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特許7082793高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサ
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/36 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
H05B6/36 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018014538
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019133818
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲正
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁乃
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174815(JP,A)
【文献】実開平06-005186(JP,U)
【文献】特公平05-034405(JP,B2)
【文献】特開平09-209045(JP,A)
【文献】米国特許第05680693(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサであって、
前記加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、
前記加熱コイルは、一列であって、
ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の前記固定部材に固定される固定部を有し、
前記当接部と固定部の間に接続部が設けられており、
前記接続部は、前記一列の加熱コイルにおいて、前記ワークに近接対向する部位である一本の近接対向部の一部の周囲を囲む貫通路を有することを特徴とする高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサ。
【請求項2】
前記接続部と前記一本の近接対向部とは、非接触であることを特徴する請求項1に記載の高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサ。
【請求項3】
高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサであって、
前記加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、
ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の前記固定部材に固定される固定部を有し、
前記当接部と固定部の間に接続部が設けられており、
前記接続部は、加熱コイルにおけるワークに近接対向する部位である近接対向部を迂回し、
前記固定部と接続部と当接部が略コの字形に連続して凹部が形成されており、前記凹部に加熱コイルの近接対向部の少なくとも一部が入り込むことを特徴とする高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサ。
【請求項4】
加熱コイル体の厚み方向の固定部の中心線に対して、接続部の中心線がずれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置に設けられ、加熱コイルとワークの間の距離を所定範囲に保つためのスペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄鋼材料からなるワークを高周波焼入する場合、まず、ワークに近接対向した加熱コイルに高周波電力を供給してワークを焼入温度に達するまで高周波誘導加熱し、引き続き冷却ジャケットからワークに向けて冷却液を噴射供給し、ワークを急冷する。
どの様な形状のワークであってもこの手順は変わらず、高周波焼入では、誘導加熱による加熱工程の後、冷却工程が実施される。
【0003】
ワークを高周波誘導加熱する際には、ワークの全周囲に対向する様に、加熱コイルを環状構造に構成するのが好ましいが、ワークの加熱対象部位の両側に半径方向に突出する部位(例えばクランクシャフトのピン部(加熱対象部位)に対するクランクアーム)があると、環状構造の加熱コイルを加熱対象部位に近接対向させることができない。そこで、従来は、図8に示す様に、ワークW2(加熱対象部位)の外周面の略半周程度の範囲に対して近接対向する加熱コイル90が使用されている。
【0004】
ワークW2の外周面の略半周の範囲に対向する構造の加熱コイル90は、ワークW2の半径方向に移動してワークW2に近接対向することができる。ただし、高周波電流が通電された加熱コイル90が際限なくワークW2に接近すると、加熱コイル90はワークW2と接触してしまい、ショートしてしまう。
【0005】
また、加熱コイル90は、ワークW2の周囲の略半周の範囲にしか対向していないため、ワークW2を回転させなければワークW2の全周囲に加熱コイル90を対向させることができない。ところが、ワークW2がクランクシャフトであって、加熱対象部位がピン部である場合には、クランクシャフトが回転すると、ピン部はクランクシャフトの回転中心の周囲を移動(公転)する。そのため、公転するピン部に加熱コイル90を追従させなければならない。
【0006】
そこで従来の高周波誘導加熱装置では、図8に示す様な加熱コイル90と相対移動しない一対の中央スペーサ91aと、それぞれ一対の側方スペーサ91b、91cが設けられている。中央スペーサ91a、及び側方スペーサ91b、91cは、セラミックス等の通電しない素材で形成されている。図8に示す様に、中央スペーサ91a、側方スペーサ91b、91cは、ワークW2の外周面の略半周の範囲に近接対向する様に配置されており、中央スペーサ91aが略半周の中央部分にあり、側方スペーサ91b、91cは略半周の両端部分にある。
【0007】
加熱コイル90と各スペーサ91a、91b、91cは、共通の加熱コイル体の固定部材(図示せず)に固定されており、スペーサ91a、91b、91cと加熱コイル90は相対移動しない。また、各スペーサ91a、91b、91cは加熱コイル90よりもワーク側に突出しており、加熱コイル90がワークW2に接近すると、中央スペーサ91aがワークW2と当接する。そのため、加熱コイル90は、それ以上ワークW2に接近することができず、加熱コイル90とワークW2とが接触することが防止されている。
【0008】
また、中央スペーサ91aをワークW2に押し付けた状態を保つことによって、加熱コイル90からワークW2(加熱対象部位)までの距離を、ワークW2の表面に高周波の誘導電流が良好に励起される好ましい距離に保つことができる。中央スペーサ91aは、常時ワークW2と接触しているが、側方スペーサ91b、91cは、いずれか一方のみがワークW2と接触する。すなわち、ワークW2(前述のクランクシャフトの公転するピン部)に加熱コイル90が追従する際に、ワークW2が側方スペーサ91b、91cの間で相対的に揺動し、いずれか一方の側方スペーサに選択的に接触する。
【0009】
昨今、車両等のエンジンの小型化が進み、エンジンの一部材であるクランクシャフトも小型化されている。すなわち、クランクシャフトの各ピン部や各ジャーナル部の軸方向長さ等が短く設定され、クランクシャフト全体の長さを短くし、クランクシャフトの小型化が図られている。
【0010】
そのため、小型化されたクランクシャフトを製造するためには、長さが短いピン部やジャーナル部等を高周波誘導加熱(高周波焼入)することができる高周波誘導加熱装置(高周波焼入装置)が必要である。
【0011】
すなわち、図8に示す様な加熱コイル90では、ワークW2に近接対向する近接対向部90aが、中央スペーサ91aの両側に分割された様な形態を呈しており、各近接対向部90aが、中央スペーサ91aを迂回する接続部30で接続されている。
【0012】
各近接対向部90aは、それぞれ加熱コイル体の厚み方向(ワークW2の軸方向)に二列あり、各列が直線状の接続部90bで接続されている。近接対向部90aの各列を流れる高周波電流の向きは、互いに逆向きとなるため、生じる交番磁界の向きが逆向きになる。そのため、交番磁界同士が互いに打ち消し合わないように、接続部90bはある程度の長さが必要である。すなわち、接続部90bの長さを短くする(加熱コイル90を備えた加熱コイル体の厚み寸法を小さくする)と、加熱コイル90に同じ大きさの高周波電流を供給しても、ワークW2の表面に励起させることができる高周波誘導電流は少なくなってしまい、加熱効率が悪くなる。
【0013】
換言すると、加熱コイル90(加熱コイル体)は、厚み方向の寸法d2(図8)が大きい。そのため、小型化されたクランクシャフトにおける軸方向長さが短いピン部やジャーナル部(加熱対象部位)に近接対向部90aを近接対向させようとしても、クランクシャフト(ワークW2)のクランクアームやカウンタウェイト等が邪魔になり、近接対向部90aをピン部やジャーナル部(加熱対象部位)に近接対向させることができない。
【0014】
そこで、図9(a)に示す様に、加熱コイル95の近接対向部95aを加熱コイル体100の厚み方向に一列のみとすることにより、加熱コイル体100の厚み方向の寸法d3を小さくした高周波焼入装置が創案され、この様な加熱コイル体が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特公平5-34405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示されている高周波焼入装置の加熱コイル体100では、それぞれ一対のスペーサ97a、97b、97cと、一列の近接対向部95aが一対の側板96(図9(b))の間に配置されている。図9(b)に示す様に、近接対向部95aが一列であるため、加熱コイル体100の厚み方向の寸法d3は、図8に示す加熱コイル体(加熱コイル90)の厚み寸法d2よりも小さく、加熱コイル体100は薄型化されている。
【0017】
そのため、加熱コイル体100をワークW3の間隔D2(d3<D2<d2)だけ離間した両アームB1、B2の間に配置し、近接対向部95aをピン部P2に近接対向させることができる。すなわち、図9(a)、図9(b)に示す加熱コイル体100(加熱コイル95)は、小型化されたクランクシャフトのピン部P2を高周波焼入する際に使用することができる。
【0018】
ところが、昨今はさらに小型化されたエンジンの開発が進み、クランクシャフトをより一層小型化する必要性が出てきた。また、両アームB1、B2の間隔D2が、厚み寸法d3(加熱コイル体100の厚み)よりも小さくなると、厚み寸法d3の加熱コイル体100を両アームB1、B2間に進入させることができない。
そこで本発明は、さらに薄型化が可能な高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために開発された本発明の一つの態様は、高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサであって、前記加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、前記加熱コイルは、一列であって、ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の前記固定部材に固定される固定部を有し、前記当接部と固定部の間に接続部が設けられており、前記接続部は、前記一列の加熱コイルにおいて、前記ワークに近接対向する部位である一本の近接対向部の一部の周囲を囲む貫通路を有する高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
好ましい態様は、前記接続部と前記一本の近接対向部とは、非接触である高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
上記の課題を解決するために開発された本発明の別の態様は、高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサであって、前記加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の前記固定部材に固定される固定部を有し、前記当接部と固定部の間に接続部が設けられており、前記接続部は、加熱コイルにおけるワークに近接対向する部位である近接対向部を迂回し、前記固定部と接続部と当接部が略コの字形に連続して凹部が形成されており、前記凹部に加熱コイルの近接対向部の少なくとも一部が入り込む高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
さらに好ましい態様は、加熱コイル体の厚み方向の固定部の中心線に対して、接続部の中心線がずれている高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
上記の課題を解決するために開発された本発明の別の態様は、高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサであって、前記加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の前記固定部材に固定される固定部を有し、前記当接部と固定部の間に凹部を形成する接続部が設けられており、前記凹部に、加熱コイルにおけるワークに近接対向する部位である近接対向部を配置できることを特徴とする高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
【0020】
上記に記載の高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサは、ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の固定部材に固定される固定部の間に、凹部を形成する接続部が設けられている。すなわち、スペーサは、ワークの熱処理対象部位と当接する当接部を有する。また、加熱コイル体のスペーサは、凹部を有している。この凹部に、加熱コイルにおけるワークの熱処理対象部位に近接対向する近接対向部を配置できるので、加熱コイルの近接対向部とスペーサの固定部が、加熱コイル体の厚み方向に重なる。すなわち、加熱コイル体の厚み方向と直交する方向から観察すると、加熱コイルの近接対向部とスペーサの固定部が重なって見える。そのため、加熱コイル体の厚み方向の寸法が小さい。
すなわち、本態様のスペーサを使用することにより、加熱コイル体の薄型化が可能である。
【0021】
上記の課題を解決するために開発された本発明の別の態様は、高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサであって、前記加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、ワークと当接する当接部と、加熱コイル体の前記固定部材に固定される固定部を有し、前記当接部と固定部の間に接続部が設けられており、前記接続部は、加熱コイルにおけるワークに近接対向する部位である近接対向部を迂回することを特徴とする高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
【0022】
上記に記載の態様では、高周波誘導加熱装置の加熱コイル体は加熱コイルと固定部材を有するものであり、スペーサはワークと当接する当接部を有している。すなわち、当接部は、ワークの熱処理対象部位と当接する部位である。
また、スペーサは、加熱コイル体の固定部材に固定される固定部を有し、当接部と固定部の間には接続部が設けられている。
そして、スペーサの当接部と固定部の間に設けられた接続部が、加熱コイルの近接対向部を迂回するので、加熱コイル体の厚み方向と直交する方向から観察すると、加熱コイルの近接対向部とスペーサの固定部が重なって見える。そのため、加熱コイル体の厚み方向の寸法は小さい。
すなわち、本態様のスペーサを使用することにより、加熱コイル体の薄型化が可能である。
【0023】
好ましい態様は、前記固定部と接続部と当接部が略コの字形に連続して凹部が形成されており、前記凹部に加熱コイルの近接対向部の少なくとも一部が入り込む高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
【0024】
上記に記載の態様では、固定部と接続部と当接部が略コの字形に連続して凹部が形成されており、凹部に加熱コイルの近接対向部の少なくとも一部が入り込むので、加熱コイル体の厚み方向と直交する方向から観察すると、固定部と近接対向部とが加熱コイル体の厚み方向に重なって見える。そのため、加熱コイル体の厚み方向の寸法は小さい。
ここで、略コの字形とは、固定部と接続部と当接部が、カタカナのコの字の様な形態に接続されていることを意味している。
【0025】
さらに好ましい態様は、加熱コイル体の厚み方向の固定部の中心線に対して、接続部の中心線がずれている高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサである。
【0026】
上記に記載の態様では、加熱コイル体の厚み方向の固定部の中心線に対して、接続部の中心線がずれているので、接続部がずれた位置に近接対向部を配置することができる。そのため、加熱コイル体の厚み方向の寸法を小さくすることができ、加熱コイル体を薄型化することができる。
また、固定部の中心線に対して、接続部の中心線がずれているので、スペーサの接続部と加熱コイル体の固定部材とを、加熱コイル体の厚み方向に重ねることができる。すなわち、加熱コイル体の厚み方向と直交する方向から観察すると、加熱コイルの近接対向部とスペーサの固定部が重なって見える。
そのため、加熱コイル体の厚み方向の寸法を小さくすることができ、加熱コイル体を薄型化することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の高周波誘導加熱装置の加熱コイル体のスペーサを実施すると、高周波誘導加熱装置の加熱コイル体を薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るスペーサを備えた高周波誘導加熱装置の加熱コイル体の正面図であり、加熱コイルがワークに近接対向している状態を示す。
図2図1の加熱コイル体の斜視図である。
図3図2の加熱コイル体の分解斜視図である。
図4図1図3の加熱コイル体の中央スペーサを示しており、(a)は正面図であり、(b)は左側面図であり、(c)は右側面図であり、(d)は平面図であり、(e)は底面図であり、(f)は背面図であり、(g)は(a)のG-G断面図であり、(h)は斜視図である。
図5】ワークであるクランクシャフトの部分側面図である。
図6図1のA-A断面図である。
図7】(a)は、図4とは別の形態の中央スペーサを備えた加熱コイル体及びワークの横断面図であり、(b)は、(a)の変形例の中央スペーサを有する加熱コイル体の横断面図である。
図8】従来の高周波誘導加熱装置の加熱コイル体の、側板の描写を省略した斜視図である。
図9】(a)は、側板の描写を省略して示した従来の高周波誘導加熱装置の加熱コイル体の斜視図であり、(b)は、(a)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1図3に示す様に、高周波焼入に使用される高周波誘導加熱装置の加熱コイル体1は、一対の側板2a、2b(固定部材)、接続部材3、加熱コイル4、一対の中央スペーサ5a、5b(加熱コイル体のスペーサ)、一対の一方側の側方スペーサ6a、6b、及び一対の他方側の側方スペーサ7a、7bを有している。
【0030】
側板2a、2bは、耐熱性と剛性を有する通電しにくい素材で構成された薄い板状の部材であり、加熱コイル体1の筐体を構成する部材である。側板2a、2bには、半円形の凹部である切欠部22が設けられている。側板2a、2bの切欠部22の中央付近には、固定孔8a、8bが設けられている。図6に示されている様に、側板2aの固定孔8aはネジ孔であり、側板2bの固定孔8bは皿孔である。
【0031】
また、側板2a、2bの切欠部22の端部付近には、それぞれ別の固定孔9a、9b、10a、10bが設けられている。図示していないが、側板2aの固定孔9a、10aはネジ孔であり、側板2bの固定孔9b、10bは皿孔である。
【0032】
両側板2a、2bは、同様の構造を備えており、同様の構造の側板2a、2bが平行に配置されて対向している。両側板2a、2bの間には、加熱コイル4と中央スペーサ5a、5b、側方スペーサ6a、6b、及び7a、7bが配置されている。
【0033】
接続部材3は、耐熱性と剛性を有する通電し易い素材で構成された略L字形の部材である。接続部材3には、後述の加熱コイル4のリード部4bを配置する孔3aが設けられている。接続部材3は、図示しない変圧器側の接続部材と接続されている。
【0034】
加熱コイル4は、銅又は銅合金等の良導体からなる中空の線状部材である。すなわち加熱コイル4は、内部に冷却液を流通させることができる空間を有している。加熱コイル4は、半円弧状に湾曲した近接対向部4aとリード部4bを有している。
【0035】
リード部4bは、加熱コイル4の両端の部位を構成している。リード部4bの端部は接続部材3に固定されており、リード部4bは図示しない変圧器の二次側と通電可能に接続されている。
【0036】
近接対向部4aは、加熱コイル4の中央部分を構成している。近接対向部4aは、リード部4bと連続している。すなわち、変圧器の二次側から供給された高周波電流は、リード部4bを介して近接対向部4aにも通電される。
【0037】
中央スペーサ5aは、セラミックス等の剛性と耐摩耗性に優れた素材で構成された部材である。図4(a)~図4(h)に示す様に、中央スペーサ5aは、固定部11、接続部12、当接部13を有している。
【0038】
固定部11は四角板形状の部位であり、固定部11には孔11aが設けられている。
【0039】
接続部12は、正面側(加熱コイル4の近接対向部4aを配置する側)が凹み、背面側が突出した部位である。すなわち、接続部12の正面側には凹部12aがあり、背面側には張出部12bがある。
【0040】
換言すると、接続部12は固定部11よりも背面側に変位しており、中央スペーサ5aを側面視(横断面視)すると、図4(c)に示す様に、固定部11の中心線14に対して、接続部12の中心線15は背面側に距離L1だけ離れた位置にある。すなわち、中央スペーサ5aの中央部分の横断面(正面側から背面側に延びる仮想切断面)における固定部11の中心線14に対して、接続部12の中心線15が背面側に距離L1だけずれており、接続部12の上部には段21が形成されている。
【0041】
別の視点から見ると、固定部11に対して接続部12が段21の段差の分だけ背面側へ張り出しており、接続部12の背面側には張出部12bが構成されている。接続部12の肉厚は、加熱コイル体1の側板2a(2b)の肉厚よりも若干大きい。
接続部12は、後述の加熱コイル4の近接対向部4aを迂回する迂回部を構成している。
【0042】
当接部13は、接続部12と連続した部位である。当接部13は、ワークWの熱処理対象部位(ピン部P)と当接する当接面13aと、接続部12よりも正面側に突出した張出部13bを有している。張出部13bは、固定部11よりも正面側に突出している。
【0043】
図4(b)、図4(c)に示す様に、中央スペーサ5aを側面視すると、固定部11、接続部12、当接部13が連続して、略コの字形を呈している。すなわち、中央スペーサ5aの正面側には略コの字形に仕切られて凹んだ部位(凹部12a)がある。
また、凹部12aは、接続部12が略コの字形を呈していて、接続部12の一方側に固定部11が接続されており、他方側に当接部13が接続されている。
中央スペーサ5bの構造は、中央スペーサ5aと同様の構造である。
【0044】
側方スペーサ6a、6bは、中央スペーサ5a、5bと同様に、セラミックス等の通電しにくく剛性と耐摩耗性に優れた素材で構成された部材である。側方スペーサ6a、6bは、細長い真っ直ぐな部材であり、中央スペーサ5a、5bのように凹んだ部位を有していない。
側方スペーサ6aは、固定部16と当接部17を有している。
固定部16には孔16aが設けられている。
当接部17は、固定部16よりも孔16aののびる方向に突出する突出部27a(27b)を有している。
【0045】
側方スペーサ7a、7bは、側方スペーサ6a、6bの固定部16、当接部17と同様の固定部18、当接部19を有している。
【0046】
加熱コイル体1は、一対の側板2a、2bに対して接続部材3、加熱コイル4、中央スペーサ5a、5b、側方スペーサ6a、6b、7a、7bが固定された構造を有している。すなわち、加熱コイル体1は全体が一体化されており、各部材同士は相対移動しない。
【0047】
具体的には、各部材は、以下のように側板2a、2bに固定されて加熱コイル体1が構成されている。
【0048】
接続部材3は、両側板2a、2bの間に挟まれた状態で両側板2a、2bと一体固着されている。接続部材3は、直交する二面を有し、この二面が図示しない変圧器側の接続部材の同様の二面と当接し、加熱コイル体1(加熱コイル4)が変圧器(二次側)と通電可能に接続されている。
【0049】
加熱コイル4は、図示しない絶縁部材を介して一対の側板2a、2bの間に固定されている。すなわち、加熱コイル4と両側板2a、2bは一体化されている。側板2a、2bに固定された加熱コイル4の近接対向部4aは、側板2a、2bの切欠部22に沿っており、切欠部22から露出している。すなわち、近接対向部4aは、切欠部22の内径よりも小径である。
【0050】
図3図6に示す様に、中央スペーサ5a、5bは、対向する側板2a、2bの間に配置されている。また、両中央スペーサ5a、5bの固定部11同士の間には絶縁部材5cが配置されている。絶縁部材5cは、両中央スペーサ5a、5bの固定部11同士の間に介在する位置合わせ部材として機能する。
【0051】
これら両中央スペーサ5a、5bと絶縁部材5cは、側板2a、2bに対してネジ止めされて一体化されている。すなわち、両中央スペーサ5a、5bの固定部11の孔11aと、絶縁部材5cの孔が側板2a、2bの固定孔8a、8bに位置合わせされており、これらが共通のネジ25によって側板2a、2bに固定されている。側板2a、2bの厚み寸法は、接続部12の段21よりも若干小さい。
【0052】
図3に示す様に、中央スペーサ5a、5bは、互いに正面側(凹部12a側)が対向した状態で側板2a、2bに固定されている。両中央スペーサ5a、5bの当接部13の正面側の張出部13b同士が当接しており、両中央スペーサ5a、5bの凹部12aと、絶縁部材5cによって貫通路26(図6)が形成されている。図6に示す様に、貫通路26は、両中央スペーサ5a、5bと絶縁部材5cによって周囲が仕切られた空洞であり、加熱コイル4の近接対向部4aの横断面よりも大きい空間である。すなわち貫通路26は、中央スペーサ5a、5b(両スペーサ)を対向配置させたことにより、中央スペーサ5a、5bにおける、加熱コイル4の近接対向部4aが配される領域同士が連続して形成されている。
絶縁部材5cの厚みを大きくしたり、張出部13bの張出量を少なくすることによって、張出部13b同士の間に隙間が生じても差し支えない。
【0053】
側板2a、2bに固定された中央スペーサ5a、5bは、当接部13が切欠部22の半径方向内方に突出している。図1図2には、中央スペーサ5aの当接部13が切欠部22の半径方向内方に突出している状態が描写されている。
【0054】
また、中央スペーサ5a、5bの接続部12は背面側へ張り出す張出部12bを有している。図6に示す様に、張出部12bは、側板2a、2bの外側へ張出しており、加熱コイル体1における最も厚み寸法が大きい部位を構成している。すなわち、中央スペーサ5a、5bの接続部12の段21の段差の方が側板2a、2bの厚み寸法よりも若干大きいため、張出部12bは側板2a、2bの外側へ張り出す。そして、中央スペーサ5a、5bの張出部12bによって、加熱コイル体1の厚み寸法d1(図6)が設定されている。
【0055】
側板2aと中央スペーサ5aの接続部12は、加熱コイル体1の厚み方向(図6で見て左右方向)に重なっている。すなわち、加熱コイル体1を厚み方向と直交する方向から観察すると、側板2aと接続部12は重なって見える。側板2bと中央スペーサ5bの接続部12も同様に重なって見える。換言すると、側板2a、2bは、それぞれ接続部12の段21の範囲内に配置されている。
【0056】
図3に示す側方スペーサ6a、6bは、固定部16の孔16aがそれぞれ側板2a、2bの固定孔9と一致しており、両孔にネジが挿通されて側板2a、2bにネジ止めされている。側板2a、2bにネジ止めされた側方スペーサ6a、6bの当接部17は、切欠部22の半径方向内方に突出している。
【0057】
また、側方スペーサ6a、6bの当接部17は、側板2a又は2bの外側へ張出している。この当接部17の側板2a又は2bからの張出量は、中央スペーサ5a、5bの張出部12bの側板2a又は2bからの張出量と同等である。
【0058】
図3に示す側方スペーサ7a、7bは、固定部18の孔18aが側板2a、2bの固定孔10と一致しており、両孔にネジが挿通されて側板2a、2bにネジ止めされている。側板2a、2bにネジ止めされた側方スペーサ7a、7bの当接部19は、切欠部22の半径方向内方に突出している。
【0059】
また、側方スペーサ7a、7bの当接部19は、側板2a又は2bの外側へ張り出している。この当接部19の側板2a又は2bからの張出量は、中央スペーサ5a、5bの張出部12bの側板2a又は2bからの張出量と同等である。
【0060】
図2に示す様に、側方スペーサ6a、6bの当接部17と側方スペーサ7a、7bの当接部19は、互いに対向している。これら両当接部17、19の間隔は、ワークW1の加熱対象部位(ピン部P)よりも若干大きい。すなわち、両当接部17、19の間には、図1に示す様にワークW1の加熱対象部位(ピン部P)を配置することができる。
【0061】
図2図6に示す様に、加熱コイル4の近接対向部4aが、中央スペーサ5a、5b、絶縁部材5cによって形成された貫通路26を貫通している。すなわち、中央スペーサ5a、5bは、近接対向部4aの円弧の周長の範囲内に配置されていると共に、近接対向部4aよりも半径方向内方へ突出している。換言すると、中央スペーサ5a、5bの各当接部13は、近接対向部4aよりも半径方向内方の位置にある。
【0062】
図4(c)、図6に示す様に、中央スペーサ5a(5b)の固定部11の中心線14と、近接対向部4aの横断面の中心線20は、距離L2だけ離れている。すなわち、近接対向部4aの一部が、中央スペーサ5a(5b)の固定部11と上下の位置関係となるように配置されて、両者が加熱コイル体1の厚み方向(正面側から背面側へ向かう方向)に重なっている。換言すると、近接対向部4aが、中央スペーサ5a及び5bのそれぞれの凹部12aに入り込んでおり、中央スペーサ5a及び5bの凹部12a同士が接続された貫通路26を貫通している。
【0063】
これにより、加熱コイル体1全体の厚み寸法d1(図6)が、図9(b)に示す従来の加熱コイル体100の厚み寸法d3よりも小さくすることができる。すなわち、薄型化した加熱コイル体1を構成することができる。
【0064】
図6に示す様に、中央スペーサ5a、5bの接続部12は、近接対向部4aを迂回して固定部11と当接部13とを接続している。すなわち、固定部11と当接部13の間に近接対向部4aがあるために、両者を真っ直ぐに接続することができない。そこで接続部12は、近接対向部4aの側方を通って(すなわち、近接対向部4aを迂回して)固定部11と当接部13を接続している。
【0065】
ちなみに、図9(b)に示す従来の加熱コイル体100では、スペーサ97aと加熱コイル95(近接対向部95a)とが加熱コイル体100の厚み方向に重なっていない。そのため、スペーサ97aの中心線から加熱コイル95(近接対向部95a)の中心線までの距離L3は、図6に示す本実施形態に係る加熱コイル体1の中央スペーサ5a、5bの固定部11の中心線14から近接対向部4aの中心線までの距離L2より長い。そのため、従来の加熱コイル体100の厚さ寸法d3(図9(b))は大きく、本実施形態に係る加熱コイル体1の厚さ寸法d1(図6)は小さい。
【0066】
また、図1に示す様に、加熱コイル4の近接対向部4aは、側方スペーサ6a、6b付近から側方スペーサ7a、7b付近まで半円(円弧)を描いて延びている。
そして、加熱コイル4の近接対向部4aから接続部材3に至るリード部4bは、側方スペーサ6a、6b、7a、7bに沿って半径方向に延びる部位を有しており、円弧状の近接対向部4aと連続している。すなわち、側方スペーサ6a、6b、7a、7bは、近接対向部4aの円弧の周長の範囲外に配置されている。
そのため、側方スペーサ6a、6b、7a、7bには、中央スペーサ5a、5bの様な接続部12(凹部12a)が設けられていない。
【0067】
以上、説明した構造を有する加熱コイル体1は、図示しない高周波誘導加熱装置に取り付けられている。高周波誘導加熱装置は、商用電力を高周波電力に変換し、変換した高周波電力を加熱コイル4に供給することができる。すなわち、加熱コイル4には高周波電流が通電される。
【0068】
次に、ワークW1(図1)を高周波焼入する場合について説明する。ワークW1を高周波焼入する場合には、加熱コイル体1を備えた高周波誘導加熱装置(図示せず)とワークW1に向けて冷却液を噴射することができる冷却装置(図示せず)を使用する。
【0069】
加熱コイル体1は、接続部材3を介して高周波誘導加熱装置の変圧器(図示しない薄型のディスクトランス)に装着されている。そして、加熱コイル体1は、変圧器と共に移動することができる。
【0070】
ワークW1は、例えばクランクシャフトである。ワークW1は、ピン部P、アーム部A1、A2、ジャーナル部J等を有している。ワークW1における焼入対象部位は例えばピン部P(図1図5図6)である。図5図6に示す様に、ピン部Pの両側にはアーム部A1、A2がある。両アーム部A1、A2の間隔D1に対して、加熱コイル体1の厚み寸法d1は小さい(d1<D1<d3)。すなわち、加熱コイル体1は両アーム部A1、A2の間に進入することができ、中央スペーサ5a、5bがピン部Pに当接し、加熱コイル4の近接対向部4aはピン部Pに近接対向することができる。
【0071】
また、加熱コイル体1が図示しない変圧器と共に吊されると、鉛直姿勢で安定する。すなわち、加熱コイル体1は鉛直方向を向く。
そして、中央スペーサ5a、5bの当接部13は、加熱コイル体1全体の厚み方向の中央部分(重心位置)に跨がって配置されており、加熱コイル体1(中央スペーサ5の当接部13)がピン部Pに接近する際には、当接部13の当接面13aが水平面に対して傾くことなくピン部Pと接触する。よって、変圧器(図示せず)及び加熱コイル体1の重量を、当接面13a全体でピン部Pに伝達することができる。
【0072】
ワークW1(クランクシャフト)の図示しない両端部はセンタピン及びチャックによって回転駆動可能に支持されている。よって、ワークW1は回転駆動されると、ピン部PはワークW1の回転中心の周囲を公転移動する。そのため、ピン部Pは、上死点と下死点の間を往復移動する。
【0073】
そして、加熱コイル体1は、ピン部Pの公転移動に追従し、中央スペーサ5a、5bがピン部Pに当接した状態が維持される。その結果、加熱コイル4(近接対向部4a)がピン部Pに接触することが防止されていると共に、円弧状の近接対向部4aからピン部Pの周面S(図1)までの距離が所定範囲内に収まっている。
【0074】
この状態で加熱コイル4に高周波電流が通電され、ピン部Pの周面Sには高周波誘導電流が励起され、周面Sが高周波誘導加熱される。周面Sの温度が焼入温度に達すると、高周波誘導加熱装置を停止し、加熱コイルへの高周波電流の供給を止め、冷却装置(冷却ジャケット)からピン部Pに向けて冷却液を噴射供給する。
【0075】
その結果、焼入温度まで昇温したピン部Pが急冷され、ピン部Pが高周波焼入される。
【0076】
以上では、一対の中央スペーサ5a、5bを使用した形態について説明した。
本発明は、一対の中央スペーサ5a、5bの代わりに、図7(a)に示す一つの中央スペーサ35を使用することもできる。図7(a)では、中央スペーサ35を有する加熱コイル体31が描写されている。
【0077】
図7(a)に示す様に、中央スペーサ35は、固定部36、接続部37、当接部38を有している。固定部36は、加熱コイル体31の側板2a、2b(固定部材)に対してネジ25で固定される部位である。接続部37は固定部36と連続した部位であり、両者の間には段差があり、固定部36の中心と接続部37の中心はずれている。固定部36と接続部37の境界部分に形成された段差部分には側板2bを配置することができる。すなわち、加熱コイル体31の厚み方向と直交する方向から見ると、側板2bと接続部37は上下の位置関係であって、両者は加熱コイル体31の厚み方向に重なっている。
【0078】
また、当接部38は接続部37と連続した部位である。当接部38は、固定部36に対して接続部37のずれた方向とは逆方向に張り出しており、張出部38aを有している。
【0079】
中央スペーサ35は、固定部36と接続部37と当接部38によって三方が囲まれた凹部を有している。この凹部によって、加熱コイル4の近接対向部4aが配置される近接対向部配置領域41が形成されている。近接対向部配置領域41は、一方側が開口しており、この開口を介して加熱コイル4の近接対向部4aを近接対向部配置領域41に対して出し入れすることができる。
【0080】
加熱コイル体31がワークW1のアーム部A1、A2の間に配置されると、当接部38がピン部Pに当接し、加熱コイル4の近接対向部4aがピン部Pに近接する。すなわち、近接対向部4aとピン部Pの間に、当接部38が介在する。
【0081】
さらに、中央スペーサ35には張出部39、40、38aが設けられている。張出部39は側板2bよりも外側に突出している。
また、張出部40、38aは側板2aよりも外側に突出している。加熱コイル体31を鉛直姿勢にすると、張出部38aと張出部40は、同一の鉛直面内に配置される。すなわち、張出部38aと張出部40の張り出し量は同等である。
【0082】
そのため、加熱コイル体31がワークW1のアーム部A1、A2の間に配置されると、張出部38a、39、40が側板2b、2aよりもアーム部A1、A2に近接する。そして、仮にワークW1又は加熱コイル体31が、ワークW1の軸方向(図7で見て左右方向)に相対的に変位しても、張出部38a、39、40がアーム部A1、A2に当接し、側板2b、2aは、アーム部A1、A2に接触しにくい。
【0083】
そして、加熱コイル体31では、側板2a側と側板2b側にそれぞれ個別にスペーサを設けるのではなく、一つのスペーサ35を設けるので、良好に薄型化を図ることができる。
【0084】
図7(b)は、図7(a)の加熱コイル体31の変形例の加熱コイル体51を示している。加熱コイル体51は、加熱コイル体31における当接部38に連続した張出部38aが設けられていない点のみが加熱コイル体31と相違している。すなわち、加熱コイル体51におけるその他の構成は、加熱コイル体31と同じであり、重複する説明は省略する。
【符号の説明】
【0085】
1 加熱コイル体
2a、2b 側板(固定部材)
4 加熱コイル
4a 近接対向部
5 中央スペーサ(加熱コイル体のスペーサ)
11 固定部
12 接続部
12a 凹部
13 当接部
14 固定部の中心線
15 接続部の中心線
35 中央スペーサ(加熱コイル体のスペーサ)
W1 ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9