(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】動物歯科訓練装置
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
G09B23/28
(21)【出願番号】P 2018511423
(86)(22)【出願日】2016-09-02
(86)【国際出願番号】 GB2016052721
(87)【国際公開番号】W WO2017037474
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-08-30
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,マリー-ルイーズ アマンダ
【審査官】神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201402553(CN,Y)
【文献】米国特許第02674802(US,A)
【文献】特開2002-189409(JP,A)
【文献】米国特許第02256667(US,A)
【文献】登録実用新案第3182224(JP,U)
【文献】特開2004-126406(JP,A)
【文献】国際公開第97/034278(WO,A1)
【文献】[Online]VETERINARY DENTISTRY,2013年10月26日,https://web.archive.org/web/20131026020845/https://www.rvc.ac.uk/review/dentistry/extraction/multi.html,[2020年9月9日検索]
【文献】[Online]Surgical Techniques for Veterinary Dental Extractions,2014年10月15日,https://web.archive.org/web/20141015085301/https://www.dentalaireproducts.com/extractions-part-2/,[2020年9月9日検索]
【文献】[Online]VETERINARY DENTISTRY,2013年10月26日,https://web.archive.org/web/20131026020845/https://www.rvc.ac.uk/review/dentistry/extraction/multi.html,[2020年9月9日検索]
【文献】[Online]Surgical Techniques for Veterinary Dental Extractions,2014年10月15日,https://web.archive.org/web/20141015085301/https://www.dentalaireproducts.com/extractions-part-2/,[2020年9月9日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠部および、複数の根を有する分岐根部を含む、切断済み人工歯と、
前記分岐根部の各根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された受け部を含む基部を備え、
前記切断済み人工歯は複数の部分に切断されており、複数の前記部分の各々は、前記分岐根部の前記根の全部ではない1つ以上の根と前記冠部の一部を含み、前記複数の根は分岐した方向に沿って長軸を有し、該切断済み人工歯は複数の前記部分が互いに隣接した状態で前記受け部に収容されるように構成された、
多根歯の前記分岐根部の根ごとに抜歯する訓練に供せられる動物歯科装置。
【請求項2】
複数の前記部分の各々が、前記分岐根部の1本の根からなるものである、請求項1に記載の動物歯科装置。
【請求項3】
複数の前記部分の少なくとも1つが、前記分岐根部の2つの根からなるものである、請求項1に記載の動物歯科装置。
【請求項4】
前記切断済み人工歯の各根は、凸部または凹部を有し、前記受け部の各々は、対応する凹部または凸部を有して、該切断済み人工歯の前記分岐根部を該受け部に保持するのを助ける、請求項1から3のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項5】
前記切断済み人工歯の前記分岐根部が前記受け部に受け入れられた時に、該分岐根部の観察が可能なように、前記基部の少なくとも一部が、透明または半透明である、請求項1から4のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項6】
前記切断済み人工歯が、本物の動物の歯の複製物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項7】
各々が、請求項1から6のいずれか1項に記載の前記切断済み人工歯に従ったものである、複数の切断済み人工歯と、
各々が、請求項1から6のいずれか1項に記載の前記受け部に従ったものであると共に、複数の前記切断済み人工歯の1つに対応し、それを受け入れて、解放自在に保持するように構成された、複数の受け部を含む、前記基部と、
を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項8】
冠部、および、1本の根からなる根部を含む、少なくとも1つの非切断非分岐人工歯を、含み、
前記基部は、少なくとも1つの前記非切断非分岐人工歯の前記根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された、少なくとも1つの受け部を含むものである、請求項1から7のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項9】
冠部、および、複数の根を有する分岐根部を含む、少なくとも1つの非切断分岐人工歯を、含み、
前記基部は、少なくとも1つの前記非切断分岐人工歯の前記分岐根部の各根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された、少なくとも1つの受け部を含むものである、請求項1から8のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項10】
各々が、請求項1から6のいずれか1項に記載の前記切断済み人工歯に従ったものである、複数の更なる切断済み人工歯と、
各々が、請求項1から6のいずれか1項に記載の前記受け部に従ったものであると共に、複数の前記更なる切断済み人工歯の1つに対応し、それを受け入れて解放自在に保持するように構成された、複数の受け部を含む、更なる基部と、
を含む、請求項7、若しくは、請求項7に従属した請求項8または9に記載の動物歯科装置。
【請求項11】
冠部、および、1本の根からなる根部を含む、少なくとも1つの更なる非切断非分岐人工歯を、含み、
前記更なる基部は、少なくとも1つの前記更なる非切断非分岐人工歯の前記根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された、少なくとも1つの受け部を含むものである、請求項10に記載の動物歯科装置。
【請求項12】
冠部、および、複数の根を有する分岐根部を含む、少なくとも1つの更なる非切断分岐人工歯を、含み、
前記更なる基部は、少なくとも1つの前記更なる非切断分岐人工歯の前記分岐根部の各根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された、少なくとも1つの受け部を含むものである、請求項10または11に記載の動物歯科装置。
【請求項13】
前記基部、および、該基部に対応する複数の前記切断済み人工歯は、動物の下顎部の少なくとも一部に対応し、前記更なる基部、および、該更なる基部に対応する、複数の前記更なる切断済み人工歯は、前記動物の上顎部の少なくとも一部に対応するものである、請求項10から12のいずれか1項に記載の動物歯科装置。
【請求項14】
前記動物が、猫、または、犬である、請求項6および13に記載の動物歯科装置。
【請求項15】
動物歯科キットにおいて、
請求項1から14のいずれか1項に記載の動物歯科装置と、
動物の抜歯処置を記載した使用説明書と、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物歯科装置に関する。更に、本発明は、動物の抜歯のためのアプローチの決定方法、および、動物の抜歯方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
動物の抜歯が、動物の健康維持に必要かもしれない。しかしながら、抜歯は、獣医師にとって、難しい処置である。抜歯は、隣接組織に最小量の外傷を残しながら、歯全体を除去することを目的とする。抜歯の成功率は、歯根の形態についての知識を有すると共に、正しい抜歯技術を用いる獣医師によるものが最も高いことが、見出されている。
【0003】
特に、動物の多根歯を抜くのは、難しい。歯は、各根に分岐していることがあり、それは、各根を歯槽から除去するのに最適な方向が、異なることを意味する。隣接組織への外傷を最小にするには、多根歯を、まず、別々の切断部分に切断して、1本の根を有する片として、1片ずつ、抜歯できるようにすべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
獣医師の訓練中に、動物歯科訓練の時間が限られているので、実際に抜歯を行う際に、準備不足の獣医師が多い。このことは、抜歯の失敗率の増加、および、動物にとっての外傷率の増加につながる。本発明は、この問題を解決しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、冠部、および、複数の根を有する分岐根部を含む切断済み人工歯と、分岐根部の各根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された受け部を含む基部とを含み、切断済み人工歯は、複数の切断部分へと切断されており、複数の切断部分の各々は、分岐根部の根の全てではないが1つ以上の根、および、冠部の一部を含み、切断済み人工歯が受け部に受け入れられた時に、複数の切断部分は互いに隣接するものである動物歯科装置を、提供する。
【0006】
動物歯科装置は、ユーザが、患者である動物に抜歯を行う前に、多根歯の抜歯について、特定の歯切断手法の効果を評価し、装置上で、そのような切断済み歯の抜歯を行うことを可能にする。これにより、獣医師は、所定の多根歯の形態について、抜歯処置の多数の態様を、評価して、最適化することができる。評価および最適化しうる態様には、用いられる切断形状、異なる切断部分の除去順序、および、各切断部分の除去方向または経路を含む。したがって、装置は、獣医師の抜歯成功率を高める可能性が含まれる。
【0007】
上記のように、切断済み人工歯は、冠部、および、分岐根部を含む。冠部は、実際の歯の露出部分、つまり、実際の歯の歯肉線より上に見える部分のことである。根部は、実際の歯のうち、顎部の歯槽内に隠れた部分のことである。
【0008】
分岐根部は、1つの冠部によって互いに接続した多数の個々の根を有する、根部のことを称する。複数の根に分岐し、つまり、根は、分岐した方向に沿って走行する長軸を有していてもよい。そのような歯の冠部を切断することによって、結果的に、分岐根部の根が分けられる。このようにして、根部の根を、別々に取り出すことができる。
【0009】
切断済み人工歯は、任意の堅い材料で作製しうる。例えば、人工歯は、プラスチック、特にポリカーボネートで作製しうる。切断済み人工歯を、射出成形により形成してもよい。切断済み人工歯の各切断部分を、別々に作製してもよい。その代わりに、人工歯の全体を製作し、次に、切断して、切断済み人工歯を作製してもよい。
【0010】
動物歯科装置の基部は、切断済み人工歯の根を受け入れる。特に、基部の受け部が、切断済み人工歯の各根を受け入れて、解放自在に保持する。「解放自在に保持」という用語は、切断済み人工歯を除去できること、特に、その根を、基部の受け部から除去できることを称する。これは、各根が、基部に、除去自在に固定されていることを、意味する。これにより、装置のユーザは、根を受け部からの除去すること、並びに、切断済み人工歯の切断部分の最適な取出し順序、および、各切断部分の最適な取出し経路を評価することができる。
【0011】
根は、解放自在に保持されるように、基部に戻しうるものであってもよい。これにより、装置のユーザは、切断済み人工歯の同じ切断部分の除去動作を何度も行って、抜歯アプローチを評価でき、更に、装置の再使用を確実にする。
【0012】
受け部が、切断済み人工歯の根を受け入れた場合には、各根の実質的に全表面が、基部の受け部の中に入る。このように、基部の受け部は、人工歯の歯槽として機能し、根を、全側面から完全に囲い込み、一方、切断済み人工歯の冠部は、露出したままである。
【0013】
受け部は、好ましくは、対応する根を補うような形状であり、歯を、特定の向きに保持して受け入れるように構成される。
【0014】
受け部が、切断済み人工歯の根を受け入れた場合には、各根の実質的に全表面が、基部の受け部に接触してもよい。このようにして、基部は、根と受け部の間の摩擦力を提供して、ユーザが、取出しに十分な力を加えた場合に、根を取り出すことができるように、根を保持する。
【0015】
基部を、弾性の材料で作製し、分岐根部の根の保持を助け、更に、ある程度は、動物の顎部の歯槽の作用に似たようにしてもよい。特に、基部を、シリコーンゴムなどのエラストマー材料で形成してもよい。基部は、鋳型成形してもよい。鋳型処理は、基部の材料の冷間成形、つまり、シリコーンゴムの冷間成形で、行いうる。
【0016】
上記のように、切断済み人工歯は、複数の切断部分に切断されている。これらの切断部分の全てを組み合わせて、欠けた部分のない完全な人工歯が形成される。更に、基部の受け部は、これらの複数の切断部分を受け入れた場合に、切断部分同士が隣接するように、構成されている。換言すれば、受け部に受け入れられた時の切断済み人工歯は、完全な人工歯として配置される。
【0017】
切断済み人工歯は、各切断部分が、分岐根部の根の全てではないが1つ以上の根を含むように切断されている。切断済み人工歯の各切断部分は、人工歯の冠部の一部も含む。したがって、装置のユーザは、全分岐根部を、切断済み人工歯の全ての根の数より少ない数の根を含む切断部分に分割するように、歯を切断する効果を、評価できる。
【0018】
切断済み人工歯の各切断部分は、1つの完全な根、または、複数の完全な根からなる。換言すれば、切断済み人工歯の切断部分で、1本の根を切断した、根の一部を含むものはない。実際の抜歯において、獣医師は、患者である動物に重大な量の外傷を生じさせずに、実際の歯の根を切断することはできない。したがって、本明細書に記載の動物歯科装置は、そのような処置に関するものではない。
【0019】
複数の切断部分の各々は、分岐根部の1本の根からなるものでもよい。これは、動物の歯を切断して、取り出すための好ましいアプローチを示しており、1本の根を有する片を、個々に取り出すことができるように、歯を切断している。したがって、これは、人工歯を、1つだけの根からなる切断部分が残るように切断した効果を、装置のユーザが評価できるようにしている。このことは、実際に抜歯する時のユーザの技術を高める可能性がある。
【0020】
複数の切断部分のうちの少なくとも1つは、分岐根部の2つの根からなるようにすることもできる。これは、2つの根を有する切断部分が残るように、歯を切断した効果を、ユーザが評価できるようにしている。少なくとも1つの切断部分が2つより多い根からなるように、歯を切断することもできる。
【0021】
切断済み人工歯の各根は、凸部または凹部を有してもよい。この凸部または凹部は、切断済み人工歯の根の表面のどこに現れていてもよい。受け部は、対応する凹部または凸部を有し、それは、受け部が適切な根を受け入れた時に、その根の凸部または凹部と、効果的に嵌合しうる。2つの構成要素上の凹部と凸部の嵌合は、基部が切断済み人工歯を受け入れた時の締まり嵌合に、貢献する。このようにして、受け部における切断済み人工歯の分岐根部の保持が、改良される。更に、凸部と凹部の嵌合は、受け部において、根が正しい向きかを示すのも助けうる。
【0022】
歯または受け部における凸部は、少なくとも部分的に、該当する根の除去方向に垂直に突出するように配置されるのが好ましい。これにより、凸部が、受け部における根の保持に、確実に貢献するようになる。
【0023】
凸部、および、対応する凹部は、任意の3次元形状でありうる。凸部と凹部が、対応する形状で、凸部が凹部に嵌合自在であることだけを必要とする。特に、凸部は、ドーム状の凸部であり、凹部は、対応するドーム状の凹部であってもよい。
【0024】
動物歯科装置の基部の少なくとも一部は、透明または半透明であってもよい。このようにして、受け部が根部を受け入れた時に、ユーザは、切断済み人工歯の根部を観察できる。これにより、ユーザは、切断済み人工歯の根の形態をみることができる。本来の位置で根を見ることができることは、ユーザが、根の形態と、切断手法と、取出し順序と、取出し方向との関係を評価するのを助ける。更に、ユーザが人工歯を基部から取り出す時に、視覚的フィードバックを提供するのも助ける。実際の動物については不可能である、この特別なレベルの視覚的フィードバックは、ユーザの抜歯技術を、高める可能性がある。
【0025】
上記のように、少なくとも受け部が、透明または半透明であることが好ましい。しかしながら、基部全体が、透明または半透明であってもよい。
【0026】
動物歯科装置の切断済み人工歯は、本物の動物の歯の実質的な複製物であってもよい。このように、動物歯科装置は、具体的な動物の多根歯の実際の状態を反映する。したがって、ユーザは、所定の動物の歯についての特定の切断技術を評価できる。切断済み人工歯が、本物の動物の歯の実質的な複製物である場合には、ユーザが歯のタイプを特定できるように、その歯の本質的特徴を複製している。したがって、本物の歯の根および冠部の形態を複製している。
【0027】
動物歯科装置のために実質的に複製しうる歯は、特に犬および猫の、多根歯である大臼歯、および、多根歯である小臼歯である。
【0028】
複製できる具体的な歯を、改良トライアダン方式を用いて特定できる。改良トライアダン方式は、3桁の数字を用いて、歯を一意に特定する。最初の数字は、歯が位置する顎部の四分円を特定し、右上は1、左上は2、左下は3、右下は4である。次の2つの数字は、四分円の中での歯の位置を示し、顎部の最前部の歯から、数える。したがって、例えば、犬の右上四分円の最前部の歯は、切歯であり、101と表し、犬の右上四分円の最後部の歯は、大臼歯であり、101と表した切歯から10番目の歯なので、110と表す。
【0029】
本明細書に記載の切断済み人工歯として実質的に複製しうる可能性のある多根歯は、改良トライアダン方式で、106、107、108、109、110、206、207、208、209、210、307、308、309、310、311、407、408、409、410、および、411と表す犬の歯である。
【0030】
更に、本明細書に記載の切断済み人工歯として実質的に複製しうる可能性のある多根歯は、改良トライアダン方式で、106、107、108、109、206、207、208、209、307、308、309、407、408、および、409と表す猫の歯である。
【0031】
基部の受け部は、本物の動物の歯を本来見かける、動物の顎部の一部の実質的な複製物であってもよい。本物の動物の歯の実質的な複製物と連結された場合には、結果的に、動物歯科装置は、抜歯できる動物の歯が完備された、動物の顎部の一部の実質的な複製物になる。これにより、ユーザは、歯科装置を、実際の動物の対応する歯を抜くための直接的な参考情報源として、利用することができる。このように、ユーザは、動物歯科装置を用いて、この歯についての切断の効果を見て、次に、実際の動物の抜歯に、このアプローチを適用または採用するかを、決定できる。これにより、獣医師が、実際に切断を行う前に、切断処置を視覚化できること、並びに、動物に手術を行う前に、切断済み歯についての最適な取出し順序および最適な取出し経路で、練習できることによって、獣医師の技術を高めることができる。
【0032】
動物歯科装置は、対応する本物の動物の歯の除去を容易にする切断処置を示すように切断した、切断済み人工歯を有してもよい。したがって、動物歯科装置は、本物の歯の除去を助けて、患者である動物への外傷を削減する切断処置を示す。これにより、ユーザは、切断を行う前に、望ましい切断処置を視覚化して、更に、最適な取出し順序および取出し経路を体験できる。ここでも、動物の抜歯の前に、装置上で抜歯を評価する機会があることは、抜歯に関する成功率を高め、患者である動物が受ける外傷を削減する可能性がある。
【0033】
本物の歯の除去を容易にする処置とは、結果的に、獣医師にとって抜歯が容易になり、患者である動物への外傷を削減するのを助ける、任意の切断処置を称する。
【0034】
動物歯科装置は、1つだけの切断済み歯を有するものに限定されない。歯科装置が、複数の切断済み歯を有することができることで、ユーザに、様々な異なる歯のタイプおよび切断手法を、提供する。このように、1つの動物歯科装置は、獣医師を、異なる抜歯処置範囲に亘って、助けうる。したがって、装置は、複数の切断済み人工歯を含んでもよく、各切断済み人工歯は、本明細書に記載した切断済人工歯に従ったものであり、基部は、複数の受け部を含み、各受け部は、本明細書に開示された受け部に従ったものであり、複数の受け部の各々は、複数の切断済み人工歯の1つに対応し、それを受け入れて、解放自在に保持するように構成されている。
【0035】
複数の切断済み人工歯の各々は、異なるタイプの歯であってもよい。本明細書において、異なるタイプの歯とは、概して、異なる範疇の歯、つまり、大臼歯、小臼歯、犬歯、および、切歯のことを称する。しかしながら、異なるタイプの歯は、改良トライアダン方式で異なる番号を付与された歯として、より具体的にも画定しうる。例えば、1本の歯は、408の小臼歯であり、他の歯は、407の小臼歯などであってもよい。その代わりに、または、追加で、各歯は、異なる動物の1つ以上の歯を表してもよい。そのような装置は、複数の動物/歯のタイプについての1つの参照ポイントを提供する点で、便利である。
【0036】
複数の切断済み人工歯は、2本の歯、3本の歯、または、4本の歯、または、5本の歯、または、5本より多くの歯であってもよい。その場合には、対応する数の受け部があるだろう。
【0037】
更に、複数の切断済み歯がある場合には、各切断済み歯は、異なる形状であるか、または、各切断済み歯は、同じ形状であってもよいことに留意すべきである。そのような変形は、切断経路を異なる形状にすることも含む。特に、各切断済み歯は、動物歯科装置がユーザに提供する想定シナリオを増やすように、異なる形状であることが好ましい。
【0038】
動物歯科装置は、少なくとも1つの非切断非分岐人工歯を含んでもよく、非切断非分岐人工歯は、冠部、および、1本の根からなる根部を含み、基部は、少なくとも1つの受け部を含み、受け部は、少なくとも1つの非切断非分岐人工歯の根を受け入れて、解放自在に保持するように構成される。
【0039】
非切断非分岐人工歯があることで、切断済みである分岐人工歯と対比できる。これにより、ユーザは、多根歯に必要なことを、単根歯のそれと比較でき、各々の抜歯に必要な異なる技術が分かる。非切断非分岐歯は、本物の歯の実質的な複製物であり、このことは、ユーザが、抜歯のために切断する必要がない歯を特定するのも助け、不必要な切断を避ける。
【0040】
更に、動物歯科装置は、少なくとも1つの非切断分岐人工歯を含み、非切断分岐人工歯は、冠部、および、複数の根を含む分岐根部を含み、基部は、少なくとも1つの非切断分岐人工歯の分岐根部の各根を受け入れて、解放自在に保持するように構成された少なくとも1つの受け部を含む。
【0041】
非切断多根人工歯があることで、ユーザは、切断しない多根歯の抜歯を、切断した後に多根歯の抜歯を行う好ましいアプローチと、比較できる。このことは、ユーザが、切断が必要な場合を決定するのを助けうる。更に、抜歯前に切断を必要としない多根歯のタイプを示すためにも、使用しうる。
【0042】
動物歯科装置は、更なる基部に対応する、複数の更なる切断済み人工歯を含んでもよい。複数の更なる切断済み人工歯、および、更なる基部は、本明細書に記載の複数の切断済み人工歯および基部の特徴を有する。
【0043】
更なる基部があることで、動物歯科装置は、複数の更なる抜歯の想定シナリオを示すことができる。特に、基部、および、更なる基部が、対応する複数の切断済み人工歯、および、複数の更なる切断済み人工歯と共に、動物の顎部の異なる部分を複製したものであることが好ましいかもしれない。例えば、基部は、下顎部の一部を示し、一方、更なる基部は、上顎部の一部を示し、両方の基部が、その部分についての対応する複製した人工歯を、有してもよい。したがって、1つの装置で、動物の複数の部分からの抜歯を示すことが可能になる。その代わりに、基部、および、更なる基部は、異なる動物の歯および顎部を示してもよい。
【0044】
基部と更なる基部を、互いに接続するように構成してもよい。これにより、基部と更なる基部を、1つのユニットとして、容易に保管でき、基部または更なる基部の1つを誤配置してしまう可能性を、減らすことができる。特に、基部と更なる基部を、補い合う形状にして、互いに接続しうるようにしてもよい。
【0045】
本明細書において、動物歯科装置は、動物の本物の外形を複製している態様を有してもよいと記載した場合には、任意の動物のことであってもよい。しかしながら、この動物は、猫または犬であることが、特に好ましく、それは、獣医が、一般に抜歯を行うのは、猫と犬だからである。
【0046】
上記のように、動物歯科装置が複数の人工歯を含む場合、少なくとも1つの歯が、多数の根を有する切断済み人工歯である限りは、本明細書に記載の特徴の任意の組合せを有する人工歯を、任意に組合せうる。
【0047】
複数の人工歯の可能な組合せは、改良トライアダン方式で、407、408、409、410、および、411と表す歯から選択した、犬の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0048】
複数の人工歯の更なる可能な組合せは、改良トライアダン方式で、307、308、309、310、および、311と表す歯から選択した、犬の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0049】
その代わりの複数の人工歯の好ましい組合せは、改良トライアダン方式で、106、107、108、109、および、110と表す歯から選択した、犬の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0050】
更に、その代わりの複数の人工歯の好ましい組合せは、改良トライアダン方式で、206、207、208、209、および、210と表す歯から選択した、犬の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0051】
基部、および、更なる基部がある場合には、基部に対応する複数の人工歯は、改良トライアダン方式で、407、408、409、410、および、411と表す歯を含む、犬の歯の実質的な複製物であり、更なる基部に対応する複数の更なる人工歯は、改良トライアダン方式で、106、107、108、109、および、110と表す歯を含む、犬の歯の実質的な複製物であってもよい。
【0052】
その代わりに、基部、および、更なる基部がある場合に、基部に対応する複数の人工歯は、改良トライアダン方式で、307、308、309、310、および、311と表す歯を含む、犬の歯の実質的な複製物であり、更なる基部に対応する複数の更なる人工歯は、改良トライアダン方式で、206、207、208、209、および、210と表す歯を含む、犬の歯の実質的な複製物であってもよい。
【0053】
複数の人工歯の可能な組合せは、改良トライアダン方式で、407、408、および、409と表す歯から選択した、猫の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0054】
複数の人工歯の更なる可能な組合せは、改良トライアダン方式で、307、308、および、309と表す歯から選択した、猫の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0055】
その代わりの複数の人工歯の好ましい組合せは、改良トライアダン方式で、106、107、108、および、109と表す歯から選択した、猫の歯の実質的な複製物である組合せである。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0056】
更に、複数の人工歯の代わりの好ましい組合せは、改良トライアダン方式で、206、207、208、および、209と表す歯から選択した猫の歯の実質的な複製物である。複数の人工歯が、これらの全てを含むのが、特に好ましい。
【0057】
基部、および、更なる基部がある場合には、基部に対応する複数の人工歯は、改良トライアダン方式で、407、408、および、409と表す歯を含む、猫の歯の実質的な複製物であり、更なる基部に対応する複数の更なる人工歯は、改良トライアダン方式で、106、107、108、および、109と表す歯を含む、猫の歯の実質的な複製物であってもよい。
【0058】
その代わりに、基部、および、更なる基部がある場合に、基部に対応する複数の人工歯は、改良トライアダン方式で、307、308、および、309と表す歯を含む、猫の歯の実質的な複製物であり、更なる基部に対応する複数の更なる人工歯は、改良トライアダン方式で、206、207、208、および、209と表す歯を含む、猫の歯の実質的な複製物であってもよい。
【0059】
更に、本発明は、動物歯科キットも提供する。動物歯科キットは、本明細書に開示した動物歯科装置、および、動物の抜歯処置を記載した使用説明書を含む。動物歯科装置が、特定の動物の複製物を含む場合には、使用説明書を、その特定の動物の抜歯用に合わせてもよい。使用説明書は、例えば、リーフレット、または、パンフレットとして、ハードコピーで提供されてもよい。その代わりに、使用説明書は、CD ROM、および、DVDなどのコンピュータ読み取り可能媒体上で、提供されてもよい。更に、使用説明書は、ワールドワイドウェブ上で入手可能な情報内容で、補足されてもよい。
【0060】
そのような動物歯科キットは、動物の抜歯処理において、ユーザを助ける。
【0061】
更に、本発明は、生きている動物から抜歯するためのアプローチを決定する方法を提供し、その方法は、生きている動物から抜歯すべき動物の歯を特定する工程と、本明細書に記載の動物歯科装置を調べて、特定した動物の歯に対応する切断済み人工歯を特定し、動物の抜歯を容易にする切断処置を決定し、更に、任意で、切断した動物の歯の各切断部分の適切な取出し順序および経路を決定する工程とを含む。
【0062】
本明細書に記載の動物歯科装置を利用して、次に行う抜歯のための獣医師の技術が、高められる。特に、動物歯科装置は、獣医師が、次に行う抜歯について、特定の切断手法で実現されるものを体験できるようにする。このようにして、獣医師は、歯の切断のために採用する切断手法を、最適化できる。更に、方法は、獣医師が、動物の切断した歯を取り出すのに必要な取出し順序および経路を体験できるようにする。ここでも、動物の歯を実際に抜歯する前に、この体験ができることで、切断した歯を、最適な順序で、かつ、隣接組織への外傷を最小にする円滑な方法で取り出すように、獣医師に、前もって教えることができる。
【0063】
生きている動物から抜歯するためのアプローチの決定に続き、獣医師は、動物歯科装置に従って、動物の歯を、複数の切断部分に切断でき、次に、動物の歯の複数の切断部分の各々を、別々の取出し工程で、取り出すことができる。
【0064】
上記のように、実際の抜歯の前に、本明細書に記載の動物歯科装置を利用することで、結果的に、技術を高めて、患者である動物への外傷の発生を削減できる。
【0065】
任意の形状の動物歯科装置を、本明細書に記載の方法と共に使用しうることに、留意すべきである。しかしながら、本明細書に記載の方法は、動物歯科装置が、実際の動物の歯/動物の歯を本来見かける顎部の実質的な複製物を含む場合に、特に有効である。
【0066】
ここで、以下の図面を参照して、本発明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明で使用するための切断済み人工歯を示す前面図である。
【
図2】2つの切断部分に分けた
図1の切断済み人工歯を示す斜視図である。
【
図4】
図3の動物歯科装置の基部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、冠部4および分岐根部6を有する、1つの切断済み人工歯2を示している。分岐根部は、2つの根8、10を有する。切断済み人工歯2は、平面12に沿って、2つの切断部分へと切断されている。各切断部分は、1本の根8、10、および、冠部の一部14、16を有する。
図1から分かるように、切断済み人工歯の2つの切断部分は、切断線12に沿って隣接している。更に、
図1に示すように、2つの切断部分が隣接するように、切断済み歯を基部に配置しうる。
【0069】
更に、
図1の切断済み人工歯は、基部の対応する凸部と相互作用する円形窪み部18を有して、根が、基部の受け部に保持されるのを助ける。
【0070】
図2は、
図1の切断済み人工歯を、分かれた状態で配置して示している。
【0071】
図1および2に示した切断済み人工歯は、犬の歯の実質的な複製物であり、切断平面12は、2つの根を、別々に、容易に取り出すように歯を切断しうるだろう位置を示している。図示した犬の歯は、改良トライアダン方式を用いて408と表される右下小臼歯である。
【0072】
動物歯科装置のユーザが、
図1および2の切断済み歯を操作できることで、2つの根8、10の好ましい除去順序があり、1本の根8を除去する最適な経路が、他方の根10につながっている冠部に当たってしまうので、1本の根8は、他方の根10の後に除去すべきだということを、ユーザに示しうる。
【0073】
図3は、基部20、および、更なる基部22を示している。基部20は、それに関連した3本の歯24、26、28を有する。歯は、猫の歯の実質的な複製物である。具体的には、歯のうちの1本の歯24は、(改良トライアダン方式を用いて409と表される)右下大臼歯の実質的な複製物である。他の歯26は、(改良トライアダン方式を用いて408と表される)右下小臼歯の実質的な複製物である。他の歯28は、(改良トライアダン方式を用いて407と表される)他の右下小臼歯である。各歯は、対応する受け部に受け入れられる。3つの受け部は、組み合わさって、猫の顎部の一部、この場合は、猫の右下顎部の連続した複製物を形成する。歯のうちの2本の歯24、26は、2つの切断部分に切断されており、全ての歯24、26、28は、2つの根に分岐している。根は、半透明の基部を通して見ることができる。歯のうちの2本の歯24、26上に示した切断平面は、歯を、別々の根部として、容易に除去しうる切断位置を示している。操作できること、および、各切断済み歯24の根の形態を見ることができることによって、獣医師は、歯24の切断部分を除去するためには、1つの切断部分30を、他の切断部分32の前に除去するのが、最良の順序だと分かる。これは、1つの切断部分30が、他の切断部分32の最適な取出し経路に当たってしまうからである。したがって、動物歯科装置を利用することによって、獣医師は、装置に従って、患者である動物への外傷を最小にして、切断、および、取出しを行うことができる。
【0074】
更なる基部22は、更なる4本の歯34、36、38、40を有し、各々、更なる基部22の対応する受け部に受け入れられている。更なる切断済み歯、および、対応する受け部は、猫の右上顎部の一部の実質的な複製物である。歯のうちの1本の歯34は、改良トライアダン方式を用いて109と表される右上大臼歯の実質的な複製物である。他の歯36は、改良トライアダン方式を用いて108と表される右上小臼歯の実質的な複製物である。更なる歯38は、改良トライアダン方式を用いて107と表される右上小臼歯の実質的な複製物である。他の歯40は、改良トライアダン方式を用いて106と表される右上小臼歯の実質的な複製物である。
【0075】
2本の歯36、38は、切断されている。2本の歯34、40は、切断されていない。切断されていない歯のうちの1本の歯34は、
図3では見えないが、2つの根を有し、一方、歯40は、1本の根だけを有する。歯36は、3つの根を有する。この歯を、3つの別々の切断部分を生成するように切断し、各切断部分が、1つだけの根を有するようにする。
図3において、切断平面のうちの1つの平面42が、容易に分かる。3つに根が分かれた歯36の第2の切断平面44は、
図4の平面図から分かる。ここでも、獣医師が、この切断済み人工歯を観察および操作できることで、獣医師は、どのアプローチを選択すれば、結果的に患者である動物への外傷の量を最小にすることができるか、分かる。
【0076】
基部20、および、更なる基部22内の各歯は、対応する受け部に解放自在に保持されているので、
図5に示すように、これらの基部から除去しうる。
【0077】
基部20、および、更なる基部22は、延伸部50、および、延伸部50を反対側で受け入れるように構成された補足部52を有する。このように、基部20と更なる基部22を、互いに接続できる。延伸部50は、補足部52に、摩擦嵌合により保持される。
【0078】
本発明の全体的なアプローチを、任意の具体的な動物のために用いうる。例えば、
図6は、犬用の動物歯科装置を示しており、基部46の受け部、および、対応するする人工歯は、犬の右下顎部の一部の実質的な複製物である。更なる基部48は、犬の右上顎部の一部の実質的な複製物である、複数の受け部および対応する歯を有する。分かるように、このアプローチを任意の動物用に再現できる。
【0079】
上記のような詳細な記載は、本発明を示したものである。しかしながら、本発明の範囲は、以下の請求項によって画定される。
【符号の説明】
【0080】
2、24、26、28、34、36、38、40 歯
4、14、16 冠部
6 分岐根部
8、10 根
30、32 切断部分
12、42、44 切断平面
20、46 基部
22、48 更なる基部
50 延伸部
52 補足部