたアジャスタAjにおける軸As(ボルトによる軸で、以下、アジャスタ軸Asという)の軸受座Sb(アジャスタ軸Asよりも太い)を挿入するため、平面視略U状の幅が大きく形成されている。なお、切欠状の軸挿入部2fに挿入される対象が軸受座Sbより細いアジャスタ軸Asなどの場合には、前記略U状の幅は、当該細い軸を挿入できる幅であれば足りる。
【0021】
図8は、本発明床固定装置を適用する家具の脚の一例における脚下端部(アジャスタAjを含む)を説明するための正面図で、Lgは断面円形のパイプ状の脚、Ajは前記脚Lgの下端に設けたアジャスタで、適宜厚みを有する円盤状本体Adの中心部にアジャスタ軸Asより大きい外径の軸受座Sbが形成され、この軸受座Sbの中心からアジャスタ軸Asとなるボルトが立上げて設けられている。
図8に示すように脚Lgの下端面LfとアジャスタAjの円盤状本体Adの上面Afの間には、隙間Gが形成されている。なお隙間Gは、アジャスタ軸Asの回転(円盤状本体Adの回転)によって大きさ(隙間Gの上下幅)を自在に変更し、脚のがたつきを調整するためのものである。
前記アジャスタAjは、その円盤状本体Adが
図14に示すように、アジャスタ押え部2の上面壁2aと3つの立壁2a~2dが形成する断面略逆凹状の内部に丁度収まっている。即ち、床固定ベース1の両端に備わるアジャスタ押え部2,3は、夫々の上面壁と3つの立壁が形成する断面略逆凹状の内部が、アジャスタAjの円盤状本体Adを収容できる大きさに形成されている。
【0022】
前記上面壁2aから切欠状の軸挿入部2fまでの構成を備えたアジャスタ押え部2、及び当該押え部2と同じ構成を対称的に有するアジャスタ押え部3は、
図1~
図3に示すように、当該アジャスタ押え部2の立壁2c,2dおよびアジャスタ押え部3の立壁3c,3dが床固定ベース1の両端部における底壁1a、立壁1b,1cに一体化されることにより、床固定部材1と左右のアジャスタ押え部2,3が一体化されている。
【0023】
図1~
図3を参照して説明した床固定ベース1は、断面が略凹状であったが、本発明では、床固定ベース1の断面形状は、上記以外の略逆凹状、或いは略口状や略板状などであってもよい。但し、略逆凹状の場合には、アンカーボルト立設用の穴を有する部分的な底壁部を設け、また略口状の場合には、上面壁にアンカーボルト操作用の穴を設ける。
【0024】
両端にアジャスタ押え部2,3を有する床固定ベース1に対しては、
図4、
図5に示す軸拘束部材4を、アジャスタ押え部2と同3を上から覆う形態で被せて固定し、床固定ベース1と一体化する。
【0025】
図4、
図5の軸拘束部材4は、両端のアジャスタ押え部2と3を含む前記床固定ベース1に外嵌状態で被せられる大きさの断面略逆凹状の鋼板で形成され、上面壁4aと前後の立壁4b、4cを備えている。
【0026】
前記上面壁4aには、外側端から壁4aの内部に向う平面視略U状の切欠が、立壁4b、4cに沿う向きで設けられ、軸挿入用の切欠4dを形成している。なお、軸挿入用の切欠4dの向きは、図示した例の逆向きであってもよい。軸挿入用の切欠4dは、前記アジャスタ軸Asを挿入できる幅であり、前述の切欠状の軸挿入部2dより狭幅である。前記立壁4b、4cの中間部位には、床固定ベース1の立壁1b、1cに設けたビス穴1e、1fと対応する位置に、ビス穴4e、4fが設けられている。
【0027】
いま、
図3の床固定ベース1のアジャスタ押え部2と3の切欠状の軸挿入部2f、3fに、それぞれ、アジャスタAjの軸受座Sbが挿入嵌合状態にあるとき、2つの軸拘束部材4を、それぞれ、前記アジャスタAjのボルト軸Asが軸挿入用の切欠4dに挿入されるように、床固定ベース1の上から被せるように配置すると、前記軸挿入用の切欠4dは、その切欠方向が前記アジャスタ押え部2,3の軸挿入部2f、3fと交差する向きで床固定ベース1の上に配置される。これによってアジャスタAjのアジャスタ軸Asは,前記アジャスタ押え部2,3の軸挿入部2f、3fと軸拘束部材4の切欠4dによって、その位置から抜け出せないように拘束されることになる(
図15参照)。
【0028】
上記軸拘束部材4は、図示した例では、その長さが一例として床固定ベース1の左右端部にあるアジャスタ押え部2,3を含む床固定ベース1の全長の1/3弱程度の長さにしか形成されていない。勿論、軸拘束部材4の長さはこれに限定されるものではなく、適宜設定できるものである。これにより、アジャスタAjのボルト軸Asが短い場合、すなわち脚Lgの下端面LfとアジャスタAjの円盤状本体Adの上面Afとの間の隙間Gが少ない場合でも、後述するように軸拘束部材4を、当該床固定ベース1の上に載せて床固定ベース1の外端に向けてスライドさせることで、簡単に切欠4dの部位を隙間Gの間に挿入することができる。
このように、床固定ベース1の両端部に被せられた2つの軸拘束部材4,4の間の床固定ベース1の上にはすき間が生じる。そこで、本実施形態においては、
図6、
図7に示す中間部材5を前記すき間に装着し、床固定ベース1の上面の全域を被覆してしまうようにした。
【0029】
図6、
図7に例示する中間部材5は、前記軸拘束部材4と同じ材質で略同形態の断面略逆凹状に形成されていて、軸拘束部材4と異なるのは軸挿入用切欠4dに当る構成がない点だけである。従って、上面壁5a、前後の立壁5b、5c、床固定ベース1のビス穴に対応するビス穴5dを備えている。なお、中間部材5の長さは、両端のアジャスタ押え部2,3を含む床固定ベース1の全長と2つの軸拘束部材4の合計長との差によって決まる。図示していないが、2つの軸拘束部材4の合計長がアジャスタ部材2,3を含む床固定ベース1の全長と同等の場合には、中間部材5は不要である。
【0030】
本発明では、一対の脚Lgにおける夫々のアジャスタAjを、円盤状本体Adにおいてアジャスタ押え部2,3の内部に収めると同時に、軸受座Sbを軸挿入部2f、3fに挿入した状態で床固定ベース1に支持させるとき、その床固定ベース1をボルト穴1dからのアンカーボルトで床に固定し、このようにして床に固定した床固定ベース1に軸拘束部材4と中間部材5を被せて床固定ベース1を全面的にカバーし、カバーした前記両部材4,5を、そのビス穴4e、4fから床固定ベース1のビス穴1e、1fに固定ビスBをねじ込むことにより、床固定ベース1と一体化する。これにより床固定ベース1がアンカーボルトによって床に固定された床固定装置によって一対の脚を床に強固に固定することができるから、水平方向の外力の作用があっても両脚下端部間の距離の変動を防止することができる。
【0031】
家具の前後又は左右の一対の脚を一体的に床に固定する本発明床固定装置は、一例として、上述した床固定ベース1から中間部材5までの構成部材を備えて形成されるので、この床固定装置の装着態様の例を、
図9~
図15を参照して説明する。
【0032】
図9は、所定の設置位置に位置決めした家具(例えば実験台)の一対の脚Lg,Lg(図では左右に表われているが実際には前後の脚Lg)に、本発明床固定装置を装着するため、両端にアジャスタ押え部2,3を備えた床固定ベース1を、前記一対の脚Lg,LgのアジャスタAj,Ajに対して軸挿入部2f、3fを対応させて配置した状態の斜視図である。
【0033】
前記アジャスタAjは、作業台等の家具を設置するとき各脚LgのアジャスタAjの円盤状本体Adを回転してその家具の水平レベル出しを行う。このとき前記円盤状本体Adの上面Afと脚Lgの下端面Lfとの間にある隙間G(
図8参照)は、この隙間Gにアジャスタ押え部2又は3の上面壁2a又は3aと軸拘束部材4の上面壁4aを重ねて入れることができる上下幅の隙間Gに整えておく。この状態で前記床固定ベース1をアジャスタAj,Ajの側に押し込むと、アジャスタ軸Asの下端に位置する軸受座Sbが前記軸挿入部2f、3fに挿入される。
【0034】
上記のようにして前記床固定ベース1が、その両端のアジャスタ押え部2,3の内部(逆凹状部)にアジャスタAjの円盤状本体Adを収め終わったら、この床固定ベース1の底壁1aに設けた2つのボルト穴1d,1dから床にアンカーボルト(図示せず)を打込み、床固定べース1を床に位置決めし固定する。次いで前記床固定ベース1に対して2つの軸拘束部材4を、当該床固定ベース1の上に載せ(
図10参照)、それぞれに床固定ベース1の外端に向けてスライドさせ、夫々の切欠4dの部位を前記脚LgのアジャスタAjにおける前記隙間Gの間に挿入する(
図11、
図15参照)。このように、アンカーボルトは、軸拘束部材4によりカバーされるため、アンカーボルトが露出していて靴のつま先を傷つけることもなく、外観上もすっきりとして美しくなる。
【0035】
2つの軸拘束部材4の上記操作によって、この軸拘束部材4に設けられている軸挿入用の切欠4dの中にアジャスタ軸Asが入り込む。これによりアジャスタ軸Asは,アジャスタ押え部2,3の軸挿入部2f、3fと該軸挿入部2f、3fに直交した向きの前記軸拘束部材4の切欠4dの作用によって、位置が固定されると共にアジャスタ押え部2、3から脱抜することはできなくなる(
図15参照)。
【0036】
2つの軸拘束部材4が床固定ベース1の上で
図11の配置状態になると、床固定ベース1の上で2つの軸拘束部材4,4の間に隙間が残る。そこでこの実施形態では、当該隙間を中間部材5で埋めるように、中間部材5を床固定ベース1に被せるように載せる(
図12参照)。
【0037】
床固定ベース1の上に2つの軸拘束部材4と中間部材5が
図12に示すように整然とマウントされた状態になったら、各部材1,4,5の立壁1b、1c、同4b、4c、同5b、5cに、位置を対応させて設けた各ビス穴1e、1f、同4e、4f、同5d、5eに夫々に固定ビスBをねじ込んで締結することにより、前記床固定ベース1と2つの軸拘束部材4と中間部材5の4部材が、アジャスタAjを前記軸挿入部2f、3fと切欠部4dにおいて結合した状態で結合一体化される。(
図13参照)。
以上により、本発明床固定装置は、一対の脚を床に強固に固定することができるのである。
【0038】
また、本発明床固定装置は、特に上下昇降する電動式実験台又は作業台の、夫々が駆動力によって伸縮する4本の脚の床固定装置として極めて有効である。電動式実験台等の脚に使用されている昇降用アクチュエーターは、地震等の振動により側方負荷が掛かることで、大きな悪影響が及ぼされる。このため、特に脚を強固に保持する必要があり、4本脚のうち左右の前後2本に対し、同時に横方向から差し込み前後方向の動きを規制保持するアジャスタ押え部2,3を備えた床固定ベース1と、床固定ベース1に被せて左右方向を規制保持する軸拘束部材4で構成される本発明固定装置は、脚を前後左右ともしっかりと保持できる。
【0039】
以上の説明は、下端にアジャスタを備えた脚の床固定装置についての例であるが、本発明はアジャスタを備えない脚下端部に適用することも可能である。アジャスタを備えない脚下端部は、図示しないが、脚の下端部が、その脚下端とそれより上方部位の境界が小径の首部を介して形成されており、前記首部より下方がアジャスタに相当し前記首部がアジャスタ軸に相当するものとして、前記のアジャスタ押え部、床固定ベース、軸拘束部材を適用すればよい。また、本発明床固定装置が適用できる家具は、上記した実験台や作業台に限られず下部に脚を有する家具、例えば箱状家具等にも適用することができる。
【0040】
本発明は以上の通りであって、家具の一対の脚における夫々のアジャスタに被さる断面が略逆凹状をなし且つ前記アジャスタと脚を結合しているアジャスタ軸を挿入できる切欠状の軸挿入部が前記逆凹状の上面に形成されたアジャスタ押え部と、前記一対の脚の距離に見合う長さを有し両端部に前記アジャスタ押え部を一体に備えて床に固定される床固定ベースと、前記アジャスタ押え部を含む床固定ベースに被せて固定される部材であって断面が略逆凹状なし且つ前記切欠状の軸挿入部と交差する向きの軸挿入用の切欠を備える前記アジャスタ軸の拘束部材とによって床固定装置を形成したから、家具の一対の脚を一体的に床に強固に固定する装置として有用であり、またこの床固定装置の外面には突起部が無いから見映えに優れるのみならず、歩行時に前記床固定装置に足が引っ掛るようなこともない。
【符号の説明】
【0041】
1 床固定ベース
2、3 アジャスタ押え部
4 軸拘束部材
5 中間部材
Lg 脚
Aj アジャスタ