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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】圧電性繊維複合体、及び圧電性衣料
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/193 20060101AFI20220601BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220601BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20220601BHJP
   A41D 31/30 20190101ALI20220601BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20220601BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
H01L41/193
H01L41/113
A41D31/02 A
A41D31/30
D01F6/62 305A
B32B5/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020525402
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020849
(87)【国際公開番号】W WO2019239867
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2018112230
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592154411
【氏名又は名称】岡本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 健司
(72)【発明者】
【氏名】村井 豊
(72)【発明者】
【氏名】細谷 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大西 修
(72)【発明者】
【氏名】玉倉 大次
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴文
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅之
(72)【発明者】
【氏名】宅見 健一郎
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/084054(WO,A1)
【文献】特開2016-209149(JP,A)
【文献】国際公開第2016/175321(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/193
H01L 41/113
A41D 31/02
A41D 31/30
D01F 6/62
B32B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材部と、
外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維で構成され、前記基材部と伸縮率の異なる圧電繊維集合体と、
前記基材部と前記圧電繊維集合体とを接合する接合部と、
を備え
前記接合部は、向かい合う部分を有し、
前記圧電繊維集合体は、自然長よりも伸張させた状態で前記基材部に接合され、前記向かい合う部分の間でさらに伸張可能である、
圧電性繊維複合体。
【請求項2】
前記基材部の伸縮率は、前記圧電繊維集合体の伸縮率よりも低い、
請求項1に記載の圧電性繊維複合体。
【請求項3】
基材部と、
外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維で構成された圧電繊維集合体と、
前記基材部と前記圧電繊維集合体とを接合する複数の接合部と、を備え、
前記圧電繊維集合体は、自然長よりも伸張させた状態で前記基材部に接合され、使用時に少なくとも2つの前記接合部との間でさらに伸張可能である、
圧電性繊維複合体。
【請求項4】
前記基材部は、シート状に形成され、
前記圧電繊維集合体は、前記基材部の一方の面に配置されている、
請求項1乃至の何れか一項に記載の圧電性繊維複合体。
【請求項5】
前記圧電繊維集合体は、外部からのエネルギーによって抗菌性を発現する、
請求項1乃至の何れか一項に記載の圧電性繊維複合体。
【請求項6】
前記圧電繊維集合体は、ポリ乳酸を含む、
請求項1乃至請求項の何れか一項に記載の圧電性繊維複合体。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載の前記圧電性繊維複合体を含み、
前記圧電繊維が伸張した状態で使用される、
圧電性衣料。
【請求項8】
前記圧電繊維集合体が身体側に配置されている、
請求項に記載の圧電性衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を発現する圧電性繊維複合体、及び圧電性衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電基材を含む糸によって形成される圧電織物が提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の圧電織物は、外部刺激(例えば物理力)によって圧電効果が発現される織物である。また、外部からのエネルギーによって抗菌性を発現する布が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/111108号
【文献】特許第6292368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抗菌性を発現する布(圧電織物)は、小さなエネルギーで抗菌性を発現することが要望されていた。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、小さなエネルギーによって抗菌性を発現する圧電性繊維複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態の圧電性繊維複合体は、基材部と、外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維で構成され、前記基材部と伸縮率の異なる圧電繊維集合体と、前記基材部と前記圧電繊維集合体とを接合する接合部と、を備える。
【0007】
本発明の一実施形態の圧電性繊維複合体は、基材部と、外部からのエネルギーにより電荷を発生する圧電繊維で構成された圧電繊維集合体と、前記基材部と前記圧電繊維集合体とを接合する複数の接合部と、を備える。前記圧電繊維集合体は、使用時に少なくとも2つの前記接合部の間で伸張可能である。
【0008】
なお、使用時とは、例えば圧電性繊維複合体を衣料に用いる場合は着用中を意味する。
【0009】
電場により細菌及び真菌等の増殖を抑制できる事が知られている(例えば、土戸哲明,高麗寛紀,松岡英明,小泉淳一著、講談社:微生物制御-科学と工学を参照。また、例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。また、この電場を生じさせている電位により、湿気等で形成された電流経路、又はミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌が弱体化し菌の増殖を抑制することが考えられる。外部からエネルギーを受けた際、本発明の一実施形態の圧電性繊維複合体は、電荷を発生した時に異なる電位となる少なくとも2つの圧電繊維の間で電場が生じ、あるいは人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、該圧電繊維と該所定の電位を有する物との間で電場を生じる。あるいは、外部からエネルギーを受けた際、本発明の一実施形態の圧電性繊維複合体は、電荷が発生した時に異なる電位となる少なくとも2つの圧電繊維の間で水分等を介して電流を流し、あるいは人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、汗等の水分を介して該圧電繊維と該所定の電位を有する物との間で電流を流す。
【0010】
したがって、本発明の一実施形態の圧電性繊維複合体は、以下のような理由により抗菌性を発現する。圧電性繊維複合体は、人体等の所定の電位を有する物に近接して用いられる物(衣料、マスク等の医療用品、又は電気製品に使用されるフィルタ等)に適用した場合に発生する電場又は電流の直接的な作用によって、菌の細胞膜や菌の生命維持のための電子伝達系に支障が生じ、菌が死滅する、あるいは菌が弱体化する、という効果を奏する。さらに、圧電性繊維複合体では、電場もしくは電流によって水分中に含まれる酸素が活性酸素種に変化する場合がある。または、圧電性繊維複合体では、電場もしくは電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある。圧電性繊維複合体では、これらのラジカル類を含む活性酸素種の作用により菌が死滅する、又は弱体化する。また、圧電性繊維複合体では、上述の理由が複合して抗菌効果を発揮する場合もある。なお、本発明で言う「抗菌」とは、菌が弱体化する効果、また菌を死滅する効果の両方を含む概念である。
【0011】
本発明の一実施形態の圧電性繊維複合体は、圧電繊維集合体を、その自然長もしくは自然長よりも伸張させた状態で、基材部に接合している。このため、圧電性繊維複合体に小さな負荷が加えられた場合でも、負荷が圧電繊維集合体に効率よく伝わるので、小さなエネルギーで抗菌性を発現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、小さなエネルギーによって抗菌性を発現する圧電性繊維複合体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、圧電性繊維複合体の構成の一例を示す構成図である。
図2図2(A)は、圧電繊維集合体の一例(圧電繊維が伸張していない状態)を示す模式図であり、図2(B)は、圧電繊維集合体の別の例(圧電繊維が伸張している状態)を示す模式図である。
図3図3(A)は、圧電繊維の構成の一例を示す一部分解図であり、図3(B)は、図3(A)のA-A線における断面図であり、図3(C)は、圧電繊維の構成の別の例を示す一部分解図であり、図3(D)は、図3(C)のB-B線における断面図である。
図4図4(A)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電場方向と、圧電繊維の変形と、の関係の一例を示す図であり、図4(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電場方向と、圧電繊維の変形と、の関係の別の例を示す図である。
図5図5(A)は、圧電繊維に張力が加わった時に各フィラメントに生じるずり応力(せん断応力)の一例を示す図であり、図5(B)は、圧電繊維に張力が加わった時に各フィラメントに生じるずり応力(せん断応力)の別の例を示す図である。
図6図6は、圧電繊維集合体における電場の一例を示す図である。
図7図7は、圧電繊維集合体に荷重を加えた状態において、時間の経過に対する応力の変化の一例を示す説明図である。
図8図8は、圧電性繊維複合体を適用した靴下を示す模式図である。
図9図9は、変形例1にかかる圧電性繊維複合体の例を示す構成図である。
図10図10は、変形例1にかかる圧電性繊維複合体を適用したサニタリー用品を示す模式図である。
図11図11は、変形例2にかかる圧電性繊維複合体の例を示す構成図である。
図12図12は、変形例3にかかる圧電性繊維複合体の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態にかかる圧電性繊維複合体1について図を参照して説明する。図1は、圧電性繊維複合体1の一例を示す構成図である。圧電性繊維複合体1は、図1に示すように、基材部2と、圧電繊維集合体3と、複数(図1では2つ)の接合部4とを備える。圧電性繊維複合体1は、例えば、基材部2の主面(一面)に圧電繊維集合体3が配置される2層構造である。
【0015】
基材部2は、例えば、繊維(フィラメント)で構成された布帛(例えば、編物、織物又は不織布)である。基材部2の伸縮率は、圧電繊維集合体3の伸縮率よりも低い。言い換えると、基材部2は、外部エネルギー(例えば、張力P1)が加えられたとしても、圧電繊維集合体3よりも伸張(変形)しにくい。基材部2が伸縮しにくいことで、圧電性繊維複合体1は、外部エネルギーが加えられることによる破れ等の破損が軽減できる。基材部2が上述のように構成されることで、圧電性繊維複合体1は、例えば、衣料、カバーシートのような薄手のものに適用することができる。
【0016】
なお、基材部2は、伸縮率が低い素材によって形成された繊維(フィラメント)で構成されていてもよい。また、基材部2は、不織布など、その構造によって伸縮率が低くなるように形成されてもよい。また、基材部2は、モノフィラメント又はマルチフィラメントによって形成されてもよい。さらに、基材部2は、繊維で構成された布帛の例に限定されず、紙又はシート状に形成された樹脂、金属でもよい。また、基材部2は、布帛のようなシート状に限定されず、シート状以外の形状、例えば厚板状に形成されてもよい。また、基材部2は、例えば、短冊状又は枠状に形成されてもよい。
【0017】
複数の接合部4は、基材部2と圧電繊維集合体3とを接合する。複数の接合部4は、縫合などによって、圧電繊維集合体3を基材部2に接合(固定)している。複数の接合部4は、例えば、圧電繊維集合体3の一方向(伸張方向)E1の両端で圧電繊維集合体3を基材部2に接合している。複数の接合部4は、圧電繊維集合体3の伸張方向E1で向かいあうように配置されていることが好ましい。
【0018】
図2(A)は、本実施形態にかかる圧電繊維集合体3の一例(圧電繊維31及び圧電繊維32が伸張していない状態)を示す模式図である。図2(B)は、圧電繊維集合体3の別の例(圧電繊維31及び圧電繊維32が伸張している状態)を示す模式図である。図3(A)は、圧電繊維集合体3を構成する圧電繊維31の構成の一例を示す一部分解図である。図3(B)は、図3(A)のA-A線における断面図である。図3(C)は、圧電繊維32の構成の一例を示す一部分解図である。図3(D)は、図3(C)のB-B線における断面図である。
【0019】
圧電繊維集合体3は、図1に示すように、伸張可能であって、複数の接合部4のうち伸張方向E1上で向かい合う接合部4の間で伸縮(伸張)する。圧電繊維集合体3は、図2(A)及び図2(B)に示すように、圧電繊維31と、圧電繊維32とで構成されている。圧電繊維集合体3は、圧電繊維31及び圧電繊維32を編糸として用いて編んだ編物である。圧電繊維集合体3は、外部エネルギーによって伸縮する。例えば、圧電繊維集合体3は、張力P1が加えられると、図2(A)で示される状態から図2(B)に示される状態に伸張する。このように、圧電繊維集合体3は、張力P1が加えられた場合、伸張方向E1に伸張し易いように構成されている。
【0020】
ここで、圧電繊維31及び圧電繊維32について、詳細に説明する。圧電繊維31及び圧電繊維32のそれぞれは、図3(A)、図3(B)、図3(C)及び図3(D)に示すように、圧電性を有するフィラメント300を複数(図3(A)、図3(B)、図3(C)及び図3(D)では7本)撚ってなる糸(マルチフィラメント糸)を構成する。圧電繊維31は、図3(A)に示すように、フィラメント300を右旋回して撚られた右旋回糸(以下S糸と呼ぶ)である。圧電繊維32は、図3(C)に示すように、フィラメント300を左旋回して撚られた左旋回糸(以下、Z糸と呼ぶ)である。
【0021】
なお、圧電繊維31及び圧電繊維32は、一例としてそれぞれ7本のフィラメント300が撚られてなる圧電繊維集合体を示しているが、フィラメント300の本数はこれに限られず、実際には用途等を鑑みて、適宜設定される。
【0022】
フィラメント300は、図3(B)及び図3(D)に示すように、断面が円形状の繊維である。フィラメント300は、外部エネルギーが加わることにより電荷を発生する電荷発生繊維(電荷発生糸)である。例えば、圧電繊維31又は圧電繊維32に張力P1が加えられることで、フィラメント300は電荷を発生する。フィラメント300は、機能性高分子(例えば、圧電性ポリマー)からなる。圧電性ポリマーとしては、例えばポリ乳酸(PLA)が挙げられる。また、ポリ乳酸(PLA)は、焦電性を有していない圧電性ポリマーである。ポリ乳酸は、一軸延伸されることで圧電性を有する。ポリ乳酸には、L体モノマーが重合したPLLAと、D体モノマーが重合したPDLAと、がある。なお、フィラメント300は機能性高分子の機能を阻害しないものであれば、機能性高分子以外のものをさらに含んでいてもよい。また、フィラメント300は、断面が円形状のものに限定されない。
【0023】
なお、ポリ乳酸は、キラル高分子であり、主鎖が螺旋構造を有する。ポリ乳酸は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を有する。さらに熱処理を加えて結晶化度を高めると圧電定数が高くなる。ポリ乳酸は、延伸による分子の配向で圧電性を有するため、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の他の圧電性ポリマー又は圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。一軸延伸されたポリ乳酸の圧電定数は、5~30pC/N程度であり、高分子の中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。
【0024】
図4(A)は、L体のポリ乳酸(PLLA)の一軸延伸方向900と、電場方向と、フィラメント300の変形と、の関係の一例を示す図である。図4(B)は、L体のポリ乳酸の一軸延伸方向900と、電場方向と、フィラメント300の変形と、の関係の別の例を示す図である。なお、図4(A)および図4(B)は、モデルケースとして、フィラメント300をフィルム形状と仮定した場合の図である。
【0025】
一軸延伸されたポリ乳酸からなるフィラメント300は、厚み方向を第1軸、一軸延伸方向900を第3軸、第1軸及び第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd14及びd25のテンソル成分を有する。したがって、一軸延伸されたポリ乳酸からなるフィラメント300は、一軸延伸方向900に対して45度の方向に歪みが生じた場合に、最も効率よく電荷を発生する。
【0026】
フィラメント300は、PLLAであって、図4(A)に示すように、第1対角線910Aの方向に縮み、第1対角線910Aに直交する第2対角線910Bの方向に伸びる場合、紙面の裏側から表側に向く方向に電場を生じる。すなわち、フィラメント300は、紙面表側では、負の電荷が発生する。フィラメント300は、図4(B)に示すように、第1対角線910Aの方向に伸び、第2対角線910Bの方向に縮む場合も、電荷を発生するが、極性が逆になり、紙面の表面から裏側に向く方向に電場を生じる。すなわち、フィラメント300は、紙面表側では、正の電荷が発生する。
【0027】
フィラメント300の一軸延伸方向900は、フィラメント300の軸方向に一致又は平行している。圧電繊維31におけるフィラメント300の一軸延伸方向900は、図3(A)に示すように、圧電繊維31の軸方向30Aに対して、紙面上において、左に傾いた状態となる。また、圧電繊維32におけるフィラメント300の一軸延伸方向900は、図3(C)に示すように、圧電繊維32の軸方向30Bに対して、紙面上において、右に傾いた状態となる。
【0028】
圧電繊維31及び圧電繊維32のそれぞれの軸方向30A、30Bに対するフィラメント300の一軸延伸方向900の傾きは、圧電繊維31又は圧電繊維32の撚り回数に依存する。つまり、圧電繊維31及び圧電繊維32のそれぞれの軸方向に対する一軸延伸方向900の傾きは図3(A)及び図3(C)で示される角度に限定されるものではない。圧電繊維31の軸方向30Aに対する一軸延伸方向900の傾きは、少なくとも圧電繊維31の軸方向30Aに対して交差していればよい。また、圧電繊維32の軸方向30Bに対する一軸延伸方向900の傾きは、少なくとも圧電繊維32の軸方向30Bに対して交差していればよい。
【0029】
図5(A)は、圧電繊維31に張力P1が加わった時に各フィラメント300に生じるずり応力(せん断応力)S1を示す図である。図5(B)は、圧電繊維32に張力P1が加わった時に各フィラメント300に生じるずり応力(せん断応力)S1を示す図である。なお、図5(A)で示される張力P1は、圧電繊維31の軸方向30A及びこれと反対の方向に向かって圧電繊維31を引っ張る力である。また、同様に、図5(B)で示される張力P1は、圧電繊維32の軸方向30B及びこれと反対の方向に向かって圧電繊維32を引っ張る力である。また、角度A1は、圧電繊維31に張力P1が加えられた場合に、各フィラメント300の一軸延伸方向900に対して生じる歪みの角度である。さらに、角度A2は、圧電繊維32に張力P1が加えられた場合に、各フィラメント300の一軸延伸方向900に対して生じる歪みの角度である。
【0030】
図5(A)に示すように、S糸の圧電繊維31に張力P1が加えられ、フィラメント300の一軸延伸方向900に対して角度A1の方向に歪みが生じた場合、圧電繊維31の表面には、負の電荷が発生し、内側には、正の電荷が発生する。より詳細には、圧電繊維31に張力P1が加えられた場合、フィラメント300には、ずり応力S1が働く。これにより、フィラメント300は、第1対角線910Aに相当する方向に縮み、第2対角線910Bの方向に相当する方向に伸びる(図4(A)参照)。したがって、圧電繊維31の表面には、負の電荷が発生し、内側には、正の電荷が発生する。
【0031】
また、図5(B)に示すように、Z糸の圧電繊維32に張力P1が加えられ、フィラメント300の一軸延伸方向900に対して角度A2の方向に歪みが生じた場合、圧電繊維32の表面には正の電荷が発生し、内側には負の電荷が発生する。より詳細には、圧電繊維32に張力P1が加えられた場合、フィラメント300には、ずり応力S1が働き、第1対角線910Aに相当する方向に伸び、第2対角線910Bの方向に相当する方向に縮む(図4(B)参照)。これにより、圧電繊維32の表面には正の電荷が発生し、内側には負の電荷が発生する。
【0032】
なお、第2対角線910Bに相当する方向とは張力P1が加えられる方向と並行な方向である。また、ずり応力S1は、張力P1と並行な方向に働く力である。
【0033】
したがって、圧電繊維集合体3に張力P1が加えられると、圧電繊維31及び圧電繊維32では、各フィラメント300がずり応力によって電荷を発生し、電場が生じる。
【0034】
図6は、圧電繊維31及び圧電繊維32における、電場の一例を示す図である。図6で示される矢印は、電場の向きを示す。
【0035】
圧電繊維集合体3は、張力P1が加えられた場合、図6に示すように、S糸である圧電繊維31とZ糸である圧電繊維32とを近接させると圧電繊維31と圧電繊維32との間に、より大きな電場を生じさせることができる。圧電繊維31及び圧電繊維32を近接させた場合、電場が空気中に漏れ出て合成される。圧電繊維集合体3は、圧電性のフィラメント300で構成される圧電繊維31及び圧電繊維32を編み糸とする編物なので、圧電繊維31又は圧電繊維32を単独で使用する場合と比較して、圧電繊維31及び圧電繊維32の間でより大きな電場を生じさせることができる。
【0036】
前述のように、電場により細菌及び真菌の増殖を抑制することができる旨が知られている。また、この電場を生じさせている電位により、湿気等で形成された電流経路、又はミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌が弱体化し菌の増殖を抑制することが考えられる。なお、本実施形態で言う菌とは、細菌、真菌、古細菌又はダニやノミ等の微生物を含む。
【0037】
このように、圧電繊維31及び圧電繊維32が外部エネルギー(張力P1)によって伸張することで、圧電繊維集合体3には、電場が生じる。つまり、圧電繊維31及び圧電繊維32で構成された圧電繊維集合体3は、外部エネルギーによって伸縮することで抗菌性を発現する。
【0038】
ところで、小さな外部エネルギーによって圧電繊維集合体3が抗菌性を発現するには、フィラメント300に効率よく外部エネルギーが伝わればよい。そのために、圧電繊維集合体3は、少なくとも2つの接合部4によって、基材部2に固定される。そして、圧電繊維集合体3は、図2(B)に示されるように、張力P2によって伸張方向E1方向に伸張した状態を維持する。圧電繊維集合体3は、張力P2によって伸張した状態を維持している間(以下、単に伸張した状態という)、圧電繊維31及び圧電繊維32が小さな外部エネルギーによって伸縮する。
【0039】
圧電繊維集合体3が、例えば、0.5N以上の張力P2で伸張された状態であるとする。つまり、圧電繊維集合体3は、図1に示すように、所望の外部エネルギー(例えば、荷重(張力)P2)が加えられた状態で基材部2に接合されたとする。圧電繊維集合体3は、張力P2で伸張している状態で、さらに張力P1で引っ張られて伸度が増すので、圧電繊維31及び圧電繊維32が伸張方向E1にさらに伸張する。圧電繊維31及び圧電繊維32が、例えば、0.5N以上の張力P2によって伸張された状態で、さらに外部エネルギー(例えば、張力P1)を加えられると、直接圧電繊維31及び圧電繊維32に張力P1が伝わる。なお、圧電繊維集合体3は、着用時に張力P2が加えられて伸張するように、基材部2に接合されていてもよい。
【0040】
圧電繊維31及び圧電繊維32が張力P2によって伸張した状態では、圧電繊維31及び圧電繊維32が張力P2によって伸張していない状態と比較して、小さな外部エネルギーで伸縮する。この結果、圧電性繊維複合体1は、圧電繊維集合体3が伸張された状態において、小さな外部エネルギーによって圧電繊維31及び圧電繊維32が伸縮する。そして、圧電性繊維複合体1は、圧電繊維集合体3が伸張された状態において、圧電繊維31及び圧電繊維32が小さな外部エネルギーによる伸張で電荷を発生し、電場が生じることで、抗菌性を発現する。
【0041】
例えば、圧電性繊維複合体1が衣料(圧電性衣料)に適用された場合、着用者がこの圧電性衣料を着用すると、圧電繊維集合体3が0.5N以上の張力P2によって伸張した状態になる。圧電性繊維複合体1を適用した圧電性衣料は、着用者の微小な動きなどのエネルギーで抗菌性を発現する。また、例えば、圧電性繊維複合体1をマスクに適用させた場合、着用者がこの圧電性マスクを着用すると、圧電繊維集合体3が0.5N以上の張力P2によって伸張された状態になる。圧電性マスクは、着用者の呼吸等による小さなエネルギーで伸縮する。圧電性マスクは、着用者の呼吸等による小さなエネルギーで伸張することによって電荷を発生し、電場が生じることで抗菌性を発現する。
【0042】
また、図7は、圧電繊維集合体3に18時間、所定の荷重を加えた状態で伸張方向の両端を固定し、時間の経過に対する応力の変化の一例を示す説明図である。図7におけるグラフの縦軸は応力(単位はMPa)であり、横軸は経過時間(単位は時間)である。圧電繊維集合体3は、図7に示すように、荷重が加えられると、荷重に対する応力を生じる。圧電繊維集合体3に生じる応力は、時間の経過とともに徐々に減少する。圧電繊維集合体3にかかる応力は、徐々に減少しつつ、微小に増減する。つまり、圧電繊維集合体3が伸張した状態において、この応力の変化で示されるように、圧電繊維31及び圧電繊維32は、微小な伸縮を繰り返している。このように、圧電繊維集合体3は、伸張した状態において、圧電繊維31及び圧電繊維32が伸縮するので、圧電繊維集合体3には電場が生じ、抗菌性を発現する。なお、本実施形態で言う「抗菌」とは、菌を弱体化する効果、また菌を死滅する効果の両方を含む概念である。
【0043】
このように、例えば、伸張した状態の圧電繊維集合体3は、着用者の微小な動きによる圧電繊維集合体3の小さな変形によって電場を生じる。また、圧電繊維集合体3は、伸張した状態で、例えば、振動などによる、使用時に環境中の小さな外力エネルギーが加えられたことによって電場を生じる。以上により、圧電性繊維複合体1は、伸張した状態において、小さなエネルギーで抗菌性を発現する。
【0044】
なお、圧電繊維集合体3は、使用者(着用者)が使用(着用)していないときは伸張せず、使用中(着用中)に伸張するように接合部4によって基材部2に固定されていてもよい。これにより、圧電性繊維複合体1は、着用者の使用状態又は使用形態に応じて伸張するので、着用者によりフィット感を与える。
【0045】
また、圧電繊維集合体3は、伸張した状態で接合部4によって基材部2に固定されていてもよい。つまり、圧電繊維集合体3は、予め自然長よりも伸張させた状態で接合部4によって基材部2に固定されてもよい。これにより、使用者は、使用中の外部エネルギー、例えば、張力を気にせずに圧電性繊維複合体1を適用した圧電性衣料、圧電性シート、又は圧電性フィルタ等を使用することができる。なお、圧電繊維集合体3の自然長とは、圧電繊維集合体3に負荷が加わっていない状態での長さである。
【0046】
また、圧電繊維31及び圧電繊維32は、汗等の水分を介して、人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に電流を流すので、直接的に抗菌効果を発揮する場合がある。さらに、電流や電圧の作用により水分に含まれる酸素が変化したラジカル種、さらに繊維中に含まれる添加材との相互作用や触媒作用によって生じたラジカル種やその他の抗菌性化学種(アミン誘導体等)によって間接的に抗菌効果を発揮する場合がある。ラジカル種として、スーパーオキシドアニオンラジカル(活性酸素)又はヒドロキシラジカルの発生が考えられる。
【0047】
また、圧電繊維31及び圧電繊維32は、それぞれ発生した電荷により生じる電位差によって電場を生じる。この電場は近傍の空間にも漏れて他の部分と結合電場を形成する。また、圧電繊維31及び圧電繊維32に生じる電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、圧電繊維31及び圧電繊維32と該物との間に電場を生じさせる。
【0048】
本実施形態の応用例を以下に説明する。
【0049】
圧電性繊維複合体1を靴下5に適用する場合について説明する。図8は、圧電性繊維複合体1を適用した靴下5を示す模式図である。靴下5は、図8に示すように、かかと部分50に圧電性繊維複合体1を適用した圧電性衣料である。靴下5のかかと部分50は、圧電繊維集合体3が着用者の身体側、及び基材部2が外側となるように形成されている。つまり、靴下5のかかと部分50に適用された圧電性繊維複合体1は、内側の圧電繊維集合体3と外側の基材部2とで構成された2層構造である。なお、靴下5のかかと以外の部分(非圧電部分)51は、基材部2と同じ素材で形成されているものとする。
【0050】
圧電繊維集合体3は、前後方向の両端を縫製などによって基材部2に固定されている。圧電繊維集合体3は、着用者が靴下5を着用すると所望の張力(例えば、0.5N以上)によって伸張方向E1に伸張した状態となるように、基材部2に接合されている。圧電繊維集合体3は、所望の張力によって伸張した状態において、着用者のかかとの微小な動きに応じて電場を生じる。これにより、圧電性繊維複合体1をかかと部分50に適用した靴下5は、小さな外部エネルギーによって抗菌性を発現する。
【0051】
基材部2は、伸張(変形)しにくくかつ頑丈な布帛である。この場合、靴下5のかかと部分50に基材部2が存在することで、かかと部分50に基材部2がない場合と比較して、こすれなどによる破損をより軽減することができる。
【0052】
この結果、靴下5のかかと部分50に圧電性繊維複合体1を適用することで、靴下5は、かかと部分50の破損を軽減しつつ、小さな外部エネルギーによって抗菌性を発現する。
【0053】
なお、非圧電部分51の素材は、基材部2と異なる素材でもよい。また、非圧電部分51と基材部2とは一体に形成されていてもよい。
【0054】
以上のように、圧電性繊維複合体1は、各種の衣料、医療部材、又は電気製品等に適用可能である。例えば、圧電性繊維複合体1は、靴下、肌着、ガーゼ、マスク、サニタリー用品(サニタリーショーツ、使い捨て紙おむつ、布おむつ、おむつカバー等)、各種フィルタ類(浄水器、エアコン又は空気清浄器のフィルタ等)、シート(車、電車又は飛行機等のシート)、等、多岐にわたって適用することができる。
【0055】
圧電性繊維複合体1の変形例について以下に列挙する。なお、上述の圧電性繊維複合体1の構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0056】
図9は、変形例1にかかる圧電性繊維複合体1Aの例を示す構成図である。圧電性繊維複合体1Aは、図9に示すように、伸張領域301と通常領域302とで構成されていることが上述の圧電性繊維複合体1と異なる。伸張領域301は、例えば、着用者が着用した際(使用中)に、所望の荷重(例えば、0.5Nの張力P2)によって伸張する領域である。通常領域302は、伸張領域301以外の領域であって、着用者の身体の動き又は身体の形状によって伸縮する領域である。接合部4は、伸張領域301の伸張方向E1の両端で縫合等によって圧電繊維集合体3を基材部2に接合している。
【0057】
圧電性繊維複合体1Aをサニタリーショーツ(サニタリー用品)6に適用する例について説明する。図10は、変形例1にかかる圧電性繊維複合体1Aを適用したサニタリー用品(サニタリーショーツ)6を示す模式図である。圧電繊維集合体3は、図10に示すように、伸張領域301と通常領域302とで構成されている。伸張領域301は、サニタリーショーツ6の下部に配置されている。接合部4は、伸張領域301の前後方向の両端で圧電繊維集合体3を基材部2に接合している。つまり伸張領域301は、着用者が着用している間、前後方向にある2つの接合部4の間で前後方向に伸張している。通常領域302は、着用者の動きなどに応じて適宜伸縮する。
【0058】
変形例1にかかる圧電性繊維複合体1Aでは、着用者がサニタリーショーツ6を着用している間、伸張領域301が伸張していることで、通常領域302と比較して、小さな外部エネルギーによって電場が生じ抗菌効果が発揮される。つまり、変形例1にかかる圧電性繊維複合体1Aでは、通常領域302は、着用者の身体の動きに応じて伸縮することで電場が生じ、抗菌性を発現する。また、伸張領域301は、着用者が意識しない程度の小さな外部エネルギーによって伸縮することで電場が生じ、抗菌性を発現する。このように、変形例1にかかる圧電性繊維複合体1Aは、圧電繊維集合体3が伸張領域301及び通常領域302で構成されているので、より効果的に抗菌効果を発揮する。
【0059】
図11は、変形例2にかかる圧電性繊維複合体1Bの例を示す構成図である。変形例2にかかる圧電性繊維複合体1Bは、図11に示すように、複数の接合部4が伸張領域301の平面方向に散点状に配置されていることが上述の圧電性繊維複合体1及び圧電性繊維複合体1Aと異なる。複数の接合部4を散点状に配置することで、圧電性繊維複合体1Bの伸縮性又は柔軟性を損なうことなく、小さな外部エネルギーによって電場が生じて、抗菌効果が発揮される。複数の接合部4は1乃至複数の直線上に配置されてもよい。また、複数の接合部4は、千鳥状(互い違い)に配置されてもよい。
【0060】
変形例2にかかる圧電性繊維複合体1Bが複数の接合部4を有していることで、圧電繊維31及び圧電繊維32には、小さな外部エネルギーが伝わりやすくなる。変形例2にかかる圧電性繊維複合体1Bは、複数の接合部4を有することで、接合部4の間で圧電繊維集合体3が伸張した状態において、小さな外部エネルギーによる伸縮によって抗菌性を発現する。
【0061】
図12は、変形例3にかかる圧電性繊維複合体1Cの例を示す構成図である。変形例3にかかる圧電性繊維複合体1Cは、1つの接合部4が、図12に示すように、向かい合う2組の部分41、42で圧電繊維集合体3を囲むように配置されていることが上述の圧電性繊維複合体1、圧電性繊維複合体1A及び圧電性繊維複合体1Bと異なる。
【0062】
変形例3にかかる圧電性繊維複合体1Cの向かい合う2組の部分41、42が基材部2に圧電繊維集合体3を囲むようにして接合しているので、圧電繊維31及び圧電繊維32には、小さな外部エネルギーが伝わりやすくなる。変形例3にかかる圧電性繊維複合体1Cは、圧電繊維集合体3の周囲が固定されているので、圧電繊維集合体3が、例えば、向かい合う1組の部分41の間で伸張した状態において、小さな外部エネルギーによる伸縮によって抗菌性を発現する。
【0063】
なお、圧電繊維集合体3は、表面にマイナスの電荷を発生させるS糸及び表面にプラスの電荷を発生させるZ糸以外の糸を含んで構成されていてもよい。Z糸及びS糸の使用量を調節することにより、用途に応じて発生させる電荷の極性の割合等を調節することができる。また、圧電繊維31は、Z糸及びS糸以外に電荷を発生しない糸(綿糸等)を含んで構成されていてもよい。通常、圧電糸は綿糸等に比べて肌触りが悪いため、着用者が着用すると皮膚が刺激される場合がある。このため、圧電繊維集合体3に電荷を発生しない糸(綿糸等)を一部使用することによって、圧電繊維集合体3の肌触りがよくなり、圧電性繊維複合体1、1A、1B、1Cは、皮膚への刺激を緩和する。
【0064】
また、圧電性繊維複合体1、1A、1B、1Cは、Z糸又はS糸単独で使用してもよい。Z糸又はS糸単独で使用した場合であっても、圧電性繊維複合体1、1A、1B、1Cは、抗菌性を発現する。
【0065】
また、接合部4は、1つであっても、向かい合う部分が含まれていればよい。接合部4は、例えば、U字状であってもよい。
【0066】
また、圧電性繊維複合体1、1A、1B、1Cは、人間を除いた動物の体表面の菌抑制方法としても使用可能である。動物の皮膚の少なくとも一部に、圧電繊維集合体3を対向させるように配置し、圧電繊維集合体3に外力が加えられた時に発生する電荷によって、圧電性繊維複合体1、1A、1B、1Cは、動物の体表面の菌の増殖を抑制することができる。
【0067】
また、フィラメント300は、例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法(例えば、紡糸工程と延伸工程を分けて行う紡糸・延伸法、紡糸工程と延伸工程を連結した直延伸法、仮撚り工程も同時に行うことのできるPOY-DTY法、又は高速化を図った超高速紡糸法などを含む)、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸(例えば、溶媒に原料となるポリマーを溶解してノズルから押し出して繊維化するような相分離法もしくは乾湿紡糸法、溶媒を含んだままゲル状に均一に繊維化するようなゲル紡糸法、又は液晶溶液もしくは融体を用いて繊維化する液晶紡糸法、などを含む)により繊維化する手法、又は圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等により製造されてもよい。
【0068】
また、接合部4は接着剤などを使用して、圧電繊維集合体3を基材部2に接合してもよい。さらに、接合部4は、熱圧着により、圧電繊維集合体3を基材部2に接合してもよい。
【0069】
また、圧電繊維31又は圧電繊維32は、フィラメント300を使用した編物だけに限定されず、フィラメント300を使用した織物又は不織布などでもよい。
【0070】
また、圧電繊維31又は圧電繊維32は、PDLAを用いた糸でもよい。PDLAを用いた糸を使用した場合、圧電繊維31及び圧電繊維32のそれぞれの表面に生じる電荷の正負は、PLLAを用いた糸を使用した場合の電荷と異なる。
【0071】
最後に、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1、1A、1B、1C…圧電性繊維複合体
2…基材部
3…圧電繊維集合体
4…接合部
5…靴下(圧電性衣料)
6…サニタリーショーツ(サニタリー用品)
30A、30B…軸方向
31、32…圧電繊維
41、42…部分
50…かかと部分
51…非圧電部分
300…フィラメント
301…伸張領域
302…通常領域
900…一軸延伸方向
910A…第1対角線
910B…第2対角線
A1、A2…角度
E1…一方向(伸張方向)
P1、P2…張力(外部エネルギー)
S1…応力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12