(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】かしめ構造の製造方法及びかしめ構造
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20220602BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220602BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20220602BHJP
B21D 39/03 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B21D39/02 E
B60J5/04 M
B21D53/88 F
B21D39/03 A
(21)【出願番号】P 2017220271
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】500375567
【氏名又は名称】株式会社ヒサダ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸司
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 洋平
(72)【発明者】
【氏名】原田 卓
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 正史
(72)【発明者】
【氏名】橋口 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 保親
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341305(JP,A)
【文献】特開2015-013496(JP,A)
【文献】特開2015-052371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/02
B60J 5/04
B21D 53/88
B21D 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とのかしめ構造の製造方法であって、
前記第1の部材は
、折返し形状の端部を有し、前記第1の部材の
前記端部は板状部と凹溝とを有し、
前記凹溝は、前記凹溝の内面に設けられる第1の内側面と、前記凹溝の内面において前記第1の内側面よりも前記第1の部材の端縁から遠い位置にあって前記第1の内側面と対向する第2の内側面と、を含み、
前記板状部は
、前記第1の部材の
前記端部の端縁
と、前記第1の内側面とを含み、
前記第2の部材は端部を有し、前記第2の部材の端部は
、端縁と
、前記第1の内側面に対向し得る第1の外側面と、前記第2の内側面に対向し得る第2の外側面と、を含み、
前記凹溝は、前記第2の部材の前記端縁
、前記第1の外側面、および、前記第2の外側面を取り囲んでおり、
前記凹溝の
前記第1の内側面には
前記第1の内側面から突出する係合部が形成され
、
前記凹溝の前記第2の内側面は平坦に構成され、
前記第2の部材の端部の
前記第1の外側面には
、前記係合部に係合し得るように凹む被係合部が形成され、
前記第2の部材の端部の前記第2の外側面は平坦に構成され、
前記製造方法は、
前記凹溝の開口が広が
るように前記板状部が形成された前記第1の部材を準備する準備工程と、
前記準備工程の後、
前記第1の部材の前記凹溝の前記第2の内側面と前記第2の部材の前記第2の外側面とが接触するように、前記凹溝に前記第2の部材の端部を挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後、前記凹溝の開口を狭める方向に前記板状部を押圧
することによって、前記第2の部材の前記被係合部に向けて前記第1の部材の前記係合部を接近させて、前記係合部と前記被係合部とを圧接させる圧接工程と
を含む
かしめ構造の製造方法。
【請求項2】
前記係合部の突出方向と直交する断面形状は、前記
被係合部の開口形状よりも大きい
請求項1に記載のかしめ構造の製造方法。
【請求項3】
前記挿入工程に先立ち、前記第2の部材の
前記端部の
前記端縁及び前記被係合部を同時に加工する加工工程を更に含む
請求項1または2に記載のかしめ構造の製造方法。
【請求項4】
前記第1の部材および前記第2の部材は、車両用ドアフレームを構成する部材であり、
前記
第1の部材は、車両の幅方向の外側から車両の幅方向の内側にかけて延在する側壁を有し、前記側壁の先端部には、車両の幅方向の外側に屈曲するとともに車両の幅方向の内側に折り返してなる
前記凹溝を含む前記端部が形成されており、
前記端部の前記凹溝には前記係合部が設けられ、前記端部の前記凹溝の開口は、車両の幅方向の内方に向かって開き、
前記
第2の部材は、車両の幅方向の外側から車両の幅方向の内側にかけて延在する本体部を有し、前記本体部の先端には、車両の幅方向の外側に折り返して車両の幅方向に沿うように直線状に延びる延出部が形成され、
前記延出部の先端部には前記被係合部が設けられ、前記延出部の先端部が車両の幅方向において
前記第1の部材の前記端部の開口に挿入される
請求項1
~3のいずれか一項に記載のかしめ構造の製造方法。
【請求項5】
第1の部材と第2の部材とのかしめ構造であって、
前記第1の部材は
、折返し形状の端部を有し、前記第1の部材の
前記端部は板状部と凹溝とを有し、
前記凹溝は、前記凹溝の内面に設けられる第1の内側面と、前記凹溝の内面において前記第1の内側面よりも前記第1の部材の端縁から遠い位置にあって前記第1の内側面と対向する第2の内側面と、を含み、
前記板状部は
、前記第1の部材の
前記端部の端縁
と、前記第1の内側面とを含み、
前記第2の部材は端部を有し、前記第2の部材の端部は
、端縁と
、前記第1の内側面に対向し得る第1の外側面と、前記第2の内側面に対向し得る第2の外側面と、を含み、
前記凹溝は、前記第2の部材の前記端縁
、前記第1の外側面、および、前記第2の外側面を取り囲んでおり、
前記凹溝の
前記第1の内側面には
前記第1の内側面から突出する係合部が形成され
、
前記凹溝の前記第2の内側面は平坦に構成され、
前記第2の部材の端部の
前記第1の外側面には
、前記係合部に係合するように凹む被係合部が形成され、
前記第2の部材の端部の前記第2の外側面は平坦に構成され、
前記係合部と前記被係合部とが係合され、
前記
係合部は、前記
係合部の突出方向と交差する方向において前記
被係合部の内面に面接触
し、
前記第2の部材の端部の前記第2の外側面は、前記凹溝の前記第2の内側面に接触する
かしめ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめ構造の製造方法及びかしめ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアフレームは、車外側の意匠面を形成するアウタ部材と、アウタ部材に接合されて窓枠の骨格を形成するインナ部材とを備える。そして、アウタ部材とインナ部材とを接合する方法の一種として、かしめ加工が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1に記載のヘミング接合構造においてはまず、インナ部材の端部に設けられた突出部をアウタ部材の折返部に設けられた孔部に挿入しつつ、インナ部材の端部をアウタ部材の折返部に挟みこむ。その後、アウタ部材の外縁部を挟み込んでかしめることによりヘミング接合構造が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載のヘミング接合構造では、アウタ部材の外縁部を挟み込んでかしめる際に、インナ部材とアウタ部材との相対位置がずれてしまい、部材同士の位置決めを的確に行うことが困難となっていた。なお、こうした課題は、車両用ドアフレームを構成する部材同士を接合する場合に限らず、2つの部材を接合する場合に概ね共通して生じるものである。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つの部材を位置決めしつつ接合することのできるかしめ構造の製造方法及びかしめ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するかしめ構造の製造方法は、第1の部材と第2の部材とのかしめ構造の製造方法であって、前記第1の部材は端部を有し、前記第1の部材の端部は板状部と凹溝とを有し、前記板状部は前記第1の部材の端部の端縁を含み、前記第2の部材は端部を有し、前記第2の部材の端部は端縁と2つの側面とを含み、前記凹溝は、前記第2の部材の前記端縁と前記2つの側面とを取り囲んでおり、前記凹溝の側面には係合部が形成され、前記第2の部材の端部の側面には被係合部が形成され、前記係合部が前記凹溝の側面から突出するか、又は、前記被係合部が前記第2の部材の端部の側面から突出することにより、前記係合部と前記被係合部とが係合され、前記製造方法は、前記凹溝の開口が広がった前記板状部が形成された前記第1の部材を準備する準備工程と、前記準備工程の後、前記凹溝に前記第2の部材の端部を挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後、前記凹溝の開口を狭める方向に前記板状部を押圧し、前記係合部と前記被係合部とを圧接させる圧接工程とを含む。
【0008】
上記構成によれば、係合部と被係合部とを圧接させてかしめる。そのため、第1の部材の端部と第2の部材の端部とを第2の部材の端部の挿入方向において位置決めしつつ、かしめ構造を構成することができる。
【0009】
(2)上記かしめ構造の製造方法において、前記係合部及び前記被係合部のうち、一方は凸部であるとともに、他方は凹部であって、前記凸部の突出方向と直交する断面形状は、前記凹部の開口形状よりも大きい。
【0010】
上記構成によれば、凸部と凹部とが圧接した状態でかしめられる。そのため、第1の部材の端部と第2の部材の端部とを第2の部材の端部の挿入方向においてより正確に位置決めしつつ、かしめ構造を構成することができる。
【0011】
(3)上記かしめ構造の製造方法において、前記第1の部材の端部は折返し形状であり、前記挿入工程に先立ち、前記第1の部材の端部の折返しの開口は広がっており、前記挿入工程において、前記第1の部材の端部の前記開口を通じて前記第2の部材を前記第1の部材に挿入し、前記圧接工程において、前記第1の部材に挿入された前記第2の部材の前記被係合部に向けて前記第1の部材の前記係合部を接近させて圧接させるように前記第1の部材の端部を折り返す。
【0012】
上記構成によれば、折返しの開口が広がった第1の部材の端部に対して第2の部材の端部を挿入した後、折返し部を折り返して係合部と被係合部とを圧接させてかしめる。そのため、第1の部材の端部と第2の部材の端部との相対位置について設計誤差があったとしても、第1の部材の端部に対して第2の部材の端部を的確に挿入してかしめ構造を構成することができる。
【0013】
(4)上記かしめ構造の製造方法において、前記挿入工程に先立ち、前記第2の部材の端部の先端面及び前記被係合部を同時に加工する加工工程を更に含む。
上記構成によれば、第2の部材の端部の先端面及び被係合部を同時に加工するため、各々の部位の相対的な位置決めの精度が高まる。そのため、被係合部を係合部に係合させつつ、第2の部材の端部を第1の部材の端部に挿入したときに、第2の部材の端部の先端面を第1の部材の端部に精度良く近接させることができる。
【0014】
(5)上記かしめ構造の製造方法において、前記第1の部材は、車両用ドアフレームのアウタ部材であり、前記第2の部材は、車両用ドアフレームのインナ部材であり、前記アウタ部材は、車両の幅方向の外側から車両の幅方向の内側にかけて延在する側壁を有し、前記側壁の先端部には、車両の幅方向の外側に屈曲するとともに車両の幅方向の内側に折り返してなる折返し部が形成されており、前記インナ部材は、車両の幅方向の外側から車両の幅方向の内側にかけて延在する本体部を有し、前記本体部の先端には、車両の幅方向の外側に折り返して車両の幅方向に沿うように直線状に延びる延出部が形成され、前記延出部の先端部が車両の幅方向において前記折返し部の開口に挿入される。
【0015】
上記構成によれば、係合部と被係合部とを位置決めしつつかしめ構造を構成することにより、車両用ドアフレームの組み付けの精度を高めることができる。
(6)上記課題を解決するかしめ構造は、第1の部材と第2の部材とのかしめ構造であって、前記第1の部材は端部を有し、前記第1の部材の端部は板状部と凹溝とを有し、前記板状部は前記第1の部材の端部の端縁を含み、前記第2の部材は端部を有し、前記第2の部材の端部は端縁と2つの側面とを含み、前記凹溝は、前記第2の部材の前記端縁と前記2つの側面とを取り囲んでおり、前記凹溝の側面には係合部が形成され、前記第2の部材の端部の側面には被係合部が形成され、前記係合部が前記凹溝の側面から突出するか、又は、前記被係合部が前記第2の部材の端部の側面から突出することにより、前記係合部と前記被係合部とが係合され、前記係合部及び前記被係合部のうち、一方は凸部であるとともに、他方は凹部であって、前記凸部は、前記凸部の突出方向と交差する方向において前記凹部の内面に面接触する。
【0016】
上記構成によれば、凸部と凹部とが面接触した状態で、凸部と凹部とがかしめられている。そのため、第1の部材の端部と第2の部材の端部とを第2の部材の端部の挿入方向において位置決めしつつ、かしめ構造を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、係合部と被係合部とを第2の部材の端部の挿入方向において位置決めしつつ、かしめ構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】かしめ構造の一実施形態が適用される車両ドアの上部構造を車両の幅方向外側(車外側)から見た車両ドアの側面図。
【
図4】(a)~(d)は、同実施形態のかしめ構造の製造の過程を示す模式図。
【
図5】(a)~(c)は、かしめ構造の変形形態を示す断面図。
【
図6】(a)~(d)は、かしめ構造の変形形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用ドアフレームのかしめ構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両ボデーの側部に支持される車両ドア1は、その下部を構成するドア本体2を備える。このドア本体2は、ドア外板を構成するドアアウタパネル及びドア内板を構成するドアインナパネル(図示略)が結合されてなる袋状の構造体であって、上向きの開口から出没可能なドアウインドガラスDW等が設置される。
【0020】
また、車両ドア1は、ドア本体2の上端部に取着されて車両ドア1の窓枠(即ちドアウインドガラスDWの枠)を構成するドアフレーム5を備える。このドアフレーム5は、車両の前後方向後側でドア本体2(例えばドアインナパネル)に固着され車両の高さ方向に延在する立柱部5aと、車両の前後方向前側でドア本体2に固着され立柱部5aの上端に接続される略弓形の上縁部5bとを有して下向きに開放されている。本実施形態の車両ドア1は、フロントドアであって、ドアフレーム5の上縁部5b及び立柱部5aは、車両ボデーのAピラー及びBピラーにそれぞれ対応して配置されている。
【0021】
なお、以下では、ドアフレーム5において、ドアウインドガラスDWに臨む側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。また、車室内方に向かう車両の幅方向内側を「車内側」といい、車室外方に向かう車両の幅方向外側を「車外側」という。
【0022】
図2に示すように、立柱部5aは、例えばアルミニウム合金からなる鋼板などの板材をプレス成形してなる第1の部材の一例としてのアウタ部材10と、同様の部材をプレス成形してなる第2の部材の一例としてのインナ部材20と、外側に向けて開放された断面略C字状のシール部材収納部30と、車外側に配置されドアフレーム5の外側から内側にかけて延在する意匠部材40とを備えて構成される。なお、インナ部材20の板厚は、アウタ部材10の板厚よりも大きく設定されている。また、意匠部材40の車外側に露出する端面は、立柱部5aの意匠面41を形成する。この意匠面41は、車両の高さ方向に変位するに従ってその幅が徐変されて意匠性の向上が図られている。
【0023】
アウタ部材10は、内側に向けて開放された断面略U字状のガラスラン収納部11を有する。ガラスラン収納部11は、車外側から車内側にかけて延在する第1側壁11aと、第1側壁11aの車内側端に連続して内側に屈曲する第2側壁11bと、第2側壁11bの内側端に連続して外側から内側にかけて延在する第3側壁11cとを有する。
【0024】
アウタ部材10の端部に位置する第3側壁11cの縁部には、車外側に屈曲するとともに車内側に折り返してなる折返し部12が形成されている。この折返し部12は、直角に屈曲しており、アウタ部材10の端部の端縁10aを含む板状部の第1の内側面と、第1の内側面に対向する第2の内側面と、第1の内側面と第2の内側面の間を繋ぐ内底面とを有している。そして、これらの面の間には、折返し部12の内面によって囲まれる空間域を折返し部12の外部に連通するように車内側に開口した被挿入部13が形成される。
【0025】
一方、インナ部材20は、ガラスラン収納部11の外側で且つ意匠部材40の車内側に沿う状態で外側から内側にかけて延在する取付部21と、取付部21の内側端に連続して車内側に屈曲するとともに内側から車外側に折り返して折返し部12の被挿入部13に臨む断面略矩形状の本体部22とを一体的に有する。なお、本体部22は、立柱部5aの骨格をなすもので、内側において車内側から車外側に向けて車両の幅方向に沿うように直線状に延びる延出部23を有する。インナ部材20は、本体部22の車外側の部位がアウタ部材10に外側から接触する状態で、インナ部材20の端部に位置する延出部23の先端部が被挿入部13に挿入される挿入部24として機能する。挿入部24が被挿入部13に挿入された状態では、車両の幅方向に沿うように延びる挿入部24の外側面が被挿入部13の内側面に対向する対向面として機能するとともに、挿入部24の先端面が被挿入部13の内底面に対向する対向面として機能する。すなわち、挿入部24が被挿入部13に挿入された状態では、アウタ部材10の端部は、インナ部材20の端縁20a及び挿入部24の外側面を取り囲んでいる。そして、延出部23の挿入部24が折返し部12の被挿入部13に挿入されることにより、アウタ部材10とインナ部材20とを接合するかしめ構造50が構成される。
【0026】
具体的には、
図3に示すように、被挿入部13の内側面は、車両の幅方向に沿うように直線状に延びている。また、被挿入部13の内側面には、被挿入部13の内側面から突出する凸部51が形成されており、この凸部51が挿入部24の外側面に形成された凹部52に対して係合する。そして、凸部51と凹部52とが圧接されてかしめられることにより、かしめ構造50が構成される。
【0027】
かしめ構造50は、凸部51の先端面と凹部52の内底面とが面接触しており、凸部51の突出方向において凸部51と凹部52とは位置決めされている。また、凸部51の外側面と凹部52の内側面とが面接触しており、凸部51は、凸部51の突出方向と交差する方向において凸部51の中心を挟んだ両側となる複数の位置で凹部52の内面に接触している。これにより、挿入部24が挿入方向において位置決めされることで、かしめ構造50の接合の強度が高められている。また、挿入部24の先端面と被挿入部13の内底面との間には若干の隙間が介在している。
【0028】
シール部材収納部30は、本体部22の車外側の部位に外側から接触しており、例えば溶接にてアウタ部材10とともに本体部22に結合されている。
なお、ガラスラン収納部11には、長手方向全長に亘って、例えばゴム材からなる断面略U字状のガラスラン45が液密的に装着されている。このガラスラン45は、少なくともガラスラン収納部11の開口端よりも内側に突出しており、ガラスラン収納部11への水の浸入を抑制する。また、ガラスラン45には、ドアウインドガラスDWの車外側及び車内側の両周縁部が弾性的に接触可能となっており、ドアウインドガラスDWを開閉可能に弾性的に保持している。
【0029】
次に、本実施形態のかしめ構造の製造方法について説明する。
図4(a)に示すように、本実施形態のかしめ構造50を製造する際にはまず、インナ部材20の先端部を切断して挿入部24の長さを調整する。このとき、インナ部材20の先端部の切断と合わせて、インナ部材20の外側面に凹部52を同時に加工する。そのため、インナ部材20の先端面と凹部52との相対位置の位置決めが精度よく行われる。
【0030】
続いて、
図4(b)に示すように、アウタ部材10の第3側壁11cの折返し部12を鈍角をなすように屈曲させた状態で、インナ部材20の挿入部24とアウタ部材10の折返し部12とを車両の幅方向において対向させる。このとき、アウタ部材10の折返し部12は、アウタ部材10の被挿入部13の側面に形成された凸部51とインナ部材20の端部に位置する挿入部24の側面に形成された凹部52との干渉を抑える程度に、被挿入部13の開口が広がっている。
【0031】
そして次に、
図4(c)に示すように、インナ部材20を車両の幅方向に沿うようにアウタ部材10に対して接近させる。このとき、インナ部材20は、本体部22の車外側の部位がアウタ部材10に外側から接触して車両の幅方向にガイドされた状態で、挿入部24の先端面がアウタ部材10の折返し部12の内底面に当接する。
【0032】
その後、
図4(d)に示すように、アウタ部材10の折返し部12をインナ部材20の外側面に接近させるように折り返す。そして、アウタ部材10の折返し部12に設けられた凸部51と、インナ部材20の外側面に設けられた凹部52とを圧接させてかしめることにより、アウタ部材10の凸部51とインナ部材20の凹部52とを接合するかしめ構造50が構成される。
【0033】
このとき、アウタ部材10の凸部51の断面形状は、インナ部材20の凹部52の開口形状よりも若干大きく設定されている。そのため、アウタ部材10の凸部51の外側面がインナ部材20の凹部52の内側面に圧接した状態で、アウタ部材10の凸部51がインナ部材20の凹部52に圧入される。そして、凸部51の外側面は、凸部51の突出方向と交差する方向において凸部51の中心位置を挟んだ両側となる複数の位置で凹部52の内側面に接触する。また、凸部51の先端面は、凸部51の突出方向において凹部52の内底面に接触する。
【0034】
このように、アウタ部材10の凸部51とインナ部材20の凹部52とを係合させて挿入部24を挿入方向に位置決めした状態で、アウタ部材10の凸部51とインナ部材20の凹部52とをかしめることにより、かしめ構造50が構成される。
【0035】
特に、本実施形態では、上述したように、インナ部材20の先端部の切断と合わせて、インナ部材20の外側面に凹部52が同時に加工されており、インナ部材20の先端面と凹部52との相対位置の位置決めが精度よく行われている。そのため、インナ部材20の挿入部24の先端面とアウタ部材10の折返し部12の内底面との隙間の大きさが抑えられる。したがって、車両の幅方向におけるかしめ構造50の大きさが抑えられ、同方向におけるドアフレーム5の薄型化に寄与する。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態では、アウタ部材10の折返し部12に形成された被挿入部13に対してインナ部材20に形成された挿入部24を挿入した後、挿入部24の挿入方向と交差する外面に形成される凹部52を、被挿入部13の内面に形成された凸部51に圧接させてかしめる。これにより、挿入部24と被挿入部13とを挿入部24の挿入方向において位置決めしつつ、かしめ構造50を構成することができる。
【0037】
(2)本実施形態では、凸部51の突出方向と直交する断面形状は、凹部52の開口形状よりも大きい。そのため、挿入部24と被挿入部13とを挿入部24の挿入方向においてより正確に位置決めしつつ、かしめ構造50を構成することができる。
【0038】
(3)本実施形態では、折返し部12の開口が広がった被挿入部13に対して挿入部24を挿入した後、折返し部12を折り返して凸部51と凹部52とを圧接させてかしめる。そのため、挿入部24と被挿入部13との相対位置について設計誤差があったとしても、被挿入部13に対して挿入部24を的確に挿入してかしめ構造50を構成することができる。
【0039】
(4)本実施形態では、挿入部24の先端面及び凹部52を同時に加工するため、各々の部位の相対的な位置決めの精度が高まる。そのため、凸部51を凹部52に係合させつつ、挿入部24を被挿入部13に挿入したときに、挿入部24の先端面を被挿入部13に精度良く近接させることができる。これにより、車両の幅方向におけるかしめ構造50の大きさが抑えられ、同方向におけるドアフレーム5の薄型化に寄与することができる。
【0040】
(5)本実施形態では、アウタ部材10は、車両の幅方向の外側から車両の幅方向の内側にかけて延在する側壁を有し、側壁の先端部には、車両の幅方向の外側に屈曲するとともに車両の幅方向の内側に折り返してなる折返し部12が形成されている。また、インナ部材20は、車両の幅方向の外側から車両の幅方向の内側にかけて延在する本体部22を有する。本体部22の先端には、車両の幅方向の外側に折り返して車両の幅方向に沿うように直線状に延びる延出部23が形成され、延出部23の先端部が車両の幅方向において折返し部12の開口に挿入される挿入部24として機能する。そして、凸部51と凹部52とを位置決めしつつかしめ構造50を構成することにより、車両用ドアフレームの組み付けの精度を高めることができる。
【0041】
(6)本実施形態では、かしめ構造50は、凸部51と凹部52とが面接触した状態で、凸部51と凹部52とがかしめられている。そのため、挿入部24と被挿入部13とを挿入部24の挿入方向において位置決めしつつ、かしめ構造50を構成することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図5(a)に示す例では、アウタ部材10の折返し部12の基端部の内側面に凸部51aが形成されるとともに、インナ部材20の挿入部24の外側面に凸部51aが係合する凹部52aが形成されている。また、
図5(b)に示す例では、アウタ部材10の折返し部12の基端部の内側面に凹部52bが形成されるとともに、インナ部材20の挿入部24の外側面に凹部52bに係合する凸部51bが形成されている。一方、
図5(c)に示す例では、アウタ部材10の折返し部12の先端部の内側面に凹部52cが形成されるとともに、インナ部材20の挿入部24の外側面に凹部52cに係合する凸部51cが形成されている。
【0043】
また、アウタ部材10の折返し部12の折返し方向を
図5(a)~(c)に示した例とは正反対の方向としてもよい。この場合、
図6(a)に示す例では、アウタ部材10の折返し部12の先端部の内側面に凸部51dが形成されるとともに、インナ部材20の挿入部24の外側面に凸部51dが係合する凹部52dが形成されている。一方、
図6(b)に示す例では、アウタ部材10の折返し部12の先端部の内側面に凸部51eが形成されるとともに、インナ部材20の挿入部24の外側面に凸部51eが係合する凹部52eが形成されている。また、
図6(c)に示す例では、インナ部材20の挿入部24の外側面に凹部52fが形成されるとともに、アウタ部材10の折返し部12の先端部を外側から押圧して変形させている。これにより、アウタ部材10の折返し部12の先端部の内側面には凹部52fに係合する凸部51fが形成されている。
【0044】
また、インナ部材20の挿入部24の先端部が直角に屈曲した構成としてもよい。
図6(d)に示す例では、アウタ部材10の折返し部12Aが複数回に亘って曲げ加工して構成されており、アウタ部材10の被挿入部13AはL字状に屈曲した構成を有している。そして、アウタ部材10の被挿入部13Aに対してインナ部材20の挿入部24を弾性変形させつつインナ部材20の挿入部24の先端に形成された凸部51Aをアウタ部材10の被挿入部13Aに圧入することにより、かしめ構造が構成される。このとき、アウタ部材10の被挿入部13Aの隅部には段部13Bが設けられており、この段部13Bがアウタ部材10の被挿入部13Aからインナ部材20の挿入部24が脱落することを規制している。また、アウタ部材10の折返し部12Aの外側面を押圧したときには、その押圧力が段部13Bを介してインナ部材20の挿入部24に伝達される。これにより、アウタ部材10とインナ部材20とを接合するかしめ構造50が構成される。
【0045】
・上記実施形態において、インナ部材20の先端を切断する工程と、インナ部材20の外側面に凹部52を形成する工程とを個別の工程として行ってもよい。
・上記実施形態において、インナ部材20の凹部52の開口形状と、アウタ部材10の凸部51の断面形状とを同一の大きさに設定し、インナ部材20の凹部52とアウタ部材10の凸部51とを弾性変形を伴うことなく凹凸係合させる構成としてもよい。
【0046】
・上記実施形態において、インナ部材20及びアウタ部材10の材質は必ずしもアルミニウム合金である必要はなく、少なくとも一方の部材の材質として、例えばステンレス等、他の材質を用いてもよい。
【0047】
・上記実施形態において、インナ部材20の挿入部24の外側面をアウタ部材10の被挿入部13の内側面に点接触あるいは線接触させた状態でかしめ構造50を構成してもよい。
【0048】
・上記実施形態において、アウタ部材10の凸部51の先端面をインナ部材20の凹部52の内底面から離間させた状態で、凸部51の外側面と凹部52の内側面とを面接触させつつかしめ構造50を構成してもよい。
【0049】
・上記実施形態において、インナ部材20に凹部52を形成するとともに、アウタ部材10に凹部52に係合する凸部51を形成する構成としてもよい。
・上記実施形態において、アウタ部材10又はインナ部材20は、板材をロール成形したものであってもよい。この場合、アウタ部材10又はインナ部材20は、長手方向に一定の断面形状を有していてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、かしめ構造50は、必ずしも、立柱部5aにおける車両の高さ方向の全域に設ける必要はなく、立柱部5aにおける車両の高さ方向の一部のみに設けてもよい。
【0051】
・本発明は、例えばリアドアのドアフレームに適用してもよい。また、本発明の適用対象は車両ドアフレームに限らず、二つの部材を凹凸かしめにより接合する構成であれば適用することは可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…車両ドア、5…ドアフレーム、10…第1の部材の一例としてのアウタ部材、10a…端縁、13…凹部、20…第2の部材の一例としてのインナ部材、20a…端縁、24…挿入部、51…被係合部の一例としての凸部、52…係合部の一例としての凹部。