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特許7082639基板上の液体成分の測定方法および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】基板上の液体成分の測定方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20220601BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01N21/3577
H01L21/66 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020076630
(22)【出願日】2020-04-23
(62)【分割の表示】P 2019083838の分割
【原出願日】2014-09-26
(65)【公開番号】P2020118698
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 博
(72)【発明者】
【氏名】平木 哲
(72)【発明者】
【氏名】安田 信義
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-218402(JP,A)
【文献】特開昭60-224002(JP,A)
【文献】特開2008-096309(JP,A)
【文献】特開2003-130615(JP,A)
【文献】特開2013-033817(JP,A)
【文献】特開2012-216754(JP,A)
【文献】特開2014-045150(JP,A)
【文献】特開2013-057513(JP,A)
【文献】特開2008-311256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268160(US,A1)
【文献】特開平07-181018(JP,A)
【文献】特開2006-023200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
H01L 21/304-H01L 21/306
H01L 21/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する基板上に処理液を供給し、
前記処理液の供給中および/または供給停止後に、前記基板上面に形成された前記処理液の液膜に前記基板の前記液膜側に空間を隔てて設けられた投光部から赤外線を照射し、
前記基板の上面で反射された反射光を前記基板の前記液膜側に空間を隔てて設けられた受光部で受光し、
受光した赤外線を測光部により検出し、
前記測光部による1回または複数回の検出結果を積算することによって、演算部が所定波長における吸光度を算出し、前記演算部が前記吸光度を算出するための測定時間が前記基板の回転周期以上であり、
前記吸光度から前記液膜に含まれる1以上の成分の存在量を測定する、
基板上の液体成分の測定方法。
【請求項2】
前記測定時間が前記基板の前記回転周期の自然数倍である、
請求項1に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項3】
前記処理液が、基板のエッチング、洗浄、リンス、脱水または乾燥のための処理液であり、水オゾン水、ラジカル水、電解イオン水、2-プロパノール等の有機溶剤、2-プロパノール等の有機溶剤と水との混合物、アンモニア過酸化水素混合液、塩酸過酸化水素混合液、硫酸過酸化水素混合液、硝酸フッ酸混合液、フッ酸、硫酸、硫酸と水との混合物、リン酸、リン酸と水との混合物、硝酸、硝酸と水との混合物、バッファードフッ酸、アンモニア、過酸化水素、塩酸、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムと水との混合物からなる群より選ばれる、
請求項1または2に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項4】
前記処理液が2-プロパノールまたは2-プロパノールと水の混合液である、
請求項3に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項5】
前記処理液が2-プロパノールであり、
前記存在量が測定される成分が前記処理液を供給する処理の前段階で前記基板上に供給された純水に由来する であり、
前記所定波長が1460nm付近のOH基の吸収ピーク波長である、
請求項4に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項6】
前記基板がシリコン半導体ウェーハである、
請求項1~5のいずれか一項に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項7】
前記赤外線は、
前記液膜への入射角が、基板上の液体成分の測定時の雰囲気を構成する気体と前記処理液に対する偏光角に等しいかそれに近い角度となるように照射され、
P偏光の光のみを照射し、または、反射光のP偏光成分のみを受光する、
請求項1~6のいずれか一項に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項8】
前記赤外線は、前記基板からの1回目の反射光がコーナーキューブによって逆方向へと反射され、前記基板で再度反射した反射光が受光される、
請求項1~7のいずれか一項に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項9】
前記反射光を受光する装置が赤外線カメラである、
請求項1~8のいずれか一項に記載された基板上の液体成分の測定方法。
【請求項10】
基板を保持して回転させる基板回転手段と、
前記基板上に処理液を供給して、前記基板上に前記処理液の液膜を形成する処理液供給手段と、
前記基板の前記液膜側に空間を隔てて設けられ、前記基板上面に形成された前記液膜に赤外線を照射する赤外線照射手段と、
前記基板の前記液膜側に空間を隔てて設けられ、前記基板の上面で反射された反射光を受光する赤外線受光手段と、
受光した赤外線を検出する測光手段と、
吸光度を算出するための測定時間を前記基板の回転周期以上として、前記測光手段による1回または複数回の検出結果を積算することにより所定波長における吸光度を算出し、該所定波長に対応する所定成分の存在量を算出する演算手段と、
を有する基板処理装置。
【請求項11】
前記測定時間が前記基板の前記回転周期の自然数倍である、
請求項10に記載された基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の基板上の液体成分を測定する方法およびその方法を使用するための基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業における枚葉式プロセス等では、半導体ウェーハ等の基板を水平等に保持して回転させながら、その表面に処理液を供給することにより、洗浄、リンス、乾燥等の処理が行われる。このとき、意図しない成分が基板上に残留すると、後工程での不良発生の原因となる。例えば、洗浄処理が不十分であるために被洗浄物質が残留する場合がある。また、近年では、ウェーハ表面に微細で高アスペクト比なパターンが形成されることが多く、リンスに用いた水が2-プロパノール等の有機溶媒を用いた乾燥処理によっても除去されにくく、表面張力の大きい水が残留することによってパターンが倒壊することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-140881号公報
【文献】特開2014-112652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題に対して、処理液を余剰に供給する、処理時間を長くする、処理回数を多くするなどの対策が講じられている。しかしながら、処理液の使用量が増えると、廃液処理のコストが増加するという問題があった。
【0005】
処理液使用量を減らして基板処理を効率的に行うためには、残留が懸念される成分など、着目すべき成分の量をその場で確認しながら、基板を処理することが好ましい。洗浄処理中に基板上の洗浄液の成分変化を監視したり、乾燥処理中に基板上の水の量を監視したりすることにより、無駄に使用される処理液の量を減らすことができる。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、基板を処理しながら、基板上に存在する成分の量をその場で測定可能な基板上の液体成分の測定方法を提供することを課題とする。併せて、かかる方法を使用するための基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に対して、本発明は、基板上の処理液膜中の成分量を赤外線吸収法によって測定する。
【0008】
具体的には、本発明の基板上の液体成分の測定方法は、回転する基板上に処理液を供給し、前記処理液の供給中および/または供給停止後に、前記基板上面に形成された前記処理液の液膜に赤外線を照射して反射光を受光し、所定波長における吸光度から前記処理液膜に含まれる1以上の成分の存在量を測定する。
【0009】
ここで、赤外線は、近赤外線、中間赤外線、遠赤外線を含む、広義の赤外線を意味する。
【0010】
この方法により、着目すべき成分について、基板上に存在する量を監視しながら、基板を処理することができる。その結果、例えば、処理液の使用量を低減することができる。
【0011】
好ましくは、前記吸光度は、前記基板の回転周期より長い測定時間に対して求められる。
【0012】
これにより、基板表面に凹凸があるなどして、基板が回転の周方向で均一でない場合でも、吸光度の変動が平均化され、測定精度が向上する。
【0013】
前記基板上の液体成分の測定方法は、好ましくは、前記処理液膜に含まれる主要成分すべてについて、それぞれ所定波長における吸光度から存在量を測定し、これを合算することによって前記処理液膜厚を算出する。
【0014】
これにより、処理液供給中および/または供給停止後の処理液膜厚の変化を監視することができる。赤外線吸収法によって膜厚を測定するので、基板表面に凹凸がある場合でもその影響を受けず、基板の回転の周方向に平均化された膜厚を得ることができる。
【0015】
前記基板上の液体成分の測定方法は、好ましくは、前記吸光度から算出された前記処理液膜厚または他の方法で測定された前記処理液膜厚と、前記処理液膜に含まれる1以上の成分の存在量とから、当該成分の濃度を算出する。
【0016】
これにより、処理液膜中の着目すべき成分の濃度を知ることができる。
【0017】
前記基板は、半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、結晶ウェーハまたはセラミックウェーハとすることができる。さらに、前記基板は、シリコン半導体ウェーハとすることができる。
【0018】
前記処理液は、基板のエッチング、洗浄、リンス、脱水または乾燥のための処理液とすることができる。
【0019】
前記処理液は、水;オゾン水、ラジカル水、電解イオン水等の機能水;2-プロパノール等の有機溶剤;アンモニア過酸化水素混合液、塩酸過酸化水素混合液、硫酸過酸化水素混合液、硝酸フッ酸混合液、フッ酸、硫酸、リン酸、硝酸、バッファードフッ酸、アンモニア、過酸化水素、塩酸、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)およびこれらと水との混合液;からなる群より選ばれることができる。
【0020】
前記存在量が測定される成分はHOとすることができる。このとき、好ましくは、HOを測定するための前記所定波長は、1460nm付近のOH基の吸収ピーク波長である。また、測定される成分がHOであるときに、前記処理液は、2-プロパノールまたは2-プロパノールと水の混合液とすることができる。
【0021】
好ましくは、前記赤外線が、少なくとも波長1350~1720nmの光を含む。
【0022】
前記存在量が測定される成分の少なくとも1つは、前記処理液を供給する処理の前段階で前記基板上に供給された液体に由来する成分であってもよい。このとき、前記処理液が2-プロパノールであり、前記存在量が測定される成分がHOであってもよい。
【0023】
好ましくは、前記赤外線は、前記処理液膜への入射角が、基板上の液体成分の測定時の雰囲気を構成する気体と前記処理液に対する偏光角(ブルースター角)に等しいかそれに近い角度となるように照射される。そして、前記赤外線は、P偏光の光のみを照射し、または、反射光のP偏光成分のみを受光する。
【0024】
これにより、処理液膜表面での赤外線の反射をなくし、液膜界面での多重反射による干渉をなくすことができる。その結果、液膜厚の違いによって受光する赤外線強度が変動することが抑制され、測定精度が向上する。
【0025】
好ましくは、前記赤外線は、前記基板からの1回目の反射光がコーナーキューブによって逆方向へと反射された後、前記基板で再度反射した反射光が受光される。
【0026】
これにより、受光する赤外線強度が、基板の反りや回転による面ぶれの影響を受けにくくなるので、測定精度が向上する。
【0027】
前記反射光を受光する装置は赤外線カメラであってもよい。
【0028】
これにより、基板上の測定領域をより広くすることができるので、基板表面に凹凸があるなどの場合でもその影響が平均化され、測定精度が向上する。
【0029】
前記赤外線は、前記基板の回転の径方向に入射位置を移動させながら照射されてもよい。
【0030】
これにより、基板の中央部から周縁部にかけての、処理液膜厚の分布を確認することができる。
【0031】
本発明の基板処理装置は、基板を保持して回転させる基板回転手段と、前記基板上に処理液を供給する処理液供給手段と、前記基板に赤外線を照射する赤外線照射手段と、前記基板からの反射光を受光する赤外線受光手段と、受光した赤外線を検出する測光手段と、所定波長における吸光度を求め、該所定波長に対応する所定成分の存在量を算出する演算手段とを有する。
【0032】
この構成により、基板上に存在する着目すべき成分の量を監視しながら基板を処理することによって、処理液の使用量を低減することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の基板上の液体成分の測定方法または基板処理装置によれば、基板を処理しながら、基板上に存在する成分の量をその場で測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の基板処理装置の第1の実施形態を示す模式図である。
図2】赤外線吸収スペクトルの例である。
図3】基板の表面凹凸の影響を説明するための図である。
図4】基板上の処理液膜による干渉の影響を説明するための図である。
図5】本発明の基板処理装置の第2の実施形態を説明するための図である。
図6】本発明の基板処理装置の第3の実施形態を説明するための図である。
図7】本発明の第1の実施形態による実験結果である。
図8】本発明の第1の実施形態による実験結果である。
図9】基板上の処理液膜による干渉の影響についての実験結果である。
図10】基板上の処理液膜による干渉の影響についての実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第1の実施形態の装置および方法を図1~4に基づいて説明する。
【0036】
図1において、本実施形態の基板処理装置10は、枚葉式の半導体ウェーハ処理装置である。基板処理装置10は、ウェーハWを水平または所望の角度に保持して回転させる回転テーブル11と、ウェーハ上に処理液Sを供給するノズル12を有する。基板処理装置はさらに、赤外線光源13と光ファイバー14によって接続された投光部15、受光部16、受光部と光ファイバー17によって接続された測光部18、測光部と電気的に接続された演算部19を有する。光学系の構成の詳細は後述する。
【0037】
ウェーハWを回転させながらその上面に処理液Sを供給すると、処理液は遠心力によってウェーハの周縁部に向かって移動し、移動量と供給量が釣り合う膜厚の液膜Fを形成する。処理液の供給が停止すると、処理液はウェーハ周縁部から排出され、処理液膜は膜厚を減じて、やがて消滅する。また、処理液の供給停止後に、時間をおいて供給を再開し、同じ処理が繰り返し行われることもある。このような処理は、例えば、ウェーハの各種現像、洗浄、リンス、乾燥(水分除去)のために行われる。
【0038】
赤外線IRは、投光部15からウェーハWに向かって照射される。ウェーハからの反射光が受光部16で受光される。このとき、赤外線がウェーハ上の処理液膜Fを通過する際に、液膜中に含まれる種々の成分によって、赤外線の一部が吸収される。受光した赤外線は測光部18で分光および検出され、そのデータが演算部19に送られる。
【0039】
物質は、それぞれ固有の吸収スペクトルを有する。演算部19は、赤外線の吸収スペクトルから、測定したい成分に応じた所定波長における吸光度を求め、当該成分の量を算出することができる。
【0040】
図2に、例として、純水、2-プロパノール(50重量%)-水(50重量%)混合液、2-プロパノールに赤外線を照射したときの吸光スペクトルを示す。図の横軸は光の波長、縦軸は吸光度で任意単位である。波長1460nm付近には、HOのOH結合に起因する吸収のピークが認められる。波長1690nm付近には、2-プロパノールのCH結合に起因する2つの吸収ピークが認められる。そこで、HOを測定したい場合には、約1460nm付近のOH基の吸収ピーク波長における吸光度に着目すればよい。なお、1460nm付近はOH基の伸縮振動の倍音であり、1690nm付近はCH基の伸縮振動の倍音である。
【0041】
吸光度は、ランベルト・ベールの法則より、A=αLC、で表される。ここで、Aは吸光度、αは吸光係数、Lは光路長、Cは濃度を表す。ウェーハ上に存在する当該成分の量はLCに比例する。当該成分の吸光係数αが既知であれば、上式からLCの値を求めることもできる。しかし、吸光係数は共存する成分の影響等を受けて変化するので、実際の処理条件に近い条件で、厚さが既知の膜を用いて測定を行って検量線を作成し、その検量線に基づいてLCの値を算出するのが好ましい。
【0042】
ウェーハW上の当該成分の存在量は、種々の形式で表現することができる。例えば、吸光度Aをそのまま用いてもよい。また、その成分のみからなる仮想の薄膜を想定し、その膜厚(以下「仮想膜厚」という)によって表してもよい。これらはいずれも、ウェーハ上に存在する当該成分の絶対量の指標となる。
【0043】
このように、着目すべき成分について、処理液膜中の存在量を監視することによって、処理が確実に行われているか、あるいは確実に行われたかを確認することができる。
【0044】
ウェーハW上の実際の処理液膜厚は、液膜Fに含まれるすべての主要成分について仮想膜厚を求め、これを足し合わせることによって算出することができる。ここで、主要成分とは、それを無視すると、算出される膜厚の値に影響を及ぼすような成分をいう。したがって、処理液膜厚計測には、測定誤差を考慮すれば、不純物、添加物などの処理液膜厚中の含有量が少ない成分は含めなくてもよい。なお、含有量が少ない成分の濃度を測定したい場合には、含有量が少ない成分の存在量に対しての仮想膜厚値を用いて、仮想膜厚値/処理液膜厚という式により、含有量の少ない成分であっても濃度を計算することができる。
【0045】
本実施形態では、処理液膜厚を赤外線吸収法によって求めるので、ウェーハW表面の凹凸等の影響を受けない。図3に示すように、パターニングなどによりウェーハW表面に凹凸がある場合でも、その上面にある液膜Fの厚さを平均化した値を得ることができる。これは光干渉法による膜厚測定にはない利点である。
【0046】
このように、処理液の膜厚を求めることで、処理液膜の状態を監視することができる。また、例えば、液膜の有無を確認して、繰り返し処理を行う際に、処理液の供給停止時間を短縮することができるという利点がある。
【0047】
さらに、実際の処理液膜の膜厚が分かれば、その膜厚と、ある成分の仮想膜厚すなわち存在量とから、処理液膜に含まれる当該成分の濃度を知ることができる。ここで、実際の処理液膜の膜厚としては、上記のように、赤外線吸収法によって吸光度から算出された膜厚を用いることができる。あるいは、実際の処理液膜の膜厚として、赤外線吸収法以外の方法によって求めた膜厚を用いることができる。例えば、光干渉法によって膜厚が測定可能であれば、その方法で測定した膜厚を用いてもよい。
【0048】
ある成分の濃度を監視することにより、次のような場合に実益がある。洗浄液の洗浄力を監視したい場合は、洗浄の有効成分について、その存在量(絶対値)よりも、洗浄液中での濃度(相対値)の方が重要性が高い。例えば、フッ酸洗浄処理において、ウェーハ表面の液膜中のFイオンの濃度を監視することにより、洗浄力を監視することができる。
【0049】
図1において、光源13、光ファイバー14、投光部15は、目的に応じた波長の光が照射できるように設計される。また、受光部16、光ファイバー17、測光部18は、目的に応じた波長の光を受光して分光可能に設計される。
【0050】
光源13は、好ましくは、連続する波長範囲の光を発生する。これにより、演算部の設定を変更するだけで、多くの成分に対応することができるからである。また、測定する成分が定まっている場合でも、吸収ピーク波長は共存する周囲の物質によってシフトすることがあるので、連続した波長を用いる方が、より高精度での測定が可能となる。このような光源としては、ハロゲンタングステンランプ等の市販のものを用いることができる。
【0051】
なお、光源13が発生する光は、単一の波長であってもよい。例えば、波長可変レーザーであってもよいし、干渉フィルター等を用いて、目的とする成分の吸収ピーク波長を選択的に取り出すものであってもよい。単一の波長を用いることのメリットは、後の演算処理が単純になり、演算速度を速くできることである。なお、単一波長を用いるためには、投光部15に、バンドパスフィルターである干渉フィルタを設置して、所望の波長を投光してもよい。
【0052】
投光部15は、コリメータを備えて、平行光線を投光できることが好ましいが、光学系の明るさを確保するためにウェーハ表面に集光する光線でもよい。ウェーハW上に赤外線を照射する位置は特に限定されない。また、赤外線を照射している間に、照射位置は動かさずに固定していてもよいし、照射位置をウェーハの回転の径方向に移動させてもよい。照射位置を回転の径方向に移動させて測定すれば、ウェーハ全面における測定データプロフィールを測定することができ、ウェーハ全面での変動量を取得して、プロセス管理指標として使用できる。
【0053】
受光部16は、投光部から照射された赤外線の正反射光を受光できるように配置されることが好ましいが、意図的に正反射角度を外して、拡散反射光を受光してもよい。この場合はウェーハのパターン、液膜の光干渉の影響を緩和させる効果がある。
【0054】
測光部18は、受光部16から光ファイバー17によって導かれた赤外線を必要に応じて分光し、検出して電気信号に変換し、必要に応じて増幅等の処理を行う。測光部18の構造は特に限定されず、回折格子等を用いた分散型分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計等の非分散型分光光度計など、公知のものを用いることができる。、投光部15から特定の波長の光が投光される場合は、測光部での分光手段は不要である。
【0055】
演算部19は、測光部18からの電気信号に基づいて、吸収スペクトルや所定波長における吸光度を計算する他、吸光度を積算による平均化処理あるいは、単位時間内に度数分布を作成して、メディアン値(中央値)を求めて、測定データのばらつきを抑える処理を行う。その後、仮想膜厚値演算、濃度演算等を行う。
【0056】
赤外線IRの波長は、基板が反射する波長であることを要する。半導体は、そのバンドギャップより小さいエネルギーの光に対して透明である。しかし、そのような長波長の光に対しても、一般に半導体の屈折率が大きいことから、実用上十分な反射が得られることが多い。例えば、シリコンウェーハでは、1950nm以下の光であれば、十分な反射率が得られた。
【0057】
連続する波長範囲の赤外線を用いる場合、その波長範囲が、測定しようとする成分が吸収する波長を含む必要がある。例えば、HOと2-プロパノールを測定するためには、好ましくは、1350~1720nmを含む波長範囲の光を照射する。他の実用上重要な成分を分析するために、より好ましくは900~1950nm、さらに好ましくは800~2600nmを含む波長範囲の光を照射する。
【0058】
投光部15および受光部16の配置は、好ましくは、赤外線の処理液膜への入射角が、偏光角に等しいかそれに近い角度となるように構成されており、かつP偏光の光のみを測定に用いることが好ましい。図4Aにおいて、赤外線IRが処理液膜F表面とウェーハW表面で反射すると、多重反射により干渉が生じ、膜厚によって反射光強度が振動し、測定誤差の要因となる。この現象は、処理液供給停止後に、液膜厚が減少する過程で特に顕著に現れる。これに対して、図4Bにおいて、偏光角θとP偏光を利用することにより、処理液膜表面での反射がなくなり、多重反射による干渉が生じない。
【0059】
偏光角θは、ブルースター角とも呼ばれる。偏光角は、透明体表面に光を入射したときに、入射面に平行な電場ベクトルを持つ偏光成分(P偏光)の光の反射率が0となる角度で、tanθ=n/n、によって定まる。ここで、θは偏光角、nは透過側媒質の屈折率、nは入射側媒質の屈折率である。したがって、本実施形態においては、測定を実施するときの雰囲気を構成する気体を入射側媒質、処理液を透過側媒質として偏光角を求めればよい。例えば、窒素の屈折率nを1、水の波長800~1600nmにおける屈折率nを1.33~1.31とすれば、窒素雰囲気から希薄水溶液に光が入射するときの偏光角θは約53度となる。
【0060】
P偏光の光のみを測定に用いるには、P偏光の光のみを照射し、または、反射光のP偏光成分のみを受光する。前者であれば、投光部15の前面に偏光子を設けて、P偏光の光のみを照射すればよい。後者であれば、受光部16の前面に偏光子を設けて、P偏光成分の光のみを受光すればよい。
【0061】
偏光角θは、入射側の気体や透過側の処理液の屈折率に依存するので、厳密には、雰囲気を構成する気体の種類や、処理液の種類・濃度等によって異なる。これに対して、投光部15および受光部16の配置を処理液に応じて調整してもよい。また、気体や水溶液の屈折率は成分が異なっても大きな違いはないので、代表的な処理に合わせて投光部や受光部の配置を固定しても、他の処理に対して十分な効果が得られることが多い。例えば、入射角が、偏光角-12度から偏光角+6度の範囲であれば、十分な効果が得られる。
【0062】
次に、吸光度の測定時間に関して好ましい範囲を説明する。受光した赤外線を測光部18が検出する際、1回の検出の検出時間(例えばフォトダイオードの露光時間)は、通常数ミリ秒から数十ミリ秒である。吸光度は、1回または複数回の検出結果を演算部19で積算することによって求められる。ここで、ウェーハWに凹凸があるなどして表面が均一でない場合には、ウェーハ上の位置によって処理液膜厚が異なるため、回転に伴ってウェーハ上の測定位置が変化すると、測定値がばらつくことになる。したがって、演算部19が吸光度を算出するための測定時間は、ウェーハの回転周期よりも長いことが好ましい。これにより、測定時間内にウェーハが1回転以上するので、処理液膜厚が均一でなくとも、その影響が平均化される。また、吸光度の測定時間が、ウェーハの回転周期の自然数倍であることがさらに好ましい。これにより、ウェーハの回転の周方向の全周にわたって、凹凸の影響が同じ重みで平均化されるので、測定ばらつきがより低減される。
【0063】
本実施形態の基板上の液体成分の測定方法および基板処理装置は、様々な処理および処理液に対して適用可能である。例えば、窒化膜エッチング処理におけるリン酸液;酸化膜エッチング処理における希フッ酸、バッファードフッ酸;コバルトエッチング処理における各種酸系の薬液;各種洗浄処理における硫酸過酸化水素混合液、アンモニア過酸化水素混合液、塩酸過酸化水素混合液、オゾン水、ラジカル水や電解イオン水などの機能水;リンス処理における純水;乾燥処理における2-プロパノール;TMAHなどの処理液に対して測定を行うことができる。これらの処理は、その成否が後工程での不良率に直接影響するので、本発明を適用することのメリットが大きい。
【0064】
また、処理液は、供給中に徐々に組成を変えながら供給されるものであってもよい。
【0065】
本実施形態の基板上の液体成分の測定方法および基板処理装置が適用可能な成分は特に限定されない。上記各処理液中の成分に対して、その存在量を測定することができる。
【0066】
なかでも、2-プロパノールによる乾燥処理中にHOの存在量を確認するために本発明を適用することは、特にメリットが大きい。半導体製造工程では、何らかのウェット処理を行った後に、純水によるリンスと2-プロパノール等による乾燥処理が必ず行われるからである。また、前述のとおり、乾燥処理後に水が残留すると大きな問題を生じるからである。このHOは、乾燥処理で使用される2-プロパノールに不純物等として含まれるものであっても、前段階であるリンス処理で使用されたものが残留したものであってもよい。特に、微細でアスペクト比の大きいパターニングが施されたウェーハではリンス処理後に水が残留しやすいので、その後段階である2-プロパノールによる乾燥処理中にリンス処理で使用された純水に由来するHOの存在量を確認することのメリットは大きい。
【0067】
O量を測定するための吸収ピークは、前述の1460nm付近の他に、1200nm付近、1900nm付近、2600nm付近にも存在する。1200nm付近の吸収ピークは吸収係数が小さい。1900nmおよび2600nm付近の吸収ピークは、吸収係数が大きいが、シリコンウェーハの反射率が小さくなり、結果として測定される吸光度が小さくなる。したがって、HOの測定には、1460nm付近の吸収ピークを利用することが好ましい。
【0068】
次に本発明の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。本実施形態は、受光部に赤外線カメラを用いることを特徴とする。
【0069】
図5において、本実施形態では、投光部22から、ウェーハW上のより広い範囲に赤外線IRを照射し、赤外線が照射された領域を3台の赤外線カメラ23で撮像する。赤外線カメラ23は、撮影した画像データを電気信号として演算部19に送信する。つまり本実施形態の赤外線カメラは、第1の実施形態の受光部と測光部の機能を兼ねている。これにより、ウェーハ上のより広い領域に対して測定することができるので、ウェーハ表面の不均一に起因する測定のばらつきが平均化され、測定精度が向上する。
【0070】
赤外線カメラ23は、1台の赤外線カメラを用いる場合、撮像素子は可視光線領域でのRGBカメラのように、赤外線領域で3波長以上の赤外線に感度があるものを好ましく用いるが、本実施形態では、測定波長値と数の任意性のため、赤外線カメラへの入射箇所にそれぞれの透過波長が異なるバンドパスフィルターを設置した複数のカメラを採用した。このとき、演算部19において、各カメラからの画像の位置を合わせ、同一位置に対応する画素の明るさの差を取ることによって、当該位置における吸光度を求めることができる。吸収スペクトルのベースラインは種々の要因によって変動することがあり、1台のカメラで吸光度を求めると、この影響を強く受ける。波長感度特性が異なる2台以上の赤外線カメラを用いることにより、吸収スペクトルのベースラインが変動しても、その影響を抑えることができるので、測定精度が向上する。
【0071】
具体的には、例えば、次のように実施することができる。各カメラには、それぞれのカメラで撮像したい赤外線波長に一致するバンドパスフィルターを組み込む。カメラが3台の場合、第1カメラが感知する波長を吸光度を測定波長λ、第2カメラが感知する波長を参照波長λ、第3カメラが感知する波長を参照波長λとする。ここで、測定波長λは測定したい成分による吸収ピーク波長である。参照波長λは、測定波長より少し短波長であって、当該成分による吸収の影響を受けないような波長である。参照波長λは、測定波長より少し長波長であって、当該成分による吸収の影響を受けないような波長である。第1カメラによって測定される吸光度A(λ)は、当該成分の吸光度であるが、吸収スペクトルのベースラインの変動の影響を受ける。そこで、第1カメラによる吸光度A(λ)から、第2および第3カメラによる参照波長における吸光度A(λ)、A(λ)を引くことによってこれを修正する。修正された吸光度は、
A(λ)-{A(λ)+A(λ)}/2
で求められる。この式の第2項には吸収スペクトルのベースラインの変動が反映されているので、当該成分の吸光度をより精度よく求めることができる。
【0072】
カメラが2台の場合は、上記参照波長として、A(λ)またはA(λ)のいずれか一方を用いればよい。
【0073】
次に、本発明の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。
【0074】
図6において、本実施形態では、光学系にコーナーキューブ21を有する。コーナーキューブは、3枚の平面鏡を鏡面を内側にして互いに直角に組み合わせて、立方体の頂点型にした装置である。コーナーキューブの内側に入射した光は、入射光と平行に逆方法に戻る。投光部15から液膜Fに向けて照射された赤外線IRは、ウェーハWで1回目の反射をしてコーナーキューブ21に達し、コーナーキューブによって逆方向へと反射され、ウェーハで再度反射した反射光が受光部16に受光される。
【0075】
ウェーハWに反りが生じたり、回転による面ぶれが発生すると、ウェーハから1回目の反射光が進む方向が変化する。反射光の進行方向が受光部の中心を大きく外れると、受光される赤外線の強度が低下し、測定誤差の原因となる。本実施形態によれば、コーナーキューブからの反射光は入射光と平行に戻るので、面ぶれ等があっても、ウェーハWで再度反射した光は、投光部15から照射された光と平行に、投光部に向かって戻る。したがって、光が受光部から大きく逸れることがない。
【0076】
コーナーキューブ21を利用すると、投光部15に向かって戻る反射光を、受光部16に導く必要がある。このことは、図6に示すように、同軸プローブを用いて、投光部15と受光部16を一体化することによって実現できる。また、ハーフミラー等を利用して、反射光を分離して受光部に導くこともできる。
【実施例
【0077】
次に、本発明の基板上の液体成分の測定方法について、実験結果に基づいて、より詳細に説明する。
【0078】
実験は、前記第1の実施形態で説明した装置を用いて行った。なお、光源はタングステンランプ(15W)を用い、その光源の後に、干渉フィルタを組込、分光する。センサーはInGaAs(インジウムガリウムヒ素)タイプを用いた。径150mmのパターニングされていないシリコンウェーハを300rpmで回転させながら、2-プロパノール(以下「IPA」と略記する)またはIPAと水の混合液を、23mL/分で、ノズルよりウェーハの中心に滴下した。赤外線は、波長範囲が約900~1950nmで、入射角53度でウェーハ外周縁より1cm内側に照射し、投光部の前方に偏光子を設けてP偏光成分のみを利用した。反射光を受光して赤外吸収スペクトルを求め、1460nm付近の吸光度よりHO、1690nm付近の吸光度よりIPAの存在量を測定した。測定1回につき30回の検出を積算し、測定時間は約1.07秒とした。HOおよびIPAの定量は、同条件で、IPA-水混合液の濃度を変えて実験を行い、液膜の厚さを光干渉法により測定して、検量線を作成して行った。
【0079】
図7に実験結果を示す。図の縦軸は吸光度(任意単位)を表している。図の横軸は時間経過を表しており、1目盛が20測定、21.4秒を表している。この実験では、ウェーハ上にIPAを約1分間滴下することを、時間をおいて3回繰り返した。IPA滴下中の液膜厚は約60μmであった。滴下により液膜が形成されるとIPAによる吸光度が上がった。一方、HOによる吸光度はほぼ0であった。
【0080】
図8は、HOの濃度(重量%)を示したものである。図8A図14と同じデータから作成されたものである。図8Bおよび図8Cは、それぞれ、IPA(94重量%)-水(6重量%)、IPA(91重量%)-水(9重量%)の混合液を滴下した実験の結果である。HO濃度は、赤外線吸収法により求めたもので、HOの仮想膜厚を、HOの仮想膜厚とIPAの仮想膜厚の和で除したものである。図8より、処理液中のHO濃度が測定可能であることを確認した。
【0081】
図7および図8の実験における測定データの標準偏差は、HO仮想膜厚で0.36~0.77μm、HO濃度で0.62~1.22%であった。HO濃度はHOの膜厚を全体の膜厚で除しているため、標準偏差がより大きくなっている。
【0082】
この測定精度は、簡易な実験装置によるものとしては妥当なものであるが、さらに改善の余地がある。本発明者らが観察したところ、これらの実験における測定誤差の原因は、主としてノズルからの処理液の吐出むらとウェーハの回転による面ぶれと考えられる。これらは、それぞれ供給系および回転系の機械的な改良によって改善できる。また、面ぶれの影響については、第3の実施形態で述べたとおり、コーナーキューブを用いることにより、さらに低減することができる。
【0083】
ここで、IPAの供給停止後に、膜厚が徐々に減少する過程で、HO等の成分の測定が可能かを検討する。図7より、ウェーハ上のIPA液膜は、IPAの供給停止後約5秒で消滅している。この実験のウェーハの回転周期は0.2秒であったので、液膜が消滅するまでにウェーハは約25回転したことになる。本実験の測定時間は約1秒であったが、上記の測定精度向上策を講じるとともに、演算部の処理速度を上げることで、測定時間はさらに短縮可能である。仮に測定時間を0.2秒とすれば、膜厚が減少する過程においても、約20回以上の測定が可能となる。したがって、膜厚が減少している過程でHO等の存在量の変化を観測することは十分に可能である。
【0084】
次に、偏光角とP偏光を用いることの効果を確認するための実験を行った。この実験は、ウェーハを回転させずに、約30mLのIPAをウェーハ上に滴下し、蒸発によってIPA液膜が消滅する過程での吸光度変化を測定した。図9は照射光の偏光を制御せずに行った実験の結果、図10は、投光部の前方に偏光子を設けてP偏光成分のみを照射した実験の結果である。図には、便宜的に、1300nm、1500nm、1700nmにおける吸光度の時間変化を示した。図の縦軸は吸光度(任意単位)で、横軸は時間経過を表しており、1目盛が20測定で10秒を表している。
【0085】
図9の吸光度は、IPA滴下により液膜が形成されると上昇し、IPAが広がることによって膜厚が減少すると急速に低下し、蒸発によって膜厚が減少するにつれて約0.2まで徐々に低下し、IPA膜が消滅すると急激に低下して、ウェーハが完全に乾燥すると0に戻った。図9より、IPA膜厚が0に近づくと、干渉によって吸光度が振動するのが認められた。膜厚減少中に吸光度が約0.2までしか下がらない理由は明らかではないが、IPA膜表面での反射・散乱によるオフセットであると考えられる。
【0086】
図10の吸光度は、IPA滴下により液膜が形成されると上昇し、IPAが広がることによって膜厚が減少すると急速に低下し、蒸発によって膜厚が減少するにつれて約-0.04まで徐々に低下し、IPA膜が消滅すると急激に上昇して、ウェーハが完全に乾燥すると0に戻った。図10では、IPA膜厚が0に近づいても、干渉による吸光度の振動が認められなかった。膜厚減少中に吸光度が約-0.04まで下がる理由は明らかではないが、IPA膜の有無による反射率の変化によるものと考えられる。
【0087】
図9および図10の結果から、赤外線を偏光角に近い角度で入射し、P偏光の光のみを利用することによって、膜厚が小さい液膜に対して、顕著に測定精度が向上することが確認できた。
【0088】
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0089】
例えば、基板はシリコンウェーハに限られず、炭化ケイ素、ガリウムヒ素等の化合物半導体、サファイア等の結晶ウェーハであってもよい。また、基板はフラットパネルディスプレイ用のガラス基板であってもよいし、電子部品等を製造するためのセラミックウェーハであってもよい。これらの基板では、いずれも、処理液による処理の成否が、製品の不良率に大きく影響するので、本発明を適用することの効果が大きい。
【符号の説明】
【0090】
10 基板処理装置
11 回転テーブル(基板回転手段)
12 処理液供給ノズル(処理液供給手段)
13 光源
14、17 光ファイバー
15、22 投光部(赤外線照射手段)
16 受光部(赤外線受光手段)
18 測光部(測光手段)
19 演算部(演算手段)
21 コーナーキューブ
23 赤外線カメラ
W ウェーハ(基板)
S 処理液
F 処理液膜
IR 赤外線
θ 入射角
θ 偏光角(ブルースター角)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10