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特許7082594掘削用治具および土留め構造物の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】掘削用治具および土留め構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/02 20060101AFI20220601BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20220601BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
E02D13/02
E02D3/12 102
E02D13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019134639
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021017757
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋一
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-162528(JP,A)
【文献】特開昭63-181813(JP,A)
【文献】実開昭55-071743(JP,U)
【文献】特開平9-165741(JP,A)
【文献】特開平1-310015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガスクリューの先端部に取り付けられる掘削用治具であって、
攪拌翼と停止翼とを備え前記オーガスクリューとともに回転する内側ドラムと、前記オーガスクリューとともに回転しない外側ドラムと、を有し、前記オーガスクリューの回転軸に嵌装される取付部と、
前記外側ドラムに設けられ、地盤中の先行構造物に対し前記オーガスクリューの軸方向と交差する方向の位置を規制することで前記オーガスクリューによる削孔方向を前記先行構造物の一の側面部に沿わせる規制部と
を備えることを特徴とする掘削用治具。
【請求項2】
オーガスクリューによる削孔に伴い地盤中の先行構造物の一の側面部に沿って泥土を削り取るスクレーパ部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の掘削用治具。
【請求項3】
オーガスクリューによる削孔に伴い地盤中の先行構造物の一の側面部と交差する他の側面部に沿って泥土を削り取る補助スクレーパ部を備える
ことを特徴とする請求項2記載の掘削用治具。
【請求項4】
先行構造物の一の側面部に対向する位置に所定間隔の隙間を形成する隙間形成部を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の掘削用治具。
【請求項5】
複数の柱状体が隣接する土留め構造物を構築する土留め構造物の構築方法であって、
掘削孔に柱状体を建て込む工程と、
請求項1ないし4いずれか一記載の掘削用治具を回転軸に取り付けたオーガスクリューにより、前記柱状体の一の側面部に沿う方向に新たな柱状体を建て込むための新たな掘削孔を形成する工程と
を備えることを特徴とする土留め構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削に用いる掘削用治具および複数の柱状体が隣接する土留め構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空部を有するプレキャストコンクリート角杭(PC角柱)の中空部にオーガスクリューを挿入し、先端部を掘削し排土しながらPC角柱を沈設し、これを隣接して連ねることで土留め構造物を構築する工法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
施工地盤が硬い場合や礫が多い場合には、既製杭と同様のプレボーリング工法で地盤を削孔し、掘削孔にセメントスラリーを注入し攪拌してソイルセメントとした後、ソイルセメントが固化する前にPC角柱を沈設し、これを隣接して連ねる工法が採用される。
【0004】
この場合、第1の掘削孔を削孔し、この掘削孔にセメントスラリーを注入し攪拌してソイルセメントとした後、ソイルセメントの固化前に第1のPC角柱を沈設する。続いて、第2の掘削孔を、第1の掘削孔の一部と重なるように削孔し、セメントスラリーを注入して攪拌しソイルセメントとした後、ソイルセメントの固化前に第2のPC角柱を沈設する。PC角柱を精度よく隣接させて連ねて沈設するには、第1の掘削孔と第2の掘削孔との間隔が概ね一定であることが必要であるが、掘削孔間を一定とし、また掘削孔の直線性を確保するためには、掘削用定規材などが別途必要となる。
【0005】
他方、TRD工法に使用されるチェーンカッターを用いて、地盤に平面横長状の掘削溝を掘削し、この掘削溝にセメントスラリーを注入した後、PC角柱を連続的に挿入する工法もある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、チェーンカッターは特殊な装置であるため台数が限られており、汎用性が高い工法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平2-27020号公報
【文献】特許第3850851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、複数の柱状体を精度よく隣接させて連ねて土留め構造物を汎用的に構築可能とすることが望まれている。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、複数の柱状体を精度よく隣接させて土留め構造物を汎用的に構築可能な掘削用治具および土留め構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の掘削用治具は、オーガスクリューの先端部に取り付けられる掘削用治具であって、攪拌翼と停止翼とを備え前記オーガスクリューとともに回転する内側ドラムと、前記オーガスクリューとともに回転しない外側ドラムと、を有し、前記オーガスクリューの回転軸に嵌装される取付部と、前記外側ドラムに設けられ、地盤中の先行構造物に対し前記オーガスクリューの軸方向と交差する方向の位置を規制することで前記オーガスクリューによる削孔方向を前記先行構造物の一の側面部に沿わせる規制部とを備えるものである。
【0011】
請求項2記載の掘削用治具は、請求項1記載の掘削用治具において、オーガスクリューによる削孔に伴い地盤中の先行構造物の一の側面部に沿って泥土を削り取るスクレーパ部を備えるものである。
【0012】
請求項3記載の掘削用治具は、請求項2記載の掘削用治具において、オーガスクリューによる削孔に伴い地盤中の先行構造物の他の側面部に沿って泥土を削り取る補助スクレーパ部を備えるものである。
【0013】
請求項4記載の掘削用治具は、請求項1ないし3いずれか一記載の掘削用治具において、先行構造物の一の側面部に対向する位置に所定間隔の隙間を形成する隙間形成部を備えるものである。
【0014】
請求項5記載の土留め構造物の構築方法は、複数の柱状体が隣接する土留め構造物を構築する土留め構造物の構築方法であって、掘削孔に柱状体を建て込む工程と、請求項1ないし4いずれか一記載の掘削用治具を回転軸に取り付けたオーガスクリューにより、前記柱状体の一の側面部に沿う方向に新たな柱状体を建て込むための新たな掘削孔を形成する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、掘削用治具を用い、固化材を混合攪拌しつつオーガスクリューによって掘削孔を先行構造物の一の側面部に沿って容易に形成できるので、特殊な装置などを用いることなく、複数の柱状体を精度よく隣接させて土留め構造物を汎用的に構築可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態の掘削用治具を示す斜視図、(b)は掘削用治具を示す側面図である。
図2】同上土留め構造物の構築方法の定規材設置工程を模式的に示す側面図である。
図3】(a)は同上土留め構造物の構築方法の削孔工程を模式的に示す側面図、(b)は(a)により形成された削孔を模式的に示す平面図である。
図4】(a)は同上土留め構造物の構築方法の地盤改良体形成工程を模式的に示す側面図、(b)は(a)により形成された地盤改良体を模式的に示す平面図である。
図5】(a)は同上土留め構造物の構築方法の建て込み工程の一部を模式的に示す側面図、(b)は同上土留め構造物の構築方法の建て込み工程の(a)に続く工程を模式的に示す側面図、(c)は(a)および(b)により建て込まれた構造物を模式的に示す平面図である。
図6】(a)は同上土留め構造物の構築方法の削孔工程を模式的に示す側面図、(b)は(a)により形成された削孔を模式的に示す平面図である。
図7】同上土留め構造物の構築方法により形成された土留め構造物を模式的に示す側面図である。
図8】(a)は本発明の第2の実施の形態の掘削用治具を示す側面図、(b)は掘削用治具を示す平面図、(c)は掘削用治具を先行構造物側から示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図7に示されるように、本実施の形態において、1は土留め構造物である。土留め構造物1は、例えば複数の構造物である柱状体2が地盤3中に順次隣接されて構築された地中連続壁である。柱状体2は、PC壁体とも呼ばれるもので、直線長手状、かつ、断面矩形(正方形)状の既製コンクリート部材である。図1(a)に示されるように、柱状体2には、円形状の中空部4が中央部に形成されている。また、柱状体2には、隣接する柱状体2との間に目地を充填するための半円状または半楕円状などの目地充填孔であるグラウト孔5が、対をなして対向する一の側面部2a,2aにそれぞれ溝状に形成されている。そして、各柱状体2は、図7に示されるように、長手方向を上下方向として、地盤3に削孔された掘削孔6にそれぞれ沈設される。掘削孔6には、固定液としてのセメントミルクが注入されて、掘削土と混合することで地盤改良体であるソイルセメント化され、柱状体2を支持する支持部7が形成されている。掘削孔6は、基本的に先端に至るまで同一径に形成されている。
【0019】
土留め構造物1は、図3などに示される杭打ち機10や補助クレーン(相伴クレーン)、バックホウなどの建設機械などを用いて施工・構築される。杭打ち機10は、土留め構造物1の規模に応じて、懸垂式杭打ち機や三点式杭打ち機が用いられる。杭打ち機10は、図示されないベースマシンを備える。ベースマシンには、ガイドとなる長手状のリーダ14が設けられている。リーダ14は、地盤3に対し、鉛直上下方向に沿って設置される。リーダ14には、このリーダ14に沿ってガイドされる駆動部15が取り付けられている。駆動部15は、モータや減速機などからなり、掘削機械であるオーガスクリュー16を周方向に回転させる。オーガスクリュー16は、中間振れ止め部17によりリーダ14に対し振れ止めされている。
【0020】
オーガスクリュー16の外周部には、スパイラル羽根18が突設されている。また、オーガスクリュー16の先端部には、オーガヘッド19が設けられている。オーガヘッド19は、オーガスクリュー16の先端部に一体的に接続されている。本実施の形態において、オーガスクリュー16としては、地盤3が軟弱な場合など、必要な場合にはケーシングオーガスクリューを用いてもよい。
【0021】
また、オーガスクリュー16には、掘削用治具24が取り付け可能となっている。掘削用治具24は、建て込み用ガイドとも呼ばれ、オーガスクリュー16による削孔方向を、先行構造物、本実施の形態においては先行して掘削孔6に沈設された地盤3中の柱状体2の一の側面部2aに沿わせるものである。
【0022】
図1(a)および図1(b)に示されるように、掘削用治具24は、オーガスクリュー16の回転軸に対し取り付けられる取付部25を備える。取付部25は、円筒状に形成され、オーガスクリュー16の回転軸に貫装される。すなわち、取付部25は、オーガスクリュー16の回転軸に対し、同軸または略同軸に配置され、取付部25に対し、オーガスクリュー16の回転軸が回転自在となっている。本実施の形態において、取付部25は、攪拌装置である攪拌ドラムが用いられる。すなわち、本実施の形態の取付部25は、地盤3(図2)をなす泥土を掘削するとともにスラリー(固化材)を混合攪拌する機能を有する。本実施の形態の取付部25は、オーガスクリュー16とともに回転する内側ドラムと、オーガスクリュー16に対して固定された外側ドラムとの二重ドラム構造となっており、内側ドラムに多段の拌翼と停止翼とが設けられて、これら攪拌翼と停止翼とによって、オーガスクリュー16回転に伴い泥土を細断およびスラリーを混合拌するようになっている。また、取付部25は、オーガスクリュー16に対し、このオーガスクリュー16の軸方向である長手方向、つまり削孔方向への移動が規制されている。取付部25により、掘削用治具24は、オーガスクリュー16の先端部とオーガヘッド19との間に取り付けられる。
【0023】
なお、以下、取付部25の軸方向を第1の方向である上下方向とし、それと直交する幅方向を第2の方向である左右方向とし、これら上下方向および左右方向と直交する方向を第3の方向である前後方向として説明する。
【0024】
掘削用治具24は、先行構造物に対しオーガスクリュー16の削孔方向である長手方向と交差または直交する方向の位置を規制する規制部26を備える。すなわち、規制部26を先行構造物に沿わせることにより、先行構造物とオーガスクリュー16との間隔が所定の一定間隔に保たれる。規制部26は、先行構造物を挟み込むように形成されている。つまり、規制部26は、先行構造物に対し接近する方向である後方向、および、先行構造物の幅方向である左右方向の位置を規制する。言い換えると、規制部26は、先行構造物に対しオーガスクリュー16の軸方向と交差する方向の位置を規制することでオーガスクリュー16による削孔方向を先行構造物の一の側面部に沿わせるようになっている。規制部26の幅は、先行構造物の幅に応じて設定されている。本実施の形態において、規制部26は、柱状体2の対をなして対向する他の側面部2b,2bを挟み込むようにコ字状に形成されている。すなわち、規制部26は、取付部25の軸方向であるオーガスクリュー16の削孔方向つまり上下方向に見て、一の側面部2aと対向して左右方向に延びる一の対向部27と、他の側面部2b,2bとそれぞれ対向して前後方向に延びる他の対向部28,28とが連結されている。一の対向部27の両側部から他の対向部28,28が互いに平行または略平行に延びている。
【0025】
また、規制部26は、取付部25に対し後方に位置している。規制部26は、取付部25に対して、径方向に延びる連結部31を介して連結されている。連結部31は、取付部25と一体に形成されている。連結部31は、オーガスクリュー16のスパイラル羽根18の回転半径に応じて長さが設定され、この回転半径よりも長く延びて形成されている。そのため、スパイラル羽根18の回転範囲の外側に規制部26が位置するようになっている。
【0026】
また、掘削用治具24は、スクレーパ部33を備えていてもよい。スクレーパ部33は、オーガスクリュー16による削孔に伴い地盤3中の先行構造物の一の側面部に沿って、地盤改良体を含む泥土を削り取る。
【0027】
スクレーパ部33は、取付部25の軸方向に対して平行または略平行に突設され、オーガスクリュー16の削孔方向である下方向に削り取り方向を有するようになっている。スクレーパ部33は、規制部26の一の対向部27に連なって形成されている。スクレーパ部33は、規制部26の下部に位置する。スクレーパ部33は、規制部26の一の対向部27から、取付部25の軸方向に対して平行または略平行に下方へと突出している。また、スクレーパ部33は、左右方向に延びている。本実施の形態において、スクレーパ部33は、掘削用治具24の全幅に亘り連なって形成されている。また、スクレーパ部33は、側方から見て、楔状に形成されている。すなわち、スクレーパ部33は、前側に位置する掘削面33aが、先端部に向かい、取付部25側である前側から規制部26側である後側へと徐々に傾斜して形成されている。掘削面33aは、スクレーパ部33での掘削方向に対し鋭角状に傾斜している。また、スクレーパ部33は、掘削面33aとは反対側である後側に位置するガイド面33bが、一の対向部27の対向面27aと面一または略面一に形成されている。スクレーパ部33は、スパイラル羽根18の回転範囲の外側に位置する。なお、スクレーパ部33は、必須の構成ではない。
【0028】
さらに、掘削用治具24は、補助スクレーパ部35を備えていてもよい。補助スクレーパ部35は、オーガスクリュー16による削孔に伴い地盤3中の先行構造物の一の側面部と交差または直交する他の側面部に沿って地盤改良体を含む泥土を削り取る。すなわち、補助スクレーパ部35は、スクレーパ部33と同様に、取付部25の軸方向に対して平行または略平行に突設され、オーガスクリュー16の削孔方向である下方向に削り取り方向を有するように形成されている。補助スクレーパ部35は、例えば規制部26に形成されている。また、補助スクレーパ部35は、スクレーパ部33に対して交差または直交する方向に延びて形成されている。本実施の形態において、補助スクレーパ部35は、規制部26の他の対向部28にそれぞれ連なって形成されている。補助スクレーパ部35は、他の対向部28に対し下方に突出している。また、補助スクレーパ部35は、前後方向に延びている。補助スクレーパ部35は、側方から見て、スクレーパ部33とは前後方向に反対形状の楔状に形成されている。すなわち、補助スクレーパ部35は、後側に位置する掘削面35aが、先端部に向かい、取付部25側である前側へと徐々に傾斜して形成されている。また、掘削面35aは、スクレーパ部33のガイド面33bに連なっている。本実施の形態において、補助スクレーパ部35の掘削面35aは、スクレーパ部33の掘削面33aに対し段差状に連なっている。補助スクレーパ部35の掘削面35aに対し、スクレーパ部33の掘削面33aが下方に延びている。補助スクレーパ部35は、スパイラル羽根18の回転範囲の外側に位置する。なお、補助スクレーパ部35は、必須の構成ではない。
【0029】
次に、第1の実施の形態の土留め構造物1の構築方法を説明する。
【0030】
図7に示される土留め構造物1の構築方法としては、概略として、削孔工程、地盤改良体形成工程、および、建て込み工程を備える。これら削孔工程、地盤改良体形成工程、および、建て込み工程は、土留め構造物1を構成する柱状体2の本数分繰り返される。また、2本目以降の柱状体2の施工時の削孔工程には、掘削用治具24が用いられる。
【0031】
まず、定規材設置工程として、図2に示されるように、地盤3に対し、柱状体2(図7)の通り芯に合わせて、方線上に削孔用定規材R1を設置し固定する。柱状体2(図7)の通り芯は、スケールやトランシットを用い、予め設置された逃げ杭から計測する。好ましくは、削孔用定規材R1の内側をバックホウなどの建設機械を用いて溝掘りしておく。
【0032】
さらに、(第1の)削孔工程として、図3(a)に示されるように、杭打ち機10を用い、1本目の柱状体2(図7)の通り芯に合わせて削孔用定規材R1の内側にオーガスクリュー16により1本目の柱状体2(図7)の通り芯に合わせて削孔を行い、所定の位置に掘削孔6(図3(b))を形成する。削孔は、オーガヘッド19からエアまたは掘削液を吐出しながらオーガスクリュー16を上下反復させて行う。また、削孔の際にはトランシットやレベルを用い、掘削孔6の鉛直度や削孔深度を確保する。
【0033】
その後、地盤改良体形成工程として、図4(a)に示されるように、掘削孔6に対し、別途プラントで作成したスラリー(固化材)をポンプで圧送してオーガヘッド19から注入しつつ、オーガスクリュー16を上下反復させて掘削現況土とスラリーとを均一に混合攪拌し、柱状の地盤改良体(ソイルセメント)Sを築造する(図4(b))。スラリーの注入長さは、柱状体2の根入れ長さ分以上とする。
【0034】
さらに、オーガスクリュー16を引き上げ、必要に応じて、柱状体2を建て込むための建て込み用定規材を削孔用定規材R1の内側に、スケールやトランシットを用いて通り芯に合わせて設置し、建て込み工程として、補助クレーンを用い、図5(a)に示されるように、柱状体2を楊重し、掘削孔6に先端部を挿入する。柱状体2は、トランシットなどを用いて方線を確認するとともに、一の側面部2aが横断方向となるように挿入する。そして、図5(b)に示されるように、この挿入した柱状体2を固定して自重により掘削孔6に沈設し、計画高さを確認しつつ、所定の深度に到達した時点で柱状体2を固定することで、建て込みを完了する(図5(c))。
【0035】
次いで、(第2の)削孔工程として、図6(a)に示されるように、掘削用治具24を回転軸に取り付けたオーガスクリュー16により、先行して沈設された施工済みの柱状体2をガイドとして、先行して形成された掘削孔6(掘削孔6a)と一部が重なる位置に所定深度の掘削孔6(掘削孔6b)を柱状体2と平行または略平行に新たに形成する。このとき、掘削用治具24のスクレーパ部33により、図6(b)に示されるように、先行して沈設された柱状体2を支持する支持部7をなす未固結の地盤改良体Sのうち、柱状体2の一の側面部2aに沿う部分が削り取られるとともに、掘削用治具24の補助スクレーパ部35により、柱状体2の他の側面部2b,2bの一部に沿う部分が削り取られ、一の側面部2aおよび他の側面部2b,2bの一部が掘削孔6(掘削孔6b)側に露出する。
【0036】
この後、上記地盤改良体形成工程、および、建て込み工程を実施することで、先行して沈設された柱状体2に隣接して新たな柱状体2を沈設する。
【0037】
以下、削孔工程、地盤改良体形成工程、および、建て込み工程を、必要な柱状体2の本数分繰り返した後、隣接する柱状体2の頭部同士を連結用プレートなどの連結部材により溶接して連結固定する。そして、隣接する柱状体2の一の側面部2a同士が対向して円形状または楕円形状に形成されたグラウト孔5に対し、必要に応じてモルタルや透水防砂材などの目地を充填し、また、必要に応じて笠コンクリートによって複数の柱状体2の頭部をまとめて一体的に連結し、図7に示される土留め構造物1を完成する。
【0038】
このように、掘削用治具24は、取付部25をオーガスクリュー16の回転軸に取り付け、規制部26によって、地盤3中の先行構造物(柱状体2)に対しオーガスクリュー16の軸方向と交差する方向(方線方向に対し直交する方向)の位置を規制することで、オーガスクリュー16による削孔方向を先行構造物(柱状体2)の一の側面部2aに沿わせるため、掘削孔6(掘削孔6b)を先行構造物(柱状体2)の一の側面部2aに沿って容易に形成できるとともに、柱状体2を建て込む毎にこの柱状体2を先行構造物として掘削を順次繰り返すことで、柱状体2をガイドとして利用しつつ、隣接する掘削孔6の間隔を略一定に保つことができる。そこで、特殊な装置などを用いることなく、複数の柱状体2を精度よく隣接させて土留め構造物1を汎用的に構築可能となる。
【0039】
また、掘削用治具24がスクレーパ部33を備えるため、削孔工程において、オーガスクリュー16による削孔に伴い、先行して建て込まれた柱状体2の周囲に充填された未固結の地盤改良体Sを含む泥土をスクレーパ部33によって一の側面部2aに沿って削り取りながら、先行して形成された掘削孔6と一部が重なる位置に新たな掘削孔6を形成できる。そのため、先行して建て込まれた柱状体2に対し、目開きすることなく隣接させて新たな柱状体2を建て込むことが可能になり、複数の柱状体2を容易に、かつ、より精度よく隣接させて建て込むことが可能になる。
【0040】
さらに、掘削用治具24が補助スクレーパ部35を備えるため、削孔工程において、オーガスクリュー16による削孔に伴い、先行して建て込まれた柱状体2の周囲に充填された未固結の地盤改良体Sを含む泥土を、規制部26の位置で補助スクレーパ部35によって他の側面部2bの一部に沿って効率よく削り取ることができる。
【0041】
また、取付部25に攪拌装置を用いることで、掘削孔6を形成して地盤改良体Sを形成するときなどに、攪拌装置によって掘削現況土とスラリーとを効率よく攪拌できる。
【0042】
次に、第2の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
第2の実施の形態の掘削用治具24は、図8(a)に示されるように、取付部25が円筒状に形成され、オーガスクリュー16の回転軸に貫装される。取付部25は、オーガスクリュー16の回転軸に対し、同軸または略同軸に配置され、取付部25に対し、オーガスクリュー16の回転軸が回転自在となっている。
【0044】
また、図8(b)および図8(c)に示されるように、掘削用治具24には、一の対向部27に、隙間形成部37が形成されている。隙間形成部37は、先行構造物の一の側面部と対向する位置、すなわち一の対向部27において取付部25と反対側の後側に位置する対向面27aに配置され、先行構造物(柱状体2)の一の側面部に対し一の対向部27との間に前後方向に所定間隔の隙間を形成する。本実施の形態において、隙間形成部37は、一の対向部27の対向面27aに設けられた突起部である。そのため、本実施の形態では、隙間形成部37により、一の対向部27の対向面27aが先行構造物(柱状体2)の一の側面部から離間され、一の対向部27の対向面27aと先行構造物の一の側面部との間にて隙間形成部37の側方に隙間が形成される。本実施の形態において、隙間形成部37は、例えば平鋼などの薄板状の金属部材により形成されている。図示される例では、隙間形成部37は、オーガスクリュー16の削孔方向である上下方向に沿って長手状に形成されている。また、本実施の形態において、隙間形成部37は、左右方向に一対配置されている。隙間形成部37は、スクレーパ部33のガイド面33bの少なくとも一部に延びて配置されている。なお、隙間形成部37は、これらの形状や配置に限定されるものではなく、対向面27aに溝状などに形成されていてもよいし、1つのみ、または3つ以上配置されていてもよい。
【0045】
さらに、掘削用治具24には、補強部38が形成されている。補強部38は、規制部26を補強するものである。補強部38は、リブ状に形成されている。また、図8(b)に示されるように、補強部38は、平面視で三角形状に形成されている。補強部38は、規制部26の一の対向部27において隙間形成部37とは反対側の位置と連結部31とに亘り、オーガスクリュー16の掘削方向である上下方向に互いに離れて形成された複数の第1の補強部38aを有する。また、補強部38は、規制部26の一の対向部27と他の対向部28,28とに亘り、オーガスクリュー16の掘削方向である上下方向に互いに離れて形成された複数の第2の補強部38bを有する。第2の補強部38bは、柱状体2の一の側面部2aと他の側面部2b,2bとが連なる角部の傾斜に応じて形成され、柱状体2と干渉しないようになっている。
【0046】
そして、上記の第1の実施の形態と同様に、削孔工程として、掘削用治具24を回転軸に取り付けたオーガスクリュー16により、先行して沈設された施工済みの柱状体2をガイドとして、先行して形成された掘削孔6(掘削孔6a)と一部が重なる位置に所定深度の掘削孔6(掘削孔6b)を柱状体2と平行または略平行に新たに形成することで、上記の第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
また、掘削用治具24が隙間形成部37を備えることで、削孔工程において、先行構造物(柱状体2)の一の側面部2aに対向する位置に所定間隔の隙間が形成されるので、掘削に伴い地盤改良体Sを含む泥土をこの隙間から排出できる。そのため、掘削時に、先行して建て込まれた柱状体2に対して掘削用治具24が離れにくくできる。
【0048】
なお、第2の実施の形態の掘削用治具24に、第1の実施の形態の補助スクレーパ部35が形成されていてもよい。
【0049】
また、第2の実施の形態の隙間形成部37や補強部38が、第1の実施の形態の掘削用治具24に形成されていてもよい。
【0050】
上記の各実施の形態において、先行構造物は、鉛直上下方向に沿って直線状に延びる側面部を有していれば、柱状体2でなくてもよい。
【0051】
さらに、地盤3の強度などの必要に応じて、掘削孔6を形成する位置に先行掘削を行ってもよい。つまり、複数本分の柱状体2用の掘削を先行して実施した後、建て込み工程において、1本目の柱状体2を沈設するとともに、2本目以降の柱状体2については、掘削工程と建て込み工程とを繰り返して、掘削孔6を再掘削しては柱状体2を沈設するように施工してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 土留め構造物
2 柱状体
2a 一の側面部
2b 他の側面部
3 地盤
6 掘削孔
16 オーガスクリュー
24 掘削用治具
25 取付部
26 規制部
33 スクレーパ部
35 補助スクレーパ部
37 隙間形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8