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特許7082668シクロドデセンの製造方法およびその合成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】シクロドデセンの製造方法およびその合成装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/05 20060101AFI20220601BHJP
   C07C 13/275 20060101ALI20220601BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20220601BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220601BHJP
【FI】
C07C5/05
C07C13/275
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020535055
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 KR2018012534
(87)【国際公開番号】W WO2019132210
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0182978
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ナムジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, キュウホ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ウク
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-506694(JP,A)
【文献】特開2000-093790(JP,A)
【文献】特開2004-339197(JP,A)
【文献】米国特許第05177278(US,A)
【文献】特開平05-331076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 5/00- 5/56
C07C 13/00- 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成する水添ステップを含むシクロドデセンの合成方法であって、
シクロドデカトリエンおよび水素を連続撹拌槽型反応器および管型反応器に順に通過および反応させてシクロドデセンを合成する方法であり、
前記連続撹拌槽型反応器は、第1の連続撹拌槽型反応器および第2の連続撹拌槽型反応器が順に連結されており、
下記式2を満たす、シクロドデセンの合成方法。
[式2]
0.1≦τ 2C /τ 1C ≦0.9
1≦τ 1P /τ 1C ≦9
(式2中、τ 1C およびτ 2C は、それぞれ、第1の連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間および第2の連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間であり、τ 1P は、管型反応器内の反応物または生成物の滞留時間である。)
【請求項2】
前記シクロドデセンは、エタノールを含む溶媒でシクロドデカトリエンに対して水添反応を行って合成され、塩化ルテニウム、トリフェニルホスフィンおよびホルムアルデヒドを含む触媒の下で反応して合成される、請求項1に記載のシクロドデセンの合成方法。
【請求項3】
前記塩化ルテニウムおよび前記トリフェニルホスフィンのモル比が1:110~130である、請求項2に記載のシクロドデセンの合成方法。
【請求項4】
前記トリフェニルホスフィンおよび前記ホルムアルデヒドのモル比が1:1.5~2である、請求項2に記載のシクロドデセンの合成方法。
【請求項5】
前記水添ステップでは、酢酸を含む触媒活性剤がさらに使用される、請求項2に記載のシクロドデセンの合成方法。
【請求項6】
前記触媒は、シクロドデカトリエン100重量部に対して1~7重量部が使用される、請求項2に記載のシクロドデセンの合成方法。
【請求項7】
前記反応は、10~80barの圧力および130~170℃の温度で行われる、請求項1に記載のシクロドデセンの合成方法。
【請求項8】
シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成するシクロドデセンの合成装置であって、
シクロドデカトリエンおよび水素が流入されてシクロドデセンが合成される第1の連続撹拌槽型反応器と、
前記第1の連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む混合物が流入されてシクロドデセンが合成される第2の連続撹拌槽型反応器と、
前記第2の連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む混合物が流入されてシクロドデセンが合成される管型反応器とを含
下記式4を満たす、シクロドデセンの合成装置。
[式4]
0.1≦V 2C /V 1C ≦0.9
1≦V 1P /V 1C ≦9
(式4中、V 1C およびV 2C は、それぞれ、第1の連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積および第2の連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積であり、V 1P は、管型反応器の反応空間の体積である。)
【請求項9】
前記第1の連続撹拌槽型反応器は、第1の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され、
前記第2の連続撹拌槽型反応器は、第2の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され、
前記管型反応器は、第3の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成される、請求項8に記載のシクロドデセンの合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロドデセンを製造するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロドデカトリエン(CDT)を出発物質とした選択的水素化反応によるシクロドデセン(CDEN)の合成は文献にいくつか記載されており、シクロドデセンの収率を向上させるための様々な研究が行われてきた。
【0003】
一般的には、前記反応で、トランス‐1,5,9‐シクロドデカトリエンを含むシクロドデカトリエンの水素化は、段階的に、ジエン、主に、トランス,トランス‐1,5‐シクロドデカジエンおよびシス,トランス‐1,5‐シクロドデカジエンおよびほぼ平衡に相当する異性体混合物であるトランス‐シクロドデセンおよびシス‐シクロドデセンを介してシクロドデカン(CDAN)に行う。
【0004】
特許文献1には、高い転化率でシクロドデセンを合成するために、シクロドデカトリエンのRu錯体による均一系触媒およびアミン化合物を介した水素化が記載されている。しかし、シクロドデカトリエンから触媒およびアミン化合物を分離することは難しく、生成物であるシクロドデセンがアミンで汚染する可能性があるという問題がある。
【0005】
金属酸化物触媒によるシクロドデセンの製造では、不均一系触媒によって液相の中での気体/液体/固体の物質伝達による水素化、固定層反応器(fixed bed)での連続した3段階の水素化および連続した気相水素化などが可能である。
【0006】
上述のように、収率を向上させるためのシクロドデセンの合成方法に関する研究が多方面で行われているが、これを工業的に活用するための実質的な方法およびそのための装置については十分でない状況である。
【0007】
具体的には、シクロドデセンを工業的に用いるためには、これを大量に合成する必要があり、そのための装置の設備、メンテナンスなどの工程効率が高い必要がある。一例として、バッチ反応器の場合、工業的に大量生産に適していないため、反応工程の規模を大きくし、連続した反応が行われ得るように連続流れ撹拌反応器が通常使用されている。しかし、連続流れ撹拌反応器を用いた連続的な流れ工程を用いる場合、収率および生成物の選択度が低下するという問題が生じ得、実験室条件での最適の転化率および選択度を導き出すことが難しいという限界がある。他の案として、管型反応器が適用され得るが、内径が大きすぎる場合、逆混合(back mixing)の問題を引き起こす可能性があり、長さを増加させる場合、設備の構成が難しく、メンテナンスなどの工程運転効率が低下しすぎるという問題がある。
【0008】
特許文献2には、工業的規模に実現することができ、容易に使用可能な触媒を用いる、シクロドデカトリエンを出発物質として選択的な不均一系水素化を用いたシクロドデセンの合成方法について開示されている。しかし、前記特許には、工業的規模を実現するために通常の固定層反応器が使用されるため、選択度が62~90%程度と著しく低いという限界がある。
【0009】
そのため、シクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度をいずれも高い水準で両立することは言うまでもなく、シクロドデセンの合成で工業的に大量生産しやすいシクロドデセンの製造方法およびその合成装置に関する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5180870号明細書
【文献】特許第4523301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、シクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度が著しく高いシクロドデセンの製造方法およびその合成装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記目的を実現し、且つ、設備および工程にかかる費用を最小化することができ、実用的で、工程時間が減少し、従来に比べて工業的に大量生産に有利なシクロドデセンの製造方法およびその合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるシクロドデセン(CDEN)の合成方法は、シクロドデカトリエン(CDT)を部分水添(Partial hydrogenation)反応させてシクロドデセンを合成する水添ステップを含むシクロドデセンの合成方法であって、シクロドデカトリエンおよび水素(H)を連続撹拌槽型反応器(Continuous stirred‐tank reactor)および管型反応器(Plug flow reactor)に順に通過および反応させてシクロドデセンを合成することを特徴とする。
【0014】
本発明の一例によるシクロドデセンの合成方法は、下記式1を満たすことができる。下記式1中、τ1Cは、連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間であり、τ1Pは、管型反応器内の反応物または生成物の滞留時間である。
[式1]
1≦τ1P/τ1C≦9
【0015】
本発明の一例において、前記連続撹拌槽型反応器は、第1の連続撹拌槽型反応器および第2の連続撹拌槽型反応器が順に連結されていてもよい。
【0016】
本発明の一例によるシクロドデセンの合成方法は、下記式2を満たすことができる。下記式2中、τ1Cおよびτ2Cは、それぞれ、第1の連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間および第2の連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間であり、τ1Pは、管型反応器内の反応物または生成物の滞留時間である。
[式2]
0.1≦τ2C/τ1C≦0.9
1≦τ1P/τ1C≦9
【0017】
本発明の一例において、前記シクロドデセンは、エタノールを含む溶媒上でシクロドデカトリエンに対して水添反応を行って合成され、塩化ルテニウム、トリフェニルホスフィン(TPP)およびホルムアルデヒドを含む触媒の下で反応して合成され得る。
【0018】
本発明の一例において、前記塩化ルテニウムおよび前記トリフェニルホスフィンのモル比が1:110~130であってもよい。
【0019】
本発明の一例において、前記トリフェニルホスフィンおよび前記ホルムアルデヒドのモル比が1:1.5~2であってもよい。
【0020】
本発明の一例において、前記水添ステップでは、酢酸を含む触媒活性剤がさらに使用され得る。
【0021】
本発明の一例において、前記触媒は、シクロドデカトリエン100重量部に対して1~7重量部が使用され得る。
【0022】
本発明の一例において、前記反応は、10~80barの圧力および130~170℃の温度で行われ得る。
【0023】
本発明によるシクロドデセンの合成装置は、シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成する装置であって、シクロドデカトリエンおよび水素が流入されてシクロドデセンが合成される連続撹拌槽型反応器と、前記連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む混合物が流入されてシクロドデセンが合成される管型反応器とを含むことができる。
【0024】
また、本発明によるシクロドデセンの合成装置は、シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成する装置であって、シクロドデカトリエンおよび水素が流入されてシクロドデセンが合成される第1の連続撹拌槽型反応器と、前記第1の連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む混合物が流入されてシクロドデセンが合成される第2の連続撹拌槽型反応器と、前記第2の連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む混合物が流入されてシクロドデセンが合成される管型反応器とを含むことができる。
【0025】
本発明の一例によるシクロドデセンの合成装置は、下記式3を満たすことができる。下記式3中、V1Cは、それぞれ、連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積であり、V1Pは、管型反応器の反応空間の体積である。
[式3]
1≦V1P/V1C≦9
【0026】
本発明の一例によるシクロドデセンの合成装置は、下記式4を満たすことができる。下記式4中、V1CおよびV2Cは、それぞれ、第1の連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積および第2の連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積であり、V1Pは、管型反応器の反応空間の体積である。
[式4]
0.1≦V2C/V1C≦0.9
1≦V1P/V1C≦9
【0027】
本発明の一例において、前記第1の連続撹拌槽型反応器は、第1の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され得、前記第2の連続撹拌槽型反応器は、第2の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され得、前記管型反応器は、第3の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明のシクロドデセンの製造方法およびその合成装置は、シクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度が著しく高いだけでなく、設備および工程にかかる費用を最小化することができ、実用的で、工程時間が減少し、従来に比べて工業的に大量生産に有利であるという効果がある。
【0029】
本発明で明示的に言及されていない効果であっても、本発明の技術的特徴によって期待される明細書に記載の効果およびその内在的な効果は、本発明の明細書に記載されているものとして取り扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一例によるシクロドデセンの合成のための複合反応器(第1の連続撹拌槽型反応器+第2の連続撹拌槽型反応器+管型反応器)を示す図である。
図2】実施例1および実施例3で、塩化ルテニウム(RuCl)およびトリフェニルホスフィン(TPP)のモル比によるシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定した結果を示す図である。
図3】実施例1および実施例4、トリフェニルホスフィン(TPP)およびホルムアルデヒド(CHO)のモル比によるシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定した結果を示す図である。
図4】実施例1および実施例5で、反応圧力によるシクロドデカトリエン(CDT)とシクロドデジエン(CDDN)の転化率およびシクロドデセン(CDEN)の選択度を測定した結果を示す図である。
図5】実施例1および実施例5で、反応圧力により合成されるシクロドデセン(CDEN)の反応時間を測定した結果を示す図である。
図6】実施例1で、反応時間(滞留時間)による質量分率を測定した結果を示す図である。
図7】実施例7で、反応器の種類によるシクロドデカトリエン(CDT)とシクロドデジエン(CDDN)の転化率を測定した結果を示す図である。
図8】実施例7で、反応器の種類によるシクロドデセン(CDEN)の選択度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して、本発明によるシクロドデセンの製造方法およびその合成装置について詳細に説明する。
【0032】
本発明に記載されている図面は、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために例として提供されるものである。したがって、本発明は、提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、前記図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示され得る。
【0033】
本発明で使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面において本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0034】
本発明で使用される用語の単数形態は、特に断らない限り、複数形態も含むものと解釈され得る。
【0035】
本発明で特に断らず不明に使用されている%の単位は、重量%を意味する。
【0036】
本発明では、回分式反応器(Batch reactor)とは相違する連続して反応物が投入され、生成物が排出される連続流れによる合成方法および装置が使用されることで、設備および工程にかかる費用を最小化することができ、実用的で、従来に比べて工業的に大量生産に有利であるという効果がある。それだけでなく、2基の連続撹拌槽型反応器および1基以上の管型反応器が順に直列に連結された形態で反応が行われることによって、反応物であるシクロドデカトリエンの転化率および生成物であるシクロドデセンの選択度が著しく高いという効果がある。
【0037】
すなわち、本発明によるシクロドデセンの合成方法およびその装置は、工業的に大量生産に有利な連続式流れ反応を採択したものの、反応物の転化率および生成物の選択度も著しく高いという効果がある。したがって、製造工程に対するエネルギー効率が向上することは言うまでもなく、プラントコスト、運転コストおよびプラント維持コストが低減し、実際産業への適用が非常に有利であるという利点がある。
【0038】
以下、本発明によるシクロドデセンの合成方法について詳細に説明する。
【0039】
本発明によるシクロドデセン(CDEN)の合成方法は、シクロドデカトリエン(CDT)を部分水添反応させてシクロドデセンを合成する水添ステップを含むシクロドデセンの合成方法であって、シクロドデカトリエンおよび水素(H)を連続撹拌槽型反応器および管型反応器に順に通過および反応させてシクロドデセンを合成することを特徴とする。この際、前記連続撹拌槽型反応器および前記管型反応器は、互いに独立して1基または2基以上が直列または並列に連結されていてもよい。
【0040】
前記連続撹拌槽型反応器は、CSTR(Continuous stirred‐tank reactor)、GIST(gas‐induced stirred tank reactor)またはこれらが直列または並列に連結されたものを意味し得る。具体的には、前記連続撹拌槽型反応器は、CSTR単独、GIST単独、CSTRが2基以上直列または並列に連結されたもの、GISTが2基以上直列または並列に連結されたものまたは1基以上のCSTRと1基以上のGISTが直列または並列に連結されたものが例示され得る。かかる反応器は、本技術分野において反応物の合成のために使用される通常使用される公知の反応器を意味し得る。
【0041】
前記GISTは、連続ガス誘導撹拌槽型反応器(Continuous gas‐induced stirred tank reactor)であり、CSTRと同様であり、CSTRの撹拌器部分、具体的には、撹拌ロータ部分で撹拌効率の向上のためのガスが排出される構造が追加されたものを意味し得る。本発明の一例において、CSTRの代わりに、GISTが使用されるか、一つ以上のGISTが使用される場合、転化率および選択度もさらに向上することができ、滞留時間を著しく減少させて工程効率が増加し、好ましい。
【0042】
前記管型反応器は、押し出し流れ反応器(Plug flow reactor、PFR)、気泡塔反応器(bubble column reactor、BCR)またはこれらが直列または並列に連結されたものを意味し得る。具体的には、前記管型反応器は、PFR単独、BCR単独、PFRが2基以上直列または並列に連結されたもの、BCRが2基以上直列または並列に連結されたものまたは1基以上のPFRと1基以上のBCRが直列または並列に連結されたものが例示され得る。気泡塔反応器は、反応物および生成物の連続工程を可能にする管型の形態を有する。かかる反応器は、本技術分野において反応物の合成のために使用される通常使用される公知の反応器を意味し得る。
【0043】
本発明において、シクロドデカトリエンおよび水素を含む反応物を連続撹拌槽型反応器および管型反応器に順に通過および反応させることで、反応物の転化率および生成物の選択度を著しく向上させることができる効果が実現される。各反応器の配置順序は、前記効果を実現するための重要な因子の一つであり、例えば、管型反応器が連続撹拌槽型反応器よりも前に配置される場合、最終反応生成物において高い反応物の転化率および高い生成物の選択度が実現されないなどの問題が生じ得る。また、連続撹拌槽型反応器のみから構成される場合、転化率および選択度に優れず、管型反応器のみから構成される場合、工業的に生成物の大量生産が難しく商業化に限界がある。
【0044】
本発明において、反応物であるシクロドデカトリエンおよび水素の反応器内の滞留時間(τ)は、反応物の転化率および生成物の選択度に影響を及ぼし、好ましくは、下記式1を満たすように反応器を設計または運用した方が良好であり得る。ただし、本発明は必ずしもこれに制限されない。
【0045】
[式1]
1≦τ1P/τ1C≦9
【0046】
前記式1中、τ1Cは、連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間であり、τ1Pは、管型反応器内の反応物または生成物の滞留時間である。
【0047】
前記式1に示すように、各反応器間の滞留時間の比を満たす場合、反応物の転化率と生成物の選択度を非常に高い水準で両立できる効果があり、好ましい。
【0048】
本発明の一例において、前記連続撹拌槽型反応器は、一つの連続撹拌槽型反応器はまたは二つ以上が直列または並列に連結された連続撹拌槽型反応器であってもよく、二つ以上の連続撹拌槽型反応器が直列に連結されたものが好ましい。前記連続撹拌槽型反応器が第1の連続撹拌槽型反応器および第2の連続撹拌槽型反応器が順に連結されたものである場合、例えば、2基の連続撹拌槽型反応器が直列に連結された場合を含む、第1の連続撹拌槽型反応器、第2の連続撹拌槽型反応器および管型反応器が順に連結されたものが使用される場合、シクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度をさらに向上させることができる。
【0049】
本発明の一例によるシクロドデセンの合成方法は、下記式2を満たすことができる。
【0050】
[式2]
0.1≦τ2C/τ1C≦0.9
1≦τ1P/τ1C≦9
【0051】
前記式2中、τ1Cは、それぞれ、第1の連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間であり、およびτ2Cは、第2の連続撹拌槽型反応器内の反応物または生成物の滞留時間であり、τ1Pは、管型反応器内の反応物または生成物の滞留時間である。
【0052】
前記式2に示すように、各反応器間の滞留時間の比を満たす場合、反応物の転化率と生成物の選択度を非常に高い水準で両立できる効果がさらに向上することができ、好ましい。
【0053】
前記水添ステップは、シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成するステップである。
【0054】
本発明の一例において、前記シクロドデセンは、エタノールを含む溶媒上でシクロドデカトリエンに対して水添反応を行って合成され得、この際、塩化ルテニウム、トリフェニルホスフィン(TPP)およびホルムアルデヒドを含む触媒の下で反応して合成され得る。
【0055】
前記エタノールは、誘電率が高いことから、部分水添反応で反応物の反応をさらに活性化して転化率および選択度を向上させることができる。前記エタノールの使用量は、シクロドデカトリエンに水素が部分水添反応することができる程度であればよく、好ましくは、シクロドデカトリエン100重量部に対して1~10重量部になるようにする流量で前記反応器に投入され得る。しかし、これは、好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0056】
前記トリフェニルホスフィンは、前記塩化ルテニウムに錯体を形成して部分水添反応の触媒の役割を果たし、ホルムアルデヒドの存在下で前記反応がさらに活性化され得る。
【0057】
好ましい一例において、前記塩化ルテニウムおよび前記トリフェニルホスフィンは、モル比が1:110~130の範囲になるようにする流量で反応器に投入され得る。1基以上の連続撹拌槽型反応器および1基以上の管型反応器が順に直列に連結された反応器を介して反応物を反応を行うときに、前記モル比範囲を満たすように塩化ルテニウムおよびトリフェニルホスフィンを使用する場合、より好ましくは、上述の滞留時間を満たすとともに前記モル比を満たす場合、転化率および選択度が著しく向上することができる。しかし、これは、好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0058】
好ましい一例において、前記トリフェニルホスフィンおよび前記ホルムアルデヒドは、モル比が1:1.5~2の範囲になるようにする流量で反応器に投入され得る。1基以上の連続撹拌槽型反応器および1基以上の管型反応器が順に直列に連結された反応器を介して反応物を反応を行うときに、前記モル比範囲を満たすようにトリフェニルホスフィンおよびホルムアルデヒドを使用する場合、より好ましくは、上述の滞留時間を満たすとともに前記モル比を満たす場合、転化率および選択度がより向上することができる。しかし、これは、好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0059】
本発明の一例において、前記水添ステップでは、酢酸(Acetic acid)を含む触媒活性剤がさらに使用され得る。前記反応器に酢酸が投入される場合、塩化ルテニウム‐トリフェニルホスフィン錯化合物触媒の反応をより活性化して転化率および選択度をより向上させることができる。好ましい一例において、酢酸は、シクロドデカトリエン100重量部に対して0.01~2重量部になるようにする流量で反応器に投入され得る。しかし、これは、好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0060】
本発明の一例において、前記触媒の使用量は、反応物の反応が十分に行われ得る程度であればよく、好ましくは、シクロドデカトリエン100重量部に対して1~7重量部になるようにする流量で反応器に投入されるか装入され得る。しかし、これは、転化率および選択度を向上させるための好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0061】
本発明の一例において、前記反応は、10~80bar、好ましくは20~40barの圧力で行われ得るが、これは、転化率および選択度を向上させるための好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0062】
本発明の一例において、前記反応は、120~180℃、好ましくは130~175℃、より好ましくは、140~170℃の温度で行われ得るが、これは、転化率および選択度を向上させるための好ましい一例であって、本発明がこれに制限されないことは言うまでもない。
【0063】
本発明によって製造されるシクロドデセンは、ラウロラクタム(Laurolactam)の合成のための中間物質として使用され得る。本発明によるシクロドデセンの合成方法または合成装置を用いて製造されたシクロドデセンをラウロラクタムの合成の中間物質として使用する場合、目標生成物の選択度が非常に高いことから本発明による合成方法または合成装置から取得された未反応物、中間生成物、副反応物などまで含み得る取得物をそのまま前記中間物質として使用できるにもかかわらず、ラウロラクタムを合成する最終ステップで転化率および選択度が著しく優れるという効果が実現される。
【0064】
本発明によるシクロドデセンの合成方法または合成装置を用いたラウロラクタムの合成方法は、a)前記シクロドデセンを亜酸化窒素で酸化反応させてシクロドデカノンを合成するステップと、b)前記シクロドデカノンをオキシム化反応させてシクロドデカノンオキシムを合成するステップと、c)前記シクロドデカノンオキシムをベックマン転位化(beckmann rearrangement)反応させてラウロラクタムを合成するステップとを含むことができる。
【0065】
以下、本発明によるシクロドデセンの合成装置について具体的に説明する。
【0066】
本発明によるシクロドデセンの合成装置は、シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成する装置であり、シクロドデカトリエンおよび水素が流入されてシクロドデセンが合成される連続撹拌槽型反応器と、前記連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む混合物が流入されてシクロドデセンが合成される管型反応器とを含むことができる。この際、前記混合物は、水素を含むことができる。
【0067】
上述のように、連続撹拌槽型反応器および管型反応器は、互いに独立して1基または2基以上が直列または並列に連結されていてもよい。
【0068】
本発明の一例によるシクロドデセンの合成装置は、シクロドデカトリエンを部分水添反応させてシクロドデセンを合成する装置であり、シクロドデカトリエンおよび水素が流入されてシクロドデセンが合成される第1の連続撹拌槽型反応器と、前記第1の連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む第1の混合物が流入されてシクロドデセンが合成される第2の連続撹拌槽型反応器と、前記第2の連続撹拌槽型反応器からシクロドデセンまたはこれを含む第2の混合物が流入されてシクロドデセンが合成される管型反応器とを含むことができる。この際、前記第1の混合物および第2の混合物は、互いに独立して水素を含むことができる。
【0069】
前記シクロドデセンの合成方法で詳述したように、反応器間の滞留時間の比は、反応物の転化率および生成物の選択度を著しく向上させることができる重要因子の一つであり、本発明では、下記式3または4を満たす複合反応器を使用する場合、各反応器内に流入される流入物間の流量比を特に調節しなくても前記滞留時間の比が自動的に制御されるようにするシクロドデセンの合成装置を提供することができる。
【0070】
上述の反応器間の滞留時間の比、すなわち、前記式1または2を満たすようにする、本発明によるシクロドデセンの合成装置は、それぞれ、下記式3または4を満たすことができる。ただし、本発明は必ずしもこれに制限されない。
【0071】
[式3]
1≦V1P/V1C≦9
【0072】
[式4]
0.1≦V2C/V1C≦0.9
1≦V1P/V1C≦9
【0073】
前記式3中、V1Cは、それぞれ、連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積であり、V1Pは、管型反応器の反応空間の体積である。
【0074】
前記式4中、V1CおよびV2Cは、それぞれ、第1の連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積および第2の連続撹拌槽型反応器の反応空間の体積であり、V1Pは、管型反応器の反応空間の体積である。
【0075】
前記式3または式4を満たす各反応器間の反応空間体積の比を満たす場合、各反応器内に流入される流入物間の流量比を特に調節しなくても、例えば、同じ流量で反応物を投入しても自動的にそれぞれ前記式1または式2を満たすようにして、転化率および選択度を著しく向上させることができ、流入物の流量などの別の制御が必ずしも伴われず、工程効率に優れるという効果がある。
【0076】
本発明の一例において、図1に一例として図示したように、前記第1の連続撹拌槽型反応器は、第1の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され得、前記第2の連続撹拌槽型反応器は、第2の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され得、前記管型反応器は、第3の水素が流入され反応してシクロドデセンが合成され得る。各反応器ごとに水素が流入されることによって反応することができなかったシクロドデカトリエンをシクロドデセンに転換し、転化率を著しく向上させることができる。
【0077】
本発明で言及する「反応器」は、別に他の定義がされていない限り、工程の規模、環境によって適切なものが使用され得るため、本発明で言及していない反応器の一具体要素について制限しない。また、各反応器で、物質が流入されるか物質を流入させるための様々な流入管、流出管、これらを連結する連結管などが備えられ得、また、これらの流入量、流出量を調節するための具体的な装置などを使用することは、当業者にとって適切に調節することができる事項であるため制限しない。
【0078】
本発明による合成方法または、合成装置でシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度として、第1の連続撹拌槽型反応器での転化率および選択度は、それぞれ、35~50%および90~99.9%であってもよく、第2の連続撹拌槽型反応器での転化率および選択度は、それぞれ、50~98%および97~99.9%であってもよく、管型反応器での転化率および選択度は、それぞれ、95~99%および97~99.9%であってもよい。すなわち、本発明では、種類が異なる3基の反応器を組み合わせることで、好ましくは、上述の様々な構成がさらに結合されることで、シクロドデセンの選択度の低下は最小化し、且つシクロドデカトリエンの転化率を著しく増加させることができる効果がある。
【実施例
【0079】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは、本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
下記表1の条件を満たす図1に図示されているような複合反応器(第1の連続撹拌槽型反応器+第2の連続撹拌槽型反応器+管型反応器)を用いて、下記表1の条件でシクロドデセンを合成した。この際、前記連続撹拌槽型反応器はCSTRであり、前記管型反応器はBCRである。
【0081】
具体的には、下記表1の条件を満たす第1の連続撹拌槽型反応器に塩化ルテニウム(RuCl)、トリフェニルホスフィン(TPP)およびホルムアルデヒドを1:110:220のモル比で投入し、酢酸およびエタノールを投入して、80℃および2barの条件で800rpmで撹拌し続けた。各成分が十分に混合された後、前記第1の連続撹拌槽型反応器にシクロドデカトリエンおよび水素気体(H)を下記表1の条件で投入し続けた。前記酢酸およびエタノールは、シクロドデカトリエン100重量部に対して、それぞれ、0.25重量部および5.27重量部で投入されるようにした。
【0082】
第1の連続撹拌槽型反応器に投入されて存在する混合物は、第2の連続撹拌槽型反応器に移送され、前記第2の連続撹拌槽型反応器にさらに水素を供給した。前記第2の連続撹拌槽型反応器から排出された混合物は、管型反応器の下部に流入され、前記管型反応器にさらに水素を供給した。この際、水素は、気体ノズルと分散板によって均一に分散されて供給された。前記管型反応器内の混合物は、後端で圧力を調節して排出された。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例2]
実施例1で、前記表1の滞留時間の代わりに、下記表2の各反応器間の滞留時間(τ)の比を満たすように、反応器をそれぞれ8回独立して運転した以外は、実施例1と同様にシクロドデセンをそれぞれ合成した。この際、前記滞留時間(τ)の比は、各反応物の流量を調節して制御した。
【0085】
【表2】
【0086】
[実施例3]
実施例1で、塩化ルテニウムおよびトリフェニルホスフィンのモル比がそれぞれ1:80、1:90、1:100、1:130、1:150になるようにした以外は、実施例1と同様に、独立して運転を5回行ってシクロドデセンをそれぞれ合成した。
【0087】
[実施例4]
実施例1で、トリフェニルホスフィンおよびホルムアルデヒドのモル比がそれぞれ1:1.0、1:1.5、1:2.5になるようにした以外は、実施例1と同様に、独立して運転を3回行ってシクロドデセンをそれぞれ合成した。
【0088】
[実施例5]
実施例1で、20barで反応を行う代わりに、それぞれ10、40、50、80barで反応を行った以外は、実施例1と同様に、独立して運転を4回行ってシクロドデセンをそれぞれ合成した。
【0089】
[実施例6]
実施例1で、160℃で反応を行う代わりに、140℃で反応を行った以外は、実施例1と同様に行ってシクロドデセンを合成した。
【0090】
[実施例7]
実施例1で、CSTRの代わりに、連続ガス誘導撹拌槽型反応器(Continuous gas‐induced stirred tank reactors、GIST)に置換して使用した以外は、実施例1と同様に行ってシクロドデセンを合成した。
【0091】
[比較例1]
実施例1で図1の複合反応器の代わりに、連続撹拌槽型反応器1基を使用した以外は、実施例1と同様にシクロドデセンを合成した。この際、下記表3の条件で運転した。
【0092】
【表3】
【0093】
[比較例2]
実施例1で、図1の複合反応器を使用した代わりに、管型反応器、第1の連続撹拌槽型反応器および第2の連続撹拌槽型反応器が順に連結された反応器を使用した以外、すなわち、図1の複合反応器で管型反応器を最前端に配置した以外は、実施例1と同様にシクロドデセンを合成した。
【0094】
反応器の組み合わせによる転化率および選択度の評価
実施例1で、各反応器内でのシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定しており、その結果は、下記の表4のとおりである。
【0095】
【表4】
【0096】
比較例1で、シクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定しており、その結果は下記表5のとおりである。
【0097】
【表5】
【0098】
前記表4のとおり、2基の連続撹拌槽型反応器と1基の管型反応器が使用されている実施例1の場合、最終転化率および最終選択度がいずれも98%以上と高かった。しかし、前記表5と同様、管型反応器が使用されていない比較例1の場合、最終転化率および最終選択度がいずれも92%以下と著しく低かった。
【0099】
比較例2で、各反応器内でのシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定しており、結果、最終転化率は92%であり、最終選択度は93%と著しく低かった。したがって、実施例1および比較例2から、2基の連続撹拌槽型反応器と1基の管型反応器が使用されても、その順序によって最終転化率および最終選択度に著しい差が出ることが分かる。
【0100】
<滞留時間による転化率および選択度の評価>
実施例1および実施例2で、各反応器間の滞留時間の比によるシクロドデカトリエンの最終転化率およびシクロドデセンの最終選択度を測定した。
【0101】
結果、τ2C/τ1Cが0.1~0.9を満たし、τ1P/τ1Cが1~9を満たしている場合、これを満たしていない場合に比べて転化率および選択度が著しく高かった。
【0102】
<塩化ルテニウムおよびトリフェニルホスフィンのモル比による転化率および選択度の評価>
実施例1および実施例3で、塩化ルテニウム(RuCl)およびトリフェニルホスフィン(TPP)のモル比によるシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定し、その結果を下記表7および図2に示した。
【0103】
【表7】
【0104】
前記表7および図2と同様、塩化ルテニウム1モルに対するトリフェニルホスフィンのモル比が110未満の場合と比較して、塩化ルテニウムおよびトリフェニルホスフィンのモル比が1:110から1:130の範囲を満たす場合は98.4%以上と転化率および選択度がいずれも非常に高い水準で両立することを確認した。
【0105】
したがって、転化率および選択度をいずれも98%以上の高い水準に満たすためには、塩化ルテニウムおよびトリフェニルホスフィンのモル比が1:110~130の範囲であることが好ましいことが分かる。
【0106】
<トリフェニルホスフィンおよびホルムアルデヒドのモル比による転化率および選択度の評価>
実施例1および実施例4で、トリフェニルホスフィン(TPP)およびホルムアルデヒド(CHO)のモル比によるシクロドデカトリエンの転化率およびシクロドデセンの選択度を測定し、その結果を下記表8および図3に示した。
【0107】
【表8】
【0108】
先ず、前記表8および図3と同様、塩化ルテニウムおよびトリフェニルホスフィンのモル比が1:110~130の範囲を満たす場合、そうでない場合よりも転化率が著しく高かった。
【0109】
また、トリフェニルホスフィン1モルに対するホルムアルデヒドのモル比が1.5未満の場合と比較して、トリフェニルホスフィンおよびホルムアルデヒドのモル比が1:1.5から1:2.0の範囲を満たす場合は97.1%以上と転化率および選択度がいずれも非常に高い水準で両立することを確認した。
【0110】
したがって、転化率および選択度をいずれも97%以上の高い水準で満たすためには、トリフェニルホスフィンおよびホルムアルデヒドのモル比が1:1.5~2.0の範囲であることがより好ましいことが分かる。
【0111】
<反応圧力による転化率、選択度および反応時間の評価>
実施例1および実施例5で、反応圧力によるシクロドデカトリエン(CDT)とシクロドデジエン(CDDN)の転化率およびシクロドデセン(CDEN)の選択度、および反応時間を測定し、その結果を下記表9、図4および図5に示した。
【0112】
【表9】
【0113】
前記表9および図4と同様、反応圧力が20bar未満の場合と比較して、反応圧力が20~40bar範囲の場合は転化率および選択度がいずれも非常に高い水準と優れており、転化率に逹するまでの反応時間が著しく減少して工業的な利用により適することを確認することができた。また、反応圧力が40bar超の場合と比較して、反応圧力が20~40barの範囲の場合は、選択度が非常に高い水準と優れていた。
【0114】
したがって、転化率および選択度をいずれも高い水準で満たし、反応時間が減少し、工程効率を増加させるためには、反応圧力が20~40barを満たすことがより好ましいことが分かる。
【0115】
また、図5と同様、圧力が増加するほど反応速度は速くなり、選択度は減少する傾向があることが分かる。
【0116】
<反応時間による質量分率の評価>
実施例1で反応中間ごとにサンプリングし、反応時間(反応滞留時間)による質量分率を測定し、その結果を図6に図示した。図6において、CDANはシクロドデカンであり、CDENはシクロドデセンであり、CDDNはシクロドデカダイエンであり、CDTはシクロドデカトリエンである。
【0117】
<反応器の種類(CSTR、GIST)による転化率および選択度の評価>
実施例1と同じ反応条件で、第1の連続撹拌槽型反応器および第2の連続撹拌槽型反応器をいずれもGISTに置換した場合である実施例7に対して、反応器の種類によるシクロドデカトリエン(CDT)とシクロドデジエン(CDDN)の転化率およびシクロドデセン(CDEN)の選択度を測定した。その結果は、下記図7に図示した。
【0118】
結果、実施例7の場合は、実施例1の滞留時間の半分の滞留時間を有するとともに、99.14%の転化率および98.38%の選択度を有しており、転化率、選択度に優れ、特に、滞留時間が著しく減少し、工程効率が非常に向上することを確認した。
【符号の説明】
【0119】
110 第1の連続撹拌槽型反応器、
120 第2の連続撹拌槽型反応器、
210 管型反応器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8