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特許7082806多能性幹細胞からのテラトーマ形成抑制剤及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】多能性幹細胞からのテラトーマ形成抑制剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5375 20060101AFI20220602BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220602BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20220602BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
A61K31/5375
A61P35/00
A61P43/00 111
C12N9/99
A61K45/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018129252
(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公開番号】P2019014713
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2017133702
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】菊池 次郎
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/116558(WO,A1)
【文献】特表2017-508798(JP,A)
【文献】Experimental Cell Research, Vol.340, 2016, pp.227-237
【文献】J. Mater. Chem. B, 2017.6.28, Vol.5, No.27, pp.5433-5440
【文献】Current Opinion in Pharmacology, 2015, Vol.23, pp.52-60
【文献】Med. Sci. Monit., 2016, Vol.22, pp.4742-4748
【文献】Oncotarget, 2018, Vol. 9, No. 5, pp.6450-6462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00 - 45/08
A61K 31/00 - 31/80
A61P 35/00 - 35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(III-1):
【化1】

で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物であるリジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物を有効成分として含む、テラトーマ形成抑制剤。
【請求項2】
下記の式(III-1):
【化2】

で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物であるリジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物を有効成分として含む、テラトーマ形成の抑制に使用するための医薬。
【請求項3】
多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍の予防又は治療に使用するための、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
下記の式(III-1):
【化3】

で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物であるリジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む、テラトーマ形成の抑制に使用するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞からのテラトーマ形成抑制剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells、以下、「iPS細胞」とも記載する)及び胚性幹細胞(embryonic stem cells、以下、「ES細胞」とも記載する)等の多能性幹細胞を用いる再生医療は、これまで治療法のなかった疾患に対しても有効性が期待されている。例えば、日本においては、現在、加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた臨床研究が進行中である。
【0003】
多能性幹細胞は、そのままの状態で対象に移植すると、細胞の分化及び増殖が無秩序に進み、奇形腫(以下、「テラトーマ」とも記載する)と呼ばれる腫瘍を形成する。形成初期のテラトーマは、良性の腫瘍であるが、やがて転移能を有する奇形癌腫(以下、「テラトカルシノーマ」とも記載する)に変化して、悪性腫瘍又は癌となる。それ故、多能性幹細胞に由来する細胞又はその構造体中に幹細胞が残存している場合、移植後にテラトーマの形成が危惧される。
【0004】
多能性幹細胞を用いる再生医療において、腫瘍が形成された場合の処置としては、現在は、該腫瘍を外科的に切除する以外に有効な方法は確立されていない。このため、テラトーマ及び/又はテラトカルチノーマの形成の予防又は処置の技術が必要とされている。
【0005】
例えば、特許文献1は、自殺遺伝子を用いる腫瘍細胞の除去方法を記載する。当該文献に記載の方法では、まず、ドキシサイクリン等の薬剤投与により発現が誘導されるプロモーターと共に、自殺遺伝子を多能性幹細胞に導入する。移植後に腫瘍が形成された場合、ドキシサイクリンの投与により、自殺遺伝子の発現を誘導して、腫瘍細胞を含む移植細胞に細胞死を誘導する。
【0006】
また、腫瘍細胞の元になる多能性幹細胞を、移植前に除去する方法の開発が進められている。例えば、多能性幹細胞に特異的に細胞死を誘導する低分子阻害剤を用いる方法、或いは、多能性幹細胞に特異的に結合するレクチンに毒物を付加した化合物を用いる方法が開発されている(非特許文献1及び2)。
【0007】
最近になって、iPS細胞から発生したテラトーマでは、遺伝子変異はみられず、DNAメチル化レベルの変化による遺伝子発現変化が報告された(非特許文献3)。この報告は、テラトーマ形成が、遺伝子変異ではなく遺伝子発現の変化、いわゆるエピジェネティクレベルの変化に依存することを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2015-504678号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Tateno Hら, Stem Cell Rep, 第4巻, p. 811-820, 2015年
【文献】Lee MOら, Proc Natl Acad Sci, U.S.A, 第110巻, E3281, 2013年
【文献】Ohnishi Kら, Cell, 第156巻, p. 663-677, 2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多能性幹細胞に由来する腫瘍の形成の予防又は処置の公知技術には、いくつかの問題点が存在した。例えば、特許文献1に記載の方法の場合、移植した細胞の全てに自殺遺伝子が組み込まれるため、原理的に、腫瘍細胞のみを除去することは困難である。また、この方法は、腫瘍形成の予防に用いることができないだけでなく、外来遺伝子導入に伴う新たな腫瘍形成の可能性がある。
【0011】
非特許文献1及び2に記載の方法の場合、移植後における腫瘍形成の予防、又は形成された腫瘍の除去は困難である。
【0012】
このように、多能性幹細胞を用いる再生医療において、移植後の腫瘍形成の予防及び形成された腫瘍の除去に有効な方法は、現在のところ確立されていない。このため、多能性幹細胞を用いる再生医療においては、移植後の患者の安全性を十分に確保し得ない場合がある。加えて、多能性幹細胞からの機能細胞の作製及び単離技術の確立、並びに移植前の細胞の厳密な品質管理等に、多大な労力及びコストが必要となる。これらの点は、再生医療の進展及び安全性確保における、大きな隘路となっている。
【0013】
それ故、本発明は、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体を移植した後に、該細胞又はその構造体において、腫瘍の形成を実質的に予防し得る手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、エピジェネティックな制御に関与する酵素であるリジン特異的脱メチル化酵素1(以下、「LSD1」とも記載する)に対して阻害活性を有する化合物が、テラトーマ形成を抑制し得ることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物を有効成分として含む、テラトーマ形成抑制剤。
(2) LSD1阻害活性を有する化合物が、
式(I):
【化1】
[式中、
R1は、H又はベンジルオキシであり、
R2は、H又はフッ素であり、
R3は、H又は3-ヒドロキシフェニルであり、
R4は、H又はフッ素であり、
RN1は、H又は4-アミノシクロヘキサ-1-イルであり、
但し、R1がベンジルオキシのとき、RN1はHであり、
R1、R2、R3及びR4がいずれもHのとき、RN1は4-アミノシクロヘキサ-1-イルである。]、
式(II):
【化2】
[式中、
R5は、3-フェニルプロパン-1-イル又は2-{1-[4-(l-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンゼンスルホニル]-1H-ピロール-3-イル}-エテン-1-イルであり、
R6は、H又はアミノであり、
R7は、H又は2-ヒドラジノエチルである。]、又は
式(III):
【化3】
[式中、
nは、0~5の範囲の整数であり、
mは、0~4の範囲の整数であり、
R8は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R9は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R10は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。]
で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物である、前記実施形態(1)に記載のテラトーマ形成抑制剤。
(3) LSD1阻害活性を有する化合物が、下記の式:
【化4】
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物である、前記実施形態(1)又は(2)に記載のテラトーマ形成抑制剤。
(4) リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物を有効成分として含む、テラトーマ形成の抑制に使用するための医薬。
(5) LSD1阻害活性を有する化合物が、
式(I):
【化5】
[式中、
R1は、H又はベンジルオキシであり、
R2は、H又はフッ素であり、
R3は、H又は3-ヒドロキシフェニルであり、
R4は、H又はフッ素であり、
RN1は、H又は4-アミノシクロヘキサ-1-イルであり、
但し、R1がベンジルオキシのとき、RN1はHであり、
R1、R2、R3及びR4がいずれもHのとき、RN1は4-アミノシクロヘキサ-1-イルである。]、
式(II):
【化6】
[式中、
R5は、3-フェニルプロパン-1-イル又は2-{1-[4-(l-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンゼンスルホニル]-1H-ピロール-3-イル}-エテン-1-イルであり、
R6は、H又はアミノであり、
R7は、H又は2-ヒドラジノエチルである。]、又は
式(III):
【化7】
[式中、
nは、0~5の範囲の整数であり、
mは、0~4の範囲の整数であり、
R8は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R9は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであり、
R10は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。]
で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である、前記実施形態(4)に記載の医薬。
(6) LSD1阻害活性を有する化合物が、下記の式:
【化8】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である、前記実施形態(4)又は(5)に記載の医薬。
(7) 多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(4)~(6)のいずれかに記載の医薬。
(8) リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む、テラトーマ形成の抑制に使用するための医薬組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体を移植した後に、該細胞又はその構造体において、腫瘍の形成を実質的に予防し得る手段を提供することが可能となる。
【0017】
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、健常人由来の線維芽細胞(フィブロブラスト)、末梢血T-リンパ球(T-細胞)、誘導多能性幹細胞(hiPSC)201B株、201B株を免疫不全マウス皮下に移植し3週間後に形成したテラトーマ、悪性腫瘍細胞K562株、HeLa細胞株、及びHEK293細胞株におけるタンパク質発現量をイムノブロットにより解析した結果を示す。A:イムノブロットの結果、B:フィブロブラストの値を1.0とした時の、各シグナル強度の相対値。
図2図2は、健常人由来のフィブロブラスト、T-細胞、hiPSC201B株、201B株を免疫不全マウス皮下に移植し3週間後に形成したテラトーマ、悪性腫瘍細胞K562株、HeLa細胞株、及びHEK293細胞株における遺伝子発現量を定量PCR法により解析した結果を示す。
図3図3は、テラトーマ組織切片のHE染色、並びにHDAC1、HDAC6又はLSD1に対する特異抗体及びAlexa-488標識2次抗体を用いる蛍光免疫染色の結果を示す。図中、緑色は、HDAC1、HDAC6又はLSD1によるシグナルを、青色は、DAPI染色による細胞核を示す。
図4図4は、ChiPS17株にLSD1遺伝子を強発現させた3個のクローン亜株(E7、F6及びH12)におけるLSD1遺伝子発現を定量PCRにより解析した結果を示す。
図5図5は、ChiPS17株にLSD1遺伝子を強発現させた3個のクローン亜株(E7、F6及びH12)におけるタンパク質発現量をイムノブロットにより解析した結果を示す。A:イムノブロットの結果、B:ベクターのみを導入した亜株(mock)のタンパク質発現量を1.0 とした時の、それぞれのタンパク質発現量の相対値。
図6図6は、ChiPS17亜株(H12株)の細胞を6~8週齢の免疫不全マウスの皮下へ移植後22日目及び49日目に採取したテラトーマの写真を示す。A:移植後22日目の結果、B:移植後49日目の結果。
図7図7は、ChiPS17亜株(H12株)の細胞を6~8週齢の免疫不全マウスの皮下へ移植後22日目及び49日目に採取したテラトーマの重量(平均値±標準偏差値)を示す。A:移植後22日目の結果、B:移植後49日目の結果。*は、スチューデントt-検定により算出した、mockに対するp値が0.05以下であることを示す。
図8図8は、ChiPS17亜株(H12株)の細胞を6~8週齢の免疫不全マウスの皮下へ移植後22日目及び49日目に採取したテラトーマ切片のHE染色結果を示す。A:移植後22日目の結果、B:移植後49日目の結果。
図9図9は、ChiPS17株の細胞を皮下移植した6~8週齢の免疫不全マウスに公知の酵素阻害剤を投与した投与群及び対照群において、移植後56日目に採取したテラトーマの写真を示す。A:対照群、B:ツバスタチンA投与群、C:ボルテゾミブ投与群。
図10図10は、iPS細胞の培養における分化及び/又は増殖を示す細胞数に対する、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(II-1)及び(III-1)で表される化合物の用量応答曲線を示す。
図11図11は、ChiPS17亜株(H12株)の細胞を6~8週齢の免疫不全マウスの右足上部の皮下へ移植後28日目に採取したテラトーマの写真を示す。A:対照群の結果、B:式(III-1)で表される化合物の投与群の結果。
図12図12は、ChiPS17亜株(H12株)の細胞を6~8週齢の免疫不全マウスの右足上部の皮下へ移植後28日目に採取したテラトーマの重量(平均値±標準偏差値)を示す。*は、スチューデントt-検定により算出した、対照群に対するp値が0.05以下であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0020】
<1. テラトーマ形成抑制剤>
本発明の一態様は、リジン特異的脱メチル化酵素1(LSD1)阻害活性を有する化合物を有効成分として含む、テラトーマ形成抑制剤に関する。
【0021】
本明細書において、「エピジェネティックス」は、ゲノムDNAとヒストンタンパク質等とから構成されるクロマチンの化学的及び/又は構造的な修飾を介する遺伝子発現の制御機構を意味する。コアヒストンのN末端領域は、アセチル化、メチル化、リン酸化及びユビキチン化等の様々な修飾を受け得る。これに伴い、クロマチン構造が変化し、遺伝子発現に影響を与える。エピジェネティックな制御に関与するこれらの化学的及び/又は構造的な修飾は、クロマチンの部位、及び修飾を受けるリジン残基の位置等の点で多様性に富む。それ故、エピジェネティックな制御は、可塑性が高く、時空的に変化し得る特徴を有する。
【0022】
リジン特異的脱メチル化酵素(以下、「LSD」とも記載する)は、真核生物において、エピジェネティックな制御に関与する酵素である。例えば、哺乳動物においては、LSD1及びLSD2のアイソザイムが知られている(Karytinos A,ら, The Journal of biological chemistry, 第284巻, p. 17775-82, 2009年)。このうち、LSD1は、ヒストンH3の4番目のリジン残基(H3K4)又は9番目のリジン残基(H3K9)に付加されたモノ又はジメチル基を脱メチル化する(Shi Y,ら, Cell 第119巻, p. 941-53, 2004年)。ヒストンH3において、エンハンサー領域のH3K4へのメチル化は転写活性化に、H3K9へのメチル化は転写抑制的に働く。それ故、LSD1は、転写活性化及び転写抑制のいずれにも関与し得る。
【0023】
本明細書において、「奇形腫」又は「テラトーマ」は、内・中・外の三胚葉性の組織が混在した腫瘍を意味し、「奇形癌腫」又は「テラトカルチノーマ」は、奇形腫又はテラトーマにおいて転移能を有する幹細胞を有する悪性腫瘍又は癌を意味する。テラトーマ及びテラトカルチノーマは、生殖細胞においてだけでなく、iPS細胞及びES細胞等の多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体において形成される。本明細書において、「細胞の構造体」は、複数の細胞によって構成されるが特定の機能を有しない細胞塊だけでなく、複数の細胞によって構成され、且つ特定の機能を有する任意の組織及び器官をも意味する。本発明の各態様においては、通常は、前記で例示した多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体において形成されるテラトーマを対象とし、特に、iPS細胞由来の細胞又はその構造体において形成されるテラトーマを対象とする。多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体に対してLSD1阻害活性を有する化合物、又は該化合物を有効成分として含む医薬等を投与することにより、該細胞又はその構造体におけるテラトーマの形成を実質的に抑制することができる。
【0024】
本発明の各態様において、テラトーマは、通常は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体において形成されるテラトーマであり、特に、ヒトの多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体において形成されるテラトーマである。
【0025】
本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物、特に以下において説明する式(I)、(II)及び(III)で表される化合物のテラトーマ形成抑制効果は、限定するものではないが、例えば、対象化合物の存在下で多能性幹細胞を培養して、分化及び/又は増殖を示した細胞数を測定して、細胞の総数に対する分化及び/又は増殖を示した細胞数の割合(%)を算出することにより、評価することができる。この評価法の場合、分化及び/又は増殖を示した細胞数の割合が100%未満であれば、テラトーマ形成抑制効果を有すると評価し得る。或いは、多能性幹細胞を実験動物(例えば免疫不全マウス)の皮下に移植し、次いで該動物に対象化合物を投与する。所定期間、化合物を投与した後、移植部位におけるテラトーマの形成を確認することにより、対象化合物のテラトーマ形成抑制効果を評価する。この場合、移植部位におけるテラトーマの形成の確認は、例えば、形成されたテラトーマをそのまま又は摘出して、肉眼又は顕微鏡により観察することにより、実施することができる。或いは、ルシフェラーゼ遺伝子のようなレポーター遺伝子を導入した多能性幹細胞を移植に用い、形成されたテラトーマにおけるレポーター遺伝子の発現を通常の手段で検出することにより、実施してもよい。
【0026】
本発明者らは、エピジェネティックな制御に関与する酵素であるLSD1に対して阻害活性を有する化合物が、テラトーマ形成を実質的に抑制し得ることを見出した。エピジェネティックな制御に関与する酵素としては、LSD1の他に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)等が知られている。多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体においてテラトーマが形成される際に、エピジェネティック変異が関与していることが示唆されていた(例えば、非特許文献3)。しかしながら、エピジェネティックな制御に関与する様々な酵素のいずれがテラトーマ形成に関与しているかは知られていなかった。エピジェネティックな制御に関与する酵素のうち、LSD1が、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体におけるテラトーマ形成に関与していることは、本発明者らが見出した新規な知見である。
【0027】
本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物は、LSD1に対して阻害活性を有する任意の化合物を包含する。LSD1阻害活性を有する化合物は、LSD1に対して特異的な阻害活性を有することが好ましく、対象となるテラトーマが形成され得る細胞又はその構造体と同一の真核生物に由来するLSD1に対して特異的な阻害活性を有することがより好ましく、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)由来のLSD1に対して特異的な阻害活性を有することがさらに好ましく、ヒト由来のLSD1に対して特異的な阻害活性を有することが特に好ましい。多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体に対して前記特徴を有する化合物、又は該化合物を有効成分として含む医薬等を投与することにより、該細胞又はその構造体におけるテラトーマの形成を実質的に抑制することができる。
【0028】
本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物、特に以下において説明する式(I)、(II)及び(III)で表される化合物のLSD1阻害活性は、限定するものではないが、例えば、ヒストンH3の4番目のリジン残基(K4)をジメチル化した20残基の合成ペプチド(H3K4me2ペプチド)を基質として、対象化合物の存在下でLSD1による脱メチル化反応を行い、副生成物として産生する過酸化水素を、公知のペルオキシダーゼアッセイで定量的に測定することにより、評価することができる。LSD1は、脱メチル化反応に伴い、反応副生成物として過酸化水素を放出する。ペルオキシダーゼアッセイでは、ペルオキシダーゼが、この過酸化水素を基質として、カップリング剤である4-アミノアンチピリン(4-AA)と、水素供与体の水溶性アニリン誘導体であるN-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン(新トリンダー試薬)とを酸化縮合する。この反応において、量依存的に、555 nmの吸収極大波長を有する紫色の発色を示す。この紫色の発色を、562 nmの吸光度で測定することにより、過酸化水素を定量することができる。LSD1は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の細胞から調製した酵素タンパク質であってもよく、前記ヒト又は非ヒト哺乳動物のLSD1を高発現させた培養細胞から調製した組換え酵素タンパク質であってもよい。
【0029】
有効成分として使用される化合物、特に以下において説明する式(I)、(II)及び(III)で表される化合物のLSD1に対する選択的阻害活性は、該化合物のLSD1阻害活性とモノアミンオキシダーゼ阻害活性とを比較することにより、決定することができる。モノアミンオキシダーゼA(以下、「MAO-A」とも記載する)及びモノアミンオキシダーゼB(以下、「MAO-B」とも記載する)は、LSD1と触媒反応機構が類似する酵素として知られている。MAO-A及びMAO-Bは、いずれもフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素として、ドパミン及びセロトニン等の生体内の低分子アミンを酸化する活性を有する。FADを補酵素としてアミンを酸化触媒する反応との類似性から、LSD1に対する阻害活性を有する化合物は、その構造によっては、MAO-A及び/又はMAO-Bを阻害する場合がある。例えば、公知のLSD1阻害剤の1種であるトラニルシプロミン(2-PCPA)は、元々、MAO-A及びMAO-Bに対する阻害剤として知られていたが、後に、LSD1も阻害できることが報告された(Leeら, Chemistry & Biology 第13巻, p. 563, 2006年)。それ故、LSD1に対する阻害活性を有する化合物において、LSD1に対する阻害活性をMAO-A及び/又はMAO-Bに対する阻害活性と比較することで、LSD1に対する選択性を評価することができる(Mimasuら, Biochemistry 第49巻, p. 6494, 2010年; Mohammadら, Cancer Cell 第28巻, p. 57, 2015年)。
【0030】
有効成分として使用される化合物、特に以下において説明する式(I)、(II)及び(III)で表される化合物のLSD1に対する選択的阻害活性は、限定するものではないが、例えば、LSD1活性を50%阻害する該化合物の濃度(LSD1に対するIC50)と、MAO-A及び/又はMAO-B活性を50%阻害する該化合物の濃度(MAO-A及び/又はMAO-Bに対するIC50)とを決定し、LSD1阻害に対する選択性を、以下の式に基づき算出することにより、決定することができる。
LSD1阻害に対する選択性=
(MAO-A及び/又はMAO-Bに対するIC50)/(LSD1に対するIC50
【0031】
本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物、特に以下において説明する式(I)、(II)及び(III)で表される化合物は、前記手順により決定したLSD1阻害活性のIC50値が、通常は100 μM以下、典型的には50 μM以下、特に20 μM以下であり、好ましくは10 μM以下、より好ましくは5 μM以下、さらに好ましくは1 μM以下である。前記範囲のIC50値の値を有する場合、有効成分として使用されるLSD1阻害活性を有する化合物、特に以下において説明する式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、テラトーマの形成を実質的に抑制することができる。
【0032】
本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物は、
式(I):
【化9】
式(II):
【化10】
又は
式(III):
【化11】
で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物であることが好ましい。
【0033】
式(I)において、
R1は、H又はベンジルオキシであり、
R2は、H又はフッ素であり、
R3は、H又は3-ヒドロキシフェニルであり、
R4は、H又はフッ素であり、
RN1は、H又は4-アミノシクロヘキサ-1-イルであり、
但し、R1がベンジルオキシのとき、RN1はHであり、
R1、R2、R3及びR4がいずれもHのとき、RN1は4-アミノシクロヘキサ-1-イルである。
【0034】
式(II)において、
R5は、3-フェニルプロパン-1-イル又は2-{1-[4-(l-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンゼンスルホニル]-1H-ピロール-3-イル}-エテン-1-イルであり、
R6は、H又はアミノであり、
R7は、H又は2-ヒドラジノエチルである。
【0035】
式(III)において、nは、0~5の範囲の整数である。nは、1~5の範囲の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0036】
式(III)において、mは、0~4の範囲の整数である。mは、0~3の範囲の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0037】
式(III)において、R8は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。R8は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)又はヒドロキシルであることがより好ましく、複数の場合、互いに独立して、塩素又はヒドロキシルであることがさらに好ましい。
【0038】
式(III)において、R9は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。R9は、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、又は置換若しくは非置換のC2~C5アルキニルであることがより好ましく、メチルであることがさらに好ましい。
【0039】
式(III)において、R10は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノである。R10は、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C5アシル、置換若しくは非置換のC1~C5アシルオキシ、又は置換若しくは非置換のアミノであることが好ましく、複数の場合、互いに独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、又は置換若しくは非置換のアミノであることがより好ましい。
【0040】
式(III)において、前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC6~C15アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、及び置換若しくは非置換のアミノからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがより好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C15アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C5アルキルオキシ、及び置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の1価基であることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが特に好ましい。前記1価基が置換されている場合、該置換基は、前記1価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記1価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0041】
式(I)で表される化合物は、前記で例示されるR1、R2、R3、R4及びRN1の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0042】
式(II)で表される化合物は、前記で例示されるR5、R6及びR7の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0043】
式(III)で表される化合物は、前記で例示されるn、m、R8、R9及びR10の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0044】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、
(I-1)
R1、R2及びR4が、Hであり、
R3が、3-ヒドロキシフェニルであり、
RN1が、Hである;
(I-2)
R1が、ベンジルオキシであり、
R2及びR4が、フッ素であり、
R3は、Hであり、
RN1が、Hである;或いは
(I-3)
R1、R2、R3及びR4が、Hであり、
RN1が、4-アミノシクロヘキサ-1-イルである。
【0045】
好ましくは、式(II)で表される化合物は、
(II-1)
R5は、3-フェニルプロパン-1-イルであり、
R6は、Hであり、
R7は、2-ヒドラジノエチルである;或いは
(II-2)
R5は、2-{1-[4-(l-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-ベンゼンスルホニル]-1H-ピロール-3-イル}-エテン-1-イルであり、
R6は、アミノであり、
R7は、Hである。
【0046】
好ましくは、式(III)で表される化合物は、
nは、2であり、
mは、0であり、
R8は、互いに独立して、塩素又はヒドロキシルであり、
R9は、メチルである。
【0047】
特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
【化12】
で表される化合物である。
【0048】
特に好ましくは、式(II)で表される化合物は、
【化13】
で表される化合物である。
【0049】
特に好ましくは、式(III)で表される化合物は、
【化14】
で表される化合物である。
【0050】
前記特徴を有する式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、LSD1阻害活性を有する公知化合物である。例えば、式(I-1)で表される化合物は、OG-L002の慣用名(Liang Yら, mBio, 第4巻, e00558-12,2013年)で、式(I-2)で表される化合物は、S2101の慣用名(Mimasu Sら, Biochemistry, 第49巻, p.6494, 2010年)で、式(I-3)で表される化合物は、ORY-1001の慣用名(Maes Tら, J Clin Oncol, 第31巻, suppl;abstr.e13, 2013年)で、式(II-1)で表される化合物は、bizineの慣用名(Prusevich, Pら, ACS Chemical Biology, 第9巻, p. 1284-1293, 2014年)で、式(II-2)で表される化合物は、4sc-202の慣用名(米国特許第8557858号明細書)で、式(III-1)で表される化合物は、SP2509の慣用名(Fiskus Wら, Leukemia, 第28巻, p.2155, 2014年)で、それぞれ知られている。当業者であれば、前記構造及び慣用名に基づき、これらの化合物を購入等するか、或いは自ら調製することにより、準備することができる。
【0051】
前記特徴を有するLSD1阻害活性を有する化合物、好ましくは式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、より好ましくは式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(II-1)、(II-2)及び(III-1)で表される化合物、特に好ましくは式(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(III-1)で表される化合物は、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体におけるテラトーマの形成を、特に強く抑制することができる。
【0052】
本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、乳酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物が前記の塩の形態である場合、テラトーマ形成抑制効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。
【0053】
本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、又はそれらの塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、又は低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン若しくは酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、又はそれらの塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、テラトーマ形成抑制効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。
【0054】
本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数個の官能基(例えばヒドロキシル基又はアミノ基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記化合物の保護形態を、前記化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、アミノ基の保護基の場合、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、テラトーマ形成抑制効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる場合がある。
【0055】
本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物が1個又は複数個の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0056】
また、本発明の各態様において、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物が1個又は複数個の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物を含む、該化合物の立体異性体も包含する。
【0057】
前記特徴を有することにより、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、テラトーマ形成に対して高い抑制効果を発現することができる。
【0058】
<2. 医薬用途>
すでに説明したように、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物を多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体に対して投与することにより、該細胞又はその構造体におけるテラトーマの形成を実質的に抑制することができる。それ故、本発明の別の一態様は、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含む、テラトーマ形成の抑制に使用するための医薬に関する。
【0059】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、これらの化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の立体異性体、それらの製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、及びその立体異性体の製薬上許容される塩、並びにそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)若しくは(III)で表される化合物又はその立体異性体が前記の塩又は溶媒和物の形態である場合、LSD1阻害活性を実質的に低下させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0060】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、これらの化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基が存在する場合、該ヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、及び該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド等を挙げることができる。例えば、アミノ基が存在する場合、該アミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を挙げることができる。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物であるLSD1阻害活性を有する化合物又は式(I)、(II)若しくは(III)で表される化合物のLSD1阻害活性を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
【0061】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本態様の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの塩、又はそれらの溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0062】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤、ローション剤、軟膏剤、点眼剤及び座剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80(商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0063】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。
【0064】
錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉又は乳糖のような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤;グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0065】
本態様の医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物のテラトーマ形成抑制効果を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0066】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。本態様の医薬において、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物と併用される他の薬剤としては、限定するものではないが、例えば、抗癌剤、ステロイド系抗炎症剤、サリドマイド及びレナリドマイド等を挙げることができる。このうち、抗癌剤としては、例えば、シクロホスファミド及びメルファラン等のアルキル化剤、ボリノスタット、パノビノスタット、ロミデプシン、フェニル酪酸類、ツバスタチンA、並びにツバシン(Tubacin)等のHDAC阻害剤等を挙げることができる。ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、コルチゾール、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン及びベタメタゾン等を挙げることができる。この場合、本態様の医薬は、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0067】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、テラトーマ形成が関与する種々の症状、疾患及び/又は障害を、同様に予防又は治療することができる。前記症状、疾患及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍を挙げることができる。本発明の各態様において、悪性腫瘍は、造血器腫瘍、上皮細胞由来の癌、及び非上皮性細胞由来の肉腫を包含する。造血器腫瘍としては、限定するものではないが、例えば、白血病、悪性リンパ腫及び多発性骨髄腫を挙げることができる。癌としては、限定するものではないが、例えば、肺癌、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、食道癌、喉頭癌、咽頭癌及び舌癌を挙げることができる。肉腫としては、限定するものではないが、例えば、骨肉腫及び軟部肉腫を挙げることができる。多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍は、造血器腫瘍、上皮細胞由来の癌、及び非上皮性細胞由来の肉腫からなる群より選択される1種以上の悪性腫瘍であることが好ましい。前記疾患、症状若しくは障害の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、テラトーマ形成が関与する前記疾患、症状若しくは障害、例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍を予防又は治療することができる。
【0068】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む本態様の医薬は、テラトーマ形成が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象が有するテラトーマ形成が関与する前記症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0069】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0070】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍)の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における、造血器腫瘍、上皮細胞由来の癌、及び非上皮性細胞由来の肉腫からなる群より選択される1種以上の悪性腫瘍の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。本態様の医薬をテラトーマ形成が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物のテラトーマ形成抑制効果を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0071】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍)の予防又は治療を必要とする対象に、有効量のLSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を投与することを含む、テラトーマ形成が関与する前記疾患若しくは症状の予防又は治療方法である。前記症状、疾患及び/又は障害は、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における、造血器腫瘍、上皮細胞由来の癌、及び非上皮性細胞由来の肉腫からなる群より選択される1種以上の悪性腫瘍であることが好ましい。テラトーマ形成が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物を投与することにより、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物のテラトーマ形成阻害効果を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0072】
本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍)の予防又は治療に使用するための、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における悪性腫瘍)の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記症状、疾患及び/又は障害は、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体における、造血器腫瘍、上皮細胞由来の癌、及び非上皮性細胞由来の肉腫からなる群より選択される1種以上の悪性腫瘍であることが好ましい。LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物又は本態様の医薬を、テラトーマ形成が関与する前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物のテラトーマ形成阻害効果を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0073】
LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物、その立体異性体若しくはそれらの製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分であるLSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分であるLSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001~100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01~10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1~10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回(例えば2若しくは3回)、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、LSD1阻害活性を有する化合物、特に式(I)、(II)又は(III)で表される化合物のテラトーマ形成阻害効果を介して、テラトーマ形成が関与する前記症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【実施例
【0074】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
<I. 健常人由来の正常細胞、誘導多能性幹細胞(hiPSC)、hiPSC由来テラトーマ及び腫瘍細胞株におけるLSD1発現様式>
健常人由来の線維芽細胞(フィブロブラスト)、末梢血T-リンパ球(T-細胞)、誘導多能性幹細胞(hiPSC)201B株、201B株を免疫不全マウス皮下に移植し3週間後に形成したテラトーマ、悪性腫瘍細胞K562株、HeLa細胞株、及びHEK293細胞株より、タンパク溶解液及び全RNAを抽出した。線維芽細胞及び腫瘍細胞株は、いずれもヒューマンサイエンス研究資源バンクより、hiPSC 201B株は、京都大学山中教授より、それぞれ提供を受けた。テラトーマは、6~8週齢の免疫不全(NOD/SCID)マウス(日本クレア)の皮下へ、hiPSC(201B株)2×106個をマトリゲル(コーニング)に懸濁したものを移植して形成させた。
【0076】
各細胞及びテラトーマにおけるタンパク質発現量を、イムノブロットにより解析した。それぞれ2.5 μgのタンパク質を、Simple Western System Wes (プロテインシンプル)を用いて、HDAC1、HDAC3、HDAC6、LSD1及びOct3/4に対する特異抗体、続いてセイヨウワサビペルオキシダーゼ (HRP)標識2次抗体で反応後、発色試薬により、発光を検出した。GAPDHは、タンパク質量のコントロールとして使用した。得られたシグナルの強度を、それぞれのGAPDHのシグナル強度を用いてタンパク量あたりに補正した。補正後の値のフィブロブラストの値を1.0とした時の、各シグナル強度の相対値を算出した。各細胞及びテラトーマにおけるタンパク質発現量をイムノブロットにより解析した結果を図1に示す。図中、Aは、イムノブロットの結果を、Bは、フィブロブラストの値を1.0とした時の、各シグナル強度の相対値を、それぞれ示す。
【0077】
図1に示すように、HDAC1、HDAC3、HDAC6及びLSD1の発現は、健常人由来の正常細胞(フィブロブラスト及びT-細胞)及びhiPSCでほとんど検出されなかったが、テラトーマでは発現が強く検出された。テラトーマにおけるHDAC1及びHDAC3発現量は、腫瘍細胞株(K562株)と同程度であったが、HDAC6及びLSD1は、どの細胞よりも強く発現が検出された。
【0078】
各細胞及びテラトーマにおける遺伝子発現量を、定量PCR法により解析した。抽出したRNAより、逆転写酵素(TOYOBO)を用いて、相補的DNAを合成した。HDAC1、HDAC3、HDAC6及びLSD1に対する市販の定量PCR法用プローブ(TaqManProbe)を用いて、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(ライフテクノロジー)により解析し、遺伝子発現量を、ΔCT法により定量した。フィブロブラストの遺伝子発現量を1.0とした時の、それぞれの遺伝子発現量の相対値を算出した。各細胞及びテラトーマにおける遺伝子発現量を定量PCR法により解析した結果を図2に示す。
【0079】
図2に示すように、テラトーマにおけるHDAC1、HDAC3、HDAC6及びLSD1の強発現は、遺伝子発現レベルでも、タンパク質レベル(図1B)と同様に検出された。
【0080】
テラトーマ組織における発現を、蛍光免疫染色により解析した。摘出したテラトーマを、4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した後、10%及び20%スクロースにて置換した。試料を、OCTコンパウンド(Optical Cutting Temperature compound, SAKURAFinetek US)にて包埋した。クライオスタットを用いて、7~10 μm厚の凍結試料切片を複数枚作製し、連続切片とした。凍結切片を、ヘマトキシリンエオジン(HE)で染色した。また、その連続切片を、HDAC1、HDAC6又はLSD1に対する特異抗体及びAlexa-488標識2次抗体で蛍光免疫染色した。HE染色では、凍結切片スライドを、ヘマトキシリン溶液(Carazzi)及び0.5%エオジン溶液へ浸し、細胞質及び核を染色した。その後、脱水及び透徹を行い、カナダバルサムにて封入した。蛍光免疫染色では、連続切片を、固定バッファー及びブロッキングバッファー(Life Technologies)でそれぞれ15分間反応させた。その後、連続切片を、ブロッキングバッファーで1/100に希釈した1次抗体と、4℃で一晩インキュベートした。翌日、連続切片を、ブロッキングバッファーで1/1000に希釈した2次抗体と反応させ、核染色用試薬ProLong Gold Antifade Reagent with DAPI(Cell Signaling)で封入した。蛍光顕微鏡(Biorevo BZ-X710 キーエンス)を用いて、切片を観察した。テラトーマ組織切片のHE染色、並びにHDAC1、HDAC6又はLSD1に対する特異抗体及びAlexa-488標識2次抗体を用いる蛍光免疫染色の結果を図3に示す。図中、緑色は、HDAC1、HDAC6又はLSD1によるシグナルを、青色は、DAPI染色による細胞核を示す。
【0081】
図3に示すように、テラトーマ組織内のHDAC1、HDAC6又はLSD1発現(緑色)は、形成したテラトーマのどの部位にも同程度に検出された。
【0082】
<II. LSD1を強発現させたhiPSCのテラトーマ形成促進作用>
ChiPS17株にLSD1遺伝子を強発現させたクローン亜株を樹立した。樹立した3個の亜株(E7、F6及びH12)におけるLSD1遺伝子発現を、定量PCRにより解析した。ベクターのみを導入した亜株(mock)の遺伝子発現量を1.0 とした時の、それぞれの遺伝子発現量の相対値を算出した。また、3個の亜株のLSD1及び発癌因子であるc-mycタンパク質の発現を、イムノブロットにより解析した。ベクターのみを導入した亜株(mock)のタンパク質発現量を1.0とした時の、それぞれのタンパク質発現量の相対値を算出した。3個の亜株(E7、F6及びH12)におけるLSD1遺伝子発現を定量PCRにより解析した結果を図4に示す。また、3個の亜株(E7、F6及びH12)におけるタンパク質発現量をイムノブロットにより解析した結果を図5に示す。図中、Aは、イムノブロットの結果を、Bは、ベクターのみを導入した亜株(mock)のタンパク質発現量を1.0 とした時の、それぞれのタンパク質発現量の相対値を、それぞれ示す。
【0083】
テラトーマ形成時には、発癌因子であるc-mycの強発現の関与が示唆されている(Leeら, Nat Med, 第19巻, p. 998, 2013年)。また、膵臓癌では、c-mycがLSD1発現により制御されていることが示されている(Guptaら, Prostate Cancer Prostatic Dis., 第19巻, p. 349, 2016年)。図4及び5に示すように、3個の亜株の中では、H12株がLSD1及びc-mycを強発現していた。そこで、以降は、この株を用いて実験を進めた。
【0084】
ChiPS17亜株(H12株)2×106個をマトリゲルに懸濁し、6~8週齢の免疫不全マウスの皮下へ移植した。移植後22日目及び49日目にテラトーマを摘出し、重量を測定後、凍結切片を作製した。前記Iと同様の手順で、凍結切片をHEで染色した。移植後22日目及び49日目に採取したテラトーマの写真を図6に、テラトーマの重量(平均値±標準偏差値)を図7に、採取したテラトーマ切片のHE染色結果を図8に、それぞれ示す。図中、Aは、移植後22日目の結果を、Bは、移植後49日目の結果を、それぞれ示す。*は、スチューデントt-検定により算出した、mockに対するp値が0.05以下であることを示す。
【0085】
図6及び7に示すように、LSD1強発現により、移植後22日目で有意なテラトーマ増殖の促進効果が観察された。また、図8に示すように、移植後49日目に採取したテラトーマでは、mock及びLSD1強発現亜株ともに三胚葉系への分化が観察された。これらの結果から、LSD1強発現は、多分化能には影響を与えず、移植後のテラトーマ形成の促進に作用したと推測される。それ故、LSD1強発現は、テラトーマ形成のドライバーであると考えられる。前記Iに示すように、LSD1は、正常細胞には発現が見られず、テラトーマにおいて特異的に強発現している(図1及び2)。それ故、LSD1阻害活性を有する化合物は、正常細胞には影響を与えず、多能性幹細胞由来の細胞又はその構造体におけるテラトーマ形成を特異的に抑制し得ると推測される。
【0086】
<III. エピジェネティックな制御に関与する酵素阻害剤によるテラトーマ形成抑制効果>
エピジェネティックな制御に関与する酵素に対する公知の阻害剤を用いて、これらの阻害剤のテラトーマ形成抑制効果を評価した。公知の阻害剤としては、HDAC阻害剤であるパノビノスタット(Crisanti MCら, Mol Cancer Ther, 第8巻, p.2221, 2009年)、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ(Kikuchi Jら, Blood, 第116巻, p. 406, 2010年)、及びHDAC6阻害剤であるツバスタチンA(Gradilone SAら, Cancer Res, 第73巻,p.2259, 2013年)を用いた。ChiPS17株2×106個をマトリゲルに懸濁し、6~8週齢の免疫不全マウスの皮下へ移植した。移植直後から、移植したマウスを4群に分けた。ツバスタチンA投与群は、ツバスタチンAのDMSO溶液を、終濃度50 mg/kgになるように生理食塩水で希釈した溶液を、ボルテゾミブ投与群は、ボルテゾミブのDMSO溶液を、終濃度0.5 mg/kgになるように生理食塩水で希釈した溶液を、パノビノスタット投与群は、パノビノスタットのDMSO溶液を、終濃度20 mg/kgになるように生理食塩水で希釈した溶液を、対照群は、等量のDMSOを生理食塩水で希釈した溶液を、それぞれ日曜日を除く連日3 週間連続で、腹腔内投与した。阻害剤の投与量は、文献等(Woan KVら, Mol Oncol, 第9巻, p. 1447, 2015年;Ocio EMら, Haematologica, 第95巻, p. 794, 2010年)を参考とした。移植後56日目に、テラトーマを摘出した。パノビノスタット投与群では、顕著な体重減少が起こり、マウスが死亡したため、試料を得られなかった。移植後56日目に採取したテラトーマの写真を図9に示す。図中、Aは、対照群を、Bは、ツバスタチンA投与群を、Cは、ボルテゾミブ投与群を、それぞれ示す。また、試験に使用した阻害剤の阻害様式とテラトーマ形成抑制効果との関係を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
図9及び表1に示すように、HDACを阻害するパノビノスタット、ボルテゾミブ及びツバスタチンAの投与による、有意なテラトーマ形成抑制効果は確認されなかった。
【0089】
<IV. LSD1阻害剤によるテラトーマ形成抑制効果>
[IV-1. LSD1阻害剤によるiPS細胞に対する分化及び増殖抑制効果]
公知のLSD1阻害剤を用いて、これらの阻害剤のテラトーマ形成抑制効果を評価した。本実験では、試験化合物の存在下でiPS細胞を培養して、分化及び/又は増殖を示した細胞数を測定して、細胞の総数に対する分化及び/又は増殖を示した細胞数の割合(%)を算出した。この評価法の場合、分化及び/又は増殖を示した細胞数の割合が100%未満であれば、テラトーマ形成抑制効果を有すると評価し得る。LSD1阻害剤としては、以下の式で表される化合物を使用した。式(I-1)で表される化合物は、OG-L002の慣用名(Liang Yら, mBio, 第4巻, e00558-12,2013年)で、式(I-2)で表される化合物は、S2101の慣用名(Mimasu Sら, Biochemistry, 第49巻, p.6494, 2010年)で、式(I-3)で表される化合物は、ORY-1001の慣用名(Maes Tら, J Clin Oncol, 第31巻, suppl;abstr.e13, 2013年)で、式(II-1)で表される化合物は、bizineの慣用名(Prusevich, Pら, ACS Chemical Biology, 第9巻, p. 1284-1293, 2014年)で、式(III-1)で表される化合物は、SP2509の慣用名(Fiskus Wら, Leukemia, 第28巻, p.2155, 2014年)で、それぞれ知られている。
【化15】




【0090】
96ウェルプレートの各ウェルに、分化誘導培地 (10%牛胎児血清添加DMEM培地 ; GIBCO) に浮遊させた10,000個のChiPS17細胞を播種した。播種後のウェルに、LSD1阻害剤である式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(II-1)又は(III-1)で表される化合物 (Selleckchem) を、2.5~40 μMの終濃度で添加した。その後、各細胞を、3日間培養した。各ウェルに、Cell Counting Kit-8 (DOJINDO, カタログ番号347-07621) 付属の発色基質含有バッファー10 μLを加え、37℃で約1時間インキュベートした。その後、各ウェルの培養液の波長450 nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダー (Ultramark microplate imaging system, BioRad) にて測定した。LSD1阻害剤非添加下で培養した対照ウェルの値を100%とした時の各ウェルの相対値を算出して、細胞増殖に対する用量反応曲線を作製した。実験を4回行い、その平均値±標準偏差値を示した。iPS細胞の培養における分化及び/又は増殖を示す細胞数に対する、式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(II-1)及び(III-1)で表される化合物の用量応答曲線を図10に示す。
【0091】
図10に示すように、式(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(III-1)で表される化合物は、投与濃度依存的にiPS細胞の分化及び/又は増殖を抑制した。式(II-1)で表される化合物も、2.5~20 μMの範囲では投与濃度依存的にiPS細胞の分化及び/又は増殖を抑制した。iPS細胞の集団において、分化又は増殖能力を有する細胞が存在すると、テラトーマを形成し得る。それ故、iPS細胞の分化及び増殖を抑制し得る式(I-1)、(I-2)、(I-3)、(II-1)及び(III-1)で表される化合物は、テラトーマ形成に対しても抑制効果を示すと推測される。
【0092】
[IV-2. LSD1阻害剤によるテラトーマ形成抑制効果]
ChiPS17亜株(H12株)2×106個をマトリゲルに懸濁し、6~8週齢の免疫不全マウスの右足上部の皮下へ移植した。移植直後から、移植したマウスを二群に分けた。式(III-1)で表される化合物の投与群及び対照群に、それぞれ週に3回ずつ、3週間に亘って、溶液を腹腔内投与した。式(III-1)で表される化合物の溶液は、該化合物のDMSO溶液を、30 mg/kgの終濃度となるように生理食塩水で希釈して調製した。また、対照群の溶液は、等量のDMSOを生理食塩水で希釈して調製した。移植後28日目にテラトーマを摘出し、重量を測定した。移植後28日目に採取したテラトーマの写真を図11に、テラトーマの重量(平均値±標準偏差値)を図12に、それぞれ示す。図11中、Aは、対照群の結果を、Bは、式(III-1)で表される化合物の投与群の結果を、それぞれ示す。また、図12中、*は、スチューデントt-検定により算出した、対照群に対するp値が0.05以下であることを示す。
【0093】
図11及び12に示すように、式(III-1)で表される化合物の投与により、移植後28日目で有意なテラトーマ形成の抑制効果が観察された。
【0094】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12