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特許7082597電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20220601BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20220601BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220601BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220601BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220601BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220601BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
B01J35/02 G
F01N3/20 K ZAB
B01J32/00
B01J35/04 301F
B01J35/04 301M
B01J37/08
B01J37/02
B01D53/94 300
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019158991
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021037439
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】笠井 義幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸春
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107452(JP,A)
【文献】特開2016-186262(JP,A)
【文献】特開2013-158714(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するセラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層と、
前記電極層上に設けられた、金属製コネクタに接続可能な電極接続部と、
を備え、
前記電極接続部は、独立した立ち上がり部位を少なくとも1つ有し、前記電極接続部の前記電極層の表面からの高さが1~6mmである電気加熱式担体。
【請求項2】
前記電極接続部は、少なくとも表面が金属で構成されている請求項1に記載の電気加熱式担体。
【請求項3】
前記電極接続部は、全体が金属で構成されている請求項2に記載の電気加熱式担体。
【請求項4】
前記電極接続部が、前記電極層上に起立するように設けられた柱状電極接続部である請求項1~3のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項5】
前記電極接続部が円柱状または多角柱状である請求項4に記載の電気加熱式担体。
【請求項6】
前記電極接続部が外径1~20mmの円柱状である請求項5に記載の電気加熱式担体。
【請求項7】
前記電極接続部は、前記電極層上に起立するように設けられた複数の柱状部と、前記複数の柱状部の下端を連結する連結部とを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項8】
前記電極接続部は、前記電極層上に起立するように設けられた複数の柱状部と、前記複数の柱状部の上端を連結する連結部とを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項9】
前記電極接続部は、下端が前記柱状ハニカム構造体の外周壁に埋め込まれている請求項1~8のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項10】
前記電極層と前記電極接続部との間に、少なくとも1層の中間層が設けられている請求項1~8のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項11】
前記中間層が、酸化物セラミックス、または、金属若しくは金属化合物と酸化物セラミックスとの混合物で構成されている請求項10に記載の電気加熱式担体。
【請求項12】
前記電極層が、前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に、前記柱状ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設された一対の電極層であり、
前記電極接続部は、前記一対の電極層上に形成されている請求項1~11のいずれか一項に記載の電気加熱式担体。
【請求項13】
缶体と嵌合可能な電気加熱式担体であって、
前記電気加熱式担体が、
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するセラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層と、
前記電極層上に設けられた、金属製コネクタに接続可能な電極接続部と、
を備え、
前記電極接続部は、円柱状の独立した立ち上がり部位を構成し、前記電極接続部の前記電極層の表面からの高さが、前記電気加熱式担体を前記缶体と嵌合したときに生じる前記缶体と前記電極層との隙間の高さ以下である電気加熱式担体。

【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体の外周面に嵌合される缶体と、
前記電極接続部と電気的に接続された金属製コネクタと、
を有する排気ガス浄化装置。
【請求項15】
前記金属製コネクタと前記電極接続部とを接合する溶接接点部又は溶射部を有する請求項14に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の排気ガス浄化装置の製造方法であって、前記製造方法が、
前記電気加熱式担体を前記缶体に嵌合する工程、及び
前記電極接続部に、前記金属製コネクタを電気的に接続する工程、
をこの順に有する排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項17】
前記電気加熱式担体を前記缶体に嵌合する方法が、押し込みキャニングである請求項16に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項18】
前記電極接続部に前記金属製コネクタを電気的に接続する方法が、溶融金属法、固相接合法、及び機械的接合法からなる群より選択される少なくとも一種である請求項16または17に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項19】
前記溶融金属法が、溶接、ろう付け、液相拡散接合、及び共晶接合からなる群より選択される少なくとも一種である請求項18に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項20】
前記溶接が、レーザー溶接、EB溶接、TIG溶接、MIG溶接、プラズマ溶接、抵抗溶接、及びコンデンサ溶接からなる群より選択される少なくとも一種である請求項19に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項21】
前記固相接合法が、拡散接合、焼結法、摩擦撹拌接合、及び超音波接合からなる群より選択される少なくとも一種である請求項18に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項22】
前記機械的接合法が、焼き嵌め、圧入、ねじ止め、及び塑性結合法からなる群より選択される少なくとも一種である請求項18に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【請求項23】
前記電気加熱式担体を前記缶体に嵌合する工程の前に、前記電気加熱式担体に触媒を担持させる工程を有する請求項16~22のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化装置の製造方法に関する。とりわけ、押し込みキャニングによる嵌合が可能となり生産性が良好な電気加熱式担体、排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン始動直後の排気ガス浄化性能を改善するため、電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCは、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、EHCに担持された触媒をエンジン始動前に活性温度まで昇温させ、エンジン始動直後に排出される排気ガスの浄化を狙うシステムである。
【0003】
EHCでは、上述のように、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させているが、当該電極については、種々の目的に応じた種々の構造が提案されている。
【0004】
特許文献1には、表面電極に担体円周方向のクラックが発生しても、担体軸方向への電流の広がりが保持されることを目的とした通電加熱式触媒装置が開示されている。当該通電加熱式触媒装置では、ハニカム構造体に配設する電極として、複数の配線をハニカム構造体の表面電極における軸方向の端部まで設けている。当該複数の配線は、それぞれ複数の固定層によって表面電極に固定されている。
【0005】
しかしながら、従来の電気加熱式担体には以下の問題がある。図1に示すように、従来の電気加熱式担体50は、柱状ハニカム構造体51の表面に配設された電極層上に電極52が設けられている。また、一般的に、排気ガス浄化装置などにおいて、電気加熱式担体50は、外部衝撃からの保護などを目的として、不図示のマット(保持材)を介して缶体53と嵌合させて用いられることが求められる。このような嵌合においては、電気加熱式担体50を缶体53内に押し込んで嵌合させる、いわゆる押し込みキャニングを行うことが簡便な手段である。
【0006】
ここで、電気加熱式担体50の電極52は、図1に示すように、外部電源との接続のために、缶体53の開口部54から外側へ導出する必要がある。このため、電気加熱式担体50を缶体53と嵌合させるときは、上述の押し込みキャニングでは電極52が邪魔になって嵌合が困難となる。このため、従来の電気加熱式担体50では、例えば、缶体53を左右の2体に分割して作製し、当該分割した缶体53を、電極52が缶体53の開口部54から外側へ導出されるように、電気加熱式担体50に嵌め込む。そして、最後に、左右2体に分割した缶体53を溶接している。
【0007】
このように、従来の電気加熱式担体50は、缶体53に嵌合させるときに、電極52を缶体53の開口部54から外側へ導出させるために、あらかじめ缶体53を分割する工程、及び、電気加熱式担体50を嵌め込んだ後に分割した缶体53を溶接する工程が必要となる。このため、生産性において問題があった。
【0008】
このような問題に対し、特許文献2では、電気加熱式担体の柱状ハニカム構造体に配設する電極(配線部材)について、缶体の開口部を介して引き出された当該配線部材の引出部を蛇腹状に形成している。そして、このような構成により、電気加熱式担体を缶体に嵌め込んだ後で、蛇腹状に形成された配線部材を外側へ引き出すことができるため、缶体を分割する工程及び分割後に溶接する工程が不要となり、生産性が向上すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-136997号公報
【文献】特開2015-107452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載されている電気加熱式担体は、上述のような押し込みキャニングによる嵌合が可能であるが、電極(配線部材)を蛇腹状に形成しなくてはならず、電極形状が複雑になってしまう。このため、電極の形成という点においては生産性の面で問題があり、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、以上の問題を勘案してなされたものであり、押し込みキャニングによる嵌合が可能となり生産性が良好な電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意検討の結果、ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層上に、金属製コネクタに接続可能な電極接続部を設け、当該電極接続部において、独立した立ち上がり部位を少なくとも1つ有し、当該電極接続部の電極層の表面からの高さが1~6mmとなるように構成することで、上記課題を解決できることを見出した。そこで、本発明は以下のように特定される。
(1)外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するセラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層と、
前記電極層上に設けられた、金属製コネクタに接続可能な電極接続部と、
を備え、
前記電極接続部は、独立した立ち上がり部位を少なくとも1つ有し、前記電極接続部の前記電極層の表面からの高さが1~6mmである電気加熱式担体。
(2)缶体と嵌合可能な電気加熱式担体であって、
前記電気加熱式担体が、
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するセラミックス製の柱状ハニカム構造体と、
前記柱状ハニカム構造体の外周壁の表面に配設された電極層と、
前記電極層上に設けられた、金属製コネクタに接続可能な電極接続部と、
を備え、
前記電極接続部は、独立した立ち上がり部位を少なくとも1つ有し、前記電極接続部の前記電極層の表面からの高さが、前記電気加熱式担体を前記缶体と嵌合したときに生じる前記缶体と前記電極層との隙間の高さ以下である電気加熱式担体。
(3)(1)または(2)に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体の外周面に嵌合される缶体と、
前記電極接続部と電気的に接続された金属製コネクタと、
を有する排気ガス浄化装置。
(4)(3)の排気ガス浄化装置の製造方法であって、前記製造方法が、
前記電気加熱式担体を前記缶体に嵌合する工程、及び
前記電極接続部に、前記金属製コネクタを電気的に接続する工程、
をこの順に有する排気ガス浄化装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押し込みキャニングによる嵌合が可能となり生産性が良好な電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の電気加熱式担体と缶体とが嵌合した様子を示す平面模式図である。
図2】本発明の実施形態における電気加熱式担体の柱状ハニカム構造体の外観模式図である。
図3】本発明の実施形態における一方の電極層に正対したときの電気加熱式担体の平面図である。
図4図3の電気加熱式担体を側方から見たときの電気加熱式担体の平面図である。
図5】本発明の実施形態における電気加熱式担体の柱状ハニカム構造体、及び、電気加熱式担体と嵌合した状態の缶体の軸方向に垂直な断面模式図である。
図6】本発明の別の実施形態における、柱状ハニカム構造体の外周壁、電極接続部及び電極層の、柱状ハニカム構造体の軸方向と平行な断面模式図である。
図7】本発明の更に別の実施形態における、柱状ハニカム構造体の外周壁、電極接続部及び電極層の、柱状ハニカム構造体の軸方向と平行な断面模式図である。
図8】本発明の更に別の実施形態における、柱状ハニカム構造体の外周壁、電極接続部及び電極層の、柱状ハニカム構造体の軸方向と平行な断面模式図である。
図9】本発明の実施形態における排気ガス浄化装置の平面模式図である。
図10図4の電気加熱式担体の他の実施形態に係る平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置の実施の形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0016】
<電気加熱式担体>
図2は、本発明の実施形態における電気加熱式担体20の柱状ハニカム構造体10の外観模式図を示すものである。図3は、本発明の実施形態における一方の電極層14a、14bに正対したときの電気加熱式担体20の平面図である。図4は、図3の電気加熱式担体20を側方から見たときの電気加熱式担体20の平面図である。
【0017】
(1.柱状ハニカム構造体)
柱状ハニカム構造体10は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで貫通して流路を形成する複数のセル15を区画形成する隔壁13とを有する。
【0018】
柱状ハニカム構造体10の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、柱状ハニカム構造体10の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、底面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0019】
柱状ハニカム構造体10は、導電性を有する。柱状ハニカム構造体10は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、電気抵抗率については特に制限はないが、0.01~200Ωcmであることが好ましく、10~100Ωcmであることが更に好ましい。本発明において、柱状ハニカム構造体10の電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0020】
柱状ハニカム構造体10の材質としては、限定的ではないが、炭化珪素、珪素、ジルコニア等の導電性セラミックスから選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、柱状ハニカム構造体10の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスであることが好ましく、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするセラミックスであることが更に好ましい。柱状ハニカム構造体10の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするセラミックスであるというときは、柱状ハニカム構造体10が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。柱状ハニカム構造体10の材質が、炭化珪素を主成分とするセラミックスであるというときは、柱状ハニカム構造体10が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0021】
柱状ハニカム構造体10が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、柱状ハニカム構造体10に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、柱状ハニカム構造体10に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、柱状ハニカム構造体10に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。10質量%以上であると、柱状ハニカム構造体10の強度が十分に維持される。40質量%以下であると、焼成時に形状を保持しやすくなる。
【0022】
セル15の延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、柱状ハニカム構造体10に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0023】
セル15を区画形成する隔壁13の厚みは、0.07~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.25mmであることがより好ましい。隔壁13の厚みが0.07mm以上であることで、柱状ハニカム構造体10の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁13の厚みが0.3mm以下であることで、柱状ハニカム構造体10を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁13の厚みは、セル15の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル15の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁13を通過する部分の長さとして定義される。
【0024】
柱状ハニカム構造体10は、セル15の流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であると柱状ハニカム構造体10を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁12部分を除く柱状ハニカム構造体10の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0025】
柱状ハニカム構造体10の外周壁12を設けることは、柱状ハニカム構造体10の構造強度を確保し、また、セル15を流れる流体が外周壁12から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁12の厚みは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周壁12を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁13との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁12の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.8mm以下であり、更により好ましくは0.6mm以下である。ここで、外周壁12の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁12の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁12の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。また、電極接続部が配設される領域における外周壁の厚みを部分的に薄くしておいてもよい。
【0026】
隔壁13は多孔質とすることができる。隔壁13の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率が35%以上であると、焼成時の変形をより抑制しやすくなる。気孔率が60%以下であると柱状ハニカム構造体10の強度が十分に維持される。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0027】
柱状ハニカム構造体10の隔壁13の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μm以上であると、電気抵抗率が大きくなりすぎることが抑制される。平均細孔径が15μm以下であると、電気抵抗率が小さくなりすぎることが抑制される。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0028】
(2.電極層)
柱状ハニカム構造体10は、外周壁12の表面に、電極層14a、14bが配設されている。電極層14a、14bは、一方の電極層が、他方の電極層に対して、柱状ハニカム構造体10の中心軸を挟んで対向するように設けられている一対の電極層であってもよい。なお、当該電極層は、上述のように一対設けなくてもよく、例えば柱状ハニカム構造体10の外周壁12の表面において、上述の一方のみ(電極層14aまたは電極層14bのいずれか一方のみ)設けられていてもよい。
【0029】
電極層14a、14bの形成領域に特段の制約はないが、柱状ハニカム構造体10の均一発熱性を高めるという観点からは、各電極層14a、14bは外周壁12の外面上で外周壁12の周方向及びセルの延伸方向に帯状に延設することが好ましい。具体的には、各電極層14a、14bは、柱状ハニカム構造体10の両底面間の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極層14a、14bの軸方向へ電流が広がりやすいという観点から望ましい。
【0030】
本発明の実施形態において、電極層14a、14bは、それぞれ図2に示すように、柱状ハニカム構造体10の軸方向に沿って伸びるようなスリット状の分離帯19が設けられていてもよい。当該分離帯19は、電気加熱式担体20の加熱時に、柱状ハニカム構造体10と電極層14a、14bとの熱膨張差を緩和する機能を有し、当該熱膨張差による電極層14a、14bの割れや剥がれを抑制する機能を有する。スリット状の分離帯19の幅は特に限定されないが、例えば0.5~3mmに形成することができる。なお、電極層14a、14bの分離帯19は形成しなくてもよく、電極層14aと電極層14bとが、それぞれ1つの連続した電極層であってもよい。
【0031】
各電極層14a、14bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができる。各電極層14a、14bの厚みが0.01mm以上であると、電気抵抗が適切に制御され、より均一に発熱することができる。5mm以下であると、キャニング時に破損する恐れが低減される。各電極層14a、14bの厚みは、厚みを測定しようとする電極層の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、各電極層14a、14bの外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0032】
各電極層14a、14bの電気抵抗率を柱状ハニカム構造体10の電気抵抗率より低くすることにより、電極層14a、14bに優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がセルの流路方向及び周方向に広がりやすくなる。電極層14a、14bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造体10の電気抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/30以下であることが更により好ましい。但し、両者の電気抵抗率の差が大きくなりすぎると対向する電極層14a、14bの端部間に電流が集中して柱状ハニカム構造体10の発熱が偏ることから、電極層14a、14bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造体10の電気抵抗率の1/200以上であることが好ましく、1/150以上であることがより好ましく、1/100以上であることが更により好ましい。本発明において、電極層14a、14bの電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0033】
通電時に電気がセルの流路方向及び周方向に広がり易くするために、各電極層14a、14bの厚みを部分的に厚く、または電気抵抗率を部分的に小さくすることも、好ましい形態の一つである。
【0034】
各電極層14a、14bの材質は、金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等のセラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。電極層14a、14bの材質としては、上記の各種金属及び導電性セラミックスの中でも、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材との組合せとすることが、柱状ハニカム構造体と同時に焼成できるので製造工程の簡素化に資するという理由により好ましい。
【0035】
(3.電極接続部)
電極接続部30は、電極層14a、14b上に設けられ、電気的に接合されている。電極接続部30は、後述の金属製コネクタ41に接続可能に形成されており、金属製コネクタ41が外部電源に電気的に接続されている。これにより、電極接続部30に電圧を印加すると通電してジュール熱により柱状ハニカム構造体10を発熱させることが可能である。このため、柱状ハニカム構造体10はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0036】
電極接続部30は、独立した立ち上がり部位32を少なくとも1つ有するように構成されている。立ち上がり部位32とは、ハニカム構造体の外周壁の曲面から折れて略垂直方向に上がっている部位のことを意味する。本発明の実施形態に係る電気加熱式担体20の電極接続部30は、図3及び図4に示すように、それぞれ円柱状、すなわち円柱のピン形状に形成されている。この場合、電極接続部30の立ち上がり部位32は、各円柱状に形成された電極接続部30そのものを示す。円柱状に形成された電極接続部30において、当該円柱の外径が1~20mmであるのが好ましい。電極接続部30の円柱の外径が1mm以上であれば、少ない数の電極接続部30で効率良く電気加熱式担体20を加熱することができる。電極接続部30の円柱の外径が20mm以下であれば、電極接続部30の数を多くすることができ、より均一に電気加熱式担体20を加熱することができる。また、電極接続部30の配置の自由度が高まる。さらに、電極接続部30が小さくなるため、電気加熱式担体20の加熱による生じる熱応力が少なく、破損し難いという利点がある。円柱状に形成された電極接続部30において、当該円柱の外径が1~10mmであるのがより好ましく、1~5mmであるのが更により好ましい。電極接続部30は、円柱状に限定されず、その他の柱状、例えば多角柱状に形成されていてもよい。
【0037】
図3及び図4に示す電極接続部30は、電極層14a、14bにスリット状の分離帯19が形成されているため、分離帯19で分割された電極層14a、14bの両方に、それぞれ5つの円柱状の電極接続部30が起立するように、互いに等間隔に並ぶように設けられている。電極接続部30の数は特に限定されず、電極接続部30のサイズと電極層14a、14bのサイズとの関係などから適宜調整することができる。
【0038】
電極接続部30が、このように電極層14a、14b上に起立するように設けられた柱状電極接続部であると、電極接続部30の形状が複雑な構造とならず簡素化し、また電極層14a、14b上に設置しやすいという利点がある。
【0039】
図5は、本発明の実施形態における電気加熱式担体20の柱状ハニカム構造体10、及び、電気加熱式担体20と嵌合した状態の缶体42の軸方向に垂直な断面模式図である。また、図5の左図の一部を拡大した図が図5の右図である。図5の右図に示すように、電気加熱式担体20を缶体42と嵌合したときに、缶体42と電極層14a、14bとの間に、隙間が生じる。図5の右図では、当該隙間の高さをHとしている。当該隙間にはマット(保持材)を設けることで、缶体42内で電気加熱式担体20が動かないように保持することができる。保持材は可撓性を有する断熱部材であるのが好ましい。
【0040】
本発明の実施形態における電気加熱式担体20は、電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さは、1~6mmに制御されている。電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さが1mm以上であると、金属製コネクタ41と良好に接続することができる。
【0041】
缶体42と電極層14a、14bとの間の隙間には、通常、マットが設けられており、マットの厚みは、凡そ1~6mm程度である。このため、電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さが1~6mmの高さとすることで、電気加熱式担体20を缶体42と嵌合させるとき、電極接続部30が缶体42と接触することを避けることができる。これにより、電気加熱式担体20を缶体42内に押し込んで嵌合させる、いわゆる押し込みキャニングという簡便な手段で嵌合させることができ、生産性が良好となる。また、電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さが、電気加熱式担体20を缶体42と嵌合したときに生じる缶体42と電極層14a、14bとの隙間の高さH以下とすることにより、電気加熱式担体20を缶体42と嵌合させるとき、電極接続部30が缶体42と接触することを避けることができる。
【0042】
また、電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さが、1~6mmに制御されていると、電気加熱式担体20の柱状ハニカム構造体10のセル15内に触媒をコートする工程で、柱状ハニカム構造体10を固定する必要があるが、このとき電極接続部30が邪魔にならず、柱状ハニカム構造体10のセル15内への触媒のコート処理が容易となる。また、当該触媒のコート処理では酸性溶液で処理する工程及び加熱炉で加熱する工程を行うことがあるが、電極接続部30が複雑な形状でないため、当該酸や熱による影響で電極が変質することを抑制することができる。また、電極接続部30が複雑な形状でないため、電極層14a、14bの表面における配置の自由度が高いという利点も有する。電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さは2~5mmであるのが好ましく、3~5mmであるのがより好ましい。
【0043】
電極接続部30は、金属製コネクタ41と電気的に接続されて、電極接続部30に電圧を印加すると通電して電極層14a、14bを介してジュール熱により柱状ハニカム構造体10を発熱させることができるものであれば、その材質は特に限定されない。電極接続部30は、少なくとも表面が金属で構成されていてもよい。このような構成としては、例えば、セラミックスで形成された外径2~3mm程度の円柱状の電極棒の表面に、1mm厚程度の金属板が貼り付けられた電極のような形態が挙げられる。また、電極接続部30は、全体が金属で構成されていてもよい。
【0044】
電極接続部30に用いられる金属としては、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTi、Al、Si、Moよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス(Fe-Cr、Fe-Ni―Cr)鋼及びFe-Ni合金、Ni-Cr合金、Ni-Mo合金、Ni-Cr-Mo合金がより好ましい。
【0045】
電極接続部30は、電極層14a、14bの表面に接合により固定されることで、溶接部位31を介して電気的に接続されていることが望ましい。
【0046】
電極接続部30は、図10に示すように、電極層14a、14b上に、中間層16を少なくとも1層配設した上に固定されることも、好ましい形態の一つである。中間層16を配設することにより、例えば、電極接続部30及び電極層14a、14bの間の熱膨張係数差を緩和することが可能となる。また、電極接続部30を電極層14a、14bの表面に接合する際に生じる熱応力が緩和されるため、電気的な接続を容易にすることができる。
【0047】
中間層を形成する場合、その厚みは3~400μmの範囲内であることが好ましい。中間層の厚みを3μm以上とすることにより、その効果がより顕著に得ることができる。一方、中間層の厚みを400μm以下とすることにより、柱状ハニカム構造体10に流れる電流に対する影響を抑えることができ、電気加熱型触媒用担体の本来の機能に対する影響を最小限にすることができる。以上の観点から、中間層の厚みは5~100μmであることが更に好ましい。
【0048】
中間層16の材質は、酸化物セラミックス、または、金属若しくは金属化合物と酸化物セラミックスとの混合物であることが好ましい。
金属としては、単体金属又は合金のいずれでもよく、例えばシリコン、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン、タングステン、Ni合金、Ni-Cr合金、Ni-Co合金などを好適に用いることができる。金属化合物としては、酸化物セラミックス以外の物であって、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属珪化物、金属ほう化物、複合酸化物等が挙げられ、例えばFeSi2、CrSi2などを好適に用いることができる。金属と金属化合物は、いずれも、単独一種でもよく、二種以上を併用しても良い。
酸化物セラミックスとしては、具体的には、ガラス、コージェライト、ムライトなどがある。
ガラスは、B、Mg、Al、Si、P、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の成分からなる酸化物を更に含んでも良い。上記群より選択される少なくとも1種を更に含んでいると、電極層の強度がより向上する点で更に好ましい。
【0049】
中間層16の熱膨張係数は、上述の様な材質を用いて適宜選択することができるが、電極層14の熱膨張係数と、電極接続部30の熱膨張係数間にあることが望ましい。また、必ずしも単層である必要はなく、中間層が多層となっていても構わない。
【0050】
図6は、本発明の別の実施形態における、柱状ハニカム構造体10の外周壁12、電極接続部30及び電極層14a、14bの、柱状ハニカム構造体10の軸方向と平行な断面模式図である。図6に示すように、電極接続部30は、下端が柱状ハニカム構造体10の外周壁12に埋め込まれていてもよい。さらに、電極接続部の外周壁への埋め込み位置を決めるため、電極接続部に位置決め部位を設けてもよい。このような構成によれば、電極接続部30が電気加熱式担体20内でより強固に支持される。電極接続部30は、全体の高さの30~70%が埋まるようにすることが好ましく、その下端が柱状ハニカム構造体10の外周壁12に埋め込まれているのが好ましい。
【0051】
図7は、本発明の更に別の実施形態における、柱状ハニカム構造体10の外周壁12、電極接続部36及び電極層14a、14bの、柱状ハニカム構造体10の軸方向と平行な断面模式図である。電極接続部36は、電極層14a、14b上に起立するように設けられた複数の柱状部34(立ち上がり部位)と、複数の柱状部34の下端を連結する連結部35とを有する。このような構成によれば、少ない電極接続部36で多くの柱状部34を設けることができ、金属製コネクタ41との良好な接続性を確保しつつ、設計の自由度を高めることができる。
【0052】
柱状部34は、円柱状または多角柱状に形成することができる。複数の柱状部34の下端を連結する連結部35は、複数の柱状部34と一体形成されていてもよく、別々に形成されたものが溶接などにより接続されたものであってもよい。また、図7に示した電極接続部36と、図3、4及び6に示した電極接続部30とを電極層14a、14bの表面に設けてもよい。
【0053】
図8は、本発明の更に別の実施形態における、柱状ハニカム構造体10の外周壁12、電極接続部39及び電極層14a、14bの、柱状ハニカム構造体10の軸方向と平行な断面模式図である。電極接続部39は、電極層14a、14b上に起立するように設けられた複数の柱状部37(立ち上がり部位)と、複数の柱状部37の上端を連結する連結部38とを有する。このような構成によれば、少ない電極接続部39で多くの柱状部37を設けることができ、金属製コネクタ41との良好な接続性を確保しつつ、設計の自由度を高めることができる。
【0054】
柱状部37は、円柱状または多角柱状に形成することができる。複数の柱状部37の上端を連結する連結部38は、複数の柱状部37と一体形成されていてもよく、別々に形成されたものが溶接などにより接続されたものであってもよい。また、図8に示した電極接続部39と、図3、4及び6に示した電極接続部30とを電極層14a、14bの表面に設けてもよい。
【0055】
電気加熱式担体20に触媒を担持することにより、電気加熱式担体20を触媒体として使用することができる。複数のセル15の流路には、例えば、自動車排気ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0056】
<電気加熱式担体の製造方法>
次に、本発明に係る電気加熱式担体20を製造する方法について例示的に説明する。本発明の電気加熱式担体20の製造方法は一実施形態において、電極層形成ペースト付き未焼成柱状ハニカム構造体を得る工程A1と、電極層形成ペースト付き未焼成柱状ハニカム構造体を焼成して柱状ハニカム構造体を得る工程A2と、柱状ハニカム構造体に電極接続部を接合する工程A3とを含む。
【0057】
工程A1は、柱状ハニカム構造体の前駆体である柱状ハニカム成形体を作製し、柱状ハニカム成形体の側面に電極層形成ペーストを塗布して、電極層形成ペースト付き未焼成柱状ハニカム構造体を得る工程である。柱状ハニカム成形体の作製は、公知の柱状ハニカム構造体の製造方法における柱状ハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。なお、これは、柱状ハニカム構造体の材質を、珪素-炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、柱状ハニカム構造体の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0058】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10質量部であることが好ましい。
【0059】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0060】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2質量部であることが好ましい。
【0061】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0062】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形して柱状ハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られた柱状ハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。柱状ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、柱状ハニカム成形体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。乾燥後の柱状ハニカム成形体を柱状ハニカム乾燥体と呼ぶ。
【0063】
次に、電極層を形成するための電極層形成ペーストを調合する。電極層形成ペーストは、電極層の要求特性に応じて配合した原料粉(金属粉末、及び、セラミックス粉末等)に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。電極層を積層構造とする場合、第一の電極層用のペースト中の金属粉末の平均粒子径に比べて、第二の電極層用のペースト中の金属粉末の平均粒子径を大きくすることにより、電極接続部と電極層の接合強度が向上する傾向にある。金属粉末の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0064】
次に、得られた電極層形成ペーストを、柱状ハニカム成形体(典型的には柱状ハニカム乾燥体)の側面に塗布し、電極層形成ペースト付き未焼成柱状ハニカム構造体を得る。電極層形成ペーストを調合する方法、及び電極層形成ペーストを柱状ハニカム成形体に塗布する方法については、公知の柱状ハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができるが、電極層を柱状ハニカム構造体に比べて低い電気抵抗率にするために、柱状ハニカム構造体よりも金属の含有比率を高めたり、金属粒子の粒径を小さくしたりすることができる。
【0065】
柱状ハニカム構造体の製造方法の変更例として、工程A1において、電極層形成ペーストを塗布する前に、柱状ハニカム成形体を一旦焼成してもよい。すなわち、この変更例では、柱状ハニカム成形体を焼成して柱状ハニカム焼成体を作製し、当該柱状ハニカム焼成体に、電極層形成ペーストを塗布する。
【0066】
工程A2では、電極層形成ペースト付き未焼成柱状ハニカム構造体を焼成して、柱状ハニカム構造体を得る。焼成を行う前に、電極層形成ペースト付き未焼成柱状ハニカム構造体を乾燥してもよい。また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200~1350℃で、1~10時間、酸化処理を行うことが好ましい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0067】
工程A3では、柱状ハニカム構造体上の電極層の表面に、独立した立ち上がり部位を少なくとも1つ有する形状の電極接続部を溶接する。溶接方法としては、レーザー溶接する方法が溶接面積の制御及び生産効率の観点から好ましい。これにより、電極接続部が電極層に電気的に接続された電気加熱式担体が得られる。
【0068】
なお、図6で示したように、電極接続部の下端を柱状ハニカム構造体の外周壁に埋め込む場合は、まず柱状ハニカム構造体の外周壁に、電極接続部の下端の断面形状に対応する形状で所定の深さを有する孔を形成しておく。次に、中間層となる材料とともに電極接続部の下端を当該孔に差し込んで熱処理をすることで、電極接続部の下端を柱状ハニカム構造体の外周壁に埋め込んで固定することができる。
【0069】
<排気ガス浄化装置>
上述した本発明の各実施形態に係る電気加熱式担体20は、それぞれ図9に示すような排気ガス浄化装置40に用いることができる。排気ガス浄化装置40において、電気加熱式担体20は、エンジンからの排気ガスを流すための排気ガス流路の途中に設置される。
【0070】
上述のようにして作製された本発明の実施形態における排気ガス浄化装置40は、電気加熱式担体20と、電気加熱式担体20の外周面に嵌合される缶体42とを有する。電気加熱式担体20の外周面と、缶体42の内周面との間には、保持材(不図示)が設けられている。
【0071】
排気ガス浄化装置40は、略円筒状の缶体42内に、可撓性を有する断熱部材などで構成された保持材を介して、電気加熱式担体20を押し込みキャニングによって嵌合することで作製される。このとき、電気加熱式担体20は、電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さが1~6mmに制御されているため、電極接続部30の電極層14a、14bの表面からの高さが、電気加熱式担体20を缶体42と嵌合したときに生じる缶体42と電極層14a、14bとの隙間の高さ以下となっている。従って、押し込みキャニングという簡便な手段によって、電気加熱式担体20を缶体42との嵌合において、電極接続部30が缶体42と接触することを避けることができる。
【0072】
缶体42の両側面には開口部44が設けられている。電気加熱式担体20の電極接続部30には、缶体42の開口部44から金属製コネクタ41が導き入れられて、電極接続部30と金属製コネクタ41とが電気的に接続される。金属製コネクタ41は、外部電源に接続されて、電気加熱式担体20に電圧を印加することができる。金属製コネクタ41の形状は特に限定されないが、例えば図9に示すような櫛状に形成することができる。金属製コネクタ41は、各先端部43が円筒形状を有しており、当該円筒の内部に円柱状の電極接続部30が嵌合することで、金属製コネクタ41と電極接続部30とが電気的に接続されている。排気ガス浄化装置40は、金属製コネクタ41と電極接続部30とを接合する溶接接点部又は溶射部を有してもよい。
【0073】
<排気ガス浄化装置の製造方法>
次に、本発明の実施形態に係る排気ガス浄化装置40の製造方法について詳述する。まず、本発明の実施形態に係る電気加熱式担体20に触媒を担持させる。触媒は前述の貴金属系触媒又はこれら以外の触媒などを使用することができる。続いて、缶体42内に、可撓性を有する断熱部材などで構成された保持材を介して、触媒が担持された電気加熱式担体20を押し込みキャニングによって嵌合する。
【0074】
次に、缶体42内に嵌合させた電気加熱式担体20の電極接続部30に対し、缶体42の両側面に設けられた開口部44から金属製コネクタ41を導き入れて、電極接続部30と金属製コネクタ41とを接合することで、排気ガス浄化装置40を作製する。
【0075】
電極接続部30と金属製コネクタ41とを接合する方法としては、特に制限されるものではないが、溶融金属法、固相接合法、機械的接合法からなる群より選択される少なくとも一種からなる方法を用いることが好ましい。
【0076】
前記溶融金属法としては、ろう付け、液相拡散接合、溶接、共晶接合からなる群より選択される少なくとも一種からなる手法を用いることができ、ろう付け、液相拡散接合が好ましい。溶接としては、レーザー溶接、EB溶接、TIG溶接、MIG溶接、プラズマ溶接、抵抗溶接、コンデンサ溶接などが挙げられ、レーザー溶接、プラズマ溶接、抵抗溶接がより好ましく、レーザー溶接がさらに好ましい。
【0077】
前記固相接合法としては、拡散接合、焼結法、摩擦撹拌接合、超音波接合などが挙げられ、焼結法、超音波接合がより好ましい。焼結法を用いる場合は、焼結法における焼結接合材を中間層16として用いることも好ましい形態の一つである。
【0078】
前記機械的接合法としては、焼き嵌め、圧入、ねじ止め、かしめ、塑性結合法などが挙げられ、かしめ、塑性結合法がより好ましい。
【符号の説明】
【0079】
10、51 柱状ハニカム構造体
12 外周壁
13 隔壁
14a、14b 電極層
15 セル
16 中間層
19 分離帯
20、50 電気加熱式担体
30、36、39 電極接続部
31 溶接部位
32 立ち上がり部位
34、37 柱状部
35、38 連結部
40 排気ガス浄化装置
41 金属製コネクタ
42、53 缶体
43 先端部
44、54 開口部
52 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10