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  • 特許-ドリル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
B23B51/00 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018054841
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019166591
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】桑野 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】大野 伸一郎
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-166405(JP,A)
【文献】実開昭60-175513(JP,U)
【文献】特開昭63-288615(JP,A)
【文献】特開2003-025125(JP,A)
【文献】特開2003-300111(JP,A)
【文献】特開2008-296313(JP,A)
【文献】特開2009-148865(JP,A)
【文献】特表2012-529375(JP,A)
【文献】特開2012-192514(JP,A)
【文献】特開2014-004671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0023449(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102909612(CN,A)
【文献】特開2005-001082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00-49/06
B23B 51/00-51/14
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の切れ刃を有するドリルであって、前記各切れ刃間にはシンニング加工により形成されたシンニング面を有しており、前記シンニング面は、前記切れ刃の一部を含む第1シンニング面と、前記切れ刃から離間して前記切れ刃のすくい面に設けられている第2シンニング面と、から構成されており、前記第2シンニング面のすくい角は前記第1シンニング面のすくい角よりも大きいことを特徴とするドリル。
【請求項2】
前記第2シンニング面のすくいと前記第1シンニング面のすくい角の差は、2°以上であることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記第2シンニング面は、前記ドリル径の2%以上10%以下の範囲で前記切れ刃と離間していることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の穴あけ加工に用いるドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
穴あけ工具であるドリルの刃先の中心部、すなわちドリルの心厚は金属材料等の被削物の穴あけ加工時においてチゼルエッジ全体で被削材を押しつぶしながら穴あけ加工を行う役割を担っている。最近では、ドリルの切れ味向上と切削加工時のドリルの求心性を一層高めるためにドリルにシンニングを施す(ドリルの中心部にすくい角を設けて心厚を薄くする)傾向が主流になりつつある。
【0003】
例えば、特許文献1にはシンニング加工を施すことでシンニング面を有したドリルが開示されている。このドリルは、通常のシンニング面(第1シンニング面)に加えて、切れ刃に近接して別個のシンニング面(第2シンニング面)を設けている。また、この第1シンニング面の溝底部分における曲率半径を0.1~0.5mmの範囲とし、第2シンニング面の曲率半径を0.1mm未満とすることで、チゼルの幅を0.2mm以下にしている。そのことでドリルと被削材の初期の接触時における、いわゆる「食付き性」が向上して、ドリル加工時の直進性および加工精度の向上およびスラスト力の低減を図ることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-025125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているドリルでは第1シンニング面よりも切れ刃側に第2シンニング面を設けて、結果的にチゼルの幅を通常よりも狭くしているが、被削材がアルミニウム合金など比較的に延性を有する材料である場合には第2シンニング面に被削材が凝着するという問題があった。シンニング面に被削材が凝着すると、ドリルの溝内で切り屑の流れが阻害される。その結果、切り屑の形態がらせん状から直線状へ変化して、ねじれ溝内で切り屑が詰まるという問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明においてはアルミニウム合金や銅合金など比較的に延性を有する被削材に対しても穴あけ加工時に発生する切り屑を速やかに排出できるドリルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するために、本発明は2枚の切れ刃を有して、それら2枚の各切れ刃間にはシンニング加工により形成されたシンニング面を有しているドリルとする。また、そのドリルのシンニング面は切れ刃の一部を含む第1シンニング面、および切れ刃から離間していて、かつ切れ刃のすくい面に設けられている第2シンニング面から構成する。さらに、第1シンニング面のすくい角を第2シンニング面のすくい角よりも大きくする。
【0008】
第1および第2シンニング面のすくい角については、各すくい角の角度の差(角度差)
を2°以上にもできる。また、第2シンニング面はドリル径の2%以上10%以下の範囲で切れ刃と離間してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るドリルを用いることにより、被削材が比較的に延性に富むアルミニウム合金等のように切削加工中にドリルの切刃に溶着しやすい場合でも、前述の第1および第2シンニング面を備えることで溶着する前に被削材が強制的に切れ刃から離れる。その結果、延性を有する被削材でも切削加工中における切り屑の流れが改善されて、切り屑が分断しやすくなることで、切り屑を排出する効果が高まる。加えて、切れ刃のすくい面に新たなシンニング面(第2シンニング面)を設けることで、すくい面と被削材との接触面積が減少して、切削加工中の切削抵抗を下げる効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一例であるドリル1の正面図である。
図2図1に示すドリル1の右側面図である。
図3図1に示すドリル1の先端部の底面図である。
図4図3に示すドリル1の先端部の斜視図である。
図5図1に示すドリル1のA-A線断面図である。
図6】シンニング面のすくい角について異なる形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の一例について図面を用いて説明する。本発明の実施形態の一例であるドリル1の正面図を図1図1に示すドリル1の右側面図を図2にそれぞれ示す。本発明のドリル1は図1および図2に示すように2枚の切れ刃2,2を備えて、それら切れ刃2,2により切削加工された切り屑を外部へ排出する2条のねじれ溝3,3を有している。各切れ刃2,2には通常のドリルと同様にすくい面4,4および逃げ面5,5が連続して形成されている。
【0012】
図1に示すドリル1の先端部の底面図を図3図3に示すドリル1の先端部の斜視図を図4にそれぞれ示す。2枚の切れ刃2,2の間には図3および図4に示すようにシンニング加工が施されたシンニング面10(11,12)を備えている。
【0013】
そのシンニング面10は、第1シンニング面11と第2シンニング面12から構成されている。第1シンニング面11は切れ刃2の一部を含むシンニング面であり、後述する第2シンニング面12よりも広範囲に形成されている。これに対して、第2シンニング面12は切れ刃2のすくい面4に設けられていて、切れ刃2から距離eだけ離間している。この距離eは、図2に示すドリルの直径(ドリル径)dに対して、2%以上10%以下の範囲(0.02d≦e≦0.10d)であることが望ましい。
【0014】
図1におけるドリル1のA-A線断面図を図5に示す。図5に示す切れ刃2を通りドリル1の中心軸に平行な仮想線C1を基準にすると、第1シンニング面11からドリル1の軸方向への仮想延長線L11と仮想線Cの成す角度が第1シンニング面11のすくい角θ11である。また、第2シンニング面12からドリル1の軸方向への仮想延長線L12と仮想線C1の成す角度が第2シンニング面12のすくい角θ12となる。
【0015】
この場合、本発明のドリルは、第2シンニング面12のすくい角θ12を第1シンニング面11のすくい角θ11よりも大きくする(θ12>θ11)。第2シンニング面12のすくい角θ12と第1シンニング面11のすくい角θ11の差(角度差)は2°以上(θ12-θ11≧2°)とすることが好ましい。
【0016】
本発明のドリルに関するシンニング面(第1および第2シンニング面)のすくい角について異なる形態を示す断面図を図6に示す。図5に示す場合と同様に図6に示す切れ刃52を通りドリルの中心軸に平行な仮想線C2を基準にすると、切れ刃52を含む第1のシンニング面21のからドリルの軸方向への仮想延長線L21と仮想線C2の成す角度が第1シンニング面21のすくい角θ21である。また、第2シンニング面22からドリルの軸方向への仮想延長線L22と仮想線C2の成す角度θ22が第2シンニング面22のすくい角θ22となる。
【0017】
図6に示すシンニングの形態の場合も、図5に示す場合と同様に本発明のドリルは、第2シンニング面22のすくい角θ22を第1シンニング面21のすくい角θ21よりも大きくする。そして、第2シンニング面22のすくい角θ22と第1シンニング面21のすくい角θ21の差(角度差)は2°以上(θ22-θ21≧2°)とすることが好ましい。
【0018】
なお、本発明のドリルの第1シンニング面は、図5および図6に示すように第1シンニング面11,21からドリルの軸方向への仮想延長線L11,L21がドリルの中心軸に平行な仮想線C1,C2に対して紙面上で時計周り側,反時計回り側のいずれの側(方向)に形成されても良い。
【符号の説明】
【0019】
1 ドリル
2,52 切刃
3 ねじれ溝
4 すくい面
5,55 逃げ面
10 シンニング面
11,21 第1シンニング面
12,22 第2シンニング面
θ11,θ21 第1シンニング面のすくい角
θ12,θ22 第2シンニング面のすくい角
d ドリルの直径(ドリル径)
e 切れ刃と第2シンニング面の距離
O ドリルの中心軸
C1,C2 ドリルの中心軸に平行な仮想線
L11,L21 第1シンニング面からドリルの軸方向への仮想延長線
L12,L22 第2シンニング面からドリルの軸方向への仮想延長線
図1
図2
図3
図4
図5
図6