(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】伝導性熱可塑性ポリアミド成形コンパウンド
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20220601BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220601BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20220601BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220601BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20220601BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220601BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K3/04
C08K7/06
C08K7/14
C08L31/04 S
C08L21/00
C08L53/00
(21)【出願番号】P 2019501467
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2017067241
(87)【国際公開番号】W WO2018011131
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-03-25
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ランバーツ ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】バイエル アンドレアス
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074903(JP,A)
【文献】特開平07-207154(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011935(WO,A1)
【文献】特開2009-079212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分:
(A)35~68質量%の、ペレット化材料に関するISO標準11357-3に従って20℃/分の加熱速度で測定して、少なくとも270℃の溶融温度(T
m)を有する少なくとも1種の半晶質半芳香族熱可塑性ポリアミドであって、
成分(A)は、
(A1)存在するジカルボン酸の合計量に対して25~100mol%のテレフタル酸、
存在するジカルボン酸の合計量に対して0~75mol%の、8~20個の炭素原子を有する非テレフタル酸芳香族ジカルボン酸、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、8~20個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸、
(A2)存在するジアミンの合計量に対して50~100mol%の4~8個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン、
存在するジアミンの合計量に対して0~50mol%の、6~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミン、8~20個の炭素原子を有する芳香脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1種のジアミン、
ここで、ジカルボン酸の百分率モル量が100mol%であり、ジアミンの百分率モル量が100mol%であり、ならびにまた
(A3)4~36個の炭素原子を有する、好ましくは6~12個の炭素原子を有する、アミノカルボン酸および/またはラクタム
から構成され、
但し、(A3)の濃度は、(A1)~(A3)の合計に対して、最高40質量%である、
少なくとも1種の半晶質半芳香族熱可塑性ポリアミド;
(B)13~18質量%の炭素繊維;
(C)20~30質量%のガラス繊維;
(D)1~10質量%の、(E)以外の衝撃改良剤ならびに/または脂肪族ポリアミド及びポリオレフィンからなる群から選ばれるポリマー;
(E)0~10質量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマー;
(F)0~3質量%の添加剤
からなり、
成分(A)~(F)の合計は、100質量%であり、
成分(B)~(C)の合計は、33~48質量%の範囲であり、
成分(D)~(E)の合計は、1~12質量%の範囲である
ポリアミド成形組成物。
【請求項2】
成分(A)の分率が40~62.9質量%の範囲、好ましくは50~58.8質量%の範囲であること;
および/または、成分(B)の分率が14~18質量%の範囲、好ましくは15~18質量%の範囲であること;
および/または、成分(C)の分率が20~28質量%の範囲、好ましくは20~25質量%の範囲であること;
および/または、成分(D)の分率が2~8質量%の範囲であり、好ましくは3~6質量%の範囲であること;
および/または、成分(E)の分率が1~8質量%の範囲、好ましくは2~7もしくは2~6質量%の範囲であること;
および/または、成分(F)の分率が0.1~2.0質量%の範囲、好ましくは0.2~1.5質量%の範囲であること、
および/または成分(B)~(C)の合計が34~45質量%の範囲、好ましくは35~40質量%の範囲であること、
および/または成分(D)~(E)の合計が2~10質量%の範囲、好ましくは3~9もしくは4~9質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項3】
成分(A)が、ペレット化材料に関するISO標準11357-3に従って20℃/分の加熱速度で測定して、280℃~340℃の範囲、好ましくは285℃~330℃の範囲の溶融温度(T
m)を有するポリアミドまたはポリアミドの混合物であり、好ましくは、混合物が成分(A)として存在する場合、前記混合物だけでなくまた(A)に含まれる個々の成分も前記溶融温度を有すること;
および/または、成分(A)の融解エンタルピーが、30~70J/gの範囲、とりわけ40~65J/gであり、好ましくは、混合物が成分(A)として存在する場合、前記混合物だけでなくまた(A)に含まれる個々の成分も前記融解エンタルピーを有すること;
および/または、成分(A)が、ISO 307に従って、m-クレゾール(0.5質量%、20℃)中で測定して、2.6未満のη
rel、好ましくは2.3未満のη
rel、とりわけ2.0未満のη
rel、かつ少なくとも1.4のη
rel、好ましくは少なくとも1.5のη
rel、とりわけ少なくとも1.55のη
relの溶液粘度を有し、好ましくは、混合物が成分(A)として存在する場合、前記混合物だけでなくまた(A)に含まれる個々の成分も前記溶液粘度を有することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項4】
成分(A)のポリアミドが、好ましくは成分(A)が1種の半晶質半芳香族ポリアミドのみによって実質的に形成される場合、
(A1)存在するジカルボン酸の合計量に対して、40~100mol%、好ましくは50~80mol%のテレフタル酸、
存在するジカルボン酸の合計量に対して、0~60mol%、好ましくは20~50mol%の、8~20個の炭素原子を有する非テレフタル酸芳香族ジカルボン酸、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、8~20個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のジカルボン酸、
(A2)存在するジアミンの合計量に対して、50~100mol%、とりわけ好ましくは80~100mol%の4~8個、好ましくは6個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン、
存在するジアミンの合計量に対して、0~50mol%、とりわけ好ましくは0~20mol%の、6~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミン、8~20個の炭素を有する芳香脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1種のジアミン、
ここで、ジカルボン酸の百分率モル含量が100mol%であり、ジアミンの百分率モル含量が100mol%である、およびまた
(A3)4~36個の炭素原子を有する、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸および/またはラクタム
から構成され、
但し、(A3)の濃度は、(A1)~(A3)の合計に対して、最高40質量%、好ましくは最高30質量%、とりわけ最高20質量%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項5】
成分(A)のポリアミドが以下の群:PA 4T/46、PA 4T/66、PA 4T/4I、PA 4T/4I/46、PA 4T/46/66、PA 4T/4I/66、PA 4T/56、PA 5T/56、PA 5T/5I、PA 5T/66、PA 6T/6I、PA 6T/66、PA 6T/610、PA 6T/612、PA 6T/12、PA 6T/11、PA 6T/6、PA 6T/MACM10、PA 6T/MACM12、PA 6T/MACM18、PA 6T/MACMI、PA MACMT/6I、PA 6T/PACM6、PA 6T/PACM10、PA 6T/PACM12、PA 6T/PACM18、PA 6T/PACMI、PACMT/6I、PA MPDT/MPDI、PA MPDT/MPD6、PA 6T/MPDI、PA 6T/MPDT、PA 6T/6I/66、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12、PA 6T/66/6、PA 6T/66/12、PA 6T/6I/MACMI、PA 6T/66/PACM6、またはこれらの混合物から選択され、好ましくはPA 6T/6I、PA 6T/66として選択され、
前記成分中のテレフタル酸の分率が、
存在するジカルボン酸の合計量に対して、好ましくは少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも52mol%、とりわけ好ましくは少なくとも54mol%、非常に好ましくは少なくとも62mol%であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項6】
成分(A)が、50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、好ましくは55~75mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、とりわけ好ましくは62~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~38mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、少なくとも1種の半晶質ポリアミド6T/6Iによって形成されること、
および/または、成分(A)が、50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、好ましくは50~65mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および35~50mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、とりわけ好ましくは52~62mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および38~48mol%のヘキサメチレンアジプアミドを有する、少なくとも1種の半晶質ポリアミド6T/66によって形成されること、
および/または、成分(A)が、50~70mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、5~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および5~45mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、少なくとも1種の半晶質三成分系ポリアミド6T/6I/66によって形成されること、
および/または、成分(A)が、少なくとも50mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、0~40mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および10~50mol%の式-NH-(CH
2)
n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位Xを有する少なくとも1種の6T/6I/Xによって、または少なくとも50mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、10~30mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および10~40mol%の式-NH-(CH
2)
n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位Xを有する6T/6I/Xによって、または52~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、0~36mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および12~48mol%の式-NH-(CH
2)
n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位Xを有する6T/6I/Xによって、または52~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、および10~36mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、12~38mol%の式-NH-(CH
2)
n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位Xを有する6T/6I/Xによって形成されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項7】
成分(B)が短繊維、または短繊維束もしくは連続繊維束の形態を取ること、
ならびに/または、成分(B)の繊維が0.1~50mm、好ましくは1~12mmの長さ、
および/もしくは5~40μm、とりわけ好ましくは5~10μmの直径を有すること、
ならびに/または、成分(B)の繊維がPAN繊維、ピッチ繊維もしくはセルロース系繊維をベースとすること、
ならびに/または、成分(B)の繊維が異方性であること、
ならびに/または、成分(B)の繊維が、5~10μmの直径、1000~7000MPaの引張強度および200~700GPaの弾性率を有する、数百から数十万の個々のフィラメントで構成される炭素繊維束の形態を取ることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項8】
成分(C)の繊維が、円形または非円形の断面積を有し、非円形の断面積を有するガラス繊維の場合には、2を超える、好ましくは2~8、とりわけ2.5~5の主断面軸対それに垂直な第二断面軸の寸法比を有するものの使用が好ましく、および/または非円形の断面積を有するガラス繊維の場合には、主断面軸の長さが、好ましくは6~40μmの範囲、とりわけ15~30μmの範囲であり、第二断面軸の長さが、好ましくは3~20μmの範囲、とりわけ4~10μmの範囲であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項9】
成分(C)の繊維が、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムで実質的に構成されるか、またはこれらの成分からなるガラス繊維であり、SiO2/(CaO+MgO)質量比が、2.7未満、好ましくは2.5未満、とりわけ2.1~2.4の間であり、および/または三成分系二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウム若しくは四成分系二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウム-酸化カルシウムベースのガラス繊維であること、ここで、58~70質量%の二酸化ケイ素(SiO2)、15~30質量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、5~15質量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~10質量%の酸化カルシウム(CaO)および0~2質量%のさらなる酸化物、とりわけ二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ホウ素(B2O3)、二酸化チタン(TiO2)または酸化リチウム(Li2O)の組成物が使用され、
および/または、成分(C)の繊維が、5~20μmの範囲、好ましくは6~17μmの範囲、より好ましくは6~13μmの範囲の直径を有する円形の断面を有するガラス繊維であり、好ましくはガラス短繊維の形態で用いられ、とりわけ0.2~20mm、好ましくは2~12mmの長さを有する、チョップトガラスとして用いられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項10】
成分(D)が、成分(E)と異なる衝撃改良剤として選択される場合、天然ゴム、グラフトゴム、オレフィンおよび/またはスチレンおよびその誘導体および/またはアクリレートおよびその誘導体および/または酢酸ビニルおよびその誘導体および/または無水物のホモポリマーまたはコポリマーから選択され、前記
衝撃改良剤はグラフト化されていてもされていなくてもよく、とりわけ、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレンもしくはスチレン誘導体および他のコモノマーとのブタジエンおよび/またはイソプレンのコポリマー、酸無水物、(メタ)アクリル酸およびそのエステルとのグラフト化もしくは共重合によって形成された水素化コポリマーおよび/またはコポリマー、スチレン系ブロックコポリマー、エチレン-α-オレフィンコポリマー、エチレン-アクリレートまたはエチレン-ブチレン-アクリレートコポリマー、エチレン、プロピレン、ブタ-1-エン、オレフィンおよび共重合可能なモノマーの、特に、(メタ)アクリル酸エステルおよびメチルヘキサジエンなどのモノマーのコポリマーである構成ブロックの少なくとも1つまたは組み合わせに基づく(ブロック)コポリマーであり、これらの系はまた、アイオノマーの形態で存在することが可能であり、前記ポリマーに結合したカルボキシル基は、金属イオンによって全面的にまたは部分的に互いに連結されており、
特に好ましい系は、無水マレイン酸でのグラフト化によって官能化したスチレンとのブタジエンのコポリマー、無水マレイン酸でのグラフト化によって形成された、無極性または極性オレフィンホモポリマーおよびオレフィンコポリマー、ならびに酸基が金属イオンで部分的に中和された、ポリ(エテン-co-(メタ)アクリル酸)もしくはポリ(エテン-co-1-オレフィン-co-(メタ)アクリル酸)などのカルボン酸官能化コポリマーであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項11】
成分(D)が、脂肪族ポリアミド及びポリオレフィンからなる群から選ばれるポリマーとして選択される場合、脂肪族ポリアミド、好ましくは、PA 6、PA 46、PA 56、PA 66、PA 66/6、PA 69、PA 610、PA 612、PA 614の群から選択される脂肪族ポリアミド、およびポリオレフィン、特に好ましくはPA 6、PA 66およびLDPEから選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項12】
成分(E)が、5~35%、好ましくは8~25%、とりわけ好ましくは10~20%の酢酸ビニル含量を有するエチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、前記百分率は、存在するグラフトを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーの合計質量に基づき、
および/または、成分(E)が、好ましくは20000~500000g/molの範囲、とりわけ好ましくは30000~300000g/molの範囲のモル質量を有し、
および/または、成分(E)が、グラフト化されているか、又は不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとの、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルまたはイタコン酸無水物の少なくとも1つとの、主鎖ポリマーの熱的またはラジカル反応によって導入された酸または酸無水物基を、好ましくは0.1~6.0質量%の範囲の濃度で有し、前記エチレン-酢酸ビニルコポリマーは、好ましくは0.2~4.0質量%の範囲、とりわけ好ましくは0.5~2.5質量%の範囲のグラフトを有し、前記質量百分率は、グラフトを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーの合計質量に基づき、
および/または、成分(E)が30%未満、より好ましくは10%未満の程度に加水分解され、好ましくは加水分解されていないことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項13】
成分(F)の添加剤が、以下の群またはそれらの混合物:接着促進剤;結晶化促進剤もしくは遅延剤;抗酸化剤;オゾン劣化防止剤;光安定剤;フェノール、ホスファイト、銅ハロゲン化物、酸化セリウム水和物、ランタン塩を含む熱安定剤;UV安定剤;UV吸収剤;UV遮断剤;潤滑剤;離型剤;可塑剤;加工助剤;静電気防止剤;有機および無機顔料;染料および標識物質;小板形のナノ粒子;顔料グレードのカーボンブラック、好ましくはカーボンブラック顔料マスターバッチ(濃縮物)の形態のカーボンブラック;触媒、その塩および誘導体などの重合プロセスからの残渣;および、一塩基酸またはモノアミンなどの連鎖移動剤;安定剤としての酸素、窒素または硫黄含有金属化合物から選択され、好ましい金属は、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/または亜鉛など、とりわけ好ましくは、化合物は、酸化物、水酸化物、カルボネート、シリケート、ボレート、ホスフェート、スタンネート、およびまたこれらの化合物の、酸化物水酸化物または酸化物水酸化物カルボネートなどの組み合わせまたは混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項14】
成分(F)の添加剤が、伝導性添加剤を含まず、好ましくはカーボンブラックの粒子も黒鉛の粒子も含まないことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の成形組成物から製造可能であるか製造される成形物であって、射出成形プロセス、押出ブローイングプロセスまたは押出プロセスにおいて、好ましくは箔、異形材または中空体、または接続エレメントの形態で製造され、容器、配管、栓接続エレメント、ハウジング部品、締め具エレメント、ポンプ部品、バルブ、分配器、蓋、噴射器レール、目止めポート、ポンプハウジング、燃料フィルターハウジングを含み、特に、自動車部門用に、化学薬品、特に、メタノール含有燃料を含む燃料、冷媒、ウレア、油に接するものを含む成形物。
【請求項16】
好ましくは請求項15に記載の成形物の形態における、ポリアミド成形組成物の使用であって、自動車部門において、好ましくは燃料用配管エレメントとして、そのための燃料配管、燃料タンク、ポンプ、ポンプ部品、噴射器レール、バルブならびにまた接続および締め具エレメント、とりわけ迅速コネクターを含むポリアミド成形組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より詳細には半晶質半芳香族ポリアミドをベースとした伝導性熱可塑性ポリアミド成形組成物、ならびにそれから製造される成形物、および、例えば自動車部門における、特に、燃料供給に関連するおよび燃料に接する用途向けのそのようなポリアミド成形組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけポリアミドを含むプラスチックは、例えば自動車の部門を含む部門において高品位材料として確立されている。特に半芳香族ポリアミドは、最新のエンジンに存在するもののように、高温でさえ、良好な機械的性質を特徴とし、特に、燃料、冷媒などを含む化学薬品に対する高い耐性を特徴とする。
国際公開第2007139987号は、一貫して50質量%を超える成形組成物が、ガラス繊維および炭素繊維によって形成され、ガラス繊維対炭素繊維の比が13:1~1:1の範囲である、ハイブリッドで強化された熱可塑性樹脂を開示している。操作される成形組成物のうち、ポリアミドベースの組成物が実施例で用いられている。高充填された成形組成物は、その加工に問題があり、表面品質が低い。
同様に、非常に硬く、頑丈な成形組成物が欧州特許出願公開第1788027号によって記載されている。ここでは、ポリマーマトリックスがPA66およびPA 6T/6Iのブレンドからなり、この脂肪族ポリアミドが主成分を形成する。成形組成物は、混合比が80:20~95:5の範囲である、ガラス繊維と炭素繊維の混合物を用いて強化される。したがって、主に脂肪族マトリックスのために、熱変形温度(ISO 75によるHDT C)は低レベルにある。
【0003】
欧州特許出願公開第3006506号は、流動性がエチレン-酢酸ビニルコポリマーによって改質された、高溶融のポリアミドに関する。これは、半芳香族ポリアミド、6T/66および6T/6Iを用いて働き、ガラス繊維で強化され、さらなる添加剤として衝撃改良剤を含む。ガラス繊維と炭素繊維の組み合わせは、好ましい実施形態としては使用されず記載もされていない。その上、ガソリン接触用途は確認されていない。
国際公開第2015/011935号(英語の欧州特許出願公開第3026084号としても)は、自動車の燃料供給部門を含む部門で使用するための半芳香族ポリアミドベース成形組成物に関する。成形組成物は、ガラス繊維強化および衝撃改良され、さらに、その上、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブまたは炭素繊維などの伝導性の添加剤を含んでもよい。実施例の炭素繊維を用いて電気伝導性が与えられた成形組成物は、元来十分な伝導性を有しているが、ガソリン中、特にメタノール含有ガソリン中での保管でこれを失う。これに対する決定的な原因は、低いガラス繊維分率および非晶性ポリアミドのわずかならざる添加である。
【0004】
特開2008-179753号公報は、自動車部門で、特に燃料に接して使用するための繊維強化ポリフタルアミド成形組成物を記載している。好ましいポリフタルアミド、および実施例で使用されるものは、比較的長鎖のジアミン、より詳細にはC9ジアミンをベースとしており、炭素繊維が同時に使用される場合、電気伝導性の成形組成物中に最高10質量%の低いガラス繊維分率しか含んでいない。しかしながら、ガソリン、特に、メタノール含有ガソリンに接すると、そのような成形組成物の電気抵抗は急速に増加し、そのため、ごく短時間の後に伝導性が不十分になる。
特開2000-038505号公報は、自動車部門で使用される電気伝導性のポリフタルアミド成形組成物を記載している。これらの成形組成物から製造されるコンポーネントは、塩化カルシウムに耐性があり、また良好な電気伝導率および溶接性を有すると言われる。しかしながら、伝導性カーボンブラックの必須の存在が、破壊時伸び率および衝撃靭性の激しい劇的な減少をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、寸法的に安定で、容易に加工することができ、また、好ましくは非常に流動性の材料であって、例えば、とりわけメタノール含有ガソリンに接する燃料供給(特に、例えば燃料配管用の迅速コネクター)における用途に向けて、可能な限り耐久性のある電気伝導率および好ましくは良好な表面を有するものを提供することである。この材料は、それ自体が、容易に利用可能で、加工することができる短鎖脂肪族ジアミンベースの、半芳香族で半晶質のポリアミドをベースとすべきであり、その加工は公知であり、その製品特性は確立され広く普及している。これらのポリアミドは優れた熱力学的特性を有しており、製造するのに安価である。
【0006】
PA6およびPA66は、塩化カルシウムに対する耐性が不十分であり、したがって、そのような用途のためのベースポリマーとしては問題外である。伝導性カーボンブラックを含むポリフタルアミド材料は製造するのに高価で不都合であり、破壊時伸び率が不十分である。長鎖脂肪族ジアミン単位を含むポリフタルアミド材料は、幾つかの有利な特性を有するが、長鎖ジアミン単位はその保持が困難であり、非常に周知されている加工性を有しておらず、特製品用途は別としても、製品特性は確立されず、広く普及していない。さらに、結果として、これらのポリアミドに対して高い製造コストがかかる。これらの種類の用途に対してそのようなポリアミドに対する添加としてのカーボンナノチューブは、同様に伝導性が低く機械的性質が不十分である。炭素繊維を単独で使用して伝導性にした材料は、メタノール含有ガソリン中60℃で保管すると100時間以内に初期の伝導性を失う。しかし、5000時間(メタノール含有ガソリン、特に、CM15、60℃)後の要求は、燃料を担持する部品の静電気帯電が使用寿命全体にわたって確実に回避されることを可能にする、1E+6オーム(すなわち1×106オーム)以下の表面抵抗に対するものである。
【0007】
メタノール含有燃料またはメタノール含有ガソリンに対するここでの言及は、種々の燃料構成要素のなかでも少なくとも5vol%(体積パーセント)、好ましくは少なくとも7vol%、とりわけ好ましくは少なくとも10vol%のメタノールを含む自動車用燃料を意味することとして理解される。驚くべきことに、今や、例えば、同時に狭い濃度範囲の炭素繊維(B)およびガラス繊維(C)を含む、成分(A)として対応するPA6T/66または6T/6Iとして請求項1に記載のポリアミド成形組成物によって、改善された特性が達成され、特に明示の要求事項が満たされることが分かった。ガラス繊維の存在によって、20%未満の炭素繊維濃度を保持することは可能である。好ましい一実施形態において、衝撃改良剤の組み合わせ(エチレン-酢酸ビニルコポリマーをも組み合わせてもよい)は、改善された加工品質(流動長さ、好ましくは脱型性も)と表面品質とを組み合わせた良好な靭性のみならず、またガソリン、特に、メタノール含有ガソリン(例えば、42.5vol%のイソオクタンおよび42.5vol%のトルエンの上に、15vol%のメタノールを含むCM15)に接する伝導性のより一貫した保持をも保証する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、具体的には下記成分からなるポリアミド成形組成物に関する。
(A)35~68質量%の、ISO標準11357-3(2011-05)に従ってペレット化材料で20℃/分の加熱速度で測定して、少なくとも270℃の溶融温度(Tm)を有する、テレフタル酸および主として8個以下の炭素原子を有する短鎖脂肪族ジアミンベースの少なくとも1種の半晶質半芳香族熱可塑性ポリアミド;
(B)13~22質量%の炭素繊維;
(C)18~30質量%のガラス繊維;
(D)1~10質量%の、(E)と異なる衝撃改良剤、ならびに/または(A)、(E)および(F)と異なるポリマー;
(E)0~10質量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマー;
(F)0~3質量%の添加剤。
ここで、成分(A)~(F)の合計は100質量パーセントである。言いかえれば、成分(A)~(F)の他には、構成要素は成形組成物中にそれ以上存在しない。
【0009】
さらに、(B)~(C)の合計、すなわち、繊維質補助剤の分率は33~48質量%の範囲である。(D)~(E)、その添加剤および繊維質補助剤以外のさらなる補助剤の合計は、1~12質量%の範囲である。
示すように、請求項に記載の比率が守られる場合のみ、有利な効果は現れる。使用される炭素繊維の分率が多くても少なくても、特に持続する伝導性を実現することは不可能であり、ガラス繊維分率、ならびに成分(D)および(E)の分率が守られない場合、機械的性質、特に伝導性の持続までもが損なわれる。炭素繊維およびガラス繊維、ならびにまたさらなる補助剤の分率は、驚くべきことに、特性、特に、概要中の持続する伝導性および機械的性質に関して強い相関性を有している。
様々な成分に関して、好ましい実施形態によると、以下のより狭い範囲が有利であると分かり、これらの好ましい範囲で別々に、またはその範囲の組み合わせで選択されてもよい。成分(A)の分率は、有利には40~62.9質量%の範囲、好ましくは50~58.8質量%の範囲であってもよい。
【0010】
成分(B)、炭素繊維の分率は、優先的には14~20質量%の範囲、好ましくは15~18質量%の範囲である。
成分(C)、ガラス繊維の分率は、好ましくは20~28質量%の範囲、より好ましくは20~25質量%の範囲である。
成分(D)の分率は、好ましくは2~8質量%の範囲、より好ましくは3~6質量%の範囲である。
成分(E)の分率は、優先的には1~8質量%の範囲、好ましくは2~7または2~6質量%の範囲である。
成分(F)の分率は、優先的には0.1~2.0質量%の範囲、好ましくは0.2~1.5質量%の範囲である。
【0011】
例えば分率が以下の通りである成形組成物が特に好ましい:
40~63.9質量%の範囲の(A)、14~20質量%の範囲の(B)、20~28質量%の範囲の(C)、2~8質量%の範囲の(D)、0~8質量%の範囲の(E)、および0.1~2.0質量%の範囲の(F)。
50~58.8質量%の範囲の(A)、15~18質量%の範囲の(B)、20~25質量%の範囲の(C)、3~6質量%の範囲の(D)、2~7質量%の範囲の(E)、および0.2~1.5質量%の範囲の(F)。
成分(B)~(C)の合計が34~45質量%の範囲、好ましくは35~40質量%の範囲の場合、それはさらに好ましい。
【0012】
さらに好ましい実施形態によると、成分(D)~(E)の合計は、2~10質量%の範囲、好ましくは3~9または4~9質量%の範囲である。
成分(A):
ポリアミド成形組成物中の成分(A)として、テレフタル酸、および、主として、最高8個の炭素原子を有する短鎖脂肪族ジアミンをベースとして構成された35~68、好ましくは40~62.9質量%の少なくとも1種の熱可塑性半芳香族ポリアミドが存在する。8個を超える炭素原子を有する他の脂肪族ジアミンは、構成ブロックのうちでない。
一般的に要約すると、成分(A)は優先的に以下のように設計される:
第1の好ましい実施形態は、成分(A)が、ISO標準11357-3(2011-05)に従ってペレット化材料で20℃/分の加熱速度で測定して、280℃~340℃の範囲、好ましくは285℃~330℃の範囲の溶融温度(Tm)を有するポリアミドまたはポリアミドの混合物であることを特徴とする。好ましくは、混合物が成分(A)として存在する場合、混合物だけでなくまた(A)の個々の成分それぞれもそのような溶融温度を有する。
【0013】
さらに好ましい実施形態は、成分(A)の融解エンタルピーが30~70J/g、とりわけ40~65J/gの範囲にあり、好ましくは、混合物が成分(A)として存在する場合、混合物だけでなくまた(A)の内の個々の成分それぞれもそのような融解エンタルピーを有することを特徴とする。
さらに好ましい実施形態は、成分(A)が、ISO 307(2013-08)に従ってm-クレゾール(0.5質量%、20℃)中で測定して、2.6未満のηrel、好ましくは2.3未満のηrel、とりわけ2.0未満のηrel、かつ少なくとも1.4のηrel、好ましくは少なくとも1.5のηrel、とりわけ少なくとも1.55のηrelの溶液粘度を有し、好ましくは、混合物が成分(A)として存在する場合、混合物だけでなくまた(A)の内の個々の成分それぞれもそのような溶液粘度を有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、成分(A)のポリアミドが以下:
(A1)存在するジカルボン酸の合計量に対して、25~100mol%、好ましくは40~100mol%、とりわけ好ましくは50~80mol%のテレフタル酸、存在するジカルボン酸の合計量に対して、0~75mol%、好ましくは0~60mol%、とりわけ好ましくは20~50mol%の、8~20個の炭素原子を有する非テレフタル酸芳香族ジカルボン酸、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、8~20個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸またはそれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のジカルボン酸、
(A2)存在するジアミンの合計量に対して、50~100mol%、好ましくは80~100mol%の、4~8、好ましくは6個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン、
存在するジアミンの合計量に対して、0~50mol%、好ましくは0~20mol%の、6~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミン、8~20個の炭素を有する芳香脂肪族(araliphatic)ジアミンの群から選択される少なくとも1種のジアミン
(ジカルボン酸の百分率モル量が100mol%であり、ジアミンの百分率モル量が100mol%である)、およびまた、
(A3)0~100mol%の、4~36個の炭素原子を有する、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸および/またはラクタム
から構成され、
但し、(A3)の濃度は、(A1)~(A3)の合計に対して、最高40質量%、好ましくは最高30質量%、とりわけ最高20質量%であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは成分(A)が半晶質半芳香族ポリアミドによってのみ実質的に形成される場合、以下:
(A1)存在するジカルボン酸の合計量に対して、50~80mol%または100mol%のテレフタル酸、存在するジカルボン酸の合計量に対して、0または20~50mol%の、以下の群:8~20個の炭素原子を有する非テレフタル酸芳香族ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸、6~36個の炭素原子を有する、好ましくは6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、8~20個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のジカルボン酸、
(A2)存在するジアミンの合計量に対して、50~100mol%、好ましくは80~100mol%の、4~8、好ましくは6個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン、存在するジアミンの合計量に対して、0~50mol%、好ましくは0~20mol%の、6~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミン、8~20個の炭素を有する芳香脂肪族ジアミンの群から選択される少なくとも1種のジアミン
(ジカルボン酸の百分率モル量が100mol%であり、ジアミンの百分率モル量が100mol%である):およびまた、任意に
(A3)0~100mol%の、4~36個の炭素原子を有する、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸および/またはラクタム
から構成され、
但し、(A3)の濃度は、(A1)~(A3)の合計に対して、最高40質量%、好ましくは最高30質量%、とりわけ最高20質量%である
成分(A)のポリアミドの系が特に好ましい。
【0016】
この文脈において、タイプ6T/66(50~70mol%の範囲の6Tおよび30~50mol%の範囲の66のブロック比率を有する)および/またはタイプ6T/6I(50~80mol%の範囲、好ましくは60~75mol%の範囲の6T、20~50の範囲、好ましくは25~40mol%の範囲の6Iのブロック比率を有する)および/またはタイプ6T/MPDT(40~60mol%の範囲の6Tおよび40~60mol%の範囲のMPDTのブロック比率を有する、MPD=2-メチルペンタンジアミン)の系が好ましい。
【0017】
さらに好ましい実施形態は、成分(A)のポリアミドが具体的には以下の群:PA 4T/46、PA 4T/66、PA 4T/4I、PA 4T/4I/46、PA 4T/46/66、PA 4T/4I/66、PA 4T/56、PA 5T/56、PA 5T/5I、PA 5T/66、PA 6T/6I、PA 6T/66、PA 6T/612、PA 6T/12,PA 6T/11、PA 6T/6、PA 6T/MACM10、PA 6T/MACM12、PA 6T/MACM18、PA 6T/MACMI、PA MACMT/6I、PA 6T/PACM6、PA 6T/PACM10、PA 6T/PACM12、PA 6T/PACM18、PA 6T/PACMI、PACMT/6I、PA MPDT/MPDI、PA MPDT/MPD6,PA 6T/MPDI、PA 6T/MPDT(MPD=2-メチルペンタンジアミン)、PA 6T/6I/66、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12、PA 6T/66/6、PA 6T/66/12、PA 6T/6I/MACMI、PA 6T/66/PACM6またはそのような系の混合物から選択されることを特徴とする。選択肢は、好ましくはPA 6T/6I、PA 6T/66またはそのような系の混合物としてある。
【0018】
成分(A)中のテレフタル酸の分率は、好ましくは少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも52mol%、とりわけ好ましくは少なくとも54mol%、非常に好ましくは少なくとも62mol%の領域であり、テレフタル酸は、好ましくは、最大100%または最大99mol%、95mol%または90mol%を占める。
さらなる好ましい実施形態は、成分(A)が、50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および20~50mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、好ましくは55~75mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、とりわけ好ましくは62~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~38mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、少なくとも1種の半晶質ポリアミド6T/6Iによって形成されることを特徴とする。
【0019】
さらに好ましい実施形態は、成分(A)が、50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、好ましくは52~68mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および32~48mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、とりわけ好ましくは55~65mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および35~45mol%のヘキサメチレンアジプアミドを有する、少なくとも1種の半晶質ポリアミド6T/66によって形成されることを特徴とする。
【0020】
成分(A)はさらに、50~70mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、5~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および5~45mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、とりわけ62~68mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、20~30mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および5~15mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する、少なくとも1種の半晶質三成分系ポリアミド6T/6I/66によって形成されてもよい。
【0021】
成分(A)はまた、さらに、少なくとも50mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、0~40mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および10~50mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する少なくとも1種の6T/6I/Xによって、または少なくとも50mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、10~30mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および10~40mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって、または52~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、0~36mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および12~48mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって、または52~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミドおよび10~36mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、12~38mol%の式NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって形成されてもよい。
【0022】
ここで具体的に見ると、成分(A)は、代替的にまたはさらに、以下のさらなる好ましい実施形態の1つまたは複数に従って、以下のように、一般的にさらに特徴付けられてもよい。
その場合、優先的に、成分(A)はポリフタルアミドをベースとする。ポリフタルアミドは、テレフタル酸および脂肪族または脂環式ジアミン、および、任意にさらなる脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸、およびまたラクタムおよび/またはアミノカルボン酸をベースとするポリアミドである。
芳香族ジカルボン酸および短鎖脂肪族ジアミンベースのポリアミドが、一般に高溶融のポリアミドとして適切である。芳香族ジカルボン酸の一部は、脂肪族および/または脂環式のジカルボン酸と置き換えられてもよい。短鎖脂肪族ジアミンの一部は、脂環式および/または芳香脂肪族ジアミンによって置き換えられてもよい。ジカルボン酸およびジアミンの部分的な置き換えもまた、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸によって行われてもよい。
【0023】
したがって、成分(A)の高溶融のポリアミドは、下記成分:
(A1)ジカルボン酸:
存在する酸の合計量に対して50~100mol%のテレフタル酸、存在する酸の合計量に対して0~50mol%の、8~20個の炭素原子を有する別の芳香族ジカルボン酸、および/または6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および/または8~20個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸またはそのような系の混合物、
(A2)ジアミン:
存在するジアミンの合計量に対して50~100mol%の、4~8個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミン、0~50mol%の、6~20個の炭素原子を有する脂環式ジアミン、および/もしくは8~20個の炭素を有する芳香脂肪族ジアミン(例えばMXDAおよびPXDAなど)、またはそのような脂環式もしくは芳香脂肪族の系の混合物
(高溶融のポリアミドにおいて、ジカルボン酸の百分率モル量が100%であり、ジアミンの百分率モル量が100%である)
ならびに、任意に、
(A3)0~100mol%の、6~12個の炭素原子を有するラクタムおよび/または6~12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸を含む、アミノカルボン酸および/またはラクタム
から優先的に形成される。
【0024】
成分(A1)および(A2)は概して等モルで使用されるが、(A3)の濃度は、各事例で、(A1)~(A3)の合計に対して好ましくは最高40質量%、好ましくは最高30質量%、とりわけ最高20質量%である。
概して等モルに使用される成分(A1)および(A2)に加えて、ジカルボン酸(A1)またはジアミン(A2)は、モル質量を調節するため、またはポリアミド製造中のモノマー消失を償うために使用されてもよく、そのため、その全体では、成分A1またはA2の濃度は優位を占めてよい。
テレフタル酸(TEA)の一部、具体的には最大50mol%、好ましくは最大48mol%、とりわけ最大46mol%が、6~36個の炭素原子を有する他の芳香族、脂肪族または脂環式のジカルボン酸と置き換えられてもよい(ジカルボン酸の合計量に対して)。
【0025】
適切な芳香族ジカルボン酸には、ナフタレンジカルボン酸(NDA)およびイソフタル酸(IPA)が含まれる。
適切な脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸およびダイマー脂肪酸(C36)である。
適切な脂環式ジカルボン酸は、cis-および/もしくはtrans-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ならびに/またはcis-および/もしくはtrans-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸(CHDA)である。
【0026】
成分A2として50~100mol%で使用されるジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン,1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(MPD)、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミンの群から優先的に選択される。これらのうち、ジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミンおよび1,8-オクタンジアミン、特に、1,6-ヘキサンジアミンおよびメチル-1,5-ペンタンジアミンが好ましい。
前述の短鎖脂肪族ジアミンは、少量(それは、各事例においてジアミンの合計量に対して具体的には50mol%以下、好ましくは40mol%以下、とりわけ30mol%以下を意味する。)が他のジアミンによって置き換えられてもよい。
【0027】
使用される脂環式ジアミンは、好ましくはシクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン(EACM)、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン(TMDC)および3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)であってもよい。
使用される芳香脂肪族ジアミンは、好ましくはm-キシリレンジアミン(MXDA)およびp-キシリレンジアミン(PXDA)であってもよい。
【0028】
記載されたジカルボン酸およびジアミンに加えて、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸をポリアミド形成成分(成分A3)として一定限度まで使用することも可能である。適切な化合物は、好ましくはカプロラクタム(CL)、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)およびラウロラクタム(LL)およびα,ω-アミノ-ドデカン酸(ADA)である。しかしながら、この場合、成分(A1)および(A2)と一緒に使用されるアミノカルボン酸および/またはラクタムの濃度は、成分(A1)および(A2)の合計に対して、最高40質量%、好ましくは最高30質量%、より好ましくは最高20質量%である。
とりわけ好ましいラクタムは、4、6、7、8、11または12個の炭素を有するラクタムまたはα,ω-アミノ酸である。これらは、例えば、ラクタムである、ピロリジン-2-オン(炭素4個)、ε-カプロラクタム(炭素6個)、エナントラクタム(炭素7個)、カプリロラクタム(炭素8個)、ラウロラクタム(炭素12個)、ならびにα,ω-アミノ酸である、1,4-アミノブタン酸、1,6-アミノヘキサン酸、1,7-アミノヘプタン酸、1,8-アミノオクタン酸、1,11-アミノウンデカン酸および1,12-アミノドデカン酸である。
【0029】
ジアミンはジカルボン酸より揮発性の化合物であるので、製造工程には通常ジアミンの消失を伴う。したがって、ジアミンの消失を償うために、モノマーバッチは、好ましくはジアミンの合計量に対して1~8質量%過剰のジアミンと混合される。過剰のジアミンもまた分子量および末端基の分布を調節する。
モル質量、相対粘度および/または流動性もしくはMVRを調節するために、バッチおよび/または予備縮合物(ポスト縮合前の)をモノカルボン酸またはモノアミンの形態の連鎖移動剤と混合することが可能である。連鎖移動剤として適切な脂肪族、脂環式または芳香族のモノカルボン酸またはモノアミンは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミンなどである。連鎖移動剤は、個々にまたは組み合わせて利用されてもよい。また、使用される連鎖移動剤が、無水物、イソシアネート、ハロゲン化アシルまたはエステルなどのアミノ基または酸基と反応することができる他の一官能性化合物を含むことも可能である。使用される連鎖移動剤の好ましい量は、ポリマー1kg当たり10~200mmolの間にある。
【0030】
半芳香族コポリアミド(A)は、それ自体公知である方法によって調製されてもよい。適切な方法は様々な場所で記載されており、幾つかの可能性のある方法を以下に示す;確認された下記特許文書の開示内容は、それが本発明の成分Aのコポリアミドを調製する方法に関する限り、明らかに本出願の開示内容に含まれる:独国特許第19513940号、欧州特許第0976774号、欧州特許第0129195号、欧州特許第0129196号、欧州特許第0299444号、米国特許第4,831,106号、米国特許第4,607,073号、独国特許第1495393号および米国特許第3,454,536号。
【0031】
成分(A)の調製には、好ましくは2段階調製、先ず低粘度、低分子量の予備縮合、および固体相または溶融物(例えば押出機中)中でのその後のポスト縮合が適切である。
また、可能なのは1.予備縮合、2.固体相重合、および3.溶融重合を含む3段階法であり、これは、例えば独国特許第69630260号に示され、その開示内容はこれに関して同様に包含される。
300℃未満の融点を有する生成物については、別の適切な方法は、米国特許第3,843,611号および米国特許第3,839,296号に記載されている1段階バッチ法であり、これに関して同様に包含され、この中で、モノマーまたはその塩の混合物は250~320℃の温度で1~16時間加熱され、圧力は、ガス状物質の蒸発を含み不活性ガスの助けがあってもよい最大値から、最低圧力に1mmHgまで下げられる。
【0032】
したがって、一般的に定式化すると、成分(A1)に関連するポリアミド成形組成物の好ましい実施形態は、成分(A1)の非テレフタル酸-ジカルボン酸は以下の群:ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、ダイマー脂肪族酸(C36)、cis-および/もしくはtrans-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、cis-および/もしくはtrans-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする。
成分(A2)に関連するポリアミド成形組成物の好ましい実施形態は、成分(A2)の脂肪族ジアミンが以下の群:1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミンまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とし、以下の群:1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミンまたはそれらの混合物が好ましい。
【0033】
成分(A2)に関するポリアミド成形組成物のさらなる好ましい実施形態は、成分(A2)の脂環式または芳香脂肪族ジアミンが以下の群:シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2-(4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパンおよび3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、m-キシリルエンジアミンおよびp-キシリレンジアミンまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする。
【0034】
成分(A3)に関するポリアミド成形組成物のさらなる好ましい実施形態は、成分(A3)が以下の群:カプロラクタム、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノ-ノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸、ラウロラクタム、α,ω-アミノドデカン酸、4、6、7、8、11または12個の炭素を有するα,ω-アミノ酸、とりわけピロリジン-2-オン、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、ラウロラクタム、1,4-アミノブタン酸、1,6-アミノヘキサン酸、1,7-アミノヘプタン酸、1,8-アミノオクタン酸、1,11-アミノウンデカン酸および1,12-アミノドデカン酸またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする。
【0035】
本発明の半芳香族ポリアミドの具体的な代表例は、既に上記に明示した以下の系またはそれらの混合物(ブレンド):PA 4T/46、PA 4T/66、PA 4T/4I、PA 4T/4I/46、PA 4T/46/66、PA 4T/4I/66、PA 4T/56、PA 5T/56、PA 5T/5I、PA 5T/66、PA 6T/6I、PA 6T/66、PA 6T/610、PA 6T/612、PA 6T/12、PA 6T/11、PA 6T/6、PA 6T/MACM10、PA 6T/MACM12、PA 6T/MACM18、PA 6T/MACMI、PA MACMT/6I、PA 6T/PACM6、PA 6T/PACM10、PA 6T/PACM12、PA 6T/PACM18、PA 6T/PACMI、PACMT/6I、PA MPDT/MPDI、PA MPDT/MPD6、PA 6T/MPDI、PA 6T/MPDT(MPD=2-メチルペンタンジアミン、PA 6T/6I/66、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12、PA 6T/66/6、PA 6T/66/12、PA 6T/6I/MACMI、PA 6T/66/PACM6である。
【0036】
好ましい一実施形態によると、成分(A1)中のテレフタル酸の分率は、少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも52mol%、とりわけ好ましくは少なくとも54mol%、非常に好ましくは少なくとも62mol%であり、優先的には、成分(A2)は、もっぱらヘキサメチレンジアミン、またはもっぱら2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、またはもっぱらヘキサメチレンジアミンと2-メチル-1,5-ペンタンジアミンとの混合物からなる。
【0037】
したがって、本発明によると、好ましい高溶融のポリアミド(A)は、とりわけ以下の半芳香族コポリアミドである:
- 少なくとも50mol%のテレフタル酸および唯一のジアミン成分としてヘキサメチレンジアミンから調製された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも52mol%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから調製された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも54mol%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから調製された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも62mol%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから調製された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも60~70mol%のテレフタル酸、20~30mol%のイソフタル酸および5~15mol%のアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンから調製された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも50mol%のテレフタル酸および2-メチル-1,5-ペンタンジアミンから調製された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも50mol%のテレフタル酸、およびヘキサメチレンジアミンと2-メチル-1,5-ペンタンジアミンとの混合物から調製された半晶質ポリアミド。
【0038】
さらなる好ましい実施形態によると、成分(A1)中のテレフタル酸の分率は少なくとも50mol%であり、成分(A2)の内で、脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミンを少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも15mol%、より好ましくは少なくとも50mol%の分率で含み、ここで、ジアミンの残りの分率は、m-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、またはそれらの混合物の群から選択され、この群から、好ましくは、1つの系のみがヘキサメチレンジアミンを含む混合物中で使用される。
【0039】
したがって、本発明によると、好ましい高溶融のポリアミド(A)は、特にその上に、以下の半芳香族コポリアミドである:
- 少なくとも50mol%のテレフタル酸、およびヘキサメチレンジアミンとm-キシリレンジアミンとの混合物から調製され、ジアミン含量の合計に対して、少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも15mol%、より好ましくは少なくとも50mol%のヘキサメチレンジアミンが使用された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも50mol%のテレフタル酸、およびヘキサメチレンジアミンとビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンとの混合物から調製され、ジアミン含量の合計に対して、少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも15mol%、より好ましくは少なくとも50mol%のヘキサメチレンジアミンが使用された半晶質ポリアミド;
- 少なくとも50mol%テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンとビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンとの混合物から調製され、ジアミン含量の合計に対して、少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも15mol%およびより好ましくは少なくとも50mol%のヘキサメチレンジアミンが使用された半晶質ポリアミド。
【0040】
ポリアミド成形組成物のさらなる好ましい実施形態は、成分(A)が、50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、好ましくは55~75mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、とりわけ好ましくは62~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~38mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する半晶質ポリアミド6T/6Iによって形成されることを特徴とする。
【0041】
したがって、本発明によると、好ましい高溶融のポリアミド(A)は、とりわけさらに、以下の半芳香族コポリアミドである:
- 50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する半晶質ポリアミド6T/6I;
- 55~75mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する半晶質ポリアミド6T/6I;
- 62~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および25~38mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する半晶質ポリアミド6T/6I;
- 70mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および30mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する半晶質ポリアミド6T/6I。
ポリアミド成形組成物のさらなる好ましい実施形態は、成分(A)が、50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位を有する、好ましくは50~65mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および35~50mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位を有する、とりわけ好ましくは52~62mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および38~48mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位を有する半晶質ポリアミド6T/66によって形成されることを特徴とする。
【0042】
したがって、本発明によると、高溶融のポリアミド(A)は、以下の半芳香族コポリアミド:
- 50~80mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および20~50mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位(66)を有する半晶質ポリアミド6T/66;
- 50~65mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および35~50mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位(66)を有する半晶質ポリアミド6T/66;
- 52~62mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および38~48mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位(66)を有する半晶質ポリアミド6T/66;
- 55mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および45mol%のヘキサメチレンアジポアミド単位(66)を有する半晶質ポリアミド6T/66がとりわけさらに好ましい。
【0043】
したがって、本発明によると、好ましい高溶融のポリアミド(A)は、その上、特に、以下の半芳香族コポリアミドである:
- 35~65mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および65~35mol%の2-メチル-1,5-ペンタメチレンテレフタルアミド(MPDT)単位を有する半晶質ポリアミド6T/MPDT;
- 40~60mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および60~40mol%の2-メチル-1,5-ペンタメチレンテレフタルアミド(MPDT)単位を有する半晶質ポリアミド6T/MPDT;
- 45~55mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位および55~45mol%の2-メチル-1,5-ペンタメチレンテレフタルアミド(MPDT)単位を有する半晶質ポリアミド6T/MPDT。
【0044】
成分(A)は、さらに好ましい実施形態によると、半晶質三成分系ポリアミドによって形成されてもよい。
同様に、成分(A)が、50~70mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド、5~45mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および5~45mol%のヘキサメチレンアジプアミド単位を有する半晶質三成分系ポリアミド6T/6I/66によって形成されることはさらに好ましい。
同様に、成分(A)は、少なくとも50mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、0~40mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および10~50mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって形成されることが好ましい。
【0045】
同様に、成分(A)は、少なくとも50mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、10~30mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および10~40mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって形成されることが好ましい。
同様に、成分(A)は、52~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、0~36mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および12~48mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって形成されることが好ましい。
同様に、成分(A)は、52~73mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、10~36mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および12~38mol%の式-NH-(CH2)n-1-CO-[式中、nは6、11または12である。]の脂肪族単位を有する6T/6I/Xによって形成されることが好ましい。
【0046】
さらなる好ましい実施形態によると、成分(A)は、最大44個の炭素原子を有する二量化脂肪酸と、脂肪族または脂環式ジアミン、とりわけヘキサメチレンジアミンとの縮合によって調製することができる、最大26mol%の脂肪族単位を含有する半芳香族および半晶質ポリアミドをベースとする。
成分(B):
成分(B)の炭素繊維は、13~22質量%、好ましくは14~20質量%、または15~20質量%、とりわけ好ましくは15~18質量%の分率でポリアミド成形組成物中に存在する。
一般的に要約すると、成分(B)は、優先的に、第1の好ましい実施形態が、短繊維、または短繊維束もしくは連続繊維束の形態を成分(B)が取ることを特徴とするように形成される。
【0047】
さらに好ましい実施形態は、成分(B)の繊維が、0.1~50mm、好ましくは1~12mmの長さ、および/または5~40μm、とりわけ好ましくは5~10μmの直径を有することを特徴とする。
さらに好ましい実施形態は、成分(B)の繊維が、PANベース、ピッチベースまたはセルロースベースの繊維に基づいて形成されることを特徴とする。
さらに、成分(B)の繊維は異方性であってもよい。
成分(B)の繊維は、数百から数十万の個々のフィラメントで構成される炭素繊維束の形態を取ってもよく、それは、5~10μmの直径、1000~7000MPaの引張強度および200~700GPaの弾性率を有する。
【0048】
ここで具体的に見ると、成分(B)は、代替的にまたはさらに、以下のさらなる好ましい実施形態の1つまたは複数に従って、以下のように、一般的に特徴付けられてもよい:成分(B)の炭素繊維は、0.1~50mm、好ましくは1~12mmの長さ、および5~40μm、とりわけ好ましくは5~10μmの直径を有する炭素短繊維の使用が好ましく、短繊維または連続繊維束として使用されてもよい。炭素繊維のベースとして、PANベース、ピッチベースまたはセルロースベース繊維(酢酸セルロースなど)を使用することが可能であり、例えば、PAN繊維(PAN=ポリアクリロニトリル)が特に好ましい。これらの出発材料は、熱分解(酸化および炭化)によって黒鉛のように配置された炭素に転換される。異方性の炭素繊維は、軸方向の低い破壊時伸び率に関連する、高い強度および剛性を示す。
【0049】
炭素繊維は、一般に温度および雰囲気の交互する制御された条件に、ポリアクリロニトリル、ピッチまたはレーヨンの適切なポリマー繊維を曝露することによって製造される。例えば、炭素繊維は、PANフィラメントまたはPAN布の、200~300℃で酸化雰囲気中での安定化、その後の600℃を超える不活性雰囲気中での炭化によって製造することができる。この種類のプロセスは最新技術であり、例えば、H. Heiβler, “Verstarkte Kunststoffe in der Luft-und Raumfahrt”[Reinforced plastics in aerospace], W. Kohlhammer, Stuttgart, 1986に記載されている。
炭素繊維束は、個々のフィラメントとして公知の数百から数十万の炭素繊維からなり、5~10μmの直径、1000~7000MPaの引張強度および200~700GPaの弾性率を有する。一般に、1000~24000の個々のフィラメントは、集められ、マルチフィラメント糸(連続的な炭素繊維束、粗糸)を形成し、巻き取られる。さらに、テキスタイル中間体(布、組みひもまたは多軸寝かせスクリム(multiaxial laid scrim)など)への加工は、例えば、織機、組機もしくは多軸編機で、または、繊維強化プラスチックの製造部門においてプリプレグライン、引抜きラインまたは巻取り機で直接に行われる。
【0050】
短繊維の形態で、それらはポリマーに混合することができ、押出機ラインおよび射出成形ラインを介してプラスチック部品に加工することができる。
炭素繊維の加工を改善し、または実際に可能にするために、また、用いるプラスチックとの高度な適合性をもたらすために、炭素繊維はサイズ処理がその表面に施される。ポリアミドと適合性のあるサイズ処理が好ましい。そのような炭素短繊維の1種は、例えば、Toho Tenax Europe GmbH(DE)から商品名Tenax E HT C604 6MMの下で市販されている。
さらに好ましい実施形態によると、成分(B)の炭素繊維は再生炭素繊維であってもよい。
成分(C):
【0051】
成分(C)は、優先的に20~28質量%の分率で、とりわけ好ましくは20~25質量%の範囲で存在する。
一般用語で要約すると、成分(C)は優先的に、成分(C)の繊維が優先的に円形または非円形の断面積を有するように設計される。
非円形の断面積を有するガラス繊維の場合には、2を超える、好ましくは2~8、とりわけ2.5~5の主断面軸(principal cross-sectional axis)対それに垂直な第二断面軸(secondary cross-sectional axis)の寸法比を有するものの使用が好ましい。
さらに、非円形の断面積を有するガラス繊維の場合には、主断面軸の長さは、好ましくは6~40μmの範囲、とりわけ15~30μmの範囲であり、第二断面軸の長さは、好ましくは3~20μmの範囲、とりわけ4~10μmの範囲である。
【0052】
非円形の断面積を有するこれらのいわゆる扁平ガラス繊維は、例えば、卵形、楕円、単一もしくは複数のくびれを有する楕円(いわゆる絹繊維(cocoon fiber))、多角形、長方形またはほぼ長方形である断面積を有する。用いられる扁平ガラス繊維をさらに特徴付ける特色は、扁平ガラス繊維が極めて高い充填密度を有することであり、すなわち、ガラス繊維の断面積が、ガラス繊維の断面を取り囲む想像上の長方形を可能な限り正確に充填する程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、とりわけ好ましくは少なくとも85%である。
さらに好ましい実施形態によると、成分(C)の繊維は、成分、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムで実質的に構成される、またはそれらからなるガラス繊維である。この場合、好ましくはSiO2/(CaO+MgO)の質量比は、2.7未満、好ましくは2.5未満、とりわけ2.1~2.4の間である。
特に成分(C)は、ASTM D578-00によるEガラス繊維を含む。
【0053】
本発明によると、ガラス繊維はまた高強度のガラス繊維であってもよい。別の好ましい実施形態によると、成分(C)の繊維は、二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウムの三成分系、または二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウム-酸化カルシウムの四成分系ベースのガラス繊維である。その事例では、58~70質量%の二酸化ケイ素(SiO2)、15~30質量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、5~15質量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~10質量%の酸化カルシウム(CaO)、および0~2質量%のさらなる酸化物、とりわけ二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ホウ素(B2O3)、二酸化チタン(TiO2)またはリチウム酸化物(Li2O)の組成物が好ましい。
【0054】
高強度ガラス繊維は、優先的に4000MPa以上の引張強度、および/または少なくとも5%の破壊時伸び率、および80GPaを超える引張弾性率を有する。成分のこれらの高強度ガラス繊維の具体的な例は、Owens Corningからの910または995サイズ処理S-ガラス繊維、NittoboからのT-ガラス繊維、3BからのHiPertex、Sinoma Jinjing FiberglassからのHS4-ガラス繊維、VetrotexからのR-ガラス繊維、ならびにまたAGYからのS-1-およびS-2-ガラス繊維である。
成分(C)の繊維は、また5~20μmの範囲、好ましくは6~17μmの範囲、より好ましくは6~13μmの範囲の直径を有する円形の断面を有するガラス繊維であってもよい。それらは、好ましくは短いガラス繊維(長さが0.2~20mm、好ましくは2~12mmである、チョップトガラス)として用いられる。
【0055】
成分(C)のガラス繊維は、一般に、短繊維の形態、好ましくは0.2~20mmの範囲の長さを有するチョップトガラスの形態、または連続フィラメント繊維の形態をしていてもよい。したがって、成形組成物は、いわゆる短繊維(例えば長さ0.2~20mmを有するチョップトガラス)または連続フィラメント繊維(粗糸)の形態で用いられる、18~30質量%、好ましくは20~30質量%、より好ましくは20~25質量%のガラス繊維(C)を含む。
明示されたガラス繊維は、好ましい実施形態に従って個々に、または様々な形態の混合物で使用することができる。
【0056】
したがって、本発明の成形組成物を強化するために、また、例えば、円形および非円形の断面を有するガラス繊維の混合物の使用が可能であり、その場合には扁平ガラス繊維の分率は優先的に過半であり、それは、繊維の全体量の50質量%を超える割合を占めることを意味する。
ガラス繊維は、優先的に問題の熱可塑性樹脂、とりわけポリアミドに対して適切にサイズ処理されており、そのサイズ処理は、例えば、アミノシランまたはエポキシシラン化合物ベースの接着促進剤を含む。
さらなる好ましい実施形態による成分(C)の内の粗糸として用いられる高強度ガラス繊維は、好ましくは8~20μm、好ましくは12~18μmの直径を有し、ガラス繊維の断面は、円形、卵形、楕円、単一もしくは複数のくびれを有する楕円、多角形、長方形、またはほぼ長方形であってもよい。2~5の断面軸の比を有する、いわゆる扁平ガラス繊維が特に好ましい。
【0057】
とりわけ好ましくは成分(C)(しかし同様の注釈が、好ましくはまたは代替として成分(B)にも当てはまるが)内の連続フィラメント繊維は、細長い長尺繊維強化ペレット(繊維長およびペレット長は同一である)を製造する公知の方法によって、特に連続的な繊維ストランド(粗糸)が、完全にポリマー溶融物で飽和させて、次に冷却され、切り刻まれる引抜き方法によって本発明のポリアミド成形組成物に組み込まれる。このようにして得られた、細長い長尺繊維強化ペレットは、好ましくは3~25mm、とりわけ4~12mmのペレット長を有し、通常の加工技法(例えば射出成形、圧縮成形)を用いてさらに加工して成形品を形成することができる。本発明の成形組成物はまた、連続的な繊維(長いガラス繊維)を短繊維(短いガラス繊維)と組み合わせることにより強化することができる。
成分(D):
【0058】
さらなる実施形態において、本発明の成形組成物は、成分(D)として、成形組成物全体に対して、最大10質量%、好ましくは2~8質量%、とりわけ好ましくは3~6質量%の、(A)、(E)および(F)と異なる1種または複数の衝撃改良剤(IM)、ならびに/または(A)、(E)および(F)と異なるポリマーを含む。
一般的用語で要約すると、成分(D)は優先的に以下のように設計される:(A)、(E)および(F)と異なる衝撃改良剤として選択される成分(D)は、優先的に以下の群:天然ゴム、グラフトゴム、オレフィンおよび/もしくはスチレンならびにその誘導体、および/もしくはアクリレートおよびその誘導体および/もしくは無水物のホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0059】
一般に、成分(D)を形成する系はグラフト化されていてもされていなくてもよい。成分(D)は、この場合、とりわけ以下の構成ブロックの少なくとも1つまたは組み合わせをブースとする(ブロック)コポリマーによって形成されてもよく、または、そのような系を含んでもよい:ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレンもしくはスチレン誘導体および他のコモノマーとのブタジエンおよび/またはイソプレンのコポリマー、酸無水物、(メタ)アクリル酸およびそのエステルを用いるグラフト化もしくは共重合によって形成された水素化コポリマーおよび/またはコポリマー、スチレンベースブロックコポリマー、エチレン-α-オレフィンコポリマー、エチレン-アクリレートまたはエチレン-ブチレン-アクリレートコポリマー、オレフィンおよび共重合可能なモノマーの、エチレン、プロピレン、ブタ-1-エン含有コポリマー(特に、(メタ)アクリル酸エステルおよびメチルヘキサジエンなど)。これらの系はまた、アイオノマーの形態を取ってもよく、ポリマーに結合したカルボキシル基は、金属イオンによって全面的にまたは部分的に互いに連結されている。
【0060】
(A)、(E)および(F)と異なる衝撃改良剤として選択される成分(D)は、優先的に、無水マレイン酸でのグラフト化によって官能化した、スチレンを含むブタジエンのコポリマー、無水マレイン酸でのグラフト化によって形成された、無極性または極性オレフィンホモポリマーおよびオレフィンコポリマー、ならびに酸基が金属イオンで部分的に中和されたカルボン酸官能化コポリマー(ポリ(エテン-co-(メタ)アクリル酸)もしくはポリ(エテン-co-1-オレフィン-co-(メタ)アクリル酸)など)として選択される。
(A)、(E)および(F)と異なるポリマーとして選択される成分(D)は、優先的に脂肪族ポリアミドおよびポリオレフィンの群から選択される。脂肪族ポリアミドは、好ましくはPA 6、PA 46、PA 56、PA 66、PA 66/6、PA 69、PA 610、PA 612およびPA 614の群から選択される。PA 66およびPA 6が特に好ましい。これらの脂肪族ポリアミドは、好ましくは、m-クレゾール(0.5質量%、20℃、ISO 307による)中で測定して、1.5~3.0、とりわけ1.6~2.7の範囲の溶液粘度を有する。ポリオレフィンのうち、ポリエチレン、とりわけLDPE、ポリプロピレンおよびまたエチレン-プロピレンコポリマーが好ましい。
【0061】
成分(F)において要約された特定の添加剤は、本発明の成形組成物を製造する場合、純粋な形態で他の成分と混合されないで、その代りに、濃縮物またはマスターバッチ(MB)と呼ばれるものの形態で混合される。これらのMBのベースは、好ましくは成分(D)の上に明示した脂肪族ポリアミドまたはポリオレフィン、とりわけPA 6、PA 66およびLDPEである。したがって、脂肪族ポリアミドまたはポリオレフィンに由来するMBの分率は、成分(D)に割り当てられる。結果的に、添加剤自体の純粋な分率のみが成分(F)に帰することになる。
ここで具体的に見ると、成分(D)は、代替としてまたはさらに、以下のさらなる好ましい実施形態の1つまたは複数に従って、以下のように、一般的にさらに特徴付けられても良い」。
【0062】
衝撃改良剤は、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレンもしくはスチレン誘導体および他のコモノマーとのブタジエンおよび/またはイソプレンのコポリマー、酸無水物、(メタ)アクリル酸およびそのエステルを含む、グラフト化もしくは共重合によって形成された水素化コポリマーおよび/またはコポリマーであってもよい。
衝撃改良剤(D)は、また、ブタジエン、イソプレンもしくはアクリル酸アルキルからなり、ポリスチレンでできたグラフトシェルを有する架橋したエラストマーコアを有するグラフトゴムであってもよく、または、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴムおよびエチレン-オクテンゴムなどの無極性もしくは極性のオレフィンホモポリマーおよびコポリマー、または酸無水物、(メタ)アクリル酸およびそのエステルを用いてグラフト化もしくは共重合することによって形成された無極性もしくは極性のオレフィンホモポリマーおよびコポリマーであってもよい。
【0063】
衝撃改良剤(D)はまた、酸基が金属イオンで部分的に中和されたコポリマーを含む、ポリ(エテン-co-(メタ)アクリル酸)またはポリ(エテン-co-1-オレフィン-co-(メタ)アクリル酸)などのカルボン酸官能化コポリマーであってもよく、その場合、1-オレフィンは、4原子を超えるアルケンまたは不飽和(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
スチレンベースブロックコポリマーの例は、スチレン-(エチレン-ブチレン)ジブロックおよびスチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレントリブロックコポリマーを含む。
さらなる好ましい実施形態によると、本発明の成形組成物は、成分(D)が、ポリオレフィンホモポリマーまたはエチレン-α-オレフィンコポリマー、とりわけ好ましくはEPおよび/またはEPDMエラストマー(それぞれエチレン-プロピレンゴムおよびエチレン-プロピレン-ジエンゴム)を含むことを特徴とする。
【0064】
したがって成分(D)は、例えば、20~96、好ましくは25~85質量%のエチレンを含むエチレン-C3-12-α-オレフィンコポリマーベースのエラストマーを含んでもよく、C3-12-α-オレフィンは、とりわけ好ましくはプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび/または1-ドデセンの群から選択されるオレフィンであり、成分(D)は、とりわけ好ましくはエチレン-プロピレンゴムおよび/またはLLDPEおよび/またはVLDPEである。
代替としてまたはその上に(例えば、混合物中で)、(D)は、非共役ジエンを含むエチレン-C3-12-α-オレフィンベースのターポリマーを含んでもよく、このターポリマーは、優先的に、25~85質量%のエチレン、および最大10質量%の範囲の非共役ジエンを含み、C3-12-α-オレフィンは、とりわけ好ましくは、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび/または1-ドデセンの群から選択されるオレフィンであり、および/または非共役ジエンは、好ましくはビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタ-ジエンおよび/または、特に、5-エチリデンノルボルネンの群から選択される。
【0065】
その上で、エチレン-アクリレートまたはエチレン-ブチレン-アクリレートコポリマーは、さらに成分(D)に関して構成要素として適切である。
成分(D)は、優先的にカルボン酸基またはカルボン酸無水物基を有する構成要素を有し、これは、ポリアミドへの効果的な結合に十分な濃度での、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとの、主鎖ポリマーの熱的もしくはラジカル反応によって導入され、その目的に対して、以下の群:マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸および/またはイタコン酸無水物から選択される試薬が優先的に用いられる。
【0066】
好ましくは、0.1~4.0質量%の不飽和無水物は、(D)の構成要素として衝撃改良剤成分にグラフト化され、または、不飽和ジカルボン酸無水物またはその前駆体がさらなる不飽和モノマーと一緒にグラフト化される。グラフト率は、一般に、優先的に0.1~1.0%の範囲、とりわけ好ましくは0.3~0.7%の範囲である。0.3~0.7%の範囲の無水マレイン酸グラフト率(MAHグラフト率)を有する、エチレン-プロピレンコポリマーおよびエチレン-ブチレンコポリマーの混合物もまた成分(D)の構成要素として可能である。成分について上記に示した可能性のある系が、混合物にも使用されてもよい。
したがって、成分(D)として使用される衝撃改良剤には、例えばエチレン、プロピレン、ブタ-1-エンなどのオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー、またはオレフィンならびに(メタ)アクリル酸エステルおよびメチルヘキサジエンなどの共重合可能なモノマーのコポリマーが含まれる。
【0067】
結晶性オレフィンポリマーの例は、低密度、中密度および高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ-4-メチルペンテン、ランダムまたはブロックエチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-メチルヘキサジエンコポリマー、プロピレン-メチルヘキサジエンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ヘキセンコポリマー、エチレン-プロピレン-メチルヘキサジエンコポリマー、ポリ(エチレン-アクリル酸エチル(EEA)、エチレン-オクテンコポリマー、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーおよび明示されたポリマーの組み合わせである。
【0068】
成分(D)の構成要素の目的のために用いることができる市販の衝撃改良剤の例は、Mitsui ChemicalsからのTAFMER MC201:67%のEPコポリマー(20molの%プロピレン)+33%のEBコポリマー(15mol%のブタ-1-エン)のg-MAH(-0.6%)ブレンド;TAFMER MH5010:g-MAH(0.6%)エチレンブチレンコポリマー;TAFMER MH7010:g-MAH(0.7%)エチレンブチレンコポリマー;Mitsui.TAFMER MH7020:g-MAH(0.7%)EPコポリマー:Exxon Mobile ChemicalからのEXXELOR VA1801:g-MAH(0.7%)EPコポリマー;EXXELOR VA1803:g-MAH(0.5-0.9%)EPコポリマー、非晶性EXXELOR VA1810:g-MAH(0.5%)EPコポリマー;EXXELOR MDEX 94-1 1:g-MAH(0.7%)EPDM;FUSABOND MN493D:g-MAH(0.5%)エチレン-オクテンコポリマー;FUSABOND A EB560D(g-MAH)エチレン-アクリル酸n-ブチルコポリマー;ELVALOY、DuPont;Kraton FG1901GT:S対EB比30:70のg-MAH(1.7%)SEBSである。
【0069】
また、ポリマーに結合したカルボキシル基が、金属イオンによって完全にまたは部分的に互いに連結したアイオノマーは、成分(D)として好ましい。
無水マレイン酸を用いてグラフト化することによって官能化された、ブタジエンのスチレンとのコポリマー、無水マレイン酸を用いてグラフト化することによって形成された無極性または極性のオレフィンホモポリマーおよびコポリマー、ならびに酸基が金属イオンで部分的に中和された、ポリ(エテン-co-(メタ)アクリル酸もしくはポリ(エテン-co-1-オレフィン-co-(メタ)アクリル酸などのカルボン酸官能化コポリマー、または側鎖にエポキシ基を担持するポリマーが特に好ましい。
側鎖にエポキシ基を有するポリマーに関して、好ましいものは、エポキシ基含有モノマーおよび少なくとも1種のさらなるモノマーで構成されるコポリマーであって、モノマーの両方の基が少なくとも1個の重合性炭素-炭素二重結合を含むものである。
【0070】
好ましいエポキシ基含有モノマーはアクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルである。C-C二重結合を含むさらなるモノマーは、アルケン(非環式アルケン、シクロアルケン、ポリエン)、アクリルモノマーおよびビニルモノマーから好ましくは選択され、2~10個の炭素原子を有する非環式アルケンおよびアクリル酸エステルが特に好ましい。
したがって、成分(D)として、アクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジル、ならびに少なくとも1種の非芳香族炭素-炭素二重結合を含み、それがオレフィン型不飽和モノマーであることを意味する少なくとも1種のさらなる不飽和モノマーのコポリマーの使用が好ましい。成分(D)は優先的に、アクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジル、ならびに少なくとも1種のさらなるオレフィン型不飽和モノマーのコポリマーであり、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルの濃度はコポリマーに対して5~15質量%の範囲である。
【0071】
さらなるオレフィン型不飽和モノマーが単不飽和オレフィン、好ましくは2~8個の炭素原子を有するα-オレフィン、または(メタ)アクリル酸エステル、またはビニルモノマーである場合、さらに好ましい。特に、アクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジルの他に、コポリマー(D)は、エテン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリルアミドおよびアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のさらなるオレフィン型不飽和モノマーを含む。特に好ましくは、成分(D)は、メタクリル酸グリシジルおよびエテンのコポリマーであり、さらなるオレフィン型不飽和モノマーのコポリマーであってもよく、エテンの量は、50~95質量%の範囲、好ましくは65~93質量%の範囲、より好ましくは80~95または85~94の範囲である。
【0072】
具体的な例は、エチレンおよびアクリル酸グリシジル;エチレンおよびメタクリル酸グリシジル;エチレン、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸グリシジル;エチレン、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸グリシジル;エチレン、アクリル酸エチルおよびメタクリル酸グリシジル;エチレン、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸グリシジル;エチレンおよびメタクリル酸グリシジルのコポリマーである。
特に、以下のコポリマーが好ましい。
・エチレンと、コポリマー中のモノマーすべての合計に対して7~14質量%のメタクリル酸グリシジル含量を含むメタクリル酸グリシジルとのコポリマー;
・コポリマー中のモノマーすべての合計に対して56~73質量%のエチレン、20~30質量%のアクリル酸メチルおよび7~14質量%のメタクリル酸グリシジルのコポリマー;
・コポリマー中のモノマーすべての合計に対して51~78質量%のエチレン、15~35質量%のアクリル酸ブチルおよび7~14質量%のメタクリル酸グリシジルのコポリマー。
【0073】
本発明に従って使用することができる成分(D)の特に好ましい例は、製品名Lotader AXの下でArkemaから入手可能な系、特に、タイプAX8840(92%のエテンおよび8%のメタクリル酸グリシジルのコポリマー)またはタイプAX8900(67%のエテン、25%のアクリル酸メチルおよび8%のメタクリル酸グリシジルのコポリマー)のものである。同様に、DupontからのElvaloyタイプの製品、特に、Elvaloy PTW(67%のエテン、28%のアクリル酸ブチルおよび5%のメタクリル酸グリシジルのコポリマー)、およびまたSumitomoから入手可能なIgetabondタイプの製品、特に、Igetabond E(88%のエテンおよび12%のメタクリル酸グリシジルのコポリマー)が好ましい。
成分(E):
成分(E)として成形組成物中に存在するものは、0~10質量%のエチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)である。好ましい一実施形態は、成分(E)の分率が1.0~8.0質量%の範囲、好ましくは2.0~7.0質量%の範囲であることを特徴とする。
【0074】
一般的に要約すると、成分(D)は優先的に以下のように設計される:
成分(E)は、好ましくは、5~35%、好ましくは8~25%、とりわけ好ましくは10~20%の酢酸ビニル含量を有するエチレン-酢酸ビニルコポリマーであり、百分率は、各事例において存在するグラフトを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーの合計質量に基づく。
さらなる好ましい実施形態によると、成分(E)は、好ましくは20000~500000g/molの範囲、とりわけ好ましくは30000~300000g/molの範囲のモル質量を有する。
【0075】
成分(E)は、グラフト化されていてもされていなくてもよく、好ましくは以下の系:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルまたはイタコン酸無水物の少なくとも1つを、好ましくは0.1~6.0質量%の範囲の濃度で使用して、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸および/または不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとの、主鎖ポリマーの熱的もしくはラジカル反応によって導入された酸または酸無水物基をそれぞれ有する。エチレン-酢酸ビニルコポリマーは、優先的に0.2~4.0質量%の範囲、とりわけ好ましくは0.5~2.5質量%の範囲のグラフトを有し、質量百分率は、各事例においてグラフトを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーの合計質量に基づく。
【0076】
さらなる好ましい成分(E)は、30%未満、より好ましくは10%未満の程度に加水分解され、好ましくは加水分解されていない。したがって、好ましくは、EVAも30%未満の程度に加水分解され、これは、EVA(成分E)中の酢酸ビニル基およびビニルアルコール基の合計に対してビニルアルコール基の比率が、30mol未満%、より好ましくは10mol%未満であることを意味する。EVAが加水分解されていない場合、それは特にさらに好ましく、加水分解の程度が0%であることを意味し、したがってビニルアルコール基は存在しないか、または事実上存在しない。
ここで具体的に見ると、成分(E)は、代替的にまたはさらに、以下のさらなる好ましい実施形態の1つまたは複数に従って、以下のように、一般的にさらに特徴付けられてもよい:EVAは、優先的に20000~500000g/molの範囲、とりわけ好ましくは30000~300000g/molの範囲のモル質量を有すること。
【0077】
上述のように、さらなる好ましい実施形態は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーがグラフト化されており、これが特に、ポリアミドとの適合性を改善する点が顕著である。
エチレン-酢酸ビニルコポリマーは、優先的にポリアミドへの効果的な結合に十分な濃度の不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとの、主鎖ポリマーの熱的またはラジカル反応によって導入された酸または酸無水物基を有する。この目的に関して、優先的に、以下の群:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよび/またはイタコン酸無水物から選択される試薬が使用される。好ましくは、0.1~6.0質量%のこれらの試薬、好ましくは不飽和無水物または不飽和カルボン酸は、エチレン-酢酸ビニルコポリマーにグラフト化され、またはカルボン酸もしくはジカルボン酸無水物またはその前駆体は、別の不飽和モノマーと一緒にグラフト化される。
【0078】
特に好ましくは、グラフト化は以下の群:アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸またはその組み合わせから選択される試薬を使用して行われ、グラフト化は、好ましくはアクリル酸が選択される。
ここで、成分(E)のエチレン-酢酸ビニルコポリマーは、優先的に0.2~4.0質量%の範囲、とりわけ好ましくは0.5~2.5質量%の範囲のグラフトを有し、ここで、質量百分率は、各事例においてグラフトを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーの合計質量に基づく。
使用される成分(E)のEVAがグラフト化されている場合、成形組成物は、優先的にさらなる相溶化剤を含まない。
さらに、成分(E)のEVAは優先的には架橋していない。これは、成形組成物が架橋剤およびラジカル開始剤を含まないことを意味する。
【0079】
優先的に使用される成分(E)のEVAは、(各事例で合計質量に対して)そのエチレン分率が79~86質量%であるものであり、その酢酸ビニル含量が13~18質量%であるものであり、そのアクリル酸グラフト化が1~3%となるものである。
市販のEVA系の例は以下の通りである:Scona TPEV 1110 PB、Scona TPEV 1112 PB、Scona TPEV 2113 PB、Scona TPEV 5010 PB、Evatane 18~150、Evatane 20~20、Evantane 28~40、Ultrathene UE672、Ultrathene UE635000、Atea 1075A、Atea 1241、Atea 2842AC。
成分F:
好ましい一実施形態によると、成分(F)の添加剤の分率は0.1~2.0質量%の範囲、とりわけ0.2~1.5質量%の範囲である。
【0080】
成分(F)の添加剤はさらに、以下の群またはそれらの混合物から優先的に選択される:接着促進剤、結晶化促進剤もしくは遅延剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、熱安定剤、例えば、フェノール、ホスファイト、芳香族アミン、銅ハロゲン化物、特に、アルカリ金属ハロゲン化物、酸化セリウム水和物、ランタン塩との組み合わせなど、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、加工助剤、静電気防止剤、有機および無機顔料、染料および標識物質、小板形ナノ粒子、カーボンブラック顔料(例えば、Cabot Black Pearls 880またはCorax N115など、好ましくはカーボンブラック顔料マスターバッチ(濃縮物)の形態、例えば、Euthylen blackなど)、重合プロセスからの残渣、例えば、触媒、その塩および誘導体、およびまた調節剤、例えば安定剤としての一塩基酸もしくはモノアミン、および/または酸素、窒素もしくは硫黄含有金属化合物(その場合、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ナトリウムおよびカリウム、マグネシウムおよび/または亜鉛などの金属が好ましい)、とりわけ好ましくは酸化物、水酸化物、カルボネート、シリケート、ボレート、ホスフェート、スタンネート、およびまたこれらの化合物の組み合わせまたは混合物、酸化物水酸化物または酸化物水酸化物カルボネートなどの群から選択される化合物。銅ハロゲン化物に関して、アルカリ金属ハロゲン化物、特に、臭化カリウムまたはヨウ化カリウムと組み合わせた臭化銅(I)またはヨウ化銅(I)の使用が好ましい。特に好ましい組み合わせは、ヨウ化銅(I)およびヨウ化カリウムのそれであり、ヨウ化銅(I)対ヨウ化カリウムのモル比は、好ましくは1~20、とりわけ4~12の範囲である。本発明は、さらに、上記成形組成物から製造可能な、または製造された成形物、とりわけ、射出成形プロセス、押出ブロー成形プロセスまたは押出プロセスで製造された成形物に関する。
【0081】
成形物は、フィルム、異形材または中空体、または接続エレメントの形態をしていてもよく、容器、配管、栓接続エレメント、ハウジング部品、締め具エレメント、ポンプ部品、バルブ、分配器、蓋、噴射器レール、目止めポート、ポンプハウジング、燃料フィルターハウジング、バルブハウジングを含み、とりわけ自動車部門用、化学薬品、とりわけ燃料、メタノール含有燃料、冷媒、ウレア、油に接するものを含む。
本発明は、さらに、好ましくは自動車部門の上記の成形物の形態のポリアミド成形組成物の使用、好ましくは、燃料配管、燃料タンク、ポンプ、ポンプ部品、噴射器レール、バルブ、およびまたこれらのための接続エレメントおよび締め具エレメント、とりわけ迅速コネクターを含む燃料用の配管エレメントとしての使用に関する。
さらなる実施形態は従属請求項において明示される。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明の好ましい実施形態を、作業例を参照して以下に記載するが、それは単に説明に役立てるためであり、限定的に解釈されるべきでない。
成形組成物、および測定のために使用される型の製造:
表1および表2の構成を有する成形組成物を、Werner u. PfleidererからのモデルZSK 25二軸押出機で製造した。そのために、(A)および(D)~(F)の成分を計量して取り込みゾーンに送った。炭素繊維(B)およびまたガラス繊維(C)を計量して、ダイの手前のサイドフィーダ3バレルユニットを介してポリマー溶融物に送った。バレル温度は350℃までの上昇プロファイルとして設定した。10kgのスループットが150~200rpmで達成された。コンパウンドは、ストランドとして3mmの直径を有するダイから取り出し、水冷却後ペレット化した。ペレット化し110℃24時間乾燥した後、ペレット特性を測定し、試験片を製造した。
試験片はArburg Allrounder 320-210-750射出成形機で製造し、シリンダ温度を310℃~350℃に設定し、スクリュー周速度を15m/分に設定した。選択した成形物温度は100~140℃であった。
【0083】
用いた出発材料は以下の通りであった:
PA-1 ポリアミドPA6T/66(55:45) 1.67の相対粘度、310℃の融点、およびΔHm=62J/gの融解エンタルピーを有する
PA-2 ポリアミドPA 66 1.85の相対粘度および260℃の融点を有する
PA-3 Polyamide PA 6T/6I(70:30) 1.58の相対粘度、325℃の融点、およびΔHm=55J/gの融解エンタルピーを有する
PA-4 ポリアミドPA 6T/MPDT(50:50) 1.62の相対粘度、305℃の融点、およびΔHm=45J/gの融解エンタルピーを有する
IM-1 エチレン/プロピレンおよびエチレン/ブチレンコポリマーベースの衝撃改良剤、Tafmer MC201、Mitsui
IM-2 92%エテンおよび8%メタクリル酸グリシジルのエチレン/メタクリル酸グリシジルコポリマー、MFR=5g/10分(ISO 1133、190℃/2.16kg)、Lotader AX 8840、Arkema
IM-3 無水マレイン酸で改質(100μeq/g)したα-オレフィンポリマー(エチレン/ブチレンコポリマー)ベースの衝撃改良剤 Tafmer MH-7010、Mitsui
EVA エチレン-酢酸ビニルコポリマー、14質量%の酢酸ビニルを含有し、2質量%のアクリル酸でグラフト化、Scona TPEV 1110 PB、BYK
GF ガラス繊維、Vetrotex 995-10C、長さ4.5mm、直径10μm(円形の断面積を有するガラス繊維)
CF 炭素繊維、Tenax E-HT C604、長さ6mm、直径6μm(円形の断面積を有する炭素繊維)、Toho Tenax Europe GmbH(DE)
CB 電気伝導性カーボンブラック、480~510ml/100gのDBPを吸収Ketjenblack EC-600 JD、AkzoNobel
添加剤 各事例で成形組成物全体に対して0.15質量%のIrganox 1098(BASF)、0.15質量%のHostanox PAR24(Clariant)、および0.2質量%のPolywhite B(Imerys)の混合物
結果:
【0084】
表は、本発明の実施例(表1)および比較例(表2)の組成物、およびそれらから製造した試験片の測定結果を要約する。
【表1】
【0085】
【0086】
【0087】
測定法:
出発材料を特性評価する表1および表2それぞれの値についての測定は、以下の標準によって、以下の試験片について、以下の表において他に注釈がない限り、乾燥状態で行った。
【0088】
引張弾性率:
ISO 527(パート1および2、2012-02)、1mm/分の引張速度、温度23℃;ISO引張バー、標準:ISO/CD 3167、タイプA1、170×20/10×4mm。
破壊強さおよび破壊時伸び率:
ISO 527(パート1および2、2012-02)、5mm/分の引張速度、温度23℃;ISO引張バー、標準:ISO/CD 3167、タイプA1、170×20/10×4mm。
相対粘度:
DIN EN ISO 307(2013-08)、0.5質量%濃度のm-クレゾール溶液中、温度20℃。
熱特性(融点、融解エンタルピーおよびガラス転移温度(Tg):
ISO標準11357-1(2009-10)、-2(2013-05)および-3(2011-05);示差走査熱量測定(DSC)を20℃/分の加熱速度でペレット化材料で行う。
衝撃靭性およびシャルピーノッチ付き衝撃靭性:
ISO179/keU(2010-11、2011-06)、温度23℃;ISO試験バー、標準:ISO/CD 3167、タイプB1、80×10×4mm。
熱変形温度HDT A(1.80MPa)、HDT C(8.00MPa)
DIN EN ISO 75-1、-2(2013-04);ISO衝撃バー寸法80×10×4mm(平らな末端位置において)。
【0089】
比体積電気抵抗:
(体積抵抗率とも呼ばれる、[オーム・m])
DIN IEC 60093:1993-12;100×100×2mmの板、伝導性銀と接触;電流/電圧測定法;30mmの直径を有する丸い銅電極を試料板の反対側面に配置;測定電圧は300メガオームの体積抵抗まで100V、それを越えると500V(各事例、直流電圧);測定は、23℃および50%の相対湿度で標準条件下で乾燥保管しておいて板の取り出し後20分以内に行う;表に報告した値は、それぞれの実施例の成形組成物から製造した、5枚の異なる板で独立した測定から求めた平均値である。
比表面電気抵抗:
(電極構成による、Ωスクエアとも称される、単位[オーム])
DIN IEC 60093:1993-12;100×100×2mmの板、伝導性の銀と接触させる;電流/電圧測定法、10mm間隔の銅電極10×10×100mm;測定電圧は300メガオームの表面抵抗まで100V、それを越えると500V(各事例、直流電圧);測定は、23℃および50%の相対湿度で標準条件下で乾燥保管しておいて板の取り出し後20分以内に行う;表に報告した値は、それぞれの実施例の成形組成物から製造した、5枚の異なる板で独立した測定から求めた平均値である。
流動挙動の指標としてのMVR(メルトボリュームフローレート)
ISO 1133(2011-12)330℃の温度で10.0kgの荷重。
【0090】
表面品質:
射出成形物の視覚的評価(板100×100×2mmおよび外径8mmのパイプ用コネクター):
○:不均質、マット、粗い表面;目に見える条痕および補強繊維
+:均質、滑らか、成形物全体にわたって不浸透性の表面
ホワイトスピリット中での保管:
電気抵抗値に対するガソリンの影響を調査するために、100×100×2mm板(製造したままの乾燥した状態)をCM15ホワイトスピリット(42.5vol%のトルエン、42.5vol%のイソオクタンおよび15vol%のメタノールからなる)中60℃で、最大5000時間(h)保管し、異なる時点で試料を取り出した。この目的のために、ホワイトスピリット中の試験片を23℃に冷却し、ホワイトスピリットから取り出した後、綿布でこすり落とし、デシケーター中乾燥剤(シリカゲル)で保管した。表面および体積抵抗は、ホワイトスピリットから取り出した後、24時間以内に求めた。比較のために、スピリット保管(0時間(0h)の保管)のない、製造したままの乾燥状態の板の抵抗値を求めた。この初期値に加えて、表は、100時間(100h)および5000時間(5000h)の保管時間の抵抗値を報告する。
【0091】
考察:
比較例CE1は、10%の炭素繊維および25%のガラス繊維を含むポリアミド成形組成物が製造直後に十分な伝導性を有するが、CM15中の保管後のわずか100時間後、比表面抵抗に対する指定限界値1E+6を超過していることを示す。
CE6中のように、炭素繊維の代わりに、伝導性カーボンブラックが導電剤として使用される場合、必要とする伝導性はまた、CM15中の5000時間の保管後達成されるが、成形組成物の機械的性質は不十分である。
【0092】
炭素繊維がもっぱら補強繊維および導電剤として使用される場合、実験CE2~CE5は、CM15中の保管後の十分な伝導性が、CF濃度を15~20質量%から引き上げても達成されないことを示す。CF補強成形組成物は良好な機械的性質を有するにもかかわらず、弾性率は低い。
したがって、比較例CE2~CE5は、炭素繊維の分率に対する下限が重要であり、請求項に記載の比率の炭素繊維およびガラス繊維の同時の存在が要因であることを示す。
【0093】
比較例CE7~CE9は、炭素繊維の分率が13~22質量パーセントの範囲であるが、ガラス繊維の分率は18~30質量パーセントの範囲になく、その代り、低い成形組成物を示す。これらの比較例によると、これらの成形組成物の場合でも、予想外に、炭素繊維の高分率およびガラス繊維の同時存在にもかかわらず、表面抵抗および体積抵抗の急速な増加があることが分かる。したがって、ガラス繊維の18質量パーセントの限度未満では、有利な特性は、予想外にもなくなる。さらに、これらのCE7~CE9の成形組成物の場合の表面品質は不十分であり、表1に裏付けるように、同様に、機械的性質は本発明の成形組成物からの値より大半は劣っている。
使用されるポリアミドマトリックスが、ガラス繊維含量が低すぎる、短鎖脂肪族ジアミンベースの系を含む場合、100時間保管後の表面抵抗および体積抵抗の増加は受け入れがたい。
【0094】
炭素繊維およびガラス繊維が適切な比で同時に使用される場合、発明の実施例IE1~IE7は、それらが、1E+6オームの、CM15中の保管5000時間後でさえ比表面抵抗に対する制限値を超えない成形組成物を生ずることを示す。さらに、これらの成形組成物は良好な機械的性質および高い弾性率を示す。IE1~IE3の成形組成物はさらに、優れた流動性を有し、良好な表面品質を有する成形物を生み出す。同時に、エチレン-酢酸ビニルコポリマーの添加によって電気伝導率の保持はさらに改善される。したがって発明の実施例IE4~IE7に比較して、発明の実施例IE1~IE3の成形組成物は、CM15中60℃5000時間の保管後、10~100分の1の比表面抵抗を有している。