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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220602BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220602BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02J7/00 302D
B62D5/04
H02J7/10 B
H02J7/00 303C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018025279
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019140883
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 豊樹
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148238(JP,A)
【文献】特開2010-041895(JP,A)
【文献】特開2015-149849(JP,A)
【文献】特開2009-120081(JP,A)
【文献】特開2017-197138(JP,A)
【文献】特開2015-054592(JP,A)
【文献】特開2016-072091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B62D 5/04
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源と、
前記主電源に電源スイッチを介して接続された補助電源と、
前記主電源に前記電源スイッチを介して接続され、前記主電源に基づいて前記補助電源を充電するための充電回路と、
前記補助電源から電動パワーステアリング装置のモータ駆動回路への電力供給をオンオフする切替回路と、
前記電源スイッチをオフするための指令が入力されたときに、前記補助電源の蓄電量が所定量未満である場合には、前記補助電源の蓄電量が前記所定量以上となるまで、前記充電回路によって前記補助電源を充電した後に、前記電源スイッチをオフする制御部とを含む、電源装置。
【請求項2】
前記補助電源はリチウムイオンキャパシタである請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記補助電源が、直列接続された複数のリチウムイオンキャパシタセルから構成されている、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記充電回路が、前記主電源の電圧を昇圧し、昇圧後の電圧によって前記補助電源を充電するための充電回路であり、
前記主電源と前記モータ駆動回路とをバイパススイッチを介して電気的に接続するバイパス回路と、
少なくとも、前記充電回路に異常が発生したときおよび前記切替回路に異常が発生したときに、前記バイパススイッチをオンするバイパススイッチ制御部を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電動パワーステアリング装置(EPS : Electric Power Steering)用の電動モータの駆動回路に電力を供給するための電力供給装置が開示されている。特許文献1に記載の電力供給装置は、主電源と、主電源に接続されたキャパシタと、主電源に基づいてキャパシタを充電するための充電回路と、主電源のみによって駆動回路に電力を供給する通常出力電圧モードと、キャパシタの放電によって主電源およびキャパシタの両方を利用して駆動回路に電力を供給する高出力電圧モードとを切り替える切替回路(放電回路)とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の電力供給装置では、電源電力が所定の閾値以上のときには、電力供給モードが高出力電圧モードに設定されるように、切替回路が制御される。この場合、キャパシタは放電状態となる。一方、電源電力が閾値未満のときには、電力供給モードが通常出力電圧モードに設定されるように、切替回路が制御される。また、電源電力が閾値未満であるときにおいて、キャパシタが満充電でなければ、キャパシタが充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-91343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電力供給装置でキャパシタにリチウムイオンキャパシタを用いた場合あるいはキャパシタの代わりにリチウムイオン電池を用いた場合は、車両のキースイッチがオフ状態である場合に、キャパシタに接続されたスイッチング素子などの回路素子の漏れ電流により放電が徐々に進行するためキャパシタの電圧が徐々に低下し、やがて動作電圧の下限を超えてしまいキャパシタが劣化するおそれがある。
【0006】
この発明の目的は、電源スイッチがオフ状態である場合に、補助電源の電圧が低下して補助電源が劣化するのを抑制することが可能となる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、主電源(31)と、前記主電源に電源スイッチ(51)を介して接続された補助電源(55)と、前記主電源に前記電源スイッチを介して接続され、前記主電源に基づいて前記補助電源を充電するための充電回路(53)と、前記補助電源から負荷への電力供給をオンオフする切替回路(54)と、前記電源スイッチをオフするための指令が入力されたときに、前記補助電源の蓄電量が所定量未満である場合には、前記補助電源の蓄電量が前記所定量以上となるまで、前記充電回路によって前記補助電源を充電した後に、前記電源スイッチをオフする制御部とを含む、電源装置を提供する。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0008】
この構成では、電源スイッチをオフするための指令が入力されたときに、補助電源の蓄電量が所定量未満である場合には、補助電源の蓄電量が所定量以上となるまで、充電回路によって補助電源が充電される。その後、電源スイッチがオフされる。したがって、電源スイッチがオフ状態である場合に、補助電源の電圧が低下して補助電源が劣化するのを抑制することが可能となる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記補助電源はリチウムイオンキャパシタである。
この発明の一実施形態では、前記補助電源が、直列接続された複数のリチウムイオンキャパシタセルから構成されている。
この発明の一実施形態では、前記負荷に電力を供給するための駆動回路と、前記主電源と前記駆動回路とをバイパススイッチを介して電気的に接続するバイパス回路と、前記充電回路および前記切替回路のうちの少なくとも一方に異常が発生したときに、前記バイパススイッチをオンするバイパススイッチ制御部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電源装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1の電動パワーステアリング装置の電気的構成を示す回路図である。
図3図3は、主として、EPS用ECUの構成を示すブロック図である。
図4A図4Aは、電源制御用ECUの動作を説明するためのフローチャートの一部である。
図4B図4Bは、電源制御用ECUの動作を説明するためのフローチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電源装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0012】
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して相対回転可能に連結されている。
トーションバー10の近傍には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。この実施形態では、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTは、たとえば、右方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、左方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクの大きさが大きくなるものとする。
【0013】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
【0014】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクをステアリングシャフト6に伝達するための減速機19とを含む。減速機19は、ウォームギヤ20と、このウォームギヤ20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。
【0015】
ウォームギヤ20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは一体的に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォームギヤ20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォームギヤ20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。すなわち、電動モータ18によってウォームギヤ20を回転駆動することによって、電動モータ18による操舵補助が可能となっている。
【0016】
車両には、車速Vを検出するための車速センサ24が設けられている。トルクセンサ11によって検出される操舵トルクT、車速センサ24によって検出される車速V等は、EPS用ECU(ECU:Electronic Control Unit)12に入力される。EPS用ECU12は、これらの入力等に基づいて、電動モータ18を制御することにより、いわゆるアシスト制御を行う。
【0017】
EPS用ECU12内のモータ駆動回路42および電源IC43(図3参照)には、主電源31および補助電源装置32内の補助電源55(図2参照)のいずれか一方または両方によって電力が供給される。補助電源装置32は、電源制御用ECU33によって制御される。EPS用ECU12と電源制御用ECU33とは通信線を介して接続されている。主電源31と補助電源装置32とによって電源装置30が構成される。
【0018】
図2は、電動パワーステアリング装置1の電気的構成を示す回路図である。図3は、主として、EPS用ECU12の構成を示すブロック図である。
図3を参照して、EPS用ECU12は、マイクロコンピュータからなるモータ制御回路41と、モータ制御回路41によって制御され、電動モータ18に電力を供給するモータ駆動回路(インバータ回路)42と、モータ制御回路41用の電源を生成するための電源IC43とを含んでいる。EPS用ECU12には、電動モータ18に流れるモータ電流を検出するための電流センサ44の出力信号が入力される。
【0019】
モータ制御回路41は、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTと、車速センサ24によって検出される車速Vと、電流センサ44によって検出されるモータ電流とに基づいて、モータ駆動回路42を駆動制御する。具体的には、モータ制御回路41は、操舵トルクTと車速Vとに基づいて目標電流値を設定し、電動モータ18に流れるモータ電流が目標電流値と等しくなるように、モータ駆動回路42を駆動制御する。
【0020】
図2を参照して、補助電源装置32は、主電源31に直列に接続されている。補助電源装置32は、電源リレー(電源スイッチ)51と、第1逆接保護リレー52と、充電回路53と、放電回路(切替回路)54と、補助電源55と、バイパスリレー(バイパススイッチ)57と、第2逆接保護リレー58とを含む。
電源リレー51と第1逆接保護リレー52とが、主電源31の正極側端子と充電回路53との間に配置されている。第1逆接保護リレー52と充電回路53との接続点をP1として、第1逆接保護リレー52は、電源リレー51と接続点P1との間に接続されている。電源リレー51は、スイッチング素子51Aと、主電源31に対して逆方向となるようにスイッチング素子51Aに並列接続されたダイオード51Bとからなる。この実施形態の電源リレー51は、ダイオード51Bが内蔵されたnチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなる。
【0021】
第1逆接保護リレー52は、主電源31が誤って逆接続された場合に回路を保護するためのリレーである。第1逆接保護リレー52は、スイッチング素子52Aと、正しく接続された主電源31に対して順方向となるようにスイッチング素子52Aに並列接続されたダイオード52Bとからなる。この実施形態の第1逆接保護リレー52は、ダイオード52Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。
【0022】
充電回路53は、補助電源55を充電するための回路である。充電回路53は、直列接続された一対のスイッチング素子61A,62Aと、これらのスイッチング素子61A,62Aの接続点P2と接続点P1との間に接続された昇圧コイル63とを含む。上段側のスイッチング素子61Aには、主電源31に対して順方向(補助電源55に対して逆方向)となるようにダイオード61Bが並列接続されている。下段側のスイッチング素子62Aには、主電源31に対して逆方向となるようにダイオード62Bが並列接続されている。この実施形態では、スイッチング素子61A,62Aは、それぞれダイオード61B,62Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。
【0023】
上段側のスイッチング素子61Aのソースは、接続点P2で下段側のスイッチング素子62Aのドレインに接続されている。下段側のスイッチング素子62Aのソースは接地されている。上段側のスイッチング素子61Aのドレインは、補助電源55の出力側端子に接続されている。上段側のスイッチング素子61Aと補助電源55の出力側端子との接続点をP3で示す。補助電源55の出力側端子は、スイッチング素子61Aおよび昇圧コイル63を介して接続点P1に接続されている。接続点P1と補助電源55の入力側端子との接続点をP4で示す。
【0024】
補助電源55は、第1キャパシタ55Aと、第1キャパシタ55Aに直列接続された第2キャパシタ55Bとからなる。この実施形態では、各キャパシタ55A,55Bは、リチウムイオンキャパシタセルからなる。補助電源55における第1キャパシタ55A側の端子(入力側端子)が接続点P4に接続されている。補助電源55における第2キャパシタ55B側の端子(出力側端子)が接続点P3に接続されている。
【0025】
接続点P3と接続点P4との間に、放電回路54が接続されている。放電回路54は、直列接続された一対のスイッチング素子71A,72Aからなる。上段側のスイッチング素子71Aには、補助電源55に対して逆方向となるようにダイオード71Bが並列接続されている。下段側のスイッチング素子72Aには、主電源31に対して順方向となるようにダイオード72Bが並列接続されている。この実施形態では、スイッチング素子71A,72Aは、それぞれダイオード71B,72Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。
【0026】
上段側のスイッチング素子71Aのソースは、接続点P5で下段側のスイッチング素子72Aのドレインに接続されている。上段側のスイッチング素子71Aのドレインは、接続点P3に接続されている。下段側のスイッチング素子72Aのソースは、接続点P4に接続されている。一対のスイッチング素子71A,72Aの接続点P5は、EPS用ECU12内のモータ駆動回路42および電源IC43に接続されている。
【0027】
この実施形態では、補助電源装置32に故障(異常)が発生した場合にも、EPS用ECU12に電力を供給できるようにするために、バイパス回路81が設けられている。補助電源装置32の故障(異常)とは、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、充電回路53内のスイッチング素子61A,62A、切替回路54内のスイッチング素子71A,72A等の故障(異常)をいう。バイパス回路81は、主電源31とEPS用ECU12とを、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58を介して電気的に接続する。
【0028】
バイパス回路81の一端は、主電源31の正極側端子に接続されている。バイパス回路81の他端は、接続点P5とEPS用ECU12とを接続する接続線に接続されている。接続点P5とEPS用ECU12とを接続する接続線と、バイパス回路81の他端との接続点をP6で示す。
バイパスリレー57は、スイッチング素子57Aと、主電源31に対して逆方向となるようにスイッチング素子57Aに並列接続されたダイオード57Bとからなる。この実施形態では、スイッチング素子57Aは、ダイオード57Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。スイッチング素子57Aのドレインが主電源31の正極側端子に接続されている。
【0029】
第2逆接保護リレー58は、バイパスリレー57と接続点P6との間に接続されている。第2逆接保護リレー58は、主電源31が誤って逆接続された場合に回路を保護するためのリレーである。第2逆接保護リレー58は、スイッチング素子58Aと、正しく接続された主電源31に対して順方向となるようにスイッチング素子58Aに並列接続されたダイオード58Bとからなる。この実施形態では、スイッチング素子58Aは、ダイオード58Bが内蔵されたnチャネル型MOSFETからなる。スイッチング素子58Aのソースがスイッチング素子57Aのソースに接続され、スイッチング素子58Aのドレインが接続点P6に接続されている。
【0030】
主電源31の端子間電圧(主電源電圧Vb)は、第1電圧センサ91によって検出される。補助電源55の端子間電圧(補助電源電圧Vc)は、第2電圧センサ92によって検出される。接続点P2の電圧(充電中点電圧Vd)は、第3電圧センサ93によって検出される。接続点P5の電圧(放電中点電圧Ve)は、第4電圧センサ94によって検出される。主電源31の出力電流(主電源電流ib)は、電流センサ95によって検出される。
【0031】
各電圧センサ91~94の検出値および電流センサ95の検出値は、電源制御用ECU33に入力される。電源制御用ECU33には、車両のキースイッチの状態を表すキースイッチ状態検知信号が入力する。この実施形態では、車両のキースイッチは、エンジン(図示略)を始動するためのイグニッションキーである。キースイッチは、イグニッションキーの他、イモビライザを備えた電子キーを用いて認証を得られた場合に電気信号を発するもの、または押ボタンによって電気信号を発するものであってもよい。
【0032】
電源制御用ECU33は、リレー51,52,57,58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをそれぞれ駆動するための複数のゲート駆動回路(図示略)およびマイクロコンピュータ(図示略)を含んでいる。マイクロコンピュータは、電源制御処理を行う。具体的には、マイクロコンピュータは、キースイッチ状態検知信号、各電圧センサ91~94の検出値および電流センサ95の検出値等に基づいて、前記複数のゲート駆動回路を制御する。
【0033】
キースイッチがオン操作されたときには、そのことを示すキースイッチ状態検知信号(以下、「キースイッチオン状態信号」という。)が電源制御用ECU33に入力される。キースイッチオン状態信号は、電源スイッチをオするための指令である。キースイッチオン状態信号が入力されると、電源制御用ECU33は、初期設定を行う。具体的には、電源制御用ECU33は、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58、スイッチング素子61A,62A,71Aをオフとし、電源リレー51、第1逆接保護リレー52およびスイッチング素子72Aをオンとする。なお、スイッチング素子71A,72Aに関し、スイッチング素子72Aをオフとし、スイッチング素子71Aをオンとするようにしてもよい。
【0034】
電源制御用ECU33は、初期設定の後に、電圧センサ91~94および電流センサ95等の検出値に基いて、補助電源装置32内の4つのスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオンオフ制御する。また、電源制御用ECU33は、電圧センサ91~94および電流センサ95等の検出値に基いて、補助電源装置32に故障が発生したか否かを監視する。補助電源装置32の故障の監視は、充電回路53および放電回路54の少なくとも一方の故障(異常)を監視するものであってもよい。
【0035】
電源制御用ECU33は、EPS用ECU12が電動モータ18に供給する電力に応じた値に基づいて、4つのスイッチング素子61A,62A,71A,72Bを制御する。具体的には、電源制御用ECU33は、主電源電力PSに基づいて、4つのスイッチング素子61A,62A,71A,72Bを制御する。主電源電力PSは、EPS用ECU12が電動モータ18を駆動することで消費される主電源31の実電力である。主電源電力PSは、電流センサ95によって検出される主電源電流ibと、第1電圧センサ91によって検出される主電源電圧Vbとの積を演算することにより求められる。
【0036】
より具体的には、主電源電力PSが予め定められた出力電圧切替用閾値KE未満であるときには、電源制御用ECU33は、例えば、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオフに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオンに設定する。これにより、主電源31のみによってモータ駆動回路42に電力が供給される。このように、主電源31のみによってEPS用ECU12に電力が供給される電力供給モード(電力供給状態)を「通常出力電圧モード(通常出力電圧状態)」という場合がある。
【0037】
また、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE未満であるときには、電源制御用ECU33は、必要に応じて、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aを交互にオンさせる。これにより、接続点P1における出力電圧(主電源電圧)が昇圧されて、補助電源55に印加される。これにより、補助電源55(第1キャパシタ55Aおよび第2キャパシタ55B)が充電される。
【0038】
主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるときには、電源制御用ECU33は、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aをオフ状態とする。また、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオンに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオフに設定する。これにより、主電源31および補助電源55の両方によってモータ駆動回路42に電力が供給される。この場合、主電源31の電圧に補助電源55の電圧が上乗せされた電圧がモータ駆動回路42に印加される。
【0039】
電源制御用ECU33は、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるときに、放電回路54内の一対のスイッチング素子71A,72Aを交互にオンさせてもよい。この場合も、主電源31および補助電源55の両方によってモータ駆動回路42に電力が供給される。このように主電源31および補助電源55の両方を利用してEPS用ECU12に電力が供給される電力供給モード(電力供給状態)を「高出力電圧モード(高出力電圧状態)」という場合がある。
【0040】
補助電源装置32の故障が検出された場合には、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、スイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフとし、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58をオンとする。
キースイッチがオフ操作されたときには、そのことを示すキースイッチ状態検知信号(以下、「キースイッチオフ状態信号」という。)が電源制御用ECU33に入力される。電源制御用ECU33は、キースイッチオフ状態信号が入力されると、補助電源55の蓄電量が所定量未満であるか否かを判定する。この実施形態では、補助電源55の蓄電量が所定量未満であるか否かは、補助電源電圧Vcが後述する所定の充電判別用閾値Vth2(Vth2>0)未満であるか否かを判別することによって判定される。
【0041】
補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2以上(補助電源の蓄電量が所定量以上)であれば、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフにする。一方、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2未満(補助電源の蓄電量が所定量未満)であれば、電源制御用ECU33は、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2以上となるまで、補助電源55を充電した後、リレー51,52,57,58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフにする。
【0042】
図4Aおよび図4Bは、電源制御用ECU33の動作を説明するためのフローチャートである。
電源制御用ECU33は、キースイッチオン状態信号が入力されると(ステップS1:YES)、初期設定を行う(ステップS2)。この初期設定では、電源制御用ECU33は、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58、スイッチング素子61A,62A,71Aをオフとし、電源リレー51、第1逆接保護リレー52およびスイッチング素子72Aをオンとする。これにより、電力供給モードは、通常出力電圧モードとなる。
【0043】
なお、前述したように、スイッチング素子71A,72Aに関し、スイッチング素子72Aをオフとし、スイッチング素子71Aをオンとするようにしてもよい。このようにした場合には、電力供給モードは、高出力電圧モードとなる。
次に、電源制御用ECU33は、補助電源装置32の故障が検出されたか否かを判別する(ステップS3)。補助電源装置32の故障が検出されなかった場合には(ステップS3:NO)、電源制御用ECU33は、第1電圧センサ91によって検出される主電源電圧Vb、第2電圧センサ92によって検出される補助電源電圧Vcおよび電流センサ95によって検出される主電源電流ibを取得する(ステップS4)。
【0044】
次に、電源制御用ECU33は、ステップS4で取得された主電源電圧Vdと主電源電流ibとを乗算することにより主電源電力PSを演算する(ステップS5)。そして、電源制御用ECU33は、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるか否かを判別する(ステップS6)。
主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE未満である場合には(ステップS6:NO)、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオフに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオンに設定する(ステップS7)。これにより、補助電源55の放電が実行されている場合には、その放電が停止される。また、これにより、電力供給モードが通常出力電圧モードとなる。
【0045】
この後、電源制御用ECU33は、補助電源電圧Vcが所定の充電判別用閾値Vth1(Vth1>0)未満であるか否かを判別する(ステップS8)。この判別は、補助電源55の過充電を防止するために行われている。充電判別用閾値Vth1は、補助電源55の上限電圧と等しい値またはそれよりも若干小さい値に設定される。補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth1以上であれば(ステップS8:NO)、電源制御用ECU33は、充電回路53内の2つのスイッチング素子61A,62Aをともにオフに設定する(ステップS9)。そして、電源制御用ECU33は、キースイッチオフ状態信号が入力されたか否かを判別する(ステップS13)。キースイッチオフ状態信号が入力されていなければ(ステップS13:NO)、電源制御用ECU33はステップS3に戻る。
【0046】
前記ステップS8において、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth1未満であると判別された場合には(ステップS8:YES)、電源制御用ECU33は、補助電源55の充電処理を開始する(ステップS10)。具体的には、電源制御用ECU33は、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aを交互にオンオフさせて、接続点P3に昇圧電圧を発生させる。これにより、補助電源55が充電される。なお、ステップS8からステップS10に移行した場合に、既に充電処理が開始されている場合には、電源制御用ECU33は充電処理を継続して行う。
【0047】
この後、電源制御用ECU33は、ステップS13に移行し、キースイッチオフ状態信号が入力されたか否かを判別する。キースイッチオフ状態信号が入力されていなければ(ステップS13:NO)、電源制御用ECU33はステップS3に戻る。
前記ステップS6で、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であると判別された場合には(ステップS6:YES)、電源制御用ECU33は、充電回路53内の2つのスイッチング素子61A,62Aをともにオフに設定する(ステップS11)。これにより、充電処理が実行中である場合には、充電処理が停止される。
【0048】
次に、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオンに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオフに設定する(ステップS12)。これにより、電力供給モードが高出力電圧モードとなる。
この後、電源制御用ECU33は、ステップS13に移行し、キースイッチオフ状態信号が入力されたか否かを判別する。キースイッチオフ状態信号が入力されていなければ(ステップS13:NO)、電源制御用ECU33はステップS3に戻る。
【0049】
ステップS13において、キースイッチオフ状態信号が入力されていると判別された場合には(ステップS13:YES)、電源制御用ECU33はステップS14に進む。ステップS14では、電源制御用ECU33は、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2(Vth2>0)未満であるか否かを判別する。充電判別用閾値Vth2は、充電判別用閾値Vth1と同じ値であってもよい。補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2以上であれば(ステップS14:NO)、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフにする(ステップS17)。そして、電源制御用ECU33は、今回の電源制御処理を終了する。
【0050】
前記ステップS14において、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2未満であると判別された場合には(ステップS14:YES)、電源制御用ECU33は、放電回路54内の上段側のスイッチング素子71Aをオフに設定し、下段側のスイッチング素子72Aをオンに設定する(ステップS15)。これにより、補助電源55の放電が実行されている場合には、その放電が停止される。そして、電源制御用ECU33は、補助電源55の充電処理を開始する(ステップS16)。具体的には、電源制御用ECU33は、充電回路53内の一対のスイッチング素子61A,62Aを交互にオンさせる。これにより、補助電源55が充電される。なお、ステップS15からステップS16に移行した場合に、既に充電処理が開始されている場合には、電源制御用ECU33は充電処理を継続して行う。この後、電源制御用ECU33は、ステップS14に戻る。
【0051】
したがって、ステップS14において、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2未満であると判別された場合には、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2以上となるまで補助電源55が充電された後に、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、バイパスリレー57、第2逆接保護リレー58およびスイッチング素子61A,62A,71A,72Aがオフにされる。
【0052】
前記ステップS3において、補助電源装置32の故障が検出された場合には(ステップS3:YES)、電源制御用ECU33は、ステップS18に移行する。ステップS18では、電源制御用ECU33は、電源リレー51、第1逆接保護リレー52、スイッチング素子61A,62A,71A,72Aをオフとし、バイパスリレー57および第2逆接保護リレー58をオンとする。また、電源制御用ECU33は、図示しない表示装置に、アシスト力低下のおそれがある旨の警告を表示する(ステップS19)。そして、電源制御用ECU33は、電源制御処理を終了する。
【0053】
この実施形態では、電動パワ-ステアリング装置1の動作中において、補助電源装置32の故障が検出されたときにも、主電源31からバイパス回路81を介してEPS用ECU12に電力を供給することができる。これにより、補助電源装置32に故障が発生した場合にも、操舵補助を継続して行うことが可能となる。
また、前述の実施形態では、車両のキースイッチがオフされると、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2未満であるか否かが判別される。そして、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2未満である場合には、補助電源電圧Vcが充電判別用閾値Vth2以上となるまで、補助電源55が充電された後に、電源リレー51等がオフされる。したがって、車両のキースイッチがオフ状態である場合(電源リレー51がオフ状態である場合)に、補助電源55の電圧が低下して補助電源55が劣化するのを抑制することが可能となる。
【0054】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。前述の実施形態では、主電源電力PSが出力電圧切替用閾値KE以上であるか否かに基づいて、通常出力電圧モードと高出力電圧モードとを切り替えている。しかし、EPS用ECU12の消費電力(モータ駆動回路42の消費電力)が所定の出力電圧切替用閾値以上であるか否かに基づいて、通常出力電圧モードと高出力電圧モードとを切り替えてもよい。
【0055】
前述した実施形態では、補助電源は、2つのキャパシタから構成されているが、1つのキャパシタから構成されていてもよいし、3以上のキャパシタから構成されていてもよい。また、補助電源は、1または複数のキャパシタ以外の電源要素から構成されていてもよい。キャパシタ以外の電源要素としては、リチウムイオン電池等が挙げられる。
また、前述の実施形態では、この発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、この発明は電動モータを含むパワーステアリング装置であれば、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置等の電動パワーステアリング装置以外のパワーステアリング装置にも適用することができる。パワーステアリング装置以外に、例えば自動車や鉄道車両などの車両のアクチュエータ、あるいは工作機械の駆動源としてのアクチュエータといった動力源に供給する電源装置に適用することもできる。
【0056】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…電動パワーステアリング装置、12…EPS用ECU、30…電源装置、31…主電源、32…補助電源装置、33…電源制御用ECU、41…モータ制御回路、42…モータ駆動回路、51…電源リレー、53…充電回路、54…放電回路、55…補助電源、57…バイパスリレー、81…バイパス回路、91~94…電圧センサ、95…電流センサ
図1
図2
図3
図4A
図4B