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▶ シーティーティーキュー-アケソ (シャンハイ) バイオメッド. テック. カンパニー, リミテッドの特許一覧

特許7082620抗PD1モノクローナル抗体、その医薬組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】抗PD1モノクローナル抗体、その医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220601BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220601BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220601BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20220601BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220601BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220601BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220601BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220601BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220601BHJP
   C12N 5/20 20060101ALI20220601BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220601BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220601BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K35/76
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K48/00
A61K49/16
A61K51/10 200
A61P7/06
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/28
C07K16/46
C12N5/10
C12N5/20
C12N15/63 Z
C12P21/08
G01N33/53 D
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019531512
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2017098465
(87)【国際公開番号】W WO2018036472
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】201610705763.5
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519399822
【氏名又は名称】シーティーティーキュー-アケソ (シャンハイ) バイオメッド. テック. カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】李百勇
(72)【発明者】
【氏名】夏▲ゆ▼
(72)【発明者】
【氏名】王忠民
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲鵬▼
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105175544(CN,A)
【文献】Brahmer J. R. et al.,Nivolumab: targeting PD-1 to bolster antitumor immunity,Future Oncol.,Vol. 11, No. 9,p. 1307-1326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/28
C12N 15/63
C12N 1/13
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 5/10
C12P 21/08
C12N 5/20
C07K 16/46
A61K 49/16
A61K 51/10
A61K 47/68
A61K 39/395
A61K 35/76
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 7/06
A61P 35/02
G01N 33/53
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(V )および軽鎖可変領域(V )を含む、抗PD1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V 、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR2、および、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、
そして
前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V 、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR2、および、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、
抗PD1モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V がSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み
そして
前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V がSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む
請求項1に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むV およびSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む を含む、請求項2に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片がSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むV およびSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む を含む、請求項2に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片がFab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、または、1本鎖抗体(scFv)である、請求項1~4の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片のPD1タンパク質と結合するKが約10-5M未満である、請求項1~5の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片のPD1タンパク質と結合するKが10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10Mまたはそれ未満である、請求項1~6の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
前記KがFortebio分子間相互作用機で測定される、請求項6または7に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片は、マウス以外の種由来の非-CDR領域を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片は、ヒト由来の非-CDR領域を含む、請求項9に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片がハイブリドーマ細胞株LT003から産生され、ここで、前記ハイブリドーマ細胞株LT003が中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:C2015105である、請求項1~4の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片の重鎖可変領域(V および軽鎖可変領域(V をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、
ここで、前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR2、および、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR3を含み、ここで、前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR2、および、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、単離核酸分子。
【請求項13】
前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の単離核酸分子。
【請求項14】
前記単離核酸は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5のヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の単離核酸分子。
【請求項15】
請求項12~14の何れか一項に記載の単離核酸分子を含む、発現構築物。
【請求項16】
前記抗PD1モノクローナル抗体の前記V は、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の発現構築物。
【請求項17】
請求項1に記載の前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片の軽鎖可変領域(V をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:7のヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の発現構築物。
【請求項18】
請求項12~14の何れか一項に記載の単離核酸分子、または、請求項15~17の何れか一項に記載の発現構築物を含む、発現細胞株。
【請求項19】
請求項1~11の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片を調製する方法であって、前記方法は、請求項18に記載の細胞株を適切な条件で培養する工程、および、細胞培養物から前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片を回収する工程を含み、前記細胞株は、請求項1に記載の前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片の軽鎖可変領域(V をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子または発現構築物を含み、ここで、前記 は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR2、および、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、方法。
【請求項20】
中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:C2015105である、ハイブリドーマ細胞株LT003。
【請求項21】
請求項1~11の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片、ならびに、複合部分を含む複合体であって、前記複合部分は検出可能な標識である、複合体。
【請求項22】
前記複合部分が、放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素を含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
請求項1~11の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片、あるいは、請求項21または22に記載の複合体を含む試薬キット。
【請求項24】
前記抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片を特異的に認識する第2抗体をさらに含む、請求項23に記載の試薬キット。
【請求項25】
前記第2抗体が検出可能な標識をさらに含む、請求項24に記載の試薬キット。
【請求項26】
前記検出可能な標識が、放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素を含む、請求項25に記載の試薬キット。
【請求項27】
請求項1~11の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片あるいは請求項21または22に記載の複合体、ならびに、薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項28】
腫瘍の治療において使用するための、請求項1~11の何れか一項に記載の抗PD1モノクローナル抗体または抗原結合断片あるいは請求項21または22に記載の複合体あるいは請求項27に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項29】
前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌または白血病である、請求項28に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍治療および分子免疫学の分野に属し、抗PD1抗体、その医薬組成物およびその使用に関する。具体的に、本発明は抗PD1モノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
膜貫通受容体PD1(programmed cell death 1、プログラム細胞死因子1、PD-1とも略称される。)はCD28遺伝子ファミリーの一員であり、活性化T細胞、B細胞、および骨髄系細胞のいずれにおいても発現される。PD1の受容体PDL1およびPDL2はいずれもB7スーパーファミリーに属し、そのうち、PDL1はT細胞、B細胞、内皮細胞および上皮細胞を含む様々な細胞において発現され、PDL2は樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞においてのみ発現される。
【0003】
T細胞はウイルス感染の除去に非常に重要な役割を果たすが、T細胞の抗ウイルス反応は、通常、免疫病理学と関連している。PD1はT細胞の活性化に対する負的制御に非常に重要な役割を果たし、T細胞に対するPD1を介した負的制御は感染によって引き起こされる組織損傷を減らすことができるが、PD1の負的制御を遮断または阻害すると、自己免疫疾患を引き起こす可能性がある。例えば、PD1ノックアウトマウスは膵臓ウイルス感染の除去により効果的であるが、より重篤な肝障害を引き起こす(Isai et al., 2003, J. Exp. Med. 198:39-50)。また、PD1を高度に発現する腫瘍は一般的に検出が困難な癌を形成する(Hamanishi et al., 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-5)。インビボで抗体を注射することによってPD1の発現をコントロールする方法は、有効的な方法である。
【0004】
PD1抗体は広範囲の抗腫瘍の予想および素晴らしい効果を有するため、PD1経路を標的とする抗体が様々な腫瘍の治療において飛躍的な進歩をもたらすことは、業界で広く受け入れられており、例えば、非小細胞肺がん、腎細胞がん、卵巣がん、黒色腫の治療に用いられ(Homet M. B., Parisi G., et al., Anti-PD1 Therapy in Melanoma. Semin Oncol. 2015 Jun;42(3):466-473)、白血病および貧血の治療に用いられる(Held SA, Heine A, et al., Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets. 2013 Sep;13(7):768-74)。
【0005】
2012年と2013年のアメリカ癌学会(AACR)の年次総会及びアメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で、これまでにない臨床効果データが発表された後、PD1抗体は世界の製薬業界で最も熱く研究される新薬になる。
現在、PD1のPDL1への結合を効果的に遮断するために、より良い結合効率を有する新しい抗PD1抗体を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Isai et al., 2003, J. Exp. Med. 198:39-50
【文献】Hamanishi et al., 2007, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-5
【文献】Homet M. B., Parisi G., et al., Anti-PD1 Therapy in Melanoma. Semin Oncol. 2015 Jun;42(3):466-473
【文献】Held SA, Heine A, et al., Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets. 2013 Sep;13(7):768-74
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究および創造的な取り組みを施した後、哺乳動物細胞発現系を用いて発現した組み換えPD1を免疫マウスへの抗原として使用し、マウス脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させることによってハイブリドーマ細胞を得た。本発明者らは、多数の試料をスクリーニングすることによってハイブリドーマ細胞株LT003を得た(受託番号:CCTCC NO:C2015105)。
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、ハイブリドーマ細胞株LT003がPD1に特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(14C12と命名)を分泌することができ、そして当該モノクローナル抗体がPDL1へのPD1の結合を非常に有効的に遮断できることを見出した。
【0009】
さらに、本発明者らは、創造的に、抗PD1のヒト化抗体(14C12H1L1と命名)を作製した。
そして、本発明者らはまた、驚くべきことに、本発明の抗体14C12、14C12H1L1がヒトT細胞に有効的に結合し、T細胞を活性化してヒトリンパ球によるIFN-γおよびIL-2の分泌を誘導できることを見出した。本発明の抗体14C12および14C12H1L1は、肺癌、黒色腫、腎臓腫瘍、卵巣癌、白血病などの癌及び貧血を予防・治療する薬物を調製するために用いられる可能性を有する。
【0010】
したがって、次の発明を提供する。
【0011】
本発明のある態様は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
前記のモノクローナル抗体の重鎖可変領域(V)は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:9-11であるCDRを含み、
及び/または、
前記のモノクローナル抗体の軽鎖可変領域(V)は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:12-14であるCDRを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:6からなる群から選択され、
及び/または、
前記のモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8からなる群から選択されるものである。
【0012】
本発明の実施形態の1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体は、
(1)SEQ ID NO:2で示すVおよびSEQ ID NO:4で示すV
(2)SEQ ID NO:6で示すVおよびSEQ ID NO:8で示すV
を含む。
【0013】
抗原の結合は、軽鎖および重鎖の可変領域に依存し、各鎖の可変領域は、いずれも相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域を含む(重鎖(H)のCDRは、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖(L)のCDRはLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み;それらはKabatらに命名され、詳しくは、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition(1991), Vol. 1-3, NIH Publication 91-3242, Bethesda Mdを参照のこと)。
【0014】
当業者によって周知の技術的手段によって、例えば、VBASE2データベースによって、前記の(1)-(2)のモノクローナル抗体配列におけるCDR領域のアミノ酸配列を分析した結果は、下記のとおりである。
【0015】
本発明の抗体14C12、14C12H1L1は、同じCDRを有する。
その重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、下記のとおりである。
HCDR1:GFAFSSYD(SEQ ID NO:9)、
HCDR2:ISGGGRYT(SEQ ID NO:10)、
HCDR3:ANRYGEAWFAY(SEQ ID NO:11);
その軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、下記のとおりである。
LCDR1:QDINTY(SEQ ID NO:12)、
LCDR2:RAN(SEQ ID NO:13)、
LCDR3:LQYDEFPLT(SEQ ID NO:14)。
【0016】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、1本鎖抗体(例えば、scFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体またはダイアボディからなる群から選ばれるものである。
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体は、PD1タンパク質と結合するKが約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下であり、好ましくは、前記KはFortebio分子間相互作用機で測定される。
【0017】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体は、PD1タンパク質と結合するEC50が約100nM未満、例えば約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM未満またはそれ以下である。具体的に、前記EC50は間接ELISA法で測定される。
【0018】
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体は、PD1タンパク質と結合するKが約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下である。
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体は、非-CDR領域を含み、かつ、前記の非-CDR領域は、鼠類以外の種由来、例えばヒト抗体由来である。
本発明の実施形態の何れか1つによる、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片において、
前記のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株LT003から産生したモノクローナル抗体であり、前記のハイブリドーマ細胞株LT003は、中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号はCCTCC NO:C2015105である。
本発明の別の態様は、抗体の重鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記の抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:9-11であるCDRを含み、
具体的に、前記の抗体の重鎖は、SEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:6で示すアミノ酸配列を有し、
さらに具体的に、前記の核酸分子は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5で示す塩基配列を有する、単離核酸分子に関する。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、抗体の軽鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記の抗体の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:12-14であるCDRを含み、
具体的に、前記の抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:8で示すアミノ酸配列を有し、
さらに具体的に、前記の核酸分子は、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:7で示す塩基配列を有する、単離核酸分子に関する。
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態の何れか1つによる単離核酸分子を含むベクターに関する。
【0020】
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態の何れか1つによる単離核酸分子または本発明によるベクターを含む宿主細胞に関する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態の何れか1つによる、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を調製する方法であって、本発明の宿主細胞を適切な条件下で培養する工程、および、細胞培養物から前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を回収する工程を含む方法に関する。
【0022】
本発明のさらなる態様は、中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:C2015105である、ハイブリドーマ細胞株LT003に関する。
【0023】
本発明のさらなる態様は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片および複合部分を含む複合体であって、前記モノクローナル抗体は、本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり、前記複合部分は検出可能な標識であり、具体的に、前記複合部分は、放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素である、複合体に関する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体を含むキットであって、
具体的に、前記キットは、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を特異的に認識する第2抗体をさらに含み;任意的に、前記第2抗体は、検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素をさらに含む、キットに関する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、試料中のPD1の存在またはそのレベルを検出するために用いられるキットの製造における、本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体の使用に関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体を含み、さらに薬学的に許容されるベクター及び/または賦形剤を含んでいてもよい、医薬組成物に関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、腫瘍または貧血を、予防および/または治療および/または補助治療および/または診断する薬剤の調製における、本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体の使用であって、具体的に、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択される、使用に関する。
【0028】
発明者らは、動物試験で14C12H1L1がPD-1 HuGEMMマウス右側皮下で接種したMC38腫瘍細胞の成長を効果的に抑制できることを発見した。抗体薬剤14C12H1L1を投与することによって、PD-1 HuGEMM担癌マウス腫瘍体積の増加を著しくに抑制でき、薬力学的効果が市販されているターゲットが同じである薬剤Nivolumabモノクローナル抗体に相当すると示されている。
【0029】
本発明のさらなる態様は、本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体の、
PD1のリガンドへのPD1の結合を遮断する薬剤、
PD1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する薬剤、
PD1の生体に対する免疫抑制を取り除く薬剤、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γ及び/またはIL-2の発現を増加させる薬剤
の調製における使用であって、
具体的に、前記PD1のリガンドがPDL1またはPDL2であり、好ましくはPDL1である、使用に関する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、有効量の本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体を、細胞またはニーズがある被験者にインビボまたはインビトロで投与することを含む、
PD1のリガンドへのPD1の結合を遮断する方法、
PD1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する方法、
PD1の生体に対する免疫抑制を取り除く方法、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γ及び/またはIL-2の発現を増加させる方法、
からなる群から選択される方法であって、
具体的に、前記PD1のリガンドがPDL1またはPDL2であり、好ましくは、PDL1である、方法に関する。
【0031】
本発明のある具体的な実施形態において、前記インビトロ方法は、非治療目的または診断目的の方法である。
【0032】
インターフェロンγ(IFNγ)は、主にナチュラルキラー細胞(NK)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)から自然に生成されるもの、および、CD4 Th1細胞とCD8細胞障害性Tリンパ球のようなエフェクターT細胞から特定の抗原による刺激を経った後産生したものがある。IFNγは、重要な先天性および後天性免疫サイトカインとして、ウイルス、ある細菌感染および原虫感染との戦いまたは抑制において重要な役割を果たす。同時に、IFNγは、マクロファージを活性化し、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現を誘導して、免疫反応を活性化し、腫瘍の発達を制御することができる(Schoenborn JR, Wilson CB. Regulation of Interferon-γ During Innate and Adaptive Immune Responses. Advances in Immunology 2007; 96:41-101)。本発明のインビトロ試験において、抗体anti-PD1抗体は、IFNγの分泌を誘導して免疫反応を活性化することができる。
【0033】
インターロイキン2(IL-2)はT細胞から産生され、T細胞サブセットを調節する成長因子であり、また免疫応答を調節する重要な因子であり、そして活性化B細胞の増殖を促進し、抗体反応、造血および腫瘍監視に関与することができる。組換えヒトIL-2は悪性腫瘍(メラノーマ、腎臓腫瘍などを含む)の治療に米国FDAによって承認されており、慢性ウイルス感染症の治療に臨床研究を受けている(Chavez, A.R., et al., Pharmacologic administration of interleukin-2. Ann N Y Acad Sci, 2009. 1182:p. 14-27)。インビトロ試験において、本発明のPD1抗体は、PD1の生体に対する免疫抑制を特異的に取り除け、T細胞を活性化し、IL-2産生を誘導し、抗腫瘍および寄生虫症などの疾患の遺伝子治療において広い応用見通しを有する。
【0034】
本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは複合体によれば、腫瘍または貧血を、予防および/または治療および/または補助治療および/または診断することに用いられる。具体的に、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである。
【0035】
本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは複合体によれば、
PD1のリガンドへのPD1の結合を遮断すること、
PD1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)すること、
PD1の生体に対する免疫抑制を取り除くこと、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γ及び/またはIL-2の発現を増加させること、
に用いられ、
具体的に、前記PD1のリガンドはPDL1またはPDL2であり、好ましくは、PDL1である。
【0036】
本発明のある具体的実施形態において、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは複合体は、PDL1へのPD1の結合だけを遮断する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、有効量の本発明の実施形態の何れか1つによるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは本発明による複合体を、被験者に投与することを含む、腫瘍または貧血を、予防および/または治療及び/または補助治療及び/または診断する方法であって、具体的に、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択される、方法に関する。
【0038】
本発明において、別段の指定のない限り、本明細書中で使用される科学用語および技術用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書中で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学の試験室操作の手順は、いずれも関連技術分野で広く利用される一般的なものである。同時に、本発明をより良く理解する目的のために、関連用語の定義および説明を以下で提供する。
本明細書中で使用される場合、PD1タンパク質(Programmed cell death protein 1、NCBI GenBank:NP_005009.2)のアミノ酸配列を言うと、PD1タンパク質の全長、又はPD1の細胞外断片PD1ECD、または、PD1ECDを含有する断片を含み、さらにPD1ECDの融合タンパク質、例えばマウスまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)と融合した断片を含む。しかし、当業者は、PD1タンパク質のアミノ酸配列において突然変異または変形(置換、欠失、および/または付加を含むがこれらに限定されない)が、それらの生物学的機能に影響を及ぼすことなく、自然にまたは人工的に起こり得ると理解できる。したがって、本発明において、「PD1タンパク質」という用語には、そのような配列のすべて、ならびに、それらの天然または人工の変異体が含まれるべきである。また、PD1タンパク質の配列断片を記載するとき、それは配列断片だけでなくその天然または人工の変異体における対応配列断片も含む。
本明細書中で使用される場合、PDL1タンパク質(Programmed death-ligand 1、NCBI Genebank ID:NP_054862.1)のアミノ酸配列を言うと、PDL1タンパク質の全長、又はPDL1の細胞外断片PDL1ECD、または、PDL1ECDを含有する断片を含み、さらに、PDL1ECDの融合タンパク質、例えばマウスまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)と融合した断片を含む。しかし、当業者は、PDL1タンパク質のアミノ酸配列において突然変異または変形(置換、欠失、および/または付加を含むがこれらに限定されない)は、それらの生物学的機能に影響を及ぼすことなく、自然にまたは人工的に起こり得ると理解できる。したがって、本発明において、「PDL1タンパク質」という用語には、そのような配列のすべて、ならびに、それらの天然または人工の変異体が含まれるべきである。また、PDL1タンパク質の配列断片を記載するとき、それはPDL1配列断片だけでなくその天然または人工の変異体における対応する配列断片も含む。
【0039】
本明細書中で使用される場合、EC50という用語は、最大効果の50%に対する濃度(concentration for 50% of maximal effect)、すなわち最大効果の50%を引き起こす濃度を指す。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、一般的に2対のポリペプチド鎖(各対は「軽」(L)鎖および「重」(H)鎖を有する。)からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体軽鎖は、κおよびλ軽鎖として分類され得る。重鎖はμ、δ、γ、αまたはεとして分類され得、抗体のアイソタイプはそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして定められる。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12つ以上のアミノ酸の「J」領域を介して連結され、重鎖は約3つ以上のアミノ酸の「D」領域をさらに含む。各重鎖は、重鎖可変領域(V)および重鎖定常領域(C)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(C1、C2およびC3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)および軽鎖定常領域(C)からなる。軽鎖定常領域はCドメインからなる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第一の構成成分(C1q)を含め、宿主組織また因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。VおよびV領域は、比較的保存されるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域に散在する高い可変性を有する領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。)にさらに細かく分けられ得る。各VまたはVは、アミノ末端からカルボキシ末端へと次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んでいる、3つのCDRおよび4つのFRからなる。重鎖/軽鎖の各対の可変領域(VおよびV)は抗体結合部位をそれぞれ形成する。各領域またはドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987および1991))またはChothia & Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;Chothiaら(1989)Nature 342:878-883で提供される定義に従う。「抗体」という用語は、抗体を産生させるための何らかの具体的な方法に限定されない。例えば、これは、特に、組み換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体であり得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」という用語は、全長抗体が結合する抗原と同じ抗原に特異的に結合する能力を保持する、および/または抗原への特異的な結合について全長抗体と競合する全長抗体の断片を含むポリペプチドを指す。これは、「抗原結合部分」とも呼ばれる。全般的には、全ての目的に対してその全体において引用により本明細書中に組み込まれる、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.ed.,Second Edition,Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。抗体の抗原結合断片は、組み換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断により作製され得る。いくつかの場合において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAbおよび相補性決定領域(CDR)断片、1本鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ(diabody)および、特異的抗原結合能を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。
【0042】
いくつかの場合において、抗体の抗原結合断片は、ダイアボディ(2価抗体)であり、ここでVおよびVドメインは、単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、利用されるリンカーは、短すぎて同じ鎖上の2つのドメインが互いに対形成できないので、別の鎖上の相補的なドメインと対形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位が形成される(例えば、Holliger P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)およびPoljak R.J.ら、Structure 2:1121-1123(1994)を参照のこと。)。
【0043】
抗体の抗原結合断片(例えば、上記の抗体断片)は、当業者にとって公知の通常技術(例えば、組み換えDNA技術または酵素的もしくは化学的切断法)を用いて、所定の抗体(例えば本発明において提供されるモノクローナル抗体14C12、14C12H1L1)から得ることができ、インタクト抗体の場合と同じように特異性についてスクリーニングし得る。
【0044】
本明細書中で、文脈において明らかに指定されない限り、「抗体」という用語について申し述べる場合、インタクトな抗体を含むだけでなく、抗体の抗原結合断片も含む。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「単抗」または「モノクローナル抗体」という用語は、高度に相同性を有する抗体分子の集団からの抗体または抗体断片を指し、すなわち、可能性のある天然の突然変異を除き、完全に同一の抗体分子の集団である。単抗は、抗原上の単一のエピトープに非常に高い特異性を有する。モノクローナル抗体とは対照的に、ポリクローナル抗体は、一般的には、抗原上の異なるエピトープを認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は、一般的に、最初にKohlerらにより報告されたハイブリドーマ技術(Nature,256:495,1975)を用いて得ることができるが、組み換えDNA技術(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと。)を使用して得ることもできる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の全てのまたは一部のCDRを非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域で置き換えた後に得られた抗体または抗体断片を指し、そのうち、ドナー抗体は、所望の特異性、親和性または反応性を有する非ヒト(例えばマウス、ラットまたはウサギ)抗体であり得る。さらに、レシピエント抗体のフレームワーク領域(FR)の一部のアミノ酸残基も、抗体の性能をさらに向上させるかまたは最適化するように対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基または他の抗体のアミノ酸残基で置き換えられ得る。ヒト化抗体に関するより詳細な説明については、例えばJonesら、Nature,321:522-525(1986);Reichmannら、Nature,332:323-329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992);およびClark,Immunol.Today 21:397-402(2000)を参照のこと。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「単離されている」又は「単離される」という用語は、人工的手段によってネイティブ状態から得られていることを意味する。自然界にある「単離されている」物質または構成成分が生じる場合、それが位置する天然の環境が変化しているか、または当該物質が天然の環境から単離されているか、またはその両方であると考えられる。例えば、ある単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、ある生きている動物の体に天然に存在し、このような天然の状態から単離される高純度の同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離されている」ものとされる。「単離されている」又は「単離される」という用語は、人工的または合成物質との混合物を排除せず、物質の活性に影響を与えない他の不純物の存在も排除しない。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「ベクター(vector)」という用語は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸送達ビヒクルを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、ベクターにより保有される遺伝物質構成要素が宿主細胞で発現されるように、形質転換、形質導入またはトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができる。ベクターは、当業者にとって周知であり、プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1-由来人工染色体(PAC)のような人工染色体;例えばλファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージならびに動物ウイルスなどが含まれるがこれらに限定されない。ベクターとして使用し得る動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む。)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)が含まれるががこれらに限定されない。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択構成要素およびレポーター遺伝子を含むがこれらに限定されない、発現を調節するための複数の構成要素を含み得る。さらに、ベクターは、複製開始サイトも含み得る。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクターの導入のために使用し得る細胞を指し、例えばE.コリ(E.coli)またはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などの原核細胞、例えば酵母細胞またはアスペルギルス(Aspergillus)などの真菌細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞もしくはSf9などの昆虫細胞、または、例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞またはヒト細胞などの動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「特異的な結合」という用語は、2つの分子間の非無作為結合反応、例えば抗体とその標的抗原との間の反応を指す。いくつかの実施形態において、ある抗原に特異的に結合する抗体(またはある抗原に特異的な抗体)は、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下の親和性(K)で抗原に結合することを意味する。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「K」という用語は、抗体と抗原との間の結合親和性を表現する特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。解離平衡定数が小さいほど、抗体-抗原結合が堅固であり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。一般的に、抗体(例えば、本発明のモノクローナル抗体14C12、14C12H1L1)は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはそれ以下の解離平衡定数(K)で抗原(例えば、PD1タンパク質)と結合する。Kは、当業者が周知した方法、例えば、Fortebio分子間相互作用機で測定される。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「モノクローナル抗体」および「単抗」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。また、「ポリクローナル抗体」および「マルチ抗体」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。また、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同じ意味を有し、交換可能に使用され得る。さらに、本発明において、アミノ酸は一般的に、本分野で周知の、1文字または3文字略号により表される。例えば、アラニンはAまたはAlaで表し得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「ハイブリドーマ」および「ハイブリドーマ細胞株」という用語は、交換可能に使用され得る。さらに、「ハイブリドーマ」または「ハイブリドーマ細胞株」という用語について申し述べる場合、これは、ハイブリドーマのサブクローンおよび子孫細胞も含む。例えば、ハイブリドーマ細胞株LT003について申し述べる場合、これは、ハイブリドーマ細胞株LT003のサブクローンおよび子孫細胞も指す。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容可能なベクターおよび/または賦形剤」という用語は、薬理学および/または生理学において被験者および活性のある構成要素と相溶性を有するベクターおよび/または賦形剤を指し、これらは当技術分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences.Gennaro AR編,19th ed.Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995を参照のこと。)、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度促進剤が含まれるがこれらに限定されない。例えば、pH調整剤としてはリン酸緩衝液が含まれるがそれに限定されず;界面活性剤としては陽イオン性、陰イオン性または非イオン性界面活性剤、例えばTween-80が含まれるがこれらに限定されず;イオン強度促進剤としては塩化ナトリウムが含まれるがそれに限定されない。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を達成するかまたは少なくとも一部達成するのに十分な量を指す。例えば、疾患(例えば腫瘍)に対する予防的有効量は、疾患(例えば腫瘍)の発症を防ぐか、抑止するかまたは遅延させるのに十分である量を指し;疾患に対する治療的有効量は、疾患に罹患している患者において疾患およびその合併症を治癒させるか少なくとも部分的に抑止するのに十分な量を指す。このような有効量を測定することは十分に当業者の技術の範囲内である。例えば、治療用途の有効量は、治療しようとする疾患の重症度、患者の自己免疫系の全般的状況、患者の全般的状況、例えば年齢、体重および性別、薬剤の投与形式、同時に行われる他の治療などに依存する。
【0056】
【発明の効果】
【0057】
本発明のモノクローナル抗体、特に14C12H1L1は、PD1と特異的によく結合でき、かつ、PD1のPDL1との結合を非常に効果的に遮断でき、PD1の生体に対する免疫抑制を特異的に取り除け、Tリンパ球を活性化させることができる。そのうち、PD1抗体14C12H1L1は、IFN-γとIL-2の分泌を誘導する効果が対照抗体5C4(5C4:PD1 antibody、Medarex会社から入手したものである。Alan J. Korman, et al.,Human monoclonal antibodies to programmed death 1(PD1) and methods for treating cancer using anti-PD1 antibodies alone or in combination with other immunotherapeutics, United States Patent, Patent No.US 8008449 B2)より著しく強い。本発明のモノクローナル抗体、特に14C12H1L1は、抗腫瘍作用が市販されているターゲットが同じである薬剤Nivolumabの効果に相当する。本発明の抗体は、非小細胞肺癌、腎細胞癌、卵巣癌、黒色腫、白血病または貧血を予防・治療する薬剤を調製するために用いられる、あるいはこれらの薬剤とする可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】モノクローナルヒト化抗体14C12H1L1のSDS-PAGE検出結果である。試料およびそれらのローディング量は、左から右への4つのレーンで次のとおりであった:1.非還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;2.還元型タンパク質電気泳動ローディング緩衝液サンプル抗体、1μg;マーカー、5μl;3.BSA、1μg。
図2】抗体14C12の動的特性パラメーターの検出結果である。
図3】抗体14C12H1L1の動的特性パラメーターの検出結果である。
図4】抗体5C4の動的特性パラメーターの検出結果である。
図5】抗体14C12H1L1および5C4のPD1との結合を間接ELISAで測定した結果である。
図6】抗体14C12H1L1および5C4のPDL1と競合して結合したPD1を競合ELISAで測定した結果である。
図7】抗体14C12H1L1の、293T-PD1細胞表面のターゲットPD1タンパク質との結合EC50である。
図8】抗体14C12H1L1の、T細胞表面抗原PD1との結合活性である。
図9】抗体14C12H1L1の混合リンパ球のIFN-γ分泌への影響である。
図10】抗体14C12H1L1の混合リンパ球のIL-2分泌への影響である。
図11】抗体14C12H1L1のPBMC、MDA-MB-231およびRaji細胞を混合し共培養して誘導したサイトカインIL-2の分泌への影響である。
図12】抗体14C12H1L1のPD-1 HuGEMMマウスMC38腫瘍モデルにおける腫瘍成長への影響である。 ハイブリドーマ細胞株LT003、2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C2015105であり、アドレスは:中国武漢、武漢大学で、郵便番号は、430072である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下で実施例を組み合わせ本発明の実施形態を詳述する。当業者は、次の実施例が単に本発明を例示するために提供され、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきものではないことを理解できる。具体的な技術または条件が記載されていない実施例は、当技術分野の文献で開示される技術または条件(例えば、J.Sambrookら著、Peitang HUANGら訳、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Science Press)に従い、または製品とともに提供される説明書に従い、行った。用いた供給者が示されていない試薬および機器は、いずれも市販の通常製品である。
【0060】
本発明の次の実施例において、用いられたT細胞は、Akeso Biopharma Inc.,Zhongshanから入手した。用いられたBALB/Cマウスは、Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入されたものである。用いられたPD-1 HuGEMMマウスは、Nanjing Galaxy Biopharma Co,Ltdから入手した。使用されたMC38細胞は、FuDan IBS Cell Centerから入手した。使用された市販されているターゲットが同じである薬剤Nivolumab(Opdivo(R))単抗は、Bristol-Myers Squibb Companyから入手した。
【実施例
【0061】
実施例1:ハイブリドーマ細胞株LT003の取得およびモノクローナル抗体14C12の調製
【0062】
1.ハイブリドーマ細胞株LT003の構築
【0063】
PD1-mFc(PD1:Programmed cell death protein 1、NCBI GenBank ID:NP_005009.2)を、タンパク質と融合させて抗原として使用し、免疫BALB/Cマウス(Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入)の脾臓細胞を、マウス骨髓瘤細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を合成し、現在確立された方法(例えば、Stewart,S.J.,“Monoclonal Antibody Production”, in Basic Methods in antibody Production and Characterization, Eds. G.C. Howard and D.R. Bethell, Boca Raton:CRC Press, 2000)に従った。
【0064】
PD1-mFcを抗原としてマイクロタイタープレートを被覆し、間接ELISA法によってスクリーニングし、PD1と特異的に結合する新規な抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を得た。
【0065】
競合ELISAでリガンドPDL1-hFc融合タンパク質(PDL1:Programmed death-ligand 1, NCBI Genebank ID:NP_054862.1)と競合してPD1と結合するモノクローナル抗体を分泌できるハイブリドーマ細胞株をスクリーニングした。限界希釈法により安定的なハイブリドーマ細胞株を得、かつ、限界希釈法によりLT003安定細胞株(これにより分泌したモノクローナル抗体を14C12と命名した)を得た。
【0066】
ハイブリドーマ細胞株LT003(PD1-14C12)は、2015年6月16日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号は、CCTCC NO:C2015105であり、アドレスは:中国武漢、武漢大学で、郵便番号は、430072である。
【0067】
2.モノクローナル抗体14C12の調製
【0068】
本発明のLT003細胞株を10%の低IgGウシ胎児血清を含むIMDM培地で培養し、7日後に細胞培養上清を回収し、精製して抗体14C12を調製した。
【0069】
実施例2:モノクローナル抗体14C12の軽鎖と重鎖配列の取得
培養細胞/細菌Total RNA Extraction Kit(Tiangen、カタログ番号DP430)の方法で、実施例1にて得られたハイブリドーマ細胞株LT003からmRNAを抽出した。
【0070】
Invitrogen SuperScript(R) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット取扱説明書に従ってcDNAを合成し、かつ、PCRにより増幅させた。
【0071】
PCR増幅産物を直接にTAクローニングに供した。具体的な操作は、pEASY-T1 Cloning Kit(Transgen CT101)キット取扱説明書を参照し行った。
【0072】
TAクローニングの産物を直接に配列決定に供し、配列決定結果は以下のとおりである。
【0073】
重鎖可変領域のDNA配列決定結果:(354bp)
GAGGTCAAACTGGTGGAGAGCGGCGGCGGGCTGGTGAAGCCCGGCGGGTCACTGAAACTGAGCTGCGCCGCTTCCGGCTTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCATGGGTGAGGCAGACCCCTGAGAAGCGCCTGGAATGGGTCGCTACTATCAGCGGAGGCGGGCGATACACCTACTATCCTGACTCTGTCAAAGGGAGATTCACAATTAGTCGGGATAACGCCAGAAATACTCTGTATCTGCAGATGTCTAGTCTGCGGTCCGAGGATACAGCTCTGTACTATTGTGCAAACCGGTACGGCGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGACAGGGCACCCTGGTGACAGTCTCTGCC(SEQ ID NO:1)
【0074】
これによりコードされるタンパク質配列:(118aa)
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNARNTLYLQMSSLRSEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSA(SEQ ID NO:2)
【0075】
軽鎖可変領域のDNA配列決定結果:(318bp)
GACATTAAGATGACACAGTCCCCTTCCTCAATGTACGCTAGCCTGGGCGAGCGAGTGACCTTCACATGCAAAGCATCCCAGGACATCAACACATACCTGTCTTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGCAAAAGCCCCAAGACCCTGATCTACCGGGCCAATAGACTGGTGGACGGGGTCCCCAGCAGATTCTCCGGATCTGGCAGTGGGCAGGATTACTCCCTGACCATCAGCTCCCTGGAGTATGAAGACATGGGCATCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCTCTGACCTTTGGAGCAGGCACAAAACTGGAACTG(SEQ ID NO:3)
【0076】
これによりコードされるタンパク質配列:(106aa)
DIKMTQSPSSMYASLGERVTFTCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVDGVPSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYYCLQYDEFPLTFGAGTKLEL(SEQ ID NO:4)
【0077】
2.組換え抗体14C12(Re)の調製
14C12(Re)の重鎖cDNA配列(その可変領域配列は、SEQ ID NO:1で示す。)と軽鎖のcDNA配列(その可変領域配列は、SEQ ID NO:3で示す)を、それぞれpUC57simple(GenScript Corp.提供)ベクターにクローニングし(酵素切断サイト:XbaI&BamHI)、それぞれ、pUC57simple-14C12H、pUC57simple-14C12Lプラスミドを得た。
【0078】
プラスミドpUC57simple-14C12HとpUC57simple-14C12Lを、それぞれ、酵素(HindIII&EcoRI)で切断し、電気泳動によって回収された重鎖軽鎖をそれぞれpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、組み換えプラスミドを抽出し、293F細胞に同時トランスフェクションした。
【0079】
細胞培養7日間後、培養液を高速遠心、細孔フィルター膜を通じた真空ろ過した後、HiTrap MabSelectSuRe柱に供し、Elution Bufferでタンパク質を一歩で溶出させ、目的試料を回収し、かつHiTrap Desaltingで液をPBSに変更した後精製して組換え抗体14C12(Re)を得た。
【0080】
組換え抗体14C12(Re)をELISA結合活性試験で抗体14C12に匹敵する結合活性があり、次の抗体ヒト化のデザインに用いられることが検証された。
【0081】
実施例3:ヒト化抗体14C12H1L1の重鎖と軽鎖配列のデザイン
【0082】
1.ヒト化抗体14C12H1L1の軽鎖と重鎖配列のデザイン
PD1タンパク質の三次元結晶構造(Shinohara T, et al., Structure and chromosomal localization of the human PD1 gene(PDCD1). Genomics 1995, 23(3):704-6)および実施例2にて得られた抗体14C12の配列に基づき、抗体モデルのコンピューターシミュレーションによって、モデルによって変異をデザインし、抗体14C12H1L1の可変領域配列を得た(重鎖定常領域は、Ig gamma-1 chain C region,ACCESSION:P01857であり、軽鎖定常領域は、Ig kappa chain C region,ACCESSION:P01834である)。可変領域配列は、以下の通りである。
【0083】
重鎖可変領域のDNA配列:(354bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(SEQ ID NO:5)
【0084】
これによりコードされるタンパク質配列:(118aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:6)
【0085】
軽鎖可変領域のDNA配列:(321bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAG(SEQ ID NO:7)
【0086】
これによりコードされるタンパク質配列:(107aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(SEQ ID NO:8)
【0087】
実施例4:ヒト化抗体14C12H1L1の調製およびSDS-PAGEの電気泳動検出
14C12H1L1の重鎖cDNA(その可変領域配列はSEQ ID NO:5で示し、重鎖定常領域はIg gamma-1 chain C region、ACCESSION:P01857である)と軽鎖のcDNA(その可変領域配列は、SEQ ID NO:7で示し、軽鎖定常領域はIg kappa chain C region、ACCESSION:P01834である)を、pUC57simple(GenScript Corp.提供)ベクターにそれぞれクローニングし(酵素切断サイト:XbaI&BamHI)、pUC57simple-14C12H1とpUC57simple-14C12L1プラスミドをそれぞれ得、かつ、それぞれpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし(酵素切断サイト:XbaI&BamHI)、組み換えプラスミドを抽出し、293F細胞に同時トランスフェクションした。
【0088】
細胞培養7日間後、培養液を高速遠心、細孔フィルター膜を通じた真空ろ過した後、HiTrap MabSelectSuRe柱に供し、Elution Bufferでタンパク質を一歩で溶出させ、目的試料を回収し、かつHiTrap Desaltingで液をPBSに変更した後精製して組換え抗体14C12 H1L1を得た。SDS-PAGE電気泳動測定を行った。
【0089】
結果は、図1に示したように、還元型タンパク質試料の目的タンパク質は、約24.5kDと49KDにあったが、非還元型タンパク質試料の目的タンパク質は、約147kDにあった。
【0090】
実施例5:抗体の動的パラメータの測定
Fortebio分子間相互作用機で抗体14C12およびヒト化14C12H1L1の抗原PD1との結合の動的パラメータを測定した。
【0091】
1.TEVタンパク質酵素でPD1-mFcタンパク質を切断し、かつカラム精製してPD1抗原を得た。
【0092】
2.抗原PD1(抗原濃度:1μg/ml)をビオチンで標識してSAセンサー表面に固定させ、PBSTでバランスした後、それぞれ抗体14C12、14C12H1L1および5C4と結合し、抗体をPBSTで200nMから3倍希釈させて、PBSTにて解離させた。
【0093】
抗体14C12、14C12H1L1及び5C4の動的パラメータは、表1に示し、動的特性パラメーター検出結果をそれぞれ図2図3図4に示す。結果からわかるように、14C12と14C12H1L1は、いずれも抗原と良い親和性を有し、かつ、親和性が共に対照抗体5C4より強い。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例6:間接ELISA法による抗体の抗原PD1との結合活性の測定
間接ELISA法で14C12H1L1及び5C4のPD1との結合活性をそれぞれ測定した。具体的な方法は以下の通りであった。
【0096】
ELISAプレートにPD1-mFcを加えてインキュベートし、4℃で一晩置き、1%のBSAで37℃、2時間ブロッキングした後、それぞれ抗体を加え、37℃で30minインキュベートし、HRPで標識したヒツジ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Jackson,109-035-088)を添加し、TMB(Neogen,308177)で5min発色反応を行い、かつ、マイクロプレートリーダーで450nm波長における吸光度を測定した。
【0097】
抗体14C12H1L1及び5C4の抗原PD1と結合した結果を図5に示す。図5からわかるように、抗体14C12H1L1と5C4は、いずれも有効的にPD1タンパク質と結合でき、かつその結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度を表2に示す。結合された抗体14C12H1L1および5C4に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体14C12H1L1および5C4の結合效率EC50は、それぞれ0.032nM、0.043nMであった。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例7:競合ELISA法による抗体のPDL1と競合して抗原PD1と結合する活性の測定
【0100】
競合ELISA法でヒト化抗体14C12H1L1および5C4のPDL1と競合して抗原PD1と結合することをそれぞれ測定した。具体的な方法は以下の通りであった。
【0101】
PD1-mFcでELISAプレートを4℃で一晩被覆し、1%BSAで2時間ブロッキングした後、異なる濃度の抗体14C12H1L1と5C4を別々にPDL1-mFcと10min混合し(希釈濃度は表3に示す。)、37℃で30minインキュベートした後、対応する抗ヒトおよび抗マウス酵素標識二次抗体を添加して37℃で30minインキュベートした。マイクロプレートリーダーで450nmにおける吸光度値を測定した。
【0102】
抗体14C12H1L1及び5C4の抗原PD1との結合を測定した結果を図6に示す。図6からわかるように、抗体14C12H1L1は、PDL1と競合してPD1タンパク質と有効的に結合することができ、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は表3に示す。結合された抗体14C12H1L1と5C4に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる抗体14C12H1L1および5C4の結合效率EC50は、それぞれ1.322nM、1.199nMであった。
【0103】
【表3】
【0104】
実施例8:フローサイトメータ法による抗体の細胞表面抗原PD1との結合活性の検出
まず、PD1抗原を発現する宿主細胞293Tを構築し、そして、本発明にて調製したヒト化抗体14C12H1L1(実施例4を参照)を用いて当該宿主細胞を標識した。そして、フローサイトメトリー法で細胞表面の天然立体配座抗原に対する抗体14C12H1L1の特異的結合能を分析および検証する。
【0105】
1.PD1抗原を発現する宿主細胞293Tの構築
具体的な工程は、以下の通りであった。
【0106】
PD1抗原を発現する宿主細胞293Tの構築:lipofectaminトランスフェクションキット(Invitrogen社から購入した)の方法に従ってPD1を含むベクターpLenti6.3-PD1(ベクターpLenti6.3は、Invitrogen社から購入した)を293T細胞にトランスフェクションし、スクリーニングによりPD1を安定的に発現するクローン集団293T-PD1を得た。
【0107】
2.抗体の293T-PD1細胞表面抗原への結合
抗体標識とフローサイトメータ測定:通常のトリプシン消化法で前記工程にて得られたPD1抗原を発現する宿主細胞293T-PD1を消化し、かつ各回収チュープにおける細胞数を2×10とし、PBS(1%BSA)で濃度50nM、10nM、5nM、1nM、0.1nM、0.01nMのPD1抗体希釈液をそれぞれ調製し、氷上でPD1を発現する293T細胞と2時間インキュベートし、100μL FITCヒツジ抗ヒトIgG(1:500)を各チュープに加え、氷上で1時間インキュベートし、PBSで3回洗った後300μL PBSを添加し、細胞を再懸させ、フローサイトメータでFITCチャンネルを用いて蛍光シグナルを測定した。
【0108】
ヒト化抗体14C12H1L1の293T-PD1細胞との結合結果は、図7に示す。図7からわかるように、14C12H1L1抗体は、宿主細胞293T-PD1表面のターゲットPD1タンパク質と有効的に結合することができ、かつ、その結合效率は、投与量に依存し、各投与量の蛍光強度は、表4に示す。結合された14C12H1L1抗体に対して蛍光定量分析を行い、曲線シミュレーションによる14C12H1L1抗体の結合效率EC50は1.89nMであった。
【0109】
【表4】
【0110】
実施例9:フローサイトメータ法による抗体のT細胞表面抗原PD1との結合活性の測定
Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare LOT No.:171440-02)を採用してPBMCを分離させ、PBMCからCD4細胞を分離した。PHA(上海疾控生物科技有限公司、50μl/ml)で3日間刺激した後PBSで1回洗い、異なる濃度を有する抗体を加え、氷上で1.5時間インキュベートした。インキュベートが完了した後、PBSで1回洗い、FITCで標識された抗ヒト二次抗体IgG(Jackson immunoresearch lot.102155)を加えた。氷上でかつ遮光下で1時間インキュベートした後、PBSで1回洗ってフローサイトメータで測定した。
【0111】
ヒト化抗体14C12H1L1のT細胞との結合は、図8に示す。図8からわかるように、14C12H1L1抗体は、T細胞表面のターゲットPD1タンパク質と効果的に結合でき、かつ、その結合效率は、投与量に依存する。
【0112】
実施例10:混合リンパ球反応:サイトカイン IFN-γ、IL-2の分泌
Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare LOT No.:171440-02)を採用してPBMCを分離させ、分離したPBMCにIL-4(Peprotech K2513、1000U/ml)とGM-CSF(Peprotech H1513、1000U/ml)を添加して6日間誘導した後、TNF-α(Peprotech G1513、200U/ml)を添加して3日間誘導し、DC細胞を得た。
【0113】
PBMCからT細胞を分離し、得られたDC細胞とT細胞を、1:10の比率で混合して培養し、かつ、異なる比率の抗体14C12H1L1、5C4およびhIgG(hIgGをアイソタイプ対照とする)を加えて5~6日間培養した後、ELISAキットを用いてIFN-γ(Dakewe Groupから購入した)とIL-2(Dakewe Groupから購入した)の分泌量を測定した。
【0114】
DC細胞とT細胞を混合して培養した後、IFN-γとIL-2の分泌検出結果は、それぞれ図9図10に示す。14C12H1L1抗体は、効果的に混合リンパ球によるIFN-γとIL-2の分泌を誘導することができ、かつ、その分泌量は、抗体14C12H1L1の投与量に依存する。抗体14C12H1L1のIFN-γとIL-2の分泌を誘導する效果は共に対照抗体5C4より強い。
【0115】
実施例11:IL-2分泌の誘導
(実施例10と同じ方法で)分離して得たPBMCを、PHA(上海疾控生物科技有限公司、50μl/mL)で3日間刺激した後、96ウェルプレートに刺激によって成熟したPBMC(5×10cells/ウェル)、Raji細胞(上海中科院)(5×10cells/孔)、および、MDA-MB-231細胞(ATCC)(1×10cells/孔)を加え、100nM 14C12H1L1または対照抗体5C4またはhIgG(hIgGをアイソタイプ対照とする)を添加して均一になるように混合して共培養した。3日間後、ELISAキットを採用してIL-2(Dakewe Groupから購入した)の分泌量を測定し、具体的な手順は、キットの取扱説明書に従って行った。
【0116】
細胞を混合して培養した後のIL-2の分泌検出結果は図11に示す。図11からわかるように、14C12H1L1抗体は、効果的にPBMCのIL-2分泌を誘導でき、抗体14C12H1L1のIL-2分泌に対する誘導效果は、対照抗体5C4より著しく強い。
【0117】
実施例12:抗体14C12H1L1の、PD-1 HuGEMMマウスMC38腫瘍モデルにおける腫瘍成長への影響
PD-1 HuGEMMマウス(ヒトPD-1遺伝子導入マウス)右側皮下にMC38腫瘍細胞(1×10/匹)を接種し、平均腫瘍体積が約118mmに達すると、腫瘍体積によってマウスをランダムに4つの実験群に分け、腹腔内投与した。各群毎に、いずれも8匹のマウスであった。具体的な分類と投与量は以下の通りであった。
Isotype Control群(投与量8mg/kg)
14C12H1L1高投与量群(投与量8mg/kg)
14C12H1L1低投与量群(投与量0.8mg/kg)、
Nivolumab群(投与量8mg/kg)。
【0118】
前記の4つの群は、いずれも周2回、合計5回で投与した。各群に投与した後、腫瘍のサイズを周2回で測定した。
結果は、図12に示す。
結果により、下記のことが分かる。
Nivolumab群、14C12H1L1高投与量群、14C12H1L1低投与量群の腫瘍体積は、いずれも、統計的にIsotype control群(P<0.01、<0.01、<0.05)より著しく小さい。14C12H1L1高投与量群(8mg/kg)は、PD-1 HuGEMMマウスMC38腫瘍モデルにおいて、統計的に有意な抗腫瘍効果を示し、かつ、薬学効果が市販されているターゲットが同じである薬剤Nivolumab(8mg/kg)に相当する。
【0119】
本発明の具体的な実施形態を詳細に記載してきたが、当業者は、本明細書で開示される教示に照らして、本発明の構成に対して様々な改変および変更がなされ得、これらが全て本発明の保護範囲に包含されることを理解できる。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲およびその何らかの同等物において定められる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
前記モノクローナル抗体の重鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO:9-11であるCDRを含み、
及び/または、
前記モノクローナル抗体の軽鎖可変領域はアミノ酸配列がSEQ ID NO:12-14であるCDRを含む、
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目2)
前記モノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:6からなる群から選択され、
及び/または、
前記モノクローナル抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:8からなる群から選択される、
項目1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目3)
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFab、Fab’、F(ab’) 、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、1本鎖抗体(例えばscFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体またはダイアボディからなる群から選択されるものである、項目1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目4)
前記モノクローナル抗体のPD1タンパク質と結合するK が約10 -5 M未満、例えば、約10 -6 M、10 -7 M、10 -8 M、10 -9 Mまたは10 -10 M未満またはそれ以下であり、好ましくは、前記K がFortebio分子間相互作用機で測定される、項目1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目5)
前記モノクローナル抗体は、非-CDR領域を含み、かつ、前記非-CDR領域は、鼠類以外の種由来、例えばヒト抗体由来である、項目1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目6)
前記モノクローナル抗体がハイブリドーマ細胞株LT003から産生したモノクローナル抗体であり、前記ハイブリドーマ細胞株LT003が中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:C2015105である、項目1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
(項目7)
抗体の重鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記抗体の重鎖可変領域は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:9-11であるCDRを含み、
好ましくは、前記抗体の重鎖がSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:6で示すアミノ酸配列を有し、
より好ましくは、前記核酸分子がSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5で示す塩基配列を有する、単離核酸分子。
(項目8)
抗体軽鎖可変領域をコードすることが可能な核酸配列を含む単離核酸分子であって、
前記抗体軽鎖可変領域は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:12-14であるCDRを含み、
好ましくは、前記抗体軽鎖可変領域がSEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:8で示すアミノ酸配列を有し、
より好ましくは、前記核酸分子がSEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:7で示す塩基配列を有する、単離核酸分子。
(項目9)
項目7及び/または項目8に記載の単離核酸分子を含むベクター。
(項目10)
項目7及び/または項目8に記載の単離核酸分子、あるいは、項目9に記載のベクターを含む、宿主細胞。
(項目11)
項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を調製する方法であって、項目10に記載の宿主細胞を適切な条件で培養する工程、および、細胞培養物から前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を回収する工程を含む、方法。
(項目12)
中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:C2015105である、ハイブリドーマ細胞株LT003。
(項目13)
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片および複合部分を含む複合体であって、前記モノクローナル抗体は項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり、前記複合部分は検出可能な標識であり、好ましくは、前記複合部分が放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素である、複合体。
(項目14)
項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、あるいは、項目13に記載の複合体を含むキットであって、
好ましくは、前記キットが前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を特異的に認識する第2抗体をさらに含み、任意的に、前記第2抗体が検出可能な標識、例えば放射性同位体、蛍光物質、発光性物質、色素または酵素をさらに含む、キット。
(項目15)
試料中のPD1の存在またはそのレベルを検出するために用いられるキットの製造における、項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体の使用。
(項目16)
項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体を含み、
さらに、薬学的に許容されるベクター及び/または賦形剤をに任意的に含む、医薬組成物。
(項目17)
腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断する薬剤の調製における、項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体の使用であって、好ましくは、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、使用。
(項目18)
項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体の、
PD1のリガンドへのPD1の結合を遮断する薬剤、
PD1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する薬剤、
PD1の生体に対する免疫抑制を取り除く薬剤、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γ及び/またはIL-2の発現を増加させる薬剤
の調製における使用であって、
好ましくは、前記PD1のリガンドがPDL1またはPDL2であり、より好ましくはPDL1である、使用。
(項目19)
有効量の項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体を、細胞またはニーズがある被験者にインビボまたはインビトロで投与することを含む、
PD1のリガンドへのPD1の結合を遮断する方法、
PD1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)する方法、
PD1の生体に対する免疫抑制を取り除く方法、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γ及び/またはIL-2の発現を増加させる方法、
からなる群から選択される方法であって、
好ましくは、前記PD1のリガンドがPDL1またはPDL2であり、より好ましくは、PDL1である、方法。
(項目20)
腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断するために用いられる、項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体であって、好ましくは、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体。
(項目21)
PD1のリガンドへのPD1の結合を遮断すること、
PD1の活性またはレベルを制御(例えば下方制御)すること、
PD1の生体に対する免疫抑制を取り除くこと、あるいは、
Tリンパ球におけるIFN-γ及び/またはIL-2の発現を増加させること、
に用いられる、項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体であって、
好ましくは、前記PD1のリガンドがPDL1またはPDL2であり、より好ましくは、PDL1である、項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体。
(項目22)
有効量の項目1~6の何れか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片あるいは項目13に記載の複合体を、ニーズがある被験者に投与することを含む、腫瘍または貧血を、予防および/または治療、あるいは、診断する方法であって、
好ましくは、前記腫瘍が、メラノーマ、腎臓腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、消化器癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および白血病からなる群から選択されるものである、方法。
図1
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【配列表】
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