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特許7082601トンネルのタイル撤去方法及び補修用加熱装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】トンネルのタイル撤去方法及び補修用加熱装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019226854
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021095720
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501497264
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩二
(72)【発明者】
【氏名】玉尾 壮志
(72)【発明者】
【氏名】中橋 明
(72)【発明者】
【氏名】一円 信作
(72)【発明者】
【氏名】東村 栄治
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-291593(JP,A)
【文献】特開2006-322281(JP,A)
【文献】特開2002-310966(JP,A)
【文献】特開2003-166338(JP,A)
【文献】特開2016-205085(JP,A)
【文献】特開2014-077341(JP,A)
【文献】特開昭59-119000(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147650(WO,A1)
【文献】特開2020-002748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿った上部が略半円筒状のコンクリート躯体の内側壁面に、タイル接着用モルタルを介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、
前記道路に沿って多数枚の磁器タイルを前記コンクリート躯体の内側壁面における曲面部から取り外して、それらの磁器タイルを撤去したコンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするトンネルのタイル撤去方法であって、
前記コンクリート躯体の内側壁面における曲面部から前記磁器タイルを取り外す前に、加熱装置に設けた加熱板によって前記曲面部の曲率に合わせて全体として赤外線放射曲面を形成して、前記多数枚の磁器タイルを貼ってある曲面部のタイル貼り壁面を、その表面側から加熱して前記タイル接着用モルタルを昇温させた後に、前記多数枚の磁器タイルを前記コンクリート躯体から機械的に剥離し、
磁器タイルを撤去した前記コンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするトンネルのタイル撤去方法。
【請求項2】
磁器タイルの背面温度を100℃~200℃に昇温させる請求項1に記載のトンネルのタイル撤去方法。
【請求項3】
前記多数枚の磁器タイルを加熱しながら、前記タイル貼り壁面の表面加熱部近傍のコンクリート躯体に形成された側溝又はハンドホールの温度を測定して、前記コンクリート躯体の昇温管理を行い、前記コンクリート躯体が設定温度以上になると、前記タイル貼り壁面の加熱を中止又は抑制する請求項1または2に記載のトンネルのタイル撤去方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトンネルのタイル撤去方法において、前記多数枚の磁器タイルをその表面側から加熱する補修用加熱装置であって、道路に沿って走行移動可能な走行装置を備えた走行基台を設け、
前記多数枚の磁器タイルの表面に遠赤外線を照射する加熱装置を設け、
前記加熱装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構、及び、タイル貼り壁面に対して近接移動操作可能な遠近移動機構を介して前記走行基台に取り付け、
前記加熱装置を構成するのに、複数枚の加熱板を上下方向に併設して取り付けると共に、それらの上下に隣接する物同士を互いに上下揺動自在に連結し、
前記複数枚の加熱板の上下揺動操作によって前記曲面部の曲率に合わせて全体として赤外線放射曲面を形成可能に構成してあるトンネルのタイル撤去方法に使用する補修用加熱装置。
【請求項5】
前記高さ調整機構には、前記加熱装置による遠赤外線の照射方向をトンネルの前記曲面部に対向すべく上下搖動自在に照射角度変更部を設けてある請求項4に記載のトンネルのタイル撤去方法に使用する補修用加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿った上部が略半円筒状のコンクリート躯体の内側壁面に、タイル接着用モルタルを介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、前記道路に沿って多数枚の磁器タイルを前記コンクリート躯体の内側壁面における曲面部から取り外して、それらの磁器タイルを撤去したコンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするトンネルのタイル撤去方法、及び、その撤去に使用する補修用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルのコンクリート躯体の内側壁面は、磁器タイルを貼ることで清潔で明るくなり、トンネル内壁面の施工に近年よく実施されてきている。
そして、磁器タイルをコンクリート壁面に貼る施工方法として、直接壁面にタイル接着用モルタルにより磁器タイルを貼る直貼り工法が実施されてきている。
【0003】
しかし、トンネルの内壁面は、タイル、モルタル、コンクリート躯体から成る積層構造をしており、これらの材料が外部から温湿度変化を受けると、各構成材に異なった伸縮が発生し、しかも、タイル周囲目地から遊離石灰、漏水に伴う部分的な浮き上がりが発生して、経年劣化により、磁器タイルの剥離、剥落が発生してきている箇所がある。
特に、コンクリート躯体の接着拘束は、タイル貼り壁面の端部よりも中央部が大きく、前述の伸縮の発生に基づいて、端部から剥離が発生しやすいということが確認されている。
これに対し、最近、トンネルのコンクリート内壁面に貼られた磁器タイルを、コンクリート躯体から取り外して、それらの磁器タイルを撤去したコンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするトンネルのタイル撤去方法が考えられている。その上、多数の箇所や、多数枚に亘って剥離、剥落が発生している長いトンネルにおいては、今後の安全のためにも、広範囲又は全面的に磁器タイルを撤去しなければならない。
そこで従来、コンクリート躯体の内壁面から磁器タイルを取り外すのには、電動チッパーによる人力作業で撤去するハツリ処理が一般的で、接着剤による接着力の強さが大きい所も含めて磁器タイルを撤去するには、トンネル内の長い距離に亘り多大の労力が必要であった(適切な文献が見当たらない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、トンネルのコンクリート躯体から多数枚の磁器タイルを撤去するのに、人力作業をできるだけ減らすべく、バックホウの先端部にスクレーパーを取り付けたり、電動チッパーを取り付けて剥離作業を行うこと等が提案されているが、いずれにしろ、接着剤による接着力の強さが大きい所も含めて磁器タイルを、長距離に亘るトンネルの内側壁面から撤去するには、多くの動力と時間を要することは、避けられなかった。
従って、本発明の目的は、上述した従来のトンネルのコンクリート躯体から、少ない労力でトンネルの道路に沿って長距離に亘って貼られた多数枚の磁器タイルを短時間で撤去して、再びコンクリート躯体の内側壁面を内装できるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のトンネルの補修方法の第1の特徴構成は、道路に沿った上部が略半円筒状のコンクリート躯体の内側壁面に、タイル接着用モルタルを介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、前記道路に沿って多数枚の磁器タイルを前記コンクリート躯体の内側壁面における曲面部から取り外して、それらの磁器タイルを撤去したコンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするトンネルのタイル撤去方法であって、前記コンクリート躯体の内側壁面における曲面部から前記磁器タイルを取り外す前に、加熱装置に設けた加熱板によって前記曲面部の曲率に合わせて全体として赤外線放射曲面を形成して、前記多数枚の磁器タイルを貼ってある曲面部のタイル貼り壁面を、その表面側から加熱して前記タイル接着用モルタルを昇温させた後に、前記多数枚の磁器タイルを前記コンクリート躯体から機械的に剥離し、磁器タイルを撤去した前記コンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記コンクリート躯体から前記磁器タイルを取り外す前に、前記多数枚の磁器タイルを貼ってあるタイル貼り壁面を、その表面側から加熱して前記タイル接着用モルタルを昇温させることで、タイル接着用モルタルの接着強度が低下し、そのために、例えば人力作業によるハツリ作業によっても、簡単に少ない労力でコンクリート躯体から多数枚の磁器タイルを取り外すことができる。
つまり、タイル接着用モルタルは、下地の変形に対する追従性を向上させ、且つ、接着耐久性を向上させるために、ポルトランドセメント、珪砂、に加えて、エチレン酢酸ビニル系再乳化形粉末樹脂を混入したり、セメントと骨材が強固に結合するために、セメント及び珪砂にエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンを混入させることが行われていることが多く、これらのセメントと珪砂に混入される樹脂成分が、加熱により分解したり変成したりして、接着強度を低下させて、磁器タイルを簡単にコンクリート躯体から取り外すことができると考えられる。
その上、磁器タイルを撤去することで、経時変化で磁器タイルが剥落する等の危険な状況は防止でき、安全を確保できる。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、磁器タイルの背面温度を100℃~200℃未満に昇温させるところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、タイル接着用モルタルは100℃以上に加熱されると、その接着強度が低下して、容易に磁器タイルを取り外すことができるようになり、しかもコンクリートは200℃以下であれば、残存圧縮強度比率が100%まで自然回復するために、タイル接着用モルタルを100℃~200℃に昇温させることで、コンクリート躯体の劣化を最小限にして接着剤の接着強度を低下させることができる。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、前記多数枚の磁器タイルを加熱しながら、前記タイル貼り壁面の表面加熱部近傍のコンクリート躯体に形成された側溝又はハンドホールの温度を測定して、前記コンクリート躯体の昇温管理を行い、前記コンクリート躯体が設定温度以上になると、前記タイル貼り壁面の加熱を中止又は抑制する。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、タイル貼り壁面の加熱に当たり、コンクリート躯体を損傷させずに再び内装できるようになる。
【0011】
本発明の第4のトンネルのタイル撤去方法に使用する補修用加熱装置の特徴構成は、請求項1~3のいずれか1項に記載のトンネルの補修方法において、前記多数枚の磁器タイルをその表面側から加熱する補修用加熱装置であって、道路に沿って走行移動可能な走行装置を備えた走行基台を設け、前記多数枚の磁器タイルの表面に遠赤外線を照射する加熱装置を設け、前記加熱装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構、及び、タイル貼り壁面に対して近接移動操作可能な遠近移動機構を介して前記走行基台に取り付け、前記加熱装置を構成するのに、複数枚の加熱板を上下方向に併設して取り付けると共に、それらの上下に隣接する物同士を互いに上下揺動自在に連結し、前記複数枚の加熱板の上下揺動操作によって前記曲面部の曲率に合わせて全体として赤外線放射曲面を形成可能に構成してある。
【0012】
本発明の第4の特徴構成によれば、補修用加熱装置には、走行基台に走行装置を設けてあることで、トンネルの道路に沿って移動させながら、走行基台に設けた加熱装置をタイル貼り壁面の多数枚の磁器タイルを長距離に亘って加熱でき、しかも、前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構、及び、タイル貼り壁面に対して近接移動操作可能な遠近移動機構を介して加熱装置を広い面積に加熱して、多数枚の磁器タイルを効率よく少ない労力で取り除くことができる。
【0013】
本発明の第5の特徴構成は、前記高さ調整機構には、前記加熱装置による遠赤外線の照射方向をトンネルの前記曲面部に対向すべく上下搖動自在に照射角度変更部を設けてある請求項4に記載のトンネルのタイル撤去方法に使用する。
【0014】
本発明の第5の特徴構成によれば、トンネル内の垂直壁面はもとより、上部の曲面の内側壁面に対しても照射角度変更部で加熱装置による遠赤外線の照射方向を変更でき、そのために、トンネルの上部の曲面部に貼ってある磁器タイルに対しても取り外し作業を簡単に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】トンネルの縦断斜視図である。
図2】トンネルの一部拡大斜視図である。
図3】トンネルの一部拡大縦断面図における作業説明図である。
図4】壁面補修用加熱装置の斜視図である。
図5】壁面補修用加熱装置の斜視図である。
図6】トンネルの一部縦断面におけるタイル撤去作業説明図である。
図7】別実施形態のトンネルの一部拡大縦断面図における作業説明図である。
図8】別実施形態の壁面補修用加熱装置の斜視図である。
図9】別実施形態の壁面補修用加熱装置の斜視図である。
図10】別実施形態の壁面補修用加熱装置における作用説明図である。
図11】別実施形態の壁面補修用加熱装置における作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1図2に、道路1に沿ったコンクリート躯体2の内側壁面の内、特に横側面に、タイル接着用モルタル3を介して多数枚の磁器タイル4を直接貼ってある磁器タイル4直貼りトンネルを示してある。
そのトンネルの左右横側面の内の少なくとも一側方のコンクリート躯体2の一部には、道路1に沿った所定間隔置きに火災検知器を取り付けると共に、消火栓、消火器の設置部(図外)を設けてあり、且つ、道路1に沿って交通監視員の通行用の段部5が設けてあり、前記通行用の段部5には、道路1に沿った所定間隔置きにハンドホール6が形成してある。
因みに、タイル接着用モルタルは、下地の変形に対する追従性を向上させ、且つ、接着耐久性を向上させるために、ポルトランドセメント、珪砂、に加えて、エチレン酢酸ビニル系再乳化形粉末樹脂を混入したり、セメントと骨材が強固に結合するために、セメント及び珪砂にエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンを混入させる、いわゆるポリマーセメントモルタルと称する物が多く使用されている。
【0017】
前記トンネルにおけるタイル貼り壁面において、温湿度変化、遊離石灰、漏水等の環境の変化や経年劣化によって磁器タイル4の剥離や剥落が多数発生している現場においては、道路交通上の安全の確保のために、磁器タイル4の剥離箇所以外に接着剤によるタイル貼り付き維持箇所も含めて磁器タイル4の広範囲又は全面的に磁器タイル4を撤去しなければならない。
【0018】
そこで、トンネルのコンクリート躯体2の内壁面からの磁器タイル4の取り外し施工手順を次に説明する。
[トンネル直貼りタイル撤去工程]
1、 試験施工に先立ち、施工範囲の円形水路にタイルが落下しないように鉄板を用いて養生すると共に、火災検知器に養生を行う。
2、 火災検知器を施設制御室において、連動状態から不連動状態に切換え連絡すると共に、各1km毎に監視員を配置し、作業開始まで待機する。
3、 既設内装タイルの一部を電動チッパー19を用いて撤去して、その接着状況の確認を行い、タイルの表面加熱による熱伝導を実施した場合との比較データとしての基礎データの収集を行う。
4、 壁面補修用加熱装置7における加熱装置10としての遠赤外線ヒーターに着火し、遠赤外線ヒーターを始動させる。
5、 遠赤外線ヒーターを、既設内装タイル前面に移動させ、約300℃前後に加熱し、タイル接着用モルタルの接着強度の低下状況を確認する(図3)。
6、 監視員通路内の施設ハンドホール6を開口し、ハンドホール6内のコンクリート温度を測定確認し、コンクリート温度が40℃以上になった場合は、作業を中止する。
7、 遠赤外線ヒーターにより温めた既設内装タイルを、電動チッパー19を用いて既設内装タイルを撤去する(図6)。
8、 施工予定箇所のタイルの撤去が終了した段階で、遠赤外線ヒーターを消灯し、施設制御室に火災検知器の不連動状態から連動状態に切り替えるように連絡すると共に、各1km毎に配置した監視員による監視を解除する。
9、 路面等に飛散したタイルなどを清掃し、片付けを実施する。
【0019】
尚、磁器タイル4の表面加熱においては、背面温度を100℃~200℃になるように昇温させる。
【0020】
次に、トンネルのタイル撤去に使用する補修用加熱装置を説明する。
[壁面補修用加熱装置]
図2図5に示すように、前記多数枚の磁器タイル4をその表面側から加熱する壁面補修用加熱装置7であって、道路1に沿って走行移動可能な走行装置8を備えた走行基台9を設け、多数枚の磁器タイル4の表面に遠赤外線を照射する遠赤外線ヒーターからなる加熱装置10を設け、その加熱装置10をタイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な平行4連アーム11を設けた高さ調整機構12を介して、前記走行基台9に取り付けてある。
前記高さ調整機構12は、上下軸心P回りに左右に旋回自在に走行基台9に取り付けてある支柱16を設け、その支柱16の上端部に平行4連アーム11を取り付け、平行4連アーム11の先端部に、複数枚の燃焼加熱板14が取り付けてある。
そして平行4連アーム11の上下動は、支柱16と平行4連アーム11とに亘って取り付けた伸縮アクチュエーター17によって操作可能にしてある。
【0021】
前記走行装置8は、走行基台9の前後夫々に配置する4つの車輪を設けて構成してあり、前記加熱装置10は、走行基台9に載せたガスボンベ13からの可燃ガスの燃焼により遠赤外線を照射する複数枚の燃焼加熱板14を設けてある。
【0022】
[実験例]
西九州自動車道のトンネルにおいて、モルタル系接着剤を使用した直貼り内装タイルの垂直壁に対する撤去試験を行うべく、前記タイル張り垂直壁に沿った上下フラットなヒーター面を有する加熱装置10で、多数の直貼り内装タイルを加熱した。
タイル温め時間は、1.5~2分、タイル表面温度250℃でタイル剥ぎ取りが可能になり、コンクリート表面が露出した。
この時のタイル剥ぎ取り後のコンクリート表面温度は、60℃であった。
【0023】
[参考実験例]
タイル直貼り壁面は、接着剤として、エポキシ樹脂を使用したタイル張りのトンネル壁面もあり、このトンネル壁面においても、タイル撤去試験を行った。
上記実験例と同様の工程及び条件で、エポキシ樹脂のような樹脂系接着剤においても、タイル剥ぎ取りが可能であった。
【0024】
[別実施形態]
なお、以下の他の実施形態において、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
〈1〉 図7図11に示すように、前記高さ調整機構12には、加熱装置10による遠赤外線の照射方向をトンネルの内壁面に対向すべく上下搖動自在に照射角度変更部15を設けてもよい。この場合、トンネル内の垂直壁面はもとより、上部の曲面の内側壁面に対しても照射角度変更部15で加熱装置10による遠赤外線の照射方向を変更でき(特に図10図11)、そのために、トンネルの上部の曲面部に貼ってある磁器タイル4に対しても取り外し作業を簡単に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
〈2〉 前記燃焼加熱板14は、図11に示すように4枚を上下に併設して隣接する物同士を互いに上下搖動自在に連結し、上下両端部の物同士に亘って連結した伸縮ロッド18の伸縮操作で、磁器タイル4の貼られた湾曲壁面の曲率に合わせて全体として赤外線放射曲面を形成可能に構成してあっても良い。
〈3〉 前記壁面補修用加熱装置7は、走行基台9として、例えばバックホウ等の走行装置として自走式の動力を備えるものでもよい。自走式の走行装置8を備えることにより、長距離のトンネルの内壁面のタイル撤去作業を、より労力少なく楽に行えるようになる。
〈4〉 前記加熱装置10は、燃焼加熱式遠赤外線ヒーター以外に、燃焼バーナーや電気温風ヒーターによるタイル表面の直接温風加熱装置、電熱加熱式遠赤外線照射ヒーター、蒸気加熱装置等、から構成してあっても良い。
【0025】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 道路
2 コンクリート躯体
3 タイル接着用モルタル
4 磁器タイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11