(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】空間噴霧器及び空間噴霧器用の除菌液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20220602BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220602BHJP
A01N 59/08 20060101ALI20220602BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220602BHJP
A01N 43/64 20060101ALI20220602BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
A61L9/14
A61L9/01 E
A01N59/08 A
A01P3/00
A01N43/64 105
B05B17/06
(21)【出願番号】P 2020084051
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2020-06-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 :令和1年5月13日 販売場所:シェル特発株式会社(徳島県徳島市中洲町3丁目5-1) 掲載日:令和1年12月4日 掲載アドレス:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95-1%E8%A2%8B%EF%BC%8830%E5%80%8B%E5%85%A5%E3%82%8A%EF%BC%89%E3%80%88%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%80%89%E7%B2%89%E6%9C%AB%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97-%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC30%E5%9B%9E-%E7%A9%BA%E9%96%93%E5%99%B4%E9%9C%A730%E5%9B%9E-%E8%B6%85%E9%9F%B3%E6%B3%A2%E5%8A%A0%E6%B9%BF%E5%99%A8/dp/B082DBMTMK/ref=sr_1_4?dchild=1&m=A3SLZV4KFW1SB6&qid=1590025368&s=merchant-items&sr=1-4
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載日:令和1年12月4日 掲載アドレス:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95-1%E8%A2%8B%EF%BC%8830%E5%80%8B%E5%85%A5%E3%82%8A%EF%BC%89%E3%80%88%E9%80%9A%E5%B8%B8%E7%89%88%E3%80%89%E7%B2%89%E6%9C%AB%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97-%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC30%E5%9B%9E-%E7%A9%BA%E9%96%93%E5%99%B4%E9%9C%A730%E5%9B%9E-%E8%B6%85%E9%9F%B3%E6%B3%A2%E5%8A%A0%E6%B9%BF%E5%99%A8/dp/B082DB7HBF/ref=sr_1_2?dchild=1&m=A3SLZV4KFW1SB6&qid=1590025368&s=merchant-items&sr=1-2
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 :令和2年1月15日 販売場所:株式会社岡部機械工業(徳島県阿南市才見町旭越山25番地1)販売日 :令和2年1月20日 販売場所:イツモスマイル株式会社(徳島県徳島市佐古2番町5番11号) 掲載日:令和2年2月11日 掲載アドレス:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BCEX-%E6%AC%A1%E4%BA%9C%E5%A1%A9%E7%B4%A0%E9%85%B8%E6%B0%B4%E7%94%9F%E6%88%90%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%BC-%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95-%E3%82%B8%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8C%E3%83%AB%E9%85%B8-%E3%80%8C%E8%A8%88%E9%87%8F%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%B32%E6%9C%AC%E4%BB%98%E3%80%8D/dp/B08861N8PD/ref=sr_1_1?dchild=1&m=A3SLZV4KFW1SB6&qid=1590025368&s=merchant-items&sr=1-1
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 :令和2年3月10日 販売場所:株式会社エィ・テックス(徳島県徳島市東沖洲2丁目41番地3) 販売日 :令和2年3月15日 販売場所:日本メディカル株式会社(香川県高松市東ハゼ町8-8) 販売日 :令和2年4月8日 販売場所:株式会社すこやか自慢(福岡県福岡市博多区博多駅前3-16-10) 掲載日:令和2年4月9日掲載アドレス:https://www.amazon.co.jp/%E8%A8%88200L%E7%94%9F%E6%88%90%E5%8F%AF%E8%83%BD-10L%E3%80%9C20L%E5%A4%A7%E5%AE%B9%E9%87%8F%E7%94%A8-%E6%9C%80%E5%BC%B7%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%91%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B9-%EF%BC%91%E6%9C%AC%E3%81%A720L%E3%81%8C100ppm%E3%81%AB-%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/dp/B086X2DSD7/ref=sr_1_3?dchild=1&m=A3SLZV4KFW1SB6&qid=1590025368&s=merchant-items&sr=1-3 販売日 :令和2年4月10日 販売場所:スカイネット株式会社(大阪市西区北堀江1-5-2四ツ橋新興産ビル2F2号)
(73)【特許権者】
【識別番号】522101955
【氏名又は名称】レーアライフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功二
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131360(JP,A)
【文献】特開2019-084506(JP,A)
【文献】特開2019-154884(JP,A)
【文献】特開昭61-192800(JP,A)
【文献】特開2016-120474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A01N 59/08
A01N 43/64-43/707
A01P 3/00
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除菌用の空間噴霧器であって、
塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を水に溶かした次亜塩素酸水を含む除菌液を保持するタンク部と、
前記タンク部内に保持された前記除菌液を噴霧するノズル部と、
を含み、
前記ノズル部は、前記除菌液を、空間噴霧における有効塩素濃度を10ppmより高く50ppm未満として噴霧可能に構成しており、
前記粉体中に、中性芒硝を重量比で60%~95%
、前記塩素化イソシアヌル酸を5%~30%含んで
おり、
前記タンク部内の次亜塩素酸水の濃度が10ppm~200ppmである空間噴霧器。
【請求項2】
請求項1に記載の空間噴霧器であって、さらに、
前記タンク部内に保持された前記除菌液をミスト化する超音波振動子を備えており、
前記ノズル部は、前記超音波振動子の振動によりミスト化された前記除菌液を噴霧するよう構成してなる空間噴霧器。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の空間噴霧器であって、
前記タンク部内の次亜塩素酸水の塩素濃度が、20%~90%である空間噴霧器。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の空間噴霧器であって、
前記塩素化イソシアヌル酸が、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム又はトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムである空間噴霧器。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の空間噴霧器であって、
前記粉体が、さらにアジピン酸を1%~30%含んでなる空間噴霧器。
【請求項6】
請求項
5に記載の空間噴霧器であって、
前記タンク部が鉛直方向において縦長に延長されてなる空間噴霧器。
【請求項7】
空間噴霧器用の除菌液の製造方法であって、
除菌液を保持するタンク部に、水を注水する工程と、
前記水が注水されたタンク部に、塩素化イソシアヌル酸
を5%~30%と、中性芒硝を重量比で60%~95%含む粉体を、水に投入して撹拌し、前記タンク部内の次亜塩素酸水の濃度が10ppm~200ppmで、空間噴霧時における有効塩素濃度を10ppmより高く50ppm未満とする除菌液を調製する工程と、
を含む空間噴霧器用の除菌液の製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の空間噴霧器用の除菌液の製造方法であって、
前記粉体が、マイクロテストチューブに保持されてなる空間噴霧器用の除菌液の製造方法。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の空間噴霧器用の除菌液の製造方法であって、
前記塩素化イソシアヌル酸が、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム又はトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムである空間噴霧器用の除菌液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間噴霧器及び空間噴霧器用の除菌液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCOVID-19、いわゆる新型コロナウィルスの世界的流行により、感染拡大を阻止するための除菌の重要性が叫ばれている。従来より、次亜塩素酸水による殺菌は、厚生労働省により細菌やウイルスに対して殺菌効果のある除菌水(食品添加物)として認められており、安全性が確認されている。
【0003】
しかしながら、従来は次亜塩素酸水を得るために、塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽で電気分解していたため、その製造が面倒で高コストであるという問題があった。また液体の次亜塩素酸水は、運搬コストや管理コストも高くなる。
【0004】
そこで、粉体状のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなどの塩素化イソシアヌル酸を用いて、これに水を添加して加水分解することで、安価にかつ簡便に次亜塩素酸水を調製することが提案されている。
【0005】
しかしながら、本発明者の試験によれば、粉体状のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは均等に水に溶解させることが難しいことが判明した。特に僅かな水が残っているところに粉体状のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを投入すると、粉体が固まって固形化してしまい、溶融が困難になることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許6550570号公報
【文献】特許6475903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一つは、安価に次亜塩素酸水で殺菌効果を発揮できるようにした空間噴霧器及び空間噴霧器用の除菌液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の第1の側面に係る空間噴霧器によれば、除菌用の空間噴霧器であって、塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を水に溶かした次亜塩素酸水を含む除菌液を保持するタンク部と、前記タンク部内に保持された前記除菌液を噴霧するノズル部と、を含み、前記ノズル部は、前記除菌液を、空間噴霧における有効塩素濃度を10ppmより高く50ppm未満として噴霧可能に構成しており、前記粉体中に、中性芒硝を重量比で60%~95%、前記塩素化イソシアヌル酸を5%~30%含んでおり、前記タンク部内の次亜塩素酸水の濃度が10ppm~200ppmである。上記構成により、安価で管理が容易な塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を用いて、次亜塩素酸水の空間噴霧を実現でき、高い除菌性能を安全にかつ安価に発揮させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の第2の側面に係る空間噴霧器によれば、上記構成に加えて、さらに、前記タンク部内に保持された前記除菌液をミスト化する超音波振動子を備えており、前記ノズル部は、前記超音波振動子の振動によりミスト化された前記除菌液を噴霧するよう構成できる。
【0011】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る空間噴霧器によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記タンク部内の次亜塩素酸水の塩素濃度を、20%~90%とすることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る空間噴霧器によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記塩素化イソシアヌル酸を、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム又はトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムとすることができる。
【0016】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る空間噴霧器によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記粉体が、さらにアジピン酸を1%~30%含むことができる。上記構成により、通常であればイソシアヌル酸の無機物残留性によって白い膜が残ることがあるところ、塩素濃度が安定されて均等にイソシアヌル酸残留物が噴霧されるので、このような残留物を低減して目立たなくできる。
【0017】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る空間噴霧器によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記タンク部を鉛直方向において縦長に延長した形状とすることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る空間噴霧器用の除菌液の製造方法によれば、除菌液を保持するタンク部に、水を注水する工程と、前記水が注水されたタンク部に、塩素化イソシアヌル酸を5%~30%と、中性芒硝を重量比で60%~95%含む粉体を、水に投入して撹拌し、前記タンク部内の次亜塩素酸水の濃度が10ppm~200ppmで、空間噴霧時における有効塩素濃度を10ppmより高く50ppm未満とする除菌液を調製する工程とを含むことができる。これにより、運搬や管理の容易な粉体の塩素化イソシアヌル酸を用いて、除菌液を容易に調整できる。
【0019】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る空間噴霧器用の除菌液の製造方法によれば、上記に加えて、前記粉体を、マイクロテストチューブに保持することができる。これにより、塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を、安定的に長期間保持することが可能となる。
【0020】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る空間噴霧器用の除菌液の製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記塩素化イソシアヌル酸を、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム又はトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る空間噴霧器を示す模式断面図である。
【
図2】実施形態2に係る空間噴霧器を示す模式断面図である。
【
図3】実施形態3に係る空間噴霧器を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態及び実施例を、図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態及び実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されるものでない。また各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに、本発明に係る実施形態及び実施例を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。なお、本明細書において「備える」とは、別部材として備えるもの、一体の部材として構成するものの何れをも含む意味で使用する。
[実施形態1]
【0023】
本実施形態に係る空間噴霧器は、超音波加湿器や超音波噴霧器のような、超音波振動子でミスト化して噴霧する機器、あるいはスプレー式のボトルや霧吹きのような、圧縮した空気で噴霧する機器である。
【0024】
一例として、実施形態1に係る空間噴霧器100として超音波加湿器を
図1に示す。この図に示す空間噴霧器100は、除菌液を保持するタンク部1と、このタンク部1に保持された除菌液を噴霧するノズル部2を備える。ノズル部2は、タンク部1の上方に開口して形成されている。またタンク部1の底面には、超音波振動子3が配置されている。超音波振動子は、タンク部1内に保持された前記除菌液をミスト化する。この結果、タンク部1に蓄えられた除菌液は、超音波振動子による超音波振動によって飛散または気化されて、発生した微細粒子がタンク部1の上方に設けられたノズル部2から外部に放散される。
【0025】
このような空間噴霧器100に充填する除菌液として、塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を水に溶かした次亜塩素酸水を含むものを用いる。除菌液は、空間噴霧された状態で、空間噴霧における有効塩素濃度を10ppm~50ppmとする。このような有効塩素濃度の除菌液を、ミスト状にしてノズル部2から放出することで、高い除菌効果を発揮できる。特に、安価で管理が容易な塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を用いて、これを溶かして除菌液とすることで、容易に次亜塩素酸水を得ることができる。また高い除菌効果を奏する次亜塩素酸水の空間噴霧によって、ウィルス感染や拡散などの未然防止を図ることが可能となる。
【0026】
タンク部1内の次亜塩素酸水の濃度は、10ppm~200ppmとすることが好ましい。これによって十分な除菌効果を発揮できる。またタンク部1内の次亜塩素酸水の塩素濃度は、20%~90%とすることが好ましい。
【0027】
また塩素化イソシアヌル酸は、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム又はトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムが利用できる。特にジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは入手が容易で安価であり、除菌剤として使用実績もあることから好ましい。
【0028】
このような塩素化イソシアヌル酸は、粉体状のものを用いる。粉体状の塩素化イソシアヌル酸は、水道水などに溶かして容易に次亜塩素酸水を得ることができる。次亜塩素酸水の製造方法としては、従来より塩化ナトリウム水溶液の電気分解が知られているが、この方法では製造が面倒な上、高コストという問題があった。また液体の次亜塩素酸水は嵩張り重いため、その運搬コストや管理コストも高騰する。
【0029】
そこで、粉体状のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなどの塩素化イソシアヌル酸を用いて、これを加水分解することで、安価にかつ簡便に次亜塩素酸水を調製することを実現している。この方法であれば、粉体の状態で維持管理できるので、液体の次亜塩素酸水と比べ、体積及び重量を劇的に極小化できる。また、管理や運搬コストも大幅に削減できる。加えて、液体の次亜塩素酸水は分解されやすく、長期保存が困難であったが、粉体の塩素化イソシアヌル酸であれば、その特性を維持したまま長期保存することができる利点も得られる。なお、一度加水分解すれば、一般の次亜塩素酸水と同様、長期保存はできないが、使用前に、すなわち空間噴霧器100に除菌液を充填する直前に水に溶かすようにすることで、除菌液を使い切ることができるので、この問題を回避できる。
【0030】
粉体は、粒径が小さいほど比表面積が大きくなり、溶解されやすくなるため好ましい。ただ粒径が小さくなりすぎると、僅かな風でも巻き上がりやすくなり、水を満たしたタンク部に溶融させる際、風で飛ばされて入れにくくなる。このため、顆粒程度の、ある程度の大きさとすることでハンドリング性を向上できる。なお本明細書において粉体とは、粒径のサイズを規定するものでなく、粉状の他、粒状や顆粒状の形態を含む意味で使用する。
【0031】
粉体は、塩素化イソシアヌル酸を5%~30%、中性芒硝を60%~95%含むことが好ましい。塩素化イソシアヌル酸に加えて中性芒硝を増量剤として添加することで、粉体を適度に増量してハンドリング性を高めることができる。
【0032】
中性芒硝は、塩素化イソシアヌル酸に対し不活性な無機塩が好ましい。塩素化イソシアヌル酸の活性塩素の低減を避けるためには、有機物を含まないことが望ましい。さらに水溶性無機塩がより好ましい。水溶性無機塩としては、中性から弱酸性領域(pH4~7)において可溶性の高い無機塩であることが必要である。この点からは、硫酸ナトリウム(Na2SO4)が好ましい。水溶液が中性(pH7)であり、増量剤として使用しても、塩素化イソシアヌル酸のpHのみに注目しておけば良く、利便性が高いからである。また、塩素化イソシアヌル酸の水溶液における活性塩素の殺菌力は、主に次亜塩素酸の酸化力によるものであり、水溶液が弱酸性(pH4~6)の場合に次亜塩素酸の存在割合は高くなるため、殺菌効力も高くなる。水溶液が強酸性(pH4未満)の場合には塩素ガスが発生する可能性があるため、酸化力の高い硫酸ナトリウムが好適に利用できる。
【0033】
また粉体は、さらにアジピン酸を1%~30%含むことが好ましい。例えばタンク部1が
図1に示すように縦長の場合は、深さ方向の水圧の変化等の影響により、タンク部1内の塩素濃度を一定に保ちにくくなる。そこで、アジピン酸を添加することで塩素化イソシアヌル酸が溶解されやすくなり、除菌液の濃度を均一化できる。この結果、塩素濃度が安定化されて均等にイソシアヌル酸残留物が噴霧される。なお塩素化イソシアヌル酸が均一に溶解されずに残った場合、噴霧後に無機物残留性によって白い膜が残ることがあるが、アジピン酸の添加によって残留物の発生の低減を図ることが可能となる。
[実施形態2]
【0034】
以上の実施形態1では、空間噴霧器100として超音波加湿器を用いた例を説明したが、本発明は除菌液を噴霧する空間噴霧器を超音波加湿器や超音波噴霧器に限定するものでなく、他の空間噴霧器、例えば電気を使用しない手動で噴霧するスプレーボトルや霧吹きのようなものにも適用できる。ここで実施形態2に係る空間噴霧器200として、スプレーボトルに適用した例を、
図2に基づいて説明する。この図に示すスプレーボトルも、ボトル型のタンク部1と、その開口端を閉塞するノズル部2を備える。またスプレーボトルには、塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を収納する粉体収納容器4が添付される。粉体収納容器4には、ポリプロピレン製のマイクロテストチューブ等が利用できる。これにより、塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を、安定的に長期間保持することが可能となる。
【0035】
タンク部1は、不透明な樹脂製とすることが好ましい。特に塩素化イソシアヌル酸は、紫外線で分解が加速し、濃度維持が難しいことから、透明でない着色された樹脂製とすることで、このような劣化を抑制できる。この結果、タンク部1は内部の除菌液が不可視な状態となる。
【0036】
図2のスプレーボトルは、除菌液を収容するタンク部1と、タンク部1の口頚部に嵌合される装着筒と、この装着筒から起立された垂直筒と、この垂直筒の上端部から前方へ突出された射出筒と、この垂直筒の中間部から前方へ突出されたシリンダと、このシリンダ内に摺動可能に嵌合され、前方に付勢されているプランジャと、その上部後面がこのプランジャの前端部に係合し、射出筒の前部に揺動可能に取り付けられたトリガーと、前記筒の前端部に取り付けられたノズル部嵌合筒と、ノズル部孔が形成され、ノズル部嵌合筒の外面に回動可能に取り付けられノズル部2の所定位置では霧状の噴霧が、別の所定位置ではストレートな液流が、それぞれ切り替え可能なノズル部ヘッドとを備える。トリガーを後方に引くことによって、タンク部1に貯蔵された塩素を含む内溶液が吸い上げられ、ノズル部孔を通して噴出される。ノズル部ヘッドの回動により噴出する液体の状態を変えられるので、集中的に殺菌したいときはストレートな液流で、広範囲に殺菌したいときには霧状の液を吹き付けることができ、シーンに応じて使い分けができる。
[実施形態3]
【0037】
なおスプレーボトルは、
図2に示したようなトリガを備えるピストル式のタイプに限られず、
図3に示す実施形態3に係る空間噴霧器300のようなプッシュ式のタイプを用いてもよいことはいうまでもない。このタイプの空間噴霧器300はフィンガースプレー容器等と呼ばれ、除菌液を収容するタンク部1と、タンク部1の開口部から上方付勢状態で上下動可能に起立されたノズル部2と、ノズル部2の上下動に連係して作動するポンプ機構を有する。ノズル部2の基端側にその径方向外側を向けて拡張された押下げ部を指で押下げることにより、ポンプ機構の作用でタンク部1内の除菌液がノズル部2の先端から噴出されるよう構成されている。このような容器は、全体の大きさをコンパクトにすることができ、携帯用に便利である。
(空間噴霧器用の除菌液の製造方法)
【0038】
ここで、空間噴霧器用の除菌液の製造方法を、
図4A~
図4Bに基づいて説明する。
【0039】
まず、
図4Aに示すように除菌液を保持するタンク部1に、水を注水する。例えばタンク部1の内容積の8割以上に水道水を充填する。注水には、水道の蛇口から直接注水してもよいし、また一端コップなどに水を溜めた上で、タンク部1に移し替えるようにしてもよい。
【0040】
次に、
図4Bに示すように、水が注水されたタンク部1に、塩素化イソシアヌル酸を含む粉体を、水に投入する。このとき、粉体を水に溶かして得られる除菌液の有効塩素濃度が10ppm~200ppmとなるように、予め粉体の分量を調整しておく。ここでは、タンク部1の内容積に応じて、所望の濃度となるように、予め粉体の量を計算し、これに応じた分量を、粉体収納容器4に充填しておく。これにより、使用者が一々粉体を計量しなくても、スプレーボトル一本分に小分けされた粉体をそのまま粉体収納容器4から投入することで、必要な分量に調整することが可能となる。
【0041】
ここで、先にタンク内に粉体を投入しておき、次いで水を注水せず、予めタンク内に注水した状態で粉体を投入することで、粉体の溶解を確実に行わしめる効果が得られる。一般に、粉体の溶融に際しては先に粉体を投入してから、水を注水することで撹拌効果を発揮させることが行われている。しかしながら、塩素化イソシアヌル酸の場合は、先に塩素化イソシアヌル酸をタンク内に投入すると、条件によっては溶解が不十分であることが本発明者の試験により判明した。特に、空間噴霧器の場合は、頻繁に水を充填することが必要とされる。例えば
図2や
図3のようなスプレーボトルの場合、除菌液を補充して再利用できるものがあり、この場合に除菌液がなくなると、新たに水と粉体を混合する必要が生じる。ここで、タンク部の内部が完全に乾燥している場合は問題が少ないものの、多くの場合はスプレー機構の構造上、タンク部内の除菌液を完全に使い切ることができず、一部が残った状態で除菌液の補充が必要となるケースが多い。
【0042】
しかしながら、除菌液が少し残った状態で粉体を投入してしまうと、この僅かな水分によって塩素化イソシアヌル酸を含む粉体が部分的に溶融して、凝固してしまうことがある。一度凝固してしまうと、水を加えても、溶けにくい塊が残った状態となり、均一な状態に溶解させることが困難となり、有効塩素濃度を均一にすることが困難となる。
【0043】
また、この問題は
図1で示した電動式の空間噴霧器100においても生じる。空間噴霧器を設置した部屋の広さや空間噴霧器のタンク容量等にも依存するが、冬場の乾燥時などにおいては一日に複数回、水を補給する必要が生じることも珍しくない。このような状況において、空間噴霧器に設けられた給水ランプが点灯しても、水が僅かにタンク内に残っている事態が同様に発生する。この状態で粉体を投入すると、同様に固まりの発生する事態を引き起こすことになる。
【0044】
さらに、タンク部の内部が完全に乾燥している場合には、先に粉体を投入しても部分的な溶解は生じ難いものの、別の問題が生じることがある。すなわち、
図4Aに示すように水道の蛇口から勢いよく水を注水すると、その勢いで粉体が飛び散ってしまうことが考えられる。特に、上述の通り除菌液の劣化を防ぐため、タンク部を不透明な材質で構成した場合、タンク内の様子を外部から視認できないことから、粉体の飛散を防ぐためゆっくりと注水する等、注意して作業を行う必要が生じる。
【0045】
加えて、勢いよく注水すると外部から視認できないことから、水が溢れてしまうことがある。この場合に、粉体の一部が漏れ出して、有効塩素濃度を上述した範囲に維持できなくなることが考えられる。
【0046】
このような事態を防ぐため、本実施形態においては、敢えて先に水を充填した上で、粉体を投入する手順を採用する。この方法であれば、少量の水で粉体が固まってしまう事態を回避できる。また、先に水を注水するため、仮に水が溢れても水が失われるだけで、有効塩素濃度には影響を与えない。また、タンク部1への給水時に、粉体の舞い上がり等を気にせず、勢いよく注水することができるため、使い勝手が向上される。
【0047】
以上のようにしてタンク部1内に水と粉体を投入した後、
図4Cに示すように撹拌して、タンク部1内で水と粉体が均一に混ざった除菌液を調製する。ここで、撹拌しやすいようにタンク部1内の水は、上述の通り8割程度に抑制することが好ましい。
【0048】
このようにして、運搬や管理の容易な粉体の塩素化イソシアヌル酸を用いて、除菌液を容易に調整できる。また、タンクへの投入の順序を規定するという極めて簡単な手法で、塩素化イソシアヌル酸を均一に溶融させる効果を得られる。
【0049】
なお、上述した粉体は、無機塩類を含んでいる。ただ粉体が、無機塩類を含まないこともできる。無機塩類を含まない場合は、タンク部1に先にジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを含む粉体を入れた後に水を入れても、粉体が凝固しないので、使い勝手が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の空間噴霧器及び空間噴霧器用の除菌液の製造方法は、超音波加湿器や超音波噴霧器のような、超音波振動子でミスト化して噴霧する機器、あるいはスプレー式のボトルや霧吹きのような、圧縮した空気で吹き出す機器に充填する除菌液として、好適に利用できる。例えば家庭用や、レストラン、会議室などに設置する加湿器、あるいは施設の入口などに設置する手動式のボトル等に利用して、新型コロナウィルス等の消毒に利用できる。また除菌や滅菌に限らず、消臭にも利用できる。
【符号の説明】
【0051】
100、200、300…空間噴霧器
1…タンク部
2…ノズル部
3…超音波振動子
4…粉体収納容器