(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20220601BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220601BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220601BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220601BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20220601BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20220601BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20220601BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20220601BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M6/16 A
H01G11/64
H01G11/62
H01G11/60
(21)【出願番号】P 2019515159
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011747
(87)【国際公開番号】W WO2018198618
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2017089462
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 大希
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】古藤 雄一
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-123898(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069278(WO,A1)
【文献】特開2016-029650(JP,A)
【文献】特開2014-017258(JP,A)
【文献】国際公開第2009/102069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 6/16
H01G 11/64
H01G 11/62
H01G 11/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、非水電解液中に下記一般式(I)で表される化合物を0.1~4質量%含有し、添加剤としてフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を0.1~30質量%含有することを特徴とする蓄電デバイス用非水電解液。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~7のアルキル基又は炭素数3~6のシクロアルキル基を示し、R
2~R
6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は-CH
2OC(=O)OR
7基を示し、R
7は炭素数1~4のアルキル基を示し、n=0又は1を示す。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、メチルシクロヘキシルカーボネート、メチル(2-メチルシクロヘキシル)カーボネート、メチル(3-メチルシクロヘキシル)カーボネート、メチル(4-メチルシクロヘキシル)カーボネート、エチルシクロヘキシルカーボネート、エチル(2-メチルシクロヘキシル)カーボネート、エチル(3-メチルシクロヘキシル)カーボネート、エチル(4-メチルシクロヘキシル)カーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、シクロヘキシルメチルメチルカーボネート、シクロヘキシルメチルエチルカーボネート、ビス(シクロヘキシルメチル)カーボネート、シクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ジメチルビス(カーボネート)、及びシクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ジエチルビス(カーボネート)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
前記フッ素原子含有環状カーボネートが、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン及びトランスもしくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の非水電解液。
【請求項4】
前記不飽和結合含有環状カーボネートが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の非水電解液。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物の含有量をA質量%、フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の含有量をB質量%としたときにA/Bが0.01~3の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項6】
該非水電解液が、更にシュウ酸構造を有するリチウム塩、リン酸構造を有するリチウム塩、S=O基を有するリチウム塩、及びフッ素原子を有するリチウムイミド塩からなる群より選ばれる1種以上のリチウム塩を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項7】
前記シュウ酸構造を有するリチウム塩が、リチウム ビス(オキサラト)ボレート、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、及びリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項8】
前記リン酸構造を有するリチウム塩が、LiPO
2F
2、Li
2PO
3F、リチウム ビス(ジフルオロホスホリル)アミド、リチウム(ジフルオロホスホリル)(フルオロオキシドホスホリル)アミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項9】
前記S=O基を有するリチウム塩が、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート、リチウム メチルサルフェート、リチウムエチルサルフェート、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート、及びFSO
3Liからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項10】
前記フッ素原子を有するリチウムイミド塩が、LiN(SO
2F)
2及びLiN(SO
2CF
3)
2から選ばれる1種又は2種である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項11】
前記非水電解液において、非水溶媒に鎖状エステルを1種以上含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項12】
前記鎖状エステルが、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、及びピバリン酸メチルから選ばれる1種又は2種である、請求項11に記載の非水電解液。
【請求項13】
正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、該非水電解液が請求項1~12のいずれか1項に記載の非水電解液であることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上できる非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッドカー等の自動車用電源や、アイドリングストップ用電源として、リチウムイオン二次電池及びリチウムイオンキャパシタが注目されている。
【0003】
リチウム二次電池の電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネートに、LiPF6、LiBF4等の電解質塩を溶解させた非水電解液が用いられている。
こうしたリチウム二次電池のサイクル特性、保存特性等の電池特性を改良するために、これらの非水電解液に用いられる非水系溶媒や電解質塩について種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アリルメチルカーボネート等のアルケニル基含有鎖状エステルをイオン液体と組み合わせて含有する非水電解液が提案されており、蓄電デバイスの安全性を向上し、室温下での電池特性を改善することができるとしている。
【0005】
ところで、リチウム二次電池を高温かつ高電圧環境下で、連続充電の状態で長期間保持した場合に、電池は正極及び負極の表面上で、非水電解液中の非水溶媒の一部が酸化又は還元分解してしまい、分解物の沈着やガス発生により非水電解液が消費され、液枯れを起こすという問題がある。非水電解液の液枯れが起こると正極及び負極の界面抵抗が増大し、電池の望ましい電気化学特性が低下する。
特許文献1で提案された、アリルメチルカーボネートやメチルシクロヘキシルカーボネートをイオン液体と共に添加した電解液では、高温かつ高電圧環境下、連続充電を長期間行った後の放電電圧低下の抑制に対して何らの記載も示唆もなく、十分な前記抑制効果が得られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上させることができる非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の非水電解液の性能について詳細に検討した結果、前記特許文献1に記載のアリルメチルカーボネートやメチルシクロヘキシルカーボネートを実際に非水電解液に添加して評価したところ高温かつ高電圧環境下での連続充電特性は不十分であることが判明した。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に下記一般式(I)で表される特定の化合物を特定量と、更にフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を特定量添加した非水電解液を用いることにより、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が格段に向上することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(2)を提供するものである。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、非水電解液中に下記一般式(I)で表される化合物を0.1~4質量%含有し、添加剤としてフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を0.1~30質量%含有することを特徴とする蓄電デバイス用非水電解液。
【0010】
【0011】
(式中、R1は炭素数1~7のアルキル基又は炭素数3~6のシクロアルキル基を示し、R2~R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は-CH2OC(=O)OR7基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、n=0又は1を示す。)
(2)正極、負極、及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスであって、該非水電解液が前記(1)に記載の非水電解液であることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上できる非水電解液及びそれを用いたリチウム電池等の蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔非水電解液〕
本発明の蓄電デバイス用非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液であって、非水電解液中に、下記一般式(I)で表される化合物を0.1~4質量%含有し、添加剤としてフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を0.1~30質量%を含有することを特徴とする。
【0014】
【0015】
(式中、R1は炭素数1~7のアルキル基又は炭素数3~6のシクロアルキル基を示し、R2~R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は-CH2OC(=O)OR7基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、n=0又は1を示す。)
【0016】
本発明の非水電解液が、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明で使用される一般式(I)で表される化合物は、シクロヘキシル基を有しているため、電極活性表面での分解反応が促進され素早く被膜を形成されるものの、単独では被膜の熱安定性が不十分であった。そこで、特定量の一般式(I)で表される化合物と、更に添加剤として、フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を特定量組み合わせて使用すると、「シクロヘキシル基」、「-O-C(=O)-O-基」、「フッ素原子含有環状カーボネート又は不飽和結合含有環状カーボネート」の少なくとも3種の特性基を含む熱安定性の高い強固な混合被膜を形成すると考えられる。
ここで、カーボネートの一方がシクロヘキシル基ではなく、フェニル基を含む場合は、得られる被膜の形成速度が遅かったり、構成成分が異なるためか十分な強度が得られない。また、本発明においては、一般式(I)で表されるカーボネートの他方の置換基R1がアルキル基又はシクロアルキル基である化合物で被膜が構成されるため、リチウムイオンの透過を妨げない適度な柔軟性をもった被膜が形成され、更なる溶媒の分解を抑制した結果、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性がより一層向上すると考えられる。
【0017】
本発明の非水電解液に含まれる化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0018】
【0019】
前記一般式(I)において、R1は炭素数1~7のアルキル基又はシクロアルキル基を示し、中でも炭素数1~4のアルキル基又は炭素数4~6のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基又は炭素数5~6のシクロアルキル基が好ましい。
【0020】
前記R1で表される炭素数1~7のアルキル基又は炭素数3~6のシクロアルキル基において、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル等の直鎖のアルキル基、又はイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル、シクロヘキシルメチル基等の分岐のアルキル基が好適に挙げられ、シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、もしくはシクロヘキシル基等の環状アルキル基が好適に挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、又はシクロヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0021】
前記一般式(I)において、前記R2~R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は-CH2OC(=O)OR7基を示し、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0022】
前記R2~R6が炭素数1~4のアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、水素原子、tert-ブチル基等の分岐のアルキル基が好適に挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、又はn-プロピル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0023】
前記R2~R6が-CH2OC(=O)OR7基である場合、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、炭素数1~2のアルキル基が好ましい。
前記-CH2OC(=O)OR7基の置換位置としては、R4が好ましい。
【0024】
前記R7の具体例としては、炭素数1~4のアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の分岐のアルキル基が好適に挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、又はn-プロピル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0025】
前記一般式(I)において、nは0又は1を示し、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性の効果を高める観点から、nは1が好ましい。
前記一般式(I)において、nが0又は1の場合の好適例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0026】
【0027】
上記化合物の中でも、メチルシクロヘキシルカーボネート(化合物A1)、メチル(2-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A2)、メチル(3-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A3)、メチル(4-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A4)、メチル(2、3-ジメチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A5)、メチル(2、4-ジメチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A6)、メチル(2、5-ジメチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A7)、メチル(2、6-ジメチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A8)、エチルシクロヘキシルカーボネート(化合物A14)、エチル(2-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A15)、エチル(3-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A16)、エチル(4-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A17)、及びジシクロヘキシルカーボネート(化合物A18)からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、メチルシクロヘキシルカーボネート(化合物A1)、メチル(2-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A2)、メチル(3-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A3)、メチル(4-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A4)、エチルシクロヘキシルカーボネート(化合物14)、エチル(2-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A15)、エチル(3-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A16)、エチル(4-メチルシクロヘキシル)カーボネート(化合物A17)、及びジシクロヘキシルカーボネート(化合物A18)からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、メチルシクロヘキシルカーボネート(化合物A1)、エチルシクロヘキシルカーボネート(化合物A14)、及びジシクロヘキシルカーボネート(化合物A18)からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0028】
【0029】
上記化合物の中でも、シクロヘキシルメチルメチルカーボネート(化合物B1)、シクロヘキシルメチルエチルカーボネート(化合物B3)、ビス(シクロヘキシルメチル)カーボネート(化合物B5)、シクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ジメチルビス(カーボネート)(化合物B6)、及びシクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ジエチルビス(カーボネート)(化合物B7)からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、シクロヘキシルメチルメチルカーボネート(化合物B1)、シクロヘキシルメチルエチルカーボネート(化合物B3)、及びシクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ジメチルビス(カーボネート)(化合物B6)からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
【0030】
本発明の非水電解液において、一般式(I)で表される化合物の含有量は、非水電解液中に0.1~4質量%が好ましい。該含有量が4質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され電気化学特性が低下するおそれが少なく、また0.1質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性の効果が高まる。該含有量は、0.3質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましい。また、その上限は、3質量%以下がより好ましく、2.2質量%以下が更に好ましく、1.7質量%以下が特に好ましい。
【0031】
本発明の非水電解液においては、一般式(I)で表される化合物と併用する添加剤として、フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。これらの中では、フッ素原子含有環状カーボネートがより好ましい。
【0032】
フッ素原子含有環状カーボネートとしては、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、トランス又はシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)等からなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンがより好ましい。
【0033】
不飽和結合含有環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)等の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、ビニレンカーボネート及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)がより好ましい。
【0034】
前記フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる化合物は、組み合わせて使用することで、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性の改善効果が相乗的に向上するため好ましい。これらフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる好適な組み合わせとしては、VCとFECの組合せ、FECとDFECの組合せ、VCとDFECの組合せ、VECとDFECの組合せ、VCとEECの組合せ、及びECとEECの組合せ等が好ましい。前記の組合せの中でも、VCとFECの組合せ、VCとDFECの組合せ、及びVECとDFECの組合せ等がより好ましい。
【0035】
前記フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の総含有量は、非水電解液中に0.1~30質量%が好ましい。該含有量が30質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され電気化学特性が低下するおそれが少なく、また0.1質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性の効果が高まる。
該含有量は、非水電解液中に0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、その上限は、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、6質量%以下が更に好ましく、4質量%以下が特に好ましい。
【0036】
一般式(I)で表される化合物と、フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量比(質量比)は、一般式(I)で表される化合物の含有量をA質量%、フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量をB質量%としたときに、A/Bが0.01~3の範囲が好ましい。該含有量比が3以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され電気化学特性が低下するおそれが少なく、また0.01以上であれば被膜の形成が十分であり、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性の効果が高まる。該含有量比は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましい。また、その上限は、3以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、0.6以下の場合は一段と高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が高まるため更に好ましい。
【0037】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート(但し、非水溶媒としては、フッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートを除く。以下同じ。)、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、及びアミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を相乗的に向上させるため、環状カーボネートと鎖状エステルの両方が含まれることがもっとも好ましい。
なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
【0038】
(環状カーボネート)
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、及び2,3-ブチレンカーボネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートからなる群より選ばれる1種又は2種がより好適である。
【0039】
(鎖状エステル)
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の対称鎖状カーボネート、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル等のピバリン酸エステル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、及び酢酸ブチルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
【0040】
前記鎖状エステルの中でも、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸プロピル(PA)、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、及びピバリン酸メチルからなる群より選ばれる分子量90以上120以下の鎖状エステルが好ましい。
【0041】
鎖状エステルとして鎖状カーボネートを用いる場合は、2種以上を用いることが好ましい。さらに対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方が含まれるとより好ましく、対称鎖状カーボネートの含有量が非対称鎖状カーボネートより多く含まれると更に好ましい。
【0042】
鎖状カーボネート中に対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、51体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。その上限としては、95体積%以下が好ましく、85体積%以下がより好ましい。対称鎖状カーボネートにジメチルカーボネートが含まれると特に好ましい。また、非対称鎖状カーボネートはメチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。上記の場合に一段と高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が向上するので好ましい。
【0043】
また、鎖状エステルとして、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、及びピバリン酸メチルからなる群より選ばれる1種以上含むとより好ましい。鎖状カルボン酸エステルを用いる場合には、鎖状エステルの全体積に占める割合が1~100体積%であることが好ましい。上記の場合に最も高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が向上するので好ましい。該含有量は鎖状エステル全体に対して7体積%以上がより好ましく、57体積%以上が更に好ましく、鎖状カルボン酸エステルのみを用いることが特に好ましい。
【0044】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60~90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度が高くなりすぎず、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が低下して電気化学特性が低下するおそれが少ないので上記範囲であることが好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90~45:55が好ましく、15:85~40:60がより好ましく、20:80~35:65が更に好ましい。
【0045】
(その他の非水溶媒)
本発明の非水電解液においては、上記以外のその他の非水溶媒を用いることができる。
その他の非水溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び1,4-ジオキサン等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタン等の鎖状エーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、スルホラン等のスルホン、及びγ-ブチロラクトン(GBL)もしくはγ-バレロラクトン、α-アンゲリカラクトン等のラクトンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0046】
上記その他の非水溶媒は、通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せは、例えば、環状カーボネートと鎖状エステルとラクトンとの組合せ又は環状カーボネートと鎖状エステルとエーテルとの組合せ等が好適に挙げられ、環状カーボネートと鎖状エステルとラクトンとの組合せがより好ましく、ラクトンの中でもγ-ブチロラクトン(GBL)を用いると更に好ましい。
その他の非水溶媒の含有量は、非水溶媒の総体積に対して、通常1%以上、好ましくは2%以上であり、また通常40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。
【0047】
(その他の添加剤)
本発明においては、一段と高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらにその他の添加剤を加えることが好ましい。
その他の添加剤の具体例としては、以下の(A)~(H)の化合物が好適に挙げられる。
【0048】
(A)スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,3,5-ヘキサントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、及びセバコニトリル等のCN基とCN基の間の炭素鎖が2以上の多価ニトリル化合物。
【0049】
(B)シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1-フルオロ-2-シクロヘキシルベンゼン、1-フルオロ-3-シクロヘキシルベンゼン、1-フルオロ-4-シクロヘキシルベンゼン)、tert-ブチルベンゼン、tert-アミルベンゼン、1-フルオロ-4-tert-ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o-、m-、p-体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o-、m-、p-体)、アニソール、2,4-ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2-ジシクロヘキシルベンゼン、2-フェニルビシクロヘキシル、1,2-ジフェニルシクロヘキサン、o-シクロヘキシルビフェニル)等の芳香族化合物。
【0050】
(C)メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2-イソシアナトエチル アクリレート、及び2-イソシアナトエチル メタクリレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上のイソシアネート化合物。
【0051】
(D)2-プロピニル メチル カーボネート、酢酸 2-プロピニル、ギ酸 2-プロピニル、メタクリル酸 2-プロピニル、メタンスルホン酸 2-プロピニル、ビニルスルホン酸 2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、メチル 2-プロピニルオギザレート、エチル 2-プロピニルオギザレート、グルタル酸 ジ(2-プロピニル)、2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメート、及び2,4-ヘキサジイン-1,6-ジイル ジメタンスルホネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の三重結合含有化合物。
【0052】
(E)1,3-プロパンスルトン、1,3-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート、及び5,5-ジメチル-1,2-オキサチオラン-4-オン 2,2-ジオキシド等のスルトン、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン-2-オキシド(1,2-シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、及び5-ビニル-ヘキサヒドロ-1,3,2-ベンゾジオキサチオール-2-オキシド等の環状サルファイト、環状サルフェート、ブタン-2,3-ジイル ジメタンスルホネート、ブタン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、又はメチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル、ジビニルスルホン、1,2-ビス(ビニルスルホニル)エタン、及びビス(2-ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のS=O基を含む非リチウム化合物。
【0053】
(F)1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン、5-エチル-5-メチル-1,3-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン等の環状アセタール化合物。
【0054】
(G)リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、及びリン酸トリオクチル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)2,2-ジフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、リン酸ビス(2,2-ジフルオロエチル)2,2,2-トリフルオロエチル、リン酸ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)2,2,2-トリフルオロエチル及びリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)メチル、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル)、メチレンビスホスホン酸メチル、メチレンビスホスホン酸エチル、エチレンビスホスホン酸メチル、エチレンビスホスホン酸エチル、ブチレンビスホスホン酸メチル、ブチレンビスホスホン酸エチル、メチル 2-(ジメチルホスホリル)アセテート、エチル 2-(ジメチルホスホリル)アセテート、メチル 2-(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル 2-(ジエチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル 2-(ジメチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル 2-(ジエチルホスホリル)アセテート、メチル 2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、エチル 2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、メチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、2-プロピニル 2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、2-プロピニル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、及びピロリン酸メチル、ピロリン酸エチルからなる群より選ばれる1種又は2種以上のリン含有化合物。
【0055】
(H)無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、3-アリル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、及び3-スルホ-プロピオン酸無水物等の環状酸無水物。
【0056】
(A)多価ニトリル化合物の中では、-CN基と-CN基の間の炭素鎖が4以上のアジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、及びセバコニトリルからなる群より選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0057】
(B)芳香族化合物の中では、ビフェニル、ターフェニル(o-、m-、p-体)、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、及びtert-アミルベンゼンからなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ビフェニル、o-ターフェニル、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、及びtert-アミルベンゼンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
【0058】
(C)イソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2-イソシアナトエチル アクリレート、及び2-イソシアナトエチル メタクリレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0059】
(D)三重結合含有化合物としては、2-プロピニル-メチルカーボネート、メタクリル酸-2-プロピニル、メタンスルホン酸-2-プロピニル、ビニルスルホン酸-2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸-2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、メチル-2-プロピニルオギザレート、エチル-2-プロピニルオギザレート、及び2-ブチン-1,4-ジイル-ジメタンスルホネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましく、メタンスルホン酸-2-プロピニル、ビニルスルホン酸-2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸-2-プロピニル、ジ(2-プロピニル)オギザレート、及び2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネートからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0060】
(E)スルトン、環状サルファイト、環状サルフェート、スルホン酸エステル、及びビニルスルホンからなる群より選ばれる環状又は鎖状のS=O基を含む非リチウム化合物(但し、三重結合含有化合物、及び前記一般式のいずれかで表される特定の化合物は含まない)を用いることが好ましい。
【0061】
前記環状のS=O基含有化合物としては、1,3-プロパンスルトン、1,3-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル-アセテート、5,5-ジメチル-1,2-オキサチオラン-4-オン-2,2-ジオキシド、メチレンメタンジスルホネート、エチレンサルファイト、エチレンサルフェート、及び4-(メチルスルホニルメチル)-1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
【0062】
また、鎖状のS=O基含有化合物としては、ブタン-2,3-ジイル-ジメタンスルホネート、ブタン-1,4-ジイル-ジメタンスルホネート、ジメチルメタンジスルホネート、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ジビニルスルホン、及びビス(2-ビニルスルホニルエチル)エーテルからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられる。
前記環状又は鎖状のS=O基含有化合物の中でも、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル-アセテート、エチレンサルフェート、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、及びジビニルスルホンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
【0063】
(F)環状アセタール化合物としては、1,3-ジオキソラン、5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン、及び5-エチル-5-メチル-1,3-ジオキサンが好ましく、1,3-ジオキサン及び5,5-ジメチル-1,3-ジオキサンがより好ましい。
【0064】
(G)リン含有化合物としては、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル)、メチル-2-(ジメチルホスホリル)アセテート、エチル-2-(ジメチルホスホリル)アセテート、メチル-2-(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル-2-(ジエチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル-2-(ジメチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル-2-(ジエチルホスホリル)アセテート、メチル-2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、エチル-2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、メチル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、エチル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、2-プロピニル-2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、及び2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテートが好ましく、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル)、エチル-2-(ジエチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル-2-(ジメチルホスホリル)アセテート、2-プロピニル-2-(ジエチルホスホリル)アセテート、エチル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテート、2-プロピニル-2-(ジメトキシホスホリル)アセテート、及び2-プロピニル-2-(ジエトキシホスホリル)アセテートが更に好ましい。
【0065】
(H)環状酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、及び3-アリル無水コハク酸が好ましく、無水コハク酸及び3-アリル無水コハク酸が更に好ましい。
【0066】
上記の中でも、(A)多価ニトリル化合物、(D)三重結合含有化合物、(E)S=O基を含む非リチウム化合物、及び(F)環状アセタール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むとより一段と高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が向上するので好ましい。
【0067】
前記(A)~(H)の化合物の総含有量は、非水電解液中に0.01~7質量%が好ましい。この範囲では、被膜が厚くなり過ぎずに十分に形成され、一段と高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が高まる。該総含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、その上限は、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0068】
(電解質塩)
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩が好適に挙げられる。
リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4等の無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiPF3(iso-C3F7)3、LiPF5(iso-C3F7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩が好適に挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が好適に挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中でも、LiPF6及びLiBF4が好ましく、LiPF6を用いることがもっとも好ましい。電解質塩の濃度は、非水電解液中で、通常0.3M以上が好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.1M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.6M以下が更に好ましい。
【0069】
また、一段と高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらに、シュウ酸構造を有するリチウム塩(I)、リン酸構造を有するリチウム塩(II)、S=O基を有するリチウム塩(III)、及びフッ素原子を有するリチウムイミド塩(IV)からなる群より選ばれる1種以上のリチウム塩を含むことが好ましい。
【0070】
シュウ酸構造を有するリチウム塩(I)としては、リチウム ビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウム ジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウム テトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)、及びリチウム ジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFOP)が好適に挙げられ、これらの中でも、LiBOB、LiDFOB、LiDFOPが好ましい。
【0071】
リン酸構造を有するリチウム塩(II)としては、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、フルオロリン酸リチウム(Li2PO3F)、リチウム ビス(ジフルオロホスホリル)アミド、リチウム(ジフルオロホスホリル)(フルオロオキシドホスホリル)アミド等のリン酸構造を有するリチウム塩が好適に挙げられ、これらの中でもLiPO2F2、Li2PO3Fがより好ましく、LiPO2F2が更に好ましい。
【0072】
S=O基を有するリチウム塩(III)としては、フルオロ硫酸リチウム(FSO3Li)、リチウム メチルサルフェート(LMS)、リチウムエチルサルフェート(LES)、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート(LFES)、リチウム トリフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ボレート(LiTFMSB)、リチウム ペンタフルオロ((メタンスルホニル)オキシ)ホスフェート(LiPFMSP)が好適に挙げられ、これらの中でも、LMS、LES、FSO3Li、LFES及びLiTFMSBが好ましく、LMS、LESが更に好ましい。
【0073】
本発明の非水電解液において、リチウム塩(I)、(II)又は(III)のそれぞれの塩の含有量は、非水電解液中に0.001~0.2Mが好ましい。該含有量が0.2M以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され電気化学特性が低下するおそれが少なく、0.001M以上であれば高温かつ高電圧環境下での連続充電後の平均放電電圧の低下を抑える効果が十分であり、連続充電後の電池特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.01M以上が好ましく、0.03M以上がより好ましく、特に好ましくは0.04M以上である。その上限は、0.15M以下が好ましく、0.12M以下がより好ましい。
【0074】
フッ素原子を有するリチウムイミド塩(IV)としては、(CF2)2(SO2)2NLi、(CF2)3(SO2)2NLi、LiN(SO2F)2(LiFSI)、LiN(SO2CF3)2(LiTFSI)、及びLiN(SO2C2F5)2からなる群より選ばれる1種以上が好適に挙げられ、これらの中でも、LiTFSI、及びLiFSIから選ばれる1種以上がより好ましく、LiFSIが更に好ましい。
【0075】
本発明の非水電解液において、リチウムイミド塩(IV)の含有量は、非水電解液中に0.01~1Mが好ましい。該含有量が1M以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され電気化学特性が低下するおそれが少なく、0.01M以上であれば高温かつ高電圧環境下での連続充電後の平均放電電圧の低下を抑える効果が十分であり、連続充電後の電池特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.03M以上が好ましく、0.05M以上がより好ましく、その上限は、0.9M以下が好ましく、0.7M以下がより好ましい。
【0076】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液に対して一般式(I)で表される化合物とフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0077】
本発明の非水電解液は、下記の第1~第4の蓄電デバイスに使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。これらの中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の蓄電デバイス用(即ち、リチウム電池用)又は第4の蓄電デバイス用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることが更に好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【0078】
〔第1の蓄電デバイス(リチウム電池)〕
本発明に係る第1の蓄電デバイスであるリチウム電池とは、リチウム一次電池及びリチウム二次電池の総称であり、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
【0079】
(正極活物質)
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、及びニッケルからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独で用いるか又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiCo1-xMxO2(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、及びCuからなる群より選ばれる1種又は2種以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、Li2MnO3とLiMO2(Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体、及びLiNi1/2Mn3/2O4からなる群より選ばれる1種又は2種以上がより好適である。また、LiCoO2とLiMn2O4、LiCoO2とLiNiO2、LiMn2O4とLiNiO2のように併用してもよい。
【0080】
高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、一般的に、充電時における電解液との反応により高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
特にNiを含む正極活物質を使用すると、一般的に、Niの触媒作用により正極表面での非水溶媒の分解が起き、電池の抵抗が増加しやすい傾向にある。特に高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。特に、正極活物質中の全遷移金属元素の原子濃度に対するNiの原子濃度の割合が、10atomic%を超える正極活物質を用いた場合に上記効果が顕著になるので好ましく、20atomic%以上が更に好ましく、30%以上が特に好ましい。具体的には、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2等からなる群より選ばれる1種以上が好適に挙げられる。
【0081】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれる1種以上含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4、及びLiFe1-xMnxPO4(0.1<x<0.9)等が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等からなる群より選ばれる1種以上の元素で置換したり、又はこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePO4及びLiMnPO4が好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
リチウム含有オリビン型リン酸塩は、安定したリン酸(PO4)構造を形成し、充電時の熱安定性に優れるため、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上することができる。
【0082】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、Cu2O、Ag2O、Ag2CrO4、CuS、CuSO4、TiO2、TiS2、SiO2、SnO、V2O5、V6O12、VOx、Nb2O5、Bi2O3、Bi2Pb2O5,Sb2O3、CrO3、Cr2O3、MoO3、WO3、SeO2、MnO2、Mn2O3、Fe2O3、FeO、Fe3O4、Ni2O3、NiO、CoO3、CoO等の、1種もしくは2種以上の金属元素の酸化物あるいはカルコゲン化合物、SO2、SOCl2等の硫黄化合物、一般式(CFx)nで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)等が挙げられる。これらの中でも、MnO2、V2O5、及びフッ化黒鉛等が好ましい。
【0083】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、及びサーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1~10質量%が好ましく、特に2~5質量%が好ましい。
【0084】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1-メチル-2-ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃~250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm3以上であり、より好ましくは、3g/cm3以上であり、更に好ましくは3.6g/cm3以上である。なお、上限としては、4g/cm3以下が好ましい。
【0085】
(負極活物質)
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛等〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物(SiOx:x<2)、ケイ素合金(Si-M合金:Mは、Al、Ni、Cu、Fe、Ti及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。)、及びLi4Ti5O12等のチタン酸リチウム化合物等からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335~0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
【0086】
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm3以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と正極活物質からの金属溶出量の改善と、充電保存特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
【0087】
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
高結晶性の炭素材料を使用すると、一般的に、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では高温かつ高電圧環境下での連続充電特性が良好となる。
【0088】
また、負極活物質としてのリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、又はBa等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。これらの中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0089】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃~250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm3以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm3以上であり、特に好ましくは1.7g/cm3以上である。なお、上限としては、2g/cm3以下が好ましい。
【0090】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0091】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層又は積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0092】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも高温かつ高電圧環境下での連続充電特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることができるが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることができる。電流値については特に限定されないが、通常0.1~30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、-40~100℃、好ましくは-10~80℃で充放電することができる。
【0093】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0094】
〔第2の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)〕
本発明に係る第2の蓄電デバイスは、本発明の非水電解液を含み、電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この蓄電デバイスに用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
【0095】
〔第3の蓄電デバイス〕
本発明に係る第3の蓄電デバイスは、本発明の非水電解液を含み、電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。この蓄電デバイスに用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
【0096】
〔第4の蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ)〕
本発明に係る第4の蓄電デバイスは、本発明の非水電解液を含み、負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気二重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6等のリチウム塩が含まれる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の化合物を用いた電解液の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
実施例1~45、比較例1~4
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2 92質量%、アセチレンブラック(導電剤)5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cm3であった。
また、ケイ素(単体)5質量%、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)90質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1-メチル-2-ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに裁断し負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cm3であった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。
そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1~5に記載の組成の非水電解液を加えて、ラミネート型電池を作製した。
なお、比較例4で使用したイオン液体は、特開2008-123898号の合成例2により製造したものであり、その構造は以下のとおりである。
【0099】
【0100】
〔高温連続充電特性の評価〕
<初期放電容量>
上記の方法で作製したラミネート電池を用いて、25℃の恒温槽中、0.2Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.3Vまで7時間充電し、0.2Cの定電流下、終止電圧2.5Vまで放電することで初期放電容量を求めた。その後、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.3Vまで3時間充電し、1Cの定電流下、終止電圧2.5Vまで放電した。この1Cの定電流で放電した時の平均の放電電圧を初期の平均放電電圧とした。
【0101】
<連続充電試験>
次に、このラミネート型電池を60℃の恒温槽中、0.2Cの定電流で4.3Vまで充電した後、定電圧に切り替えて連続充電を7日間行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、1Cの定電流下、終止電圧2.5Vまで放電した。
引き続き、25℃の恒温槽中、0.2Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.3Vまで7時間充電し、0.2Cの定電流下、終止電圧2.5Vまで放電することで連続充電後の回復放電容量を求めた。連続充電後の放電容量回復率を以下の式により求めた。
放電容量回復率(%)=(回復放電容量/初期放電容量)×100
【0102】
<連続充電後の平均放電電圧低下率>
引き続き、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.3Vまで3時間充電し、1Cの定電流下、終止電圧2.5Vまで放電した。この1Cの定電流で放電した時の平均の放電電圧を連続充電後の平均放電電圧として、以下の式により平均放電電圧変化率を算出した。
平均放電電圧変化率(相対値)(%)=(初期の平均放電電圧-連続充電後の平均放電電圧)/(比較例1の初期の平均放電電圧-比較例1の連続充電後の平均放電電圧)×100
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
上記実施例1~45のリチウム二次電池は何れも、本願発明の添加剤を含まない比較例1や一般式(I)で表される化合物のみを含む比較例2と比べて、高温保存後の容量回復率及び平均放電電圧低下率が顕著に向上している。
また比較例3に示すように、特開2008-123898号(特許文献1)に記載のメチルシクロヘキシルカーボネート及びアリルメチルカーボネートを添加した非水電解液では高温保存後の容量回復率及び平均放電電圧低下率の向上は不十分であった。
加えて特許文献1に記載のシクロヘキシルメチルカーボネートとイオン液体を含む電解液においても同じく高温保存後の容量回復率及び平均放電電圧低下率の向上は不十分であった。以上より、本発明の効果は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、本願発明の特定量の一般式(I)で表される化合物とフッ素原子含有環状カーボネート及び不飽和結合含有環状カーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を組み合わせて含有させた場合に特有の効果であることが判明した。
【0109】
更に、本発明の非水電解液は、リチウムイオンキャパシタ、リチウム空気電池等の高温保存後の容量回復率及び平均放電電圧低下率を改善する効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の非水電解液を使用すれば、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性に優れた蓄電デバイスを得ることができる。特にハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、バッテリー電気自動車等に搭載される蓄電デバイス用の非水電解液として使用される場合、高温かつ高電圧環境下での連続充電特性を向上できる蓄電デバイスを得ることができる。