(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】均一または不均一にサンプリングされたインターフェログラムを変換してスペクトルデータを生成する方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/45 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
G01J3/45
(21)【出願番号】P 2018228850
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-12-03
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ヘギー
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109676(JP,A)
【文献】特表2006-528353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0299089(US,A1)
【文献】特開2017-191071(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135356(WO,A1)
【文献】特開2016-186485(JP,A)
【文献】Compact snapshot birefringent imaging Fourier transform spectrometer,PROCEEDINGS OF SPIE,SPIE,2010年08月13日,Vol. 7812,781206,doi: 10.1117/12.864703
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-G01J 3/52
G02F 1/00-G02F 1/39
G01N 21/00-G01N 21/61
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
SPIE Digital Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計の1組の基準リターダンスを決定することと、
ハイパースペクトルデータキューブのスペクトルスライスに対応する1組の波長を決定することと、
周期関数の行を含む再構成行列を形成することであって、前記再構成行列の各行は前記1組の波長の選択された波長に対応し、前記再構成行列の各列は前記基準リターダンスの選択されたリターダンスに対応し、前記周期関数は、前記対応する行の前記選択された波長をパラメータとして有し、前記対応する列の各々の前記選択されたリターダンスでサンプリングされた、再構成行列を形成することと、
1つ以上の同時に測定されたインターフェログラムのアレイを含むインターフェログラムデータキューブを得ることであって、前記インターフェログラムデータキューブの各行は、前記選択されたリターダンスのうちの1つに対応し、前記インターフェログラムデータキューブの各列は、前記同時に測定されたインターフェログラムからの異なるインターフェログラムに対応する、インターフェログラムデータキューブを得ることと、
前記インターフェログラムの各々について1組の行列ベクトル積を形成することであって、前記行列ベクトル積の各々が、前記再構成行列と前記インターフェログラムデータキューブの列との行列乗算を含み、前記1組の行列ベクトル積は、前記ハイパースペクトルデータキューブを形成する、1組の行列ベクトル積を形成することと、を含む、
均一または不均一にサンプリングされたインターフェログラムを変換してスペクトルデータを生成するための方法。
【請求項2】
前記インターフェログラムは、前記干渉計内の異なる像点に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同時に測定されたインターフェログラムは、光路遅延に対して不均一にサンプリングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記干渉計は、偏光干渉計を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記偏光干渉計は、液晶可変リターダを含み、各行における前記周期関数の相対的な発振率は、波長および温度のうちの少なくとも1つの関数として、前記液晶可変リターダの液晶複屈折に基づいている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1組の基準リターダンスによって変化するように動作可能な干渉計と、
前記干渉計は前記1組の前記基準リターダンスによって変化する際に、異なる位置の光センサに対応して同時にインターフェログラムを測定するように動作可能な光センサと、
前記干渉計および前記光センサと結合したコントローラであって、前記コントローラは、
ハイパースペクトルデータキューブのスペクトルスライスに対応する1組の波長を決定し、
周期関数の行を含む再構成行列を形成し、ここで各行は前記1組の波長の選択された波長に対応し、各列は前記基準リターダンスの選択されたリターダンスに対応し、前記周期関数の各々は、前記対応する行の前記選択された波長をパラメータとして有し、前記対応する列の前記選択されたリターダンスでサンプリングされており、
1つ以上の同時に測定されたインターフェログラムのアレイを含むインターフェログラムデータキューブを得て、ここで前記インターフェログラムデータキューブの各行は、前記選択されたリターダンスのうちの1つに対応し、前記インターフェログラムデータキューブの各列は、前記同時に測定されたインターフェログラムからの異なるインターフェログラムに対応し、
前記インターフェログラムの各々について1組の行列ベクトル積を形成し、ここで前記行列ベクトル積の各々が、前記再構成行列と前記インターフェログラムデータキューブの列との行列乗算を含み、前記1組の行列ベクトル積は、前記ハイパースペクトルデータキューブを形成するように動作可能である、コントローラと、を含む、装置。
【請求項7】
前記周期関数の各々は、前記選択された波長の各々について位相シフトしているため、0の位相は、前記選択された波長の各々における前記干渉計のゼロリターダンス点におおよそ対応する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記再構成行列の各行に波長依存性関数を乗算し、非対称に測定されたインターフェログラムによって引き起こされたアーチファクトを削減するように更に構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記再構成行列の各行に波長依存性窓関数またはアポダイゼーション関数を乗算する、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記再構成行列に対角化行列(AB)
-1を乗算し、(AB)
-1Aを得て、Aは、前記再構成行列であり、Bは、Aの各行に対応する前記波長にて、前記干渉計への単位波長刺激によって生成された前記予期された生インターフェログラムである列を備えたシステム応答行列である、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、均一または不均一にサンプリングされたインターフェログラムを変換して所定の波長のスペクトルデータを生成する方法および装置に関する。一実施形態では、ハイパースペクトルデータキューブのスペクトルスライスに対応する1組の波長と同様に、干渉計の1組の基準リターダンスが決定される。周期関数の行を含む再構成行列が形成される。再構成行列の各行は1組の波長の選択された波長に対応し、再構成行列の各列は基準リターダンスの選択されたリターダンスに対応する。周期関数は、対応する行の選択された波長をパラメータとして有し、対応する列の各々の選択されたリターダンスでサンプリングされる。1つ以上の同時に測定されたインターフェログラムのアレイを含むインターフェログラムデータキューブが得られる。インターフェログラムデータキューブの各行は、選択されたリターダンスのうちの1つに対応し、インターフェログラムデータキューブの各列は、同時に測定されたインターフェログラムからの異なるインターフェログラムに対応する。インターフェログラム各々について、1組の行列ベクトル積が形成される。行列ベクトル積の各々は、再構成行列とインターフェログラムデータキューブの列との行列乗算を含む。1組の行列ベクトル積は、ハイパースペクトルデータキューブを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図2】例示的実施形態による光学デバイスを介して処理されたインターフェログラムを示す1組のプロットである。
【
図3】例示的実施形態による光学デバイスのリターダンス対時間のグラフである。
【
図4】例示的実施形態による干渉計のゼロ経路遅延の波長依存性の測定値を示す1組のプロットである。
【
図5】例示的実施形態による再構成行列の図である。
【
図6】例示的実施形態によるインターフェログラムデータキューブの概念図である。
【
図7】例示的実施形態によるインターフェログラムデータキューブを表す行列の図である。
【
図8】例示的実施形態によるシステム応答行列の図である。
【
図9】例示的実施形態による再構成行列におけるランプ関数および窓関数の効果を示す1組のプロットである。
【
図10】例示的実施形態による方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本開示は、ハイパースペクトルイメージングシステムにおける信号処理に関する。本明細書に記載されるハイパースペクトルイメージングシステムは、干渉計を通過する光の成分に可変光路遅延(またはリターダンス)をもたらすように構成されている偏光干渉計を使用する。経路遅延(可変光学リターダと呼ばれる)を引き起こすデバイスは、可変経路遅延が入射偏光方向の第1の光線と直交偏光の第2の光線(例えば、常光線および異常光線)との間にもたらされる(光線の組の両方が共通の経路をたどる)ように、2つの偏光子の間に配置される。この経路遅延は、第1の光線と第2の光線との間の波長依存性位相シフトを引き起こす。経路遅延は、偏光干渉計から出る光を生じさせ、光センサ(例えば、焦点面アレイ)を介して検出されるインターフェログラムを形成する。
【0004】
偏光干渉計は、可変光学リターダとして、1つ以上の液晶(LC)セルを使用できる。このような可変光学リターダは、本明細書において液晶可変リターダ(LCVR)と呼ばれる。一般に、液晶(LC)材料は、電場または磁場などの外部刺激を印加することによって選択的に変更することができるいくつかの結晶特性(例えば、LC分子の局所平均配列を示すLCダイレクタなどの内部構造の配向)を有する液体である。LCダイレクタの配向の変化は、LC材料の光学特性を変更する、例えば、LC複屈折の光軸を変化させる。
【0005】
LCVRは、液晶を通過する光の直交する2つの偏光の間に、可変光路遅延または可変リターダンスを生成する。LCVR内の1つ以上の液晶セルは、電気的に同調可能な複屈折素子として機能する。液晶セルの電極間の電圧を変化させることにより、セル分子の配向が変化し、ある期間にわたって光路遅延を制御可能に変化させることができる。
【0006】
LCVRを有する偏光干渉計を作るために、LCVRは、名目上平行または垂直の偏光軸を有する第1の偏光子と第2の偏光子との間に置かれる。LCVRの遅軸(可変光路遅延を伴う偏光軸)は、第1の偏光子の偏光方向に対して名目上45度配向される。入射光は、第1の偏光子によって入射偏光方向に偏光される。LCVRの遅軸は、この入射偏光方向に対して45度であるので、偏光された入射光は、LCVRの遅軸に平行に偏光された光の一部およびこの軸に垂直に偏光された光の一部に関して説明することができる。
【0007】
光がLCVRを通過するとき、光は、第1の偏光と第2の偏光との間の波長依存性相対位相シフトを取得し、それによって偏光状態の波長依存性変化をもたらす。第1の偏光子に平行または垂直に配向された第2の偏光子またはアナライザは、LCVRの遅軸に平行に偏光された光の部分を垂直に偏光された光の部分と干渉させ、LCVRの出力における波長依存性偏光状態を、光検出器または焦点面アレイによって検知することができる波長依存性強度パターンに変化させる。LCVRのリターダンスを変えながらこの強度を検知することにより、入射光のスペクトル特性を確認するために使用することができる、入射光のインターフェログラムを測定することが可能である。
【0008】
上記のように、入射光のスペクトル情報を非スペクトル分解検出器で容易に測定される強度パターンにエンコードするその能力により、偏光干渉計がハイパースペクトルイメージングアプリケーションに使用される。ハイパースペクトルイメージングは、高密度にサンプリングされた微細分解スペクトル情報が各ピクセルに提供される画像を含んでもよい、ハイパースペクトルデータセットまたはデータキューブを取得するための方法およびデバイスを指す。
【0009】
偏光干渉計によって提供される波長依存性強度パターンは、入射光のスペクトルのコサイン変換にほぼ対応する。LCVRのリターダンスの関数として各ピクセルの強度パターンを偏光干渉計の出力に記録することによって、LCVRを通じて画像化されたシーンの全点によって生成されたインターフェログラムを同時にサンプリングすることができる。これから、ハイパースペクトルデータキューブは、リターダンス軸に沿って逆コサイン変換またはフーリエ変換などの変換を記録された空間依存性インターフェログラムに適用することによって、名目上回復することができる。
【0010】
液晶偏光干渉計に基づくハイパースペクトルイメージャは、光路遅延に対して不均一にサンプリングされている場合があるインターフェログラムを生成する。このようなデバイスによって生成された生データをハイパースペクトル画像へ変換するのに、標準フーリエ変換は最適ではない場合がある。本開示は、インターフェログラムが均一にサンプリングされているかどうかに関わらず、フーリエ変換に比べ精度がより良くアーチファクトがより少ないハイパースペクトルデータキューブを再構成するために使用される方法および装置について記載する。
【0011】
本明細書に記載されるハイパースペクトル画像処理の理解を深めるために、
図1のブロック図は、例示的実施形態による画像処理を実施する装置100を示す。装置100は、中央演算処理装置、サブプロセッサ、画像処理装置、デジタルシグナルプロセッサなどの1つ以上のプロセッサを含み得るデバイスコントローラ102を含む。コントローラ102は、以下にて更に詳細に記載される機能モジュールを含むメモリ104に結合されている。メモリ104は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリの組み合わせを含むことができ、当技術分野において既知の通り、命令およびデータを記憶することができる。
【0012】
装置100は、装置100の外側から光を受信する外部光学インターフェース108を備えた光学セクション106を含む。外部光学インターフェース108は、装置100の外側から内部光学部品へ光109が通過するのに好適な、窓、レンズ、フィルタ、開口部などを含んでもよい。本実施例では、外部光学インターフェース108は、外部レンズ110と結合して示されている。
【0013】
偏光干渉計112は、装置100の光学セクション106に位置している。偏光干渉計112は、例えば、電気信号線を介してコントローラ102に結合されている。コントローラ102は、偏光干渉計112に信号を印加して、干渉計112の一部であるLCVR112aにおいて時間変化光路遅延またはリターダンスを生じさせる。この時間変化光路遅延は、光109の異なる偏光間の波長依存性位相シフトを引き起こし、光路遅延の関数として変化するインターフェログラムをもたらす。インターフェログラムは、またコントローラ102とも結合された画像センサ114(例えば、センサピクセルのアレイ、焦点面アレイ)によって検出される。
【0014】
リターダンスコントローラ118は、デバイスコントローラ102に命令し、LCVR112aへ制御信号を印加し、時間変化リターダンス軌道を得る。画像プロセッサ120は、画像センサ114にて検出されたインターフェログラムと共に時間変化経路遅延の尺度として、このリターダンス軌道を使用する。検出された各インターフェログラムは、LCVR112aの対応する位置における経路遅延の関数として変換を計算することによって処理することができ、共に、処理されたインターフェログラムは、空間依存性スペクトルデータ(例えばハイパースペクトルデータキューブ)を含む。
【0015】
本明細書に記載される全ての処理は、装置100内、またはインターフェース122によって結合された外部コンピュータ124を介して、またはいくつかのこれらの組み合わせで起こり得る。これは、コンピュータ124上で動作する画像プロセッサ126によって示されている。コンピュータ124および/または装置100は、後述のように特定の計算の速度を上げるために使用することができる画像処理装置(GPU)128、130を含み得る。一般に、GPU128、130は、行列乗算または部分行列乗算などの並列化可能なサブ計算のために構成された多数のプロセシングコア(例えば、数百または数千)を有する。サブ計算の各々が独立していると仮定すると、GPUは、画像処理時間を大いに削減できる。以下の計算は、並列化可能な行列乗算を伴うため、GPUを使用して処理速度を向上させることができる。
【0016】
本明細書に記載されるハイパースペクトルイメージャは、各ピクセルにおいて独立した、光路遅延に対するインターフェログラムである生信号を生成する。これらのシステムが液晶偏光干渉計に基づく場合、インターフェログラムのサンプリングは、光路遅延に対して完全に均一ではない場合がある。その結果、典型的な高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムは、インターフェログラムからハイパースペクトルデータキューブを計算するのには機能しない場合がある。更に、インターフェログラムサンプリングが均一であっても、インターフェログラムのFFTは、スペクトルデータ(例えば、ハイパースペクトルデータキューブ)の最適な推定をもたらさない場合がある。特定の波長の感度を高めるために、不均一サンプリングは、例えば、より短い経路遅延での高密度のサンプリングにより意図的に導入され得る。
【0017】
インターフェログラムにFFTを適用する前に不均一なサンプリングを修正する1つの方法は、補間によって一定の間隔の光路遅延またはリターダンスでインターフェログラムを再サンプリングすることである。例えば、時間の関数として既知の波長の単色基準光源のインターフェログラムの位相を得ることによって、記録されたインターフェログラムサンプルの各々の光路遅延が分かると考えることができる。一般的にそうであるように、光路遅延が時間の関数として単調に変化した場合、光路遅延と時間との間に一対一の関係が存在するだろう。個々のインターフェログラムサンプルは、既知のリターダンスで取得され、等間隔のリターダンスグリッドを使用して、インターフェログラムサンプルの補間によって補間されたインターフェログラムを計算することができる。
【0018】
しかし、この補間方法は、特に、より高次の(例えば、3次スプライン)方法が使用される場合、または画像サイズが大きい場合には、計算上高価であり得る。また、ナイキスト限界近くでサンプリングされ得るインターフェログラムの領域、または(特に、ゼロ経路遅延に近いより短い波長の場合)干渉縞毎のサンプルをほとんど有さない場合があるインターフェログラムの領域では、補間は、信号の有意な損失および/またはひずみの原因となり得、これは、不利益であり、再構成されたスペクトルデータにアーチファクトを引き起こす可能性がある。本明細書に記載されるハイパースペクトルイメージャは、既に短波長に対して感度が低い可能性があり、このような補間はこの問題を悪化させるだけである。
【0019】
図2では、一組のプロットは、例示的実施形態による異なるサンプリング方法がインターフェログラムの信号強度およびひずみにどのように影響し得るかを示す。上部プロット200は、LCVRに基づく偏光干渉計を介して測定される青色LEDのインターフェログラムである。LCVRのリターダンスを名目上一定の速度で走査しながら、インターフェログラムを等間隔の時間間隔でサンプリングした。しかしながら、LCVRの走査速度の小さな変動のために、上部プロット200のインターフェログラムは、不均一なリターダンスの間隔でサンプリングされた。中間プロット202は、一定のリターダンス増分で上部プロット200のインターフェログラムの補間による再サンプリングの結果を示す。この補間は、インターフェログラムの信号強度(インターフェログラムの標準偏差によって測定される)をほぼ20%減少させる。プロット204は、プロット200、202、204に見られるように、短い(青色)波長からの信号の大部分が配置されているゼロ経路遅延206~208付近のサンプル数を増加させるために、(
図3に示すように等間隔の時間間隔であるが)リターダンスに対して意図的に不均一にサンプリングされた同じ青色LEDの別個に測定されたインターフェログラムを示す。本実施例では、204のインターフェログラムの意図的な不均一サンプリングは、200のインターフェログラムに対して信号の標準偏差を約30%増加させた。一般に、検出可能な光学スペクトル(例えば、CMOS検出器の場合、400nm~1000nm)にわたる波長からの寄与が、測定されたインターフェログラムに存在する。上記の意図的な不均一なリターダンスサンプリングは、より長い波長に対してより短い波長で信号強度を増加させる効果を有することができ、検出可能な光学スペクトルにわたってダイナミックレンジを維持することがしばしば望ましい。
【0020】
不均一なリターダンスサンプリングはまた、NuFFTソフトウェアライブラリで計算することができる不均一離散フーリエ変換などの不均一にサンプリングされたデータのフーリエ変換のために開発された多数の方法を介して処理することができる。しかし、計算された周波数の多くは、検出可能な光スペクトル内の波長に対応していなくてもよいので、全ての周波数にわたってフーリエ変換が過剰である可能性がある。その代わりに、画像プロセッサ120は、(均一または不均一にサンプリングされた)関心のあるフーリエ成分だけ、または同様な意味合いで、関心のある波長に寄与する(規則的または不均一)離散フーリエ変換(DFT)行列の行だけとインターフェログラムのドット積をとることによって、フーリエ変換を近似することができる。
【0021】
本方法の利点は、各波長を独立して処理して、異なるアポダイゼーションおよび波長依存性ゼロ経路遅延を組み込むことができ、不均一性がもはや問題でなくなるように、フーリエ成分をインターフェログラムとして同一の不均一性でサンプリングすることができることである。また、任意の追加の線形変換をこの行列と組み合わせて、生のインターフェログラムからスペクトルデータを直接再構成するための全体的な「再構成」行列を形成することもできる。このような行列は更に、空間依存性リターダンスなどの空間的較正を組み込むための空間インデックスを有することができる。
【0022】
再構成行列を生成するために、
図3の例示的曲線300によって示すように、基準リターダンス対時間曲線がセンサから得られる。例えば、液晶セルの片側に位置する単色光源116(
図1参照)を使用して、この曲線300を得ることができる。光源116からの光は、センサ114によって検出されるが、コントローラ102はLCVR112aの一つまたは複数のLCセルに電圧を印加し、LCVRのリターダンスを第1のリターダンスから第2のリターダンスに変化させる。次に、コントローラ102は、光源116の強度における検出された振動を分析して、インターフェログラムの各サンプルに対する光源116の時間依存性リターダンス、または同様な意味合いで、インターフェログラムの位相を決定する。プロット300のデータを得る他の方法は、同様の手順を使用して1つまたは複数のLCセルのキャパシタンス測定値を分析することを含む。
【0023】
このシステムは、例えば、残留する液晶リターダンスを別の複屈折材料で補償することによって生じ得る、ゼロ経路遅延の波長および温度に依存する変動を有することがある。インターフェログラムは、正および負の経路遅延の両方で測定されることが望ましく、場合によっては、残留液晶リターダンスがこれを防止し、補償されなければならない。残留リターダンスを補償する1つの方法は、偏光干渉計内に、反対符号の固定リターダンス、例えば、LCVRの遅軸に対して垂直な遅軸を有する多次波長板を含むことである。この補償波長板が、LCVRのリターダンスとは異なる方法で波長および/または温度に依存するリターダンスを有する場合、偏光干渉計のゼロ経路遅延は、波長および温度の両方に依存する。このような場合、システムはまた、基準リターダンス曲線に対して、各波長毎、つまり再構成行列の各行についてゼロ経路遅延点を決定して記憶することもできる。例示的実施形態によるゼロ経路遅延を決定する例を、
図4のプロットのセットに示す。
【0024】
図4では、プロット400は、10nmステップで増加する狭帯域光源のインターフェログラムの測定値のセットであり、各々が互いに積み重ねられて示されている。波長は垂直軸を上がるにつれて増加する。プロット410はプロット400の部分402の拡大図であり、プロット420はプロット410の部分412のサブセットである。プロット420のハイライトポイント422は、各波長についての実際のゼロ経路遅延σ(λ)=0を表す基準リターダンス値を示す。ここで、σは測定された基準リターダンスではなく実際の干渉計経路遅延である。これらの点422は、液晶リターダンスのいくつかが異なる分散の波長板で補償され、その結果、検出可能な光学スペクトルにわたって残留分散をもたらすため、垂直線ではなく曲線を形成する。
【0025】
この残留分散は、液晶材料と補償波長板の両方の屈折率の和に関連する。プロット430および式432によって示されるように、コーシー近似(例えば、最大6次まで)を使用してデータを適合させることができる。方程式の係数は一般に温度に依存することに留意されたい。式432を使用すると、ゼロ経路遅延に対応する基準リターダンスは、コーシー近似が有効である任意の波長で計算することができる。この式は、温度に対する係数の変化が特徴付けられていると仮定すると、異なる温度に対しても解くことができる。係数は、当技術分野において既知の通り、装置100のメモリに記憶され、以下に説明する計算において画像プロセッサによって使用される場合がある。
【0026】
画像プロセッサ120によって使用することができる別のパラメータは、基準波長λ0における基準リターダンス曲線の位相の変化率に対する関心のある所与の波長の位相遅延の変化率(例えば、λi、再構成行列のi番目の行に対応)である。スケールファクタは、例えば、波長λおよび温度Tの関数としての液晶屈折率ne,noの知見によって得ることができる。ここで、添え字eおよびoは、それぞれ異常光線および常光線に対応する屈折率を表す。以下の式(1)を使用して、波長λiにおけるスケールファクタαiを決定することができ、または較正を使用して値を実験的に決定することができる。
【0027】
【0028】
上記に鑑みて、再構成行列の要素A
ijは、以下の式(2)に示すように表すことができる。ここで、Φ
jは、インターフェログラムサンプルjに対応する基準リターダンス曲線の位相である。位相Φ
jは、例えば、タケダの方法を用いて基準光源のインターフェログラムを解析することによって実験的に見出されている。これは、Φ
j=2πΓ
j/λ
0として基準リターダンスΓ
jに関係する。角度φ
iは、例えば、式(3)で
図4で得られたフィッティング係数によって計算された波長λ
iに対するゼロ経路遅延に対応する基準リターダンス曲線の位相である。位相Φ
iを基準リターダンス曲線の位相Φ
jから減算することは、波長λ
iにおける干渉計のゼロリターダンス点に対応するインターフェログラムサンプルにおいて0の位相を有するように、行iでサンプリングされた周期関数を位相シフトする。
【0029】
【0030】
【0031】
式(2)の再構成行列要素は、各画像収集が特定の基準リターダンス曲線および温度を有するので、画像収集毎に1回だけ計算する必要があることに留意されたい。
図5では、例示的実施形態による再構成行列500の図が示されている。行列500は、式(2)のような周期関数502(例えば、余弦関数)の行を含む。各行は、ハイパースペクトルデータキューブのスペクトルスライスに各々対応する1組の波長504の選択された波長に対応する。波長504は、特定の範囲および分布を有するように予め選択することができる。前述の基準波長λ
0は、1組の波長504に含まれても含まれなくてもよいことに留意されたい。
【0032】
行列500の各列は、1組の基準リターダンス506の選択されたリターダンスに対応する。1組の基準リターダンス506は、特定の時点における干渉計の状態に関連する。1組のリターダンス506は、(例えば、
図3に示すように)不均一なリターダンス間隔で分布してもよいし、初期リターダンスΓ
1は、最小リターダンスであってもなくてもよいことに留意されたい。
【0033】
周期関数502は、対応する行の選択された波長504(または選択された波長504のインデックス)をパラメータとして有し、対応する列の各々の基準リターダンス506でサンプリングされる。行列500をインターフェログラムデータキューブと乗算し、スペクトルデータを得ることができる。
図6では、例示的実施形態によるインターフェログラムデータキューブの概念図を示す。要素600は、xy平面を横切って配置された検出器の個々のセンサ、例えば、焦点面アレイのピクセルを表す。t軸は、データキューブが取得される間のt
1~t
Nの間の異なる時点に各々対応する、Γ
1~Γ
Nの間の偏光干渉計のリターダンスの変化を表す。曲線602は、取得時間にわたって各センサ600で測定された個々のインターフェログラムを表す。したがって、インターフェログラムデータキューブは、特定のセンサ位置およびリターダンス値に対応するサンプル値を有する各要素を有するアレイから形成される。点604は、センサ600のためのリターダンスΓ
jに対応する個々のサンプルを表す。
【0034】
図示されたセンサ600は2次元の空間的配置であるが、計算のために単一のインデックス、例えばp
k,k∈{1...P}によってラベル付けすることができる。このように、インターフェログラムデータキューブは、
図7に示すような2次元行列X700として表すことができる。行列700は、同時に測定されたインターフェログラムに対応するサンプル702を含む。行列700の各行は、基準リターダンス506の選択されたリターダンスに対応し、各列は、インデックスkを有する1組の同時に測定されたインターフェログラムからの異なるインターフェログラム測定値に対応する。ここに示すように、インターフェログラムサンプルはセンサ位置704によってラベル付けされ、センサアレイはP個の位置、例えばP=ピクセル行数×ピクセル列数を有する。
【0035】
スペクトルデータまたはハイパースペクトルデータキューブの計算には、インターフェログラム各々についての1組の行列ベクトル積を形成することを含み、行列ベクトル積の各々は、インターフェログラムデータキューブ700の列kとの行列500の行列乗算を含む。したがって、得られたハイパースペクトルデータキューブHは、行列乗算H=AXによって形成することができる。Hの各行は、波長504のうちの1つに対応する画像に合成することができ、画像の各ピクセルは、対応する波長での強度およびインデックスkによりラベル付けされた空間位置での強度に対応する。
【0036】
いくつかの実施形態では、干渉計の少なくとも2つの空間領域に対して異なる再構成行列500を構成することができる。したがって、
図7の異なるピクセル位置p
kは、異なる再構成行列によって乗算され得る。これは、
図7に領域705~707で示されており、それぞれ領域705~707は異なる再構成行列500と関連付けられている。そのような領域は、1つ以上の個々のピクセルを包含することができ、データキューブ行列700の非連続部分も包含することができる。このようにして、偏光干渉計(または他の光学部品)の空間依存特性の補償を任意の所望の粒度で行うことができる。
【0037】
ゼロ経路遅延に対して非対称であるインターフェログラムからのスペクトルデータの再構成には、低分解能のスペクトルアーチファクトの形成を防止するための特殊な処理が必要である(例えば、C.D.Porter and D.B.Tanner,「Correction of phase errors in Fourier spectroscopy,」Int.J.Infrared Millimeter Waves 4,273-298(1983)参照)。この特別な処理を再構成行列500に組み込む1つの方法は、行列500の各行に、ゼロ経路遅延に最も近い側でゼロに等しく始まり、(波長依存性)ゼロ経路遅延点では0.5を通り、一定のままである点では、同一の勾配で1に進む、線形「ランプ」関数を乗算することである。一般性を失うことなく、基準リターダンス曲線の位相は、Φj,j=1に対して最小値0から始まり、サンプル数jが増加するにつれて単調に増加すると仮定することができる。次に、波長依存性ランプは、以下の式(4)のように定義することができる。方程式(4)は、非対称インターフェログラムを収容するために、再構成行列と要素的に乗算され得る行列を定義する。
【0038】
【0039】
再構成行列500の行は、各波長についてゼロ経路遅延に関して対称である限り、窓関数またはアポダイゼーション関数によって乗算することもできる。再構成行列を行毎に計算することの1つの利点は、異なるサイズの窓関数を各波長に適用できることである。例えば、より短い波長に対して最良の取得可能なスペクトル分解能を制限し得るLCVRにわたる本質的な経路遅延の不均一性のために、より短い波長は、典型的には、その信号エネルギーの大部分がゼロ遅延経路の周りに位置するインターフェログラムを生成する。したがって、インターフェログラムからスペクトルのより短い波長部分を再構成する場合、インターフェログラムを、より短い波長からの信号が存在する部分だけを含む窓関数によって最初に乗算することが有利である。窓を大きくすると、ノイズは増加するが信号は増加しない。信号とは異なり、ノイズは多くの場合、全ての経路遅延に分散される。そして、同じ1つまたは複数の窓関数を用いて異なる位置のインターフェログラムの乗算を繰り返すことを避けるために、窓関数は、再構成行列500の行と要素的に乗算することができる。
【0040】
Aが再構成行列500であり、Bが再構成行列500の行によって表される各波長でのシステム応答である列の行列である場合、再構成行列500は、再構成行列を「対角化」するために、対角行列(AB)
-1によって予め乗算することができる。すなわち、システム応答行列B(または所与の波長での測定された応答)による乗算が単位元を生じるように、完全再構成行列を(AB)
-1Aに設定することができる。これは、インターフェログラムからのスペクトルデータの再構成に対する最小二乗解法に類似している。また、ABが悪条件になる可能性があるため、上記の行列逆転が発散するのを防ぐために、何らかの形式の正規化を行う必要があり得る。例えば、反転の前に単位元の倍数を加えることができる。すなわち、(AB+βI)
-1、ここで、IはM×M単位行列であり、βは倍率である。再構成行列500はまた、波長にわたるシステム応答を等化するために、干渉計のスペクトル感度に関する情報を含むことができる。
図8の図は、システム応答行列B800を示す。行列800の列は、Aの各行に対応する波長504にて、干渉計への単位波長刺激によって生成された予期された生インターフェログラムである。
【0041】
図9では、積み重ねられた一対のプロットは、上述のように2つの再構成行列を示し、
図4の測定値と同様にプロットされている。プロット900の各ラインは、不均一なリターダンス間隔の波長依存性ゼロ経路遅延および液晶分散を考慮した、式(2)のような再構成行列Aの行である。プロット902は、インターフェログラムの対称部分を二重にカウントすることを避けるための式(4)のランプ関数による各行の乗算処理、ならびに各波長の解像度ビンサイズを個別に定義するための波長依存性窓関数処理を含む追加の処理の効果を示す。
【0042】
図10では、例示的実施形態による方法のフロー図を示す。本方法は、干渉計の1組の基準リターダンスを決定すること(1000)を含む。ハイパースペクトルデータキューブのスペクトルスライスに対応する1組の波長も、例えば、ハイパースペクトルデータキューブの所望のスペクトル範囲に基づいて決定される(1001)。再構成行列が形成される(1002)。再構成行列は、サンプリングされた周期関数の行を有する。再構成行列の各行は1組の波長の選択された波長に対応し、再構成行列の各列は基準リターダンスの選択されたリターダンスに対応する。周期関数は、対応する行の選択された波長をパラメータとして有し、対応する列の各々の基準リターダンスでサンプリングされる。
【0043】
インターフェログラムデータキューブは、例えば光検知器を介して取得される(1003)。インターフェログラムデータキューブは、1つ以上の同時に測定されたインターフェログラムのアレイを含む。同時に測定されたインターフェログラムは、光路遅延に対して不均一にサンプリングされてもよい。インターフェログラムデータキューブの各行は、選択されたリターダンスのうちの1つに対応し、インターフェログラムデータキューブの各列は、1組の同時に測定されたインターフェログラムからの異なるインターフェログラムに対応する。インターフェログラム各々についての1組の行列ベクトル積が形成される(1004)。行列ベクトル積の各々は、再構成行列とインターフェログラムデータキューブの列との行列乗算を含む。1組の行列ベクトル積は、ハイパースペクトルデータキューブを形成する。