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  • 特許-熱伝導性無機基板及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】熱伝導性無機基板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220601BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220601BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 F
H01L21/52 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018050091
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019161189
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】393017111
【氏名又は名称】神鋼リードミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】田内 裕基
(72)【発明者】
【氏名】三井 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】田尾 博昭
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109294(JP,A)
【文献】特開2016-146458(JP,A)
【文献】実開昭58-032642(JP,U)
【文献】特開2007-096042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0084510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 23/12 - 23/13
H01L 23/36 - 23/373
H01L 23/495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に半導体素子を実装するための領域を有し、この実装領域に接合材を介して半導体素子を実装する熱伝導性無機基板であって、
上記実装領域内に、表面側から深さ方向に向かって開口面積が漸減する凹部を有し、
上記凹部が、内周面に表面側から深さ方向に向かって上記凹部の開口幅を漸減させる複数段のテーパ部を有する熱伝導性無機基板。
【請求項2】
上記実装領域の表面における上記凹部の開口幅が1mm以上10mm以下である請求項1に記載の熱伝導性無機基板。
【請求項3】
上記凹部の深さが0.05mm以上0.5mm以下である請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性無機基板。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の熱伝導性無機基板と、
半導体素子と
を備え、
上記半導体素子を上記実装領域に実装する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性無機基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体素子は、電流により駆動される際に熱を発生する。近年、モータ駆動等の用途に供する半導体素子では、高い電流密度の電流が用いられる傾向があり、半導体素子における発熱は増大する傾向にある。
【0003】
半導体素子の放熱を促すため、通常、半導体素子は、金属基板等の熱伝導率の大きい熱伝導性無機基板上にはんだ等の接合材を介して実装される。半導体素子から熱を取り除く機構としては、半導体素子とヒートシンク等の放熱器とが熱伝導性無機基板を介して熱的に接続される機構や、半導体素子を実装する熱伝導性無機基板自体が大気等に直接放熱する機構が知られている。
【0004】
ところで、半導体素子の放熱を促す熱伝導性無機基板は、金属等の熱伝導率の大きい材料により形成されるので、一般的に半導体素子よりも熱膨張率が大きい。また、半導体素子が熱伝導性無機基板上に実装される際には、はんだ等の接合材を融解するために半導体素子の実装領域周辺が高温に加熱される。このため、半導体素子が熱伝導性無機基板に実装された後、半導体素子の熱膨張率と熱伝導性無機基板の熱膨張率とが相違することに起因して、半導体素子と熱伝導性無機基板との間に残留応力が発生しやすい。
【0005】
半導体素子と熱伝導性無機基板との間で発生した残留応力は、半導体素子に反りを生じさせる。半導体素子に反りが生じている場合には、半導体素子が電流で駆動する際の発熱によって半導体素子の反り量が変化する。特に、半導体素子の材料として化合物半導体、具体的にはSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などが用いられる場合には、半導体素子を高温で動作させることが可能となるので、発熱による半導体素子の変形はより顕著になる。そして半導体素子の変形が繰り返されると、半導体素子が破損する懸念がある。
【0006】
そこで、半導体素子の発熱によって生じる応力を緩和することを目的とした熱伝導性無機基板が提案されている(特許文献1)。特許文献1の熱伝導性無機基板(ベース板)は、半導体素子の実装領域の外周縁に沿って窪み(凹所外周部)が形成されるものであり、この窪みに充填される接合材が半導体素子に生じる応力を緩和するとされている。
【0007】
特許文献1の熱伝導性無機基板は、半導体素子の実装領域の外周縁に沿って窪みが予め形成される構成であるため、実装領域の形状を事前に定めておく必要がある。つまり、実装する半導体素子の形状が、予め形成される窪みによって規定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-128154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、半導体素子に生じる応力を抑制できるとともに、半導体素子の実装領域を比較的自由に規定できる熱伝導性無機基板及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、少なくとも一方の表面に半導体素子を実装するための領域を有し、この実装領域に接合材を介して半導体素子を実装する熱伝導性無機基板であって、上記実装領域内に、表面側から深さ方向に向かって開口面積が漸減する凹部を有する。
【0011】
当該熱伝導性無機基板は、半導体素子の実装領域内に、表面側から深さ方向に向かって開口面積が漸減する凹部を有しているので、半導体素子の実装時において接合材が凹部内に充填される。接合材が充填される凹部は開口側が底部側より広く形成されているので、凹部内の接合材は比較的容易に変形できる。このため、半導体素子が実装領域に実装された際に、半導体素子の熱膨張率と熱伝導性無機基板の熱膨張率とが相違することに起因して発生する応力は、凹部に充填される接合材の変形によって緩和される。つまり、当該熱伝導性無機基板は、凹部に充填される接合材によって半導体素子に生じる応力を抑制できる。また、当該熱伝導性無機基板は、半導体素子の実装領域の外周縁より内側に凹部を有しているので、凹部の開口形状より大きいという条件のもとで半導体素子の実装領域を比較的自由に規定できる。
【0012】
上記凹部が、内周面に表面側から深さ方向に向かって上記凹部の開口幅を漸減させる1以上のテーパ部を有するとよい。これにより、凹部に充填される接合材の変形が適切に促されるので、半導体素子に生じる応力が効率よく抑制される。
【0013】
上記実装領域の表面における上記凹部の開口幅が、1mm以上10mm以下であるとよい。凹部の開口幅が上記範囲内であると、凹部に充填される接合材による応力の緩和作用と半導体素子から熱伝導性無機基板への熱伝導性とが適切なバランスで調整される。
【0014】
上記凹部の深さが0.05mm以上0.5mm以下であるとよい。凹部の深さが上記範囲内であると、凹部に充填される接合材による応力の緩和作用と半導体素子から熱伝導性無機基板への熱伝導性とが適切なバランスで調整される。
【0015】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上記熱伝導性無機基板と、半導体素子とを備え、上記半導体素子を上記実装領域に実装する半導体装置である。
【0016】
当該半導体装置は、上述の熱伝導性無機基板を備えているので、熱伝導性無機基板の凹部に充填される接合材によって半導体素子に生じる応力を抑制できる。また、当該半導体装置は、熱伝導性無機基板の凹部の開口形状より大きいという条件のもとで半導体素子の実装領域を比較的自由に規定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱伝導性無機基板及び半導体装置は、半導体素子に生じる応力を抑制できるとともに、半導体素子の実装領域を比較的自由に規定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の熱伝導性無機基板の実装領域付近を部分的に示す模式的斜視図である。
図2図1の熱伝導性無機基板におけるA-A断面図である。
図3】本発明の一実施形態の半導体装置の実装領域付近を部分的に示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る熱伝導性無機基板及び半導体装置の実施形態について図を参照しつつ詳説する。
【0020】
[熱伝導性無機基板]
図1の熱伝導性無機基板1は、表面に半導体素子を実装するための実装領域2を有しており、この実装領域2に接合材を介して半導体素子を実装する。また、熱伝導性無機基板1は、この実装領域2内に、表面側から深さ方向に向かって開口面積が漸減する凹部3を有している。なお、実装領域2は、熱伝導性無機基板1の少なくとも一方の表面に存在すればよく、例えば熱伝導性無機基板1の両面に存在してもよい。
【0021】
熱伝導性無機基板1は、表面の実装領域2に実装された半導体素子から受け取った熱を外部に排出する部材であり、特に限定されないが、例えば平面視で略矩形の板状に形成されている。熱伝導性無機基板1は、例えば、半導体素子をはんだペースト等の接合材を介して実装し、外部配線と電気的接続を行うリードフレーム、半導体素子から受け取った熱を外部に排出するヒートシンク、又は半導体素子とヒートシンクとの間に配設され、半導体素子からヒートシンクへ熱を伝達する放熱板等とすることができる。熱伝導性無機基板1の材料としては、特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、銅及びアルミニウムの合金、又はセラミックに銅をDirect Copper Bond(DCB)法により直接接合したもの等、熱伝導性の高い材料を用いることができる。また、熱伝導性無機基板1は、例えばプレス加工によって成形されるが、熱伝導性無機基板1の大きさ、形状及び厚みは、実装する半導体素子の種類や使用目的等により適宜選択される。
【0022】
実装領域2に実装される半導体素子としては、例えばIGBT、パワーMOSFET等のトランジスタ、ダイオード、IC等の公知の半導体素子を採用することができる。半導体素子は、特に限定されないが、例えば線熱膨張係数が3ppm/K以上5ppm/K以下、ヤング率が100GPa以上500GPa以下、実装領域2の表面に沿った幅が2mm以上20mm以下、厚さが0.05mm以上0.3mm以下であると半導体素子に生じる応力の抑制の観点から好ましい。
【0023】
熱伝導性無機基板1と半導体素子とを接合する接合材は、半導体素子の熱伝導性無機基板1への実装時に熱伝導性無機基板1と半導体素子との間に導入されることで接合層を形成する。接合材の材料としては、例えば、錫、銀及び銅の合金系の鉛フリーはんだ、銀ろう、銀ペースト等の軟化温度が比較的低くかつ軟らかい材料が用いられる。これらの材料が接合材の材料として用いられることで、接合材は、熱伝導性無機基板1と半導体素子との間で生じる応力に対して緩衝材的な役割を果たす。
【0024】
<実装領域>
実装領域2は、熱伝導性無機基板1の表面の一部を区画する略平坦な領域であり、この領域に接合材を介して半導体素子が実装される。実装領域2は、平面視で半導体素子の底部領域の形状と等しい形状であり、図1においてはこの外周縁が略矩形の仮想線で示されている。熱伝導性無機基板1に半導体素子が実装される際には、実装領域2にはんだ等の接合材が導入され、この接合材を介して実装領域2上に半導体素子が実装される。
【0025】
(凹部)
熱伝導性無機基板1は、実装領域2の外周縁より内側に、開口面積が実装領域2の面積より小さい凹部3を有している。凹部3は、実装領域2の略中央に形成されており、平面視で略方形の開口を有するとともに、表面側から深さ方向に向かって開口面積が漸減し、底部において略方形の平面を有する形状となっている。凹部3は、特に限定されないが、例えば金型を用いたプレス加工、切削加工、又はエッチング等により形成することができる。
【0026】
図1及び図2に示すように、凹部3は、内周面に表面側から深さ方向に向かって凹部3の開口幅を漸減させる3つ(3段)のテーパ部を有している。ここで、凹部3の開口幅とは、凹部3の開口における実装領域2の表面に平行な方向の幅を示す。テーパ部は、凹部3の底部に向かって下降する傾斜面を有しており、同一深さにおいて連なり、かつ凹部3の内周面に沿って平面視で略方形環状に形成されている。また、2つのテーパ部間には実装領域2の表面と平行な略方形環状の平面が形成されている。なお、凹部3は、内周面に3つのテーパ部を有するものに特に限定されず、内周面に1以上のテーパ部を有していればよい。
【0027】
テーパ部の表面と実装領域2の表面との交角の下限としては、15度が好ましく、20度がより好ましく、25度がさらに好ましい。一方、上記交角の上限としては、85度が好ましく、80度がより好ましく、60度がさらに好ましい。上記交角が上記下限に満たないと、凹部3に充填される接合材の量が少なくなり、凹部3に充填される接合材が緩衝材的な役割を十分に果たさないおそれがある。逆に、上記交角が上記上限を超えると、凹部3に充填される接合材の厚みが急激に変化することによって接合材の円滑な変形が阻害され、接合材が緩衝材的な役割を十分に果たさないおそれがある。
【0028】
実装領域2の表面における凹部3の開口幅の下限としては、1mmが好ましく、1.5mmがより好ましく、2mmがさらに好ましい。一方、上記開口幅の上限としては、10mmが好ましく、8mmがより好ましく、7mmがさらに好ましい。上記開口幅が上記下限に満たないと、凹部3に充填される接合材の量が少なくなり、凹部3に充填される接合材が緩衝材的な役割を十分に果たさないおそれがある。逆に、上記開口幅が上記上限を超えると、凹部3に充填される接合材の量が多くなり、半導体素子から熱伝導性無機基板1への熱伝導性が低下するおそれがある。また、凹部3中央における熱伝導性無機基板1と半導体素子との密着性が低下するため、凹部3上の半導体素子の変形が防止されないおそれもある。
【0029】
凹部3の深さの下限としては、0.05mmが好ましく、0.1mmがより好ましく、0.15mmがさらに好ましい。一方、凹部3の深さの上限としては、0.5mmが好ましく、0.4mmがより好ましく、0.3mmがさらに好ましい。ここで、凹部3の深さとは、実装領域2の表面から凹部3の底部までの深さを示す。凹部3の深さが上記下限に満たないと、凹部3に充填される接合材の量が少なくなり、凹部3に充填される接合材が緩衝材的な役割を十分に果たさないおそれがある。逆に、凹部3の深さが上記上限を超えると、凹部3に充填される接合材の量が多くなり、半導体素子から熱伝導性無機基板1への熱伝導性が低下するおそれがある。また、凹部3中央における熱伝導性無機基板1と半導体素子との密着性が低下するため、凹部3上の半導体素子の変形が防止されないおそれもある。
【0030】
[半導体装置]
図3の半導体装置は、上述の熱伝導性無機基板1と、半導体素子4とを備え、半導体素子4を熱伝導性無機基板1の実装領域2に実装する構成である。図3では実装領域2が図示されていないが、上述の通り、実装領域2は、平面視で半導体素子の底部領域と等しい形状である。
【0031】
半導体素子4は、接合材で形成された接合層5を介して実装領域2に実装される。接合材は、凹部3の内部を含む実装領域2及び半導体素子4間に隙間なく充填され、接合層5は、平面視で少なくとも実装領域2と重畳している。
【0032】
実装領域2の表面から半導体素子4の底部までの間に形成される接合層5の厚さは、半導体素子4の大きさや発熱量等によって最適な厚さが異なるため、特に限定されない。しかしながら、熱伝導性の観点から、接合層5の上記厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい一方、接合層5の上記厚さの上限としては、200μmが好ましく、150μmがより好ましい。
【0033】
(利点)
当該熱伝導性無機基板1は、半導体素子の実装領域2内に、表面側から深さ方向に向かって開口面積が漸減する凹部3を有しているので、半導体素子が実装領域2に実装された際に、半導体素子の熱膨張率と熱伝導性無機基板1の熱膨張率とが相違することに起因して発生する応力が凹部3に充填される接合材の変形によって緩和される。つまり、当該熱伝導性無機基板1は、凹部3に充填される接合材によって半導体素子に生じる応力を抑制できる。また、当該熱伝導性無機基板1は、半導体素子の実装領域2の内側に凹部3を有しているので、凹部3の開口形状より大きいという条件のもとで半導体素子の実装領域2を比較的自由に規定できる。
【0034】
また、当該熱伝導性無機基板1は、凹部3の内周面に表面側から深さ方向に向かって凹部3の開口幅を漸減させる1以上のテーパ部を有しているので、凹部3に充填される接合材の変形が適切に促され、半導体素子に生じる応力が効率よく抑制される。
【0035】
また、当該熱伝導性無機基板1は、実装領域2の表面における凹部3の開口幅が、1mm以上10mm以下であり、凹部3の深さが0.05mm以上0.5mm以下であるので、凹部3に充填される接合材による応力の緩和作用と半導体素子から熱伝導性無機基板1への熱伝導性とが適切なバランスで調整される。
【0036】
また、当該半導体装置は、熱伝導性無機基板1を備えているので、熱伝導性無機基板1の凹部3に充填される接合材(接合層5)によって半導体素子4に生じる応力を抑制できる。また、当該半導体装置は、熱伝導性無機基板1の凹部3の開口形状より大きいという条件のもとで半導体素子4の実装領域2を比較的自由に規定できる。
【0037】
[その他の実施形態]
本発明の熱伝導性無機基板及び半導体装置は、上記実施形態に限定されない。
【0038】
上記実施形態では、凹部3が平面視で略方形の開口を有するものについて説明したが、開口の形状は略方形に限定されず、例えば開口の形状が略矩形、略円形又は略楕円形であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、凹部3が内周面に1以上の略方形環状のテーパ部を有するものについて説明したが、テーパ部の形状は、凹部3の開口の形状と相似する形状に限定されない。テーパ部の形状は、凹部3の開口の形状と相似しない形状であってもよく、例えば矩形環状であってもよいし、完全な環状でなくてもよい。
【実施例
【0040】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
上述の半導体装置のモデルについてシミュレーション計算を実行し、半導体素子に生じる応力を解析した。シミュレーション計算は、機構解析シミュレータソフトウェア「MemsONE」(みずほ情報総研株式会社製)を用い、以下の条件下で実行した。なお、下記の値はいずれも25℃での値である。
【0042】
[No.1の半導体装置]
熱伝導性無機基板1 材質:銅、厚さ:2mm、密度:8930kg/m、ヤング率129.84GPa、ポアソン比:0.343、熱伝導率:398W/(m・K)、比熱:386J/(kg・K)、線膨張係数:17ppm/K
実装領域2 領域:4.5mm×6.5mm
凹部3 表面側の開口:4mm×4mm、底部の平面:2mm×2mm、方形環状のテーパ部:4mm×4mm(外周縁)、3mm×3mm(外周縁)、2mm×2mm(内周縁)、表面から各平面への深さ:0.05mm、0.1mm、0.2mm(底部)
半導体素子4 底部領域:4.5mm×6.5mm、厚み:0.2mm、密度:2340kg/m、ヤング率112.78GPa、ポアソン比:0.22、熱伝導率:148W/(m・K)、比熱:713J/(kg・K)、線膨張係数:4ppm/K
接合層5 材質:錫、銀及び銅の合金系、実装領域2の表面から半導体素子4の底部までの厚さ:0.05mm、密度:7400kg/m、ヤング率31GPa、ポアソン比:0.4、熱伝導率:55W/(m・K)、比熱:234J/(kg・K)、線膨張係数:21ppm/K、0.2%耐力:27MPa
【0043】
また、比較例として、凹部3を有していないNo.2の半導体装置についてもシミュレーション計算を実行した。No.2の半導体装置は、熱伝導性無機基板1が凹部3を有していないこと以外はNo.1の半導体装置と同じ条件である。
【0044】
シミュレーション計算では、接合温度である200℃で半導体素子4を実装領域2に実装した後、25℃まで冷却した場合の半導体素子4の反り量を算出した。半導体素子4の中央位置(中心)を基準とした場合における中心からの距離(mm)と反り量(μm)との関係について、計算結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、No.1の半導体装置は、中心からの距離が0.5mmから1.5mmの範囲及び2.5mmにおいて、No.2の半導体装置よりも半導体素子4の反り量が小さいことが確認された。これにより、No.1の半導体装置のように熱伝導性無機基板1が凹部3を有していれば、半導体素子4の反り量が低減されるといえる。
【0047】
また、半導体素子4に加わる最大応力についても計算を実行すると、No.2の半導体装置では最大応力が261.7MPaであったのに対し、No.1の半導体装置では最大応力が242.5MPaとなり、No.1の半導体装置の方が最大応力を約7%低減できることが確認された。したがって、熱伝導性無機基板1が凹部3を有していれば、半導体素子4に加わる最大応力についても低減されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の熱伝導性無機基板及び半導体装置は、半導体素子に生じる応力を抑制できるとともに、半導体素子の実装領域を比較的自由に規定できる。
【符号の説明】
【0049】
1 熱伝導性無機基板
2 実装領域
3 凹部
4 半導体素子
5 接合層
図1
図2
図3