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特許7082676圧力センサーを具えた液体クロマトグラフィー用ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】圧力センサーを具えた液体クロマトグラフィー用ポンプ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20220601BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01N30/32 C
F04B53/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020544809
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019018735
(87)【国際公開番号】W WO2019164918
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】62/635,016
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508276110
【氏名又は名称】ヴァルコ インスツルメンツ カンパニー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100167047
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100085785
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 昌典
(72)【発明者】
【氏名】スターンズ, スタンレー, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリスビン, マーティン, ピー.
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-527534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0260558(US,A1)
【文献】特開昭61-258975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0198688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
F04B 23/00 -23/14
F04B 49/00 -51/00
F04B 53/00 -53/22
G01L 7/00 -27/02
G01N 35/00 -37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速液体クロマトグラフィー用ポンプであって、該ポンプは、
本体面(110)と、プランジャー第1端(132)を有し前記本体面(110)から突出しているプランジャー(118)と、前記プランジャー(118)が挿通するシール(116)と、前記本体面(110)と前記シール(116)との間に設けられたスプリング(122)とを有するポンプ本体(104)と;
ポンプヘッド第1側部(130)を有するポンプヘッド体(126)と、該ポンプヘッド体(126)内に設けられ、前記プランジャー第1端(132)が丁度嵌り入る内径を有し、片側の境が前記ポンプヘッド第1側部(130)近傍に接しているバレル(402)と、バレル(402)内の内部圧力の変化に比例して前記ポンプヘッド体(126)が十分に変形・偏向するのに十分な距離(410)であって、且つ前記内部圧力に対して十分に耐え得る距離(410)だけ前記バレル(402)の内周面から離れた位置の測定面(412)と、前記本体面(110)に接触するポンプヘッド面(202)とを有し、前記本体面(110)に対して脱着自在に取り付けられるようになったポンプヘッド(106)と;
前記ポンプヘッド(106)の前記ポンプヘッド面(202)上に設けられた電気コンタクト(208)と;
前記ポンプヘッド(106)上であって前記ポンプヘッド体(126)の前記ポンプヘッド第1側部(130)上の前記測定面(412)の所に取り付けられ、前記偏向を表す信号を発し、電気的に繋がっている前記電気コンタクト(208)に送るストレインゲージ(128)と;
前記電気コンタクト(208)に電気的に繋がっており、前記偏向を表す信号を圧力値に変換するための校正値を有しているメモリ装置(406)と;
前記本体面(110)上に設けられており、前記電気コンタクト(208)と電気的に繋がるように前記電気コンタクト(208)と接続され、前記偏向を表す信号と前記校正値とを含む、前記バレル(402)内の圧力を表す信号を前記ポンプ本体(104)上の入力/出力コネクター(134)へ供給し、前記メモリ装置(406)と前記ストレインゲージ(128)とに電力を供給する電気コネクター受部(124)と、
を具備することを特徴とする高速液体クロマトグラフィー用ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の高速液体クロマトグラフィー用ポンプ(100)において、前記ポンプヘッド(106)の前記ポンプヘッド面(202)に設けられた前記電気コンタクト(208)はスプリング付勢形式であることを特徴とする高速液体クロマトグラフィー用ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の高速液体クロマトグラフィー用ポンプにおいて、前記入力/出力コネクター(134)は外部プロセッサーと通信できるようになっていることを特徴とする高速液体クロマトグラフィー用ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の高速液体クロマトグラフィー用ポンプにおいて、前記ポンプヘッド体(126)は一体構成物であることを特徴とする高速液体クロマトグラフィー用ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の高速液体クロマトグラフィー用ポンプにおいて、前記バレル(402)は、その一方端に前記シール(116)に隣接した第1オリフィス(302)
と、その他方端で前記第1オリフィス(302)の反対側に、前記バレル(402)
への液体の供給口となる第2オリフィス(404)とを有することを特徴とする高速液体クロマトグラフィー用ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー用のポンプに関し、より詳しくは、出力箇所の容量圧力を識別及び制御することができるナノリッターボリュームサイズのポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、一般的に、一分間当たり立方センチメートル単位の流量で液体を搬送するような大きさのポンプを用いて動作するようになっている。残念ながら、これらのシステムでは、分析にあたって、かなり大きい試料容量、大きい移動相容量、大きな流量が求められ、結果、時間の経過から見ると不均一な圧力で液体を搬送することになっていた。
【0003】
これらのシステムでは、関連するポンプヘッドからの流体の圧力を識別・確認することが難しく、したがって、それを制御することが難しかった。特に問題なのは、ポンプのバレルはポンプごとに変動するので、それぞれのポンプは固有・特異な圧力特性を持つことになり、共通する特性を正確にすることを妨げていた。
【0004】
したがって、信頼度の高い圧力出力を提供できる、高速液体クロマトグラフィーのためのポンプを提供することが望まれていた。
【発明の概要】
【0005】
本願のものは、信頼性の高い圧力データを、従ってこのデータに基づき信頼性の高い出力を提供できるポンプを提供することによって、従来技術における上で述べた要求に応えるものであると共に、その欠点を克服するものである。本願は、最小限の液体を用い、特に屋外用ポータブル型HPLC装置として最適な軽量且つ頑丈な流体システムを提供するものである。
【0006】
本発明は、ポンプ本体とポンプヘッドを有してなる高速液体クロマトグラフィー用ポンプを提供する。ポンプ本体は、その上に電気コネクター受部を具えた本体面と、プランジャー第1端を具えたプランジャーと、本体面からスプリングによって分離されたシール部材とを有する。プランジャーは本体面から突き出ており、シール部材を貫通している。ポンプヘッドは、ポンプヘッド第1側部を有するポンプヘッド体と、ポンプヘッド体の中にバレルとを有する。バレルの大きさ(内径)は、プランジャー第1端が丁度嵌り入るものとなっており、このバレルは片側の境がポンプヘッド第1側部に接している。ポンプヘッドは更に、測定面を有する。この測定面は、バレル内の内部圧力に十分に耐えつつもバレル内の内部圧力に比例して十分に変形(偏向)する距離をバレルの内壁との間に持っており、これにより、測定対象としての変形・偏向が測定面に提供される。ポンプヘッドは更に、本体面に接するポンプヘッド面を有しており、これによってポンプヘッドがポンプ本体に対して着脱可能なアタッチメントとなる。ポンプヘッドは更にポンプヘッド面に電気コンタクトを有する。この電気コンタクトは、ポンプヘッド面が本体面と接したとき、本体面上の電気コネクター受部と電気的に繋がるものである。ポンプヘッドはまた、ポンプヘッド第1側部の近くで、測定面の所に取り付けられたストレインゲージを有する。ストレインゲージは、変形・偏向の程度を表す信号を発生し、これを電気コンタクトに伝える。最後に、ポンプヘッドは、電気コネクター(電気コンタクト)との電気的な通信において圧力に対する変形・偏向値を校正する値(校正値)を持つメモリ装置を有する。
【0007】
本明細書の一部を構成する添付図面を用いて説明されている実施形態を参照することにより、本発明の上記の特徴、利点及び目的、さらには以下において明らかにされる他の特徴、利点及び目的の理解が可能となろう。しかしながら、添付図面は本発明の典型的な好ましい実施形態を示しているに過ぎないこと、そして本発明範囲をこれらに限定するものではなく、他の同等に有効な実施形態としても本発明を構成可能なことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明による一実施例のポンプアッセンブリーの斜視図である。
図2図2は本発明による一実施例のポンプヘッドの斜視図である。
図3図3は本発明による一実施例のポンプヘッドの作動端面を示す図である。
図4図4図3のポンプヘッドのA-A線における断面図である。
図5図5は本発明のポンプヘッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明のポンプ100の斜視図であり、以下同図を参照しながら本発明の詳細を説明する。ポンプ100は、迅速な分離動作のために、ナノスケールカラムでの使用のために、マイクロリッター容量を保持できる大きさとされる。動作するために、アクチュエーター102がポンプ100に取り付けられる。ポンプ100は、ポンプ本体104とポンプヘッド106とを具えている。ポンプヘッドは、電気コネクター(電気コンタクト)との電気的な通信において圧力に対する変形・偏向値を校正するを持つメモリ装置を有する。
【0010】
ポンプヘッド106は、ポンプ本体104に対して取り外し自在となっており、例えば、複数のボルト108によってポンプ本体104に取り付けられれば良い。ポンプ本体104は本体面110を具え、その本体面110はその面上に、前記ボルトの数に一致した複数のねじ穴112を有している。ポンプヘッド106も同様に、前記ポンプ本体面100上の複数のねじ穴の位置に合致した位置に、複数のポンプヘッド通し穴114を有している。ポンプヘッド106とポンプ本体104は、本体面110の位置で確実に結合される。
【0011】
ポンプヘッド106とポンプ本体104とが一致合体している間、シール116が、ポンプ本体104に対するポンプヘッド106の気密・密閉作用を担うことになる。シール116はプランジャー118の周囲に設けられ、スプリング122を有する。スプリング122は、シール116がポンプヘッド106の合体面に対して力を作用するように、シール116に対して圧迫力(圧縮力)を与える。ポンプ100にナノスケール容量の取り扱いが要求される場合、プランジャー118の直径は0.03インチ又はそれより僅かに小さいか、0.93インチ又はそれより僅かに大きいか、またはその中間で例えば0.62インチとすることができる。ポンプ本体104に対するプランジャー118の参照符号140で示されるストローク、即ち移動量は、0.25インチ又はそれより僅かに小さく、又は0.75インチ又はそれより僅かに大きく、またはそれらの中間、例えば0.5インチであっても構わない。プランジャー118は、ポンプヘッド106内に導き入れられるプランジャー第1端部132を有する。プランジャー118のストローク140とバレル402(図4参照)の直径408(同じく図4参照)の積とで一回のローディング及びイジェクションの間に搬送可能な液体の容量が画定される。プランジャー118のストローク140及びバレル402の直径408の値からマイクロリッター単位の液体容量を取り扱えることが理解できる。
【0012】
シール116は、硬質シールと柔軟材料との混合素材で形成されても良く、または単一成分素材で形成されても構わない。何れの場合にも、シール116はその上に肩部120を具える。この肩部120には、スプリング122の圧縮時には、スプリング122はこの肩部122に力を加える。肩部120はまた、スプリング122が、ポンプヘッド106とポンプ本体104との合致状態及び両者間の気密状態の邪魔にならないための場所を提供するものである。
【0013】
ポンプ本体104は、本体面110の面上に、又は本体面110に埋め込まれる形で、ポンプヘッド106とポンプ本体104とが接触・結合したときに複数のコネクター端子(電気コネクター)となる電気コネクター受部124を具えることもできる。なお、電気コネクター受部124は、ポンプ本体104を制御するプロセッサーと関連付けられても良い。
【0014】
ポンプヘッド106は、堅固・硬質材料で形成されたポンプヘッド本体126を有する。ポンプヘッド本体126は片側にポンプヘッド第1面130を有し、ここにストレインゲージ(歪ゲージ)128が配置される。
【0015】
図2には、本発明によるポンプヘッド106の斜視図が示されている。ポンプヘッド106はポンプヘッド面202を有し、該ポンプヘッド面202は本体面110と合わさる面である。ポンプヘッド106は、ポンプヘッド開口204を有し、該開口204にはシール116がちょうど嵌り込んで、該シール116が気密・密閉性を形成するところである。ポンプヘッド開口204の中心部に合わせて設けられている物はシールシート205であり、ポンプ本体104側のシール116がここに着座し、その側部面はシール116の周囲部にちょうど嵌る。図3に示される通り、第1オリフィス302は、ポンプヘッド106の殆どの部分を貫通するバレル402と連通している。ポンプヘッド面202のところには、そこから飛び出す状態で、電気コンタクト(接点)208が設けられている。電気コンタクト208は、ポンプ本体104上の電気コネクター受部124と電気的に繋がれる。電気コンタクト208は、電気コネクター受部124がポンプヘッド面202上に設けられる場合、ポンプヘッド106とポンプ本体104とが一体化されたときに、電気コネクター受部にちょうど揃い合うような位置に設けられる。このように構成すると、ポンプヘッド106のポンプヘッド面202がポンプ本体104の本体面110と合わさり、そして複数のボルトで固定されると、電気コンタクト208は、電気コネクター受部124と接触、嵌り合う位置関係となり、したがって電気コネクター受部124と電気的に接続されることになる。電気コンタクト208は、電気コネクター受部124に対して完璧な接触と係合とを確実にするために、スプリング付勢形式にしても良い。このような電気コンタクト208と電気コネクター受部124との相互関係の採用により、ポンプ本体104からのポンプヘッド106の取り外し作業が容易になる共に、ユーザー自身は、電気的接続を行うという作業なくして、電気コンタクト208と電気コネクター受部124との電気的接続が簡単に行えるようになる。
【0016】
本願のポンプヘッド106の作動面を示した図3を参照しながら説明を進める。同図において、参照番号302は、ポンプヘッド106の端部の第1オリフィスを示し、該第1オリフィス302の中には、プランジャー118のプランジャー第1端302が嵌り入ってくる。ポンプヘッド通し穴114の位置は、ポンプヘッド106とポンプ本体104との合致・合体が適切になるように、そして、電気コンタクト124がポンプ本体104上に設けられる場合には、電気コンタクト208がポンプ本体104上の電気コネクターと接触するように決められる。第1オリフィス302は、図4に更に詳細に示されている通り、バレル402の一端であるので、第1オリフィス302の直径はバレル402の直径408に等しい。
【0017】
図3に示す本発明によるポンプのA-A線における断面を示す図4を参照して説明する。ポンプのヘッド体126内には、シールシート205に接続されるバレル402がある。ポンプヘッド106は、ポンプヘッド体126のポンプヘッド第1側部130を有する。ポンプヘッド体126は一体物構造となっているので、ポンプヘッド第1側部130は、バレル402の該周面の一部分を画定するものである。ポンプヘッド体126内、ポンプヘッド第1側部130の所、測定面412の所にストレインゲージ(歪計)128が設けられる。バレル402の内側面とストレインゲージ128との距離は、ポンプ100の動作圧力に耐え得るのに十分な厚さであると同時に、測定面412の部分、即ち、バレル402の内側面とストレインゲージ128との間の部分が、そこからの液体漏れや破れ等の事故・故障を生じることなく、動作圧力の変化に比例して変形するに十分な薄さとなっている。ポンプヘッド体126を構成する素材・材料として重要なことは、圧力印加前の元の状態・寸法に復帰し得るように十分な可撓性を有することであり、そうであることにより、次に続く読み、即ち計測値は最初の位置での計測値と一致することになる。この元の位置へ復帰すると言うことは、内部圧力の適切な機能及び測定にとって基本的なことである。元の位置に復帰しない、即ち圧力の下で変形しきってしまうような如何なる材料の組み合わせ及び厚さの設定は、使用・採用できないものである。距離410は選択される材料によっても決まる。また、ポンプヘッド体126を構成する材料の強度、即ち、圧力印加の下、ポンプヘッド体126がどの程度可撓的に変形し得るかは重要なことである。バレル402は、前述した第1オリフィス302及びポンプヘッド面202とは反対側の、バレル402の他方の面に設けられた第2オリフィス404の所で液体の供給を受けるようになっている。内径408を有するバレル402は、その内径408に合わせた外径を有するプランジャー118と共に共同的に動作する。
【0018】
ストレインゲージ128は、ポンプヘッド第1側部130の測定面412の所に、バレル402の内側から距離410離れてポンプヘッド126に固定される。こうすることにより、ストレインゲージ128は、ストレインゲージ128が設けられている近傍のバレル402の変形程度に対応した信号を発し、その信号は最終的に圧力値に変換される。変形の程度は、圧力が掛かっていない間の元の位置に対するものとして測定される。このように、ストレインゲージ128は圧力変化に一致した偏差・偏向を検出するために設けられる。圧力はポンプ100の外部からも監視することもできるが、そのような構成は、更に圧力コントロールシステムを必要とするものであり、ポンプ100の動作を乱す恐れがある。瞬間的な内部圧力が得られるので、バルブは圧力が所望の圧力に満たないときにポンプ100からの流出を制限することができ、これにより所望の圧力を確実に得ることができる。必要により、プランジャー118の進入速度を、所望の圧力を維持するために制御するようにしても良い。プランジャー118の進入速度を、所望の圧力を一定に維持するために、ストレインゲージ128からのデータに応じて変化させるようにしても構わない。
【0019】
EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)チップ等の記憶装置406がポンプヘッド106上に設けられており、該記憶装置406は、ストレインゲージ128から送られてくるデータを処理し、電気コンタクト128を介して外部にそのデータを送り出す。メモリ装置406は、関係するポンプヘッド106のためであって、且つストレインゲージ128からの信号のための校正用データ(キャリブレーションデータ)を有する。このような構成とした結果、ポンプヘッド106は、特定のものだけではなく如何なるポンプ本体104とも一緒に用いることができ、そして、外部プロセッサーに向けて信頼性の高い圧力データを提供できる。外部プロセッサーは、圧力を計算するために、メモリ装置406から校正用データとストレインゲージの偏向・変形に関するデータを読み込む。同様に、第1ポンプヘッド106がポンプ100から取り外され、それを第2ポンプヘッド106に置き換えることもできる。このようなポンプヘッドの交換作業をしても、校正の必要なく信頼性のあるデータを提供することができる。プランジャー118、即ちプランジャー第1端132の位置及び移動速度を含むポンプ100の制御は、外部プロセッサーに伝達される信号及びポンプ100上の入出力コネクター(I/O端子)134からの信号によって行われる。入出力コネクター(I/O端子)134は更に電気コンタクト208とメモリ装置406と電気的に繋がっている。
【0020】
最後に、ポンプヘッド106の側面を示す図5を参照して説明する。図5には、メモリ装置406と関係する電気コンタクト208が、ポンプヘッド面202、第1側部130、ストレインゲージ128と共に示されている。
【0021】
上述した通り、本願発明により、その内部の圧力を測定するために、ポンプ本体104と校正されたポンプヘッド106を具えた高速液体クロマトグラフィーが提供される。ポンプ本体104は本体面110を有し、その本体面110上には電気コネクター受部124を設けることもできる。ポンプ本体104は、プランジャー第1端132を有するプランジャー118を、本体面110から飛び出る状態で有している。ポンプ本体104は本体面110から飛び出た状態のシール116を有し、そのシール116の中をプランジャー118が貫通している。
【0022】
ポンプヘッド106は、ポンプヘッド体126、ポンプヘッド第1側部130、ポンプヘッド体126全体に亘って延在するバレル402を有する。バレル402は、プランジャー第1端132が丁度嵌り込む大きさ、即ち内径を有している。バレル402は、片側の境がポンプヘッド第1側部130に接している。ポンプヘッド第1側部130は、バレル402内の内部圧力に十分耐え得る厚さであって、また、ポンプヘッド体126におけるバレル内表面とストレインゲージ128との間が内部圧力の変化に対して比例的に変形・偏向することで圧力変化に一致した偏差・偏向がストレインゲージ128に与えられる厚さを有している。ポンプヘッド106はまた、本体面110に接するようになったポンプヘッド面202を有する。ポンプヘッド106がボルト108等によって脱着可能になっていることは重要なことであり、そうなっていることにより、ポンプ100の再校正をする必要なく、ポンプヘッド106を取り外し、清掃し、必要により取り換えることが可能になった。これを容易にしているのが、ポンプヘッド106のポンプヘッド面202の所に電気コンタクト208が設けられていることである。電気コンタクト208は、ポンプヘッド面202が本体面110と接触すると同時に、本体面110上の電気的コネクター受部124と自動的に電気的な接続が行われるようになっている。ストレインゲージ128は、ポンプヘッド体126のポンプヘッド第1側部130の上でポンプヘッド106に取り付けられており、バレル402の内側面から距離410離れた位置の測定面の所で、ポンプ本体126の一部分の偏向を表した信号を伝達するようになっている。ポンプは更に、電気コンタクトに電気的に接続されたメモリ装置406を有しており、該メモリ装置406は、偏向を表す信号を圧力信号に変換するための校正データを提供するようになっている。メモリ装置406は、ポンプヘッド体126の偏向とバレル402内の液体の圧力との関係の校正データを蓄積している。
【0023】
使用時、ポンプヘッド106は複数のボルト108によってポンプ本体104に固定される。ポンプヘッド106とポンプ本体104とがボルト108により近くに引き付けられることにより、スプリング付勢型電気コンタクト208は電気コネクター受部124と電気的接触を形成する。動作中、プランジャー118はバレル402内に駆動され、それによりバレル402内の圧力が増加する。この圧力の増加は、ストレインゲージ128とバレル402の内側面の間の、内部圧力には十分耐え得るが、ポンプヘッド体の一部分を変形させることになる。内部圧力の読みは直ちに決定される。複数のボルト108のそれぞれは、ポンプヘッド通し穴114を通過して本体のねじ穴112にねじ込まれる。これに代わる他の取り付け方法であっても構わない。
【0024】
ローディングが開始すると、アクチュエーター102によってプランジャー118はポンプ本体104内に格納され、バレル402内変位が生じ、リザーバーから例えば15cm×200μmのスチール管を通して液体がポンプ100内に引き込まれる。このステップをフィリングステップと言う。
【0025】
イジェクション又はディスペンシングステップでは、プランジャー118はバレル402内に駆動される。プランジャーの進入速度、従ってディスペンシング流量(吐出量)は、ポンプ100が具えるI/O端子134に接続された電力供給装置及び/又はコンピュータソフトウェアによって制御される。ストローク間のバレル402内のプランジャー118の位置及びその程度は、光学エンコーダその他の従来技術の機械的システムによって決められる。最大値を決定の後、その動作は機械式スイッチ又はリミットスイッチで制限される。断面均一なプランジャー118は、バレル402内をスライド状に移動し、液体のローディング及びイジェクション動作の間は、効果的な動作を確実に実行し得るサイズに構成されている。
【0026】
液体はバレル402内で圧縮されるので、バレル402は加圧され、その結果、バレル402の内側面とストレインゲージ128の間の、ポンプヘッド第1側部130上のポンプヘッド体126の一部分は変形することになる。そして、ストレインゲージ128に関してメモリ装置406に蓄積された具体的な校正値に従い、ストレインゲージ128が交換されたとしても、その変形はポンプヘッドと(電気的に)接続することとなる。電力は電気コネクター受部124からメモリ装置406及びストレインゲージ128に供給される。バレル402内の圧力を表すものとして得られた信号は、電気コンタクト208及び電気コネクター受部124を通して先ずI/O端子134に送られ、その後、信号は外部プロセッサーに送られる。これに代えて、プロセッサー、ワイヤレス送信機、電源をポンプヘッド上に具えるようにすることもでき、その場合は、電気コネクター受部124及び電気コンタクト208が必要なくなる。
【0027】
取扱う量によっては、ポンプ100のリフィリング作業は2分以内で完了する。キャピラリーカラム(100-150μm i.d.)において代表的な流量の範囲は100~500nL/minであるので、無勾配分離がポンプ100の補給(再充填)無しに容易に行える。
【0028】
ポンプ100のナノスケール動作が部品の一体化によって可能となったが、さらに、十分且つ動作可能な360マイクロメータゼロ・デッドボリュームフィッティングや材料の選択次第で機能を拡張できる。有効であれば、ダイヤモンド被覆面の使用も考えられる。プランジャー118は、例えばMP35N、ニッケル・クロム・モリブデン・コバルト合金等の加工硬化超合金で形成することもできる。これらの合金は、超高強靭性、頑丈性、延性、高耐食性を呈する。特に、硫化水素、塩素水、無機酸(硝酸、塩酸、硫酸)に対して耐性が高い。さらに、ポンプ100のナノスケール動作は携帯性を可能とし、バッテリー駆動とすれば、装置の軽量化、移動相の低消費化、及び電力の低浪費化を実現し得る。ポンプ100は、例えば、172.37MPaの動作圧を発生するものに使用し得る。しかし、動作圧は必要によりこれよりも低くも又は高くもできる。同様に、ポンプ許容容量は例えば24μLであるが、このポンプ許容容量も更に大きくも小さくもできる。さらに、ポンプ100は僅か例えば10nLという少量の試料を取り扱えるが、これよりも大きい例えば60nLの試料も取り扱える。同様に、その試料容量も必要に応じて容量をリサイズすることができる。上述した本発明の構成としたことにより、ポンプ100の最大及び最小吐出容量は、例えばそれぞれ最大74.2μL/min、最小60nL/minと制御することができる。インジェクション(ディスペンシング)の間、移動相をカラムに搬送するために、最も一般的にはステンレス鋼チューブからなるループを用いることにより更に効率が高められる。
【0029】
上記明細書において用いられている用語及び表現は説明のために用いた用語であり、これらの用語及び表現によって本発明を限定しようとする意図はなく、また本願において示し、あるいは説明した特徴の均等物を排除することを意図したものではない。
図1
図2
図3
図4
図5