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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】エンジン作業機
(51)【国際特許分類】
   F02B 63/04 20060101AFI20220601BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20220601BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
F02B63/04 B
F02B63/04 D
F02B67/00 E
F02B67/00 G
F02B77/13 B
F02B77/13 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018153926
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020029773
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 勇人
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-31719(JP,A)
【文献】特開2016-968(JP,A)
【文献】特開2004-211553(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007028185(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 63/04
F02B 67/00
F02B 77/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に、作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納するとともに、前記ケーシングの側板部に、燃焼用及び冷却用の空気をケーシング内に吸い込む吸気口を備えたエンジン作業機において、前記ケーシングの内部に、前記吸気口から吸い込んだ空気を前記ケーシングの上部に向けてガイドする第1ダクトと、該第1ダクトを通った空気を前記ケーシングの上部で水平方向に向けてガイドする第2ダクトと、該第2ダクトを通った空気を前記ケーシングの上部で複数の流路に分ける吸気ガイドとを設け、該吸気ガイドは、前記第2ダクトの底板開口から流出した空気の一部を下方に向けてガイドするガイド板と、該ガイド板の板面に設けられるとともに、前記第2ダクトの底板開口から流出した空気の残部を水平方向に向けてガイドする第3ダクトとを有して構成され、前記ガイド板により下方に向けてガイドした空気が前記エンジンの燃焼用空気吸入口に吸入される燃焼用空気となり、前記第3ダクトにより水平方向に向けてガイドした空気が前記エンジンのラジエータに供給される冷却用空気となることを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記吸気ガイドは、前記作業機を囲うスタンドの上部に設けられ、前記スタンドと前記第3ダクトとの間の空間に前記燃焼用空気吸入口を備えたエアクリーナが配置され、該エアクリーナは、前記燃焼用空気吸入口を下方に向けて開口していることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記スタンドは、上面に前記ガイド板を設けた上板と、該上板を支持する一対の支持脚とで枠組み形成され、前記上板における前記ガイド板を挟んだ両側部に、前記燃焼用空気を通過させる燃焼用空気流入用開口と燃焼用空気流出用開口とがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記作業機は、筐体の一側方に吸気口と、他側方に排気口とをそれぞれ有して形成された発電機であり、前記スタンドにおける前記一対の支持脚間に前記排気口から放出された排風の流路と前記燃焼用空気の流路とを仕切る仕切板が設けられていることを特徴とする請求項3記載のエンジン作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン作業機に関し、詳しくは、ケーシングの内部に、発電機やコンプレッサ、油圧ユニット、ポンプなどの作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納したエンジン作業機における冷却・防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機などの作業機と、該作業機を駆動するエンジンとをケーシングの内部に収納したエンジン作業機では、一般に、点検扉に設けた開口部の内側に吸気ダクトを有している。また、エンジンや作業機の騒音が外部に漏れないように、吸気ダクトとエアクリーナの吸入口との間の流路に複数のダクトを設けた防音構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-31719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に記載されたエンジン作業機では、エアクリーナの吸入口から外部に漏れる騒音は、複数のダクトで形成された経路を通る間に減衰することから、一定の防音効果が得られるものの、その取付構造上、騒音の低減には限界があった。また、吸気ダクトに吸い込まれた冷却用の空気は、ケーシングの内部で自然に流れた後にラジエータに到達するため、その空気温度は外気温度に比べて高く、エンジンの冷却効果が損なわれるという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、騒音レベルを低く保ちながら冷却効率を向上させることができるエンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、ケーシングの内部に、作業機と、該作業機を駆動するエンジンとを収納するとともに、前記ケーシングの側板部に、燃焼用及び冷却用の空気をケーシング内に吸い込む吸気口を備えたエンジン作業機において、前記ケーシングの内部に、前記吸気口から吸い込んだ空気を前記ケーシングの上部に向けてガイドする第1ダクトと、該第1ダクトを通った空気を前記ケーシングの上部で水平方向に向けてガイドする第2ダクトと、該第2ダクトを通った空気を前記ケーシングの上部で複数の流路に分ける吸気ガイドとを設け、該吸気ガイドは、前記第2ダクトの底板開口から流出した空気の一部を下方に向けてガイドするガイド板と、該ガイド板の板面に設けられるとともに、前記第2ダクトの底板開口から流出した空気の残部を水平方向に向けてガイドする第3ダクトとを有して構成され、前記ガイド板により下方に向けてガイドした空気が前記エンジンの燃焼用空気吸入口に吸入される燃焼用空気となり、前記第3ダクトにより水平方向に向けてガイドした空気が前記エンジンのラジエータに供給される冷却用空気となることを特徴としている。
【0007】
また、前記吸気ガイドは、前記作業機を囲うスタンドの上部に設けられ、前記スタンドと前記第3ダクトとの間の空間に前記燃焼用空気吸入口を備えたエアクリーナが配置され、該エアクリーナは、前記燃焼用空気吸入口を下方に向けて開口していることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記スタンドは、上面に前記ガイド板を設けた上板と、該上板を支持する一対の支持脚とで枠組み形成され、前記上板における前記ガイド板を挟んだ両側部に、前記燃焼用空気を通過させる燃焼用空気流入用開口と燃焼用空気流出用開口とがそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、前記作業機は、筐体の一側方に吸気口と、他側方に排気口とをそれぞれ有して形成された発電機であり、前記スタンドにおける前記一対の支持脚間に前記排気口から放出された排風の流路と前記燃焼用空気の流路とを仕切る仕切板が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーシングの内部に設けた吸気ガイドが第2ダクトから流出した空気の一部をガイド板により下方に向けてガイドし、残部を第3ダクトにより水平方向に向けてガイドするので、ガイド板及び第3ダクトのそれぞれが遮音板の機能を果たしつつ、外気温度に近い新鮮な空気をエンジンの吸入口とラジエータとに向かう流路に分けて直接に供給することが可能となり、エンジンの冷却効率を高めることができる。
【0011】
また、スタンドと第3ダクトとの間の空間に配置したエアクリーナに備わる吸入口を下方に向けて開口しているので、遮音機能をより高めことができる。さらに、スタンドの上板に燃焼用空気流入用開口と燃焼用空気流出用開口とを設けているので、それぞれの開口に燃焼用空気を通過させてガイド板に回り込む流れを生成でき、燃焼用空気を途中で滞らずに流れ易くすることができる。また、スタンドの支持脚間に発電機の排風の流路と燃焼用空気の流路とを仕切る仕切板が設けられているので、排風が燃焼用空気の流れを乱すことを防止しつつ、発電機の騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一形態例を示すエンジン作業機の正面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4】同じくエンジン作業機の要部拡大断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図4は、本発明のエンジン作業機の一形態例を示すもので、エンジン作業機11は、平面視長方形状の架台12の4辺から上方に向かってそれぞれ立設した上部左側壁13a,上部右側壁13b,制御盤側側壁13c及び排風室側側壁13dと、各側壁13a,13b,13c,13dからなる側板部に囲まれた上部開口を覆う天井部材13eとで直方体状に形成されたケーシング13の内部に、長手方向(図1において左右方向)の中央部にエンジン14を配置し、該エンジン14の一側方(図1において右側)に作業機の一つである発電機15を配置するとともに、エンジン14の他側方(図1において左側)にラジエータファン16、ラジエータ(図示せず)及び排風室17を配置している。また、ケーシング13の上部には、吸気管18aを介してエンジン14に接続するエアクリーナ18が配置されている。
【0014】
ケーシング13の側板部のうち、上部左側壁13aと上部右側壁13bとには、エンジン14などの保守作業を行うための点検口13f,13gを開閉する点検扉19,20がそれぞれ設けられており、各点検扉19,20には、ケーシング13の内部に冷却用及び燃焼用の空気を取り入れるための吸気口19a,20aがそれぞれ設けられている。点検扉19,20の内側には、吸気口19a,20aから吸い込んだ空気を、ケーシング13の内部上方に導くとともに、空気に同伴された雨水を分離するための第1ダクト19b,20bがそれぞれ設けられている。
【0015】
点検口13f,13gの上端より上方で、発電機15の上方部分に位置する天井部材13eの下部には、上部左側壁13a及び上部右側壁13bに平行な仕切壁13hが設けられ、上部左側壁13aと仕切壁13hとの間には、上部左側壁13a側の第1ダクト19bの上方に位置する第2ダクト21が設けられ、上部右側壁13bと仕切壁13hとの間には、上部右側壁13b側の第1ダクト20bの上方に位置する第2ダクト22が設けられている。
【0016】
上部左側壁13a側の第2ダクト21は、天井部材13eと、仕切壁13hと、上部左側壁13a側に設けられた仕切壁13iと、底板13jとによって水平方向に向けて空気をガイドするように形成されており、底板13jには、上部左側壁13a側の第1ダクト19bの上部開口19cに連通する開口13mが形成されている。また、上部右側壁13b側の第2ダクト22は、天井部材13eと、仕切壁13hと、上部右側壁13b側に設けられた仕切壁13nと、底板13jとによって水平方向に向けて空気をガイドするように形成されており、底板13jには、上部右側壁13b側の第1ダクト20bの上部開口20cに連通する開口13oが形成されている。これらの各ダクト19b,20b,21,22の空気の流れ方向の断面積は、吸気口19a,20aの開口面積に応じて設定されている。
【0017】
さらに、前記底板13jにおける開口13mと開口13oとの中間部には、第2ダクト21,22内の空気を吸気ガイド23に導くための開口13pが設けられている。吸気ガイド23は、発電機15を囲うスタンド24の上部に設けられており、開口13pから流出した空気の一部を下方に向けてガイドするガイド板25と、開口13pから流出した空気の残部を水平方向に向けてガイドする第3ダクト26とを有して構成されている。
【0018】
ガイド板25は、制御盤側側壁13c及び排風室側側壁13dに平行な略正方形状の立板部25aを有して両第1ダクト19b,20bの間に配置され、その両側を制御盤側側壁13cの方向に曲げて側板部25bとし、立板部25aの上端を開口13pに近接した状態で、スタンド24の上板24aに設けられている。第3ダクト26は、底板26aの両側を上方に曲げて側板部26bとし、この側板部26bの上端を立板部25aの上端に高さ方向に揃えた状態で、立板部25aにおけるエンジン14側の板面に片持ち状に設けられている。これにより、開口13pから流出した空気のうち、ガイド板25により下方に向けてガイドした空気はエアクリーナ18に備えた燃焼用空気吸入口18bに吸入される燃焼用空気となる。一方、第3ダクト26により水平方向に向けてガイドした空気はラジエータに供給される冷却用空気となる。
【0019】
エアクリーナ18は、高さが高いエンジン14の上方を避けてスタンド24の上方で、第3ダクト26の下方の空間に配置されている。また、エアクリーナ18は、その上部を第3ダクト26の底板26aの下面に取り付けた状態で、燃焼用空気吸入口18bを下方に向けて開口するように設置されている。
【0020】
スタンド24は、上面に前記ガイド板25を設けた上板24aと、この上板24aを支持する一対の板状の支持脚24b,24bとで枠組みし、発電機15の筐体の一側方に設けた吸気口15aと、他側方に設けた排気口15bとを一体で囲うように形成されている。また、上板24aにおけるガイド板25を挟んだ長手方向の両側部には、燃焼用空気を通過させる燃焼用空気流入用開口24cと燃焼用空気流出用開口24dとがそれぞれ設けられている。さらに、スタンド24の内側には、両支持脚24b,24b間に架け渡されるとともに、燃焼用空気流出用開口24dにおけるエンジン14側の縁部24eに沿って仕切板27が設けられている。仕切板27は、その板端が発電機15の筐体の外形に対応して円弧状に形成されており、排気口15bから放射状に放出された排風の流路と、燃焼用空気の流路とを仕切るものである。
【0021】
このように形成したエンジン作業機11では、吸気口19a,20aに吸い込まれた空気は、図2の矢印Aで示すように、第1ダクト19b,20bから上部開口19c,20c及び開口13m,13oを通って第2ダクト21,22に流入し、水平方向にガイドされて第2ダクト21,22の底板13jの開口13pから流出し、吸気ガイド23で分岐されてケーシング13の内部に流れ込む。開口13pから流出した空気の一部は、ガイド板25の立板部25a及び側板部25bにより下方に向けてガイドされ、燃焼用空気として燃焼用空気流入用開口24cを通ってスタンド24の内部に流入する。一方、開口13pから流出した空気の残部は、図3及び図4の矢印Bで示すように、第3ダクト26の底板26a及び側板部26bにより水平方向に向けてガイドされ、冷却用空気としてラジエータファン16に吸い込まれてラジエータでエンジン冷却水を冷却し、排風室17を通ってケーシング13の上部から外部に排出される。
【0022】
また、燃焼用空気流入用開口24cからスタンド24の内部に流入した空気の一部は、図4の矢印Aで示すように、発電機15の上部においてエンジン14側に導かれ、燃焼用空気流出用開口24dを通ってエアクリーナ18の燃焼用空気吸入口18bに吸入される。一方、スタンド24の内部に流入した空気の残部は、図4の矢印Cで示すように、発電機15の吸気口15aに吸い込まれて冷却用空気となる。また、発電機15の排気口15bから放出された排風は、図4の矢印Dで示すように、スタンド24の上板24aと、両支持脚24b,24bと、仕切板27とにより水平方向に向けてガイドされ、ケーシング13の内部を排風室17に向かう方向に流れる。
【0023】
このように、ケーシング13の内部に設けた吸気ガイド23が第2ダクト21,22から流出した空気の一部をガイド板25により下方に向けてガイドし、残部を第3ダクト26により水平方向に向けてガイドするので、ガイド板25及び第3ダクト26のそれぞれが遮音板の機能を果たしつつ、外気温度に近い新鮮な空気をエンジン14の燃焼用空気吸入口18bとラジエータとに向かう流路に分けて直接に供給することが可能となり、エンジン14の冷却効率を高めることができる。
【0024】
また、スタンド24と第3ダクト26との間の空間に配置したエアクリーナに備わる燃焼用空気吸入口18bを下方に向けて開口しているので、遮音機能をより高めことができる。さらに、スタンド24の上板24aに燃焼用空気流入用開口24cと燃焼用空気流出用開口24dとを設けているので、それぞれの開口24c,24dに燃焼用空気を通過させてガイド板25に回り込む流れを生成でき、燃焼用空気を途中で滞らずに流れ易くすることができる。また、スタンド24の支持脚24b,24b間に発電機15の排風の流路と燃焼用空気の流路とを仕切る仕切板27が設けられているので、排風が燃焼用空気の流れを乱すことを防止しつつ、発電機15の騒音を低減することができる。
【0025】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものでなく、吸気ガイドは、第2ダクトから流出した空気を整流可能な構造であれば、形状は任意であり、各種機器のサイズや配置などに応じて適宜に形状を変更することができる。また、各ダクトの長さや断面積は、空気の流れの状態に応じて適宜設定することができる。さらに、発電機の排気口を下向きに配置して仕切板を設けない構成も可能である。
【符号の説明】
【0026】
11…エンジン作業機、12…架台、13…ケーシング、13a…上部左側壁、13b…上部右側壁、13c…制御盤側側壁、13d…排風室側側壁、13e…天井部材、13f,13g…点検口、13h,13i…仕切壁、13j…底板、13m…開口、13n…仕切壁、13o,13p…開口、14…エンジン、15…発電機、15a…吸気口、15b…排気口、16…ラジエータファン、17…排風室、18…エアクリーナ、18a…吸気管、18b…燃焼用空気吸入口、19…点検扉、19a…吸気口、19b…第1ダクト、19c…上部開口、20…点検扉、20a…吸気口、20b…第1ダクト、20c…上部開口、21,22…第2ダクト、23…吸気ガイド、24…スタンド、24a…上板、24b…支持脚、24c…燃焼用空気流入用開口、24d…燃焼用空気流出用開口、24e…縁部、25…ガイド板、25a…立板部、25b…側板部、26…第3ダクト、26a…底板、26b…側板部、27…仕切板
図1
図2
図3
図4