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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220601BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021214678
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2020182205の分割
【原出願日】2012-02-13
(65)【公開番号】P2022037218
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-28
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599029486
【氏名又は名称】宮下 隆
(73)【特許権者】
【識別番号】511276622
【氏名又は名称】ナフコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隆
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/122116(WO,A1)
【文献】特開2007-238165(JP,A)
【文献】特開2010-036969(JP,A)
【文献】特開2001-270569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム同士をシールして形成したシール部を有し、内部に発生した蒸気圧により前記シール部が剥離して蒸気を外部へ放出する包装袋であって、
前記シール部の一部を内側方向に湾曲させて突出した略V字形状の蒸気抜きシール部と、
前記蒸気抜きシール部の外側に形成された未シール部と、を有し、
前記未シール部は、シールされない前記フィルム間の空隙が外部に連通する連通部を有し、
前記蒸気抜きシール部と前記未シール部とは、前記フィルム同士を折り曲げ重ね合わせて形成された合掌部に有し、
前記包装袋が膨張した際に前記蒸気抜きシール部が剥離して開口した領域と、前記未シール部と、で構成する第1の蒸気放出部と、
前記未シール部に形成された円弧状の切込からなる第2の蒸気放出部とを有し
前記シール部は、前記蒸気抜きシール部に連結された一対の帯状のエンドシール部を備え、
前記未シール部は、前記蒸気抜きシール部の前記略V字形状の外縁に沿った突出形状線と、前記突出形状線の両端がそれぞれ前記一対の帯状のエンドシール部の外縁に連結される一対の連結点を結んだ連結線とによって囲まれる多角形未シール部と、前記エンドシール部及び前記多角形未シール部の外側にシールせずに形成した帯状未シール部を備え
前記多角形未シール部の全体において前記多角形未シール部の幅が前記連結線に向かって広がっており、
第2の蒸気放出部は、前記多角形未シール部内にのみ設けられる、包装袋。
【請求項2】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記合掌部は、前記包装袋の一縁側に向かって倒されており、
前記包装袋は、前記一縁側がヒートシールされており、前記一縁と反対側の縁である他縁側が開口している、包装袋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の包装袋であって、
前記蒸気抜きシール部は、前記包装袋が膨張した状態で前記包装袋内の内容物の上面レベルよりも上位置に配置される、包装袋。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の包装袋であって、
第1及び第2の蒸気放出部は、前記包装袋が膨張した状態で、前記包装袋内の内容物の端よりも前記包装袋の一縁に近い位置に配置される、包装袋。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の包装袋であって、
前記切込の内側方向の先端が、前記略V字形状の開始点どうしを結ぶ線よりも内側にあり、
前記蒸気抜きシール部は、一対の帯状のエンドシール部に挟まれており、
前記一対の帯状のエンドシール部のそれぞれは、前記包装袋の側縁をシールするサイドシール部に連結されており、
前記開始点は、前記一対の帯状のエンドシール部のそれぞれの内側の境界線が前記蒸気抜きシール部と交わる点である、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物、固形物、あるいはこれらの混合物からなるレトルト食品等の内容物を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱した際に、その包装袋の内部に発生する蒸気を外部に放出すると共に、蒸気を外部に放出する際に音の発生を抑制することが可能な包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品等の内容物を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱すると、その加熱に伴って内容物から発生する蒸気により包装袋の内部の圧力が上昇し、包装袋が破裂して内容物が飛散するおそれがある。
【0003】
このため、包装袋内部の圧力上昇を回避するための機構を備えた包装袋がある(例えば、特許文献1:特開2002-80072号公報、特許文献2:特開2003-182779号公報参照)。
【0004】
上記特許文献1では、電子レンジを加熱調理した際の圧力上昇時に応力を集中させるための湾曲形状のヒートシール(蒸気抜きシール部)を設け、その蒸気抜きシール部を優先的に剥離させることでそこから蒸気を外部に放出している。蒸気抜きシール部は、包装袋の内側よりの湾曲形状である内側湾曲形状と、包装袋の外側よりの湾曲形状である外側湾曲形状と、の間の領域をシールした部分であり、且つ、包装袋の内側方向に向かって湾曲状に突出させた部分である。
【0005】
上記特許文献2では、四方を囲んだシール部内に易蒸通手段である切欠または切込みを施し、シール部のシール後退と易蒸通手段とで蒸気を外部に放散している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-80072号公報
【文献】特開2003-182779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2は、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出することで、包装袋内部の圧力上昇を回避することにしている。例えば、上記特許文献1は、蒸気抜きシール部を優先的に剥離させ、そこから蒸気を外部に放出している。また、上記特許文献2は、シール部内に施した易蒸通手段から蒸気を外部に放散している。
【0008】
しかし、上記特許文献1、2は、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に「ピー」という音が鳴り、使用者を驚かせてしまう場合がある。
【0009】
このようなことから、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に音が発生しない包装袋の開発が必要視されている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に、音の発生を抑制することが可能な包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、フィルム同士をシールして形成したシール部を有し、内部に発生した蒸気圧により前記シール部が剥離して蒸気を外部へ放出する包装袋であって、前記シール部の一部を内側方向に湾曲させて突出した略V字形状の蒸気抜きシール部と、前記蒸気抜きシール部の外側に形成された未シール部と、を有し、前記未シール部は、シールされない前記フィルム間の空隙が外部に連通する連通部を有し、前記蒸気抜きシール部と前記未シール部とは、前記フィルム同士を折り曲げ重ね合わせて形成された合掌部に有し、前記包装袋が膨張した際に前記蒸気抜きシール部が剥離して開口した領域と、前記未シール部と、で構成する第1の蒸気放出部と、前記未シール部に形成された切込または切欠からなる第2の蒸気放出部とを有し、第2蒸気放出部は、前記フィルムの対向する部位のそれぞれに設けられた一対の前記切込または切欠であり、前記包装袋は、第1及び第2蒸気放出部以外の第3蒸気排出部を備え、第3蒸気放出部は、前記蒸気抜きシール部が剥離したときに前記蒸気を外部に放出するように構成される、ことを特徴とする包装袋が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の包装袋100の構成例を示す図であり、(a)は、開口4を密閉する前の包装袋100の斜視図であり、(b)は、包装袋100に内容物200を収容して開口4をヒートシールして密閉した包装袋100の斜視図である。
図2】蒸気抜きシール部7及び未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)の構成例を示す図である。
図3】本実施形態の包装袋100の機能を説明するための図であり、(a)は、図1(b)の包装袋100を電子レンジで加熱して膨張した状態を示す包装袋100の側面図であり、(b)は、高圧膨張時に蒸気抜きシール部7の先端70が開口して第1の蒸気放出部101が形成された状態を示す図である。
図4】第2の実施形態の包装袋100の構成例を示す図である。
図5】第3の実施形態の包装袋100の構成例を示す図である。
図6図5に示す蒸気抜きシール部7及びポイントシール部103周辺のA-A'断面構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本実施形態の包装袋100の概要>
まず、図1図3を参照しながら、本実施形態における包装袋100の概要について説明する。
【0015】
本実施形態の包装袋100は、図1に示すように、上面部2(2a,2b)を構成するフィルムと、下面部1を構成するフィルムと、の周縁部をシールして形成したシール部3,5,10,8a,8bを有する包装袋100である。
【0016】
本実施形態の包装袋100は、シール部3,5,10,8a,8bの一部8aを包装袋100の内側方向に向かって湾曲状に突出させて形成した蒸気抜きシール部7と、蒸気抜きシール部7と隣接し蒸気抜きシール部7の外側にシールせずに形成した未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)と、を有して構成する。
【0017】
本実施形態の包装袋100は、包装袋100の内部圧力が上昇して包装袋100が膨張した際に、蒸気抜きシール部7が剥離して開口し、該開口した領域と未シール部9(9a,9b)とで包装袋100内の蒸気を外部に放出する第1の蒸気放出部101(図3参照)が形成される。また、未シール部9(本実施形態では、多角形未シール部9a)に第2の蒸気放出部102が形成されている。
【0018】
このため、本実施形態の包装袋100は、図3(a)に示すように、包装袋100内部で発生した蒸気を少なくとも第1の蒸気放出部101と第2の蒸気放出部102とから外部に放出し、蒸気を少なくとも2次元方向で外部に放出することができる。その結果、包装袋100内部で発生した蒸気を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【0019】
従来の包装袋は、包装袋内部で発生した蒸気を1次元方向で外部に放出していたため、音が発生し易い構造になっている。これに対し、本実施形態の包装袋100は、包装袋100内部で発生した蒸気を少なくとも2次元方向(第1の蒸気放出部101,第2の蒸気放出部102)で外部に放出することができるため、音の発生を抑制することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の包装袋100について詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
<包装袋100の構成例>
まず、図1図3を参照しながら、本実施形態の包装袋100の構成例について説明する。図1は、本実施形態の包装袋100の構成例を示す図であり、図1(a)は、開口4を密閉する前の包装袋100の斜視図であり、図1(b)は、包装袋100に内容物200を収容して開口4をヒートシールして密閉した包装袋100の斜視図である。図2は、図1に示すフィルム合掌部6に設けられる蒸気抜きシール部7と未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)との構成例を示す図である。図3は、図1(b)に示す包装袋100を電子レンジで加熱して膨張した状態を示す包装袋100の構成例を示し、図3(a)は、包装袋100の側面図であり、図3(b)は、蒸気抜きシール部7の先端70が開口して第1の蒸気放出部101が形成された状態を示す図である。
【0021】
本実施形態の包装袋100は、図1に示すように、下面部1と、下面部1の開口4側に重なる開口側上面部2aと、下面部1の奥行側に重なる奥行側上面部2bと、を有して構成する。本実施形態の包装袋100は、開口側上面部2aと奥行側上面部2bとで上面部2を構成している。
【0022】
下面部1、開口側上面部2a、奥行側上面部2bを構成するフィルムとしては、ヒートシールした際にフィルム同士が溶着するフィルムであれば、あらゆるフィルムが適用可能であり、例えば、通常の包装袋に用いられるヒートシール性を有するプラスチックフィルムが適用可能である。プラスチックフィルムを構成する材料としては、例えば、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂からなる単層のフィルム、シート類や、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を他の熱可塑性樹脂等と積層した多層フィルム等が挙げられる。
【0023】
ヒートシール性の良好な材料としては、例えば、公知の低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン系不飽和カルボン酸乃至その無水物でグラフト変性されたオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂、比較的低融点乃至低軟化点のポリアミド乃至コポリアミド樹脂、ポリエステル乃至コポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が挙げられる。
【0024】
また、積層する他のプラスチック材料としては、各種バリアフイルムを使用することができる。なお、これらの熱可塑性樹脂との積層フィルムを用いる場合は、融点の低い樹脂などヒートシール性の良好な熱可塑性樹脂層同士が内面となるようにヒートシールすることが好ましい。
【0025】
本実施形態の包装袋100は、下面部1と開口側上面部2aとの両側縁をヒートシールしてサイドシール部3の一部を形成している。また、下面部1と奥行側上面部2bとの三方の側縁をヒートシールしてサイドシール部3の一部とエンドシール部5とを形成している。また、開口側上面部2aと奥行側上面部2bとを折り返して重ね合わせてヒートシールしてフィルム合掌部6を形成している。
【0026】
フィルム合掌部6は、フィルム合掌部6の長手方向の中央部に、包装袋100の内側方向に向かって湾曲状に突出した蒸気抜きシール部7を有しており、また、その蒸気抜きシール部7の両側にフィルム合掌部6の長手方向の縁に沿って帯状のエンドシール部8a,8aを有している。また、フィルム合掌部6の短手方向の縁に沿って帯状のサイドシール部8b,8bを有している。蒸気抜きシール部7と帯状のエンドシール部8aと帯状のサイドシール部8bとは開口側上面部2aと奥行側上面部2bとを重ね合わせてヒートシールした部分であり、蒸気抜きシール部7と帯状のエンドシール部8aと帯状のサイドシール部8bとが連結している。本実施形態では、帯状のエンドシール部8aと帯状のサイドシール部8bとを総称して帯状シール部8a,8bとして説明する。
【0027】
フィルム合掌部6は、蒸気抜きシール部7の外側に未シール部9を有している。未シール部9は、開口側上面部2aと奥行側上面部2bとを重ね合わせてヒートシールしていない部分で形成する。未シール部9は、蒸気抜きシール部7に沿って形成する多角形未シール部9aと、多角形未シール部9aに連結した帯状未シール部9bと、を有して構成する。帯状未シール部9bは、帯状のエンドシール部8aに沿って形成されている。
【0028】
蒸気抜きシール部7は、図2に示すように、包装袋100の内側方向に向かって湾曲状に突出させた略V字形状で構成し、蒸気抜きシール部7の略V字形状を開始する2点の開始点71,71は、帯状のエンドシール部8aと連結している。蒸気抜きシール部7の略V字形状の先端70は、開始点71,71同士を結んだ線より袋内側方向に位置している。本実施形態の蒸気抜きシール部7は、2点の開始点71,71同士を結んだ線より包装袋100の内側方向の部分で構成する。
【0029】
また、未シール部9を構成する多角形未シール部9aは、蒸気抜きシール部7の略V字形状に沿った突出形状線9a1と、その突出形状線9a1と帯状未シール部9bとが連結する連結点91,91同士を結んだ連結線9a2と、で区画された領域で構成する。多角形未シール部9aの突出形状線9a1の先端90は、その突出形状線9a1を開始する2点の連結点91,91同士を結んだ線より袋内側方向に位置している。未シール部9を構成する帯状未シール部9bは、多角形未シール部9aに連結し、帯状のエンドシール部8aに沿った形状で構成する。
【0030】
本実施形態の蒸気抜きシール部7は、未シール部9と隣接しない包装袋100の内側寄りの内側湾曲形状7a1と、未シール部9と隣接する包装袋100の外側寄りの外側湾曲形状(突出形状線9a1に相当)と、で挟まれた領域をヒートシールして形成しており、少なくともV字形状を開始する2点の開始点71,71間においてシールの幅が同一になっている。このため、包装袋100の内部圧力が上昇し、包装袋100が膨張した際に、図3(b)に示すように、蒸気抜きシール部7の先端70側から剥離し、蒸気抜きシール部7の先端70からV字形状を開始する2点の開始点71,71同士を結んだ線上まで開口する。そして、その開口した領域と未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)とで包装袋100内の水蒸気等を外部に放出する第1の蒸気放出部101(図3参照)が形成される。また、多角形未シール部9aには、第2の蒸気放出部102が形成されている。第2の蒸気放出部102は、多角形未シール部9aを構成する2つのフィルム(開口側上面部2a,奥行側上面部2b)の両方に形成されており、図3(a)に示すように、第1の蒸気放出部101から水蒸気等が外部に放出される方向と別方向に第2の蒸気放出部102から水蒸気等が外部に放出される。
【0031】
これにより、本実施形態の包装袋100は、包装袋100内部の水蒸気等を2次元方向で外部に放出することができる。その結果、包装袋100の内部圧力が上昇し、包装袋100が膨張しても、少なくとも第1の蒸気放出部101と第2の蒸気放出部102とから包装袋100内の水蒸気等を外部に放出できるため、包装袋100を破裂させないようにすることができる。また、包装袋100内部で発生した水蒸気等を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【0032】
なお、多角形未シール部9aに形成される第2の蒸気放出部102の形状は、特に限定せず、包装袋100の内部の水蒸気等を外部に放出することが可能であれば、任意の形状で構成することが可能であり、打ち抜き加工などにより形成される。例えば、第2の蒸気放出部102は、円弧、直線、V字、U字等の切込や、円、三角、四角、台形、多角形等の切欠で構成することが可能である。なお、直線形状ではなく、多角形状や円形状とすることで、蒸気の単位時間に抜ける量が多くなるため好ましい。また、本実施形態では、多角形未シール部9aを構成する開口側上面部2aと奥行側上面部2bとの両方に同一形状の第2の蒸気放出部102を形成しているが、開口側上面部2aあるいは奥行側上面部2bの何れかのみに形成しても良いし、また、各々別形状の第2の蒸気放出部102を形成することも可能である。
【0033】
第1の蒸気放出部101を形成する蒸気抜きシール部7は、フィルム合掌部6が上面部2に設けられているため、包装袋100内の内容物200の上面よりも上位置となる。なお、フィルム合掌部6は、包装袋長手方向において、中央より外側に設けられることが好ましい。これにより、水蒸気等による内圧上昇時に蒸気抜きシール部7により圧力が集中し易くなり、開封性が良好となる。また、サイドシール3,3のフィルム合掌部6側近傍、好ましくは、フィルム合掌部6よりも内側に、加熱及び加圧調理後に包装袋100を開封するためのノッチ11,11が設けられている。本実施形態の包装袋100は、ノッチ11,11から包装袋100を開封し、内容物200を包装袋100から取り出すことになる。
【0034】
本実施形態の包装袋100は、図1(a)に示す包装袋100の開口4から図1(b)に示すように内容物200を収容した後に、開口4の端縁をシールしてトップシール部10を形成し、包装体100を密閉する。
【0035】
図1(b)に示す密閉状態の包装袋100を電子レンジで加熱すると、包装袋100内の水蒸気等が高温及び高圧になり、包装袋100が膨張する。すると、図3(a)に示すように、下面部1と上面部2とで構成する包装袋100の本体部分の垂直断面が円形になるように膨張すると共に、フィルム合掌部6の蒸気抜きシール部7,帯状のエンドシール部8a,帯状のサイドシール部8bで区画された空間が膨張する。これにより、フィルム合掌部6を構成する蒸気抜きシール部7の先端70の部分に力が集中的に加わり、図3(b)に示すように、蒸気抜きシール部7の先端70からヒートシールの剥離が発生し、蒸気抜きシール部7の先端70からV字形状を開始する2点の開始点71,71同士を結んだ線上まで開口し、その開口した領域と未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)とで第1の蒸気放出部101が形成される。これにより、第1の蒸気放出部101から包装袋100内で発生した水蒸気等を外部に放出することができる。また、多角形未シール部9aに形成された第2の蒸気放出部102からも水蒸気等を外部に放出することができる。これにより、本実施形態の包装袋100は、包装袋100内部の水蒸気等を2次元方向で外部に放出することができる。
【0036】
なお、本実施形態の包装袋100は、第1の蒸気放出部101を形成する蒸気抜きシール部7を、包装袋100内の内容物200の上面レベルより上位置となるフィルム合掌部6に設けているため、包装袋100内の内容物200の吹きこぼれを防止できると共に、包装袋100内の内容物200の漏れを防止することができる。
【0037】
また、フィルム合掌部6の蒸気抜きシール部7,帯状のエンドシール部8a,帯状のサイドシール部8bで区画された空間の膨張は、下面部1と上面部2とで構成する包装袋100の本体部分の膨張の上に重なっており、且つ、蒸気抜きシール部7の両端の帯状のエンドシール部8aが剥離せずに残るため、上記区画された空間は、蒸気抜きシール部7の開始点71,71で対称的に盛り上がり、これがフィルム合掌部6を構成している2枚のフィルム(開口側上面部2a,奥行側上面部2b)の中央部の両側が持ち上がろうとする応力として作用し、第1の蒸気放出部101を構成する未シール部9(9a,9b)が開口し、包装袋100内で発生した水蒸気等を外部に放出することになる。このため、包装袋100内に多量の内容物200が存在しても、高圧蒸気を逃がす第1の蒸気放出部101を構成する未シール部9が十分に大きく高い位置に確保されるため、内容物200の吹きこぼれを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態の開口後の包装袋100は、その開口側を下に向けた場合に、蒸気抜きシール部7の開口部分が閉じ、内容物200の漏れを防止する安全弁として機能することができる。その結果、加熱及び加圧調理後の包装袋100を電子レンジから安全に取り出すことができる。
【0039】
なお、本実施形態の包装袋100において、連結線9a2は、多角形未シール部9aの形状を説明するために便宜的に設けただけであり、実際の包装袋100には設けられていない。また、本実施形態の包装袋100において、多角形未シール部9aと帯状未シール部9bとは連結線9a2で区画されているのではなく一体化しており、連結線9a2は、水蒸気等を外部に放出する放出口を構成する部分となっている。
【0040】
<本実施形態の包装袋100の作用・効果>
このように、本実施形態の包装袋100は、図2に示すように、包装袋100の内側方向に向かって湾曲状に突出した蒸気抜きシール部7と、その蒸気抜きシール部7と隣接し蒸気抜きシール部7の外側にシールせずに形成した未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)と、を有し、包装袋100の内部圧力が上昇して包装袋100が膨張した際に、図3(b)に示すように、蒸気抜きシール部7が開口し、該開口した領域と未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)とで第1の蒸気放出部101が形成される。また、未シール部9(本実施形態では、多角形未シール部9a)に第2の蒸気放出部102が形成されている。
【0041】
本実施形態の包装袋100は、包装袋100内部で発生した水蒸気等を、少なくとも第1の蒸気放出部101と第2の蒸気放出部102とから外部に放出し、水蒸気等を少なくとも2次元方向で外部に放出することができる。その結果、外部へ多量の蒸気を放出することができ、包装袋100内部で発生した水蒸気等を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【0042】
なお、上述した本実施形態の包装袋100の多角形未シール部9aの先端90側を構成する突出形状線9a1は、図2に示すように、蒸気抜きシール部7の先端70側を構成する内側湾曲形状7a1と同一形状で構成し、蒸気抜きシール部7のシール幅を一定にしている。しかし、蒸気抜きシール部7のシール幅の変動量が所定の範囲内であれば、多角形未シール部9aの突出形状線9a1は、蒸気抜きシール部7の内側湾曲形状7a1と同一形状で構成する必要はなく、蒸気抜きシール部7の内側湾曲形状7a1と略同一形状で構成することも可能である。なお、略同一形状とは、内側湾曲形状7a1と若干異なる形状を含むことを意味する。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0044】
第1の実施形態のフィルム合掌部6の帯状のエンドシール部8aは、図2に示すように、矩形形状で構成し、蒸気抜きシール部7の開始点71からフィルム合掌部6の長手方向の端部に向かって帯状のエンドシール部8aの幅が一定となるように構成している。
【0045】
第2の実施形態の帯状のエンドシール部80aは、図4に示すように、テーパ形状で構成し、蒸気抜きシール部7の開始点71からフィルム合掌部6の長手方向の端部に向かって帯状のエンドシール部80aの幅γが広くなるように構成する(γ1<γ2)。
【0046】
これにより、フィルム合掌部6の蒸気抜きシール部7,帯状のエンドシール部80a,帯状のサイドシール部8bで区画された空間が膨張した際に、第1の実施形態よりも蒸気抜きシール部7の先端70の部分に力を局所的に加えることができる。その結果、蒸気抜きシール部7を第1の実施形態よりも容易に剥離することができる。
【0047】
なお、本実施形態の包装袋100は、帯状のエンドシール部80aをテーパ形状で構成するため、帯状のエンドシール部80aのヒートシール領域が第1の実施形態よりも多くなってしまう。このため、帯状のエンドシール部80aが形成される領域内に非シール部80bを構成している。これにより、帯状のエンドシール部80aをヒートシールした際に、帯状のエンドシール部80aの領域内で発生した気泡を非シール部80bで吸収することができ、また、しわなどを抑制することができるため、安定したシール強度を維持することができる。
【0048】
<本実施形態の包装袋100の作用・効果>
このように、本実施形態の包装袋100は、蒸気抜きシール部7の両端に連結する帯状のエンドシール部80aの幅γは、蒸気抜きシール部7の両端の開始点71,71の位置から包装袋100の側部に向かってテーパ状に広げて構成する(γ1<γ2)。これにより、第1の実施形態よりも蒸気抜きシール部7の先端70の部分に力を局所的に加えることができる。その結果、蒸気抜きシール部7を第1の実施形態よりも容易に剥離することができる。
【0049】
また、帯状のエンドシール部80aの領域に非シール部80bを設けているため、帯状のエンドシール部80aの領域内で発生した気泡を非シール部80bで吸収し、また、しわなどを抑制することができるため、安定したシール強度を維持することができる。
【0050】
なお、上述した本実施形態の帯状のエンドシール部80aは、蒸気抜きシール部7の両端の開始点71,71の位置から包装袋100の側部に向かって幅γがテーパ状に広げて構成していれば(γ1<γ2)、その帯状のエンドシール部80aの形状は、図4に示す形状に限定せず、任意の形状で構成することも可能である。例えば、図4では、帯状のエンドシール部80aは直線形状で構成したが、一部に曲線を含んで構成することも可能である。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0052】
第3の実施形態の包装袋100は、図5図6に示すように、蒸気抜きシール部7の先端にポイントシール部103を設けたことを特徴とする。図5は、蒸気抜きシール部7及びポイントシール部103周辺の構成例を示す図であり、図6は、図5に示す蒸気抜きシール部7及びポイントシール部103周辺のA-A'断面構成例を示す図である。
【0053】
本実施形態のポイントシール部103は、蒸気抜きシール部7の先端を容易に剥離させ、蒸気抜きのための剥離の起点とするための易開封シールとして機能するもので、蒸気抜きシール部7に接するように設けられる。本実施形態のポイントシール部103は、フィルム合掌部6を構成する開口側上面部2aと奥行側上面部2bとの一部を所定形状となるように、蒸気抜きシール部7の形成後に、少なくとも肉逃げが起こる程度の蒸気抜きシール部7を形成した際の圧縮強度より強い力で、ヒートシールして構成する。ポイントシール部103の平面視の形状は、特に限定せず、任意の形状で構成することが可能である。
【0054】
ポイントシール部103を形成する際の圧縮強度は、少なくとも蒸気抜きシール部7を形成する際の圧縮強度よりも強く設定し、図6(a)に示すように、ポイントシール部103の肉厚を蒸気抜きシール部7よりも薄肉にすることが好ましい。高い圧縮強度により圧着されたポイントシール部103は、肉逃げを起こし、周囲が逃げた樹脂により他の部位と比して肉厚となり、厚肉部104を形成する。このように、肉逃げを起こしたポイントシール部103の剥離強度は、蒸気抜きシール部7の剥離強度に比べて低くなり、ポイントシール部103を蒸気抜け時の起点として蒸気抜きシール部7を剥離し易くすることができる。なお、開口側上面部2aと奥行側上面部2bとを圧縮して薄肉のポイントシール部103を形成した場合は、薄肉を形成したことによって発生した余分な樹脂がポイントシール部103の周囲に移動し、図6(a)に示すように、ポイントシール部103の周囲に肉厚な厚肉部104を形成している。
【0055】
<ポイントシール部103の動作>
次に、図5図6を参照しながら、ポイントシール部103の動作について説明する。図6(a)は、ポイントシール部103が剥離する前の状態を示し、図6(b)は、ポイントシール部103が剥離した後の状態を示す。
【0056】
本実施形態の密閉状態の包装袋100を電子レンジで加熱し、包装袋100が膨張すると、圧力が蒸気抜きシール部7の先端に設けられたポイントシール部103に集中する。包装袋100内の内部圧力が所定値に達すると、図6(b)に示すように、ポイントシール部103の溶着部分が剥離し、その剥離に伴って、ポイントシール部103と連結する蒸気抜きシール部7の溶着部分も剥離することになる。その結果、蒸気抜きシール部7の先端が開口し、該開口した領域と未シール部9(多角形未シール部9a,帯状未シール部9b)とで第1の蒸気放出部101が形成され、第1の蒸気放出部101から蒸気が外部に放出されることになる。また、未シール部9(本実施形態では、多角形未シール部9a)に形成された第2の蒸気放出部102からも蒸気が外部に放出されることになる。
【0057】
これにより、本実施形態の包装袋100は、包装袋100内部の水蒸気等を2次元方向で外部に放出することができる。その結果、包装袋100の内部圧力が上昇し、包装袋100が膨張しても、少なくとも第1の蒸気放出部101と第2の蒸気放出部102とから包装袋100内の水蒸気等を外部に放出できるため、包装袋100を破裂させないようにすることができる。また、包装袋100内部で発生した水蒸気等を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【0058】
<本実施形態の包装袋100の作用・効果>
このように、本実施形態の包装袋100は、蒸気抜きシール部7の先端にポイントシール部103を設け、そのポイントシール部103の剥離に伴い蒸気抜きシール部7も剥離する。これにより、蒸気抜きシール部7の先端を容易に開口することができる。
【0059】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0060】
例えば、上述する実施形態では、包装袋100にフィルム合掌部6を設け、そのフィルム合掌部6の縁に蒸気抜きシール部7と未シール部9とを設け、フィルム合掌部6の縁に第1の蒸気放出部101を形成するようにした。しかし、包装袋100にフィルム合掌部6を設けず、下面部1と上面部2とで構成する包装袋100の縁に蒸気抜きシール部7と未シール部9とを設け、包装袋100の縁に第1の蒸気放出部101を形成することも可能である。この場合も、上述した実施形態と同様な効果を奏することになり、包装袋100内部で発生した蒸気を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【0061】
また、上述する実施形態では、少なくとも第1の蒸気放出部101と第2の蒸気放出部102とから包装袋100内の水蒸気等を外部に放出し、包装袋100内部で発生した蒸気を少なくとも2次元方向で外部に放出する構成例について説明した。しかし、2次元方向に限定せず、包装袋100に新たな蒸気放出部を設け、包装袋100内部で発生した蒸気を多次元方向で放出することも可能である。
【0062】
(付記)
原出願での発明の概要の内容を、以下、付記する。
【0063】
上記特許文献1、2は、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出することで、包装袋内部の圧力上昇を回避することにしている。例えば、上記特許文献1は、蒸気抜きシール部を優先的に剥離させ、そこから蒸気を外部に放出している。また、上記特許文献2は、シール部内に施した易蒸通手段から蒸気を外部に放散している。
【0064】
しかし、上記特許文献1、2は、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に「ピー」という音が鳴り、使用者を驚かせてしまう場合がある。
【0065】
このようなことから、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に音が発生しない包装袋の開発が必要視されている。
【0066】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に、音の発生を抑制することが可能な包装袋を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
【0067】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有することとする。
【0068】
本発明にかかる包装袋は、
フィルム同士をシールして形成したシール部を有し、内部に発生した蒸気圧により前記シール部が剥離して蒸気を外部へ放出する包装袋であって、
前記蒸気を少なくとも2次元方向へ放出する、ことを特徴とする。
(発明の効果)
【0069】
本発明によれば、包装袋内部で発生した蒸気を外部に放出する際に、音の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 包装袋
1 下面部
2 上面部
2a 開口側上面部
2b 奥行側上面部
3 サイドシール部
5 エンドシール部
6 フィルム合掌部
7 蒸気抜きシール部
7a1 内側湾曲形状
8a 帯状のエンドシール部
8b 帯状のサイドシール部
9 未シール部
9a 多角形未シール部
9a1 突出形状線(外側湾曲形状)
9a2 連結線
9b 帯状未シール部
10 トップシール部
101 第1の蒸気放出部
102 第2の蒸気放出部
71 開始点
91 連結点
80a 帯状のエンドシール部
80b 非シール部
103 ポイントシール部
104 厚肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6