IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図1
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図2
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図3
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図4
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図5
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図6
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図7
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図8
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図9
  • 特許-環境負荷低減型外気導入システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】環境負荷低減型外気導入システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 9/00 20060101AFI20220601BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220601BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
F24F9/00 E
F24F7/06 C
F24F9/00 A
F24F9/00 L
F24F9/00 M
B01L1/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018032985
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019148371
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】岩村 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】信藤 邦太
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/072558(WO,A1)
【文献】特開平07-034763(JP,A)
【文献】特開2012-083083(JP,A)
【文献】実公昭48-031008(JP,Y1)
【文献】米国特許第04134394(US,A)
【文献】実開昭54-074358(JP,U)
【文献】実開昭61-145236(JP,U)
【文献】実開平04-065127(JP,U)
【文献】特開2015-150465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 9/00
F24F 7/06
B01L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を室内に取り込んでドラフトチャンバーの開口部に向けて吹き出すエアカーテンを外気高濃度層と室内空気高濃度層としたエアカーテンを形成するドラフトチャンバー用の給気ユニットであって、
外気に連通する外気筒と空気の吹き出し口を備え、
外気筒と吹き出し口の間に室内に面する吸引口を設け、吸引口より上流側に外気流を増速する絞り機構が設けられており、外気の空気流によって吸引口から室内空気を給気ユニット内に引き込み、外気と室内空気からなるエアカーテンを生成することを特徴とする給気ユニット。
【請求項2】
給気ユニットの空気の吹き出し口に吹き出すエアの方向を規制する吹き出しグリルを備えていることを特徴とする請求項1記載の給気ユニット。
【請求項3】
給気ユニットには、気流の流れる方向上流側より、整流板、誘引板、吸引口、吹き出しグリルを備えており、
整流板は、多数の細孔を備えており、
誘引板は、整流板を通過した気流を絞る絞り開口が設けられており、
吹き出しグリルは、吹き出すエアの方向を規制するルーバーを備えていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の給気ユニット。
【請求項4】
吸引口と空気吹き出し口の間に傾斜板を設けたことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の給気ユニット。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載された給気ユニットをドラフトチャンバーの開口面の上方に配置したことを特徴とする環境負荷低減型外気導入システム。
【請求項6】
給気ユニットから吹き出されるエアカーテンが複層流であって、ドラフチャンバーの開口面側が外気高濃度層であり、室内側が室内空気高濃度層に形成されており、
ドラフトチャンバーの開口面の面風速が0.4m/sec以上に制御されていることを特徴とする請求項記載の環境負荷低減型外気導入システム。
【請求項7】
室内を循環する空気は、室内空気高濃度層を含むことを特徴とする請求項記載の環境負荷低減型外気導入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物空調エネルギ―ロスを低減する技術に関する。特に、ドラフトチャンバーの設置に伴う建物空調エネルギ―ロスを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラフトチャンバーは、実験室内で発生する有害ガス・蒸気・臭気や粉塵を、室内に分散しないように発生源で捕捉する囲い式の実験室用局所排気装置である。使用される薬品や用途により法規制がある。近頃、健康に配慮して、ドラフトチャンバーから有機溶媒がチャンバー内から室内に漏れ出すことを防止するためにサッシ前面の面風速を上げることとなった。
この改正では、一般的には実験作業を行う開口部分の面風速を確保することが求められている。
例えば、特定化学物質等障害防止予防策規則では、囲い式フードタイプのドラフトチャンバーでは、ガス状物質に対しては、0.5m/sec以上、粒子状物質に対しては1.0m/secであり、有機溶剤中毒予防規則では、0.4m/secとなっている。それぞれの対象薬物も規定されている。
ドラフトチャンバーには、吸気機能がない定量排気を主とするタイプがあり、吸気機能が無いため、部屋の大きさによって設置台数に制限が生ずる。また、常時定量排気のため空調空気のロスが大きくなる。
ドラフトチャンバーから排気される室内の空調された空気を外気によって補給し、省エネをはかる方式としてエアカーテン方式がある。安定した面風速が得られず、使用は限られている。
特許文献1(特開平7-34763号公報)には、ドラフトチャンバー本体2の前面上部にエアカーテンボックス7を設け、その上面に形成した給気口9に実験室外に連通して外気を強制的に供給する給気ダクト8を連結し、下面と背面にはそれぞれ下面側送気口14と背面側送気口15とを設けるとともに、給気ダクト8から強制的に供給される外気の送気滞留手段として、エアカーテンボックス7内の通気路10を塞ぐ状態で通気性素材からなる抵抗板21、22、23を複数段に設け、最下段の抵抗板23はドラフトチャンバー本体2の前面開口部3に向けて傾斜した状態に設けたドラフトチャンバーが開示されている。このドラフトチャンバーは、エアカーテン式ドラフトチャンバーにおいて、エアカーテンボックスから供給される外気の風速を全体にムラなく、しかも平均的に遅くすることにより、実験者に不快感を与えることなく、しかも室内の空調を乱すことなくドラフトチャンバーの処理室内を効果的に排気できると記載されている。
特許文献2(特開2015-9187号公報)のドラフトチャンバーでは、作業空間で作業を行うために低風量の空気を作業空間に送る低風量ドラフトチャンバーであり、作業空間に空気を送るファンと、作業空間との間には、ファンからの空気を整流する整流手段としての整流部材が設けられた低風量ドラフトチャンバーが開示されている。このドラフトチャンバーでは、作業者が実験や作業を行うための作業空間内に、空気を低風量ドラフトで通過させて、ドラフトチャンバー内の雰囲気が外部に漏れないようにすることができると記載されている。
特許文献3(特開2007-175583号公報)には、平面視略矩形の作業空間Sの外周部のうち少なくとも一方面に開口部2を有する本体1と、前記作業空間Sの空気を上方に吸引除去する排気手段11とを備えて、前記作業空間Sの周囲のうち平面視中央部を挟んで相対向する部位に、作業空間Sの中央部に向けて空気を噴出させる噴気口25(31)を設けることにより、有毒ガス類の排出除去性に優れたドラフトチャンバーが実現すると記載されている。
特許文献4(特開2008-229474号公報)には、筐体の上方に吸気ファンを設け、下方に排気ファンを設けたドラフトチャンバーが開示されている。
特許文献5(特開2010-115580号公報)には、ドラフトチャンバーの前面の上方端部に水平方向に伸びるフードを設けることにより、空調機の吹き出し口より吹き出る風が、ドラフトチャンバーに流入する流れに当たらないようにしてドラフトチャンバーに流入する空気流に乱れを生じないようにして、ドラフトチャンバー内より有毒ガスが漏れ出ることを防止すると記載されている。
【0003】
室内に有害物質が拡散しないように面風速を確保しようとして、ドラフトチャンバーの吸引力を上げ、排気量を大きくした結果、ドラフトチャンバーを設置している室内の空調された空気の排出量が増加し、空調負荷が増加している。すなわち、環境負荷が増加する結果となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-034763号公報
【文献】特開2015-009187号公報
【文献】特開2007-175583号公報
【文献】特開2008-229474号公報
【文献】特開2010-115580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ドラフトチャンバーなどの吸引・排気能力増に伴う、室内の空調空気が吸引・排気されることを低減する環境負荷低減型外気導入システムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外気供給ユニットに室内の空気を誘引する開口を設けて、ドラフトチャンバーの開口部に向けて吹き出すエアカーテンを外気高濃度層と室内空気高濃度層としたエアカーテンを形成したものである。
本発明は、ドラフトチャンバーに吸い込まれる気流は外気部分が主となり、室内を循環する気流は空調された空気が主となるので、室内の空調空気が吸引・排気されることが減少した環境負荷低減型外気導入システムを提供する発明である。さらに、室内空気高濃度層がドラフトチャンバーの利用者に当たるので、空調されていない高温や低温の外気に曝されにくく、作業環境も良好である。
本発明の主な構成は次のとおりである。
1.外気を室内に取り込んでドラフトチャンバーの開口部に向けて吹き出すエアカーテンを外気高濃度層と室内空気高濃度層としたエアカーテンを形成するドラフトチャンバー用の給気ユニットであって、
外気に連通する外気筒と空気の吹き出し口を備え、
外気筒と吹き出し口の間に室内に面する吸引口を設け、吸引口より上流側に外気流を増速する絞り機構が設けられており、外気の空気流によって吸引口から室内空気を給気ユニット内に引き込み、外気と室内空気からなるエアカーテンを生成することを特徴とする給気ユニット。
.給気ユニットの空気の吹き出し口に吹き出すエアの方向を規制する吹き出しグリルを備えていることを特徴とする1.記載の給気ユニット。
.給気ユニットには、気流の流れる方向上流側より、整流板、誘引板、吸引口、吹き出しグリルを備えており、
整流板は、多数の細孔を備えており、
誘引板は、整流板を通過した気流を絞る絞り開口が設けられており、
吹き出しグリルは、吹き出すエアの方向を規制するルーバーを備えていること、
を特徴とする1.又は2.に記載の給気ユニット。
.吸引口と空気吹き出し口の間に傾斜板を設けたことを特徴とする1.~.のいずれかに記載の給気ユニット。
.1.~.のいずれかに記載された給気ユニットをドラフトチャンバーの開口面の上方に配置したことを特徴とする環境負荷低減型外気導入システム。
.給気ユニットから吹き出されるエアカーテンが複層流であって、ドラフチャンバーの開口面側が外気高濃度層であり、室内側が室内空気高濃度層に形成されており、
ドラフトチャンバーの開口面の面風速が0.4m/sec以上に制御されていることを特徴とする.記載の環境負荷低減型外気導入システム。
.室内を循環する空気は、室内空気高濃度層を含むことを特徴とする.記載の環境負荷低減型外気導入システム。
【発明の効果】
【0007】
1.本発明は、外気を室内に導入する給気ユニットであって、ドラフトチャンバーなどの機器に外気を主に供給する給気ユニットを提供する。室内の空調してある空調空気層と外気層の混合濃度が片寄るエアカーテンを作りだして、ドラフトチャンバーには外気濃度が濃い部分を吸い込ませ、空調空気が濃い部分は室内循環できるようにしたものである。
この結果、ドラフトチャンバーのように吸引して排気する機器を使用する場合、室内の空調空気が吸引・排気されることを低減する環境負荷低減型外気導入システムを実現できる。つまり、空調しているエネルギーの損失がなく、省エネルギーである。
2.本給気ユニットから作られる外気層部分と空調空気層部分とを有するエアカーテンであって、空調空気層部分に作業員が位置するように配置することにより、作業員の環境を良好に保つことができる。冬季の寒い外気や夏季の暑い外気に曝されることがない。
3.特に、ドラフトチャンバーの面風速は、室内側に有機溶媒などが漏れないように高く改訂されたので、排気量が増加している。この面風速を確保しつつ、室内空気の排気量を少なくし、給気ユニットから導入した外気を、ドラフトチャンバーを通して排出することによって、建物の空調システムの負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】給気ユニットとドラフトチャンバーを組み合わせた図を示す。
図2】給気ユニット接合ドラフトチャンバーの構造と空気流を示す図。
図3】給気ユニットの構造を示す図。
図4】給気ユニットの斜視図と要部拡大図を示す。
図5】供気ユニット付きドラフトチャンバー斜視図(一部破断図)を示す。
図6】サッシ開口面の面風速測定試験を示す図。
図7】エアカーテン風速計測試験結果を示す図。
図8】エアカーテンの空気の流れと温度分布を示す図。
図9】ドラフトチャンバー設置設備空調フロー概略図。
図10】従来例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ドラフトチャンバーなどに外気を供給する給気ユニットである。ドラフトチャンバーなどの機器は、有機溶媒などの有害物質が室内に漏れないように、吸引して排気することが規定されている。近頃、作業用の開口部の面風速が引き上げられ、排出される空気も増加している。これに伴い空調している室内の空気も排気されるので、建物空調負荷も増大している。
一方、ドラフトチャンバーでは、エアカーテン方式は普及しておらず、面風速の確保と外気による外乱を防止することはできていない。
【0010】
本発明は、給気する外気と室内の空気を筐体内に取り込んで、外気層部分と空調空気層部分の層構成からなるエアカーテンを作りだす給気ユニットである。
本発明の給気ユニットは、ダクトを通して戸外から取り込まれた外気を筐体内の上流で整流し、筐体の中程側面に設けた開口から室内の空気を取り込み、ドラフトチャンバーなどの吸引開口に対して、離れる方向に付勢して吹き出すエアカーテンを作る。
この給気ユニットは、給気ユニットの筐体内で上流側から入って、吹き出し口からはき出されて形成されるエアカーテンの途中に筐体の正面に設けた開口から室内の空気を引き込んでエアカーテンの一部にするものである。本発明は、風速の速い外気の流れに室内の空気が引き寄せられるという現象に着目したものである。
外気は、ファンなどの動力で押し出されているので乱流状態であり、乱流に室内空気が引き込まれるので、必ずしも層にならず、外気と室内空気が団子状態あるいは混合状態で流れることとなる。本発明は、最初に外気を、細孔を通して一様な状態に整流して、その整流を加速して流下させ、開口から室内空気を引き込むことによって、外気層部分と室内空気部分の層になる空気流を作った。
室内空気を取り込んだ気流は傾斜板で狭められた断面を通過してさらに風速が上がり室内空気の誘引力が増加する。
そして、エアカーテンの吹き出し方向をグリルで室内側に角度を付けることによって、外気部分がドラフトチャンバーの開口部の下方まで届くようにしている。
その結果、ドラフトチャンバーには外気部分が吸い込まれ、空調空気部分は作業員に沿って下流して、室内を循環するように流れる。
【0011】
本発明の概略を図1に示す。
建物内に設けられた実験室などにドラフトチャンバー100が設置される。このドラフトチャンバー100に給気ユニット1が取り付けられる。給気ユニット1は外気を取り込む外給気110につながっている。給気ユニット1の側部中頃には誘引開口2が設けられ、下端からエアカーテン130が吹き出している。
ドラフトチャンバー100の前面にはサッシ開口102が設けられており、作業者が開口から作業ができるようになっている。ドラフトチャンバーの上面から排気されて排気系120につながっている。建物の吸排気系は図9に示すように、外気を取り入れる系と除染して排出排気系になっている。
この給気ユニットの上部から取り入れられた外気が流れ下る途中で吸引開口から室内の空気を引き込んで下部からエアカーテンを吹き出す。エアカーテンのドラフトチャンバー側の流れはサッシ開口から吸い込まれて、排気される。吸引開口から引き込まれた室内空気は作業員側に流れ、外気はドラフトチャンバー側に流れるエアカーテンが形成される。したがって、外気の層からドラフトチャンバー内に吸い込まれることとなる。図1(b)に示すエアカーテン気流は、試験例に示された例である。なお、図1(b)に示す空気の流れは、図1(a)のドラフトチャンバーの向きと逆である。
したがって、エアカーテンを備えていないドラフトチャンバーに対して、建物に敷設した外気導入タイプの給気ユニットを取り付けることにより、空調空気の排気を低減できる環境負荷低減型外気導入システムとなる。
【0012】
[実施態様1]
給気ユニット1をドラフトチャンバー100に取り付けた実施態様を図2~8に示す。 給気ユニット1の構造断面を図3に示す。筐体11の裏面上方に外気筒12、前面中間に吸引口2、下部に吹き出しグリル6、下面に吹き出し口13が設けられている。内部の上方に整流板3、吸引口2よりも上方に誘引板4、吸引口2よりも下方で奥面に傾斜板5が設けられている。なお、給気ユニット1の方向性は、ドラフトチャンバーに取り付けられた状態で、作業用開口側(すなわち、作業員が立つ側を「前方」)とする。
各部材を図3(b)に示す。
外気筒12は、角筒状の空調用ダクトにつながった拡幅ダクトであり、本例では、2つ設けてある。整流板3には細孔が多数設けられたパンチングメタルのような小孔板31が用いられる。誘引板4には外気流を絞って加速する絞り開口41が複数形成されている。
吸引口2は、やや内面側が下方に傾斜した複数の板が平行してスリット状に設けられている。本例では、スリットは、幅方向に分割されている。複数の板は開閉が調整できるルーバー機能を設けることができる。吸引口2は、誘引板4より下方に配置されている。
傾斜板5は、下方に傾斜した板体で、本例では複数枚設けられている。この傾斜板5は、吸引口2よりも下方に位置している。傾斜板の数は任意である。筐体内を流れる気流は傾斜板に案内されて、方向が変わり、下方のグリルの傾斜方向に沿う方向になって、安定した吹き出し方向となったエアカーテンが生成される。
吹き出しグリル6は、多数の板体で形成されている。本例では、前方に傾斜して設けられている。格子状にして、空気の流れを分割しても良い。
【0013】
図4に給気ユニット1の斜視図(a)と内部機構拡大図(b)を示す。
筐体11の後面上方に外気筒12が設けられ、全面中間部に複数の三角形開口を並べた吸引口2が設けられ、筐体の下部が開口している。外気筒12から入った外気と吸引口2から進入した室内空気が下部の開口からエアカーテンとなって吹き出す。吸引口2に設けたルーバーを開閉すると吸引口から引き込まれる室内空気の量を調整することができる。
筐体11の内部には、上方から順に整流板3、誘引板4、傾斜板5、吹き出しグリル6が設けられている。
図示の例では、整流板3は小孔が多数設けられた2枚の板体である小孔板31で構成されている。誘因板4には、大きな開口である絞り開口41が設けられている。吹き出しグリル6には、平行に薄板が傾斜可能に設けられている。
【0014】
この給気ユニット1と組み合わせるドラフトチャンバー100の例を図2に示す。図5に、その斜視図を示す。
ドラフトチャンバー100は、一般的なものであって、ボックス体であり、ドラフトチャンバーの庫内101は上下に三段に分かれている。中間には作業しやすい高さに作業面103が設けられ、上方を仕切って排気開口がけられている。中間の空間が作業用空間105となる。作業空間105に作業員Mがアクセスできるように開口102となっており、開口102を開閉するシャッター104が設けられている。この開口102を通常サッシ面と称している。背面排気路106が背面側に設けられている。
ドラフトチャンバーは、作業空間105で発生する有毒ガス、蒸気、臭気や粉塵等の有害物が室内に拡散しないように発生源で捕捉する囲い式の実験用局所排気機能を果たす。このような有害物質が室内に拡散しないように、背景技術の項で説明したとおりサッシ面の面風速が規定されている。
このドラフトチャンバー100の気流の流れの概略を説明する。
庫内101を流れる風量の総量はドラフトチャンバー外へ排気される排気140の量で決まる。給気箇所は、開口102から進入する面風141が主であり、本例では、作業台の下面エプロン122から取り入れる下面風142を補助としている。この、下面風142は必ずしも必要ない。なお、下面風142は作業面123の下部に設けられている下面風案内部145から送り出される。
作業空間105に取り込まれた空気は、有害物質を含む庫内風143となって、作業空間105の背面に設けられている背面排気路106を通って、上昇して排気140となって、ドラフトチャンバー外へ送られる。この有害物質を含む排気は、そのまま外気へ放出できないので、建物にはスクラバーなどの排気処理装置(図9参照)が設けられている。
【0015】
図2に給気ユニット1とドラフトチャンバー100を組み合わせた状態での空気の流れが示されている。ドラフトチャンバー100の開口102(シャッター104)の上方に給気ユニット1を取り付ける。この状態で、給気ユニット1内とエアカーテン及びドラフトチャンバー内の空気の流れを説明する。
給気ユニット1の外気筒12から取り込まれた外吸気110は、整流板3で乱流状態から一様な状態に整流される。少なくともダクトから拡幅した外気筒12によって、広がった外吸気111は筐体上部では乱流となっている。乱れた状態で引き込まれた室内空気と触れると混じり合ったり、蛇行状態になる。この乱流状態の外気を、整流板を通して制御して直進流とする。本例では、細かい開口の小孔板31を通して、乱流の勢いを消した多くの細流にする。大きな絞り開口41を備えた誘引板4を通して、細流をまとめて速い風速の外気の流れとして下方に流す。
加速された外気の風速によって負圧が発生し、誘引開口2から室内空気113が引き込まれる。吸引口2から引き込まれた室内空気と外気による気流112となる。このとき吸引口2は水平方向に複数設けられたスリットから引き込まれるので、上段スリットから下段のスリットによって発生する層流が外気流に順次接触した気流となっている。誘引板を通過した外気は、太い束になっていて勢いがあるので、引き込まれた室内空気113の押圧によってかき乱されることなく、両者は層状となって下方に流れることとなる。
【0016】
次いで、気流は傾斜板5によって、狭くなった断面空間を通過することによって、風速はさらに加速し、吸引口2からの誘引力が大きくなって、修正気流114となる。図示の例は、傾斜板は3段に設けているが、設置場所や段数は、エアカーテンの流れや、ドラフトチャンバーに引き込まれる吸気(面風速)、誘引室内流等の要因によって、決定される。
吹き出し口13には、吹き出しグリル6が設けられている。この吹き出しグリルを形成する長手方向の板体は外向きに傾斜していて、エアカーテン130はドラフトチャンバーの開口面から離れる方向に付勢された層流になるようになっている。ドラフトチャンバーの開口の下部まで、エアカーテン、特に、高濃度外気が下部まで届くようにエアカーテンの角度を外向きしている。
エアカーテンは、ドラフトチャンバー側に近い内面気流131と外面気流132に分けると、内面気流131は外気111が高濃度であり、外面気流132は室内空気113が高濃度に形成されている。ドラフトチャンバー100の開口102に沿って流下する内面気流131はドラフトチャンバーに順次引き込まれ、外面気流132は作業員の足許まで流下して、室内に循環する。
エアカーテンが層流状態となっていること、ドラフトチャンバー側から内部に引き込まれること、流れる気流の温度分布は、図8に示す試験結果によって、確認されている。
本例ではさらに、グリルはメッシュ状に形成されて、細かい流れにして、作業員に対する当たりを柔らかくしている。
【0017】
給気ユニット1の各構成部材は、取り入れられた外気と室内空気を層状態にしたエアカーテンに形成するものである。外気はファンなどの動力を使って取り込まれる。
前述のように、給気ユニットは、外気ダクトを通して取り込まれて乱流となっている外気を一旦細かい細流に分割して乱れの勢いを消す。その後、複数の大きな絞り開口を設けた誘引板を通過させて、外気は加速された大きな束の速い風速の気流となる。
ファンの回転や風の影響で取り込まれたダクト内の気流は脈をうったり、ダクトから筐体上部で広がることによって乱流となる。これを小孔を通して気流に抵抗をかけて、流れ出る風力を小さく分割して、風速と風向を整える。小孔板は、図示の例では、板状体に小さな円形の開口を多数設けているが、開口は、厚みのある板に筒状に孔を掘削して設けても良い。開口の形もハチの巣状の六角形などでも良い。ハニカムコア材を用いることもできる。また、整流板は複数枚設けて、調整することもできる。材質は、金属、樹脂、紙が用いられる。
【0018】
誘引板は、整流板よりも大きな開口としている。大きい開口から吹き出して外気を大きな束とする。
また、整流板の開口率よりも誘引板の開口率を小さくすることで、風圧を上げて吹き出すことができる。誘引板を通過した外気流は、次の過程で風速差を利用して室内の空気を給気ユニットに引き込む機能を果たすので、風速を確保する必要がある。なお、本発明者は、誘引板を設けずに外気を流す試験も行ったが、引き込まれる室内空気が安定せず、外気が吸引口から吹き出すこともあった。
誘引板の材質、形状は、整流板と同様である。
整流板と誘引板は複数種類準備して、ドラフトチャンバーとあわせて調整することが可能である。
【0019】
傾斜口2は、本例では給気ユニット1の前面側に設けられている。吸引口には、複数の水平スリットが形成されている。筐体11の上方から流下する外気とスピード差によって吸引口から室内の空気が筐体内に取り込まれる。スリットを形成する板を傾斜させて取り込まれる空気を下方に誘導するようにする。これによって、外気と室内空気が混じり合うのを抑制し、外気層と室内空気層を保つようしている。
複数のスリットとすることによって、乱れの無い平行流を形成することができる。また、スリットの巾方向を分割して、短い気流を作り、外気流への影響を小さくして外気と室内空気の流れが層となるようにする。
【0020】
傾斜板5は外向きに傾斜している吹き出しグリル6に向けて気流方向を変更させる機能を果たしており、グリルから乱れのない平行な層状のエアカーテン130を形成する。なお、吸引口2から侵入する室内空気によって筐体を流れる気流が奥側に押される気流を、傾斜板によって、押し戻してグリルと共同してエアカーテンの吹き出し方向を制御する。
吹き出しグリル6は、外向きに傾斜させて設置して、エアカーテンがドラフトチャンバーの吸い込み力に抗して、ドラフトチャンバー開口面をやや湾曲して下降して吹き出すように付勢している。
エアカーテン130は、室内空気が主となる層である内面気流131と外気が主となる層である外面気流132で構成されることとなる。
内面気流131は作業員側を流れて、室内を循環する。また、作業員に対して、寒暖差による悪影響を抑制する。
ドラフトチャンバーの開口面に添って流れる外面気流132は、ドラフトチャンバーの開口102から面風141となって庫内に取り込まれて、外気が室内に拡散することを抑制する。
したがって、ドラフトチャンバーから排気される室内空気を減少させることができるので、空調用のエネルギーの損耗を防止できる環境負荷を低減する外気導入システムを実現することができる。
【0021】
なお、本発明の検討の過程で外気の供給形式について種々のタイプを検討した。
検討した供給タイプは、例えば、(a)ドラフトチャンバーの天井面から外気を吹き出すたタイプ、(b)上下から吹き出すタイプ、(c)左右の両側から吹き出すタイプ、(d)上下と両側から吹き出すタイプ、(e)上フードタイプ(本発明のプロトタイプ)をシミュレーションした。
サッシ開口面における風速分布、外気の吸い込み(排気)率、作業者周辺の温度分布、等を評価した結果、上フードタイプが外気吸い込み率と面風速の点で他のタイプよりも優れていた。この結果に基づいて、さらに作業環境の改善など完成度を高める検討を行った。
【0022】
〈試験1〉
(ドラフトチャンバー面風速試験)
(1)図6(a)に示される次の条件でドラフトチャンバーの面風速を測定する試験を行った。
開口面:400×1640mm
測定ポイント箇所:8点
測定起点:左辺下端
センサー配置:巾方向:205mmから410mmピッチ
高さ:B列100mm、A列300mm
風速条件
排気風量:1200m3/h
エアカーテン吸気風量:1200m3/h
【0023】
(2)図6(b)に示す試験結果が得られた。
最大面風速が0.72m/s、最小面風速が0.5m/s、平均面風速が0.63m/sとなり、特化則における最小面風速0.5m/s以上の条件を満たしていることがわかる。
特に、上方開口であるA列は0.70m/s以上の風速であった。下方開口は0.50~0.60m/sであった。上下ともバラツキの少ない風速が実現されて、安定している。
吸排気同量に設定しているので、ドラフトチャンバー開口面に沿った部分からドラフトチャンバー庫内に引きまれていることがわかる。外気と室内空気が層状になったエアカーテンが形成されていることを試験2、3で確認する。
【0024】
〈試験2〉
(室内空気吸引量試験)
本試験に用いる給気ユニットは、全幅が1800mm、奥行き220mmである。吸引口2には、開閉可能なルーバーが設けられており、本試験では、ルーバーの開閉によって、室内空気の吸引量を確認する。
給気ユニット1の下端の吹き出し口13に風速測定センサーを10個設置して、エアカーテンの風速を測定した。センサーの配置は、両端のセンサーは両端から22mmの位置とし、10個のセンサーを195mm等間隔に配置した。吹き出し口を10分割してそれぞれの風速に基づいて、時間単位の吹き出し口全体の風量を算出する。
試験風量は、吸引口2を全開した状態でエアカーテン風量を1200m/hに設定した状態で、吸引口2のスリットを半開、全開として行った。
【0025】
その結果を図7に示す。図7には、分割区分について、最大風速、最小風速、平均風速、風速偏差、全体風量が示されている。この値は、3回計測した平均である。
この結果、吸引口を全開すると室内空気は147m/hであって、約12%取り込まれている。半開では、84m/hであって、約7.4%取り込まれている。本発明の室内空気吸引効果が確認されている。
【0026】
〈試験3〉
(エアカーテンの流れと温度分布シミュレーション)
給気ユニット1をドラフトチャンバーに取り付けた状態でのエアカーテンの流れと温度分布についてシミュレーションした結果を図8に示す。図8(a)が夏季の設定、図8(b)が冬季の設定である。
設定条件は、外気の給気量とドラフトチャンバーの排気量は同量の1200m/h、室内設定温度(夏季26℃、冬季22℃)、給気(外気)温度(夏季34.6℃、冬季0.5℃)とする。室内空気の吸引風量は、排気量との差によって算出され、夏季は排気が1800m/h、冬季は1920m/hであるのでそれぞれ、室内空気の吸引量は600m/h、720m/hとなっている。
【0027】
図8(a)に夏季のエアカーテンの流れと温度分布が示されている。
ドラフトチャンバーの開口面に沿って流れるエアカーテンの気流は、ドラフトチャンバー開口面から吸い込まれて、排気口から排気されており、空調された室内空気がドラフトチャンバーの開口から直接取り込まれない様子が分かる。作業員に沿って流れる気流は、作業員の足下まで流れて室内側に流れている。
34.6℃で給気された外気が26℃の室内空気が誘引され、作業員の前面に沿った温度は顔付近で27℃、腿付近では29℃、足下では30℃となって、室内側に流れている。
ドラフトチャンバーの排気は30℃であって、空調された室内空気が34.6℃で給気された外気と混入していることが確認できる。
【0028】
図8(b)に冬季のエアカーテンの流れと温度分布が示されている。
ドラフトチャンバーの開口面に沿って流れるエアカーテンの気流は、(a)と同様であって、ドラフトチャンバー開口面から吸い込まれて、排気口から排気されており、空調された室内空気がドラフトチャンバーの開口から直接取り込まれない様子が分かる。作業員に沿って流れる気流は、作業員の足下まで流れて室内側に流れている。
0.5℃で給気された外気が22℃の室内空気が誘引され、作業員の前面に沿った温度は顔付近で22℃、腿付近では16℃、足下では14℃となって、室内側に流れている。
ドラフトチャンバーの排気は10℃であって、空調された室内空気が0.5℃で給気された外気と混入していることが確認できる。
【0029】
このシミュレーション結果から、給気された外気がドラフトチャンバー側に吸い込まれて排気されることが明確になった。また、エアカーテンは床まで達して流れている。床まで達する流れには外気が含まれていて、ドラフトチャンバーから排気される空調された室内の空気量は、少ないと想定される。
すなわち、本発明は、ドラフトチャンバーに吸い込まれる気流は外気部分となり、室内を循環する気流は空調された空気となるので、室内の空調空気を最低減吸引・排気可能な環境負荷低減型外気導入システムとなっている。給気ユニットに、室内の空気を誘引する開口を設けて、ドラフトチャンバーの開口部に向けて吸気されていて、外気高濃度層と室内空気高濃度層となっているエアカーテンが形成され、室内空気高濃度層がドラフトチャンバーを使用する作業者に沿って流れ、空調されていない高温や低温の外気に曝されることがなく、作業環境も良好に保たれることが分かる。
本発明は排気による空調エネルギーの損失は抑制されると共に、作業環境も良好にたもたれる。
【0030】
(比較試験)
図10に示す、現在一般的に用いられているエアカーテンが付属していないドラフトチャンバーの気流を図10(b)に示す。このドラフトチャンバーは、温湿度調整された外気を室内に吹き出す必要があり、その外気処理のためにエネルギー消費量が膨大となってしまう。なお、図10(b)に示される気流の流れは、図10(a)に示すドラフトチャンバーとは逆向きに設置されたドラフトチャンバーによる試験を示す。
【0031】
[実施態様2]
本実施態様は、ドラフトチャンバーなどの実験室などの建物の室内に設置される排気を必要とする機器へ外気を導入する給気ユニットを設ける空調のフローである。図9に空調フロー図を示す。
建物の実験室Aにはドラフトチャンバーが3台、実験室Bにはドラフトチャンバーが2台設置されている。
建物には外気給気系SAが設けられ、ファンなどの動力を備えた外調機から外気を取り込んで、実験室のドラフトチャンバーなどに供給する。
排気系EAは、ドラフトチャンバーなどの機器からの排気を屋外に設けられたスクラバーなどを備えた排気処理装置から排出される。
排気処理装置では、排気に含まれる有害物質をトラップあるいは無害化して、大気中に放出される。
一方、実験室には、温度管理された空調エアが供給されている。
本実施態様で示すように、外気がドラフトチャンバー等の機器に供給され、ドラフトチャンバーなどに吸気されて、排出されるので、空調エアの排出は抑制されている。
これによって、環境負荷低減型外気導入システムが実現されている。
【符号の説明】
【0032】
1 給気ユニット
11 筐体
12 外気筒
13 吹き出し口
2 吸引口
3 整流板
31 小孔板
4 誘引板
41 絞り開口
5 傾斜板
6 吹き出しグリル
100 ドラフトチャンバー
102 サッシ開口
103 作業空間
106 背面排気路
110 外吸気
111 外吸気
112 外気による気流
113 室内空気
114 修正気流
120 排気
122 エプロン
123 作業面
130 エアカーテン
131 内面気流
132 外面気流
132a 室内還流
140 排気
141 面風
142 下面風
142a 下部取込風
143 庫内風
144 背面排気
145 下面風案内部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10