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特許7082677圧電アクチュエータを含むNMRプローブヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータを含むNMRプローブヘッド
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20220601BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20220601BHJP
   H02N 2/06 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
G01N24/00 610A
H02N2/04
H02N2/06
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020545831
(86)(22)【出願日】2017-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 CH2017000097
(87)【国際公開番号】W WO2019100173
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520179383
【氏名又は名称】キューワンテック・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】サルビスベルグ,サムエル
(72)【発明者】
【氏名】オスターワルダー,マルコ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-527376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0117560(US,A1)
【文献】特開平11-098865(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096199(WO,A1)
【文献】特開2005-086857(JP,A)
【文献】特開2000-019375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253124(US,A1)
【文献】特開平11-223668(JP,A)
【文献】特表2011-510325(JP,A)
【文献】米国特許第05170789(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00-24/14
G01R 33/28-33/64
G01N 22/00-22/04
H02N 2/04-2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NMRプローブヘッドであって、
基部(10)と、
前記基部(10)よりも小さい直径を有するチューブ(12)と、
前記チューブ(12)内に配置されかつ試料チャンバ(88)を取り囲むコイル(34)と、
前記チューブ(12)内に配置されかつ前記コイル(34)に接続された同調・整合回路(22)と、
前記同調・整合回路(22)および/または前記コイル(34)内に配置されたいくつかの同調可能要素(36)と、
作動部材(28)により前記同調可能要素(36)に機械的に接続されたいくつかのアクチュエータ(38)と、
を備え、
前記アクチュエータ(38)のうちの少なくともいくつかが、圧電アクチュエータ(38)であり、前記アクチュエータ(38)が、前記基部(10)と前記同調・整合回路(22)との間で前記チューブ(22)内に配置される、NMRプローブヘッド。
【請求項2】
前記作動部材(28)のうちの少なくとも1つが、そのアクチュエータ(38)とその同調可能要素(36)との間に延在する作動ロッドである、請求項1に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項3】
前記作動部材(28)が、前記チューブ(12)のチューブ軸に平行に延在する、請求項1または2に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項4】
前記アクチュエータ(38)のうちの少なくとも1つが、
前記チューブ(12)に対して固定して配置されたマウント(46)と、
前記マウント(46)上に弾性的に取り付けられた少なくとも1つの駆動ロッド(48)と、
前記駆動ロッド(48)に取り付けられた少なくとも1つの圧電素子(50)と、
前記駆動ロッド(48)上に配置されたスリップ結合器(52)と、
を備え、
前記作動部材(28)のうちの少なくとも1つが、前記スリップ結合器(52)に接続される、請求項1から3までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項5】
前記駆動ロッド(48)が、前記作動部材(28)よりも軽量であり、特に前記作動部材(28)よりも短い、請求項4に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項6】
前記マウント(46)が、互いに距離を置いて配置された第1の弾性保持器(46a)および第2の弾性保持器(46b)を備え、前記スリップ結合器(52)が、前記第1の保持器(46a)と前記第2の保持器(46b)との間に延在する前記駆動ロッド(48)のセクション(48a)に取り付けられる、請求項4または5に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項7】
前記弾性保持器(46a、46b)のうちの一方が、前記スリップ結合器(52)と前記少なくとも1つの圧電素子(50)との間に配置される、請求項6に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項8】
前記アクチュエータ(38)が、前記駆動ロッド(48)の両端に取り付けられた第1および第2の圧電素子(50)を備える、請求項4から7までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項9】
アクチュエータ組立体(24)を有し、前記アクチュエータ組立体(24)が、前記アクチュエータ(38)のうちのいくつかを備え、前記アクチュエータ組立体(24)が、前記アクチュエータ(38)を共通して保持するフレーム(42a、42b)を備える、請求項4から8までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項10】
前記フレーム(42a、42b)が、複数の凹部または開口部(70)を有する少なくとも1つのフレーム体(42a)を備え、前記駆動ロッド(48)のそれぞれが、前記凹部または開口部のうちの少なくとも1つの中に保持される、請求項9に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項11】
前記アクチュエータ組立体(24)が、前記凹部または開口部(70)のそれぞれに対して、1つの駆動ロッド(48)を前記凹部または開口部(70)内に弾性的に保持するように適合されかつ構成された弾性保持器(46a、46b)を備える、請求項10に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項12】
フレーム体(42a、42b)が、前記チューブ(12)の軸に対して横方向に、特に直角に延在するプレートであり、前記凹部または開口部(70)が、フレーム体(42a、42b)の外側縁部(72)から内方に延在する凹部である、請求項10または11に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項13】
前記フレーム(42a、42b)が、互いに距離を置いて配置された第1および第2のフレーム体(42b)を備え、前記アクチュエータ(38)の前記駆動ロッド(48)が、前記2つのフレーム体(42a、42b)の間に延在する、請求項10から12までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項14】
前記作動部材(28)が、前記フレーム体(42a)を貫通して延在する、請求項10から13までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項15】
前記アクチュエータ組立体(24)が、前記チューブ(12)のチューブ軸(18)に対して直角な任意の方向において、100mmよりも小さい直径、特に40mmよりも小さい直径を有する、請求項9から14までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項16】
前記アクチュエータ組立体(24)の前記駆動ロッド(48)が、円上に配置される、請求項9から15までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項17】
前記チューブ(12)に沿って軸方向に延在するセンタリング部材(33)を備え、前記コイル(34)、前記同調・整合回路(22)、および前記アクチュエータ組立体(24)が、前記センタリング部材(33)によって中心に配置される、請求項9から16までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項18】
前記駆動ロッド(48)が、前記チューブ(12)のチューブ軸(18)に平行に延在する、請求項4から17までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項19】
前記アクチュエータ(38)が、前記作動部材(28)を前記圧電素子(50)に対して変位させるように構成されかつ適合される、請求項4から18までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項20】
前記コイル(34)および前記同調・整合回路(22)を具体的には-100℃を下回る温度まで冷却するように適合されかつ構成された、請求項1から19までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項21】
温度被制御空気導管(89)内に配置された加熱器(88)を含む加熱部材(84)をさらに備え、前記温度被制御空気導管(89)が、前記基部(10)から前記試料チャンバ(88)まで延在する、請求項1から20までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項22】
前記加熱部材(84)および前記温度被制御空気導管(89)の周りに配置された絶縁空気導管(94)をさらに備え、特に、前記絶縁空気導管(94)が、前記アクチュエータ(38)および/または前記プローブヘッドの他の構成要素を冷却するための側方開口部(100)を備える、請求項21に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項23】
前記絶縁空気導管(94)が、前記センタリング部材(33)によって形成される、請求項17を引用する請求項21を更に引用する請求項22に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項24】
前記同調可能要素(36)が、調整可能なコンデンサ、調整可能なインダクタ、および電気スイッチの群のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から23までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項25】
前記アクチュエータ(38)と前記調整可能要素(36)との間に配置されたRFシーリング(30)を備え、前記作動部材(28)が、非金属材料で作られ、かつ、前記RFシーリング(30)内の開口部(40)を貫通して延在する、請求項1から24までのいずれか一項に記載のNMRプローブヘッド。
【請求項26】
前記作動部材(28)の運動を制限するように配置された機械的止め具(56a、56b)と、
前記アクチュエータ(38)に電気的に接続された制御ユニット(64)と、
をさらに備え、
前記制御ユニット(64)が、前記アクチュエータ(38)のうちの少なくとも1つを動作させて、そのアクチュエータ(38)に接続された作動部材(28)を第1の方向に沿って所与のステップ数にわたって変位させるように、適合されかつ構成され、前記所与のステップ数が、前記作動部材(28)が端位置において前記機械的止め具(56a、56b)のうちの第1のものによって停止されることを確実にするのに十分なものである、請求項1から25までのいずれか一項に記載のNMRプローブ。
【請求項27】
前記制御ユニット(64)が、前記少なくとも1つのアクチュエータ(38)を動作させて、前記作動部材(28)を前記所与のステップ数の後に前記端位置から前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記アクチュエータ(38)の所与の振動数にわたって移動させるように、適合されかつ構成される、
請求項26に記載のNMRプローブ。
【請求項28】
前記同調・整合回路(22)にAC信号を供給するための信号線(74)、ならびに前記信号線
(74)上の前記信号の大きさおよび位相を検出するための検出器(76)と、
前記作動部材(28)のうちの少なくとも1つを変位させるための方向を前記大きさおよび位相から決定するための解析器(80、81)と、
をさらに備え、
特に、前記解析器(80、81)が、ファジー論理ユニットを備える、請求項1から27までのいずれか一項に記載のNMRプローブ。
【請求項29】
請求項1から28までのいずれか一項に記載のNMRプローブを動作させる方法であって、
前記アクチュエータ(38)のうちの少なくとも1つを動作させて、そのアクチュエータ(38)に接続された前記作動部材(28)を第1の方向に沿って所与のステップ数にわたって変位させるステップ
を含み、
前記所与のステップ数が、前記作動部材(28)が端位置において機械的止め具(56a、56b)によって停止されることを確実にするのに十分なものである、方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのアクチュエータ(38)を動作させて、前記作動部材(28)を前記所与のステップ数の後に前記端位置から前記アクチュエータ(38)の所与の振動数にわたって前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動させて所望の位置に到達させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記同調・整合回路(22)に供給されているAC信号の大きさおよび位相を測定するステップと、
前記作動部材(28)のうちの少なくとも1つを変位させるための方向を、特にファジー論理を使用して、前記大きさおよび位相から決定するステップと、
を含む、請求項29または30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMRプローブヘッドに関し、また、NMRプローブヘッドを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NMRプロービングでは、強力な静磁場内に試料が置かれる。少なくとも1つのコイルが、試料を受容するために試料チャンバの周りに配置される。コイルは、静磁場に対して直角な動磁場を生成するために使用され、動磁場は、試料における核スピンに静的な場の周りでの歳差運動をさせる。この歳差運動は、コイルによって記録され得る。
【0003】
同調・整合回路(tuning and matching circuit)が、典型的にはコイルの近くに配置され、かつ、コイルの共振を同調させること、および、出力信号の反射を避けるためにインピーダンスを整合させることを目的とする。
【0004】
典型的には、同調・整合回路および/またはコイルは、使用されるべき周波数に対してその特性を同調および整合させるために、機械的に調整可能なコンデンサまたは電気スイッチなどの、機械的に同調可能ないくつかの要素を有する。
【0005】
コイルおよび同調・整合回路は、典型的には、基部上に取り付けられるチューブ内に配置される。基部は、チューブよりも大きい直径を有する。チューブは、強力な磁石の中央開口部に挿入されるが、基部は、その磁石の外側に配置される。
【0006】
同調・整合回路および/またはコイル内の同調可能要素を動作させるために、アクチュエータが必要とされる。典型的には、アクチュエータは、手動で操作可能な歯車および/または基部内に配置された電気モータとして実装される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によって解決されるべき課題は、同調・整合回路内および/またはコイル内の同調可能要素の確実かつ単純な同調および整合を実現する、上記のタイプのNMRプローブヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載のNMRプローブヘッドによって解決される。したがって、プローブヘッドは、以下の構成要素を備える:
- 基部:プローブヘッドのこの部品は、典型的には磁石の外側に配置される。
【0009】
- 基部よりも小さい直径を有するチューブ:チューブは、典型的には磁石に挿入される。
- チューブ内に配置されて試料チャンバを取り囲むコイル:これは、試料を操作するための高周波磁場を生成するコイルであり、また、歳差スピン(precessing spin)の信号を捕捉するコイルである。NMRプローブのタイプに応じて、上記コイルのうちの1つまたは複数が存在し得る。コイルは、単純なコイル、鳥かご状コイル、および当業者に知られた他のタイプのNMRコイル幾何形状を含み得る。
【0010】
- チューブ内に配置されかつコイルに接続される同調・整合回路:この回路は、使用される周波数に信号を同調および整合させるために設けられる。
- 同調・整合回路および/またはコイル内に配置されたいくつかの同調可能要素:これらは、使用される信号にコイルおよび回路を同調および/または整合させるために使用される。同調可能要素は、例えば、調整可能なコンデンサ、調整可能なインダクタンス、および/または電気スイッチを含み得る。
【0011】
- 作動部材により同調可能要素に機械的に接続されたいくつかのアクチュエータ:アクチュエータは、同調可能要素を動作させるために使用され、作動部材は、アクチュエータの運動を同調可能要素に伝える。
【0012】
本発明によれば、アクチュエータのうちの少なくともいくつかは、圧電アクチュエータである。そのようなアクチュエータは、容易にかつ迅速に調整され得る。具体的には、そのようなアクチュエータは、高精度を有することができ、歯車または動力伝達装置を必要とせず、高磁場において動作することができ、かつ、高速であり得る。
【0013】
具体的には、アクチュエータのうちの複数が圧電アクチュエータであるか、さらには全てのアクチュエータが圧電アクチュエータである。
作動部材のうちの少なくとも1つは、アクチュエータとその同調可能要素との間に延在する作動ロッドであり得る。有利には、全ての作動部材が、そのような作動ロッドである。
【0014】
有利には、アクチュエータは、基部と同調・整合回路との間でチューブ内に、すなわち基部自体の外側に配置され、特に完全に配置される。これは、より短い作動部材を使用することを可能とし、それにより、それらの重量が減少され、かつ、より速くより正確な作動が可能になる。
【0015】
好ましい実施形態では、アクチュエータのうちの少なくとも1つ、有利にはアクチュエータの全てが、以下の構成要素を備える:
- チューブに対して固定して配置されたマウント:言い換えれば、マウントは、アクチュエータが作動されたときにチューブに対して移動しない。
【0016】
- マウント上に弾性的に取り付けられた少なくとも1つの駆動ロッド:この文脈において、「弾性的に」とは、有利には、次の段落で説明される圧電素子によりマウントに対して少なくとも0.1μm、特には1μm、特には少なくとも10μm、しかし有利にはわずかに200μmだけ駆動ロッドが弾性的に変位され得るように、理解される。
【0017】
- 駆動ロッドに取り付けられた少なくとも1つの圧電素子:この素子は、例えば、駆動ロッドにおける非対称の周期性の例えば鋸歯型の後退-前進運動を生じさせるように動作され得る。
【0018】
- 駆動ロッド上に配置されたスリップ結合器であって、作動部材のうちの少なくとも1つが接続されるスリップ結合器:この文脈において、スリップ結合器は、駆動ロッド上に摩擦で保持される結合器である。摩擦力は、有利には、駆動ロッドがその非対称の後退-前進軸方向運動の周期を行う際、各周期の第1の部分中(加速度が特定の閾値を上回るとき)には結合器が駆動ロッドに対して滑り、一方で各周期の第2の部分中(加速度が低いとき)には結合器が駆動ロッド上に摩擦で係止されるように、選択される。
【0019】
この設計は、駆動ロッドの設計と作動部材とを切り離すことを可能にし、また、それらをそれぞれの役割に最適化することを可能にする。具体的には、駆動ロッドは、作動部材よりも軽量であり、特には短くあり得、それにより、振動する部品の質量が減少される。
【0020】
具体的には、アクチュエータは、作動部材を圧電素子に対して変位させるように、適合されかつ構成され得る。したがって、圧電素子は、定位置に配置されることが可能であり、一方で、作動部材のみが移動され、これは、移動される構成要素の質量をさらに減少させ、かつ、より高速の調整を可能にする。
【0021】
有利には、NMRプローブヘッドは、アクチュエータ組立体を備え、このアクチュエータ組立体は、上記アクチュエータのうちのいくつかを備える。アクチュエータ組立体は、アクチュエータを共通して保持するフレームを有する。言い換えれば、アクチュエータは、共通のフレームに取り付けられる。これは、よりコンパクトな設計と、より容易な製造とを可能にする。
【0022】
具体的には、フレームは、複数の凹部または開口部を有する第1のフレーム体を備え得る。各駆動ロッドは、凹部または開口部のうちの少なくとも1つの中に保持される。これは、より一層コンパクトな設計を可能にする。
【0023】
向上された安定性のために、フレームは、第1のフレーム体から距離を置いて配置された第2のフレーム体を含むことができ、アクチュエータの駆動ロッドは、2つのフレーム体の間に延在する。
【0024】
フレーム体(すなわち、第1のフレーム体、および/または、もしあれば第2のフレーム体)は、チューブの軸に対して横方向に、特に直角に延在するプレートであってよく、駆動ロッドを受容するための凹部または開口部は、フレーム体の周辺部に配置されてもよい。これは、アクチュエータ組立体での圧電アクチュエータの取付けを単純化する。
【0025】
同調可能要素は、例えば、調整可能なコンデンサ、調整可能なインダクタ、および/または電気スイッチを含み得る。
本発明はまた、そのようなプローブヘッドを動作させるための方法に関する。この方法は、アクチュエータのうちの少なくとも1つを動作させて、そのアクチュエータに接続された作動部材を第1の方向に沿って所与のステップ数にわたって変位させるステップを含む。この所与のステップ数は、作動部材が機械的止め具によって停止されることを確実とするのに十分な大きさである。それぞれの位置は、「端位置」と呼ばれる。これは、位置センサに頼る必要なしに作動ロッドを定められた位置(端位置)まで運ぶことを可能にする。
【0026】
有利には、方法は、所与のステップ数を遂行した後で1つのアクチュエータを動作させて作動部材を上記端位置から圧電アクチュエータの第2のステップ数にわたって第1の方向とは反対の第2の方向に移動させて所望の位置に到達させるステップを、さらに含む。
【0027】
言い換えれば、いったん端位置が確立されると、作動ロッドは、圧電アクチュエータに適切な振動数を与えることにより、任意の所望の位置へ移動され得る。
なおも別の有利な実施形態では、方法は、以下のステップを含む:
- 同調・整合回路に供給されているAC信号の大きさおよび位相を測定するステップ。
【0028】
- 上記作動部材のうちの少なくとも1つを変位させるための方向を、特にファジー論理を使用して、上記大きさおよび位相から決定するステップ。
これは、振幅および位相の組み合わせられた測定により作動部材に必要とされる移動の方向を決定することが可能になり、したがって調整可能な要素をより迅速に調整することが可能になる、という理解に基づく。
【0029】
この文脈において、「振幅および位相」とは、AC信号の振幅および位相を算出することを可能にする実数値の数字の任意の対を表わし、また、この用語は、例えば信号を複素数として表わすときの信号の実部および虚部により、それらの2つの値の明確な決定または暗黙の決定を含む。
【0030】
本明細書において説明される方法は、それぞれのステップを実行するように構成されかつ適合された制御ユニットによって実施され得る。
本発明の以下の詳細な説明への検討がなされれば、本発明はより良く理解されるであろうし、上記で説明された目的以外の目的も明らかになるであろう。この説明は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】NMRプローブヘッドの図である。
図2】チューブが取り除かれた、図1のプローブヘッドの図である。
図3図2の拡大された一部分の図である(図2のセクションA参照)。
図4】チューブのチューブ軸に沿った、図2のプローブヘッドのアクチュエータ組立体の図である。
図5】チューブ軸に対して直角な視野における、図1の駆動組立体の図である。
図6】駆動組立体の3D図である。
図7図6の拡大された一部分の図である(図6のセクションB参照)。
図8】加熱部材を封入するセンタリング部材の簡略化された断面図である。
図9】NMRプローブヘッドのブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
概要:
図1のNMRプローブヘッドは、基部10およびチューブ12を備える。基部10は、基本的に当業者に知られているように、電子回路を受容するためのハウジング14と、プローブヘッドに種々の信号を供給するのに適しておりまたプローブヘッドからの信号を受信するための電気インターフェース16a、16b、16cと、を備える。
【0033】
チューブ12は、有利には円筒形であり、また、チューブ12は、チューブ軸18を有する。
デバイスを動作させるために、チューブ12はNMRデバイスの静磁石内に挿入されるが、基部10はその外側に残る。したがって、チューブ12は、チューブ軸18に対して直角な方向において、基部10よりも小さい直径を有する。
【0034】
典型的には、チューブ軸18に対して直角なチューブ12の直径は、おおよそ40から100mmの間、特に40mmであり、一方で、チューブ軸18に対して直角な少なくとも1つの方向における基部10の対応する直径は、少なくとも2倍の大きさがある。
【0035】
チューブ12は、中空であり、かつ、図2に示されるような様々な構成要素をその中に受容する。
具体的には、チューブ12によって取り囲まれた空間内には、以下の構成要素のうちの少なくとも一部が存在する:
- コイル組立体20、
- 同調・整合回路22、
- アクチュエータ組立体24、
- 作動部材28の組立体26、
- RFシーリング30、
- 取付部材32、および、
- センタリング部材33。
【0036】
コイル組立体20は、例えば図9に示されるように、1つまたは複数のコイル34を備え、また、コイル組立体20は、試料内に磁気パルスを生成するように、また、試料の歳差スピンまたは磁化からの信号を検出するように、構成されかつ適合される。
【0037】
コイル組立体、同調・整合回路:
コイル組立体20は、図9に概略的に示された鳥かご状コイルなどの、1つまたは複数のコイル34を備える。しかし、コイル組立体20は、当業者に知られているような他のタイプのコイルを収容することもできる。
【0038】
コイル組立体20のコイル34は、試料チャンバの外側に配置され、試料チャンバでは、NMRプローブヘッドに取り付けられた保持器内に試料が受容される。図2は、試料チャンバへの侵入開口部35を示す。
【0039】
同調・整合回路22は、コイル組立体20のコイルに近接して、コイルに対して配置される。同調・整合回路22は、コイルの共鳴を同調するために設けられ、かつ、コイルの共振を信号の出力に適合させる。その回路の正確な性質は、使用されるコイル、および、行われる測定の性質に依存する。その例は、例えば米国特許出願公開第2008/0117560号に示されている。
【0040】
同調可能要素:
いくつかの同調可能要素36a~e(参照番号36により共通して示される)が、同調・整合回路22内および/またはコイル34内に配置される。それらは、使用される信号に対してコイル34および回路22を同調および/または整合するために使用される。
【0041】
同調可能要素36は、例えば、調整可能なコンデンサ、調整可能なインダクタンス、および/または電気スイッチを含み得る。例えば、それらは、WO2009/094040、米国特許出願公開第2008/0117560号、および/または米国特許第4694255号で説明されている技術に基づき得る。
【0042】
図2および3の実施形態では、同調可能要素36は、例えば、絶縁シリンダ内に配置された可動電極を有する調整可能なコンデンサであり、例えば米国特許出願公開第2008/0117560号で開示されているようなシリンダの外側表面上に配置された1つまたは複数の静電極を含む。
【0043】
同調可能要素36は、機械的に調整または動作され得る。この目的のために、同調可能要素36のそれぞれは、機械的に変位可能な少なくとも1つの作動部材28に接続される。
【0044】
作動:
図2および3の実施形態では、作動部材は、作動ロッドとして実装される。
作動部材28は、作動組立体26を一緒に形成する。
【0045】
作動部材28は、チューブ12のチューブ軸18に平行に延在する。
アクチュエータ組立体24は、作動部材28を介して同調要素36に接続された複数のアクチュエータ38を備える。
【0046】
RFシーリング30は、基本的に、アクチュエータ組立体24のアクチュエータ38と同調・整合回路22との間に配置された金属体である。
信号漏れを最小限に抑えるために、また、アクチュエータを反射電力から保護するために、作動部材28は、非金属材料で作られ、かつ、RFシーリング30内の開口部40を貫通して延在する。
【0047】
アクチュエータ組立体24の設計は、以下でより詳細に説明される。
取付:
センタリング部材33は、基部10に接続され、かつ、チューブ12に沿って軸方向に延在する。コイル組立体20(したがって、コイル34)、同調・整合回路22、アクチュエータ組立体24、RFシーリング30、および取付部材32は全て、センタリング部材33上で中心に配置される。
【0048】
取付部材32は、チューブ12に機械的に接触し、かつ、チューブ12をチューブ軸18上で中心に配置する。
有利には、また、チューブ12内への嵌合のために、アクチュエータ組立体24などのチューブ12内の全ての構成要素は、チューブ軸18に対して直角な全方向において、100mm未満の直径、特に40mm未満の直径を有する。
【0049】
アクチュエータ組立体およびアクチュエータ:
アクチュエータ組立体24は、述べられたように、いくつかのアクチュエータ38を備える。その設計は、図4~7から最も良く理解される。
【0050】
アクチュエータ組立体24は、第1のフレーム体42aおよび第2のフレーム体42bを有するフレームを備える。アクチュエータ38は、フレーム42a、42b内に共通して保持される。
【0051】
第1のフレーム体42aおよび第2のフレーム体42bは、間隔をおいて、かつ、センタリング部材33上で中心に配置される。第2のフレーム体42bよりも整合・同調回路22の近くに位置する第1のフレーム体42aは、作動部材28が貫通して延在する開口部または凹部44を備える(図3参照)。
【0052】
図7で最も良く分かるように、各アクチュエータ38は、以下のものを備える:
- チューブ12に固定して接続されたマウント46(「固定してとは、アクチュエータの動作中にチューブ12がマウントに対して移動しないという意味である)。
【0053】
- マウント46上に弾性的に取り付けられた駆動ロッド48。
- 駆動ロッド48に取り付けられた少なくとも1つの圧電素子50。
- 駆動ロッド上に配置されたスリップ結合器52。スリップ結合器52は、作動部材28のうちの1つに接続される。
【0054】
示された実施形態では、マウント46は、駆動ロッド48を第1のフレーム体42aおよび第2のフレーム体42bにそれぞれ取り付けるための第1の弾性保持器46aおよび第2の弾性保持器46bを備える。
【0055】
例えば、弾性保持器46a、46bは、ポリマーまたは金属ばねなどの弾性材料から作られ得る。
有利には、弾性保持器46a、46bは、50から60の間のショアA硬度を有する接着剤によって形成されてもよく、または、弾性保持器46a、46bは、例えばエラストマ体であってもよい。
【0056】
第1および第2の弾性保持器46a、46bは、それらの間に延在する駆動ロッド48のセクション48aにより、互いに距離を置いて配置される。スリップ結合器52は、このセクション48aに取り付けられる。
【0057】
第1および第2のフレーム体42a、42bは、スリップ結合器52の、したがって作動部材28の移動を制限する、機械的止め具56a、56bを形成する。
止め具56a、56bは、スリップ結合器52と直接に相互作用してもよく、または、示されるように、スリップ結合器52に取り付けられたスペーサ57と相互作用してもよい。
【0058】
有利には、異なる長さのスペーサ57を有する少なくとも2つのアクチュエータ38が存在する。これは、異なるサイズの同調可能要素に対して同じ基本アクチュエータ設計を使用することを可能にする。
【0059】
示された実施形態では、駆動ロッド48の両端に取り付けられた第1および第2の圧電素子50が存在し、これは、駆動ロッド48内でより強力な振動を得ることを可能にする。
【0060】
各圧電素子50は、圧電材料の本体58と、本体58に貼り付けられた電極60とを備える。電極60への電圧の印加に応じて、本体58は、その重心が駆動ロッド48の軸に沿ってオフセットするように変形する。したがって、電圧の印加は、駆動ロッド48の軸に沿って作用して駆動ロッド48をその長手軸に沿って加速させる力を生成する。マウント46における弾性の取付けは、それぞれの長手方向移動を、それらが十分に小さい限り、可能にする。
【0061】
例えば、非対称の衝撃係数を有する鋸歯状電圧または方形波電圧を電極60に印加することにより、駆動ロッド48は、その長手軸に沿って後退-前進運動を行うように励起され得、2つの運動は、異なる加速率を有する。例えば、後退運動は、前進運動よりも低い加速度を有し得る。駆動ロッド48上のスリップ結合器52のグリップを適切に寸法決めすることにより、スリップ結合器52は、より速い加速度での運動中にはスリップするがより低い加速度での運動中には摩擦係止されたままであるように作られることが可能であり、これは、スリップ結合器52を段階的に移動させることを可能にし、したがって、作動部材28を単一の方向に沿って変位させることを可能にする。
【0062】
このタイプの要素は、例えばWO2005/083874で開示されている。
図9に示されるように、制御ユニット64および電気ドライバ66が、圧電素子50に印加されるべき電圧を生成するために使用され得る。
【0063】
図6に示されるように、アクチュエータ組立体24は、制御ユニット64からの多重チャネル供給ケーブルをアクチュエータ組立体24に接続しかつケーブルからの信号を個々の圧電素子50に分配するためのプラグ-インターフェースを提供する、プリント回路基板などのインターフェースマウント68を備え得る。
【0064】
図7で最も良く分かるように、弾性保持器46a、46bは、一方の側のスリップ結合器52(および、駆動ロッド48のセクション48a)と他方の側の圧電素子50との間に配置される。
【0065】
弾性保持器46a、46bは、第1および第2のフレーム体42a、42b内の凹部または開口部70内に配置される。
有利には、アクチュエータのより容易な取付けのために、第1のフレーム体42aおよび/または第2のフレーム体42bの外側縁部72(すなわち、チューブ軸2と反対の側を向いた縁部)から内方に延在する凹部70が設けられる。この場合、第1のフレーム体42aおよび/または第2のフレーム体42bは、チューブ軸18に対して横方向に延在するプレートであり、具体的には、また図示のように、チューブ軸18に対して直角に延在するプレートである。
【0066】
図6で最も良く分かるように、様々なアクチュエータの駆動ロッド48は、有利には、チューブ軸18の周りに延在する円上に配置され、これは、コンパクトな設計を可能にする。
【0067】
さらに、また、同じ理由のために、駆動ロッド48は、有利には、チューブ軸18に平行に配置される。
温度制御:
プローブヘッドは、試料チャンバ内の温度を制御するための温度制御装置を備える。これは、図8に示されている。
【0068】
図示のように、センタリング部材33は、加熱部材84の周りに配置される管状導管を形成する。加熱部材84は、温度被制御空気導管89内に配置された加熱器88を取り囲むチューブ86を備える。温度被制御空気導管89は、基部10から試料チャンバ88まで延在する。
【0069】
チューブ86は、(図8に示されるように)中実であってよく、または、チューブ86は、例えば、改善された断熱のための二重壁デュワー容器であってもよい。
チューブ86は、基部10の側において、温度被制御空気入口90に接続され(図1および2参照)、この空気入口90を通じて、温度被制御空気92(図8)が、温度被制御空気導管89内に供給される。この温度被制御空気は、加熱器88により、定められた温度まで加熱され、この温度は、例えば、-150℃から+150℃の間の範囲内であり得る。試料チャンバ88内で低温が望ましい場合、温度被制御空気は、プローブヘッドに供給される前に望ましい温度を下回る温度まで冷却され、次いで、加熱部材84は、その空気の温度を微調整するために使用され得る。
【0070】
加熱部材84によって生成された熱がプローブヘッドの他の構成要素を温めるのを防ぐために、および/または、温度被制御空気が冷却された場合の凝結を防ぐために、センタリング部材33は、加熱部材84および温度被制御空気導管89の周りに、絶縁空気導管94を形成する。さらに、基部10は、乾いた絶縁空気98(図8)を絶縁空気導管94内に供給するための絶縁空気入口96を備える(図1および2参照)。絶縁空気98は、空気または窒素などの任意の適切な気体であってよい。
【0071】
絶縁空気導管94は、アクチュエータ38および/またはプローブヘッドの他の構成要素を冷却するために、図5に示されるように、特にアクチュエータ38の位置において例えばアクチュエータから径方向内向きに、側方開口部100を備え得る。
【0072】
プローブヘッドは、試料チャンバ88内を所望の温度に維持するために、試料チャンバ88内に配置された温度センサと、加熱器88を動作させる温度制御装置とをさらに備える。
【0073】
加えて、プローブヘッドは、具体的には-100℃を下回る極低温までコイル34および同調・整合回路22を冷却し、それによりNMR感度を強化するように、適合されかつ構成され得る。
【0074】
この目的のために、プローブヘッドは、例えば、それらの構成要素を冷却するための冷却された液体または気体を熱交換器に供給する冷却導管と、それらを熱的に絶縁するための絶縁材と、を備え得る。場合により、向上された断熱のためにそれらの構成要素を避難させる手段の他に、温度センサおよび温度制御装置が設けられ得る。それぞれの要素は、図9の参照番号102の下に概略的に示されている。
【0075】
動作方法:
上述のように、非対称の前進-後退運動を行うように駆動ロッド48を励起させてスリップ結合器52を駆動ロッド48に沿って変位させるために、適切な信号が使用され得る。スリップ結合器52の運動は、止め具56a、56bによって制限される。
【0076】
これは、スリップ結合器52を、したがって作動部材28を、位置検出器がない場合でも所望の位置に正確に位置決めするために利用され得る。
そうするために、制御ユニット64は、アクチュエータ38のうちの少なくとも1つを動作させて、そのアクチュエータ38に接続された作動部材28を第1の方向に沿って所与のステップ数にわたって変位させることができる。所与のステップ数は、作動部材28が端位置において機械的止め具56a、56bのうちの一方によって停止されることを確実にするのに十分なものである。
【0077】
これは、たとえ位置検出器が利用可能でない場合でも、作動部材28を定められた位置に運ぶことを可能にする。
例えば、作動部材28の最大変位量がMであり、単一のステップにおいて得られる変位量がdであるのならば、所与のステップ数nは、少なくともM/dである。
【0078】
所与のステップ数の遂行後、制御ユニット64は、所望の位置に到達させるために、アクチュエータを動作させて、作動部材28をアクチュエータ38の第2のステップ数にわたって端位置から第1の方向とは反対の第2の方向に移動させることができる。この第2のステップ数は、必ずしも同調および整合が完全である正確な位置までアクチュエータを運ぶことができなくてもよい。むしろ、制御ユニット64はその後で、同調・整合回路を以下で説明されるように微調整することができる。
【0079】
図9に示されるように、プローブヘッドは、以下の構成要素をさらに備え得る:
- 同調・整合回路22にAC信号を供給するための信号線74。
- 信号線74上の信号の大きさおよび位相を検出するための、回路網解析器などの検出器76。
【0080】
- 同調可能要素を調整してデバイスを同調および/または整合させるために作動部材のうちの少なくとも1つを変位させるための方向を上記大きさおよび位相から決定するための、特にファジー論理ユニット80、81である解析器。
【0081】
そのような整合および同調方法の詳細は、米国特許第5842154号で説明されている。この方法は、信号線74上の信号の位相および大きさを同時に知ることにより同調可能要素の調整の方向を決定することが可能になるという理解に基づく。
【0082】
有利には、また米国特許第5842154号で説明されているように、解析器は、変位の方向を決定するために、ファジー化ユニット80とルール評価・非ファジー化ユニット81とを有する、ファジー論理ユニットを備える。
【0083】
注記:
上記の実施形態では、作動部材28は、作動ロッドであり、すなわち、アクチュエータ38を同調可能要素36に接続する剛体ロッドである。
【0084】
あるいは、作動部材28は、例えば、有利にはガラス繊維などの非金属材料で作られたボーデンケーブルまたはボーデンワイヤであり得る。
上記の実施形態では、2つの圧電素子50が、各駆動ロッド48に接続される。必要とされる機械的振動の強さによっては、駆動ロッド48ごとに単一の圧電素子50で十分な場合がある。
【0085】
述べたように、同調可能要素36は、コイルの一部分および/または同調・整合回路22の一部分であり得る。具体的には、同調可能要素36は、全て、同調・整合回路22の一部分であり得る。
【0086】
いかなる場合においても、本明細書において示された設計は、多数の同調可能要素をチューブ12内に組み入れること、および、それらを迅速かつ確実に調整することを可能にする。
【0087】
上記の実施形態では、全てのアクチュエータは、圧電アクチュエータである。しかし、アクチュエータのうちのいくつかは、電気式アクチュエータ(すなわち、電磁モータに基づくアクチュエータ)、空気圧式アクチュエータ、および液圧式アクチュエータの群のうちの少なくとも1つなどの、他のタイプのアクチュエータを含むこともできる。
【0088】
とはいえ、少なくとも複数のアクチュエータが圧電アクチュエータであることが、有利である。
本発明の目下好ましい実施形態が示されかつ説明されたが、本発明は、そのような実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲に記載の範囲において他の方法で様々に具現化されかつ実践され得ることが、はっきりと理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9