(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】miR-124を調節することにより幹細胞を分化させる方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20220601BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220601BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220601BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N15/12
C12N15/113 Z
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2020131678
(22)【出願日】2020-08-03
(62)【分割の表示】P 2018171192の分割
【原出願日】2013-11-26
【審査請求日】2020-08-03
(32)【優先日】2012-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514149598
【氏名又は名称】アクセラレイテッド・バイオサイエンシズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャウ-ナン
(72)【発明者】
【氏名】リー,トニー・トゥン-イーン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユータ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/091766(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/095589(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0064587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0233649(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02233566(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00~7/08
C12N 15/00~15/90
C12P 1/00~41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)インスリン
の発現、(ii)ベータトロフィンタンパク質またはベータトロフィンmRNA
の発現、(iii)C-ペプチド
の発現、(iv)miR-124発現の上昇、および(v)低いか非存在であるCD33発現またはCD133発現を示す、単離された膵臓前駆細胞。
【請求項2】
単離された膵臓前駆細胞が、ヒト細胞である、請求項1に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項3】
単離された膵臓前駆細胞が、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿の細胞である、請求項1に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項4】
単離された膵臓前駆細胞が、インスリンおよびグルカゴンを発現する、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項5】
単離された膵臓前駆細胞が、Ngn3をさらに発現する、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項6】
単離された膵臓前駆細胞が、インスリンおよびNgn3を発現する、請求項5に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項7】
疾患の治療を必要とする哺乳動物における疾患の治療に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項8】
疾患が、インスリン障害である、請求項7に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項9】
疾患が、糖尿病である、請求項7に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項10】
疾患が、1型糖尿病である、請求項7に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項11】
疾患が、2型糖尿病である、請求項7に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項12】
疾患の治療を必要とする哺乳動物が、糖尿病に関連する1つまたはそれより多くの症状を有する、請求項7~11のいずれか一項に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項13】
1つまたはそれより多くの症状が、多尿症(頻尿)、多渇症(喉の渇きの増加)、多食症(空腹感の増加)、体重減少、霧視、痒み、末梢神経疾患、再発性膣感染症、疲労、創傷またはただれの治癒の遅さ、およびそれらのあらゆる組み合わせからなる群より選択される、請求項12に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項14】
疾患の治療を必要とする哺乳動物が、ヒトである、請求項7~13のいずれか一項に記載の使用のための単離された膵臓前駆細胞。
【請求項15】
疾患の処置に有用な物質のスクリーニングに使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【請求項16】
細胞の細胞調節または細胞毒性の決定に有用な物質のスクリーニングに使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された膵臓前駆細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、2012年11月30日付けで出願された米国仮出願第61/732,162号および2013年9月12日付けで出願された米国仮出願第61/877,156号の利益を主張し、これらはいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
[0002]本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表(参照によりその全体が組み入れられる)を含む。2013年11月25日に作成された前記ASCIIコピーの名称は44980-703601_SL.txtであり、そのサイズは26,919バイトである。
【背景技術】
【0003】
[0003]原腸胚形成中、外胚葉細胞は、原始線条から内中胚葉を生じさせ、それに続いて胚体内胚葉(DE:definitiveendoderm)を包含する3つの胚葉を生じさせる。DEが原始内胚葉に分化すると、腹側および背側膵芽から膵臓が形成される。先進的なヒト胚性幹(hES)細胞の調査から、1型糖尿病処置のために、DEを特殊化することによってグルコースを感知しインスリンを分泌するβ細胞を作り出すという展望が扇動されてきた。しかしながら、現行のhES細胞アプローチは、時間がかかり複雑である。
【0004】
参照による組み入れ
[0004]本明細書に記載された全ての公報、特許、および特許出願は、それぞれ個々の公報、特許、または特許出願が参照により組み入れられるように具体的に且つ個別に提示されたのと同じ程度に参照により組み入れられる。本明細書に記載の用語と組み入れられた参考文献に記載の用語との間で不一致がある場合、本明細書に記載の用語を優先させる。
【発明の概要】
【0005】
[0005]発明の簡単な要約で示される本発明の実施態様は、単に例示目的で記載されたものであり、本明細書において開示された選択的な実施態様の大要を提供するにすぎない。発明の簡単な要約は、例示的および選択的なものであり、いずれの特許請求の範囲も限定せず、本明細書で開示または考慮された発明の実施態様の全範囲を提供するものではなく、さらに、本開示または全ての特許請求された発明の実施態様の範囲を制限したりまたは狭めたりするものとして解釈されないこととする。
【0006】
[0006]多くの形態の1つにおいて、miR-124を調節して、哺乳動物の栄養膜幹細胞から分化細胞への分化を誘導することを含む、哺乳動物の栄養膜幹細胞を分化させる方法がここに提供される。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、ヒト栄養膜幹(hTS)細胞である。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えば、チンパンジー、ゴリラ、またはオランウータン)、またはヒト由来である。一例において、分化細胞は、前駆細胞であり、例えば膵臓前駆細胞である。一例において、分化細胞は、多能性幹細胞である。一例において、分化細胞は、内胚葉前駆細胞、中胚葉前駆細胞、または外胚葉前駆細胞である。一例において、分化細胞は、胚体内胚葉の前駆細胞である。一例において、分化細胞は、膵臓の内胚葉前駆細胞である。一例において、分化細胞は、多能性前駆細胞である。一例において、分化細胞は、少能性前駆細胞である。一例において、分化細胞は、単分化能、二分化能、または三分化能を有する前駆細胞である。一例において、分化細胞は、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、または管前駆細胞(duct progenitor cell)であり、例えば内
分泌前駆細胞である。一例において、分化細胞は、ベータ細胞である。一例において、分化細胞は、インスリン産生細胞である。1種またはそれより多くの分化細胞が、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。いくつかの実施態様において、上記調節により、miR-124が活性化される。一例において、上記調節により、miR-124が、時空的に胚体内胚葉の段階で例えば約1時間~約8時間活性化される。一例において、上記調節により、miR-124発現が上昇する。一例において、上記調節により、miR-124が非活性化される。一例において、上記調節により、miR-124発現が減少する。一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質、例えばタンパク質またはステロイドホルモンと接触させることを含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、増殖因子、例えば線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む。一例において、FGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、またはFGF10である。一例において、1種またはそれより多くの物質は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子、bFGF)を含む。一例において、本明細書に記載のbFGFの濃度は、約100ng/mL以下であり、例えば約1~約100ng/mLである。一例において、本明細書に記載のbFGFの濃度は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100ng/mLである。一例において、本明細書に記載のbFGFの濃度は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、または90ng/mLである。一例において、1種またはそれより多くの物質は、抗酸化剤または還元剤、例えば2-メルカプトエタノールをさらに含む。一例において、2-メルカプトエタノールの濃度は、約10mmol/L以下であり、例えば約0.1~約10mmol/Lである。一例において、2-メルカプトエタノールの濃度は、約0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、または9~10mmol/Lである。一例において、2-メルカプトエタノールの濃度は、約0.2、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、または9mmol/Lである。一例において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミン、例えばニコチンアミドをさらに含む。一例において、ニコチンアミドの濃度は、約100mmol/L以下であり、例えば約1~約100mmol/Lである。一例において、ニコチンアミドの濃度は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100mmol/Lである。一例において、ニコチンアミドの濃度は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、または90mmol/Lである。一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、bFGF、2-メルカプトエタノール、およびニコチンアミドと接触させることを含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、CAMP反応性要素結合タンパク質1(CREB1)の活性または発現レベルを制御する。一例において、1種またはそれより多くの物質は、CREB1のリン酸化を制御する。一例において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミンの代謝産物、例えばレチノイン酸を含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、CREB1結合タンパク質を含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、mixl1、Cdx2、Oct4、Sox17、Foxa2、またはGSK3βを含む1種またはそれより多くの因子を制御する。一例において、1種またはそれより多くの物質は、外因性miR-124前駆体または外因性抗miR-124を含む。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、外因性miR-124前駆体または外因性抗miR-124でトランスフェクトされている。一例において、miR-124のプロモーターのTGACGTCA(配列番号158)のシス調節エレメント(CRE)が調節される。一例において、miR-124は、miR-124a、miR-124b、miR-124c、miR-124d、またはmiR-124eである。一例において、miR-124は、miR-124a、例えばヒトmiR-124a(hsa-miR-124a)である。一例において、hsa-miR-124は、hsa-miR-124-5p(配列番号1:CGUGUU
CACAGCGGACCUUGAU)またはそれらのフラグメントである。一例において、hsa-miR-124は、hsa-miR-124-3p(配列番号2:UAAGGCACGCGGUGAAUGCC)またはそれらのフラグメントである。一例において、miR-124は、表1および表2から選択される配列またはそれらのフラグメントを含む。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、調節開始から1日以内に分化細胞に分化する。
【0007】
[0007]一形態において、本明細書に記載の1つまたはそれより多くの方法からの、1つまたはそれより多くのから単離された分化細胞がここに提供される。一例において、単離された分化細胞は、ヒト細胞である。一例において、単離された分化細胞は、正常核型を有する。一例において、単離された分化細胞は、1種またはそれより多くの免疫特権を有するという特徴を示し、例えば低いCD33発現および/もしくはCD133発現またはそれらの非存在を示す。本明細書で開示された1種またはそれより多くの単離された分化細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0008】
[0008]別の形態において、Foxa2、Pdx1、Ngn3、Ptf1a、Nkx6.1、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む1種またはそれより多くの転写因子を発現する、単離された前駆細胞がここに提供される。一例において、単離された前駆細胞は、誘導多能性幹細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、哺乳動物の栄養膜幹細胞、例えばhTS細胞から誘導される。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、内胚葉前駆細胞、中胚葉前駆細胞、または外胚葉前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、胚体内胚葉の前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓の内胚葉前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、多能性前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、少能性前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、単分化能、二分化能、または三分化能を有する前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、または管前駆細胞であり、例えば内分泌前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、ベータ細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、インスリン産生細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、リス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えば、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、またはヒト由来である。一例において、単離された前駆細胞は、ヒト細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、正常核型を有する。一例において、単離された前駆細胞は、1種またはそれより多くの免疫特権を有するという特徴を示し、例えば低いCD33発現および/もしくはCD133発現またはそれらの非存在を示す。本明細書で開示された単離された前駆細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0009】
[0009]他の形態において、ベータトロフィン、ベータトロフィンのmRNA、C-ペプチド、またはインスリンを発現する単離された前駆細胞がここに提供され、ここで単離された該前駆細胞は、哺乳動物の栄養膜幹細胞から分化したものである。一例において、単離された前駆細胞は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、リス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えば、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、またはヒト由来である。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、ヒト細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、正常核型を有する。一例において、単離された前駆細胞は、1種またはそれより多くの免疫特権を有するという特徴を示し、例えば低いCD33発現および/もしくはCD133発現またはそれらの非存在を示す。本明細書で開示された1種またはそれより多くの単離された前駆細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0010】
[0010]一例において、本明細書に記載の単離された前駆細胞は、インスリン産生細胞である。本明細書に記載の1種またはそれより多くの単離された前駆細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0011】
[0011]一例において、本明細書に記載の分化細胞は、インスリン産生細胞である。本明細書に記載の1種またはそれより多くの分化細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0012】
[0012]一形態において、疾患の処置または予防に使用するための物質をスクリーニングする方法がここに提供され、本方法は:a)本明細書に記載の少なくとも1種の単離された前駆細胞を、物質と接触させること;およびb)単離された前駆細胞における転写またはタンパク質のうち少なくとも1つのレベルの変化を検出することを含む。一例において、単離された前駆細胞における転写またはタンパク質のうち少なくとも1つのレベルは、物質と接触していない対応する単離された前駆細胞と比較して減少している。一例において、単離された前駆細胞における転写またはタンパク質のうち少なくとも1つのレベルは、物質と接触していない対応する単離された前駆細胞と比較して増加している。一例において、疾患は、インスリン障害である。一例において、疾患は、糖尿病であり、例えば、1型糖尿病または2型糖尿病である。
【0013】
[0013]一形態において、細胞毒性または細胞の調節のための物質をスクリーニングする方法がここに提供され、該方法は:a)本明細書に記載の少なくとも1種の単離された前駆細胞を、物質と接触させること;b)物質との接触に起因する、単離された前駆細胞における表現型および/または代謝の変化を決定すること;およびc)該変化と細胞毒性または調節とを関連付けることを含む。一例において、該細胞は、インスリン産生細胞である。一例において、物質は、薬物である。一例において、物質は、化学物質である。一例において、物質は、抗体またはそれらのフラグメントである。一例において、物質は、培地に添加される。一例において、本方法は、単離された前駆細胞の成長に対する物質の作用を決定することを含む。一例において、本方法は、物質が、単離された前駆細胞によるマーカーまたは受容体の発現に影響を与えるかどうかを決定することを含む。いくつかの実施態様において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。
【0014】
[0014]一形態において、必要とする哺乳動物における疾患の処置または予防方法がここに提供され、本方法は、本明細書に記載の単離された前駆細胞を、必要とする哺乳動物に投与することを含む。一例において、単離された前駆細胞は、免疫特権を有する。一例において、単離された前駆細胞は、低いレベルのCD33発現および/またはCD133発現を示す。一例において、投与は、注射、埋め込み、または外科的操作を含む。一例において、疾患は、インスリン障害である。一例において、疾患は、糖尿病であり、例えば、1型糖尿病または2型糖尿病である。一例において、必要とする哺乳動物は、マウス、ラット、ブタ、イヌ、サル、オランウータン、類人猿、またはヒトである。一例において、必要とする哺乳動物は、糖尿病に関連する1つまたはそれより多くの症状、例えば、多尿症(頻尿)、多渇症(喉の渇きの増加)、多食症(空腹感の増加)、体重減少、霧視、痒み、末梢神経疾患、再発性膣感染症、疲労、創傷またはただれの治癒の遅さ、およびそれらのあらゆる組み合わせを有する。いくつかの実施態様において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。
【0015】
[0015]一形態において、インスリンの生産方法がここに提供され、本方法は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質と接触させて、miR-124を活性化させること、それによりグルコース刺激に応答してインスリンを分泌する単離された前駆細胞を生産することを含む。他の形態において、ベータトロフィンタンパク質および/またはベータトロフィンのmRNAの生産方法がここに提供され、本方法は、哺乳動物の
栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質と接触させて、miR-124を活性化させること、それによりベータトロフィンタンパク質および/またはベータトロフィンのmRNAを生産する膵臓前駆細胞を生産することを含む。一例において、ベータトロフィンタンパク質またはベータトロフィンのmRNAは、誘導後の約12~28時間に生産され、例えば、誘導後の約12~16、16~20、20~24、または24~28時間に生産される。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、C-ペプチドおよび/またはインスリンを生産する。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿由来である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるげっ歯類は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリスである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の類人猿は、チンパンジー、ゴリラ、またはオランウータンである。いくつかの実施態様において、miR-124が、時空的に胚体内胚葉の段階で活性化され、例えば胚体内胚葉の段階で約1時間~約8時間活性化される。いくつかの実施態様において、miR-124の発現は、上昇する。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、タンパク質またはステロイドホルモン、例えば増殖因子を含む。いくつかの実施態様において、増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)であり、例えば、FGF1、FGF2(bFGF)、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、またはFGF10である。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を含む。いくつかの実施態様において、bFGFは、約100ng/mL以下であり、例えば約1~約100ng/mLである。いくつかの実施態様において、本明細書で使用されるbFGFの濃度は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100ng/mLである。いくつかの実施態様において、本明細書で使用されるbFGFの濃度は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、または90ng/mLである。いくつかの実施態様において、bFGFは、約10ng/mLである。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、抗酸化剤または還元剤(例えば、2-メルカプトエタノール)をさらに含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミン(例えばニコチンアミド)をさらに含む。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、bFGF、2-メルカプトエタノール、およびニコチンアミドと接触させる。いくつかの実施態様において、2-メルカプトエタノールの濃度は、約10mmol/L以下であり、例えば約0.1~約10mmol/Lである。いくつかの実施態様において、2-メルカプトエタノールの濃度は、約0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、または9~10mmol/Lである。いくつかの実施態様において、2-メルカプトエタノールの濃度は、約0.2、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、または9mmol/Lである。いくつかの実施態様において、2-メルカプトエタノールは、約1mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ニコチンアミドの濃度は、約100mmol/L以下であり、例えば約1~約100mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ニコチンアミドの濃度は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ニコチンアミドの濃度は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、または90mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ニコチンアミドは、約10mmol/Lである。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質と接触させて、CAMP反応性要素結合タンパク質1(CREB1)の活性または発現レベル、例えばCREB1のリン酸化を制御する。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミンの代謝産物、例えばレ
チノイン酸を含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、CREB1結合タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、mixl1、Cdx2、Oct4、Sox17、Foxa2、およびGSK3βからなる群より選択される1種またはそれより多くの因子を制御する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmiR-124は、miR-124a、miR-124b、miR-124c、miR-124d、またはmiR-124e、例えば、miR-124aである。いくつかの実施態様において、miR-124aは、ヒトmiR-124a(hsa-miR-124a)、例えば、hsa-miR-124-5p(配列番号1:CGUGUUCACAGCGGACCUUGAU)もしくはhsa-miR-124-3p(配列番号2:UAAGGCACGCGGUGAAUGCC)またはそれらのフラグメントである。いくつかの実施態様において、miR-124は、表1および表2から選択される配列、またはそれらのフラグメントを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1A~1Cは、hTS細胞から膵臓前駆体への経路を例示するグラフのセットである。
図1Aは、hTS細胞分化から膵臓前駆体までの間の膵臓発生に関連する転写因子の時間経過プロファイルを示す。データを平均±SDとして表し、n=3回の独立した実験、
★p<0.05(t検定)であった。
【
図1B】
図1Bは、DE形成中のMixl1強度の変化を示す。
【
図1C】
図1Cは、内中胚葉が2つの細胞集団に分離することを示し、そのうち一方の細胞集団は中胚葉に関するPdx1
+Mixl1
+を発現し、他方の細胞集団は内胚葉に関するPdx1
+Mixl1
-を発現する。
【
図2A】
図2A~2Cは、膵臓分化における多能性転写因子の動的プロファイルを示すグラフのセットである。
図2Aは、発生段階依存的な細胞期それぞれにおける固有の多能性転写因子の推移を示す。データを平均±SDとして表し、n=3回の独立した実験、
★p<0.05(t検定)であった。
【
図2B】
図2Bは、DEの推移中におけるMixl1、Cdx2、およびOct4の免疫蛍光画像を示す。
【
図2C】
図2Cは、Oct4の免疫蛍光画像をDE段階の代表的なマーカーと共に示す。
【
図3A】
図3A~3Mは、miR-124aの生物発生および多面的な機能を例示するグラフのセットである。
図3Aは、DE形成およびベータトロフィン活性化の制御に関するメカニズム的な図説である。
【
図3B】
図3Bは、経時的に観察されたmiR-124aとp-CREB1発現との相関を示し、さらに活性なPI3K/Akt/CREB1シグナル伝達経路はmiR-124aの様々な部位を標的とすることを示す。
【
図3C】
図3Cは、qPCRアッセイによるp-CREB1とmiR-124aとの並行発現と、qPCRを用いてCREB1 ChIPから定量した、CREB1-結合部位1(acgccgtcatt、配列番号148)および部位2(ggtgacgtcagc、配列番号149)を含有するmiR-124-2のプロモーター領域、ならびにCREB1-結合部位(ggtgacgtcacc、配列番号150)を含有するmiR-124-3のプロモーター領域とを示す。
【
図3D】
図3D~3Fは、ルシフェラーゼレポーターアッセイ用のプラスミドの構築を示す。
図3Dは、miR-124aを標的とするコンセンサス結合部位Smad4(1)(5’-guuuguccagugccuuu-3’、配列番号151)およびSmad4(2)(5’-auccagaauugccuua-3’、配列番号152)を含有するSmad4の3’UTRのpGL4.51-Lucレポーターコンストラクト(3から5方向で示した配列番号2)を示す。
【
図3E】
図3Eは、hsa-miR-124aを標的とするCdx2の3’UTR(5’-gggaguauuugaacaca-3’、配列番号153)のpGL4.51-Luc レポーターコンストラクト(5’-cguguucacagcggacc-3’、配列番号154、これは、配列番号1のフラグメントである)を示す。
【
図3F】
図3Fは、miR-124aを標的とするGSK3βの3’UTR(5’-guuuggagugccuuc-3’、配列番号155)のpGL4.51-Lucレポーターコンストラクト(5’-uaaggcacgcgguga-3’、配列番号156、これは、配列番号2のフラグメントである)を示す。データを平均±SDとして表し、n=5、
★p<0.05(t検定)であった。陽性対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。陰性対照として、空のベクターを使用した。
【
図3G】
図3Gは、誘導後のSmad4、Mixl1、Cdx2、GSK3β、およびOct4発現に対する、miR124aまたは抗miR-124aのトランスフェクト前の作用を示す。
【
図3H】
図3Hは、4時間でOct4標的化遺伝子Sox17がSox17(矢印)を生産することを示す。インプット:陽性対照、IgG:陰性対照。
【
図3I】
図3Iは、ChIPアッセイにおいてβ-カテニン標的化遺伝子Foxa2(cctgtttgttttagtt、配列番号157)が見たところFoxa2(矢印)を生産する(4時間)ことを示す。インプット:陽性対照、IgG:陰性対照。
【
図3J】
図3J~Mは、ベータトロフィンの合成および制御を示す。
図3Jは、ChIPアッセイにより、Foxa2は遺伝子C19orf80を標的化してベータトロフィン(矢印)を生産することを示す。
【
図3K】
図3Kは、qPCR分析から、16時間でベータトロフィンのmRNAが一過性の上昇を示したこと(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼに標準化)を示す。
【
図3L】
図3Lは、ベータトロフィン、C-ペプチド、およびインスリン間の並列的な相関を示すウェスタンブロッティングデータのセットである。データを平均±SDとして表し、n=3、
★p<0.05(t検定)であった。
【
図3M】
図3Mは、免疫蛍光により、24時間誘導後のベータトロフィンとインスリンとの共発現を示す。
【
図4A】
図4A~4Eは、hTS細胞から得られた膵臓前駆体の特徴を示すグラフのセットである。
図4A~4Cは、インビトロでの機能的なグルコース刺激試験を示す。
図4Aは、ELISAアッセイにより、これらの細胞は、免疫反応性インスリンを産出するのに高いグルコース濃度(15mM、灰色の柱)を要することを示す。
【
図4B】
図4Bは、コンピューター-顕微鏡-ビデオシステム(オリンパス、IX-81、DP30、MIU-IBC-IF-2)で記録した形態学的な変化および陽性DTZ染色を示す代表的な画像の抜粋のセットである。
【
図4C】
図4Cは、それぞれラジオイムノアッセイにより、高グルコース(25mM)刺激により、C-ペプチドを7.6ng/時間/細胞10
6個で(上のラインで示される)、インスリンを393.8μIU/時間/細胞10
6個で(下のラインで示される)が生産されたことを示す。データは、曲線下面積によって測定され、平均±SDとして表し、n=5であった。
★p<0.05(t検定)。
【
図4D】
図4Dは、高グルコース刺激後のブドウのような細胞塊を示す超微細構造の顕微鏡写真のセットである。中央の画像における白色の矢印:デスモソーム結合。下の矢印:β-インスリン顆粒(β-G)。2つの上の矢印:α-グルカゴン顆粒(α-G)。N:細胞核。Im-G:未成熟の顆粒。M:ミトコンドリア。RER:粗面小胞体。バーのスケール:1μm。
【
図4E】
図4Eは、hTS細胞においてbFGF誘導の24時間後における膵臓前駆体マーカーの免疫蛍光染色を示す。対照染色は示していない。
【
図5】
図5は、免疫蛍光アッセイによって測定された、bFGF、2-メルカプトエタノール(2-ME)、およびニコチンアミドなどの様々な因子の組み合わせによるhTS細胞からのインスリン発現細胞誘導の有効性を示す棒グラフである。
【
図6A】
図6Aは、インスリンとNgn3との共発現によるhTS細胞からのインスリン発現細胞の生産に対するbFGFの用量-作用を示すTissueQuest分析画像のセットである。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに記載のデータの3連での決定における平均±SDの代表的な棒グラフである。
【
図7】
図7は、bFGF(10ng/ml)がインスリンとグルカゴンとの共発現によるインスリン発現細胞と類似のパーセンテージを達成したことを示すTissueQuest分析画像である。
【
図8】
図8は、経時的な様々な細胞プロセス中の転写因子レベルにおける動的パターンを例示する代表的な免疫ブロッティングアッセイからの画像のセットである。破線のボックスは、DEの状況を示す。対照としてβ-アクチンを使用した。データを平均±S.Dとして示す。n=3、
★p<0.05。
【
図9】
図9は、bFGFによって誘導された細胞プロセスにおける多能性転写因子(Nanog、Sox2、Cdx2、およびOct4)間の負の自己調節的なフィードバックループを例示する略図である。
【
図10】
図10は、Cdx2(左)とOct4(右)との相互の阻害関係を示すフローサイトメトリー画像のセットである。対照として非特異的なshRNAを使用した。
【
図11】
図11は、Cdx2のノックダウンはOct4を上方制御したことを示すウェスタンブロット画像のセットである。対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図12】
図12は、Oct4のノックダウンはNanog(左)を上方制御し、逆もまた同様であったこと(右)を示すフローサイトメトリー画像のセットである。
【
図13】
図13は、NanogのノックダウンはSox2を上方制御し(右)、逆もまた同様であった(左)ことを示すフローサイトメトリー画像のセットである。
【
図14】
図14は、多能性転写因子間の相互の抑制の自己調節ループを例示するスキームである。
【
図15】
図15は、FGFR阻害剤(PD166866)が、bFGFによって誘導されたPI3Kをブロックしたことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図16】
図16は、AktがCREB1と直接的に相互作用したことを示すIPアッセイのデータである。
【
図17】
図17は、PI3KのsiRNAがPI3Kおよびp-Aktの発現を阻害したことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図18】
図18は、Aktサブユニットに対するsiRNAがbFGFによって誘導されたp-Aktおよびp-CREB1の発現を阻したことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図19】
図19は、アッセイの実験準備のためにmiR-124aまたは抗miR-124aのcDNAを含有するプラスミドをhTS細胞にトランスフェクトした際の相対的なmiR-124a発現を示す棒グラフである。データを平均±SDとして表し、n=5であった。
【
図20】
図20は、bFGF単独で誘導されたhTS細胞と、bFGFによって誘導された、CREB1のshRNAでトランスフェクトされたhTS細胞との相対的なmiR-124a発現を示す棒グラフである。対照として非特異的なshRNAを使用した。データを平均±SDとして表し、n=3、
★p<0.05であった。
【
図21】
図21は、bFGFによって誘導されたMixl1の抑制が、Smad4のshRNAsを使用することによって阻害されたことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図22】
図22は、Oct4のshRNAsを使用することによって、bFGFによって誘導されたOct4およびSox17発現が阻害されたことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図23】
図23は、bFGF誘導から1~4時間における阻害性のGSK3βが、同じ期間でβ-カテニン蓄積を引き起こしたことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図24】
図24は、Foxa2に対するshRNAの存在時にbFGFによって誘導されたFoxa2発現が弱められたことを示すウェスタンブロッティング画像のセットである。対照として、非特異的なshRNAでトランスフェクトされた細胞を使用した。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図25】
図25は、bFGF誘導後の24時間にわたるベータトロフィン、C-ペプチド、およびインスリン間の発現における動的相関を示すウェスタンブロッティング画像のセットである。28時間には、ベータトロフィンレベルは低下する傾向を示したが、C-ペプチドおよびインスリンのレベルはより高いレベルを保った。ローディング対照として、β-アクチンを使用した。
【
図26】
図26は、bFGFから誘導された膵臓前駆体におけるベータトロフィン(明るいドット)とインスリン(暗いドット)との共発現を示す免疫細胞化学画像のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0042]1またはそれより多くの発明の実施態様の詳細を、添付の図面、特許請求の範囲、および本明細書に記載の説明に示す。本明細書において開示され考察された本発明の実施態様の他の特徴、目的、および利点は、明確に除外されない限りあらゆる他の実施態様と組み合わせることができる。
【0018】
[0043]用語「調節する」および「調節」は、例えば細胞成長または分化などの細胞の活性における増加もしくは減少、刺激、阻害、干渉、または妨害を、直接的または間接的のいずれかによって誘導すること、またはそれらの誘導を指し、例えば、哺乳動物の栄養膜幹細胞が例えば膵臓前駆体などの分化細胞になるように誘導すること、またはその誘導を指す。
【0019】
[0044]用語「物質」は、細胞成長および分化、例えば哺乳動物の栄養膜幹細胞の分化に使用するための化合物、例えば、生体分子または化学物質を指す。物質の例としては、これらに限定されないが、増殖因子(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF))、抗酸化剤/還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)、ビタミン(例えばニコチンアミド)およびそれらの代謝産物(例えばレチノイン酸)、核酸(例えばRNAまたはDNA、例えばマイクロRNA)、ホルモン、ペプチド、ならびにタンパク質(例えばCREB1結合タンパク質)が挙げられる。増殖因子の例としては、FGF1、FGF2(bFGF)、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、およびFGF10が挙げられる。抗酸化剤のさらなる例としては、2-メルカプトエタノール(2-ME)、ジチオスレイトール(DTT)、およびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)が挙げられる。ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、またはB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKが挙げられる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の物質は、CAMP反応性要素結合タンパク質1(CREB1)の活性または発現レベル、例えばCREB1のリン酸化を制御する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の物質は、miR124を活性化する。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の物質は、1種またはそれより多くの転写因子を制御し、例えばmix1、Cdx2、Oct4
、Sox17、Foxa2、またはGSK3βを制御する。
【0020】
[0045]用語「薬物」は、治療および/または診断および/または予防目的での有用性を有する化合物、例えば、治療、診断または予防的化合物を包含することが意図される。治療化合物としては、例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、血管新生阻害剤、鎮痛薬、麻酔薬、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、散瞳薬、抗腫瘍薬、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP)、阻害剤またはアンタゴニストまたはイントラセプター(intraceptor)、受容体アンタゴニス
ト、RNAアプタマー、抗体またはそれらのフラグメント、ヒドロキサム酸および大環状の抗スクシネートヒドロキサメート誘導体(macrocyclic anti-succinate hydroxamate derivative)、核酸、プラスミド、siRNA、ワクチン、DNA結合(副溝)化合物、
ホルモン、ビタミン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよびペプチド様治療剤が挙げられる。診断化合物としては、例えば、疾患、状態、症候群またはそれらの症状の診断において有用な色素、造影剤、蛍光剤、放射性同位体(例えばP-32、Tc-99、F-18、I-131)などが挙げられる。予防的化合物とは、疾患、状態、症候群または症状が検出される前に投与される治療化合物である。
【0021】
[0046]本明細書で使用される場合、「含有する」、「含有すること」、「包含する」、「包含すること」などの非限定的な用語は、特に他の指定がない限り、「含む」を意味する。
【0022】
[0047]本明細書に記載のいくつかの実施態様では、数値範囲が検討されている。数値範囲が提供される場合、その範囲は、範囲の端点を包含する。数値範囲は、全ての値とその中に含まれる部分範囲を、それらが全て明確に書き出されたものとして包含する。
【0023】
[0048]用語「約」は、本明細書で使用される場合、±15%を意味する。例えば、用語
「約10」は、8.5~11.5を包含する。
【0024】
[0049]冠詞「a」または「an」は、本明細書で使用される場合、明確にそうではないこ
とが規定されない限り、1つまたはそれより多くを意味する。
【0025】
[0050]「ベクター」は、組換えDNAまたはRNAコンストラクトを指し、例えば、適切な宿主細胞に導入されるとここで説明される細胞の改変を引き起こすプラスミド、ファージ、組換えウイルス、または他のベクターを指す。適切な発現ベクターは当業界における通常の技術を有するものに周知であり、例えば真核および/または原核細胞で複製可能なもの、ならびにエピソームのままのものまたは宿主細胞ゲノムに統合されるものが挙げられる。
【0026】
[0051]ベクターの構築は、すでに説明されている技術を使用して達成でき、例えばSambrookら、1989で説明されているような技術を使用して達成できる。いくつかの実施態様において、単離されたプラスミドまたはDNAフラグメントは、切断され、目的に応じて加工され、プラスミドを生成するのに望ましい形態で再びライゲートされる。必要に応じて、構築されたプラスミド中の正しい配列を確認するための分析は、あらゆる好適な方法を使用して行われる。発現ベクターを構築する、インビトロで転写物を調製する、宿主細胞にDNAを導入する、および遺伝子発現および機能を評価するために分析を行うための好適な方法は公知である。遺伝子の存在、増幅、および/または発現は、サンプル中で直接的に測定され、例えば、従来のサザンブロッティング、mRNA転写を定量するためのノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはここで提供される配列をベースとすることができる適切に標識されたプローブを使用したイン
サイチュハイブリダイゼーションによって測定される。
【0027】
[0052]例えば「トランスフェクト」、「形質転換」などの用語は、本明細書で使用される場合、核酸を機能的な形態で細胞または生物に移動させることを示すことが意図される。このような用語は、核酸を細胞に移動させる様々な手段を包含し、例えばCaP04でのトランスフェクト、エレクトロポレーション、ウイルス導入、リポフェクション、リポソームを使用した送達、および/または他の運搬手段などが挙げられる。
【0028】
[0053]細胞は、親和性技術によって、またはセルソーティング(例えば蛍光活性化セルソーティング)によってソートでき、この場合細胞は、好適な標識、例えばアンチセンス核酸分子もしくは免疫グロブリンもしくはその一部にコンジュゲートしたフルオロフォア、または本質的に蛍光を発するタンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくはそれらの変異体で標識される。「ソーティング(ソート)」は、本明細書で使用される場合、第二の細胞型から第一の細胞型を少なくとも部分的に物理的に分離することを指す。
【0029】
[0054]用語「処置すること」、「処置」などは、望ましい薬理学的および/または生理学的な作用を得ることを指す場合があり、例えば、障害を部分的または完全に治癒させること、および/または障害の原因と考えられる負の作用を元に戻すこと、および/または障害を安定化すること、および/または障害の進行を遅延させること、および/または障害の軽減をもたらすことを指す場合がある。
【0030】
[0055]処置が必要な領域への幹細胞の投与(例えば移植)は、例えば、これらに限定されないが、外科手術中の局所注入、注射、カテーテルの使用、またはインプラントの使用によって達成してもよく、前記インプラントは、多孔質、非多孔質、またはゲル状材料から作製されたものでもよく、例えばシラスティック膜などの膜、または繊維等である。
【0031】
[0056]組成物を哺乳動物に「移植すること」は、哺乳動物の体に組成物を導入することを指す場合がある。導入される組成物は「移植物」であり、哺乳動物は「レシピエント」である。移植物とレシピエントは、同系であってもよいし、同種異系であってもよいし、または異種であってもよい。さらに移植は、自家移植であってもよい。
【0032】
[0057]「有効量」は、意図する目的を達成するのに十分な治療剤の量であってもよい。例えば、hTS細胞の数を増加させる因子の有効量は、場合によって、インビボまたはインビトロにおいて幹細胞数の増加を引き起こすのに十分な量である。神経変性疾患または状態を処置または改善するための組成物の有効量は、神経変性疾患または状態の症状を低下させたりまたは除去したりするのに十分な組成物の量である。所定の治療剤の有効量は、物質の性質、投与経路、治療剤を受ける動物のサイズおよび種、ならびに投与目的などの要素に応じて変動すると予想される。
【0033】
[0058]2-メルカプトエタノール(またβ-メルカプトエタノール、BME、2BME、2-MEまたはβ-met)は、式HOCH2CH2SHを有する化合物である。
【0034】
[0059]ニコチンアミドは、ナイアシンアミドおよびニコチン酸アミドとしても知られており、これは、ニコチン酸のアミド(ビタミンB3/ナイアシン)であり、式C6H6N2Oを有する。
【0035】
[0060]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、または
オランウータン)、またはヒト由来である。
【0036】
[0061]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、またはオランウータン)、またはヒトである。
【0037】
[0062]いくつかの実施態様において、胚形成において、膵臓の発生は、さらなる分化のためには胚体内胚葉(DE)の主要な誘導を必要とする。マイクロRNA(miR)は、多くのレベルで作動して、分化プロセス全体にわたり細胞の移行のタイミングを制御する。本発明の多くの形態の1つは、miR-124によって導かれたDEの特殊化を介して哺乳動物の栄養膜幹細胞を膵臓前駆体に分化させるためにFGF(例えばbFGF)を使用することである。本発明の他の形態は、miR-124の調節を介した膵臓分化中のβ細胞増殖のためにベータトロフィンを促進することである。本発明の他の形態は、哺乳動物の栄養膜幹細胞から分化した、インスリンを分泌する膵臓前駆体を提供することである。
【0038】
[0063]いくつかの実施態様では、哺乳動物の栄養膜幹細胞において、FGF(例えばbFGF)は、胚体内胚葉(DE)形成を介したインスリンを分泌する膵臓前駆体への分化を1日で効率的に誘導する。
【0039】
[0064]いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、FGFR1/PI3K/Akt/CREB1経路を介してマイクロRNA(miR)-124の時空的な上昇を活性化することにより、1)Smad4を阻害し、結果としてDE形成のためにMixl1を抑制する、および2)Cdx2を阻害し、それに続いてDE制御のための自己調節的なフィードバックループを介してOct4を相互に活性化するという2つの機能を発揮する。その後DEは、原始消化管への移行を介して多能性の膵臓前駆体に分化する。発生段階依存的な細胞プロセスのそれぞれは、主として分化中の固有の多能性転写因子によって制御される。
【0040】
[0065]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞から得られた膵臓前駆体はグルコース感受性であり、インビトロおよび/またはインビボにおいて免疫反応性C-ペプチドおよびインスリンを分泌する。
【0041】
[0066]いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)誘導は、哺乳動物の栄養膜幹細胞において膵臓前駆体の分化を指示するmiRNA-124aの活性化を効率的に促進する。
【0042】
[0067]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、糖尿病患者における細胞ベースの療法や薬物毒性スクリーニングのための再生可能な幹細胞源である。
【0043】
[0068]いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)を膵臓前駆体に効率的に分化させることを可能にすることから、1型DM患者での細胞ベースの療法のためのインスリンを分泌する膵臓前駆体の生成における再生可能な幹細胞源であることの根拠が提示される。
【0044】
[0069]いくつかの実施態様において、1)哺乳動物の栄養膜幹細胞は、マルチウェルプレートでの評価に必要な十分な数の生産が容易であること;2)細胞の遺伝子型および表現型が安定であること;3)膵臓の分化および増殖が、DEの特殊化によって特徴付けら
れ明確化されること;4)単一の誘導物質および単純な培地による条件は、毒性スクリーニングにおける評価を容易にすること;および5)インスリンを分泌するベータ細胞分化を達成するのに極めて短時間、例えば1日しか要さず、これは経済的に要件を満たしていることから、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、膵臓疾患関連の薬物スクリーニングにとって主要な利点をもたらす。
【0045】
[0070]一例において、10ng/mlの線維芽細胞増殖因子(例えばbFGF)で哺乳動物の栄養膜幹細胞を処置することにより、集団中およそ10%のインスリン産生細胞が得られ、これらの細胞は、膵臓前駆体関連マーカーおよびランゲルハンス島の構成要素を発現する。細胞プロセス中、miRNA-124は、効率的にCdx2およびSmad4ならびにその下流エフェクターであるMixl1を抑制して、DE形成および膵臓前駆体への分化を指示する。このような細胞は、グルコース刺激によるインスリン分泌が可能である。
【0046】
[0071]いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、RTKを介してPI3K/Akt経路を活性化しCREB1をリン酸化する。CREB1-pは一時的にmiR-124のプロモーターを標的とする。一例において、miR-124は、a)DE形成のためにSmad4およびMixil1を抑制する;およびb)Cdx2を抑制し、続いてDE制御のためにOct4を活性化するという2つの方式で機能する。一例において、FGF(例えばbFGF)は、内中胚葉、DE、および原始消化管を介した細胞プロセスを誘導して、哺乳動物の栄養膜幹細胞において機能的な膵臓前駆体を1日で形成する。
【0047】
[0072]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、ヒト栄養膜幹細胞(hTS細胞)である。
【0048】
[0073]またmiR-124aは、miR-124a、mir-124a、マイクロRNA-124a、miRNA-124a、miR-124、mir-124、マイクロRNA-124、またはmiRNA-124としても知られている。
【0049】
[0074]miR-124の場合、対象のコード配列としては、これらに限定されないが、例えばmiR-124の前駆体をコードする配列が挙げられ、このようなコード配列の例は、BBSRCからの資金提供を受けてマンチェスター大学の生命科学部(Faculty of Life Sciences)で主催され維持されているmiRBaseデータベースで報告されている。所与のベクターは、要求に応じて、単一のコード配列またはコード配列の複数の反復を包含していてもよい。
【0050】
[0075]またmiR-124の前駆体は、miRBaseデータベースで見出すこともでき、例えば、以下の通りである。
>hsa-mir-124-1 MI0000443
AGGCCUCUCUCUCCGUGUUCACAGCGGACCUUGAUUUAAAUGUCCAUACAAUUAAGGCACGCGGUGAAUGCCAAGAAUGGGGCUG(配列番号3)
>hsa-mir-124-2 MI0000444
AUCAAGAUUAGAGGCUCUGCUCUCCGUGUUCACAGCGGACCUUGAUUUAAUGUCAUACAAUUAAGGCACGCGGUGAAUGCCAAGAGCGGAGCCUACGGCUGCACUUGAA(配列番号146)
>hsa-mir-124-3 MI0000445
UGAGGGCCCCUCUGCGUGUUCACAGCGGACCUUGAUUUAAUGUCUAUACAAUUAAGGCACGCGGUGAAUGCCAAGAGAGG
CGCCUCC(配列番号147)。
【0051】
[0076]本明細書に記載のmiR-124の核酸配列は、あらゆるmiR-124ファミリーメンバー、例えば本発明の図面、表1、および表2に記載のファミリーメンバー、例えば、ハエ(MI0000373)、線虫(MI0000302)、マウス(MI0000150)、およびヒト(MI0000443)で同定されたもの、またはmiRBase:マンチェスター大学(英国)によるマイクロRNAデータベースで見出されるファミリーメンバーの核酸配列のセグメントまたは全長を包含し得る。いくつかの実施態様において、抗miR-124は、miR-124配列のあらゆる相補体の配列、例えばmiRZIP124を有していてもよい。いくつかの実施態様において、抗miR-124は、例えばシステム・バイオサイエンス(System Biosciences)によって生産された、miRZip(商標)レンチウイルスベースマイクロRNAノックダウン法を使用して調製される。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
哺乳動物の栄養膜幹細胞
[0077]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、リス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、またはヒト由来である。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、霊長類、例えば、サル、類人猿、ヒト由来ではない。他の例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、霊長類、例えば、サル、類人猿、ヒト由来である。他の例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、ヒトであるか、またはヒト化されている。
【0058】
[0078]本明細書に記載の哺乳動物の栄養膜幹細胞は、1種またはそれより多くの分化細胞に分化させるために誘導されてもよい。一例において、分化細胞は、前駆細胞であり、例えば膵臓前駆細胞である。一例において、分化細胞は、多能性幹細胞である。一例において、分化細胞は、内胚葉前駆細胞、中胚葉前駆細胞、または外胚葉前駆細胞である。一例において、分化細胞は、胚体内胚葉の前駆細胞である。一例において、分化細胞は、膵臓の内胚葉前駆細胞である。一例において、分化細胞は、多能性前駆細胞である。一例において、分化細胞は、少能性前駆細胞である。一例において、分化細胞は、単分化能、二分化能、または三分化能を有する前駆細胞である。一例において、分化細胞は、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、または管前駆細胞であり、例えば内分泌前駆細胞である。一例において、分化細胞は、ベータ細胞である。一例において、分化細胞は、インスリン産生細胞である。1種またはそれより多くの分化細胞が、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0059】
[0079]一形態において、本明細書に記載の1つまたはそれより多くの方法からの、1つまたはそれより多くのから単離された分化細胞がここに提供される。一例において、単離された分化細胞は、ヒト細胞である。一例において、単離された分化細胞は、正常核型を有する。一例において、単離された分化細胞は、1種またはそれより多くの免疫特権を有するという特徴を示し、例えば低いCD33発現および/もしくはCD133発現またはそれらの非存在を示す。本明細書で開示された1種またはそれより多くの単離された分化細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0060】
[0080]他の形態において、Foxa2、Pdx1、Ngn3、Ptf1a、Nkx6.1、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む1種またはそれより多くの転写因子を発現する、単離された前駆細胞がここに提供される。一例において、単離された前駆細胞は、Foxa2、Pdx1、Ngn3、Ptf1a、Nkx6.1のうち2、3、または4種の転写因子を発現する。一例において、単離された前駆細胞は、Foxa2、Pdx1、
Ngn3、Ptf1a、およびNkx6.1を発現する。一例において、単離された前駆細胞は、誘導多能性幹細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、哺乳動物の栄養膜幹細胞、例えばhTS細胞から誘導される。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、内胚葉前駆細胞、中胚葉前駆細胞、または外胚葉前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、胚体内胚葉の前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓の内胚葉前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、多能性前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、少能性前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、単分化能、二分化能、または三分化能を有する前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、または管前駆細胞であり、例えば内分泌前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、ベータ細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、インスリン産生細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、リス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、またはヒト由来である。一例において、単離された前駆細胞は、ヒト細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、正常核型を有する。一例において、単離された前駆細胞は、1種またはそれより多くの免疫特権を有するという特徴を示し、例えば低いCD33発現および/もしくはCD133発現またはそれらの非存在を示す。本明細書で開示された単離された前駆細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0061】
[0081]他の形態において、ベータトロフィン、ベータトロフィンのmRNA、C-ペプチド、およびインスリンを発現する単離された前駆細胞がここに提供され、ここで単離された該前駆細胞は、哺乳動物の栄養膜幹細胞から分化したものである。一例において、単離された前駆細胞は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、リス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、またはヒト由来である。一例において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、ヒト細胞である。一例において、単離された前駆細胞は、正常核型を有する。一例において、単離された前駆細胞は、1種またはそれより多くの免疫特権を有するという特徴を示し、例えば低いCD33発現および/もしくはCD133発現またはそれらの非存在を示す。本明細書で開示された1種またはそれより多くの単離された前駆細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0062】
[0082]一例において、本明細書に記載の単離された前駆細胞は、インスリン産生細胞である。本明細書に記載の1種またはそれより多くの単離された前駆細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0063】
[0083]一例において、本明細書に記載の分化細胞は、インスリン産生細胞である。本明細書に記載の1種またはそれより多くの分化細胞は、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0064】
ヒト栄養膜幹細胞
[0084]ヒトファロピウス管は、女性における受精部位であり、さらに子宮外妊娠の一般的な部位でもあり、そこで、内部細胞塊(ICM)と栄養外胚葉との区別や、分化全能性から主要な後成的変化を伴う多能性への切り替えなどの数種の生物学的事象が起こる。これらの観察は、ファロピウス管が、着床前期で胚盤胞関連幹細胞を回収するための貯蔵庫であるニッチとして役立つことの裏付けになる。先進工業国において子宮外妊娠は全ての妊娠の1~2%を占めており、発展途上国ではそれよりもっと多い。ヒト胚幹細胞(hES細胞)および胎児脳組織の供給が不足していることを考慮した上で、前駆細胞を生成するためにほとんど利用できないhES細胞の代用として、子宮外妊娠から得られたヒト栄
養膜幹細胞(hTS細胞)を使用することがここで説明される。
【0065】
[0085]いくつかの実施態様において、子宮外妊娠から得られたhTS細胞は、ヒト胚の破壊に関与しない。他の例において、子宮外妊娠から得られたhTS細胞は、生存可能なヒト胚の破壊に関与しない。他の例において、hTS細胞は、生存不可能な子宮外妊娠に関連する栄養膜組織から誘導される。他の例において、子宮外妊娠は、救うことができない。他の例において、子宮外妊娠は、生存可能なヒト胚を生じないと予想される。他の例において、子宮外妊娠は、母親の生命を脅かす。他の例において、子宮外妊娠は、卵管、腹腔、卵巣または頸管妊娠である。
【0066】
[0086]いくつかの実施態様において、胚盤胞の発達中、ICMの接触それ自体またはそれにより生じた拡散可能な「誘導物質」が、極栄養外胚葉における高速の細胞増殖を引き起こし、胚盤胞段階全体にわたり細胞を壁の領域に移動させ、これは、ICMから栄養外胚葉を区別した後でさえも継続する可能性がある。ICMの上を覆う壁の栄養外胚葉細胞は、ICMの「細胞記憶」を保持することが可能である。通常は、着床開始時に、ICMと向かい合った壁細胞は、子宮内膜からの物理的な制約のために分割をやめる。しかしながら、ファロピウス管にはこのような制約がないため、結果として極栄養外胚葉細胞の継続的な分割が起こり、成長が停止した子宮外妊娠の胚盤胞において胚体外外胚葉(ExE)が形成される。いくつかの実施態様において、ExEから得られたTS細胞は、ICMから分泌された線維芽細胞増殖因子4(FGF4)とその受容体である線維芽細胞増殖因子受容体2(Fgfr2)との相互作用に応じて、増殖状況下で少なくとも4日の期間存在する。他の例において、ExEから得られたTS細胞は、増殖状況下で、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日の期間存在する。臨床的な介入が起こるまで、これらの細胞プロセスは、着床前胚において無限の数のhTS細胞を生産でき、このような細胞は、ICM関連遺伝子の発現を反映したICMからの細胞記憶を保持する。
【0067】
[0087]ここに記載される一形態は、hTS細胞とPDMS細胞との間の全体的な遺伝子比較のためにGeneChipのヒトゲノムU133プラス2.0 GeneChipを照合するためにAffymetrix(商標)プラットフォームを使用した、hTS細胞と胎盤から得られた間充織幹(PDMS)細胞との区別を説明する。いくつかの実施態様において、hTS細胞は、PDMS細胞における遺伝子発現よりも、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、または約75%少ない遺伝子発現を示した。他の例において、hTS細胞は、PDMS細胞における遺伝子(3,730種の遺伝子)よりも約40%少ない合計2,140種の遺伝子(変化倍数>2倍)を示した。いくつかの実施態様において、hTS細胞の遺伝子の強度分布は、PDMS細胞の遺伝子の強度分布とは異なる均一なパターンを表示した。他の例において、hTS細胞は、着床前の段階における栄養膜細胞層の異なるグループを表しており、そのためhTS細胞は、内部細胞塊(ICM)および/または栄養外胚葉の分子ポートレートを有する。他の例において、hTS細胞は、hES細胞の多能性および自己再生の特徴と類似した多能性および自己再生の特徴を示す。
【0068】
哺乳動物の栄養膜幹細胞を得て単離する方法
[0088]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、臍帯、羊水、羊膜、ホウォートンゼリー、絨毛膜絨毛、胎盤、または子宮外妊娠から単離してもよい。
【0069】
[0089]一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、羊水穿刺生検または羊水から単離してもよい。一例において、羊水穿刺は、妊娠中の胎児を取り囲む羊水の少量のサンプルを得るのに使用される手法であってもよい。一例において、羊水穿刺は、染色体異常のリスクが高い妊娠15週目から20週目の間の女性、例えば、分娩時に35歳より高齢の女性、または異常な母体血清(血液)のスクリーニング試験で染色体異常または神経管欠損の高いリスクが提示された女性になされてもよい。一例において、針、例えば長く薄い中空の針を、超音波ガイドと共に腹腔を通って子宮および羊膜嚢に穿刺するのに使用してもよい。予め決められた量、例えば1オンスの羊水をシリンジに引き出してもよい。
【0070】
[0090]他の例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、着床前遺伝子診断(PGD)中に、例えば体外受精(IVF)などの生殖療法と併用して、分割球生検から得てもよい。一例において、本明細書に記載の細胞は、胚盤胞を生検する方法によって生産されてもよく、ここで胚盤胞の残部を移植して、妊娠とその後の生児出生をもたらし、胚盤胞から例えば透明帯を取り出し、次いで胚盤胞を生検する。
【0071】
[0091]他の例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、出生前の絨毛膜絨毛サンプリング(CVS;chorionic villus sampling)に
よって得ることができる。一例において、CVSは、染色体異常および所定の他の遺伝学的問題に関する診断を行うために胎盤から組織サンプルを得ることを含む出生前診断であってもよい。一例において、CVSは、妊娠10週目から12週目の間に行うことができる。一例において、CVS手法は経頸管的であり、例えば子宮頸を通って胎盤にカテーテルを挿入して組織サンプルを得る。一例において、CVS手法は経腹壁的であり、例えば腹腔および子宮を通して胎盤に針を挿入して、組織サンプルを得る。
【0072】
[0092]一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、臨月妊娠後に胎盤生検から得ることができる。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、経膣分娩または帝王切開による分娩後に胎盤から単離してもよい。
【0073】
[0093]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、最初の3半期の絨毛膜絨毛サンプリング(例えば8+3から12+0週の在胎期間)または帝王切開術による分娩からの満期胎盤から単離してもよい。絨毛膜組織は、細かく刻んだ、および/または酵素消化した(例えば0.05%トリプシンEDTAで、例えば20分)羊膜から分離してもよい。その後細胞を遠心分離し(例えば1500rpmで、例えば5分)、計数し、および/または培地(例えばダルベッコ改変イーグル培地+10%ウシ胎児血清)中で再度平板培養する(例えば1cm2あたり104個の細胞)。一例において、単離された細胞は、プラスチックに付着した状態であってもよい。一例において、細胞は、4~8回継代して使用してもよい。
【0074】
[0094]一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、以下の手法に従って満期(例えば妊娠38~40週間)胎盤から単離してもよい。胎盤から臍帯血を自然に排出させ、次いでこれを慎重に解剖する。回収した組織断片を数回洗浄し(例えばリン酸緩衝食塩水中で)、次いで細かく刻み(例えば機械的に)、酵素消化する(例えば0.25%トリプシン-EDTAを使用)。その後ホモジネートを遠心分離でペレット化し、完全培地(例えば10%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、および/または100g/mlストレプトマイシンが補充されたダルベッコ改変イーグル培地)に懸濁する。好適な条件下で、例えば37℃、水飽和した雰囲気および5%C
O2で、細胞培養を維持する。培地を、例えば週1回から2回、定期的に交換する。細胞が望ましいレベルの密集度、例えば80%より高い密集度に達したら、例えば0.25%トリプシン/EDTAを用いて細胞を回収し、例えば1:3の希釈率で再度平板培養する。
【0075】
[0095]他の例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、分娩後、以下に示されるような手法に従ってヒト胎盤から単離してもよい。羊膜から柔毛膜を引きはがすことにより柔毛膜を分離する。子宮脱落膜組織をばらばらにして(例えば機械的に)、洗浄し(例えばダルベッコリン酸緩衝食塩水中で)、その後、小片(例えば約2×2cm)に切断する。柔毛膜を小片に細断して、酵素処理し(例えば0.5%トリプシン-EDTA、例えば5分)、続いてコラゲナーゼIで消化する(例えば0.3%で、37℃のインキュベーター中で、20~30分)。次いで分離した細胞を収集し、セルストレーナー(例えば100μm)を通過させる。ろ過した細胞を遠心分離(例えば2,500rpmで、例えば5分)で収集する。細胞を培地(例えば10%ウシ胎児血清および/または1%ペニシリン-ストレプトマイシンが補充されたα-改変最小必須培地)に再懸濁し、好適な条件下で(例えば37℃および/または5%CO2で)、容器中で、例えばT25フラスコ中で培養する。絨毛膜MSCが望ましいレベルの密集度、例えば70%の密集度に達するまで、培地を定期的に、例えば3日毎に換える。
【0076】
[0096]他の例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)を得る方法もここに提供され、本方法は、(a)子宮外妊娠(例えば妊娠4~6週、5~7週、または6~8週)のファロピウス管で胎芽を得ること;および(b)胎芽の絨毛栄養膜から幹細胞を得ることを含む。いくつかの実施態様において、胎芽は、未破裂の子宮外妊娠から得ることができる。いくつかの実施態様において、未破裂の子宮外妊娠は、受精後6週未満の段階であってもよい。絨毛栄養膜は、栄養膜細胞層を含んでいてもよい。
【0077】
[0097]他の例において、胚性の絨毛膜絨毛は、子宮外妊娠した女性(例えば在胎期間:5~7週間)の未破裂の着床前胚のファロピウス管から得ることができる。小さい絨毛組織は、を好適な培地(例えば無血清α-MEM)中で十分細かく刻み、顕微鏡下で確認し、トリプシン処理(例えば0.025%トリプシン/EDTAで)を続いて所定期間(例えば15分間)行い、培地(例えば10%FBS含有α-MEM)を添加して反応を止めてもよい。付着細胞を得て、好適な条件(例えば馴化α-MEM、10%FBS、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン中、37℃、5%CO2)で培養してもよい。2回継代後、市販のキット(例えばダコ(Dako)、カリフォルニア州カーピンテリア)で測定した場合、hCGのレベルは検出不可能になる可能性がある。
【0078】
哺乳動物の栄養膜幹細胞の分化方法
[0098]多くの形態のうち1つにおいて、miR-124を調節して、哺乳動物の栄養膜幹細胞から分化細胞への分化を誘導することを含む、哺乳動物の栄養膜幹細胞を分化させる方法がここに提供される。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、ヒト栄養膜幹(hTS)細胞である。一例において、分化細胞は、多能性幹細胞である。一例において、分化細胞は、前駆細胞であり、例えば膵臓前駆細胞である。一例において、分化細胞は、内胚葉前駆細胞、中胚葉前駆細胞、または外胚葉前駆細胞であり、例えば胚体内胚葉前駆細胞である。一例において、分化細胞は、膵臓の内胚葉前駆細胞である。一例において、分化細胞は、多能性前駆細胞である。一例において、分化細胞は、少能性前駆細胞である。一例において、分化細胞は、単分化能、二分化能、または三分化能を有する前駆細胞である。一例において、分化細胞は、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、または管前駆細胞であり、例えば内分泌前駆細胞である。一例において、分化細胞は、ベータ細胞である。一例において、分化細胞は、インスリン産生細胞である。1種またはそれより多くの分化細胞が、本明細書で開示されたあらゆる方法で使用できる。
【0079】
[0099]いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、リス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、またはヒト由来である。
【0080】
[00100]いくつかの実施態様において、上記調節により、miR-124が活性化され
る。一例において、上記調節により、miR-124が、時空的に胚体内胚葉の段階で例えば約1時間~約8時間活性化される。一例において、上記調節により、miR-124発現が上昇する。一例において、上記調節により、miR-124が非活性化される。一例において、上記調節により、miR-124発現が減少する。一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質、例えばタンパク質またはステロイドホルモンと接触させることを含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、増殖因子、例えば線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む。一例において、FGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、またはFGF10のうちの1種またはそれより多くである。一例において、1種またはそれより多くの物質は、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子、bFGF)を含む。一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、約200ng/mL以下、例えば100~200ng/mLのFGF(例えばbFGF)と接触させることを含む。一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、約100ng/mL以下のFGF(例えばbFGF)、例えば約0.1~1ng/mL;または約1~約100ng/mLのFGF(例えばbFGF)と接触させることを含む。一例において、本明細書で使用されるFGF(例えばbFGF)の濃度は、約0.1~1、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100ng/mLである。一例において、本明細書で使用されるFGF(例えばbFGF)の濃度は、約0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、または90ng/mLである。一例において、1種またはそれより多くの物質は、抗酸化剤または還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)をさらに含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミン(例えばニコチンアミド)をさらに含む。一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、FGF(例えばbFGF)、2-メルカプトエタノール、およびニコチンアミドと接触させることを含む。一例において、抗酸化剤/還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約10mmol/L以下であり、例えば約0.1~約10mmol/Lである。一例において、抗酸化剤/還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、または9~10mmol/Lである。一例において、抗酸化剤/還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約0.2、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、または9mmol/Lである。一例において、抗酸化剤/還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約1mmol/Lである。一例において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約100mmol/L以下であり、例えば約1~約100mmol/Lである。一例において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100mmol/Lである。一例において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、または90mmol/Lである。一例において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約10mmol/Lである。
【0081】
[00101]一例において、上記調節は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより
多くの物質と接触させて、CAMP反応性要素結合タンパク質1(CREB1)の活性または発現レベルを制御することを含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、CREB1のリン酸化を制御する。一例において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミンの代謝産物、例えばレチノイン酸を含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、CREB1結合タンパク質を含む。一例において、1種またはそれより多くの物質は、mixl1、Cdx2、Oct4、Sox17、Foxa2、またはGSK3βを含む1種またはそれより多くの因子を制御する。
【0082】
[00102]一例において、1種またはそれより多くの物質は、外因性miR-124前駆
体または外因性抗miR-124を含む。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、外因性miR-124前駆体または外因性抗miR-124でトランスフェクトされている。一例において、miR-124のプロモーターのTGACGTCA(配列番号158)のシス調節エレメント(CRE)が調節される。
【0083】
[00103]いくつかの実施態様において、miR-124は、miR-124a、miR
-124b、miR-124c、miR-124d、またはmiR-124eである。一例において、miR-124は、miR-124a、例えばヒトmiR-124a(hsa-miR-124a)である。一例において、miR-124aは、hsa-miR-124-5p(配列番号1:CGUGUUCACAGCGGACCUUGAU)またはそれらのフラグメントである。一例において、miR-124aは、hsa-miR-124-3p(配列番号2:UAAGGCACGCGGUGAAUGCC)またはそれらのフラグメントである。一例において、miR-124は、表1、表2、および図面から選択される配列、またはそれらのフラグメントを含む。
【0084】
[00104]一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、調節開始から1日以内に分化細胞
に分化する。
【0085】
[00105]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞の分化の誘導は、未分
化の哺乳動物の栄養膜幹細胞を、増殖因子(例えばbFGF)を含む培地中で、分化を誘導するのに十分な条件下で(例えば12、24、48、76、または96時間)培養することを含む。培地は、血清(例えばFBS)、炭水化物(例えばグルコース)、抗酸化剤/還元剤(例えばβ-メルカプトエタノール)、および/またはビタミン(例えばニコチンアミド)をさらに含んでいてもよい。分化細胞の収量が測定され、例えば、膵臓前駆体のインジケーターとしてインスリン+/Ngn3+細胞またはインスリン+/グルカゴン+細胞が測定される。一例において、例えばウェスタンブロット分析で示されるように、FBSおよびインスリンのレベルは、FGF(例えばbFGF)誘導中、正の相関を有する。
【0086】
[00106]いくつかの実施態様において、細胞誘導の際(例えばbFGFによる)、例え
ば4、8、16、24、32、40、または48時間での時間経過分析を行い、転写因子のレベルをモニターして、細胞分化進行の連鎖的な段階を確認することもできる。いくつかの実施態様において、下降するMixl1ならびに高レベルのTおよびGscは、哺乳動物の栄養膜幹細胞から内中胚葉への移行を示す可能性がある。いくつかの実施態様において、分化の各段階において優勢な多能性転写因子としては、内中胚葉に関してはCdx2、DEに関してはOct4もしくはNanog、原始消化管内胚葉に関してはCdx2もしくはNanog、または膵臓前駆体に関してはSox2が挙げられる。いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、DE段階時におけるOct4、Sox17、またはFoxa2の上方制御、ただしSmad4またはMixl1の下方制御を介したmiR-124aの多面的な機能を誘導する。
【0087】
[00107]いくつかの実施態様において、細胞分化中、標的分化細胞に特徴的なタンパク
質またはホルモンのレベルも、時間経過分析で、例えば4、8、16、24、32、40、または48時間で測定される。例えば、ベータトロフィン、C-ペプチド、およびインスリンは、例えばqPCR分析で、膵臓前駆体生産に関して測定される。
【0088】
[00108]いくつかの実施態様において、増殖因子は、本明細書において、哺乳動物の栄
養膜幹細胞の分化を誘導するのに使用される。一例において、増殖因子は、FGF(例えばbFGF)、骨形成タンパク質(BMP)、または血管内皮増殖因子(VEGF)である。いくつかの実施態様において、増殖因子の有効量は、約100ng/ml以下であり、例えば、約1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100ng/mLである。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。
【0089】
[00109]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞を分化させるための本
明細書に記載の培地は、第一の物質と相乗作用して内中胚葉方向に分化を誘導する第二の物質の有効量をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、第一および第二の物質は、異なる増殖因子である。いくつかの実施態様において、第一の物質は、第二の物質の前に培地に添加される。いくつかの実施態様において、第二の物質は、第一の物質の前に培地に添加される。一例において、第一の物質は、FGF(例えばbFGF)である。いくつかの実施態様において、第二の物質は、BMP、例えばBMP2、BMP7、またはBMP4であり、これは第一の物質の前または後に添加される。いくつかの実施態様において、BMPの有効量は、約100ng/ml以下であり、例えば、約1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100ng/mLである。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。
【0090】
[00110]いくつかの実施態様において、哺乳動物(例えばヒト)の栄養膜幹細胞を分化
させるための本明細書に記載の培地は、フィーダー細胞を含んでいてもよい。フィーダー細胞は、別のタイプの細胞と共培養して第二のタイプの細胞が成長できる環境を提供する1つのタイプの細胞である。
【0091】
[00111]いくつかの実施態様において、本明細書で使用される培地は、フィーダー細胞
非含有か、または本質的に非含有である。
【0092】
[00112]いくつかの実施態様において、GSK-3阻害剤を使用して、哺乳動物(例え
ばヒト)の栄養膜幹細胞の分化が誘導される。
【0093】
医薬組成物および投与
[00113]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の分化細胞を含む組成物がここ
に提供される。一例において、本組成物は、緩衝溶液または製薬上許容できるキャリアーをさらに含み、これは、哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)の生物活性を維持するために提供される。緩衝溶液としては、これらに限定されないが、例えば食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、またはFBS(ウシ胎児血清)緩衝液が挙げられる。
【0094】
[00114]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物は、治療化合物をさら
に含む。治療化合物としては、これらに限定されないが、例えば、化学物質または抗体もしくはそれらのフラグメントが挙げられる。
【0095】
[00115]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物は、注射、移植または
外科的操作によって投与されてもよい。
【0096】
[00116]いくつかの実施態様において、患者は、哺乳動物である。いくつかの実施態様
において、本明細書に記載される哺乳動物は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、またはオランウータン)、またはヒトである。一例において、患者は、ヒトである。
【0097】
[00117]いくつかの実施態様において、上記で説明したような哺乳動物の栄養膜幹細胞
(例えばhTS細胞)または分化細胞を含む、糖尿病を処置または予防するための組成物がここに提供される。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)は、子宮外妊娠の胎芽から得られる。糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、または成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)である。
【0098】
[00118]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)
または分化細胞を含む、神経系疾患を処置または予防するための組成物がここに提供される。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、子宮外妊娠の胎芽から得られる。神経系疾患は、神経変性疾患である。神経変性疾患は、対象の中枢神経系における細胞死に起因するニューロンの進行性消失を特徴とするあらゆる状態を指す場合がある。一例において、神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症、レヴィー小体認知症、末梢感覚神経障害または脊髄損傷である。一例において、神経変性疾患は、パーキンソン病である。
【0099】
[00119]ここで説明される単離された幹細胞の調製物の投与様式としては、これらに限
定されないが、全身静脈注射および意図した活性部位への直接的な注射が挙げられる。このような調製物は、あらゆる便利な経路で、例えば点滴またはボーラス注射によって投与されてもよく、他の生物活性物質と共に投与されてもよい。一例において、投与は、全身投与、局所投与である。
【0100】
[00120]いくつかの実施態様において、幹細胞調製物または組成物は、ヒトなどの哺乳
動物への静脈内投与に適した医薬組成物として製剤化される。一例において、静脈内投与用組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、本組成物はさらに、注射部位におけるあらゆる痛みを改善するために局所麻酔剤も包含する。本組成物を点滴で投与しようとする場合、それらを医薬品グレードの滅菌された水または食塩水を含有する点滴ボトルで分配してもよい。本組成物が注射で投与される場合、投与前に成分が混合されるように、滅菌された注射用水または食塩水のアンプルが提供されてもよい。
【0101】
[00121]いくつかの実施態様において、好適な医薬組成物は、幹細胞前駆体の治療有効
量と、薬学的に許容されるキャリアーまたは賦形剤とを含む。このようなキャリアーとしては、これらに限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
[00122]いくつかの実施態様において、単離された幹細胞は、細胞を特定の組織に標的
化するのに好適な送達系によって標的化部位(例えば膵臓、脳、脊髄または他のあらゆる神経損傷および/もしくは変性部位)に送達される。例えば、上記細胞は、標的化部位における細胞の遅延放出を可能にする運搬手段に封入される。運搬手段は、特定の組織に特異的に標的化されるように改変される。標的化された送達系の表面は、様々な方法で改変される。リポソームで標的化される送達系のケースでは、リポソームの脂質二重層に脂質基を取り入れることにより、リポソームの二重層と安定に会合した状態で標的リガンドを維持している。
【0103】
[00123]他の例では、コロイド分散系が使用される。コロイド分散系は、高分子複合体
、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに脂質ベースの系、例えば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなどを包含する。
【0104】
[00124]いくつかの実施態様において、ここで説明される幹細胞の投与は、任意選択で
、(1)注射される細胞量を増加または減少させること;(2)注射回数変化させること;(3)細胞の送達方法を変化させること;または(4)例えば細胞を遺伝学的に加工することによって、またはインビトロでの細胞培養により細胞の源を変更することによって、個体ごとに加工してもよい。
【0105】
[00125]いくつかの実施態様において、幹細胞調製物は、レシピエントにおける細胞の
生着を促進するのに有効な量で使用される。投与は、医師の裁量で、最適な有効性および薬理学的な投与が達成されるように調整される。
【0106】
スクリーニング方法
[00126]疾患の処置または予防に使用するための化合物をスクリーニングする方法がこ
こに提供される。一例において、本方法は、単離された哺乳動物の栄養膜幹細胞またはそれらの分化細胞を、前記化合物と接触させることを含む。他の例において、本方法は、哺乳動物の栄養膜幹細胞または分化細胞における遺伝子、転写またはタンパク質のうち少なくとも1つの活性の変化を検出することをさらに含む。他の例において、本方法は、哺乳動物の栄養膜幹細胞または分化細胞における転写またはタンパク質のうち少なくとも1つのレベルの変化を検出することをさらに含む。他の例において、本方法は、哺乳動物の栄養膜幹細胞または分化細胞における遺伝子、転写またはタンパク質のうち少なくとも1つの活性の変化を検出することを含む。いくつかの実施態様において、疾患は、インスリン障害に関連し、例えば糖尿病に関連する。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。いくつかの実施態様において、分化細胞は、膵臓前駆細胞である。いくつかの実施態様において、分化細胞は、インスリン産生細胞である。
【0107】
[00127]ここに提供される一例において、細胞における変化を調節する能力に関して化
合物をスクリーニングする方法を説明する。他の例において、本方法は、単離された哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)を、化合物と接触させること、ならびに哺乳動物の栄養膜幹細胞の成長および分化の誘導を検出することを含む。一例において、本方法は、本明細書に記載の分化細胞(例えば前駆細胞)を、化合物と接触させること、および細胞増殖または細胞の機能における変化を検出することを含む。いくつかの実施態様において、単離された前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。いくつかの実施態様において、単離された前駆細胞は、インスリン産生細胞である。
【0108】
[00128]いくつかの実施態様において、膵臓細胞の機能(例えばベータ細胞の機能)を
調節するその能力に関して化合物をスクリーニングする方法がここに提供され、本方法は、化合物を、本明細書に記載の膵臓前駆細胞または分化細胞と組み合わせること、該細胞におけるあらゆる表現型または代謝の変化を決定すること、および該変化と、インスリン、グルカゴン、またはベータトロフィンの分泌を調節する該化合物の能力とを関連付けることを含む。
【0109】
[00129]また、細胞の細胞毒性に関して化合物をスクリーニングする方法もここに提供
され、本方法は、本明細書に記載の分化細胞を該化合物と接触させることを含む。他の例において、本方法は、化合物との接触に起因する該細胞におけるあらゆる表現型または代謝の変化を決定すること、および該変化と、細胞毒性または他のあらゆる細胞の機能または生化学の変化とを関連付けることをさらに含む。他の例において、治療化合物、毒素、
または可能性のある分化の調節因子のスクリーニングが促進される。これらの物質(例えば治療化合物、毒素、または可能性のある調節因子)は、培地に添加してもよい。
【0110】
[00130]また、増殖因子、分化因子、および治療化合物をスクリーニングする方法もこ
こに提供される。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、培養中の哺乳動物の栄養膜幹細胞または分化細胞の特徴に影響を与える因子(例えば小分子の薬物、ペプチド、ポリヌクレオチド、など)または条件(例えば培養条件または操作)に関してスクリーニングするのに使用される。一例において、このシステムは、試験化合物によるフィーダー細胞の不安定化によって引き起こされる副次的な作用によって複雑化することがないという利点を有する。他の例において、成長に影響を与える物質が試験される。他の例において、培養物から馴化培地を引き抜いて、より単純な培地で交換する。他の例において、次いで異なるウェルを、馴化培地の成分を置き換えるための候補である可溶性因子の異なるカクテルで処置する。処置した細胞が、馴化培地中と同様に最適に申し分なく維持されて増殖する場合、各混合物の有効性が決定される。試験プロトコールに従って細胞を処置し、次いで処置した細胞が特定の系の分化細胞の機能的または表現型の特徴を発生させているかどうかを決定することによって、可能性のある分化因子または条件を試験してもよい。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。
【0111】
[00131]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の哺乳動物の栄養膜幹細胞(例
えばhTS細胞)は、可能性のある細胞分化の調節因子をスクリーニングするのに使用される。一例において、細胞分化は、膵臓分化である。例えば、細胞分化の調節因子をスクリーニングするための1つのアッセイにおいて、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、状況上必要に応じて、血清非含有、低密度条件下で、LIFの存在または非存在下で、調節因子の存在下で、およびRAの存在または非存在下で培養してもよいし、分化に対する作用を検出してもよい。他の例において、ここで説明されるスクリーニング方法は、細胞の発生に関連する条件を研究して、可能性のある治療薬または矯正薬または条件の調節因子に関してスクリーニングするのに使用できる。例えば、一例において、正常な哺乳動物の栄養膜幹細胞の発生は、上記条件を有する細胞の発生と比較される。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。
【0112】
[00132]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞(例えばhTS細胞)
から得られた異なる細胞集団間で、遺伝子およびタンパク質発現を比較して、分化の過程で上方制御または下方制御された因子を同定して特徴付けることや、影響を受けた遺伝子のヌクレオチドのコピーを生産することに使用してもよい。
【0113】
[00133]いくつかの実施態様において、フィーダー非含有の哺乳動物の栄養膜幹細胞の
培養物はまた、薬物調査において医薬化合物を試験するのにも使用できる。候補医薬化合物の活性の評価は一般的に、本明細書に記載の分化細胞を候補化合物と組み合わせること、結果生じたあらゆる変化を決定すること、次いで該化合物の作用と観察された変化とを関連付けることを含む。他の例において、化合物が、例えば、所定の細胞型に対して薬理効果を有するように設計されているか、または化合物が、他所で予期せぬ副作用をもたらす作用を有するように設計されているかのいずれかの理由により、スクリーニングがなされる。他の例において、(同時または連続的のいずれかで細胞と組み合わせることによって)2種またはそれより多くの薬物を組み合わせた状態で試験することにより、可能性のある薬物-薬物相互作用が検出される。他の例において、化合物は、最初のうちは可能性のある毒性に関してスクリーニングされる。他の例において、細胞毒性は、細胞の生存能力、生存、形態学、所定のマーカー、受容体または酵素の発現または放出、DNAの合成または修理に対する作用によって決定される。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。
【0114】
疾患の処置
[00134]一形態において、必要とする哺乳動物における疾患の処置または予防方法がこ
こに提供され、本方法は、本明細書に記載の細胞(例えば単離された前駆細胞)を、必要とする哺乳動物に投与することを含む。一例において、該細胞は、免疫特権を有する。一例において、該細胞は、低いレベルのCD33発現および/またはCD133発現を示す。一例において、投与は、注射、埋め込み、または外科的操作を含む。一例において、疾患は、インスリン障害である。一例において、疾患は、糖尿病であり、例えば、1型糖尿病または2型糖尿病である。一例において、必要とする哺乳動物は、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるげっ歯類は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリスである。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の類人猿は、チンパンジー、ゴリラ、またはオランウータンである。一例において、必要とする哺乳動物は、糖尿病に関連する1つまたはそれより多くの症状、例えば、多尿症(頻尿)、多渇症(喉の渇きの増加)、多食症(空腹感の増加)、体重減少、霧視、痒み、末梢神経疾患、再発性膣感染症、疲労、創傷またはただれの治癒の遅さ、およびそれらのあらゆる組み合わせを有する。
【0115】
[00135]一形態において、疾患または状態を処置または予防する方法がここに提供され
、本方法は、必要とする対象に、本明細書で開示された対象の方法を使用して調製された、単離された哺乳動物の栄養膜幹細胞または分化細胞の有効量を投与することを含む。一例において、疾患は、免疫不全疾患、神経系疾患、造血に関する疾患、癌、または糖尿病である。
【0116】
[00136]いくつかの実施態様において、例えば、本明細書に記載の単離された哺乳動物
の栄養膜幹細胞または分化細胞を用いて、糖尿病患者を処置するためのインスリンを分泌する細胞を生成する方法がここに提供される。
【0117】
[00137]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の糖尿病は、炭水化物(例えば
グルコース)の生産および利用におけるあらゆる代謝障害、またはあらゆるインスリン障害を指す場合がある。
【0118】
[00138]いくつかの実施態様において、糖尿病患者は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠
糖尿病、または成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)に罹っている。1型糖尿病、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)の場合、患者は、グルコース利用を制御するホルモンであるインスリンをほとんど生産しない。2型糖尿病、またはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の場合、患者は、筋肉、肝臓および脂肪組織である主要なインスリン感受性組織において、糖尿病ではないが、グルコースおよび脂質代謝でのインスリン刺激作用に耐性が生じた対象と比較して同じかまたはより上昇した血漿インスリンレベルを有することが多く、その血漿インスリンレベルは、上昇したものの、著しいインスリン耐性を克服するには不十分である。妊娠糖尿病(または妊娠糖尿病、GDM)は、これまでに糖尿病と診断されたことがない女性が妊娠中に高い血糖値を示す状態であり得る。成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)は、成人において1型糖尿病が発症している状態であり得る。
【0119】
[00139]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、糖尿病(例えば糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性血管症および細小血管症)、高血糖症、肥満症、脂質障害(例えば脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL、高LDL、代謝症候群(脂質異常症)、全身および肺の緊張亢進、心臓血管疾患(例えば心筋梗塞、心臓肥大症および心不全後の心筋繊維化、動脈硬化症)、腎疾患(例えば糸球体硬化症、腎硬化症、腎炎、腎症、電解質
の排出障害)、および/または線維症および炎症過程(例えば肝硬変、肺線維症、線維化性膵臓炎、リウマチおよび関節症、クローン病、慢性気管支炎、放射線線維症、硬化性皮膚炎、嚢胞性線維症、瘢痕化、アルツハイマー病)の処置または予防に使用できる。また本明細書に記載の細胞、組成物、および方法はさらに、癌、腫瘍細胞および腫瘍転移の成長を阻害することもでき、したがって腫瘍療法に好適である。
【0120】
[00140]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、2型糖尿病もしくは耐糖能異常を有するか、または糖尿病の家族歴と以下の条件:脂質代謝異常、高血圧、高尿酸血症、凝血促進状態(pro-coagulant state)、アテローム性
動脈硬化症、および体幹部肥満のうち少なくとも1つとを有する対象におけるインスリン抵抗性症候群の処置に使用できる。
【0121】
[00141]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、代謝症候群(X症候群、または血糖上昇、高血圧、肥満症、脂質代謝異常)、高血糖症、インスリン過剰血症、耐糖能異常、空腹時血糖、インスリン耐性、肥満症、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、脳血管障害、末梢血管疾患、狼瘡、多嚢胞卵巣症候群、発癌現象、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病黄斑浮腫、および過形成などの1種またはそれより多くの糖尿病関連の障害を処置または予防することに使用できる。
【0122】
[00142]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、(1)高血糖症、(2)低い耐糖能、(3)インスリン耐性、(4)肥満症、(5)脂肪疾患、(6)脂質代謝異常、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症およびその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、(16)他の炎症状態、(17)膵臓炎、(18)腹部脂胖症、(19)神経変性疾患、(20)網膜疾患、(21)腎症、(22)ニューロパシー、(23)X症候群、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、ならびにインスリン耐性が構成要件である他の障害などの1種またはそれより多くの疾患、障害および条件を処置または予防することに使用できる。
【0123】
[00143]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、例えば心臓血管疾患(CVD)を処置または予防するための高脂血症治療剤と組み合わせて使用してもよい。高脂血症治療剤の例としては、コレステロール合成阻害剤であるスタチン化合物(例えばセリバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチンまたはそれらの塩など)、トリグリセリドを低下させる作用を有するスクアレンシンターゼ阻害剤またはフィブラート化合物(例えばベザフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート、クリノフィブラート)などが挙げられる。
【0124】
[00144]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、例えば高インスリンレベルによって引き起こされる異常な血管の成長および腎臓でのナトリウム貯留を処置または予防するための血圧降下剤と組み合わせて使用してもよく、それにより高血圧が緩和される。血圧降下剤の例としては、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えばカプトプリル、エナラプリル、デラプリル)、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(例えばカンデサルタンシレキセチル、ロサルタン、エプロサルタン、バルサルタン(valsantan)、テルミサルタン(termisartan)、イルベサルタン、タソサルタン)、カルシウムアンタゴニスト(例えばマニジピン、ニフェジピン、ニカルジビン、アムロジピン、エホニジピン)、およびクロニジンが挙げられる。
【0125】
[00145]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の細胞、組成物、および方法は
、例えば抗肥満剤と組み合わせて使用してもよい。抗肥満剤の例としては、中枢神経系に作用する抗肥満薬(例えばデクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン(anfepramon)、デキサンフェタミン、マチンドール、フェニルプロパノールアミン、クロベンゾレックス)、膵リパーゼ阻害剤(例えばオーリスタット)、ベータ-3アゴニスト(例えばCL-3 16243、SR-5861 1-A、UL-TG-307、SB-226552、AJ-9677、BMS-196085、AZ-40140)、食欲抑制ペプチド(例えばレプチン、CNTF(毛様体神経栄養因子)およびコレシストキニンアゴニスト(例えばリンチトリプト(lintitript)、FPL-1 5849)が挙げられる。
【0126】
[00146]いくつかの実施態様において、栄養膜幹細胞またはそれらの分化細胞の有効量
を患者に投与することを含む、神経変性疾患を処置する方法がここに提供される。哺乳動物の栄養膜幹細胞は、子宮外妊娠のファロピウス管における栄養膜の絨毛から得られる。一例において、神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病または化学物質によって誘導されたニューロン損傷である。
【0127】
[00147]いくつかの実施態様において、障害を処置する方法がここに提供され、ここで
本方法は、ニューロンの純粋集団、または本明細書に記載の方法によって生成した特定の神経幹細胞集団の複合体を、必要とする患者に移植することを含む。一例において、患者は、神経疾患と診断されている。他の例において、患者は、神経精神疾患と診断されている。他の例において、患者は、神経変性障害と診断されている。他の例において、ニューロンの純粋集団は、ドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0128】
[00148]一例において、疾患は、神経疾患である。他の例において、疾患は、神経変性
疾患または障害である。神経障害の非限定的な例としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ運動失調症、レヴィー小体病、脊髄性筋萎縮症、多系統萎縮症、認知症、統合失調症、麻痺、多発性硬化症、脊髄損傷、脳損傷(例えば卒中)、脳神経障害、末梢感覚神経障害、てんかん、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルパース病、小脳/脊髄小脳変性症、バッテン病、大脳皮質基底核変性症、ベル麻痺、ギヤン-バレー症候群、ピック病、および自閉症が挙げられる。
【0129】
[00149]いくつかの実施態様において、ここで説明される方法は、神経疾患または障害
の症状を改良または改善するのに使用できる。神経疾患または障害に関連する症状の非限定的な例としては、震え、歩行障害、位置異常歩行、認知症、過剰な膨張(浮腫)、筋衰弱、下肢萎縮、運動障害(舞踏病)、筋硬直、身体運動の緩慢化(運動緩慢)、身体運動の喪失(無動症)、健忘、認知(知能)機能障害、認識の喪失(失認)、意思決定や計画などの機能障害、片側顔面麻痺、感覚欠損、しびれ、刺痛、四肢における痛みを伴う感覚異常、衰弱、脳神経の麻痺、発話困難、眼球運動、視野欠損、失明、出血、滲出物、近位筋の衰弱、ジスキネジア、四肢筋の緊張異常、筋緊張の減少、協調運動不能、指指試験または指鼻試験における誤った提示、測定障害、ホームズ-スチュワート現象、不完全または完全な全身麻痺、視神経炎、多視症、眼振などの眼球運動障害、痙性麻痺、有痛性強直性痙攣、レルミット症候群、運動失調、言語障害、膀胱直腸障害、起立性低血圧、運動機能の減少、夜尿症、低い言語化能、不良な睡眠パターン、睡眠障害、食欲障害、体重変化、精神運動性激越または遅滞、活動力の減少、無力感または過剰なもしくは不適切な罪悪感、思考または集中困難、死を繰り返し考えることまたは自殺念慮もしくは自殺企図、恐怖心、不安、短気、憂鬱または強迫観念的な反芻思考、体の健康状態に関する過剰な心配、パニック発作、および恐怖症が挙げられる。
【0130】
[00150]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の方法は、癌を処置または予防
することに使用でき、ここで癌は、癌腫である。癌腫はさらに、腺癌または絨毛癌である。一例において、絨毛癌は、悪性シンシチオームである。
【0131】
インスリン、C-ペプチド、ベータトロフィンタンパク質、および ベータトロフィンのmRNAの生産
[00151]一形態において、インスリンの生産方法がここに提供され、本方法は、哺乳動
物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質と接触させて、miR-124を活性化させること、それによりグルコース刺激に応答してインスリンを分泌する前駆細胞を生産することを含む。他の形態において、ベータトロフィンタンパク質および/またはベータトロフィンのmRNAの生産方法がここに提供され、本方法は、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれより多くの物質と接触させて、miR-124を活性化させること、それによりベータトロフィンタンパク質および/またはベータトロフィンのmRNAを生産する膵臓前駆細胞を生産することを含む。一例において、ベータトロフィンタンパク質またはベータトロフィンのmRNAは、誘導後の約12~28時間に生産され、例えば、誘導後の約12~16、16~20、20~24、または24~28時間に生産される。一例において、前駆細胞は、膵臓前駆細胞である。一例において、前駆細胞は、C-ペプチドおよび/またはインスリンを生産する。
【0132】
[00152]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である
。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、げっ歯類(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはリス)、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、または類人猿(例えばチンパンジー、ゴリラ、またはオランウータン)由来である。
【0133】
[00153]いくつかの実施態様において、miR-124が、時空的に胚体内胚葉の段階
で活性化され、例えば胚体内胚葉の段階で約1時間~約8時間活性化される。いくつかの実施態様において、miR-124の発現は、上昇する。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、タンパク質またはステロイドホルモン、例えば増殖因子を含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、FGFを含み、例えば、FGF1、FGF2(bFGF)、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、またはFGF10を含む。いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、約200ng/mL以下であり、例えば100~200ng/mLである。いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、約100ng/mL以下であり、例えば、約0.1~1ng/mL;または約1~約100ng/mLである。いくつかの実施態様において、本明細書で使用されるFGF(例えばbFGF)の濃度は、約0.1~1、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100ng/mLである。いくつかの実施態様において、本明細書で使用されるFGF(例えばbFGF)の濃度は、約0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、または90ng/mLである。いくつかの実施態様において、FGF(例えばbFGF)は、約10ng/mLである。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、抗酸化剤または還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)をさらに含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミン(例えばニコチンアミド)をさらに含む。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、FGF(例えばbFGF)、2-メルカプトエタノール、およびニコチンアミドと接触させる。いくつかの実施態様において、抗酸化剤または還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約10mmol/L以下であり、例えば約0.1~約10mmol/Lである。いくつかの実施態様において、抗
酸化剤または還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約0.1~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、または9~10mmol/Lである。いくつかの実施態様において、抗酸化剤または還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約0.2、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、または9mmol/Lである。いくつかの実施態様において、抗酸化剤または還元剤(例えば2-メルカプトエタノール)の濃度は、約1mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約100mmol/L以下であり、例えば約1~約100mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、50~70、80~90、または90~100mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、または90mmol/Lである。いくつかの実施態様において、ビタミン(例えばニコチンアミド)の濃度は、約10mmol/Lである。
【0134】
[00154]いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞を、1種またはそれよ
り多くの物質と接触させて、CAMP反応性要素結合タンパク質1(CREB1)の活性または発現レベル、例えばCREB1のリン酸化を制御する。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、ビタミンの代謝産物、例えばレチノイン酸を含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、CREB1結合タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、1種またはそれより多くの物質は、mixl1、Cdx2、Oct4、Sox17、Foxa2、およびGSK3βからなる群より選択される1種またはそれより多くの因子を制御する。
【0135】
[00155]いくつかの実施態様において、本明細書に記載のmiR-124は、miR-
124a、miR-124b、miR-124c、miR-124d、またはmiR-124e、例えばmiR-124aである。いくつかの実施態様において、miR-124aは、ヒトmiR-124a(hsa-miR-124a)、例えば、hsa-miR-124-5p(配列番号1:CGUGUUCACAGCGGACCUUGAU)もしくはhsa-miR-124-3p(配列番号2:UAAGGCACGCGGUGAAUGCC)またはそれらのフラグメントである。いくつかの実施態様において、miR-124は、表1、表2、および図面から選択される配列、またはそれらのフラグメントを含む。
【0136】
再生医療研究および療法
[00156]いくつかの実施態様において、本明細書に記載の哺乳動物の栄養膜幹細胞(例
えばhTS細胞)またはそれらの分化細胞は、臓器および/または組織の成長および/または生成に使用できる。一例において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、足場なしで、または足場(例えば天然組織の足場、または生分解性材料で作製された足場)上に、臓器または組織またはそれらの構築物を生成させるのに使用できる。一例において、本明細書に記載の生物学的足場における材料は、ヒドロゲル、例えば、I型コラーゲン、コラーゲン/フィブリン、フィブリン、エクストラセル(Extracel)(商標)ヒドロゲル、エクストラセル(商標)UV、チラミン置換ヒアルロン酸(TS-NaHy)-コーゲル(Corgel)(商標)、メチルセルロース-ヒアルロナン(MC-HA)、キトサン、キトサン/コラーゲン、アルギネート、アルギネート/ゼラチン、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、またはそれらのあらゆる組み合わせ)であってもよい。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、3D細胞バイオプリンティング技術で臓器および/または組織を生成するのに使用できる。3D細胞バイオプリンティング技術としては、米国特許出願公開公報第20130017564号、2012/0190078号、2012/0116568号、2011/0250688号、2011/0136162号、および2009/0263849号で開示されたものが挙げられる。一例にお
いて、3D細胞バイオプリンティング技術は、高い細胞生存率および/または多能性の維持が可能であり、および/または均一サイズの回転楕円体の生産が可能である。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、膵臓組織を生成するのに使用できる。一例において、本明細書に記載される哺乳動物の栄養膜幹細胞は、機能的な膵臓を生成するのに使用できる。いくつかの実施態様において、哺乳動物の栄養膜幹細胞は、hTS細胞である。
【実施例】
【0137】
[00157]以下の実施例は非限定的であり、本発明の様々な形態および特徴の一例を示し
たにすぎない。
【0138】
実施例1
hTS細胞の単離
[00158]この実験は、高雄医学大学病院(Kaohsiung Medical University Hospital)のヒト対象研究に関する施設内倫理審査委員会および倫理委員会(Institutional Review Board on Human Subjects Research and Ethics Committees)によって承認された。イン
フォームドコンセントを受けたドナーから、子宮外妊娠由来hTS細胞を得た。ヒト対象研究に関する施設内倫理審査委員会および倫理委員会によって承認された子宮外妊娠した女性(在胎期間:5~7週間)における未破裂の着床前胚のファロピウス管から、胚性の絨毛膜絨毛を得た。無血清α-MEM(シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ミズ
ーリ州セントルイス)中で小さい絨毛組織を十分細かく刻み、顕微鏡下で確認し、続いて0.025%トリプシン/EDTA(シグマ-アルドリッチ)で15分トリプシン処理し、α-MEM含有10%FBSを添加することによって反応を止めた。付着細胞を得て、馴化α-MEM、10%FBS、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン中、37℃、5%CO2で培養した。2回継代させた後、市販のキット(ダコ、カリフォルニア州カーピンテリア)ではhCGのレベルを測定できなくなった。
【0139】
実施例2
インビトロでのmiR-124aを調節することによるhTS細胞から膵臓前駆体への分化
[00159]5.5mMグルコース、1mmol/Lのβ-メルカプトエタノール(ME)
、10mmol/Lニコチンアミド、20%FBS、および10ng/mlのbFGFを含有するα-MEM培地の組み合わせは、集団中で2.1%および1.9%のインスリン陽性細胞を出現させた他の組み合わせと比較して、11.2%の最大の免疫反応性を示すインスリン陽性を生成した(
図5)。bFGF誘導は、様々なレベルのbFGF(すなわち、10、20、40、および80ng/ml)およびFBS(すなわち、無血清、1%、5%、10%、および20%)を使用した。結果から、様々な用量のbFGFにより、それぞれ8.6%、2.2%、および0.6%のインスリン
+/Ngn3
+細胞が生じたことが示された(
図6)。インジケーターとして免疫反応性インスリン
+/グルカゴン
+細胞(8.5%)を使用したところ、類似の結果が達成された(
図7)。インスリン
+グルカゴン
+発現細胞の総細胞数は、1,232個の細胞であった。インスリン
+Ngn3
+発現細胞の総細胞数は、502個の細胞(10ng/mlのbFGF)、712個の細胞(20ng/mlのbFGF)、485個の細胞(40ng/mlのbFGF)、および571個の細胞(80ng/ml)であった。ウェスタンブロット分析から、bFGF誘導中におけるFBSとインスリンレベルとの正の相関が示された。
【0140】
[00160]bFGF誘導時、時間経過分析から転写因子の動的プロファイルが解明され、
膵臓発生のカスケード的な段階が確認された(
図1Aおよび
図8)。誘導初期において、内中胚葉関連タンパク質であるMix様1ホメオボックスタンパク質(Mixl1)が誘導後の15分で上昇した。ブラキュリ(Brachyury)(T)またはグースコイド(Gooseco
id)(Gsc)の上昇と併せて、発生期の内中胚葉を移動させる段階が証拠により示唆された。Mixl1は1時間で低下したが、TおよびGscは高レベルで維持されたことから、初期のhTS細胞から内中胚葉への移行が示された。
【0141】
[00161]1~8時間の期間、Mixl1レベルが4時間で最低点に落ち、8時間で元の
レベルに戻った。この結果は、原腸胚形成中、内胚葉の細胞が静止したままであることの原因である可能性がある。1~4時間におけるMixl1強度の変化(
図1B)は、内中胚葉の2つの細胞集団への分離を引き起こし、そのうち一方の細胞集団は中胚葉に関するPdx1
+Mixl1
+を発現し、他方の細胞集団は内胚葉に関するPdx1
+Mixl1
-を発現した(
図1C)。Mixl1のmRNA発現は中胚葉に限定され、内胚葉では存在しなかった。SRYホメオボックス17(Sox17)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(Foxa2)、および膵臓および十二指腸のホメオボックス1(Pdx1)の上方制御により、著しい展望成長が認められた。Sox17は、肝臓ではなくPdx1
+腹側膵およびSox17
+胆管原基への分離を開始させるのに必要である。Foxa2およびPdx1の共発現は、異なる膵臓細胞サブタイプへの分化を強化した。Pdx1の過剰発現は膵臓への特殊化を決定付けるが、分化後期でさえもインスリン生産を誘導しなかった。
【0142】
[00162]8~16時間の期間、前腸膵臓内胚葉のマーカーであるSRYホメオボックス
9(Sox9)およびPdx1が上昇した。Sox9は、多能性膵臓前駆体を維持した。一方で、Pdx1を遺伝学的に除去すると、消化管の器官形成中に膵臓、仙骨胃、および十二指腸の欠損が起こった。前腸膵臓内胚葉段階への分化が証拠から示唆された。
【0143】
[00163]16~24時間の期間、ニューロゲニン3(Ngn3)およびNkx6ホメオ
ボックス1(Nkx6.1)のレベルは高レベルを維持したが、T、Sox17、Foxa2、Pdx1、Sox9、およびPtf1aのレベルは徐々に低下し、膵臓前駆体への細胞分化を導いた。Pdx1はNgn3を制御することにより、内胚葉細胞を内分泌細胞に変化させ、間充織でのグルカゴンおよびソマトスタチンの発現を介して膵島を形成した。Nkx6.1の上昇は、β細胞の増殖を増加させた。まとめると、これらの結果から、bFGFは、24時間で、DE形成および原始消化管内胚葉を介して膵臓前駆体へのhTS細胞分化を誘導したことが示された。
【0144】
[00164]
図2Aおよび
図9は、時間経過分析におけるCdx2、Oct4、Nanog
、およびSox2の動的プロファイルを示す。分化の各段階において優勢な多能性転写因子としては、内中胚葉に関してはCdx2、DEに関してはOct4およびNanog、原始消化管内胚葉に関してはCdx2およびNanog、ならびに膵臓前駆体に関してはSox2が挙げられる。免疫細胞化学的研究から、hES細胞における発見に一致する細胞移行(
図2B、
図14)中の相互の負の自己調節的なフィードバックループ(
図10~13)が示された。
図2Cは、4時間で、Oct4が、Sox17、Foxa2、Pdx1、およびGscと共に免疫細胞化学的に過剰発現することを示しており、それによりDE段階におけるOct4が確認された。これらの結果から、多能性転写因子の固有の相互作用と、膵臓分化中の細胞運命を決定する表現型の変化とが示唆された。
【0145】
[00165]
図3Aは、miR-124aを介したDEへの特殊化への分子経路を例示する
。免疫ブロッティングアッセイから、bFGFが、FGFR1を介してPI3K/Akt経路およびその下流のエフェクターcAMP反応要素-結合タンパク質1(CREB1)を活性化したことが明らかになった(
図15~18)。miR-124aとp-CREB1発現との相関を経時的に観察したところ(
図3B)、CREB1がmiR-124aの生産を促進したことが示唆された(
図3C、
図19~20)。これらの結果から、bFGFが、CREB1のリン酸化を介したmiR-124aの生物発生を誘導したことが示唆
された。
【0146】
[00166]miRNAsは、3’非翻訳領域(3’UTR)内のmRNA配列を標的にし
て、翻訳を阻害する、および/またはRNA分解を引き起こす遺伝子の転写後調節因子である。配列分析およびルシフェラーゼレポーターアッセイによれば、miR-124aは、Smad4(
図3D)、Cdx2(
図3E)、およびGSK3β(
図3F)を阻害した。これらの結果は、miR-124aおよび抗miR-124aを事前にトランスフェクトしたことに起因することが証拠から確認された(
図3G)。報告と一致して、Smad4のノックダウンはMixl1を抑制したが(
図21)、これは、DE移行中にMixl1の下方制御が起こったことの説明になる。次いでCdx2の阻害によりOct4の活性化が促進された。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイから、Oct4は、Sox17発現のために(
図22)Sox17のプロモーター(
図3H)を標的化したことが明らかになった。続いて、1~4時間におけるGSK3βの阻害は、細胞質中でのβ-カテニンの安定化および蓄積をもたらした(
図23)。β-カテニンの核移行は、Foxa2発現(
図8)のために遺伝子Foxa2(
図3I)を標的としていた。これまでにmiR-124aはβ細胞株でFoxa2を制御することが報告されている。この目的を達成するために、bFGFは、DE段階における、Smad4およびMixl1の下方制御ではなくOct4、Sox17、およびFoxa2の上方制御を介したmiR-124aの多面的な機能を誘導した。
【0147】
[00167]タンパク質ホルモンであるベータトロフィンは、主として肝臓で発現され、高
速の膵β細胞の増殖を機能的に誘導する。Foxa2は、遺伝子C19orf80のプロモーターを標的とし、12時間でベータトロフィンを生産した(
図3J、
図24)。qPCR分析から、時空的に最初の12時間でベータトロフィンのmRNAが上昇し、16時間で約100%のピークになり、その後24時間まで下降したことが解明された(
図3K)。20~28時間の間に、原始消化管内胚葉および膵臓前駆体の両方の段階にわたりベータトロフィン、C-ペプチド、およびインスリンの並行発現が観察された(
図3L、
図25)。免疫細胞化学的に、hTS細胞から得られた膵臓前駆体は、ベータトロフィンとインスリンとを共に発現した(
図3M、
図26)。いずれの特定の理論に縛られたり、またはそれにこだわったりするつもりはないが、膵臓発生中にベータトロフィンは膵臓前駆体の増殖も調節する可能性があると考えられる。
【0148】
実施例3
hTS細胞から得られた膵臓前駆体はグルコース刺激に応答してインスリンを分泌した
[00168]膵臓前駆体は、培地に免疫反応性インスリンを分泌することによりグルコース
レベルをモニターしていた(
図4A)。興味深いことに、β細胞に特異的な染色法である陽性ジチゾン(DTZ)染色を用いたところ、急速な細胞凝集が3Dブドウ状細胞塊を形成することが証拠から示される。高グルコースが放出されたら、細胞塊は、線維芽細胞様の形状に再び戻り始める(
図4B)。コンピューター-顕微鏡-ビデオシステムで細胞プロセスを記録した。
【0149】
[00169]ラジオイムノアッセイでは、高グルコース(25mM)刺激に応答して、免疫
反応性のC-ペプチドおよびインスリンレベルの両方の有意な上昇が測定された(
図4C)。DTZ陽性細胞塊の超微細構造研究から、膵臓のαおよびβ細胞のものを模擬した、核の比率に対して大きい細胞質、細胞間の架橋(デスモソーム結合)、豊富なミトコンドリア、未成熟果粒、および分泌果粒を有する円形の細胞の存在が明らかになった(
図4D)。
【0150】
[00170]hTS細胞から得られた膵臓前駆細胞は、Sox2、Nkx6.1、Ptf1
a、Ngn3、Pdx1、Sox9、ベータトロフィン、加えてインスリン(β細胞)、
ソマトスタチン(δ細胞)、グルカゴン(α細胞)、膵臓ポリペプチド(PP細胞)、グルコース代謝輸送体Glut2、および触媒酵素のアミラーゼなどの内分泌成分などの様々なマーカーを免疫細胞化学的に発現した(
図4E)。膵臓前駆体が存在すること、膵臓前駆体がC-ペプチドおよびインスリンを発現することによりグルコース刺激試験に正に応答したことが全ての証拠から示された。
【0151】
実施例2~3で説明した実験の材料および方法
[00171]細胞培養および分化
[00172]未分化のhTS細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清(SAFCバイオサイ
エンス(SAFC Biosciences))が補充されたα-MEM(ギブコ(Gibco))中で維持し
た。2~3日毎に1:3~1:6の分割比で培養物を手作業で継代させた。20%FBS、1mM2-メルカプトエタノール、10mMニコチンアミドおよび10ng/mlのbFGFを含有する馴化α-MEM培地により、37℃、5%CO
2インキュベーターで24時間かけて膵臓前駆体の分化を実行した。分化レジメンは、
図5~7で示したような実験的な経験によって決定された。系統の発生段階依存的な分化は、これまでに述べられたような様々な細胞マーカーを参考にしてなされた(M. Borowiak、Rev. Diabet. Stud. 7
、93~104(2010);K. A. D’Amourら、Nat. Biotech. 23、1534~1541(2005);E. Kroonら、Nat. Biotech、26、443~452(2008))。異なるアッセイに関して示された時間
で細胞を回収した。
【0152】
[00173]試薬
[00174]DTZ(メルクKGaA(Merck KGaA)、ダルムシュタット、ドイツ)、bF
GF(シグマ(Sigma))、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサス
レッド594(インビトロジェン(Invitrogen))、デイライト(DyLight)488-、
デイライト594-(サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific))、フィコ
エリトリン(PE)結合二次抗体(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch)、メリーランド州ボルチモア)。shRNAは、台湾の国立RNAiコア施設中央研究院(National RNAi Core Facility, Academia Sinica)から購入した。
【0153】
[00175]ウェスタンブロット
[00176]このアッセイ法はこれまでに説明されている(T. T. Y. Leeら、PLoS ONE 7、e52491(2012))。
簡単に言えば、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(ロシュ(Roche))が補充さ
れたRIPA溶解溶液(ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州ビレリカ)に細胞
を回収した。30μgの溶解産物をポリアクリルアミドゲルで電気泳動した後、PDVFメンブレン(ミリポア)上へのエレクトロブロッティングを行った。PBS中の5%乾燥脱脂乳で室温で1時間ブロックした後、一次抗体を使用して標的タンパク質を検出した。全てのメンブレンを化学発光剤(ミリポア)と共にインキュベートし、ChemiDoc
XRSシステム(バイオ-ラッド(Bio-Rad))で画像を捕捉した。表S1に使用され
た抗体を列挙した。AlphaEaseFC(バージョン4.0.0)でデータを分析した。
【0154】
[00177]免疫蛍光法
[00178]細胞培養を載せたスライドを95%(v/v)エタノール中で室温で30分固
定し、PBSで3回洗浄し、ブロッキング緩衝液である0.1%(wt/v)トリトンX-100(シグマ)および5%(v/v)正常ロバ血清(ミリポア)を含有するPBSで60分インキュベートした。一次および二次抗体をブロッキング緩衝液で希釈した。最初のものを4℃で(24時間)または室温で2時間インキュベートした。PBS中の特異的一次抗体とインキュベートした後、適切なフルオレセインイソチオシアネート(FITC、インビトロジェン)またはアレクサフルオロ(Alexa Fluor)蛍光体488、594、
647(インビトロジェン)またはデイライト488、594(バイオレジェンド(BioLegend))結合二次抗体を室温で1時間かけて添加した。4’,6-ジアミジノ-2-フ
ェニルインドール(DAPI)染色によって、細胞核(5分)細胞を顕微鏡観察した。それに続いて室温で二次抗体(1時間)とインキュベートして洗浄した後、スライドを50%グリセロールと共にマウントした。これまでに述べられたようにして、共焦点レーザー顕微鏡検査法(LSM700;ツァイス(Zeiss)Z1またはオリンパス(Olympus)フルオビュー(FluoView)1000共焦点レーザー顕微鏡)またはTissueFAXSシステム(TissueQnostics GmbH、ウィーン、オーストリア)で画像を捕捉し、Tissue
Questソフトウェアでデータを分析した(T. T. Y. Leeら、PLoS ONE 7, e52491(2012))。
【0155】
[00179]TaqMan miRNAおよび定量リアルタイムPCRアッセイ
[00180]DNAアーゼIオンカラムダイジェスチョン(キアゲン(Qiagen)、カリフォ
ルニア州バレンシア)を製造元のプロトコールに従って使用して、TRIZOL試薬(インビトロジェン)でhTS細胞からRNAを3連または5連のサンプルで単離した。iScript cDNA合成キット(バイオ-ラッド)での逆転写には、トータルRNA(500ng)を使用した。反応1回毎に40分の1のcDNAならびに400nMフォワードおよびリバースプライマーを使用して、PCRを2連で実行した。miRNAステム-ループqPCRのために、製造元の説明書(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))に従ってシングルチューブのTaqMan miRNAアッセイを使用した。テンプレートなし対照およびRTマイナス対照を包含する全てのRT反応を、GeneAmp PCR9700サーモサイクラー(アプライド・バイオシステムズ)で実行した。テンプレートなし対照を包含する比較用のリアルタイムPCRを、miR-124またはRNU6Bに特異的なプライマー(アプライド・バイオシステムズ)を使用して3連または5連で行った。U6 snRNA(RNU6B;アプライド・バイオシステムズ)を内因性対照として活用した。SDS2.2.2ソフトウェア(アプライド・バイオシステムズ)を使用して相対的な発現を計算し、これを比較ΔCt分析に使用した。ベータトロフィンのmRNAに使用されたプライマー配列は、プライマー1、フォワード:5’-acatctccctccccagactc-3’(配列番号122)およびリバース:5’-tgctctgtgctcagaagtgg-3’(配列番号123);プライマー2:フォワード:5’-ctgtcggctgagggtttccat-3’(配列番号124)およびリバース:5’-gagtctggggagggagatgt-3’(配列番号125)であった。
【0156】
[00181]免疫沈降(IP)アッセイ
bFGF処置したhTS細胞の細胞溶解産物を収集した。プロテインG-アガロース(ミニポア(Minipore))と30分インキュベートすることによって、総タンパク質(100μg)を、(表S1に)列挙した特異的一次抗体で一晩処置した。プロテインG-アガロースビーズで2時間処置した後、サンプルをRIPA溶解緩衝液(ミニポア)で3回洗浄し、続いてタンパク質ローディング色素を添加し、5分沸騰させた。サンプルを8%SDS-PAGEで分離し、免疫ブロッティング分析で処理した。
【0157】
[00182]クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ
[00183]ChIPアッセイキット(ミリポア)を製造元の説明書通りに使用することに
よってChIPアッセイを行った。簡単に言えば、免疫沈降したDNAフラグメントをhTS細胞(1×106)から抽出し、抗体の抗CREB1もしくは抗Oct4または抗β-カテニンをこれまでに述べられたようにして使用した(T. T. Y. Leeら、PLoS ONE 7、e52491(2012))。特異的なプライマーは、miR-124aまたはSox17またはFoxa2のプロモーター領域における保存された結合部位を増幅するために使用され、以下に列挙した通りである:
[00184]miR124-2のプロモーターに関しては:フォワード、5’-tctgc
ggctctttggtttca-3’(配列番号126)、およびリバース、5’-tctgccttcagcacaagagg-3’(配列番号127);およびフォワード、5’-gcggctctttggtttcaagg-3’(配列番号128);リバース、5’-ctgccttcagcacaagagga-3’(配列番号129)であり;miR124-3のプロモーターに関しては:5’-cccgcagttctcaaggacac-3’(配列番号130)、およびリバース、5’-agaagggagccaggcaagtc-3’(配列番号131)であり;Sox17のプロモーターに関しては:5’-ttgtagattgctctctctcctcc-3’(配列番号132)、およびリバース、5’-gtgaagccttggctagggg-3’(配列番号133)であり;Foxa2のプロモーターに関しては:5’-cccatcattgattcctggat-3’(配列番号134)、およびリバース、5’-ttgggaggctgagatttgtc-3’(配列番号135)であり;ベータトロフィンのプロモーターに関しては:5’-gtcagccctccctgactgat-3’(配列番号136)、およびリバース、5’-catgtggatttccagcctgc-3’(配列番号137)であった。
【0158】
[00185]デュアル-ルシフェラーゼアッセイ
[00186]ルシフェラーゼ-3’UTRレポータープラスミドを調製するために、増幅し
た3’UTRフラグメントをhTS細胞のゲノムDNA抽出物から増幅した。3’UTR
PCRフラグメントを、PsiIおよびMfeI(サーモ・サイエンティフィック、イリノイ州ロックフォード)を使用して、pGL4.51ベクター(プロメガ(Promega)
、ウィスコンシン州マディソン)のルシフェラーゼ遺伝子下流にクローニングした。以下に、3’UTRレポーターコンストラクト用のプライマーを列挙した:
[00187]Cdx2の3’UTRに関しては:フォワード、5’-aaattataag
ctgtttgggttgttggtct-3’(配列番号138)およびリバース、5’-aaacaattgcccccataatttctgactgc-3’(配列番号139)であり;Smad4の3’UTRの領域1に関しては:フォワード、5’-aaattataactcccaaagtgctgggatta-3’(配列番号140)およびリバース、5’-aaacaattgctgcactgttcacaggagga-3(配列番号141)であり;Smad4の3’UTRの領域2に関しては:フォワード、5’-aaattataacagttgtcccagtgctgcta-3’(配列番号142)およびリバース、5’-aaacaattgatgacttgcccaaaggtcac-3’(配列番号143)であり;GSK3βの3’UTRに関しては:フォワード、5’-aaattataacccacaactggggtaaaaga-3’(配列番号144)およびリバース、5’-aaacaattgctgtggaaggggcaaagata-3’(配列番号145)である。
【0159】
[00188]デュアルルシフェラーゼアッセイのために、pGL4.74ウミシイタケルシ
フェラーゼプラスミド(500ng;プロメガ)、および非特異的な対照であるmiRNA(30pmol)またはmiR-124a前駆体(30pmol;システム・バイオサイエンス、カリフォルニア州マウンテンビュー)でコトランスフェクトしたホタルルシフェラーゼレポーター(500ng)または3’UTRをまったく含まない空のベクターを、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクト試薬(ミルス・バイオLLC(Mirus Bio LLC)、米国ウィスコンシン州マディソン)を使用してhTS細胞(各ウェル
中1.5×104個の細胞)にコトランスフェクトした。トランスフェクト後に(36時間)、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(プロメガ)およびチェントロ(Centro)LB960マイクロプレートルミノメーター(ベルトールド・テクノロジー(Berthold Technologies)、バート・ヴィルトバート、ドイツ)によってルシフェラー
ゼ活性を分析した。評価のために、まずウミシイタケルシフェラーゼの値をホタルルシフ
ェラーゼ活性に標準化し、さらに各3’UTRレポーターの計算された活性を対照ベクターの活性に標準化した。データを平均±SDとして表し、n=8、p<0.05を統計的に有意とした。細胞溶解緩衝液で調製された全細胞抽出物を、Cdx2、Smad4、GSK3β、およびβ-アクチン抗体を用いた免疫ブロッティングで処理した。
【0160】
[00189]miR-124a前駆体または抗miR-124aのトランスフェクト
[00190]miR-124a前駆体および抗miR-124aをシステム・バイオサイエ
ンスから購入した。簡単に言えば、12ウェルの培養皿で、TransIT-LT1トランスフェクション試薬(ミルス、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、miR-124a前駆体(60pmol)または抗miR-124a(60pmol)をhTS細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトの36時間後にmiR-124aを定量するためにトータルRNAを使用した。
【0161】
[00191]C-ペプチドおよびインスリンのラジオイムノアッセイ
[00192]グルコース刺激試験において、bFGF処置後、80%密集度の細胞上のα-
MEM培地(5ml)に高グルコース(25mM)を添加した。異なる時間(5、10、20、30、60および120分間)で培地を収集した。収集した培地を凍結乾燥器(バーチス(VirTis)、ペンシルベニア州ワーミンスター)で凍結乾燥し、ラジオイムノアッセイ用滅菌水(400μl)を加えて元に戻した。培地中のC-ペプチドおよびインスリンレベルを、それぞれC-PEP II-RIA-CT(DIAソース・イムノアッセイS.A.(DIAsource ImmunoAssays S.A.)、ベルギー)およびコート-A-カウント(Coat-A-Count)インスリン(ジーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス社(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.)、カリフォルニア州ロサンジェルス)によって決定した。n=5、p<0.05を統計的に有意とした。
【0162】
[00193]フローサイトメトリー
[00194]Cdx2またはOct4またはSox2またはNanogに対して非特異的な
shRNAまたはshRNAでトランスフェクトした後、細胞(細胞5×106個/ml)を特異的一次抗体(表S1で列挙された)と共に30分インキュベートした。適切な蛍光色素結合一次抗体と調整された希釈度で4℃で1時間インキュベートすることによって、サンプルを洗浄し、PBSに再懸濁し、続いてセルストレーナーキャップを有するポリスチレンの丸底チューブ(BDファルコン(BD Falcon))に通過させ、その後フローサ
イトメトリー(FACScan、BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、カリフォルニア州サンノゼ)を行った。セル-クエスト(Cell-Quest)ソフトウェア(BDバイオサイエンス)を用いてデータを分析した。
【0163】
[00195]透過型電子顕微鏡観察
[00196]高グルコース刺激後、培養皿上のhTS細胞から得られた膵島様細胞塊をウォ
ルフラム製ニードルで切り離した。透過型電子顕微鏡観察のために、3%wt/volホルムアルデヒド、1.5%(wt/vol)グルタルアルデヒドおよび2.5%(wt/vol)スクロースを含有する0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で、室温で1時間および4℃で一晩、細胞の凝集塊を固定した。1%(vol/vol)OsO4を含有するパラディ(Palade)の固定剤中で4℃でオスミウム酸染色する2時間前および後にサンプルをカコジル酸ナトリウム緩衝液で洗浄し、タンニン酸で処置し、酢酸ウラニルで染色し、一連の濃度勾配を有するエタノール溶液で脱水し、TABBエポキシ樹脂(アガー・サイエンティフィック社(Agar Scientific Ltd.))中に埋め込んだ。超薄切片を酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色し、JEM-2000EXII(JEOL、東京)を使用して試験した。小胞顆粒のイメージングは、これまでに述べられものを参考にした(K. A. D’Amourら、Nat. Biotech. 23、1534~1541(2005))。
【0164】
[00197]統計的分析
[00198]全ての実験を3連で行い、2回または指定された通りに繰り返した。ウェスタ
ンブロット、qPCR、ルシフェラーゼアッセイ、およびフローサイトメトリーから得られたデータをスチューデントのt検定で計算した。p値<0.05を統計学的に有意とみなした。
【0165】
【0166】
【0167】
[00200]本明細書で開示された1つまたはそれより多くの実施態様、例、または形態は
、本明細書で開示されたあらゆる他の実施態様、例、または形態と適宜組み合わせることができる。
【0168】
[00201]本明細書においていくつかの実施態様を示し説明したが、このような実施態様
は、単なる一例として提供されたにすぎない。本発明から逸脱することなく多数の改変型、変化、および置換を作り出すことができる。本発明の実施にあたり本明細書で説明した本発明の実施態様の様々な代替物を採用してもよいことが理解されるものとする。
【配列表】