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特許7082606反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20220601BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20220601BHJP
   G03F 1/58 20120101ALI20220601BHJP
   G03F 1/60 20120101ALI20220601BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20220601BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/32
G03F1/58
G03F1/60
G03F1/80
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019503127
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2018007897
(87)【国際公開番号】W WO2018159785
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2017039100
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
(72)【発明者】
【氏名】堀川 順一
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】片岡 瑞生
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041023(WO,A1)
【文献】特表2013-532381(JP,A)
【文献】特開2002-261005(JP,A)
【文献】特開平08-017716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、多層反射膜及び吸収体膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜は、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素を含有する合金を含み、アモルファス構造を含む材料からなり、
前記アモルファス構造を含む材料は、前記コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)及びリン(P)のうち少なくとも1以上の元素を添加したものであることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、保護膜を有することを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記保護膜と前記吸収体膜との間に、エッチングストッパー膜を有し、
前記エッチングストッパー膜は、クロム(Cr)を含む材料又はケイ素(Si)を含む材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
基板上に、多層反射膜及び吸収体膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜は、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素を含有する合金を含み、アモルファス構造を含む材料からなり、
前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、保護膜を有し、
前記保護膜と前記吸収体膜との間に、エッチングストッパー膜を有し、
前記エッチングストッパー膜は、クロム(Cr)を含む材料又はケイ素(Si)を含む材料からなることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記アモルファス構造を含む材料は、前記コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)及びリン(P)のうち少なくとも1以上の元素を添加したものであることを特徴とする請求項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記アモルファス構造を含む材料は、前記コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タンタル(Ta)を添加したものであり、
前記タンタル(Ta)の含有量は、10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素の含有量は、40原子%以上であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記吸収体膜の上に、エッチングマスク膜を有し、
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料又はケイ素(Si)を含む材料を含む材料からなることを特徴とする請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜を、塩素系ガスを用いたドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜を、第1の塩素系ガスと、該第1の塩素系ガスとは異なる第2の塩素系ガスとを用いたドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項12】
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきており、より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィが開発されている。EUVリソグラフィでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクでは、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、所望の転写用パターンが形成されたマスク構造を基本構造としている。また、転写用パターンの構成から、代表的なものとして、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターンからなるバイナリー型反射マスクと、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180°の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターンからなる位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。この位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)は、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので解像度向上効果がある。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
【0003】
EUVリソグラフィでは、光透過率の関係から多数の反射鏡からなる投影光学系が用いられている。そして、反射型マスクに対してEUV光を斜めから入射させて、これらの複数の反射鏡が投影光(露光光)を遮らないようにしている。入射角度は、現在、反射マスク基板垂直面に対して6°とすることが主流である。投影光学系の開口数(NA)の向上とともに8°程度のより斜入射となる角度にする方向で検討が進められている。
【0004】
EUVリソグラフィでは、露光光が斜めから入射されるため、シャドーイング効果と呼ばれる固有の問題がある。シャドーイング効果とは、立体構造を持つ吸収体パターンへ露光光が斜めから入射されることにより影ができ、転写形成されるパターンの寸法や位置が変わる現象のことである。吸収体パターンの立体構造が壁となって日陰側に影ができ、転写形成されるパターンの寸法や位置が変わる。例えば、配置される吸収体パターンの向きが斜入射光の方向と平行となる場合と垂直となる場合とで、両者の転写パターンの寸法と位置に差が生じ、転写精度を低下させる。
【0005】
このようなEUVリソグラフィ用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクに関連する技術が特許文献1から特許文献3に開示されている。また、特許文献1には、シャドーイング効果についても、開示されている。従来、EUVリソグラフィ用の反射型マスクとして位相シフト型反射マスクを用いることで、バイナリー型反射マスクの場合よりも位相シフトパターンの膜厚を比較的薄くして、シャドーイング効果による転写精度の低下の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-080659号公報
【文献】特開2004-207593号公報
【文献】特開2004-39884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パターンを微細にするほど、及びパターン寸法やパターン位置の精度を高めるほど半導体装置の電気特性性能が上がり、また、集積度向上やチップサイズを低減できる。そのため、EUVリソグラフィには従来よりも一段高い高精度微細寸法パターン転写性能が求められている。現在では、hp16nm(half pitch 16nm)世代対応の超微細高精度パターン形成が要求されている。このような要求に対し、シャドーイング効果を小さくするために、更なる薄膜化が求められている。特に、EUV露光の場合において、吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を60nm未満、好ましくは50nm以下とすることが要求されている。
【0008】
特許文献1乃至3に開示されているように、従来から反射型マスクブランクの吸収体膜(位相シフト膜)を形成する材料としてTaが用いられてきた。しかし、EUV光(例えば、波長13.5nm)におけるTaの屈折率nが約0.943あり、その位相シフト効果を利用しても、Taのみで形成される吸収体膜(位相シフト膜)の薄膜化は60nmが限界である。より薄膜化を行うためには、例えば、バイナリー型反射型マスクブランクの吸収体膜としては、消衰係数kが高い(吸収効果が高い)金属材料を用いることができる。波長13.5nmにおける消衰係数kが大きい金属材料としては、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)がある。しかし、CoやNiは磁性を有するため、これらの材料を用いて成膜された吸収体膜上のレジスト膜に対して電子線描画を行うと、設計値通りのパターンが描画できない可能性が懸念される。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、反射型マスクのシャドーイング効果をより低減するとともに、微細で高精度な位相シフトパターンを形成できる反射型マスクブランク及びこれによって作製される反射型マスクの提供、並びに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0011】
(構成1)
基板上に、多層反射膜及び吸収体膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜は、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素を含有するアモルファス金属を含む材料からなることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0012】
(構成2)
前記アモルファス金属は、前記コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)及びリン(P)のうち少なくとも1以上の元素を添加したものであることを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
【0013】
(構成3)
前記アモルファス金属は、前記コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タンタル(Ta)を添加したものであり、前記タンタル(Ta)の含有量は、10原子%以上90原子%以下であることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【0014】
(構成4)
前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に、保護膜を有することを特徴とする構成1乃至3の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【0015】
(構成5)
前記吸収体膜の上に、エッチングマスク膜を有し、前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料又はケイ素(Si)を含む材料を含む材料からなることを特徴とする構成1乃至4の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【0016】
(構成6)
前記保護膜と前記吸収体膜との間に、エッチングストッパー膜を有し、前記エッチングストッパー膜は、クロム(Cr)を含む材料又はケイ素(Si)を含む材料からなることを特徴とする構成4又は5に記載の反射型マスクブランク。
【0017】
(構成7)
構成1乃至6の何れか一つに記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有することを特徴とする反射型マスク。
【0018】
(構成8)
構成1乃至6の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜を、塩素系ガスを用いたドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【0019】
(構成9)
構成1乃至6の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜を、第1の塩素系ガスと、該第1の塩素系ガスとは異なる第2の塩素系ガスとを用いたドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【0020】
(構成10)
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、構成7に記載の反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の反射型マスクブランク(これによって作製される反射型マスク)によれば、吸収体膜の膜厚を薄くすることができて、シャドーイング効果を低減でき、且つ微細で高精度な吸収体パターンを、側壁ラフネスの少ない安定した断面形状で形成できる。したがって、この構造の反射型マスクブランクを用いて製造された反射型マスクは、マスク上に形成される吸収体パターン自体を微細で高精度に形成できるとともに、シャドーイングによる転写時の精度低下を防止できる。また、この反射型マスクを用いてEUVリソグラフィを行うことにより、微細で高精度な半導体装置の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る反射型マスクブランクの概略構成を説明するための要部断面模式図である。
図2】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を要部断面模式図にて示した工程図である。
図3】実施例1の吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光に対する反射率との関係を示す図である。
図4】実施例2の吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光に対する反射率との関係を示す図である。
図5】実施例3の吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光に対する反射率との関係を示す図である。
図6】実施例4の吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光に対する反射率との関係を示す図である。
図7】実施例5の吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光に対する反射率との関係を示す図である。
図8】Pt膜からなる裏面導電膜の各膜厚の透過率スペクトルを示す図である。
図9】裏面導電膜をPt膜として中間層をSi膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を示す図である。
図10】裏面導電膜をPt膜として中間層をSiO膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を示す図である。
図11】裏面導電膜をPt膜として中間層をTaBO膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を示す図である。
図12】裏面導電膜をPt膜として中間層をCrOCN膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を示す図である。
図13】本発明に係る反射型マスクブランクの別の一例を示す要部断面模式図である。
図14図13に示す反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を要部断面模式図にて示した工程図である。
図15】本発明に係る反射型マスクブランクの更に別の一例を示す要部断面模式図である。
図16図15に示す反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を要部断面模式図にて示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
【0024】
<反射型マスクブランクの構成及びその製造方法>
図1は、本発明に係る反射型マスクブランクの構成を説明するための要部断面模式図である。同図に示されるように、反射型マスクブランク100は、基板1と、第1主面(表面)側に形成された露光光であるEUV光を反射する多層反射膜2と、当該多層反射膜2を保護するために設けられ、後述する吸収体膜4をパターニングする際に使用するエッチャントや、洗浄液に対して耐性を有する材料で形成される保護膜3と、EUV光を吸収する吸収体膜4とを有し、これらがこの順で積層されるものである。また、基板1の第2主面(裏面)側には、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。
【0025】
図13は、本発明に係る反射型マスクブランクの別の例を示す要部断面模式図である。反射型マスクブランク300は、図1に示す反射型マスクブランク100と同様に、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4と、裏面導電膜5とを備える。図13に示す反射型マスクブランク300は、吸収体膜4の上に、吸収体膜4をエッチングするときに吸収体膜4のエッチングマスクとなるエッチングマスク膜6を更に有している。なお、エッチングマスク膜6を有する反射型マスクブランク300を用いる場合、後述のように、吸収体膜4に転写パターンを形成した後、エッチングマスク膜6を剥離してもよい。
【0026】
図15は、本発明に係る反射型マスクブランクの更に別の例を示す要部断面模式図である。反射型マスクブランク500は、図13に示す反射型マスクブランク300と同様に、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4と、エッチングマスク膜6と、裏面導電膜5とを備える。図15に示す反射型マスクブランク500は、保護膜3と吸収体膜4との間に、吸収体膜4をエッチングするときにエッチングストッパーとなるエッチングストッパー膜7を更に有している。なお、エッチングマスク膜6及びエッチングストッパー膜7を有する反射型マスクブランク500を用いる場合、後述のように、吸収体膜4に転写パターンを形成した後、エッチングマスク膜6及びエッチングストッパー膜7を剥離してもよい。
【0027】
また、上記反射型マスクブランク100、300及び500は、裏面導電膜5が形成されていない構成を含む。更に、上記反射型マスクブランク100、300及び500は、吸収体膜4又はエッチングマスク膜6の上にレジスト膜を形成したレジスト膜付きマスクブランクの構成を含む。
【0028】
本明細書において、例えば、「基板1の主表面の上に形成された多層反射膜2」との記載は、多層反射膜2が、基板1の表面に接して配置されることを意味する場合の他、基板1と、多層反射膜2との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。他の膜についても同様である。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの上に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
【0029】
以下、反射型マスクブランク100、300及び500の各構成について具体的に説明をする。
<<基板>>
基板1は、EUV光による露光時の熱による吸収体パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO-TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0030】
基板1の転写パターン(後述の吸収体膜がこれを構成する)が形成される側の第1主面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板1の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、吸収体膜が形成される側と反対側の第2主面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面であって、132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、反射型マスクブランク100における第2主面側の平坦度は、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。
【0031】
また、基板1の表面平滑度の高さも極めて重要な項目である。転写用吸収体パターンが形成される基板1の第1主面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0032】
更に、基板1は、その上に形成される膜(多層反射膜2など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0033】
<<多層反射膜>>
多層反射膜2は、反射型マスクにおいて、EUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜の構成となっている。
【0034】
一般的には、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜2として用いられる。多層膜は、基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜2の最表面の層、即ち多層反射膜2の基板1と反対側の表面層は、高屈折率層とすることが好ましい。上述の多層膜において、基板1から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となるが、この場合、低屈折率層が多層反射膜2の最表面を構成すると容易に酸化されてしまい反射型マスクの反射率が減少する。そのため、最上層の低屈折率層上に高屈折率層を更に形成して多層反射膜2とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となるので、そのままでよい。
【0035】
本実施形態において、高屈折率層としては、ケイ素(Si)を含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、ボロン(B)、炭素(C)、窒素(N)、及び酸素(O)を含むSi化合物でもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィ用反射型マスクが得られる。また、本実施形態において基板1としてはガラス基板が好ましく用いられる。Siはガラス基板との密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる金属単体、又はこれらの合金が用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜2としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜2の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、当該最上層(Si)とRu系保護膜3との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。これにより、マスク洗浄耐性を向上させることができる。
【0036】
このような多層反射膜2の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜2の各構成層の厚み、周期は、露光波長により適宜選択すればよく、ブラッグ反射の法則を満たすように選択される。多層反射膜2において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層同士、そして低屈折率層同士の厚みが同じでなくてもよい。また、多層反射膜2の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nmから10nmとすることができる。
【0037】
多層反射膜2の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えばイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜2の各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、先ずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板1上に成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜し、これを1周期として、40から60周期積層して、多層反射膜2を形成する(最表面の層はSi層とする)。また、多層反射膜2の成膜の際に、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給して、イオンビームスパッタリングを行うことにより多層反射膜2を形成することが好ましい。
【0038】
<<保護膜>>
保護膜3は、後述する反射型マスクの製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜2を保護するために、多層反射膜2の上に形成される。また、電子線(EB)を用いた吸収体パターンの黒欠陥修正の際の多層反射膜2の保護も兼ね備える。ここで、図1では保護膜3が1層の場合を示しているが、3層以上の積層構造とすることもできる。例えば、最下層と最上層を、上記Ruを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、若しくは合金を介在させた保護膜3としても構わない。例えば、保護膜3は、ルテニウムを主成分として含む材料により構成されることもできる。すなわち、保護膜3の材料は、Ru金属単体でもよいし、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、及びレニウム(Re)などから選択される少なくとも1種の金属を含有したRu合金であってよく、窒素を含んでいても構わない。このような保護膜3は、特に、吸収体膜4をCo-Xアモルファス金属材料、Ni-Xアモルファス金属材料又はCoNi-Xアモルファス金属材料とし、塩素系ガス(Cl系ガス)のドライエッチングで当該吸収体膜4をパターニングする場合に有効である。保護膜3は、塩素系ガスを用いたドライエッチングにおける保護膜3に対する吸収体膜4のエッチング選択比(吸収体膜4のエッチング速度/保護膜3のエッチング速度)が1.5以上、好ましくは3以上となる材料で形成されることが好ましい。
【0039】
このRu合金のRu含有量は50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、更に好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有量が95原子%以上100原子%未満の場合は、保護膜3への多層反射膜構成元素(ケイ素)の拡散を抑えつつ、EUV光の反射率を十分確保しながら、マスク洗浄耐性、吸収体膜をエッチング加工したときのエッチングストッパー機能、及び多層反射膜経時変化防止の保護膜機能を兼ね備えることが可能となる。
【0040】
EUVリソグラフィでは、露光光に対して透明な物質が少ないので、マスクパターン面への異物付着を防止するEUVペリクルが技術的に簡単ではない。このことから、ペリクルを用いないペリクルレス運用が主流となっている。また、EUVリソグラフィでは、EUV露光によってマスクにカーボン膜が堆積したり、酸化膜が成長したりするといった露光コンタミネーションが起こる。そのため、EUV反射型マスクを半導体装置の製造に使用している段階で、度々洗浄を行ってマスク上の異物やコンタミネーションを除去する必要がある。このため、EUV反射型マスクでは、光リソグラフィ用の透過型マスクに比べて桁違いのマスク洗浄耐性が要求されている。Tiを含有したRu系保護膜を用いると、硫酸、硫酸過水(SPM)、アンモニア、アンモニア過水(APM)、OHラジカル洗浄水、又は濃度が10ppm以下のオゾン水などの洗浄液に対する洗浄耐性が特に高く、マスク洗浄耐性の要求を満たすことが可能となる。
【0041】
このようなRu又はその合金などにより構成される保護膜3の厚みは、その保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されないが、EUV光の反射率の観点から、保護膜3の厚みは、好ましくは、1.0nmから8.0nm、より好ましくは、1.5nmから6.0nmである。
【0042】
保護膜3の形成方法としては、公知の膜形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。具体例としては、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0043】
<<吸収体膜>>
保護膜3の上に、EUV光を吸収する吸収体膜4が形成される。吸収体膜4は、EUV光を吸収する機能を有し、ドライエッチングにより加工が可能な材料として、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素を含有するアモルファス金属を含む材料からなる。吸収体膜4をコバルト(Co)及び/又はニッケル(Ni)を含む構成とすることにより、消衰係数kを0.035以上とすることができ、吸収体膜の薄膜化が可能となる。また、吸収体膜4をアモルファス金属とすることにより、エッチング速度を速めたり、パターン形状を良好にしたり加工特性を向上させることが可能となる。
【0044】
アモルファス金属としては、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1以上の元素に、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)及びリン(P)のうち少なくとも1以上の元素(X)を添加したものが挙げられる。
【0045】
これらの添加元素(X)のうち、W、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf及びYは、非磁性金属材料である。そのため、Co及び/又はNiに添加してCo-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金とすることによって、軟磁性のアモルファス金属とすることができ、吸収体膜を構成する材料の磁性を抑制することが可能となる。これにより、電子線描画の際に影響を及ぼすことなく、良好なパターン描画を行うことができる。
【0046】
添加元素(X)がZr、Hf及びYの場合、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金における添加元素(X)の含有量は3原子%以上が好ましく、10原子%以上がより好ましい。Zr、Hf及びYの含有量が3原子%未満の場合には、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金がアモルファス化しにくい。
【0047】
また、添加元素(X)がW、Nb、Ta及びTiの場合には、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金における添加元素(X)の含有量は10原子%以上が好ましく、15原子%以上がより好ましい。W、Nb、Ta及びTiの含有量が10原子%未満の場合には、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金がアモルファス化しにくい。
【0048】
添加元素(X)がPの場合、NiPにおけるPの含有量は9原子%以上、より好ましくは19原子%以上とすることにより、非磁性のアモルファス金属とすることができ、吸収体膜を構成する材料の磁性をなくすことが可能となる。Pの含有量が9原子%未満の場合には、NiPは磁性を有し、アモルファス化しにくい。
【0049】
また、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金における添加元素(X)の含有量は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.035未満とならないように調整される。したがって、添加元素(X)の含有量は、97原子%以下が好ましく、50原子%以下がより好ましく、24原子%以下が更に好ましい。特に、単体での消衰係数kが約0.035未満であるNb、Ti、Zr及びYは、24原子%以下が好ましい。また、単体での消衰係数kが0.035以上であるW、Ta、Hf及びPは、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金とした場合に消衰係数kが0.035以上になるように調整しやすく、消衰係数kが0.045以上に調整することも可能である。このため、加工特性を考慮して添加元素(X)の含有量を多くすることができる。
【0050】
特に、Taは、加工特性が良好なため、添加元素(X)として好ましく用いることができる。合金のTa含有量は、吸収体膜4の薄膜化の観点から、90原子%以下が好ましく、80原子%以下がより好ましい。Co-X合金の添加元素(X)がTaの場合には、CoとTaとの組成比(Co:Ta)は、9:1~1:9が好ましく、4:1~1:4がより好ましい。CoとTaとの組成比が3:1、1:1及び1:3としたときの各試料に対してX線回折装置(XRD)による分析及び断面TEM観察を行ったところ、すべての試料において、Co及びTa由来のピークがブロードに変化し、アモルファス構造となっていた。また、Ni-X合金の添加元素(X)がTaの場合には、NiとTaとの組成比(Ni:Ta)は、9:1~1:9が好ましく、4:1~1:4がより好ましい。NiとTaとの組成比が3:1、1:1及び1:3としたときの各試料に対してX線回折装置(XRD)による分析及び断面TEM観察を行ったところ、すべての試料において、Ni及びTa由来のピークがブロードに変化し、アモルファス構造となっていた。また、CoNi-X合金の添加元素(X)がTaの場合には、CoNiとTaとの組成比(CoNi:Ta)は、9:1~1:9が好ましく、4:1~1:4がより好ましい。
【0051】
また、Co-X合金、Ni-X合金又はCoNi-X合金は、上記添加元素(X)の他に、屈折率及び消衰係数に大きく影響を与えない範囲で、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)又はホウ素(B)等の他の元素を含んでもよい。エッチング速度を速めることができるので、吸収体膜として、窒素(N)を含んだCoTa合金、NiTa合金又はCoNi-X合金を用いることが好ましい。CoTa合金、NiTa合金又はCoNi-X合金中の窒素(N)の含有量は、5原子%以上55原子%以下であることが好ましい。
【0052】
このようなアモルファス金属からなる吸収体膜4は、DCスパッタリング法やRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法といった公知の方法で形成することができる。また、ターゲットは、Co-X金属ターゲット、Ni-X金属ターゲット又はCoNi-X金属ターゲットを用いてもよいし、Coターゲット、Niターゲット又はCoNiターゲットと、添加元素(X)のターゲットとを用いたコースパッタリングとすることもできる。
【0053】
吸収体膜4は、バイナリー型の反射型マスクブランクとしてEUV光の吸収を目的とした吸収体膜4であっても良いし、位相シフト型の反射型マスクブランクとしてEUV光の位相差も考慮した位相シフト機能を有する吸収体膜4であっても良い。
【0054】
EUV光の吸収を目的とした吸収体膜4の場合、吸収体膜4に対するEUV光の反射率が2%以下、好ましくは1%以下となるように、膜厚が設定される。また、シャドーイング効果を抑制するために、吸収体膜の膜厚は、60nm未満、好ましくは50nm以下とすることが求められる。例えば、図3に点線で示すように、吸収体膜4をNiTa合金膜で形成した場合、膜厚を39.8nmとすることで、13.5nmでの反射率を0.11%とすることができる。
【0055】
位相シフト機能を有する吸収体膜4の場合、吸収体膜4が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させて、保護膜3を介して多層反射膜2から反射してくるフィールド部からの反射光と所望の位相差を形成するものである。吸収体膜4は、吸収体膜4からの反射光と多層反射膜2からの反射光との位相差が160°から200°となるように形成される。180°近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上にともなって解像度が上がり、露光量裕度、焦点裕度等の露光に関する各種裕度が拡がる。パターンや露光条件にもよるが、一般的には、この位相シフト効果を十分得るための反射率の目安は、絶対反射率で1%以上、多層反射膜(保護膜付き)に対する反射比で2%以上である。
【0056】
吸収体膜4は単層の膜であっても良いし、2層以上の複数の膜からなる多層膜であっても良い。単層膜の場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率が上がるという特徴がある。
【0057】
吸収体膜4が多層膜の場合には、例えば、基板側から下層膜と上層膜からなる2層構造とすることができる。下層膜は、EUV光の消衰係数が大きい、Co-Xアモルファス金属、Ni-Xアモルファス金属又はCoNi-Xアモルファス金属で形成することができる。上層膜は、Co-Xアモルファス金属、Ni-Xアモルファス金属又はCoNi-Xアモルファス金属に酸素(O)を加えた材料で形成することができる。上層膜は、例えばDUV光を用いたマスクパターン検査時の反射防止膜になるように、その光学定数と膜厚を適当に設定することが好ましい。上層膜が反射防止膜の機能を有することにより、光を用いたマスクパターン検査時の検査感度が向上する。このように、多層膜にすることによって様々な機能を付加させることが可能となる。吸収体膜4が位相シフト機能を有する吸収体膜4の場合には、多層膜にすることによって光学面での調整の範囲が拡がり、所望の反射率が得やすくなる。吸収体膜4が2層以上の多層膜の場合、多層膜のうちの1層をCo-Xアモルファス金属、Ni-Xアモルファス金属又はCoNi-Xアモルファス金属としてもよい。
【0058】
また、吸収体膜4の表面には、酸化層を形成してもよい。Co-Xアモルファス金属、Ni-Xアモルファス金属又はCoNi-Xアモルファス金属の酸化層を形成することにより、得られる反射型マスク200の吸収体パターン4aの洗浄耐性を向上させることができる。酸化層の厚さは、1.0nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましい。また、酸化層の厚さは、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。酸化層の厚さが1.0nm未満の場合には薄すぎて効果が期待できず、5nmを超えるとマスク検査光に対する表面反射率に与える影響が大きくなり、所定の表面反射率を得るための制御が難しくなる。
【0059】
酸化層の形成方法は、吸収体膜が成膜された後のマスクブランクに対して、温水処理、オゾン水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理及びOプラズマ処理等を行うことなどが挙げられる。また、吸収体膜4を成膜後に吸収体膜4の表面が大気に晒される場合、表層に自然酸化による酸化層が形成されることがある。特に、酸化しやすいTaを含むCoTa合金、NiTa合金又はCoNiTa合金の場合、膜厚が1~2nmの酸化層が形成される。
【0060】
また、吸収体膜4のエッチングガスは、Cl、SiCl、CHCl、CCl、及びBCl等の塩素系ガス、これらの塩素系ガスから選択された2種類以上の混合ガス、塩素系ガスとHeとを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガスとArとを所定の割合で含む混合ガス、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス並びに沃素ガスから選択される少なくとも一つを含むハロゲンガス、並びにハロゲン化水素ガスからなる群から選択される少なくとも一種類又はそれ以上から選択したものを用いることができる。他のエッチングガスとしては、CF、CHF、C、C、C、C、CH、CHF、C、SF及びF等のフッ素系のガス、並びにフッ素系ガスとOとを所定の割合で含む混合ガス等から選択したものを用いることができる。更に、エッチングガスとしては、これらのガスと、酸素ガスとを含む混合ガス等を用いることができる。
【0061】
また、2層構造の吸収体膜4の場合、上層膜と下層膜とのエッチングガスを異なるものとしてもよい。例えば、上層膜のエッチングガスは、CF、CHF、C、C、C、C、CH、CHF、C、SF及びF等のフッ素系のガス、並びにフッ素系ガスとOとを所定の割合で含む混合ガス等から選択したものを用いることができる。また、下層膜のエッチングガスは、Cl、SiCl、CHCl、CCl、及びBCl等の塩素系のガス、これらの塩素系ガスから選択された2種類以上の混合ガス、塩素系ガスとHeとを所定の割合で含む混合ガス、並びに塩素系ガスとArとを所定の割合で含む混合ガスから選択したものを用いることができる。ここで、エッチングの最終段階でエッチングガスに酸素が含まれていると、Ru系保護膜3に表面荒れが生じる。このため、Ru系保護膜3がエッチングに曝されるオーバーエッチング段階では、酸素が含まれていないエッチングガスを用いることが好ましい。また、表面に酸化層が形成された吸収体膜4の場合、第1のエッチングガスを用いて酸化層を除去し、第2のエッチングガスを用いて残りの吸収体膜4をドライエッチングすることが好ましい。第1のエッチングガスは、BClガスを含む塩素系ガスとし、第2のエッチングガスは、第1のエッチングガスとは異なるClガス等を含む塩素系ガスとすることができる。これにより、酸化層を容易に除去することができ、吸収体膜4のエッチング時間を短くすることが可能となる。
【0062】
<<エッチングマスク膜>>
吸収体膜4の上には、図13に示すように、エッチングマスク膜6を形成してもよい。エッチングマスク膜6の材料としては、エッチングマスク膜6に対する吸収体膜4のエッチング選択比が高い材料を用いる。ここで、「Aに対するBのエッチング選択比」とは、エッチングを行いたくない層(マスクとなる層)であるAとエッチングを行いたい層であるBとのエッチングレートの比をいう。具体的には「Aに対するBのエッチング選択比=Bのエッチング速度/Aのエッチング速度」の式によって特定される。また、「選択比が高い」とは、比較対象に対して、上記定義の選択比の値が大きいことをいう。エッチングマスク膜6に対する吸収体膜4のエッチング選択比は、1.5以上が好ましく、3以上が更に好ましい。
【0063】
エッチングマスク膜6に対する吸収体膜4のエッチング選択比が高い材料としては、クロムやクロム化合物の材料が挙げられる。この場合、吸収体膜4はフッ素系ガス又は塩素系ガスでエッチングすることができる。クロム化合物としては、Crと、N、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。クロム化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCN等が挙げられる。塩素系ガスでのエッチング選択比を上げるためには、実質的に酸素を含まない材料とすることが好ましい。実質的に酸素を含まないクロム化合物として、例えばCrN、CrCN、CrBN及びCrBCN等が挙げられる。クロム化合物のCr含有量は、50原子%以上100原子%未満であることが好ましく、80原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。また、「実質的に酸素を含まない」とは、クロム化合物における酸素の含有量が10原子%以下、好ましくは5原子%以下であるものが該当する。なお、前記材料は、本発明の効果が得られる範囲で、クロム以外の金属を含有することができる。
【0064】
また、吸収体膜4を、実質的に酸素を含まない塩素系ガスでエッチングする場合には、ケイ素又はケイ素化合物の材料を使用することができる。ケイ素化合物としては、SiとN、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料や、ケイ素やケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)や金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。ケイ素を含む材料として、具体的には、SiO、SiN、SiON、SiC、SiCO、SiCN、SiCON、MoSi、MoSiO、MoSiN、及びMoSiON等を挙げることができる。なお、前記材料は、本発明の効果が得られる範囲で、ケイ素以外の半金属又は金属を含有することができる。
【0065】
塩素系ガスを用いたドライエッチングにおけるエッチングマスク膜6に対する吸収体膜4のエッチング選択比を1.5以上とするためには、吸収体膜4の添加元素(X)は、20原子%以上が好ましい。
【0066】
エッチングマスク膜6の膜厚は、転写パターンを精度よく吸収体膜4に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜6の膜厚は、レジスト膜の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが望ましく、10nm以下がより好ましい。
【0067】
<<エッチングストッパー膜>>
また、図15に示すように、保護膜3と吸収体膜4との間に、エッチングストッパー膜7を形成してもよい。エッチングストッパー膜7の材料として、塩素系ガスを用いたドライエッチングにおけるエッチングストッパー膜7に対する吸収体膜4のエッチング選択比(吸収体膜4のエッチング速度/エッチングストッパー膜7のエッチング速度)が高い材料を用いることが好ましい。このような材料としては、クロム及びクロム化合物の材料が挙げられる。クロム化合物としては、Crと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。クロム化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCN等が挙げられる。塩素系ガスでのエッチング選択比を上げるためには、実質的に酸素を含まない材料とすることが好ましい。実質的に酸素を含まないクロム化合物として、例えばCrN、CrCN、CrBN及びCrBCN等が挙げられる。クロム化合物のCr含有量は、50原子%以上100原子%未満であることが好ましく、80原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。なお、エッチングストッパー膜の材料は、本発明の効果が得られる範囲で、クロム以外の金属を含有することができる。
【0068】
また、吸収体膜4を、塩素系ガスでエッチングする場合には、エッチングストッパー膜7は、ケイ素又はケイ素化合物の材料を使用することができる。ケイ素化合物としては、Siと、N、O、C及びHから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料、並びにケイ素又はケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)又は金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。ケイ素を含む材料として、具体的には、SiO、SiN、SiON、SiC、SiCO、SiCN、SiCON、MoSi、MoSiO、MoSiN、及びMoSiON等を挙げることができる。なお、前記材料は、本発明の効果が得られる範囲で、ケイ素以外の半金属又は金属を含有することができる。
【0069】
また、エッチングストッパー膜7は、上記エッチングマスク膜6と同じ材料で形成することが好ましい。この結果、エッチングストッパー膜7をパターニングしたときに上記エッチングマスク膜6を同時に除去できる。また、エッチングストッパー膜7とエッチングマスク膜6とをクロム化合物又はケイ素化合物で形成し、エッチングストッパー膜7とエッチングマスク膜6との組成比を互いに異ならせてもよい。
【0070】
エッチングストッパー膜7の膜厚は、吸収体膜4のエッチングの際に保護膜3にダメージを与えて光学特性が変わることを抑制する観点から、2nm以上であることが望ましい。また、エッチングストッパー膜7の膜厚は、吸収体膜4とエッチングストッパー膜7の合計膜厚を薄くする、即ち吸収体パターン4a及びエッチングストッパーパターン7aからなるパターンの高さを低くする観点から、7nm以下であることが望ましく、5nm以下がより好ましい。
【0071】
また、エッチングストッパー膜7及びエッチングマスク膜6を同時にエッチングする場合には、エッチングストッパー膜7の膜厚は、エッチングマスク膜の膜厚と同じか薄い方が好ましい。更に、(エッチングストッパー膜7の膜厚)≦(エッチングマスク膜6の膜厚)の場合には、(エッチングストッパー膜7のエッチング速度)≦(エッチングマスク膜6のエッチング速度)の関係を満たすことが好ましい。
【0072】
<<裏面導電膜>>
基板1の第2主面(裏面)側(多層反射膜2形成面の反対側)には、一般的に、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。静電チャック用の裏面導電膜5に求められる電気的特性(シート抵抗)は通常100Ω/□(Ω/Square)以下である。裏面導電膜5の形成方法は、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、クロム、タンタル等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
【0073】
裏面導電膜5のクロム(Cr)を含む材料は、Crにホウ素、窒素、酸素、及び炭素から選択した少なくとも一つを含有したCr化合物であることが好ましい。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCNなどを挙げることができる。
【0074】
裏面導電膜5のタンタル(Ta)を含む材料としては、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらの何れかにホウ素、窒素、酸素及び炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物を用いることが好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、及びTaSiCONなどを挙げることができる。
【0075】
タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料としては、その表層に存在する窒素(N)が少ないことが好ましい。具体的には、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5の表層の窒素の含有量は、5原子%未満であることが好ましく、実質的に表層に窒素を含有しないことがより好ましい。タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5において、表層の窒素の含有量が少ない方が、耐摩耗性が高くなるためである。
【0076】
裏面導電膜5は、タンタル及びホウ素を含む材料からなることが好ましい。裏面導電膜5が、タンタル及びホウ素を含む材料からなることにより、耐摩耗性及び薬液耐性を有する導電膜23を得ることができる。裏面導電膜5が、タンタル(Ta)及びホウ素(B)を含む場合、B含有量は5~30原子%であることが好ましい。裏面導電膜5の成膜に用いるスパッタリングターゲット中のTa及びBの比率(Ta:B)は95:5~70:30であることが好ましい。
【0077】
裏面導電膜5の厚さは、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10nmから200nmである。また、この裏面導電膜5はマスクブランク100の第2主面側の応力調整も兼ね備えていて、第1主面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、平坦な反射型マスクブランクが得られるように調整されている。
【0078】
また、近年、特許第5883249号公報に記載されているように、反射型マスク等の転写用マスクの位置合わせ等の誤差を補正するために、転写用マスクの基板に対してフェムト秒レーザパルスを局所的に照射することにより、基板表面又は基板内部を改質させ、転写用マスクの誤差を補正する技術がある。上記パルスを発生させるレーザービームとしては、例えば、サファイアレーザ(波長800nm)又はNd-YAGレーザ(532nm)等がある。
【0079】
上記技術を反射型マスク200に適用する際には、基板1の第2主面(裏面)側からレーザービームを照射することが考えられる。しかしながら、上述のタンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料からなる裏面導電膜5の場合、レーザービームを透過しにくいという問題が生じる。この問題を解消するために、裏面導電膜5は、少なくとも532nmの波長に対する透過率が20%以上である材料を用いて形成することが好ましい。
【0080】
このような透過率の高い裏面導電膜(透明導電膜)5の材料としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を用いることが好ましい。透明導電膜の膜厚を50nm以上とすることにより、静電チャック用の裏面導電膜5に求められる電気的特性(シート抵抗)を100Ω/□以下とすることができる。例えば、膜厚100nmのITO膜は、532nmの波長に対する透過率は約79.1%であり、シート抵抗は50Ω/□である。
【0081】
また、透過率の高い裏面導電膜(透明導電膜)5の材料としては、白金(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)の金属単体を用いることが好ましい。また、所望の透過率及び電気的特性を満たす範囲内で、該金属にホウ素、窒素、酸素及び炭素の少なくとも一つを含有した金属化合物を用いることができる。これらの金属膜は、上記ITO等と比較して電気伝導率が高いため薄膜化が可能となる。金属膜の膜厚は、透過率の観点からは50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。また、膜厚が薄すぎるとシート抵抗が急激に増加する傾向にあること、及び成膜の際の安定性の観点から、金属膜の膜厚は2nm以上が好ましい。例えば、膜厚10.1nmのPt膜は、532nmの波長に対する透過率は20.3%であり、シート抵抗は25.3Ω/□である。
【0082】
裏面導電膜5をPt膜とした場合の試料を作製して評価を行った。即ち、SiO-TiO系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、Arガス雰囲気中でPtターゲットを使用したDCマグネトロンスパッタリング法によりPt膜からなる裏面導電膜5を5.2nm、10.1nm、15.2nm、及び20.0nmの膜厚で各々成膜し、4枚の導電膜付き基板を作製した。
【0083】
作製された4枚の導電膜付き基板の第2主面(裏面)から波長532nmの光を照射して透過率を測定したところ、図8に示すように、透過率は各々39.8%、20.3%、10.9%、及び6.5%であり、膜厚が5.2nm及び10.1nmの導電膜付き基板が透過率20%以上を満たすものであった。また、シート抵抗は、4端子測定法により測定したところ、各々57.8Ω/□、25.3Ω/□、15.5Ω/□、及び11.2Ω/□であり、何れも100Ω/□以下を満たすものであった。
【0084】
膜厚が10.1nmの導電膜付き基板について、後述の実施例1と同様の方法で反射型マスクブランク100を作製し、その後反射型マスク200を作製した。作製された反射型マスク200の基板1の第2主面(裏面)側から波長532nmのNd-YAGレーザのレーザービームを照射したところ、裏面導電膜5が透過率の高いPt膜で形成されているため、反射型マスク200の位置合わせ誤差を修正することができた。
【0085】
更に、裏面導電膜5は、単層膜又は2層以上の積層構造としてもよい。静電チャックを行う際の機械的耐久性を向上させたり、洗浄耐性を向上させたりするためには、最上層をCrO、TaO又はSiOとすることが好ましい。また、最上層を、上記金属膜の酸化膜、即ちPtO、AuO、AiO又はCuOとしてもよい。最上層の厚さは、1nm以上であることが好ましく、5nm以上、更には10nm以上であるとより好ましい。裏面導電膜を透明導電膜とする場合には、透過率が20%以上を満たす材料及び膜厚とする。
【0086】
また、裏面導電膜5の基板側に、中間層を設けてもよい。中間層は、基板1と裏面導電膜5との密着性を向上させたり、基板1からの裏面導電膜5への水素の侵入を抑制したりする機能を持たせることができる。また、中間層は、露光源としてEUV光を用いた場合のアウトオブバンド光と呼ばれる真空紫外光及び紫外光(波長:130~400nm)が基板1を透過して裏面導電膜5によって反射されるのを抑制する機能を持たせることができる。中間層の材料としては、例えば、Si、SiO、SiON、SiCO、SiCON、SiBO、SiBON、Cr、CrN、CrON、CrC、CrCN、CrCO、CrCON、Mo、MoSi、MoSiN、MoSiO、MoSiCO、MoSiON、MoSiCON、TaO及びTaON等を挙げることができる。中間層の厚さは、1nm以上であることが好ましく、5nm以上、更には10nm以上であるとより好ましい。裏面導電膜を透明導電膜とする場合には、中間層と透明導電膜とを積層したものの透過率が20%以上を満たす材料及び膜厚とする。
【0087】
上述した通り、裏面導電膜5には、電気的特性(シート抵抗)及び裏面からレーザービームを照射する場合には透過率を所望の値にすることが求められるが、これらの要求を満たすために裏面導電膜5の膜厚を薄くすると、別の問題が生じる場合がある。通常、多層反射膜2は高い圧縮応力を有しているため、基板1の第1主面側が凸形状となり、第2主面(裏面)側が凹形状となる。一方、多層反射膜2のアニール(加熱処理)、及び裏面導電膜5の成膜によって応力調整がなされ、全体として平坦又は第2主面側が若干凹形状の反射型マスクブランクが得られるように調整されている。しかし、裏面導電膜5の膜厚が薄いとこのバランスがくずれ、第2主面(裏面)側の凹形状が大きくなり過ぎてしまう。この場合、静電チャックを行った際に、基板周縁部(特にコーナー部)にスクラッチが生じ、膜剥がれやパーティクル発生の問題が生じることがある。
【0088】
この問題を解決するためには、裏面導電膜5が形成された導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状にすることが好ましい。導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状にする第1の方法としては、裏面導電膜5を成膜する前の基板1の第2主面側の形状を凸形状にするとよい。予め基板1の第2主面を凸形状とすることにより、膜厚が10nm程度のPt膜等からなる膜応力の小さい裏面導電膜5を成膜し、高い圧縮応力を有する多層反射膜2を成膜しても、第2主面側の形状を凸形状とすることができる。
【0089】
また、導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状にする第2の方法としては、多層反射膜2成膜後に150℃~300℃でアニール(加熱処理)する方法が挙げられる。特に210℃以上の高温でアニールすることが好ましい。多層反射膜2はアニールすることにより、多層反射膜2の膜応力を小さくすることができるが、アニール温度と多層反射膜2の反射率とはトレードオフの関係にある。多層反射膜2の成膜の際に、イオン源からアルゴン(Ar)イオン粒子を供給する従来のArスパッタリングの場合には、高温でアニールすると所望の反射率が得られない。一方、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給するKrスパッタリングを行うことにより、多層反射膜2のアニール耐性を向上させることが可能となり、高温でアニールしても高い反射率を維持できる。したがって、Krスパッタリングで多層反射膜2を成膜後に150℃~300℃でアニールすることにより、多層反射膜2の膜応力を小さくできる。この場合、膜厚が10nm程度のPt膜等からなる膜応力の小さい裏面導電膜5を成膜しても、第2主面側の形状を凸形状とすることができる。
【0090】
更に、上記第1の方法と第2の方法とを組み合わせてもよい。なお、裏面導電膜5をITO膜等の透明導電膜とする場合には、膜厚を厚くすることが可能である。そのため、電気的特性を満たす範囲で厚膜化することにより、導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状とすることができる。
【0091】
このように導電膜付き基板の第2主面(裏面)側を凸形状とすることにより、静電チャックを行った際に、基板周縁部(特にコーナー部)にスクラッチが生じるのを防止することが可能となる。
【0092】
また、裏面導電膜(透明導電膜)5の膜厚が薄い場合に生じる上記問題を解決するために、上述したように、裏面導電膜5の基板側に中間層を設けてもよい。中間層は、応力調整機能を有し、かつ透明導電膜と合わせたときに所望の透過率(例えば、波長532nmで20%以上)が得られるものとすることができる。
【0093】
中間層の材料は、Si及びSiOを挙げることができる。Siは、波長532nmに対する透過率が高いため、他の材料と比べて膜厚の制限が少なく、例えば、膜厚1~200nmの範囲で応力調整を行うことが可能である。図9は、基板1の裏面上の裏面導電膜5を膜厚10nmのPt膜とし、中間層をSi膜とした場合であって、裏面導電膜5側から波長532nmの光を照射したときの、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を調べたものである。図10から図12においても同様である。これによると、中間層は少なくとも100nmまでの範囲で透過率20%以上となるので、この範囲において応力調整を行うことが可能である。図10は、裏面導電膜5を膜厚10nmのPt膜とし、中間層をSiO膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を調べたものである。これによると、中間層は少なくとも100nmまでの範囲で透過率20%以上となるので、この範囲において応力調整を行うことが可能である。
【0094】
中間層の材料をSi及びSiOとした場合には、導電性の確保及び透過率の観点から、金属膜からなる裏面導電膜5の膜厚は2nm以上10nm以下とすることが好ましい。
【0095】
また、中間層の材料として、消衰係数の小さいTa系酸化膜及びCr系酸化膜を用いることができる。Ta系酸化膜は、TaO、TaON、TaCON、TaBO、TaBON、及びTaBCON等を挙げることができる。Cr系酸化膜は、CrO、CrON、CrCON、CrBO、CrBON、及びCrBOCN等を挙げることができる。更に、中間層の材料は、上記裏面導電膜5の金属膜の酸化膜、即ちPtO、AuO、AiO又はCuOとしてもよい。
【0096】
図11は、裏面導電膜5を膜厚5nmのPt膜とし、中間層をTaBO膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を調べたものである。これによると、中間層は58nmまでの範囲で透過率20%以上となるので、この範囲において応力調整を行うことが可能である。図12は、裏面導電膜5を膜厚5nmのPt膜とし、中間層をCrOCN膜とした場合の、中間層の膜厚変化に対する透過率変化を調べたものである。これによると、中間層は少なくとも100nmまでの範囲で透過率20%以上となるので、この範囲において応力調整を行うことが可能である。
【0097】
中間層の材料をTa系酸化膜やCr系酸化膜等の金属酸化膜とした場合には、導電性の確保及び透過率の観点から、金属膜からなる裏面導電膜5の膜厚は2nm以上5nm以下とすることが好ましい。
【0098】
裏面導電膜5を膜厚10nmのPt膜とし、基板1とPt膜の間にSi膜からなる中間層を設けた場合の試料を作製して評価を行った。
【0099】
即ち、SiO-TiO系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、Siターゲットを用いて、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリング(RFスパッタリング)で、Si膜からなる中間層を90nmの膜厚で成膜した。次に、Arガス雰囲気中でPtターゲットを使用したDCマグネトロンスパッタリング法によりPt膜からなる裏面導電膜5を10nmの膜厚で成膜し、導電膜付き基板を作製した。
【0100】
作製された導電膜付き基板の第2主面(裏面)から波長532nmの光を照射して透過率を測定したところ、21%であった。また、シート抵抗は、4端子測定法により測定したところ、25Ω/□であった。
【0101】
Si膜とPt膜が積層された導電膜付き基板について、後述の実施例1と同様の方法で反射型マスクブランク100を作製した。光干渉を利用した平坦度測定装置により反射型マスクブランク100の裏面の平坦度を測定した結果、凸形状で95nmの平坦度を有していることを確認した。
【0102】
なお、Si膜からなる中間層を設けずに、膜厚10nmのPt膜の裏面導電膜とした場合の反射型マスクブランクの裏面の平坦度を測定したところ、凹形状で401nmの平坦度であり、Si膜が応力調整機能を有していることが確認できた。
【0103】
その後、後述の実施例1と同様の方法で、反射型マスク200を作製した。作製された反射型マスク200の基板1の第2主面(裏面)側から波長532nmのNd-YAGレーザのレーザービームを照射したところ、中間層及び裏面導電膜5が透過率の高いSi膜及びPt膜で形成されているため、反射型マスク200の位置合わせ誤差を修正することができた。
【0104】
<反射型マスク及びその製造方法>
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、反射型マスクを製造する。ここでは概要説明のみを行い、後に実施例において図面を参照しながら詳細に説明する。
【0105】
反射型マスクブランク100を準備して、その第1主面の吸収体膜4に、レジスト膜を形成し(反射型マスクブランク100としてレジスト膜を備えている場合は不要)、このレジスト膜に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターンを形成する。
【0106】
反射型マスクブランク100の場合は、このレジストパターンをマスクとして吸収体膜4をエッチングして吸収体パターンを形成し、レジストパターンをアッシング又はレジスト剥離液などで除去することにより、吸収体パターンが形成される。最後に、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行う。
【0107】
ここで、吸収体膜4のエッチングガスとしては、Cl、SiCl、CHCl、CCl、及びBCl等の塩素系のガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス等が用いられる。吸収体膜4のエッチングにおいて、エッチングガスに実質的に酸素が含まれていないので、Ru系保護膜に表面荒れが生じることがない。この酸素を実質的に含まれていないガスとしては、ガス中の酸素の含有量が5原子%以下であるものが該当する。
【0108】
以上の工程により、シャドーイング効果が少なく、且つ側壁ラフネスの少ない高精度微細パターンを有する反射型マスクが得られる。
【0109】
<半導体装置の製造方法>
上記本実施形態の反射型マスク200を使用してEUV露光を行うことにより、半導体基板上に反射型マスク200上の吸収体パターンに基づく所望の転写パターンを、シャドーイング効果による転写寸法精度の低下を抑えて形成することができる。また、吸収体パターンが、側壁ラフネスの少ない微細で高精度なパターンであるため、高い寸法精度で所望のパターンを半導体基板上に形成できる。このリソグラフィ工程に加え、被加工膜のエッチング、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の電子回路が形成された半導体装置を製造することができる。
【0110】
より詳しく説明すると、EUV露光装置は、EUV光を発生するレーザープラズマ光源、照明光学系、マスクステージ系、縮小投影光学系、ウエハステージ系、及び真空設備等から構成される。光源にはデブリトラップ機能と露光光以外の長波長の光をカットするカットフィルタ及び真空差動排気用の設備等が備えられている。照明光学系と縮小投影光学系は反射型ミラーから構成される。EUV露光用反射型マスク200は、その第2主面に形成された導電膜により静電吸着されてマスクステージに載置される。
【0111】
EUV光源の光は、照明光学系を介して反射型マスク垂直面に対して6°から8°傾けた角度で反射型マスクに照射される。この入射光に対する反射型マスク200からの反射光は、入射とは逆方向にかつ入射角度と同じ角度で反射(正反射)し、通常1/4の縮小比を持つ反射型投影光学系に導かれ、ウエハステージ上に載置されたウエハ(半導体基板)上のレジストへの露光が行われる。この間、少なくともEUV光が通る場所は真空排気される。また、この露光にあたっては、マスクステージとウエハステージを縮小投影光学系の縮小比に応じた速度で同期させてスキャンし、スリットを介して露光を行うスキャン露光が主流となっている。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、半導体基板上にレジストパターンを形成することができる。本発明では、シャドーイング効果の小さな薄膜で、しかも側壁ラフネスの少ない高精度な吸収体パターンを持つマスクが用いられている。このため、半導体基板上に形成されたレジストパターンは高い寸法精度を持つ所望のものとなる。そして、このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このような露光工程や被加工膜加工工程、絶縁膜や導電膜の形成工程、ドーパント導入工程、あるいはアニール工程等その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例
【0112】
以下、実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、実施例において同様の構成要素については同一の符号を使用し、説明を簡略化若しくは省略する。
【0113】
[実施例1]
実施例1の反射型マスクブランク100は、図1に示すように、裏面導電膜5と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4とを有する。吸収体膜4はNiTaのアモルファス合金を含む材料からなる。そして、図2(a)に示されるように、吸収体膜4上にレジスト膜11を形成する。図2は、反射型マスクブランク100から反射型マスク200を作製する工程を示す要部断面模式図である。
【0114】
先ず、実施例1の反射型マスクブランク100について説明する。
【0115】
第1主面及び第2主面の両主表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO-TiO系ガラス基板を準備し基板1とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
【0116】
SiO-TiO系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。
裏面導電膜形成条件:Crターゲット、ArとNの混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)、膜厚20nm。
【0117】
次に、裏面導電膜5が形成された側と反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成した。基板1上に形成される多層反射膜2は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜とするために、MoとSiからなる周期多層反射膜とした。多層反射膜2は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、Arガス雰囲気中でイオンビームスパッタリング法により基板1上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。先ず、Si膜を4.2nmの厚みで成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの厚みで成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの厚みで成膜し、多層反射膜2を形成した。ここでは40周期としたが、これに限るものではなく、例えば60周期でも良い。60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する反射率を高めることができる。
【0118】
引き続き、Arガス雰囲気中で、Ruターゲットを使用したイオンビームスパッタリング法によりRu膜からなる保護膜3を2.5nmの厚みで成膜した。
【0119】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、NiTa膜からなる吸収体膜4を形成した。NiTa膜は、NiTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、39.8nmの膜厚で成膜した。
【0120】
NiTa膜の元素比率はNiが80原子%、Taが20原子%であった。また、NiTa膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、NiTa膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.947、消衰係数kは約0.063であった。
【0121】
上記のNiTa膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、膜厚を39.8nmにしたため、0.11%であった(図3)。
【0122】
次に、上記実施例1の反射型マスクブランク100を用いて、実施例1の反射型マスク200を製造した。
【0123】
前述のように、反射型マスクブランク100の吸収体膜4の上に、レジスト膜11を150nmの厚さで形成した(図2(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図2(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、NiTa膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、Clガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成した(図2(c))。
【0124】
その後、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、反射型マスク200を製造した(図2(d))。なお、必要に応じてウェット洗浄後マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
【0125】
実施例1の反射型マスク200では、NiTa膜上のレジスト膜11に対して電子線描画を行っても、設計値通りのパターンが描画できることが確認できた。また、NiTa膜がアモルファス合金であるため、塩素系ガスでの加工性が良く、高い精度で吸収体パターン4aを形成することができた。また、吸収体パターン4aの膜厚は39.8nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0126】
実施例1で作製した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。
【0127】
このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0128】
[実施例2]
実施例2は、吸収体膜4をNiZrのアモルファス合金とした場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同様である。
【0129】
即ち、DCマグネトロンスパッタリング法により、NiZr膜からなる吸収体膜4を形成した。NiZr膜は、NiZrターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、53.9nmの膜厚で成膜した。
【0130】
NiZr膜の元素比率はNiが80原子%、Zrが20原子%であった。また、NiZr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、NiZr膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.952、消衰係数kは約0.049であった。
【0131】
上記のNiZr膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、膜厚を53.9nmにしたため、0.12%であった(図4)。
【0132】
また、実施例1と同様に実施例2の反射型マスク200及び半導体装置を製造したところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0133】
[実施例3]
実施例3は、吸収体膜4をNiPのアモルファス金属とした場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同様である。
【0134】
即ち、DCマグネトロンスパッタリング法により、NiP膜からなる吸収体膜4を形成した。NiP膜は、NiPターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、46.4nmの膜厚で成膜した。
【0135】
NiP膜の元素比率はNiが79.5原子%、Pが20.5原子%であった。また、NiP膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、NiP膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.956、消衰係数kは約0.056であった。
【0136】
上記のNiP膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、膜厚を46.4nmにしたため、0.13%であった(図5)。
【0137】
また、実施例1と同様に実施例3の反射型マスク200及び半導体装置を製造したところ、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0138】
[実施例4]
実施例4は、図13に示すように、エッチングマスク膜6を備えた反射型マスクブランク300とした。実施例4は、吸収体膜4をCoTaのアモルファス合金とし、吸収体膜4上にCrN膜からなるエッチングマスク膜6を設けた場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同様である。
【0139】
即ち、DCマグネトロンスパッタリング法により、CoTa膜からなる吸収体膜4を形成した。CoTa膜は、CoTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、40.4nmの膜厚で成膜した。
【0140】
CoTa膜の元素比率はCoが80原子%、Taが20原子%であった。また、CoTa膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、CoTa膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.936、消衰係数kは約0.059であった。
【0141】
上記のCoTa膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、膜厚を40.4nmにしたため、0.18%であった(図6)。
【0142】
作製した吸収体膜付き基板に対して、エッチングマスク膜6としてCrN膜をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成し、実施例4の反射型マスクブランク300を得た。
エッチングマスク膜形成条件:Crターゲット、ArとNの混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)、膜厚10nm。
【0143】
ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングマスク膜6の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。
【0144】
次に、上記実施例4の反射型マスクブランク300を用いて、実施例4の反射型マスク400を製造した。
【0145】
反射型マスクブランク300のエッチングマスク膜6の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(図14(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図14(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、CrN膜(エッチングマスク膜6)のドライエッチングを、ClガスとOの混合ガス(Cl+Oガス)を用いて行うことで、エッチングマスクパターン6aを形成した(図14(c))。引き続き、CoTa膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、Clガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成した。レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した(図14(d))。
【0146】
その後、エッチングマスクパターン6aを、ClガスとOの混合ガスを用いたドライエッチングによって除去した(図14(e))。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、実施例4の反射型マスク400を製造した。
【0147】
吸収体膜4の上にエッチングマスク膜6が形成されていることにより、吸収体膜4を容易にエッチングすることができた。また、転写パターンを形成するためのレジスト膜11を薄膜化することでき、微細パターンを有する反射型マスク400が得られた。
【0148】
実施例4の反射型マスク400では、CoTa膜上のレジスト膜11に対して電子線描画を行っても、設計値通りのパターンが描画できることが確認できた。また、CoTa膜がアモルファス合金であるとともに、吸収体膜4の上にエッチングマスク膜6を設けているため、高い精度で吸収体パターン4aを形成することができた。また、吸収体パターン4aの膜厚は40.4nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0149】
実施例4で作製した反射型マスク400をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。
【0150】
このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0151】
[実施例5]
実施例5は、吸収体膜4をCoNbのアモルファス合金とした場合の実施例であって、それ以外は実施例4と同様である。
【0152】
即ち、DCマグネトロンスパッタリング法により、CoNb膜からなる吸収体膜4を形成した。CoNb膜は、CoNbターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、47.9nmの膜厚で成膜した。
【0153】
CoNb膜の元素比率はCoが80原子%、Nbが20原子%であった。また、CoNb膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、CoNb膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.933、消衰係数kは約0.048であった。
【0154】
上記のCoNb膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、膜厚を47.9nmにしたため、0.18%であった(図7)。
【0155】
また、実施例4と同様に、実施例5の反射型マスク及び半導体装置を製造したところ、実施例4と同様に良好な結果が得られた。
【0156】
[実施例6]
実施例6は、図13に示すように、エッチングマスク膜6を備えた反射型マスクブランク300とした。実施例6は、保護膜3をRuNb膜とし、吸収体膜4をNiTaのアモルファス合金とし、吸収体膜4の上にCrN膜からなるエッチングマスク膜6を設けた場合の実施例である。
【0157】
実施例1と同様にして作製した裏面導電膜5及び多層反射膜2が形成された多層反射膜付き基板に対して、保護膜3を成膜した。保護膜3は、Arガス雰囲気中で、RuNbターゲットを使用したイオンビームスパッタリング法により、膜厚が2.5nmのRuNb膜として形成した。
【0158】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、NiTa膜からなる吸収体膜4を形成した。NiTa膜は、NiTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、40nmの膜厚で成膜した。
【0159】
NiTa膜の元素組成はNiが50原子%、Taが50原子%であった。また、NiTa膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、NiTa膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.951、消衰係数kは約0.049であった。また、上記のNiTa膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、1.1%であった。
【0160】
作製した吸収体膜付き基板に対して、エッチングマスク膜6としてCrN膜をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により形成した。CrN膜は、Crターゲットを用いて、ArとNの混合ガス雰囲気にて、10nmの膜厚で成膜した。ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングマスク膜6の元素組成を測定したところ、Crが90原子%、Nが10原子%であった。以上のようにして、実施例6の反射型マスクブランク300を製造した。
【0161】
次に、上記実施例6の反射型マスクブランク300を用いて、実施例6の反射型マスク400を製造した。
【0162】
反射型マスクブランク300のエッチングマスク膜6の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(図14(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図14(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、CrN膜(エッチングマスク膜6)のドライエッチングを、ClガスとOの混合ガス(Cl+Oガス)を用いて行うことで、エッチングマスクパターン6aを形成した(図14(c))。引き続き、NiTa膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、BClガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成し、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した(図14(d))。
【0163】
その後、エッチングマスクパターン6aをClガスとOの混合ガスを用いたドライエッチングによって除去した(図14(e))。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、実施例6の反射型マスク400を製造した。
【0164】
吸収体膜4の上にエッチングマスク膜6が形成されていることにより、吸収体膜4を容易にエッチングすることができた。また、転写パターンを形成するためのレジスト膜11を薄膜化することでき、微細パターンを有する反射型マスク400が得られた。
【0165】
実施例6の反射型マスク400では、NiTa膜上のレジスト膜11に対して電子線描画を行っても、設計値通りのパターンが描画できることが確認できた。また、NiTa膜がアモルファス合金であるとともに、吸収体膜4の上にエッチングマスク膜6を設けているため、高い精度で吸収体パターン4aを形成することができた。また、吸収体パターン4aの膜厚は40nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0166】
実施例6で作製した反射型マスク400をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。
【0167】
このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0168】
[実施例7]
実施例7は、実施例6のNiTa膜の組成比を変えた場合の実施例であって、それ以外は実施例6と同様である。
【0169】
即ち、DCマグネトロンスパッタリング法により、NiTa膜からなる吸収体膜4を形成した。NiTa膜は、NiTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、40nmの膜厚で成膜した。
【0170】
NiTa膜の元素組成はNiが25原子%、Taが75原子%であった。また、NiTa膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、NiTa膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.951、消衰係数kは約0.040であった。また、上記のNiTa膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、2.3%であった。
【0171】
実施例6と同様に実施例7の反射型マスク400を作製したところ、実施例6よりもエッチング選択比が大きく、エッチング時間を短縮することができた。また、実施例6と同様に実施例7の半導体装置を製造したところ、実施例6と同様に良好な結果が得られた。
【0172】
[実施例8]
実施例8は、吸収体膜4をCoTaNのアモルファス合金とした場合の実施例であって、それ以外は実施例6と同じである。
【0173】
即ち、DCマグネトロンスパッタリング法により、CoTaN膜からなる吸収体膜4を形成した。CoTaN膜は、CoTaターゲットを用いて、ArとNの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、40nmの膜厚で成膜した。
【0174】
CoTaN膜の元素組成はCoが40原子%、Taが40原子%、Nが20原子%であった。また、CoTaN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、X線反射率法(XRR)を用いて、CoTaN膜の表面に形成された酸化層の膜厚を測定したところ、1.5nmであった。CoTaN膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.950、消衰係数kは約0.047であった。また、上記のCoTaN膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、1.1%であった。
【0175】
実施例6と同様に、実施例8の反射型マスク及び半導体装置を製造したところ、実施例6と同様に良好な結果が得られた。
【0176】
[実施例9]
実施例9は、吸収体膜4のエッチングガスを変えた場合の実施例であって、それ以外は実施例8と同様である。
【0177】
即ち、反射型マスクブランク300のエッチングマスク膜6の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(図14(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図14(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、CrN膜(エッチングマスク膜6)のドライエッチングを、ClガスとOの混合ガス(Cl+Oガス)を用いて行うことで、エッチングマスクパターン6aを形成した(図14(c))。引き続き、CoTaN膜(吸収体膜4)の表面から深さ4.9nmを、BClガスを用いてドライエッチングを行い、CoTaN膜の表面に形成された酸化層を除去した。その後、残膜厚が35.1nmのCoTaN膜をClガスを用いてドライエッチングを行うことで、吸収体パターンを形成した(図14(d))。
【0178】
実施例8と同様に、実施例9の反射型マスク及び半導体装置を製造したところ、実施例8と同様に良好な結果が得られた。また、実施例8よりも、吸収体膜4のエッチング時間を短縮することができた。
【0179】
[実施例10]
実施例10は、図15示すように、エッチングストッパー膜7及びエッチングマスク膜6を備えた反射型マスクブランク500とした。実施例10は、吸収体膜4をCoTaのアモルファス合金とし、吸収体膜4の下にCrN膜からなるエッチングストッパー膜7を設け、吸収体膜4上にCrN膜からなるエッチングマスク膜6を設けた場合の実施例である。
【0180】
即ち、実施例6と同様にして作製した裏面導電膜5、多層反射膜2及び保護膜3が形成された保護膜付き基板に対して、エッチングストッパー膜7としてCrN膜をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により形成した。CrN膜は、Crターゲットを用いて、ArとNの混合ガス雰囲気にて、5nmの膜厚で成膜した。ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングストッパー膜7の元素組成を測定したところ、Crが90原子%、Nが10原子%であった。
【0181】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、CoTa膜からなる吸収体膜4を形成した。CoTa膜は、CoTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、40nmの膜厚で成膜した。
【0182】
CoTa膜の元素組成はCoが75原子%、Taが25原子%であった。また、CoTa膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。また、CoTa膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.952、消衰係数kは約0.040であった。また、上記のCoTa膜からなる吸収体膜4の波長13.5nmにおける反射率は、2.4%であった。
【0183】
作製した吸収体膜付き基板に対して、エッチングマスク膜6としてCrN膜をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により形成した。CrN膜は、Crターゲットを用いて、ArとNの混合ガス雰囲気にて、5nmの膜厚で吸収体膜4を成膜した。ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングマスク膜6の元素組成を測定したところ、Crが90原子%、Nが10原子%であった。このようにして、実施例10の反射型マスクブランク500を得た。
【0184】
次に、上記実施例10の反射型マスクブランク500を用いて、反射型マスク600を製造した。
【0185】
反射型マスクブランク500のエッチングマスク膜6の上に、レジスト膜11を80nmの厚さで形成した(図16(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図16(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、CrN膜(エッチングマスク膜6)のドライエッチングを、ClガスとOの混合ガス(Cl+Oガス)を用いて行うことで、エッチングマスクパターン6aを形成した(図16(c))。引き続き、CoTa膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、BClガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成し、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した(図16(d))。
【0186】
その後、ClガスとOの混合ガスを用いたドライエッチングにより、エッチングストッパー膜7をパターニングするとともに、エッチングマスクパターン6aを同時に除去した(図16(e))。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、実施例10の反射型マスク600を製造した。
【0187】
実施例10では、吸収体膜4の下にエッチングストッパー膜7が形成されていることにより、保護膜3にダメージを与えることなく吸収体膜4を容易にエッチングすることができた。また、転写パターンを形成するためのレジスト膜11を薄膜化することでき、微細パターンを有する反射型マスク600が得られた。
【0188】
実施例10の反射型マスク600では、CoTa膜上のレジスト膜11に対して電子線描画を行っても、設計値通りのパターンが描画できることが確認できた。また、CoTa膜がアモルファス合金であるとともに、吸収体膜4の上下にエッチングマスク膜6及びエッチングストッパー膜7を設けているため、保護膜3にダメージを与えることなく高い精度で吸収体パターン4aを形成することができた。また、吸収体パターン4aの膜厚は40nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0189】
[実施例11]
実施例11は、実施例10のエッチングストッパー膜7及びエッチングマスク膜6を各々SiO膜に変え、吸収体膜4のエッチングガスを変えた場合の実施例であって、それ以外は実施例10と同じである。
【0190】
即ち、実施例6と同様にして作製した裏面導電膜5、多層反射膜2及び保護膜3が形成された保護膜付き基板に対して、エッチングストッパー膜7としてSiO膜をRFスパッタリング法により形成した。SiO膜は、SiOターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて、5nmの膜厚で成膜した。ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングストッパー膜7の元素組成を測定したところ、SiOであることを確認した。
【0191】
次に、実施例10と同様に、DCマグネトロンスパッタリング法により、CoTa膜からなる吸収体膜4を形成した。CoTa膜は、CoTaターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、40nmの膜厚で成膜した。
【0192】
作製した吸収体膜付き基板に対して、エッチングマスク膜6としてSiO膜をRFスパッタリング法により形成した。SiO膜は、SiOターゲットを用いて、Arガス雰囲気にて、5nmの膜厚で成膜した。ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングマスク膜6の元素組成を測定したところ、SiOであることを確認した。このようにして、実施例11の反射型マスクブランク500を得た。
【0193】
実施例10と同様にして、実施例11の反射型マスクブランク500のエッチングマスク膜6の上に、レジスト膜11を80nmの厚さで形成した(図16(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図16(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、SiO膜(エッチングマスク膜6)のドライエッチングを、フッ素含有ガス(具体的には、CFガス)を用いて行うことで、エッチングマスクパターン6aを形成した(図16(c))。引き続き、CoTa膜(吸収体膜)のドライエッチングを、Clガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成し、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した(図16(d))。
【0194】
その後、CFガスを用いたドライエッチングにより、エッチングストッパー膜7をパターニングするとともに、エッチングマスクパターン6aを同時に除去した(図16(e))。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、実施例11の反射型マスク600を製造した。
【0195】
また、実施例10と同様に半導体装置を製造したところ、実施例10と同様に良好な結果が得られた。
【0196】
[比較例1]
比較例1では、吸収体膜4として単層のTaBN膜を用いた以外、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク、反射型マスクを製造し、また、実施例1と同様の方法で半導体装置を製造した。
【0197】
単層のTaBN膜は、実施例1のマスクブランク構造の保護膜3の上に、NiTa膜に代えて形成した。TaBN膜は、TaB混合焼結ターゲットを用いて、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、62nmの膜厚で成膜した。
【0198】
TaBN膜の元素比率は、Taが75原子%、Bが12原子%、Nが13原子%であった。TaBN膜の波長13.5nmにおける屈折率nは約0.949、消衰係数kは約0.030であった。
【0199】
上記の単層のTaBN膜からなる吸収体膜の波長13.5nmにおける反射率は、1.4%であった。
【0200】
その後、実施例1と同様の方法で、レジスト膜をTaBN膜からなる吸収体膜上に形成し、所望のパターン描画(露光)及び現像、リンスを行ってレジストパターンを形成した。そして、このレジストパターンをマスクにして、TaBN膜からなる吸収体膜を、塩素ガスを用いたドライエッチングして、吸収体パターンを形成した。レジストパターン除去やマスク洗浄なども実施例1と同じ方法で行い、比較例1の反射型マスクを製造した。
【0201】
吸収体パターンの膜厚は62nmであり、シャドーイング効果を低減することができなかった。
【符号の説明】
【0202】
1 基板
2 多層反射膜
3 保護膜
4 吸収体膜
4a 吸収体パターン
5 裏面導電膜
6 エッチングマスク膜
6a エッチングマスクパターン
7 エッチングストッパー膜
7a エッチングストッパーパターン
11 レジスト膜
11a レジストパターン
100、300、500 反射型マスクブランク
200、400、600 反射型マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16