(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックコーティングガラス物品およびそれをレーザー加工する方法
(51)【国際特許分類】
C03C 23/00 20060101AFI20220601BHJP
C03C 17/23 20060101ALI20220601BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20220601BHJP
G02F 1/1523 20190101ALI20220601BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20220601BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220601BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C03C23/00 D
C03C17/23
C03C27/06 101H
G02F1/1523
G02F1/15 505
B23K26/53
E06B9/24 C
(21)【出願番号】P 2019517233
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(86)【国際出願番号】 US2017055533
(87)【国際公開番号】W WO2018067928
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】509335373
【氏名又は名称】ビュー, インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】195 S. Milpitas Blvd., Milpitas, CA 95035 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】エンゴム,ムサ
(72)【発明者】
【氏名】パステル,デイヴィッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ピエヒ,ギャレット アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー,ロバート スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,チャド マイケル
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520501(JP,A)
【文献】国際公開第2016/115017(WO,A1)
【文献】特表2015-508189(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050762(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0327499(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0286458(US,A1)
【文献】特表2011-526378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0177028(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 23/00
C03C 17/00
C03C 27/06
G02F 1/1523
G02F 1/15
B23K 26/53
B23K 26/36
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ガラス基板であって、
i.第一表面、
ii.それに対向する第二表面、および
iii.1つまたは複数の端部であって、該1つまたは複数の端部のうちの少なくとも1つまたは複数が、レーザー変質された端部を含む、1つまたは複数の端部
を含むガラス基板と、
b.エレクトロクロミックコーティングであって
i.該第二表面の少なくとも一部の上に配置され、
ii.それぞれが輪郭を有する
第一領域および第二領域を含む、
エレクトロクロミックコーティングと、
を含み、
該
第一領域および第二領域が
、0.1μmか
ら25μmの幅を有するレーザー変質され
た線によって分離され
、
前記第二表面におけるコーティングされた部分が、第一領域および第二領域を含み、ガラス物品への電圧の印加の際に、該第一領域が、該第二領域の第二可視光透過率より低い第一可視光透過率を有する、エレクトロクロミックガラス物品。
【請求項2】
前記エレクトロクロミックコーティングが酸化タングステンを含む、請求項1記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【請求項3】
前記
第一領域および第二領域が
、レーザー損傷されていない、請求項1または2記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【請求項4】
前記レーザー変質され
た線に近接する、前記ガラス基板の前記第二表面が
、レーザー損傷されておらず、
前記
第一領域および第二領域の少なくとも1つ
の領域の前記輪郭が、非直線状である、請求項1~3のいずれか一項記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【請求項5】
(i)前記レーザー
変質された
線が、FWHMにおいて10
-10秒から10
-15秒のパルス幅のレーザーによって形成された連続線であり
;
(ii)前記ガラス物品が
、0.1mmか
ら10mmの範囲の厚さを有するガラスシートを含む、
請求項1~4のいずれか一項記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【請求項6】
前記
第一領域および第二領域のうちの1つが、前記ガラス基板の前記1つまたは複数の端部に近接する、前記第二表面の領域を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【請求項7】
(i)前記ガラス基板の前記1つまたは複数の端部に近接する前記
レーザー変質された線が
、0.1mm未満の幅を有するか;または(ii)該ガラス基板の該1つまたは複数の端部に近接する該
レーザー変質された線が、ガラス物品における前記コーティングされた部分
の5%以下を占める、請求項6記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【請求項8】
第一表面と、それに対向する第二表面と、該第二表面
の全ての上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、
該エレクトロクロミックコーティングが、該ガラス物品の少なくとも1つの端部に近接するレーザー損傷された周辺領域を含み、該レーザー損傷された周辺領域が
、0.1mm未満の幅を有
し、
前記第二表面におけるコーティングされた部分が、第一領域および第二領域を含み、
ガラス物品への電圧の印加の際に、該第一領域が、該第二領域の第二可視光透過率より低い第一可視光透過率を有する、ガラス物品。
【請求項9】
前記レーザー損傷された周辺領域が、ガラス物品の前記第二表面
の5%以下を占める、請求項8記載のガラス物品。
【請求項10】
(i)前記少なくとも1つの端部が、直線状の輪郭または湾曲した輪郭を有し
;
(ii)前記ガラス物品が
、0.1mmか
ら10mmの範囲の厚さを有するガラスシートを含む、
請求項8または9記載のガラス物品。
【請求項11】
(i)前記第一および第二領域が、1つまたは複数のレーザー線を含む線によって分離され;(ii)前記輪郭が、直線状であるか、または湾曲している、請求項10記載のガラス物品。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載のエレクトロクロミックガラス物品を含む絶縁ガラスユニット。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載のガラス物品を含む絶縁ガラスユニット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年10月7日に出願された米国特許出願第15/288,071号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、エレクトロクロミックコーティングガラス物品、より詳細には、そのような物品をレーザー加工する方法に関する。本開示はさらに、エレクトロクロミック層でコーティングされたガラス基板を含む絶縁ガラスユニットにも関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミックフィルムでコーティングされたガラス基板は、建築および自動車用途を含む様々な用途において有用であり得る。例えば、エレクトロクロミックフィルムは、室内または車両内における光強度および/または光吸収を変えるために使用され得る。絶縁ガラスユニット(IGU)は、ガラスシートの間にキャビティを形成する周囲シールを伴う2つのガラスシートを含み得、当該キャビティは、当該IGUのエネルギーレーティングを改良するために、絶縁ガス、例えば、アルゴンなど、で満たされ得る。ある特定の用途において、IGUにおけるガラスシートの一方は、エレクトロクロミック層でコーティングされ得る。そのようなコーティングされたIGUは、追加的に、当該エレクトロクロミック層に電圧を印可するための1つまたは複数の構成要素、例えば、バスバーなど、を含み、その結果、当該IGUにより、様々な波長および/または熱の透過率を下げ得る着色効果を提供し得る。
【0004】
エレクトロクロミック層を含むIGUまたは任意の他のガラス物品の製造の際、当該エレクトロクロミック層は、切断ステップおよび研磨ステップの際に生じる湿気および粒子に対するこれらのフィルムの影響の受けやすさに起因して、これらのステップの後にガラスに適用され得る。例えば、研磨プロセスの際に使用される水性冷却剤に対するエレクトロクロミックフィルムの暴露は、結果として、フィルムの膨れおよび/または破壊を生じ得、それにより、それらの機能および/または美的品質を妨げる。そのため、従来のIGU製造では、ガラスシートは、エレクトロクロミックフィルムで大きなガラス基板をコーティングした後に当該コーティングされた基板をサイズに切断する(「コーティング-および-切断(coat-and-cut)」)のではなく、多くの場合、最初に、所望のIGUの形状およびサイズに切断され、次いで、エレクトロクロミックフィルムでコーティングされ得る(「切断-および-コーティング(cut-and-coat)」)。
【0005】
しかしながら、当該切断-および-コーティングプロセスは、結果として、締付固定に起因して、エレクトロクロミック層でコーティングされていない、または均一にコーティングされていない、かなりのエリアを有するガラス基板を生じ得る。例えば、当該ガラス基板をコーティング装置の適切な位置に位置決めし保持するための構成要素は、当該ガラス基板を端から端まで(edge-to-edge)コーティングする能力を妨げ得る。さらに、当該締付固定は、各ガラス基板の形状および/またはサイズに対して特有でなければならず、ならびに異なるガラス形状および/またはサイズに対応するように調節されなければならないため、当該コーティング-および-切断プロセスは、低い製造融通性を有し得る。対照的に、コーティング-および-切断プロセスは、大きなガラス基板に対して単一の標準的締付固定を実践することができ、当該ガラス基板は、それに続いて、サイズに切断することができる(コーティング-および-切断)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、エレクトロクロミックフィルムでコーティングされたガラス基板を製造する方法であって、当該エレクトロクロミックフィルムを実質的に損傷せず、および/または結果として、コーティングされていない領域または不均一にコーティングされた領域を含むガラス基板を生じない方法、を提供することは有利であろう。さらに、そのようなエレクトロクロミックコーティングガラス物品を製造する方法であって、高い製造融通性および/または低い製造コストを示すことができる方法、例えば、一般的形状および/またはサイズを有するガラス基板をコーティングし、続いて、所望の用途のために当該ガラスを指定された形状および/またはサイズに切断することができる方法、を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、様々な実施形態において、第一表面と、それに対向する第二表面と、当該第二表面の少なくとも一部の上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、当該ガラス物品への電圧の印可の際に、当該ガラス基板におけるコーティングされた部分の第一領域が、当該コーティングされた部分の第二領域の第二可視光透過率より低い第一可視光透過率を有する、ガラス物品に関する。いくつかの実施形態により、電圧の印可の際、当該第一領域は着色され得、当該第二領域は着色され得ない。様々な実施形態において、当該第一および第二領域は、複数の欠陥スポットまたは欠陥線を含む輪郭によって分離され得る。いくつかの実施形態において、当該第一または第二表面に対して直角に見た場合に、当該欠陥線は、直線状であり得るかまたは湾曲し得る。追加の実施形態により、当該第一または第二表面に対して直角に見た場合に、当該第一および/または第二領域は、ガラス物品上のパターンを含み得る。
【0008】
さらに、本明細書において、第一表面と、それに対向する第二表面と、当該第二表面の実質的に全ての上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、当該エレクトロクロミックコーティングが、当該ガラス物品の少なくとも1つの端部に近接する、レーザー損傷された周辺領域を含み、当該レーザー損傷された周辺領域が、約10mm未満、約1mm未満、または約0.1mm未満の幅を有する、ガラス物品が開示される。さらに、そのようなガラス物品を含む、絶縁ガラスユニットも、本明細書において開示される。
【0009】
態様(1)において、本開示は、第一表面と、それに対向する第二表面と、1つまたは複数の端部とを有するガラス基板を含むエレクトロクロミックガラス物品であって、当該1つまたは複数の端部の少なくとも1つまたは複数が、レーザー変質された端部と;当該第二表面の少なくとも一部分の上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを含み、ならびに、それぞれが輪郭を有する少なくとも2つの電気的に不連続な領域を含み、当該2つの電気的に不連続な領域が、約0.1μmから約25μmの幅を有するレーザー変質された不連続線によって分離される、エレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(2)において、本開示は、上記エレクトロクロミックコーティングが酸化タングステンを含む、態様(1)に記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(3)において、本開示は、上記電気的に不連続な領域が、実質的にレーザー損傷されていない、態様(1)または(2)に記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(4)において、本開示は、上記レーザー変質された不連続線に近接する、上記ガラス基板の上記第二表面が、実質的にレーザー損傷されてない、態様(1)~(3)のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(5)において、本開示は、上記少なくとも2つの電気的に不連続な領域の少なくとも1つ領域の輪郭が非直線状である、態様(4)に記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(6)において、本開示は、上記レーザー切断された不連続が、FWHMにおいて10-10秒から10-15秒のパルス幅のレーザーによって形成された連続線である、態様(1)~(5)のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(7)において、本開示は、上記第二領域が、上記第一領域におけるパターンを含むか、または当該第一領域が、当該第二領域におけるパターンを含む、態様(1)~(6)のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(8)において、本開示は、約0.1mmから約10mmの範囲の厚さを有するガラスシートを含む、態様(1)~(7)のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(9)において、本開示は、上記少なくとも2つの電気的に不連続な領域のうちの1つが、上記ガラス基板の上記1つまたは複数の端部に近接する、上記第二表面の領域を含む、態様(1)~(8)のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(10)において、本開示は、上記ガラス基板の1つまたは複数の端部に近接する上記電気的に不連続な領域が、約0.1mm未満の幅を有する、態様(9)に記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。態様(11)において、本開示は、上記ガラス基板の上記1つまたは複数の端部に近接する上記電気的に不連続な領域が、上記ガラス物品における上記コーティングされた部分の約5%以下を占める、態様(9)に記載のエレクトロクロミックガラス物品を提供する。
【0010】
態様(12)において、本開示は、第一表面と、それに対向する第二表面と、当該第二表面の実質的に全ての上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、当該エレクトロクロミックコーティングが、当該ガラス物品の少なくとも1つの端部に近接する、レーザー損傷された周辺領域を含み、当該レーザー損傷された周辺領域が、約0.1mm未満の幅を有する、ガラス物品を提供する。態様(13)において、本開示は、上記レーザー損傷された周辺領域が、上記ガラス物品の上記第二表面の約5%以下を占める、態様(12)に記載のガラス物品を提供する。態様(14)において、本開示は、上記少なくとも1つの端部が、直線状の輪郭または湾曲した輪郭を有する、態様(12)または(13)に記載のガラス物品を提供する。態様(15)において、本開示は、約0.1mmから約10mmの範囲の厚さを有するガラスシートを含む、態様(12)~(14)のいずれか1つに記載のガラス物品を提供する。態様(16)において、本開示は、上記第二表面におけるコーティングされた部分が、第一領域および第二領域を含み、上記ガラス物品への電圧の印可の際に、当該第一領域が、当該第二領域の第二可視光透過率より低い第一可視光透過率を有する、態様(12)~(15)のいずれか1つに記載のガラス物品を提供する。態様(17)において、本開示は、上記第一および第二領域が、1つまたは複数のレーザー線を含む不連続線によって分離される、態様(16)に記載のガラス物品を提供する。態様(18)において、本開示は、上記輪郭が、直線状であるかまたは湾曲している、態様(17)に記載のガラス物品を提供する。
【0011】
態様(19)において、本開示は、態様(1)~(11)のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を含む絶縁ガラスユニットを提供する。
【0012】
態様(20)において、本開示は、態様(12)~(18)のいずれか1つに記載のガラス物品を含む絶縁ガラスユニットを提供する。
【0013】
本開示のさらなる特徴および利点について、以下の詳細な説明において述べ、ある程度、その説明から当業者には容易に明らかとなるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含め、本明細書において説明されるような当該方法を実践することによって認識されるであろう。
【0014】
上述の全般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、本開示の様々な実施形態を提示し、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概説または枠組みを提供することを意図することは理解されるべきである。添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなすものである。図面は、本開示の様々な実施形態を例示しており、説明と共に本開示の原理および作用を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読む場合にさらに理解することができ、可能な場合、同じ番号は、同じ構成要素を示しており、なお、添付の図は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことは理解されたい。
【
図1A】複数の欠陥線を含む輪郭を有するガラス基板を示す。
【
図1B】複数の欠陥線を含む輪郭を有するガラス基板を示す。
【
図2A】焦線に沿ってガラス基板に吸収を誘起するためのレーザービーム焦線の位置決めを示す。
【
図2B】焦線に沿ってガラス基板に吸収を誘起するためのレーザービーム焦線の位置決めを示す。
【
図3】本開示の様々な実施形態による、レーザービームをレーザービーム焦線へと集光するための光学アセンブリを示す。
【
図4A】本開示のある特定の実施形態による、エレクトロクロミックコーティングされた領域およびコーティングされていない領域を含むガラス基板を示す。
【
図4B】本開示のある特定の実施形態による、エレクトロクロミックコーティングされた領域およびコーティングされていない領域を含むガラス基板を示す。
【
図4C】本開示のある特定の実施形態による、エレクトロクロミックコーティングされた領域およびコーティングされていない領域を含むガラス基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
方法
本明細書において開示されるガラス物品は、ガラスの上にコーティングされたエレクトロクロミック層に欠陥または不連続性を誘起する1つまたは複数の方法との任意選択による併用において、材料をドリル加工、切断、分離、穿孔、またはその他の方法で加工するために、ガラスに小さい(例えば、100マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、または1マイクロメートル以下)の「穴」を作製するための1つまたは複数の方法を使用して製造することができる。ある特定の実施形態において、超短(すなわち、FWHMにおいて10-10秒から10-15秒のパルス幅、例えば、ナノ秒からフェムト秒)パルスレーザービーム(例えば、1064nm、532nm、355nm、または266nmなどの波長において作動する)は、ガラスの表面またはガラス内において焦点の領域に欠陥を作り出すことができる閾値を超えるエネルギー密度に集光することができる。当該プロセスを繰り返すことにより、所定の経路または輪郭に沿って配置された一連のレーザー誘起された欠陥を作り出すことができる。いくつかの実施形態において、当該レーザー誘起された欠陥線は、お互いが十分に接近した状態で離間することができ、それにより、当該ガラス内の機械的に弱い制御された領域を作り出すことができ、任意選択により、当該形成された輪郭に沿って当該材料を破砕または分離(機械的または熱的に)するために使用される。例えば、超短パルスレーザーとの接触後、当該材料は、当該ガラスを1つまたは複数の部分に分離するために、第二レーザービーム、例えば、二酸化炭素(CO2)レーザーなどの赤外線レーザーまたは他の熱応力の供給源に接触され得る。
【0017】
様々な実施形態により、1つまたは複数の垂直の断層または欠陥の、スポット、一連のスポット、または線をガラス基板に作製することができ、それらは、最も少ない抵抗の輪郭または経路を描くことができ、それらに沿って、所望の形状を形成するために基板を分離することができ、その場合、当該輪郭は、ガラス基板の第一表面からそれに対向する第二表面まで広がる複数の欠陥線または領域を含む。加工される当該基板は、基板の厚さの全てまたは一部を貫く高アスペクト比の焦線へと集束され得る超短パルスレーザービーム(例えば、パルス幅<100ピコ秒;波長≦1064nm)を照射され得る。
【0018】
この量の高エネルギー密度内で、当該基板は、非線形効果によって変質され得、当該効果は、当該高光強度によって引き起こすことができる。この強度閾値未満では、当該基板は、当該レーザー照射に対して透過性であり得、欠陥線を生じるように変質され得ない。本明細書において使用される場合、基板吸収が当該レーザーの波長において基板深さの1mmあたり約10%未満、例えば、約5%未満、または約1%未満の場合、基板は、当該レーザー波長に対して「実質的に透過性」である。所望の輪郭または経路の上をレーザーをスキャンすることにより、当該基板に1つまたは複数の狭い欠陥線を作製することができ、当該輪郭は、周囲または形状を形成することができ、それに沿って、当該ガラス基板を分離することができ、および/または当該輪郭は、コーティングされた基板の着色された領域または着色されていない領域を形成することができる。
【0019】
当該超短パルスレーザーは、ガラスなどの実質的に透明な材料において多光子吸収(「MPA」)を生じさせることができる。MPAは、分子をある状態、通常、基底状態、からより高いエネルギー電子状態へと励起するための、同じまたは異なる周波数の2つ以上の光子の同時吸収である。当該分子における関与するより低いエネルギー状態とより高いエネルギー状態の間のエネルギー差は、当該2つの光子のエネルギーの合計に等しい。誘起吸収とも呼ばれるMPAは、二次または三次プロセスであり得、例えば、線形吸収より数桁弱い。それは、例えば、誘起吸収の強度が光強度の二乗に比例し得る点において線形吸収とは異なっており、したがって、それは、非線形光学プロセスである。
【0020】
当該パルスレーザービームは、基板が実質的に透過性であるもの、例えば、約1064nm以下の波長、例えば、532ナノメートル、355ナノメートル、または266ナノメートルなど、から選択される波長を有し得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。当該パルスレーザーに対する例示的出力レベルは、いくつかの実施形態において、約10Wから約150W、例えば、約25Wから約125W、または約50Wから約100Wなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。様々な実施形態により、当該パルスレーザービームは、10ナノ秒未満、例えば、約100ピコ秒未満、のパルス持続時間を有することができる。いくつかの実施形態において、当該パルスレーザービームは、約1ピコ秒超から約100ピコ秒未満、例えば、約5ピコ秒から約50ピコ秒、約10ピコ秒から約30ピコ秒、または約15ピコ秒から約20ピコ秒などの範囲のパルス持続時間を有し、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。追加の実施形態において、当該パルスレーザービームのパルス繰返し率は、約1kHzから約4MHz、例えば、約10kHzから約650kHz、約50kHzから約500kHz、約100kHzから約400kHz、または約200kHzから約300kHzなどの範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0021】
当該パルスレーザービームは、いくつかの実施形態において、シングルパルスモードにおいて、または他の実施形態では、バーストモードにおいて作動し得る。後者の実施形態では、パルスバーストは、バーストあたり2つ以上のパルス、例えば、3、4、5、10、15、20、25、またはそれ以上のパルスを含むことができ、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。パルスバーストにおける個々のパルスの間の持続時間は、例えば、約1ナノ秒から約50ナノ秒、例えば、約10ナノ秒から約30ナノ秒、または約20ナノ秒から約40ナノ秒など、の範囲であってもよく、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。パルスバーストの間の持続時間は、ある特定の実施形態において、約1マイクロ秒から約20マイクロ秒、例えば、約5マイクロ秒から約10マイクロ秒など、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。したがって、当該バルスレーザービームのバースト繰返し周波数は、約1kHzから約200kHz、例えば、約20kHzから約150kHz、または約50kHzから約100kHzなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0022】
バーストモードにおいて、バースト当たりの平均レーザー出力は、約50μJ/バーストから約1000μJ/バースト、例えば、約100μJ/バーストから約750μJ/バースト、約200μJ/バーストから約500μJ/バースト、または約250μJ/バーストから約400μJ/バーストなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。追加の実施形態により、所定の材料に適用される当該平均レーザー出力は、材料1mmあたりのμJ/バーストとして測定することができ、例えば、所定の材料(例えば、ガラス)の単位厚さ(mm)当たり約40μJ/バースト超、例えば、約40μJ/バースト/mmから約2500μJ/バースト/mm、約100μJ/バースト/mmから約2000μJ/バースト/mm、約250μJ/バースト/mmから約1500μJ/バースト/mm、または約500μJ/バースト/mmから約1000μJ/バースト/mmなどの範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。例えば、0.1~0.2mm厚のCorning Eagle XG(登録商標)ガラス基板は、1000~2000μJ/バースト/mmの例示的レーザー出力を与えるために200μJ/バーストのパルスレーザーを使用して加工することができる。別の非限定的な実施例において、0.5~0.7mm厚のCorning 「Eagle XG」ガラス基板は、570~1400μJ/バースト/mmの例示的レーザー出力を与えるために400~700μJ/バーストのパルスレーザーを使用して加工することができる。
【0023】
非限定的な実施形態により、当該ガラス基板およびパルスレーザービームは、お互いに対して平行移動され得、例えば、輪郭を作り出すために、当該ガラス基板はパルスレーザービームに対して平行移動され得、および/または当該パルスレーザービームは当該ガラス基板に対して平行移動され得る。特定の一実施形態において、当該ガラス基板は平行移動され、当該パルスレーザービームがそれに対して適用され、その一方で、当該パルスレーザーそれ自体も平行移動される。例えば、ロールツーロール加工では、当該ガラス基板は、非常に長く、例えば、数十メートル以上の長さであり得、レーザー加工の間に実質的に連続的に平行移動される。当該レーザーは、当該ガラス基板に1つまたは複数の輪郭を作製するために、適切な速度において、および適切なベクトルに沿って平行移動される。当該基板または当該レーザーのどちらかは、この加工の間にそれらの速度を変えてもよい。
【0024】
当該輪郭は、その後の分離またはその後の電圧の適用(例えば、着色)のどちらかによって作製される形状の周囲をトレースまたは画定し得る複数の欠陥線を含むことができる。当該平行移動またはスキャンの速度は、例えば、レーザー出力および/または繰り返し率などを含む様々なレーザー加工パラメータに依存し得る。平行移動またはスキャンの例示的速度は、例えば、約1mm/秒から約5000mm/秒、例えば、約100mm/秒から約4000mm/秒、約200mm/秒から約3000mm/秒、約300mm/秒から約2500mm/秒、約400mm/秒から約2000mm/秒、または約500mm/秒から約1000m/秒など、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0025】
当該パルスレーザービームの繰返し率および/またはスキャン速度は、欠陥線の間に所望の周期性(またはピッチ)を作り出すために変更することができる。いくつかの実施形態において、当該欠陥線は、約0.5μmから約25μm、例えば、約1μmから約20μm、約2μmから約15μm、約3μmから約12μm、約4μmから約10μm、または約5μmから約8μmなど、において離間され得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。例えば、300mm/秒の直線状の切断(またはスキャン)速度の場合、欠陥線の間の3μmの周期性は、少なくとも100kHzのバースト繰返し率を有するパルスレーザーに対応する。同様に、600mm/秒のスキャン速度の場合、欠陥線の間の3μmの周期性は、少なくとも200kHzのバースト繰返し率を有するパルスレーザーに対応する。
【0026】
さらに、当該欠陥線の寸法は、例えば、レーザー集光パラメータ、例えば、レーザービーム焦線の長さおよび/またはレーザービーム焦線の平均スポット直径など、によって影響され得る。当該パルスレーザーは、例えば、比較的高いアスペクト比(長さ:直径)を有する1つまたは複数の欠陥線を作製するために使用することができ、それにより、いくつかの実施形態において、当該基板の第一表面からそれに対向する第二表面まで延在する、非常に薄く長い欠陥線を作製することができる。そのような欠陥線は、原則として、単一のレーザーパルスによって作製することができ、または追加のパルスを使用して、影響を受ける領域を増やすことができる(例えば、欠陥線の長さおよび/または幅の増加)。
【0027】
概して
図1A~Bに示されるように、エレクトロクロミック層150を有するガラス基板130を切断する方法は、パルスレーザー140を使用して、加工される基板に複数の欠陥線120を含む輪郭または断層線110を作製するステップを含み得る。当該欠陥線120は、例えば、当該ガラスシートの主要な(平坦な)表面a、bに対してほぼ直交して、当該ガラス基板の厚さを通って延在し得る。直線状の輪郭、例えば、
図1Aに示される輪郭110など、は、一次元においてガラス基板130および/またはパルスレーザー140を平行移動させることによって作製することができ、その一方で、湾曲した輪郭または非直線状の輪郭も、二次元においてガラス基板および/またはパルスレーザーを平行移動させることによって作製することができる。
図1Bに示されるように、ガラス基板130は、次いで、2つの別々の部分130aおよび130bを作製するために輪郭110に沿って分離することができ、その場合、分離された端部または表面は、輪郭110によって形成され、各部分は、エレクトロクロミック層150を有する。
【0028】
図2A~Bを参照すると、基板をレーザー加工する方法は、パルスレーザービーム2を、ビーム伝搬方向に沿って方向付けされたレーザービーム焦線2bへと集光するステップを含み得る。レーザー(図示されず)は、パルスレーザービーム2を放ち得、当該パルスレーザービーム2は、光学アセンブリ6に入射する部分2aを有し得る。当該光学アセンブリ6は、当該レーザービームの当該入射部分2aを、ビーム方向に沿った、長さLおよび直径Dを有し得るレーザービーム焦線2bへと変換し得る。基板1は、レーザービーム焦線2bと少なくとも部分的に重なるように、ビーム経路に位置決めされ得、したがって、当該レーザービーム焦線2bは、基板1内へと向けられ得る。第一表面1aは、光学アセンブリ6に面するように位置決めされ得、その一方で、対向する第二表面1bは、光学アセンブリ6に対して反対側を向くように位置決めされ得、またその逆も同様であり得る。当該基板の厚さdは、表面1aと1bとの間において垂直に延び得る。
【0029】
図2Aに示されるように、基板1は、光学アセンブリ6によって発生されたレーザービームおよび焦線2bの縦軸に対して垂直に配置され得る。様々な実施形態(図に示されるような)において、当該焦線2bは、基板1の表面1aの手前で始まり得、表面1bを越えて延び得ない。当然のことながら、他の焦線の方向付けを使用することもでき、それにより、当該焦線2bは、表面1aの後で始まり得、および/または表面1bを越えて延びる(図示されず)。レーザービーム焦線2bに沿って十分なレーザー強度を想定する場合、レーザービーム焦線および基板が重なるエリアは、非線形多光子またはレーザーエネルギーの誘起吸収によって変質され得、その場合、強度は、長さlの部分、すなわち、長さlの線状焦点、の上にレーザービーム2を集光することによって発生させることができる。
【0030】
当該誘起吸収は、部分2cに沿って、基材材料に欠陥線の形成を生じることができる。いくつかの実施形態において、当該欠陥線は、微視的な一連の(例えば、100nm<直径<10μm)「穴」(穿孔または欠陥線とも呼ばれる)であり得る。様々な実施形態により、個々の穿孔は、数百kHz(1秒あたり数十万の穿孔)の速度において作製することができる。これらの穿孔は、当該基板およびパルスレーザーをお互いに対して平行移動させることにより、所望の空間的分離(周期性またはピッチとも呼ばれる)においてお互いに隣接して作製することができる。欠陥線の周期性は、所望に応じて、当該基板の分離を容易にするように、および/または所望の着色効果を生じさせるように、選択することができる。当該欠陥線の間の例示的周期性は、例えば、約0.5μmから約25μm、例えば、約1μmから約20μm、約2μmから約15μm、約3μmから約12μm、約4μmから約10μm、または約5μmから約8μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0031】
ある特定の非限定的な実施形態において、当該欠陥線は、第一表面1aからそれに対向する第二表面1bまで延在する、例えば、当該基板1の厚さd全体にわたって延在する、「貫通孔」または開口チャネルであり得る。欠陥線の形成は、
図2Aの長さLを有する部分2cによって示されるように、当該基板の厚さの一部分にわたって延びることができる。したがって、部分2cの長さLは、当該レーザービーム焦線2bと基板1と間の重なりの長さ、および結果として得られる欠陥線の長さ、に対応する。部分2cの平均直径Dは、およそレーザービーム焦線2bの平均直径に対応し得る。
図2Bを参照すると、
図2Aにおけるレーザービーム2に晒された基板1は、レーザーエネルギーの誘起吸収により、最終的に膨張するであろうし、それにより、当該材料における対応する誘起張力が、微小亀裂形成を引き起こし得る。当該誘起張力は、様々な実施形態により、表面1aにおいて最も大きくあり得る。
【0032】
本明細書において定義される場合、欠陥線の幅は、当該ガラス基板に作製された開口チャネルの内側の幅または通気孔の直径に対応する。例えば、いくつかの実施形態において、当該欠陥線の幅は、約0.1μmから約5μm、例えば、約0.25μmから約4μm、約0.5μmから約3.5μm、約1μmから約3μm、または約1.5μmから約2μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。欠陥線の幅は、いくつかの実施形態において、レーザービーム焦線の平均スポット直径と同じ程度の大きさであり得、例えば、当該レーザービーム焦線の当該平均スポット直径も、約0.1μmから約5μm、例えば、約0.25μmから約4μm、約0.5μmから約3.5μm、約1μmから約3μm、または約1.5μmから約2μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。複数の欠陥線を含む輪郭に沿ってガラス基板が分離される実施形態において、当該欠陥線は、潜在的に、分離された部分の切り口に沿って見られ得、これらの領域は、欠陥線の幅に匹敵する幅、例えば、約0.1μmから約5μm、を有し得る。
【0033】
当該パルスレーザービームは、任意の所望の長さlを有するレーザービーム焦線へと集光することができ、当該長さlは、例えば、選択された光学アセンブリの構成に応じて変えることができる。いくつかの実施形態において、当該レーザービーム焦線の長さは、例えば、約0.01mmから約100mm、例えば、約0.1mmから約50mm、約0.5mmから約20mm、約1mmから約10mm、約2mmから約8mm、または約3mmから約5mmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。様々な実施形態において、当該レーザービーム焦線の長さlは、当該基板の厚さdに対応し得、または厚さd未満であり得、または当該基板の厚さdを超え得る。そのため、いくつかの実施形態において、本明細書において開示される当該方法は、2つ以上の基板、例えば、2つ以上の基板のスタックなど、を加工または切断するために使用することができる。非限定的な実施形態により、当該パルスレーザービームは、1つまたは複数の空気ギャップが様々な位置において当該基板の間に存在する場合でさえ、一回のレーザー通過によって、約100mm以上の総厚さ、例えば、20μmから約200mmの総厚さまで、ガラス基板のスタックを穿孔することができる。例えば、各基板が0.5mm厚である、200の基板のスタックの各基板は、当該レーザーの一回の通過によって穿孔され得る。例えば、各基板がおよそ1マイクロメートル(0.001mm)厚のエレクトロクロミックフィルムを有する場合、200のそのような基板のスタックは、100.2mmの厚さ(100mmのガラスおよび0.2mmのエレクトロクロミックフィルム)を有するであろう。追加的に、いくつかの実施形態はさらに、当該ガラス基板の間に、光学的に透明で複数の層の穿孔が可能な追加のコーティングおよび/または保護材料を含んでいてもよい。そのようなコーティングとしては、これらに限定されるわけではないが、SiO2、Al2O3、ならびに有機および無機ポリマー、例えば、シロキサンなど、が挙げられる。
【0034】
当該欠陥線または複数の欠陥線は、様々な方法を使用して作製することができる。例えば、レーザービームを集光してレーザービーム焦線を作り出すために、様々な装置を使用することができる。レーザービーム焦線は、例えば、ガウス-ベッセルレーザービームプロファイルを作り出すためにアキシコンレンズにガウスレーザービームを透過させることによって発生させてもよい。ガウス-ベッセルビームは、ガウスビームよりもゆっくりと回折し得る(例えば、数十マイクロメートル以下とは対照的に、数百マイクロメートルまたは数百ミリメートルの範囲に対してシングルマイクロメートルのスポットサイズを維持し得る)。その結果、ガウス-ベッセルビームの焦点強度の深さまたは長さは、ガウスビームよりはるかに大きくあり得る。他のゆっくり回折するビームまたは回折しないビーム、例えば、エアリービームおよびベッセルビームなど、を使用してもよく、または光学素子を使用して発生させてもよい。レーザービーム焦線を発生させるための例示的光学アセンブリは、米国特許出願第14/529,520号および同第14/530,457号において提供されており、なお、当該特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。集光は、例えば、任意の様々なドーナツ形状のレーザービーム、球面レンズ、アキシコンレンズ、回折素子、または高強度の直線状領域を形成するための任意の他の好適な方法または機器などを使用して、実施することができる。非線形光学効果により基板材料の破壊を作り出すための十分な強度が得られる限り、パルスレーザーのタイプ(例えば、ピコ秒、フェムト秒など)および/またはその波長(例えば、IR、UV、緑色など)も変えることができる。
【0035】
図3は、長さlを有し、エレクトロクロミック層7を有するガラス基板1中へと向けられたレーザービーム焦線2bへとパルスレーザービーム2を集光するために使用することができる1つの例示的光学アセンブリ6を示している。当該光学アセンブリ6は、例えば、アキシコンレンズ3、コリメーティングレンズ4、および集光レンズ5を含むことができる。当該光学アセンブリにおける各レンズの焦点長は、所望の直径および/または長さを有するレーザービーム焦線を生じさせるために、変えることができる。例えば、集光レンズ5は、約10mmから約50mm、例えば、約20mmから約40mm、または約25mmから約30mmなど、の範囲の焦点長を有することができ、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。当該コリメーティングレンズ4は、同様に、約50mmから約200mm、例えば、約75mmから約150mm、または約100mmから約125mmなど、の範囲の焦点長を有し得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0036】
様々な非限定的な実施形態において、(ピコ秒またはフェムト秒の持続時間の)超短ベッセルビームを使用して、高アスペクト比の高強度領域、例えば、無テーパーレーザーマイクロチャネルなど、を作り出すために、アキシコンレンズ3を光学レンズアセンブリ6に組み入れてもよい。アキシコンは、光軸に沿った線上にスポット源を形成することができる(またはレーザービームを環状に変えることができる)、円錐形にカットされたレンズである。アキシコンおよびそれらの構成は、当業者に既知であり、例えば、約5°から約20°、例えば、約10°から約15°など、の範囲の円錐角を有し得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0037】
当該アキシコンレンズ3は、元の直径D1(例えば、約1~5mm、例えば、約2~3mmなど)を有するレーザービームを、例えば、
図2Aに示される焦線直径Dなどに対応するより小さい直径を有する、実質的に円柱形状で高アスペクト比(例えば、長い長さおよび小さい直径)の高強度領域へと集束させることができる。当該集束されたレーザービーム内に作り出された高強度は、結果として、当該レーザーの電磁場と基板との非線形相互作用を生じさせることができ、それにより、当該レーザーエネルギーが基板へと移されて、欠陥線の形成を達成する。しかしながら、レーザー強度が十分に高くないような当該基板のエリア(例えば、中央収束線の周りのエリア)では、当該基板は、当該レーザーに対して透過性であり得、そのため、当該レーザーから当該基板材料へとエネルギーを移すためのメカニズムが存在しない。そのため、非線形閾値未満のレーザー強度に晒された、ガラス基板の当該領域には、損傷または変化は存在し得ない。
【0038】
パルスレーザービームを使用して、複数の欠陥線または穿孔を含む輪郭を作製した後、当該ガラス基板は、任意選択により、第二レーザービームを使用して2つ以上の部分へと分離することができる。当該第二レーザービームは、当該輪郭の周りに熱応力ゾーンを生じさせるための熱源として使用され得、当該ゾーンは、当該欠陥線を張力下に置き得、それにより、分離を誘発させ得る。当該第二レーザービームは、当該ガラス基板が透過性でない任意の波長、例えば、赤外波長、例えば、約1064nmを超える波長など、を放射すことができる。いくつかの実施形態において、当該第二レーザービームは、約5μmを超える波長、例えば、約10μmを超える波長など、において放射することができる。好適な赤外レーザーは、例えば、CO2レーザーなどを含み得、それらは、変調されていてもよく、または無変調であってもよい。第二レーザービームの非限定的な例としては、これらに限定されるわけではないが、約10μmを超える波長、例えば、約10.2μmから約10.7μm、または約10.4μmから約10.6μmの波長など、において作動する変調CO2レーザーが挙げられ、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0039】
図1A~Bを参照すると、当該第二レーザービーム(図示されず)は、ガラス基板130の第一表面aに接触することができ、当該ガラス基板を2つ以上の部分130a、130bへと分離するために輪郭110に沿って平行移動することができる。当該第二表面bは、当該第二レーザービームに接触する表面aと反対側を向いているエレクトロクロミック層150を有し得る。当該第二レーザービームは、輪郭110上およびその周囲に、熱応力の領域を生じさせることができ、その結果、当該輪郭110に沿って当該ガラス基板130の分離を引き起こし、それにより別々の部分130a、130bを作製することができる。
【0040】
当該第二レーザービームに対する例示的出力レベルは、いくつかの実施形態において、約50Wから約500W、例えば、約100Wから約400W、約150Wから約300W、または約200Wから約250Wなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。連続(例えば、変調されない)モードにおいて作動される場合、当該第二レーザービームは、変調モードにおいて作動される場合に比べてより低い出力を有し得る。例えば、連続的な第二レーザービームは、約50Wから約300Wの範囲の出力レベルを有し得、その一方で、変調された第二レーザービームは、約200Wから約500Wの範囲の出力レベルを有し得るが、それぞれのレーザー出力は変更することができ、提示された例示的範囲に限定されない。追加の実施形態において、当該第二レーザービームの平均スポット直径は、約1mmから約10mm、例えば、約2mmから約9mm、約3mmから約8mm、約4mmから約7mm、または約5mmから約6mmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。当該第二レーザービームによって発生された熱は、結果として、当該輪郭上におよび/またはその周囲に熱応力領域を生じさせることができ、この領域は、マイクロメートルのオーダーの直径、例えば、約20μm未満、例えば、約1μmから約20μm、約2μmから約15μm、約3μmから約10μm、約4μmから約8μm、または約5μmから約6μmなどの範囲、の直径を有し得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0041】
様々な実施形態により、当該第二レーザービームは、変調され得、ならびに約200マイクロ秒未満、例えば、約1マイクロ秒超から約200マイクロ秒未満、例えば、約5マイクロ秒から約150マイクロ秒、約10マイクロ秒から約100マイクロ秒、約20マイクロ秒から約80マイクロ秒、約30マイクロ秒から約60マイクロ秒、または約40マイクロ秒から約50マイクロ秒などの範囲、のパルス持続時間を有することができ、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。様々な実施形態により、変調された第二レーザービームの立ち上がり時間は、約150マイクロ秒未満、例えば、約10マイクロ秒から約150マイクロ秒、約20マイクロ秒から約100マイクロ秒、約30マイクロ秒から約80マイクロ秒、約40マイクロ秒から約70マイクロ秒、または約50マイクロ秒から約60マイクロ秒などの範囲、であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0042】
追加の実施形態において、当該変調された第二レーザービームのパルス繰返し率(または変調速度)は、約1kHzから約100kHz、例えば、約5kHzから約80kHz、約10kHzから約60kHz、約20kHzから約50kHz、または約30kHzから約40kHzなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。非限定的な実施形態により、当該第二レーザービームパルスの間のピッチまたは周期性は、約1μmから約100μm、例えば、約5μmから約90μm、約10μmから約80μm、約20μmから約70μm、約30μmから約60μm、または約40μmから約50μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0043】
ある特定の実施形態において、当該ガラス基板の第一表面は、一回の通過において、当該第二レーザービームと接触することができ、他の実施形態では、複数回の通過を行うことができる。例えば、当該第二レーザービームは、1回通過から10回通過のどこでも、例えば、2回通過から9回通過、3回通過から8回通過、4回通過から7回通過、または5回通過から6回通過など、を使用して、ガラス基板に対して平行移動させることができ、逆もまた同様であり、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。当該平行移動速度は、約100mm/秒から約1000mm/秒、例えば、約150mm/秒から約900mm/秒、約200mm/秒から約800mm/秒、約250mm/秒から約700mm/秒、約300mm/秒から約600mm/秒、または約400mm/秒から約500mm/秒など、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0044】
別の態様は、下の基板を損傷しないかまたは基板への損傷を制限しつつ、基板上のエレクトロクロミック層に穴、空隙、ギャップ、または他の不連続性を作製するために、上記のプロセスのいずれかの使用を含む。そのような実施形態において、当該エレクトロクロミック層150は、レーザー吸収または穿入深さを変えるために使用することができる。いくつかの実施形態では、当該エレクトロクロミック層150は、当該レーザー光のその吸収を増加させるために、着色状態または暗化状態において位置され、そのような実施形態において、当該レーザーは、当該エレクトロクロミック層150の光吸収波長に近い波長に調整され得る。そのような実施形態において、当該エレクトロクロミック層の吸収は、当該エレクトロクロミック層の変質を支援し得るか、レーザー穿入深さに影響を及ぼし得るか、または当該ガラスまたはエレクトロクロミック層を変質するために必要なレーザーパルス出力全体を増加または減少させ得る。
【0045】
エレクトロクロミック層における不連続性の作製において、概して、目標は、2つ以上の電気的に分離された領域を作製することである、というのは事実である。したがって、基板上のエレクトロクロミック層の2つ以上領域を電気的に孤立させるように明確に形成された、レーザーで形成された線として定義される不連続線は、典型的には、連続的であることを必要としており、それは、エレクトロクロミック層の当該2つの領域をお互いから完全に切り離すことを意味し、ならびに、当該エレクトロクロミックフィルムの少なくとも1つの層のアブレーションを必要とし得る。当該エレクトロクロミック層に不連続を作り出すために必要な当該レーザー出力またはエネルギーレベルは、典型的には、当該ガラス基板に損傷を作り出すために必要とされるよりはるかに少ない。パルスレーザーまたは連続レーザーのどちらかを使用することができる。パルスレーザーの使用は、エレクトロクロミック材料または基板を加熱することなくエレクトロクロミック材料をアブレートすることができ、隣接する保持されたエレクトロクロミック材料、またはガラス基板の性質を損傷するのを避けることができる点において有利であり得る。さらに、当該レーザーの波長は、有利には、明るい状態または暗化された状態のいずれかにおいてエレクトロクロミックフィルムの吸収を標的にすることができる。さらに、当該ビームは、ニーズに応じて、基板を通して、または基板の反対側に集光することができる。
【0046】
パルスレーザーの場合、例示的レーザー出力は、いくつかの実施形態において、約0.25Wから約150W、例えば、約0.25Wから約50W、または約1Wから約100Wなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。様々な実施形態により、当該パルスレーザービームは、100ナノ秒から10フェムト秒、例えば、約100ピコ秒など、のパルス持続時間を有することができる。いくつかの実施形態において、当該パルスレーザービームは、約1ピコ秒超から約100ピコ秒未満の、例えば、約5ピコ秒から約50ピコ秒、約10ピコ秒から約30ピコ秒、または約15ピコ秒から約20ピコ秒などの範囲のパルス持続時間を有し、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。追加の実施形態において、当該パルスレーザービームのパルス繰返し率は、約1kHzから約4MHz、例えば、約10kHzから約650kHz、約50kHzから約500kHz、約100kHzから約400kHz、または約200kHzから約300kHzなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0047】
エレクトロクロミックにおける不連続の作製のための出力レベルははるかに低いため、連続レーザー光源も使用することができる。連続レーザーの場合の出力レベルは、主に、波長、焦点、およびビームが特定の領域に狙いを定める時間に応じて、約0.25Wから約150W、例えば、約0.25Wから約50W、または約1Wから約100Wであり、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0048】
当該不連続線は、それを作製するために使用されたレーザーとほぼ同じ幅であり得る。当該不連続線の幅は、約0.1μmから約5μm、例えば、約0.25μmから約4μm、約0.5μmから約3.5μm、約1μmから約3μm、または約1.5μmから約2μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。不連続線の幅は、いくつかの実施形態において、レーザービーム焦線の平均スポット直径と同じくらいの大きさであり得、例えば、当該レーザービーム焦線の当該平均スポット直径も、約0.1μmから約5μm、例えば、約0.25μmから約4μm、約0.5μmから約3.5μm、約1μmから約3μm、または約1.5μmから約2μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0049】
ガラス物品
本明細書において、第一表面と、それに対向する第二表面と、当該第二表面の少なくとも一部の上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、当該ガラス物品への電圧の印可の際に、当該ガラス基板におけるコーティングされた部分の第一領域が、当該コーティングされた部分の第二領域の第二可視光透過率より低い第一可視光透過率を有する、ガラス物品が開示される。
図4Aを参照すると、線Zによって分離された、当該基板の部分E(斜線部)上のエレクトロクロミック層と、コーティングされていない部分U(非斜線部)とを含む、ガラス物品の第二表面が示されている。様々な実施形態により、本明細書において開示される当該方法は、
図4B~Cのガラス物品ならびにそれらの任意の所望の変形を作製するために、
図4Aのガラス物品をレーザー加工するために使用することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、当該エレクトロクロミック層は、1種または複数種の無機材料を含む。いくつかの実施形態において、当該エレクトロクロミック層は、1種または複数種の酸化タングステンを含む。
【0051】
例えば、第一パルスレーザーは、本明細書においてレーザー「スクライブ」またはレーザー「穿孔」とも呼ばれる、輪郭A1(破線)を作製するために使用することができる。
図4Bに示されるガラス物品とコーティングされていない残りの部分(図示されず)とを作製するために、第一パルスレーザーおよび第二レーザーを輪郭B1(二重線)に沿ってトレースすることにより、当該ガラスを2つの部分に分離することができる。C1への電圧の印可の際に、コーティングされた部分EのC1は、「着色」され得るか、および/または、コーティングされた部分Eの第二領域C2と比べて低下した透過率(例えば、可視波長400~700nmに対する)を有し得、この場合、当該第二領域C2は、活性化されず、変更されない(または着色されない)ままであり得る。あるいは、電圧が、C2に印可され、C1には印可されない場合には、C2は、上記のC1と同様に実施し得る。スクライブ線は、お互いから電気的に接続されていない層を有するため、C1およびC2の両方は、お互いに関係なく、着色することができる。
【0052】
輪郭A1に沿ったレーザースクライブは、C1とC2との間にエレクトロクロミック効果に対する電気的障壁を作製する働きをする。そのため、当該ガラス物品は、コーティングされていない(例えば、着色されていない)部分Uと、「新たな」着色されていない(しかし、コーティングされている)領域C2とを含むことができ、当該領域C2は、たとえエレクトロクロミック層でコーティングされていても、C1への電圧の印可の際にエレクトロクロミック効果を示さないであろう(逆もまた同様である)。したがって、当該レーザースクライブプロセスまたはレーザー穿孔プロセスは、直線状の輪郭および湾曲した輪郭を含む、ガラス基板上の任意の所望のパターン、ならびに第一領域または第二領域内のパターンを作製するために使用することができる。当該輪郭またはレーザースクライブは、上記において説明したような複数の不連続線を含むことができ、ならびに、エレクトロクロミック層またはガラス基板を著しく損傷することなく任意の所望の視覚効果を生じさせるために、それぞれの領域を分離することができる。当該不連続線の幅は、約0.1μmから約25μm、例えば、約0.25μmから約10μm、約0.5μmから約5μm、約1μmから約3μm、または約1.5μmから約2μmなど、の範囲であり得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態において、C2は、レーザー損傷され得ないか、または実質的にレーザー損傷され得ない。例えば、この領域におけるエレクトロクロミックコーティングおよび/またはガラス基板は、下記においてより詳細に説明されるように、レーザー損傷され得ないか、または当該輪郭に沿ってレーザー損傷の非常に小さい領域を示し得る。したがって、ある特定の実施形態において、当該輪郭は、単一の母基板から2つ以上の能動素子を作製する。当該レーザー切断は正確であり、出力は、エレクトロクロミックフィルムをほとんど損傷せずに非常に微細な線を作製するように制御することができるため、C1およびC2におけるエレクトロクロミック層は、損傷されず、ならびに非常に少ないエレクトロクロミック材料しか無駄にしない。
【0054】
いくつかの実施形態において、当該エレクトロクロミックフィルムにおける不連続の形成は、当該物品におけるある特定の領域における着色効果を排除するために使用することができる。コーティングされた基板の所定の領域における着色効果を排除するための現在の方法は、例えば、所望のエリアにおけるコーティングを「焼き取る」ためにレーザーアブレーションを使用するなどして、当該コーティングを除去するステップを伴う。しかしながら、そのようなプロセスは、不正確であり得、ならびに、結果として、エレクトロクロミック層およびその下のガラス基板の両方に損傷の大きな領域を生じ得る。例えば、エレクトロクロミック層が所望の領域から完全に除去されることを確保するために、高出力レーザーを使用して数回の通過が為され得、それは、結果として、それに沿って残されたエレクトロクロミック層が損傷されるかおよび/または下のガラス基板が損傷される、広い領域(または帯)を生じ得る。そのようなレーザー損傷領域は、数十ミリメートルオーダーの幅、例えば、約20mmを超える、約25mmを超える、さらには約30mmを超える幅、を有し得る。
【0055】
さらに、本明細書において、第一表面と、それに対向する第二表面と、当該第二表面の実質的に全ての上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、当該エレクトロクロミックコーティングが、当該ガラス物品の少なくとも1つの端部に近接する、レーザー損傷された周辺領域を含み、当該レーザー損傷された周辺領域が、約10mm未満、約1mm未満、または約0.1mm未満の幅を有する、ガラス物品が開示される。再び
図4Aを参照すると、第一パルスレーザーは、輪郭A2(破線)を作り出すために使用することができ、ならびに、第一パルスレーザーおよび第二レーザーは、当該ガラスを2つの部分に分離して
図4Cに示されたガラス物品を作製するために、輪郭B2(二重線)に沿ってトレースすることができる。電圧の印可の際に、コーティングされた部分Eの第一領域C1は、着色され得、および/またはコーティングされた部分Eの、変化しないまま(または着色されないまま)であり得る第二領域C2と比べて、低下した透過率(例えば、可視波長400~700nmに対して)を有し得る。
【0056】
コーティングされていない部分Uを横断する輪郭B1とは異なり、輪郭B2は、コーティングされた領域Eを横断する。理論によって束縛されることを望むわけではないが、本明細書において開示されるレーザー切断方法は、エレクトロクロミック層に対して最小限の損傷において、当該コーティングされたガラス物品を分離することができると考えられる。本明細書において開示されるレーザー加工方法は、結果として、当該エレクトロクロミックフィルムがレーザー損傷される比較的小さな領域(輪郭の幅)を生じ得、それらの領域は、電圧の印可の際にエレクトロクロミック効果を示さないであろう。例えば、当該レーザー切断プロセスは、比較的狭い(例えば、約0.1mm未満)切り口eに沿って、レーザー損傷ゾーンLを生じ得る。いくつかの実施形態において、当該レーザー損傷ゾーンLは、約10mm未満、1mm未満、または0.1mm未満、例えば、約9mm未満、8mm未満、5mm未満、1mm未満、0.5mm未満、0.1mm未満、0.09mm未満、0.08mm未満、0.07mm未満、0.06mm未満、0.05mm未満、0.04mm未満、0.03mm未満、0.02mm未満、0.01mm未満、またはそれ以下、例えば、約0.01mmから約0.1mmの範囲、の幅を有することができ、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。
【0057】
本明細書において開示されるガラス物品は、コーティングされていない領域および/または比較のプロセスによって作製された損傷された領域と比べて、比較的小さいレーザー損傷領域を有し得る。例えば、当該切断-および-コーティングプロセスは、結果として、締付固定による妨げにより、コーティングされていないかなりの領域を生じ得る。同様に、当該ガラスが、コーティングされ、次いで、従来の水を使用するエッジ研削法を使用して切断される場合、切り口に近接するエレクトロクロミック層に対する損傷(例えば、膨れなど)は、はるかに大きいであろう。その上、先行技術の方法を使用してそのような基板の任意の部分に対する着色効果を排除することが望ましい場合(切断-および-コーティング、またはコーティング-および-切断のどちらか)、アブレーションプロセスの際に生じるレーザー損傷領域は、はるかに大きいであろう(例えば、20mm以上の幅)。
【0058】
本明細書におけるガラス物品は、機能性エレクトロクロミック層で実質的にコーティングされた、例えば、電圧の印可の際に端から端まで着色されるような、少なくとも1つの表面を有することができるが、それは、以前は、先行技術の方法を使用しては可能ではなかった。ある特定の実施形態では、当該ガラス物品の表面の実質的に全てが、エレクトロクロミック層でコーティングされ得、その場合、それらは、当該物品の1つまたは複数の端部に沿って1つまたは複数のレーザー損傷領域(<0.1mm)を含むことができる。例えば、ガラス基板の表面をエレクトロクロミック層でコーティングし、次いで、当該コーティングされた基板を、単一の輪郭に沿って分離することにより、当該ガラス基板における任意のコーティングされていない部分(例えば、締付固定に起因してコーティングされない部分)を除去してもよい。したがって、結果として得られるガラス物品は、実質的にエレクトロクロミック層でコーティングされ得、ならびに、当該輪郭縁付近に周辺レーザー損傷領域を含み得る。追加の実施形態において、当該コーティングされたガラス基板は、2つ以上の輪郭に沿って分離することができ、結果として得られるガラス物品は、2つ以上のレーザー損傷領域を含むことができる。電圧の印可の際、端部における任意のレーザー損傷領域を除いて、端から端までの着色効果(edge-to-edge tinting effect)が観察され得る。しかしながら、そのようなレーザー損傷領域は、コーティングされていない領域および/または先行技術のプロセスによって作製された損傷領域と比較して、比較的小さくあり得る。様々な実施形態により、当該レーザー損傷領域は、当該ガラス表面におけるコーティングされた部分の約5%未満、例えば、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、または約0.01%未満など、を占め得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれるが、当該ガラス物品のサイズの減少に伴って、レーザー損傷領域によって占められる表面の相対的割合は増加し得る。
【0059】
本明細書において開示されるガラス物品は、自動車、建築、および他の同様の用途にとって好適な、当技術分野において既知の任意のガラスを含むことができる。例示的ガラス基板は、これらに限定されるわけではないが、アルミノケイ酸ガラス、アルカリ-アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリ-ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、アルカリ-アルミノホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、および他の好適なガラスを含むことができる。ある特定の実施形態において、当該基板は、約0.1mmから約10mm、例えば、約0.3mmから約5mm、約0.5mmから約3mm、または約1mmから約2mmなど、の範囲の厚さを有し得、この場合、それらの値の間の全ての範囲および部分範囲が含まれる。光フィルターとしての使用にとって好適な市販のガラスの非限定的な例としては、例えば、Corning社製の「EAGLE XG」ガラス、Iris(商標)ガラス、Lotus(商標)ガラス、Willow(登録商標)ガラス、Gorilla(登録商標)ガラス、HPFS(登録商標)ガラス、およびULE(登録商標)ガラスが挙げられる。好適なガラスは、例えば、米国特許第4,483,700号、同第5,674,790号、および同第7,666,511号において開示されており、なお、これらの特許は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0060】
当該基板は、第一表面とそれに対向する第二表面とを有するガラスシートを含むことができる。ある特定の実施形態において、当該表面は、平面または実質的に平面であり得、例えば、実質的に平坦および/または平らであり得る。当該基板はさらに、いくつかの実施形態において、およそ少なくとも1つの曲率半径において湾曲していてもよく、例えば、凸状または凹状基板などの三次元基板であってもよい。当該第一および第二表面は、様々な実施形態において、平行または実質的に平行であり得る。当該基板はさらに、少なくとも1つの端部、例えば、少なくとも2つの端部、少なくとも3つの端部、または少なくとも4つの端部を有していてもよい。非限定的な例として、当該基板は、4つの端部を有する長方形または正方形のシートを含み得るが、他の形状および構成も想到され、それらも本開示の範囲内であることが意図される。本明細書において開示されるレーザー切断法は、様々な湾曲した輪郭を作り出すためにも使用することができ、結果として、湾曲した端部、例えば、非線形の端部、を有するガラス物品を得ることができる。
【0061】
本明細書において開示されるガラス物品は、絶縁ガラスユニット(IGU)などの様々な製品を製造するために使用することができる。例えば、エレクトロクロミック層でコーティングされた少なくとも一部の表面を有するガラス物品は、IGUを製造するために第二ガラスシートの周囲を囲むように封止することができる。当該ガラス物品は、エレクトロクロミック層でコーティングされた後に、サイズおよび/または形状に切断することができ、そのようなIGUの製造は、向上した融通性を有し得、および/またはコストが削減され得る。
【0062】
様々な開示される実施形態は、その特定の実施形態に関して説明される特定の特徴、要素、またはステップを伴い得ることは理解されるであろう。特定の特徴、要素、またはステップは、特定の一実施形態に関連して説明されるが、様々な例示されていない組み合わせまたは順序において代替の実施形態と交換または組み合わせてもよいことも理解されるであろう。
【0063】
本明細書において使用される場合、「the」、「a」、または「an」は、「少なくとも1つ」を意味し、そうでないことが明記されない限り、「1つだけ」に限定されるべきでないことも理解されるべきである。したがって、例えば、「レーザー(a laser)」に対する言及は、文脈においてそうでないことが明確に示されていない限り、2つ以上のそのようなレーザーを有する例を包含する。同様に、「複数の」は、「2つ以上」を意味することが意図される。そのため、「複数の欠陥線」は、2つ以上のそのような欠陥線、例えば、3つ以上のそのような欠陥線など、を包含する。
【0064】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」別の特定の値までとして表現することができる。そのような範囲を表現する場合、いくつかの例は、一方の特定の値から、および/または、他方の特定の値まで、を含む。同様に、値が、先行詞「約」を用いることによって概算値として表現される場合、当該特定の値は別の態様を形成することは理解されるであろう。範囲の各々の終点は、他方の終点と関連して、および他方の終点とは独立して、の両方において重要であることがさらに理解されるであろう。
【0065】
用語「実質的な」、「実質的に」、およびそれらの変形は、本明細書において使用される場合、説明される特徴が、ある値または説明に等しいかまたはおよそ等しいことを言明することが意図される。例えば、「実質的に平面な」表面は、平面であるかまたはおよそ平面である表面を意味することが意図される。
【0066】
特に明記されない限り、本明細書において説明されるいずれの方法も、そのステップを特定の順序で実施することを必要とすると解釈されることは全く意図していない。したがって、方法のクレームが、そのステップが従うべき順序を実際には列挙していない場合、あるいは、ステップが特定の順序に限定されるべきであると請求項または説明において特に明記されていない場合、任意の特定の順序も推察されることは意図されていない。
【0067】
特定の実施形態の様々な特徴、要素、またはステップが、移行句「を含む(comprising)」を使用して開示され得る場合、同時に、移行句「からなる(consisting)」または「から実質的になる(consisting essentially of)」を使用して記述され得る実施形態を含めた代替の実施形態が含蓄されることは理解されるべきである。したがって、例えば、A+B+Cを含む物品に対する言外の代替の実施形態は、物品がA+B+Cからなる実施形態と、物品が実質的にA+B+Cからなる実施形態とを包含する。
【0068】
本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更および変形を行うことができることは、当業者に明らかであろう。本開示の趣旨および本質が組み込まれた、開示された実施形態の変更、組み合わせ、部分的組み合わせ、および変形は当業者が気付き得るものであるので、本開示は、添付の特許請求の範囲内の全てとその同等物を包含すると解釈されるべきである。
【0069】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0070】
実施形態1
a.ガラス基板であって、
i.第一表面、
ii.それに対向する第二表面、および
iii.1つまたは複数の端部であって、当該1つまたは複数の端部のうちの少なくとも1つまたは複数が、レーザー変質された端部を含む、1つまたは複数の端部、
を含むガラス基板と、
b.エレクトロクロミックコーティングであって、
i.当該第二表面の少なくとも一部の上に配置され、
ii.それぞれが輪郭を有する少なくとも2つの電気的に不連続な領域を含む、
エレクトロクロミックコーティングと
を含み、
当該2つの電気的に不連続な領域が、約0.1μmから約25μmの幅を有するレーザー変質された不連続線によって分離される、エレクトロクロミックガラス物品。
【0071】
実施形態2
上記エレクトロクロミックコーティングが酸化タングステンを含む、実施形態1に記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0072】
実施形態3
上記電気的に不連続な領域が、実質的にレーザー損傷されていない、実施形態1または実施形態2に記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0073】
実施形態4
上記レーザー変質された不連続線に近接する、上記ガラス基板の上記第二表面が、実質的にレーザー損傷されてない、実施形態1~3のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0074】
実施形態5
上記少なくとも2つの電気的に不連続な領域の少なくとも1つ領域の輪郭が非直線状である、実施形態4に記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0075】
実施形態6
上記レーザー切断された不連続が、FWHMにおいて10-10秒から10-15秒のパルス幅のレーザーによって形成された連続線である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0076】
実施形態7
上記第二領域が、上記第一領域におけるパターンを含むか、または当該第一領域が、当該第二領域におけるパターンを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0077】
実施形態8
上記ガラス物品が、約0.1mmから約10mmの範囲の厚さを有するガラスシートを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0078】
実施形態9
上記少なくとも2つの電気的に不連続な領域のうちの1つが、上記ガラス基板の上記1つまたは複数の端部に近接する、上記第二表面の領域を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0079】
実施形態10
上記ガラス基板の上記1つまたは複数の端部に近接する上記電気的に不連続な領域が、約0.1mm未満の幅を有する、実施形態9に記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0080】
実施形態11
上記ガラス基板の上記1つまたは複数の端部に近接する上記電気的に不連続な領域が、ガラス物品における上記コーティングされた部分の約5%以下を占める、実施形態9に記載のエレクトロクロミックガラス物品。
【0081】
実施形態12
第一表面と、それに対向する第二表面と、当該第二表面の実質的に全ての上に配置されたエレクトロクロミックコーティングとを有するガラス物品であって、当該エレクトロクロミックコーティングが、当該ガラス物品の少なくとも1つの端部に近接するレーザー損傷された周辺領域を含み、当該レーザー損傷された周辺領域が、約0.1mm未満の幅を有する、ガラス物品。
【0082】
実施形態13
上記レーザー損傷された周辺領域が、ガラス物品の上記第二表面の約5%以下を占める、実施形態12に記載のガラス物品。
【0083】
実施形態14
上記少なくとも1つの端部が、直線状の輪郭または湾曲した輪郭を有する、実施形態12または実施形態13に記載のガラス物品。
【0084】
実施形態15
上記ガラス物品が、約0.1mmから約10mmの範囲の厚さを有するガラスシートを含む、実施形態12~14のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0085】
実施形態16
上記第二表面におけるコーティングされた部分が、第一領域および第二領域を含み、ガラス物品への電圧の印可の際に、当該第一領域が、当該第二領域の第二可視光透過率より低い第一可視光透過率を有する、実施形態12~15のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0086】
実施形態17
上記第一および第二領域が、1つまたは複数のレーザー線を含む不連続線によって分離される、実施形態16に記載のガラス物品。
【0087】
実施形態18
上記輪郭が、直線状であるか、または湾曲している、実施形態17に記載のガラス物品。
【0088】
実施形態19
実施形態1~11のいずれか1つに記載のエレクトロクロミックガラス物品を含む絶縁ガラスユニット。
【0089】
実施形態20
実施形態12~17のいずれか1つに記載のガラス物品を含む絶縁ガラスユニット。
【符号の説明】
【0090】
1 基板
1a 第一表面
1b 第二表面
2 パルスレーザービーム
2a 入射部分
2b レーザービーム焦線
3 アキシコンレンズ
4 コリメーティングレンズ
5 集光レンズ
6 光学アセンブリ
7 エレクトロクロミック層
110 輪郭または断層線
120 欠陥線
130 ガラス基板
130a、130b 部分
140 パルスレーザー
150 エレクトロクロミック層