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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-31
(45)【発行日】2022-06-08
(54)【発明の名称】工業廃塩のリサイクル処理方法及び設備
(51)【国際特許分類】
   C01D 5/16 20060101AFI20220601BHJP
   C01D 9/16 20060101ALI20220601BHJP
   C01D 3/06 20060101ALI20220601BHJP
【FI】
C01D5/16 A
C01D9/16
C01D3/06 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021539088
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2020128127
(87)【国際公開番号】W WO2021093773
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】201911125591.4
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911218752.4
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911122109.1
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201922129790.4
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520413232
【氏名又は名称】清大国華環境集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GO HIGHER ENVIRONMENT GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】C 404,Building C,Jiahua Building No.9 Shangdi 3rd Street,Haidian District Beijing 100085 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】陳福泰
(72)【発明者】
【氏名】▲チュ▼永前
(72)【発明者】
【氏名】楊艶
(72)【発明者】
【氏名】白立強
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107096249(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106430253(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105502438(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109704369(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D
C02F
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業廃塩を溶解した後、濾過して一次清澄化塩溶液を得るステップと、
前記一次清澄化塩溶液に石灰沈殿剤を投入し、沈殿処理を行って二級清澄化塩溶液を得る、不純物予除去を行うステップと、
前記二級清澄化塩溶液が濾過膜、樹脂吸着、脱気処理を経て脱気塩溶液を得る、不純物除去を行うステップと、
前記脱気塩溶液を分離膜に通過させて有機物を引き止めることによって、精製塩溶液及び濃縮液を得る、有機物濃縮減少を行うステップと、
前記精製塩溶液を積上型フィラーで吸着した後、酸化剤と充分に混合して反応させて、有機物の発色基と一部の有機物を除去する、吸着・酸化・脱色を行うステップと、
多重効用蒸発・結晶化を行うステップとを、この順に行い、
硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び硝酸ナトリウムの結晶をそれぞれ得る工業廃塩のリサイクル処理方法であって、
前記硫酸ナトリウムの結晶化温度は75~85℃で、前記塩化ナトリウムの結晶化温度は60~70℃で、前記硝酸ナトリウムの結晶化温度は45~55℃であることを特徴とする工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項2】
前記多重効用蒸発・結晶化を行うステップでは、吸着酸化脱色後の塩溶液が、温度110~120℃の1重効用蒸発、温度100~110℃の2重効用蒸発、温度85~95℃の3重効用蒸発、温度75~85℃の4重効用蒸発を経て得られた母液から3回の結晶化で硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムをそれぞれ得ることであることを特徴とする請求項1に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項3】
前記沈殿処理の回数は2回以上であることを特徴とする請求項1に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項4】
前記樹脂はキレート樹脂が使用され、しかも定期的に再生されることを特徴とする請求項1に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項5】
前記脱気処理とは樹脂処理後の塩溶液のpHを調整して、揮発性の弱酸ラジカルイオンをガスに変換させた後、ストリッピングで除去して、脱気塩溶液を得ることであることを特徴とする請求項1に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項6】
前記多重効用蒸発・結晶化の時に生成された凝縮水を使用して前記濃縮液を洗浄し、洗浄に使用された凝縮水を溶解ステップに循環させて工業廃塩を溶解させることを特徴とする請求項1に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項7】
前記積上型フィラーはファイバーボール、活性炭、ポリプロピレン軟質フィラーのうちの少なくとも1種であり、且つ/又は、前記酸化剤はオゾン、フェントン試薬、過酸化水素のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法。
【請求項8】
順次接続された溶解槽と、化学的不純物予除去システムと、不純物高度除去システムと、有機物濃縮減少システムと、吸着酸化システムと、蒸発結晶化システムとを含み、
前記化学的不純物予除去システムは一次反応器と、一次清澄化装置と、二次反応器と、二次清澄化装置と、付設の試薬添加装置とを含み、
前記不純物高度除去システムは精密濾過装置と、樹脂吸着装置と、脱気装置とを含み、
前記有機物濃縮減少システムは膜分離装置であり、
前記吸着酸化システムはフィラー吸着装置と、酸化装置とを含み、
前記蒸発結晶化システムは多重効用蒸発結晶化装置であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の工業廃塩のリサイクル処理方法に用いる設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、中国特許出願第201911125591.4号、第201911218752.4号、第201911122109.1号、第201922129790.4号の優先権及び利益を主張し、前記中国特許出願の全体の内容が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、工業廃塩処理の技術分野に関し、具体的には、工業廃塩のリサイクル処理方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0003】
廃塩とは主に工業生産において副生された塩結晶で、その組成によって単純な廃塩、混合塩、不純な塩(不純物を含む)に大別される。廃塩は主に化学工業生産と廃水処理に由来し、純水の製造と軟化、高濃度塩排水などのプロセスで生成された廃塩、及び農薬、クロールアルカリ工業生産の副産物合成プロセスなどで生成された廃塩を含む。廃塩は有機汚染物質、重金属元素汚染物質などの有毒・有害な物質を多く含んでいるため、不当に取り扱うと、土壌、地下水、空気を汚染する恐れがある。環境保護政策が日増しに厳格になるにつれて、化学工業で生成された廃塩、残渣及び蒸留残留液の処理が早急に解決すべき課題となっている。
【0004】
廃塩の処理方法として従来よく用いられるのは、リサイクル処理及び埋め立て処理である。廃塩をそのまま埋め立てる場合は他の一般的な工業廃棄物より吸水しやすいため問題があり、分散させて埋め立てる場合は時間が経つと堆積物の沈降が問題になり、後続の埋め立て作業に安全問題が伴ってしまう。従来、廃塩などの易溶性有害廃棄物をセメントで硬化させて養生した後、そのまま埋め立てるのが一般的で、軟質な埋立地では、廃塩の溶解性が強く、漏出の可能性が高いため、大きなリスクがあり、当該地域の環境にとって大きな安全問題である。
【0005】
廃塩のリサイクル処理分野で、有機物含有廃塩によく用いる方法には溶解精製後二次濃縮結晶化処理、直接熱焼却、高温炭化などの方法があり、これらの方法は廃塩中の有機物の除去率が優れず、単純な固形廃塩の場合、重金属、有機物などの不純物が含まれ、固形混合塩の場合、有機物と重金属の他にも、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウムも含まれており、これらはいずれも塩の利用を妨げる要因である。そのためにごく少量を融雪剤又は織物の染色剤として用いる程度にとどまり、残りの塩の殆どが埋め立てられるか積み立てて捨てられる。これは環境汚染を起こしやすいだけでなく、深刻な資源浪費も問題になる。
【0006】
発明者は上記の問題について廃塩のリサイクル処理の改善を行い、例えば、中国特許文献CN14909494Aは工業高濃度塩水の不純物除去精製プロセスを開示しており、当該プロセスが具体的に以下のステップを含む。(1)工業高濃度塩水に対する沈殿反応処理で、廃水中のPO 3-、C0 2-、浮遊物質(SS)、COD、フッ素、総ケイ素、カルシウム・鉄・バリウム・ストロンチウムイオンを除去して、清澄化排水を得る。(2)ステップ(1)で得た清澄化排水にイオン交換処理を行って、廃水中のカルシウム・マグネシウム・バリウム・ストロンチウム金属イオンを一層除去して、イオン交換排水を得る。(3)ステップ(2)で得たイオン交換排水の脱気処理であって、廃水中の炭酸イオン、炭酸水素イオンを二酸化炭素に変換し、ストリッピングによって除去して、脱気排水を得る。(4)ステップ(3)で得た脱気排水の脱色処理であって、濃縮して有機有色物質を分離して、脱色排水を得る。(5)ステップ(4)で得た脱色排水に酸化処理を行って、有機物を酸化除去し、最終の排水に多重効用蒸発結晶化を行って塩を生産する。当該プロセスでは環境汚染、資源浪費が緩和され、多重効用蒸発結晶化プロセスにおける設備内部のスケール形成と腐食などの不利な要因が避けられるが、当該プロセスで得たのは混合塩で、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの混合物であり、工業用塩の基準が満たされないため、その利用が限られている点で変わりはなく、つまりリサイクル処理後の廃塩は効果的に利用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本願が解決しようとする技術的課題はリサイクル処理後の工業廃塩は効果的に利用できないという従来技術の欠点を解消するために、工業廃塩のリサイクル処理方法及び設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本願は次の技術的解決手段を提供する。
本願の実施例に係る工業廃塩のリサイクル処理方法は、工業廃塩に対して溶解、化学的不純物予除去、不純物高度除去、有機物濃縮減少、吸着酸化脱色、多重効用蒸発結晶化をこの順に行って硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び硝酸ナトリウムの結晶をそれぞれ得るステップを含み、硫酸ナトリウムの結晶化温度は75~85℃で、塩化ナトリウムの結晶化温度は60~70℃で、硝酸ナトリウムの結晶化温度は45~55℃である。
【0009】
いくつかの実施例では、前記多重効用蒸発結晶化とは吸着酸化脱色後の塩溶液が1重効用蒸発、2重効用蒸発、3重効用蒸発、4重効用蒸発を経て得られた母液から3回の結晶化で硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムをそれぞれ得ることである。
【0010】
いくつかの実施例では、前記溶解とは工業廃塩を攪拌して充分に溶解した後、不溶物を除去することによって、一次清澄化塩溶液を得ることである。
【0011】
いくつかの実施例では、前記化学的不純物予除去とは一次清澄化塩溶液に沈殿処理を行って二級清澄化塩溶液を得ることである。
【0012】
いくつかの実施例では、前記沈殿処理の回数は2回以上である。
【0013】
いくつかの実施例では、前記不純物高度除去とは二級清澄化塩溶液が精密濾過膜、樹脂吸着、脱気処理を経て脱気塩溶液を得ることである。
【0014】
いくつかの実施例では、前記樹脂はキレート樹脂が使用され、しかも定期的に再生される。
【0015】
いくつかの実施例では、前記脱気処理とは樹脂処理後の塩溶液のpHを調整して、揮発性の弱酸ラジカルイオンをガスに変換させた後、ストリッピングで除去して、脱気塩溶液を得ることである。
【0016】
いくつかの実施例では、前記有機物濃縮減少とは分離膜に脱気塩溶液を通過させて有機物を引き止めることによって、精製塩溶液及び濃縮液を得ることである。
【0017】
いくつかの実施例では、多重効用蒸発結晶化の時に生成された凝縮水を使用して前記濃縮液を洗浄し、洗浄に使用された凝縮水を溶解ステップに循環させて工業廃塩を溶解させる。
【0018】
いくつかの実施例では、前記吸着酸化脱色とは精製塩溶液を積上型フィラーで吸着した後、酸化剤と充分に混合して反応させて、有機物の発色基と一部の有機物を除去することである。
【0019】
いくつかの実施例では、前記積上型フィラーはファイバーボール、活性炭、ポリプロピレン(PP)軟質フィラーのうちの少なくとも1種であり、且つ/又は、前記酸化剤はオゾン、フェントン試薬、過酸化水素のうちの少なくとも1種である。
【0020】
本発明の別の態様の実施例に係る工業廃塩のリサイクル処理方法に用いる設備は、順次接続された溶解槽と、化学的不純物予除去システムと、不純物高度除去システムと、有機物濃縮減少システムと、吸着酸化システムと、蒸発結晶化システムとを含み、前記化学的不純物予除去システムは一次反応器と、一次清澄化装置と、二次反応器と、二次清澄化装置と、付設の試薬添加装置とを含み、前記不純物高度除去システムは精密濾過装置と、樹脂吸着装置と、脱気装置とを含み、前記有機物濃縮減少システムは膜分離装置であり、前記吸着酸化システムはフィラー吸着装置と、酸化装置とを含み、前記蒸発結晶化システムは多重効用蒸発結晶化装置である。
【発明の効果】
【0021】
本願の技術的解決手段は、次の利点を有する。
1.本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法は、工業廃塩に対して溶解、化学的不純物予除去、不純物高度除去、有機物濃縮減少、吸着酸化脱色、多重効用蒸発結晶化をこの順に行って硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び硝酸ナトリウムの結晶をそれぞれ得るステップを含み、硫酸ナトリウムの結晶化温度は75~85℃で、塩化ナトリウムの結晶化温度は60~70℃で、硝酸ナトリウムの結晶化温度は45~55℃である。前記ステップでまず工業廃塩から有機物及び他の不純物を除去し、次に蒸発プロセスで温度制御により塩種それぞれの結晶化を実現し、即ち塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの三相共飽和点の異なる温度における違いと各塩種の溶解度とによって、塩種それぞれの結晶化を行うことであり、塩種それぞれの結晶化で得た塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムは純度も白色度も工業用の標準を満たしているため、そのまま使用することができ、本願の工業廃塩のリサイクル処理方法で処理した工業廃塩は効果的な利用することができる。
【0022】
2.本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法では、化学的不純物除去と精密濾過膜、樹脂吸着とを組み合わせた処理技術という2重の不純物予除去により、工業廃塩の予処理の難易度が効果的に下がりコストが削減されるとともに、工業廃塩中の重金属及び不純物イオンが浄化される。
【0023】
3.本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法では、分離膜で引き止める方法で、工業廃塩中の有機物の大半が除去され、最終製品の品質が保証され、しかも後続の吸着酸化脱色プロセスで添加されたフィラーによって、発色基を有する有機物が吸着されて、ある程度の脱色効果が得られるだけでなく、溶液中のリン、アンモニア、窒素なども吸着されるため、最終製品の品質が一層保証される。
【0024】
4.本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法では、多重効用蒸発結晶化の時に生成された凝縮水で、有機物濃縮減少で生成された濃縮液を洗浄することによって、濃縮液中の塩分を回収して、塩含有濃縮液の焼却時は焼却炉にコークスやスラグが生成するなどの問題で、焼却が正常に行われないことが避けられるだけでなく、しかも洗浄に使用された凝縮水を溶解ステップに循環させて工業廃塩を溶解させることで、凝縮水の繰り返し使用が実現され、資源浪費と二次汚染が避けられる。
【0025】
5.本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法に用いる設備は、順次接続された溶解槽と、化学的不純物予除去システムと、不純物高度除去システムと、有機物濃縮減少システムと、吸着酸化システムと、蒸発結晶化システムとを含み、前記設備でまず工業廃塩から有機物及び他の不純物を除去し、次に蒸発プロセスで温度制御により塩種それぞれの結晶化を実現し、即ち塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの三相共飽和点の異なる温度における違いと各塩種の溶解度とによって、塩種それぞれの結晶化を行うことであり、塩種それぞれの結晶化で得た塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムは純度も白色度も工業用の標準を満たしているため、そのまま使用することができ、本願の工業廃塩のリサイクル処理方法で処理した工業廃塩は効果的な利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本願の具体的な実施形態又は従来技術に係る技術的解決手段をより明瞭に説明するために、次に具体的な実施形態又は従来技術の説明で使用する図面を簡単に紹介する。明らかなことに、次に説明する各図は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者は進歩性のある作業をすることなく、これらの図から他の図を得ることができる。
図1図1は本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法のフローチャートである。
図2図2は本願に係る有機物濃縮減少ステップのフローチャートである。
図3図3は本願に係る吸着酸化脱色ステップのフローチャートである。
図4図4は本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法に用いる設備のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
下記の実施例を挙げるのは本願の理解を促すためで、本願は好ましい実施形態に限定されず、本願の内容と保護範囲が限られない。本願から啓発を受け又は本願と従来技術の特徴を組み合わせて本願と同じ又は類似する製品を得た場合、そのいずれも本願の保護範囲に含まれる。
【0028】
実施例では実験のステップ又は条件が具体的に示されない場合に、本分野の文献に記載されている一般的な実験ステップの操作又は条件で行うことができる。使用する試薬又は装置はメーカーが示されない場合に、市販されている通常の試薬製品である。
【0029】
次に、本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法の利点を説明するために、工業廃塩のリサイクル処理方法の具体例を提供する。なお、本願の工業廃塩のリサイクル処理方法で処理する工業廃塩で各成分の含有量が違うため、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの結晶化の順番が変わる場合に、なおも下記の「工業廃塩のリサイクル処理方法」と同じような技術的効果は得られる。
【0030】
図1に示すのは本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法の具体例であり、当該工業廃塩のリサイクル処理方法には図4に示す工業廃塩のリサイクル処理方法に用いる設備が使用される。本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法は具体的に以下のステップを含む。
【0031】
工業廃塩中の塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの含有量検出:
ECO-883型イオンクロマトグラフィーを用いて工業廃塩中の塩素イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンを検出して、工業廃塩中の塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの含有量を決定し、後続の多重効用蒸発結晶化の時の各塩種の結晶化の順番の参考とする。本実施例で3種の塩の含有量は硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムの順に低くなる。
【0032】
溶解:
溶解槽において前記工業廃塩を攪拌して充分に溶解した後、濾過して一次清澄化塩溶液を得、不溶物を焼却工場に輸送して無害化処理を行う。
【0033】
化学的不純物予除去:
一次清澄化塩溶液を一次反応システムに入れ、一次反応システムに石灰沈殿剤を投入して、水中の重金属イオン、フッ化物イオン、硫化物、炭酸イオン、リン酸イオンなどと難溶な沈殿物を形成させると同時に、有機物、有毒物質を吸着させ、次に凝集剤ポリ塩化アルミニウム(PAC)、凝集助剤ポリアクリルアミド(PAM)を投入して、一次清澄化槽に入れてスラッジ-水分離を行って、前記物質からスラッジを形成させて水と分離させ、排水を後続の工程に移行させ、スラッジを脱水して硬化工場で処理した後、安全埋立地に輸送する。
【0034】
一次反応清澄化排水を二次清澄化システムに入れ、二次反応システムに炭酸ナトリウム沈殿剤を投入して、水溶液中の金属カチオンと難溶な沈殿物を形成させると同時に、有機物、有毒物質を吸着させ、次に凝集剤ポリ塩化アルミニウム(PAC)、凝集助剤ポリアクリルアミド(PAM)を投入して、二次清澄化槽に入れてスラッジ-水分離を行って、二級清澄化塩溶液を得て後続の工程に移行させ、スラッジを脱水して硬化工場で処理した後、安全埋立地に輸送する。
【0035】
不純物高度除去:
二級清澄化塩溶液を孔径0.5μmの精密濾過膜に入れ、精密濾過膜で浮遊物質(SS)とコロイド状物質とを引き止めた後、キレート樹脂によって塩水中の金属カチオンを吸着し、排水を後続の工程に移行させ、キレート樹脂を定期的に再生させる。
【0036】
キレート樹脂からの排水のpHを3.5に調整して、塩水中の炭酸イオンなどの揮発性の弱酸ラジカルイオンをガスの状態にした後、次のとおりに塩水の脱気を行う。塩水を噴射散布して、比表面積が大きな積上型フィラー活性炭に通過させ、下部の風口から空気を入れ、逆方向からフィラー層を通過させると、塩水中の二酸化炭素などがすぐに析出され、上端から排出され、廃水中の二酸化炭素を除去した後、後続の工程に移行する。
【0037】
有機物濃縮減少(精製システム):
図2に示すように、不純物高度除去排水を有機物濃縮減少ステップに移行させ、GHナノ修飾膜を使用し、大分子有機物と一部の小分子有機物だけを引き止め、塩分は殆ど引き止めないという当該分離膜の特性を利用して、ナノ修飾膜によって引き止められたものに有機物の量が増加する一方、濃縮液の水量が減少し、精製塩溶液を吸着酸化脱色の予処理段階に移行させる。多重効用蒸発結晶化の時に生成された凝縮水で濃縮液を洗浄及び濃縮して、最後に濃縮液を焼却ユニットに入れ、洗浄水を溶解槽に循環させて工業廃塩を溶解させる。
【0038】
吸着酸化脱色:
図3に示すように、精製塩溶液を吸着酸化脱色ステップに移行させ、比表面積が大きな積上型フィラーファイバーボールの吸着特性を利用して、精製塩溶液から有機物を吸着除去し、次に強酸化剤オゾンを入れて精製塩溶液と充分に混合して反応させ、酸化剤オゾンの強酸化性を利用して有機物の発色基を離脱させると同時に有機物を除去することによって、精製塩溶液中の有機物の含有量を一層低減させ、その後、多重効用蒸発結晶化を行う。
【0039】
多重効用蒸発結晶化:
まず吸着酸化脱色後の塩溶液を予熱し、予熱後に1重効用蒸発タンク(温度110~120℃)、2重効用蒸発タンク(温度100~110℃)、3重効用蒸発タンク(温度85~95℃)、4重効用蒸発タンク(温度75~85℃)にこの順に通過させる。多重効用蒸発では温度差を合理的に利用して、多重効用蒸発結晶化プロセスのエネルギー消費を減らすことができる。
【0040】
4重効用蒸発タンク内で硫酸ナトリウムが結晶化して析出され、分離し、そして増粘と遠心乾燥、包装を経て、硫酸ナトリウム製品を得る。純度が92%を超え、白色度も工業用の標準を満たしており、包装機でパッケージして工業用硫酸ナトリウムとして販売する。
【0041】
4重効用蒸発タンクの母液を1番結晶化タンクに移し、温度を60~70℃に制御し、塩化ナトリウムが結晶化して析出され、増粘、遠心乾燥そして包装を経て、塩化ナトリウム製品を得る。純度が92%を超え、白色度も工業用の標準を満たしており、包装機でパッケージして工業用塩化ナトリウムとして販売する。
【0042】
残りの母液を2番結晶化タンクに移し、温度を45~55℃に制御し、硝酸ナトリウムが結晶化して析出され、増粘、遠心乾燥そして包装を経て、硝酸ナトリウム製品を得る。純度が90%を超え、白色度も工業用の標準を満たしており、包装機でパッケージして工業用硝酸ナトリウムとして販売する。
【0043】
前記実施例から分かるように、本願に係る工業廃塩のリサイクル処理方法では、蒸発プロセスで温度制御により塩種それぞれの結晶化を実現し、即ち塩化ナトリウム、硝酸ナトリウムと硫酸ナトリウムの三相共飽和点の異なる温度における違いと各塩種の溶解度とによって、塩種それぞれの結晶化を行うことであり、塩種それぞれの結晶化で得た塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムは純度も白色度も工業用の標準を満たしているため、そのまま使用することができ、本願の工業廃塩のリサイクル処理方法で処理した工業廃塩は効果的な利用することができる。
【0044】
図4に示すように、本願に係る工業廃塩のリサイクル処理に用いる設備は順次接続された溶解槽と、化学的不純物除去システムと、不純物高度除去システムと、有機物濃縮減少システムと、吸着酸化システムと、蒸発結晶化システムとを含む。
【0045】
このうち、溶解槽は廃塩を溶解する設備で、化学的不純物除去システムは一次反応器と、一次清澄化装置と、二次反応器と、二次清澄化装置と、付設の試薬添加装置とを含み、化学的不純物除去システムによって塩溶液から重金属、浮遊物質などの不純物を初歩的に除去する。不純物高度除去システムは精密濾過装置と、樹脂吸着装置と、脱気装置とを含み、不純物高度除去システムによって前のシステムからの塩溶液から不純物を一層除去し、二酸化炭素などを除く。有機物濃縮減少システムは膜分離装置であり、有機分離膜で有機物の殆どを分離除去する。吸着酸化システムはフィラー吸着装置と、酸化装置とを含み、吸着装置は比表面積が大きな積吸着フィラーで、残留有機物を吸着でき、酸化装置は酸化剤を添加して残留有機物を分解させる。蒸発結晶化システムは多重効用蒸発結晶化装置である。
【0046】
好ましくは、多重効用蒸発結晶化装置は4重効用蒸発結晶化装置であり、前の処理システムからの塩溶液が1重効用蒸発、2重効用蒸発、3重効用蒸発、4重効用蒸発を経て得られた母液から3回の結晶化でそれぞれ硫酸ナトリウム結晶、塩化ナトリウム結晶、硝酸ナトリウム結晶を得る。
【0047】
なお、前記実施例は明瞭に説明するために挙げられる例に過ぎず、実施形態を限定するためのものではない。当業者は前記説明に基づいて他にも様々な変更や修正を行うことができる。全ての実施形態を挙げることが不可能なことで、こうする必要もない。このようになされる変更や修正は本願の保護範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4