(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】溶接トーチ移動機構及びこれを具えた溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/028 20060101AFI20220602BHJP
B23K 37/02 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B23K9/028 D
B23K37/02 301A
(21)【出願番号】P 2018129617
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年4月25日~28日に開催された2018国際ウエルディングショーにて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】512057460
【氏名又は名称】株式会社 カットランドジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047458(JP,A)
【文献】特開2016-026888(JP,A)
【文献】特開平10-193126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/028
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接物を溶接する溶接装置に用いられ、駆動装置から伝達されるトルクによって、前記被溶接物の周囲を旋回する走行台車に連結される溶接トーチを旋回軸に対する軸方向又は径方向に移動させる溶接トーチ移動機構において、
前記溶接トーチが連結されている送りナット、及び該送りナットが螺合し、前記径方向に延びている送りねじと、
前記駆動装置からのトルクが伝達される第1シャフト、該第1シャフト上に前記軸方向移動可能に設けられている第1出力ギア、該第1出力ギアからトルクが伝達される第2シャフト、該第2シャフトに連結されている第2出力ギア、該第2出力ギアと直交するように噛合い、前記送りねじに連結されている送り入力ギアと、
前記第2シャフトの外周側に設けられている外周側ねじと、
前記駆動装置からのトルクが外歯を通じて伝達され、前記外周側ねじと噛合う内周側ねじを具えた軸方向移動用ギアを具えたことを特徴とする、
溶接トーチ移動機構。
【請求項2】
前記溶接装置が、
環状のハウジングと、
前記ハウジングに対し回転可能に支持され、内周面の全周に内歯を具える環状の溶接ヘッド旋回ギアと、
内周面の全周に内歯を、外周面の少なくとも一部に外歯を具え、前記溶接ヘッド旋回ギアに対し所定の角度以上回動可能に設けられる、少なくとも2枚の環状のリングギアと、
前記溶接ヘッド旋回ギアの内歯に噛合う旋回入力ギア及び前記リングギアの内歯にそれぞれ噛合うリング入力ギアと、
前記リングギアの外歯に噛合うリング出力ギアと、
前記軸方向の一方の側に位置するように前記ハウジングと連結され、前記旋回入力ギアとリング入力ギアにトルクを伝達する複数の電動機を具え、
前記溶接トーチが前記軸方向の他方の側に位置し、
前記走行台車が前記溶接ヘッド旋回ギアに連結され、
前記リング出力ギアからのトルクが前記第1シャフト及び軸方向移動用ギアにそれぞれ伝達されるように構成されている、請求項1の溶接トーチ移動機構を具えた溶接装置。
【請求項3】
前記溶接装置が、
環状のハウジングと、
前記ハウジングに対し回転可能に支持され、外周面の全周に外歯を具える環状の溶接ヘッド旋回ギアと、
外周面の全周に外歯を、内周面の少なくとも一部に内歯を具え、前記溶接ヘッド旋回ギアに対し所定の角度以上回動可能に設けられる、少なくとも2枚の環状のリングギアと、
前記溶接ヘッド旋回ギアの外歯に噛合う旋回入力ギア及び前記リングギアの外歯にそれぞれ噛合うリング入力ギアと、
前記リングギアの内歯に噛合うリング出力ギアと、
前記軸方向の一方の側に位置するように前記ハウジングと連結され、前記旋回入力ギアとリング入力ギアにトルクを伝達する複数の電動機を具え、
前記溶接トーチが前記軸方向の他方の側に位置し、
前記走行台車が前記溶接ヘッド旋回ギアに連結され、
前記リング出力ギアからのトルクが前記第1シャフト及び軸方向移動用ギアにそれぞれ伝達されるように構成されている、請求項1の溶接トーチ移動機構を具えた溶接装置。
【請求項4】
前記電動機とハウジングの間に設けられ、前記旋回入力ギア及びリング入力ギアにトルクを伝達する差動装置を具え、
一の前記電動機を駆動し、他の前記電動機を停止しているときに前記溶接ヘッド旋回ギア及びリングギアを同方向同回転数で回転させ、
他の前記電動機を駆動したとき、前記溶接ヘッド旋回ギアと異なる回転数で、前記リングギアを回転させるように構成されている、請求項2又は3の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の被溶接物、具体的には、配管(パイプ)を溶接するための装置(以下、単に、「溶接装置」という。)に用いられる溶接トーチを移動させる溶接トーチ移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイプの周りに設置され、パイプの周方向へ溶接トーチを旋回させてパイプを溶接する溶接装置が知られている。このような溶接装置において、溶接トーチは、パイプの周方向を旋回しながら、溶接装置又はパイプの軸方向及び径方向に移動するように構成されている。当該構成を具えた溶接装置として、出願人が提案している以下の溶接装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-047458号公報
【文献】特開2013-184176号公報
【文献】特開2016-159356号公報
【0004】
特許文献1の溶接装置は、環状のハウジングの内側に、溶接ヘッド旋回ギア及び第1乃至第3リングギアを具え、モータからのトルクでこれらのギアを回転させる。溶接ヘッド旋回ギアが回転すると、溶接トーチが取付けられている溶接ヘッドがハウジング上を周方向に移動し、パイプの周囲を旋回する。このとき、他のモータのトルクにより第1乃至第3リングギアのいずれかが回動すると、これに連動して、トーチ軸方向移動機構又はトーチ径方向移動機構が作動し、溶接トーチを軸方向又は径方向に移動させる。
【0005】
また、特許文献2,3には、溶接トーチを軸方向又は径方向に移動させるための移動機構(以下、単に、「移動機構」ということもある。)が開示されている。特許文献2では、モータからのトルクがトーチ用歯車(リングギアの1つ)及び複数のギアを通じてねじ軸へ伝達され、当該ねじ軸上を進退動する送りナットに連結された溶接トーチが進退動する。
【0006】
一方、特許文献3に開示されている溶接トーチは、モータから往復動ギア及びトーチ縦動用動力伝達ギア又はトーチ遠近用動力伝達ギアへ伝達されるトルクによって、被溶接物に対し溶接装置の軸方向又は径方向に移動するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶接トーチ及びその移動機構は、溶接装置のハウジングの周りを旋回するので、溶接装置の円滑な作動のために、軽量であることが望ましい。しかしながら、従来の移動機構は、溶接トーチを軸方向及び径方向に移動させるための構造が複雑で、部品点数が多く、その分、重量が嵩むという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、軽量でコンパクトな溶接トーチ移動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被溶接物を溶接する溶接装置に用いられ、駆動装置から伝達されるトルクによって、前記被溶接物の周囲を旋回する走行台車に連結される溶接トーチを旋回軸に対する軸方向又は径方向に移動させる溶接トーチ移動機構において、
前記溶接トーチが連結されている送りナット、及び該送りナットが螺合し、前記径方向に延びている送りねじと、
前記駆動装置からのトルクが伝達される第1シャフト、該第1シャフト上に前記軸方向移動可能に設けられている第1出力ギア、該第1出力ギアからトルクが伝達される第2シャフト、該第2シャフトに連結されている第2出力ギア、該第2出力ギアと直交するように噛合い、前記送りねじに連結されている送り入力ギアと、
前記第2シャフトの外周側に設けられている外周側ねじと、
前記駆動装置からのトルクが外歯を通じて伝達され、前記外周側ねじと噛合う内周側ねじを具えた軸方向移動用ギアを具えたことを特徴とする溶接トーチ移動機構によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2シャフトの外周側に外周側ねじが設けられ、当該外周側ねじと噛合う内周側ねじを具えた軸方向移動用ギアの外歯に、駆動装置からのトルクが伝達されるという構成であるため、溶接トーチを軸方向又は径方向に移動させるための溶接トーチ移動機構の部品点数を抑えることができ、軽量、且つ、コンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態の溶接トーチ移動機構の軸方向断面図。
【
図2】本発明の第一実施形態の溶接トーチ移動機構の径方向一部断面図。
【
図6】本発明の溶接装置の軸方向一方のハウジングを取り外した状態の正面図。
【
図7】本発明の溶接装置の軸方向一方のハウジング及び溶接ヘッド旋回ギアを取り外した状態の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を
図1~8を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1,2には、本発明の溶接トーチ移動機構20が示されている。溶接トーチ移動機構20は、別々に伝達される2種類のトルクによって溶接トーチ22を2方向に移動させる機構である。まず、以下に、溶接トーチ移動機構20にトルクが伝達される仕組みを説明する。
【0014】
図3~5は、それぞれ、本発明の第一実施形態の溶接装置10を示す、正面図、側面図、背面図である。これらの図に示されているように、溶接装置10は、環状のハウジング12を具える。ハウジング12は、周方向に複数設けられている固定部材16によって、被溶接物の例であるパイプP1の外周面上に固定されている。溶接装置10は、走行台車44(
図6参照)を具え、走行台車44は、ハウジング12に沿って、旋回可能に構成されている。また、ハウジング12は、走行台車44の旋回軸の軸方向(以下、単に、「軸方向」という。)の対向面13,13(
図8参照)を有するように構成され、図中の上下で2つに分割可能である(図では、連結具14によって連結されている状態を示す。)。なお、ハウジングをさらに分割した構成とすることもできる。
【0015】
図4に示すように、パイプP1とP2を溶接する場合、溶接装置10は、パイプP1とP2のいずれかに装着される(図では、P1に装着されている。)。ハウジング12の軸方向の一方の側(図中右側)には、複数の電動機M1~M4(
図5も参照)が差動装置30を介してハウジング12に連結されている。一方、ハウジング12の外径側には、溶接ヘッド20が位置し、ハウジング12の軸方向の他方の側(図中左側)に溶接トーチ22が位置するように構成されている。溶接トーチ22は、パイプP1,P2などの被溶接物をアーク溶接するためのものである。なお、
図2において、溶接装置10の周方向にはカバーCが取付けられている。
【0016】
図5に示すように、ハウジング12の電動機M1~M4が装着される側の面には、溶接トーチ22に電力を供給する電源供給導体(図示省略)が挿し込まれる電源供給体18を具える。電力の供給方法、或いは、溶接に要するシールドガスの供給方法については、本発明の主題ではないため、説明を省略する。
【0017】
図6に示すように、ハウジング12の内側には、溶接ヘッド旋回ギア40が設けられている。なお、
図6では、説明の便宜上、後述する第1乃至第3入力ギア52,62,72の図示は省略している。溶接ヘッド旋回ギア40の内周面の全周には、内歯48が形成されている。また、溶接ヘッド旋回ギア40の外周側には、走行台車44が連結されている。溶接ヘッド旋回ギア40は、後に説明するように、ハウジング12に対して回転可能に設けられており、内歯48と噛合う旋回入力ギア42からトルクが伝達される。よって、旋回入力ギア42を通じて溶接ヘッド旋回ギア40にトルクが伝達されると、溶接ヘッド旋回ギア40は回転し、走行台車44も溶接ヘッド旋回ギア40に連動して回転する。走行台車44には、溶接トーチ移動機構20が連結されているため、走行台車44の旋回に従って、溶接トーチ移動機構20及び溶接トーチ22も旋回する。
【0018】
図7に示すように、溶接装置10は、環状の第1乃至第3リングギア50,60,70を具える。なお、
図7では、説明の便宜上、前述した旋回入力ギア42の図示は省略している。第1乃至第3リングギア50,60,70の内周面の全周には、それぞれ、内歯58,68,78が形成されている。第1乃至第3リングギア50,60,70も、後述するように、ハウジング12に対して回転可能であり、内歯58,68,78とそれぞれ噛合うリング第1乃至第3入力ギア52,62,72からトルクが伝達される。よって、第1乃至第3リング入力ギア52,62,72を通じて第1乃至第3リングギア50,60,70にトルクが伝達されると、第1乃至第3リングギア50,60,70は回転する。第1乃至第3リングギア50,60,70は、溶接ヘッド旋回ギア40に対して、それぞれ、所定の角度のみ回動可能に設けられている。なお、第1乃至第3リングギア50,60,70を、溶接ヘッド旋回ギア40に対して回転可能に設けることもできる。
【0019】
図8に示すように、溶接ヘッド旋回ギア40の外周側に取付けられている走行台車44は、第1乃至第3リング出力ギア54,64,74を軸支している。これにより、第1乃至第3リング出力ギア54,64,74は、溶接ヘッド旋回ギア40と連動するように、溶接ヘッド旋回ギア40に連結される。第1乃至第3リング出力ギア54,64,74は、それぞれ、第1乃至第3リングギア50,60,70の外周面に形成される外歯59,69,79と噛合っている。このため、溶接ヘッド旋回ギア40に対して異なる回転数でリングギア50,60,70が回転又は回動したとき、第1乃至第3リング出力ギア54,64,74にそれぞれトルクが出力される。なお、外歯59,69,79は、第1乃至第3リングギア50,60,70の外周面の全周に形成されていてもよいが、溶接ヘッド旋回ギア40に対して第1乃至第3リングギア50,60,70が回動可能な角度の範囲内で、当該外周面の一部のみに形成した構成としてもよい。
【0020】
第1乃至第3リング出力ギア54,64,74に伝達されたトルクは、
図1に示す、径方向移動用ギア80、軸方向移動用ギア102、及びワイヤ送給機構24にそれぞれ伝達される。ワイヤ送給機構24は、例えば、ワンウェイクラッチ(図示省略)を含むギア機構を内部に具える等して、第1乃至第3リング出力ギア54,64,74のいずれかの正逆転いずれの回転又は回動方向のトルクによっても、ワイヤホルダ24a(
図3参照)に巻き付けられた溶接用ワイヤ(図示省略)をワイヤガイド24b(
図3参照)へ送給できるように構成されている。なお、溶接トーチ22を走行台車44の旋回軸の軸方向及び径方向(以下、単に、「径方向」という。)に移動させるためには、リング出力ギアが2枚あればよい。
【0021】
第1乃至第3リング出力ギア54,64,74のいずれかから溶接トーチ移動機構20の径方向移動用ギア80に伝達されたトルクは、第1中間ギア82を介して第1シャフト84に伝達される。第1シャフト84上には、第1出力ギア86が第1シャフト上を軸方向に移動可能に設けられている。本実施形態では、第1出力ギア86は、第シャフト84にスプライン嵌合している。
【0022】
第1シャフト84に伝達されたトルクは、第1出力ギア86、第2中間ギア88、第3中間ギア90を介して第2シャフト92に伝達される。第2シャフト92に伝達されたトルクは、第2シャフト92に連結されている第2出力ギア94を通じて、
図2に示す送り入力ギア96に伝達され、最終的に、送り入力ギア96が連結されている送りねじ98に伝達される。第2出力ギア94と送り入力ギア96は、互いに直交するように噛合っており、送りねじ98は、径方向に延びるように配設されている。
【0023】
送りねじ98が回転すると、送りねじに螺合している送りナット100が送りねじ98上を進退動する。送りナット100には、溶接トーチ22が連結されているので、かくして、径方向移動用ギア80に伝達されたトルクによって、溶接トーチ22を径方向に進退動させることができる。
【0024】
次に、溶接トーチ22を軸方向に進退動させるための仕組みを説明する。
図1,2に示されているとおり、第2シャフト92の外周側には、外周側ねじ104が形成されている。一方、
図1に示すように、溶接トーチ移動機構20は、軸方向移動用ギア102を具え、軸方向移動用ギア102の内部を第2シャフト92が貫通している。軸方向移動用ギア102は、内周側ねじ103と外歯を有し、その内周側ねじ103が第2シャフト92の外周側ねじ104と噛合っている。軸方向移動用ギア102には、第1乃至第3リング出力ギア54,64,74のいずれかから軸方向移動用ギア102の外歯を通じてトルクが伝達される。
【0025】
軸方向移動用ギア102が回転すると、その回転方向に応じて、第2シャフト92が軸方向に進退動する。なお、第2シャフトの進退動に従って、第1出力ギア86、第2中間ギア88、及び第3中間ギア90も進退動することは言うまでもない。かくして、軸方向移動用ギア102に伝達されたトルクによって、溶接トーチ22を軸方向に進退動させることができる。
【0026】
以上のとおり、第2シャフト92の外周側に外周側ねじ104が設けられ、外周側ねじ104と噛合う内周側ねじ103を具えた軸方向移動用ギア102の外歯にトルクを伝達することで、溶接トーチ22を軸方向に進退動させる構成としたため、溶接トーチ移動機構20の部品点数を従来に比べて抑えることができ、軽量、且つ、コンパクトにすることができる。
【0027】
電動機M1~M4とハウジング12の間には、旋回入力ギア42及びリング入力ギア52,62,73にトルクを伝達する差動装置30(
図4参照)が設けられている。差動装置20は、電動機M1~M4のいずれかを駆動し、他の電動機を停止しているときに溶接ヘッド旋回ギア40及び第1乃至第3リングギア50,60,70を同方向同回転数で回転させ、他の電動機を駆動したとき、溶接ヘッド旋回ギア40と異なる回転数で第1乃至第3リングギア50,60,70を回転させるように構成されている。このような差動装置30を設けずに、電動機M1~M4を旋回入力ギア42、及び第1乃至第3リング入力ギア52,62,72のそれぞれに直接連結することも可能であるが、差動装置30を設けた方が、一つの電動機で溶接ヘッド旋回ギアとリングギアを回転させることができ、電動機の制御装置の簡素化ができるので好適である。
【0028】
なお、本発明の溶接装置は、上記に説明した溶接装置10と対称の構成であってもよい。すなわち、第一に、溶接ヘッド旋回ギアとリングギアがそれぞれの外周面の全周に外歯を具え、リングギアの内周面の少なくとも一部に内歯を具える。第二に、旋回入力ギアとリング入力ギアが溶接ヘッド旋回ギアとリングギアの外歯に噛合うように設けられ、リング出力ギアがリングギアの内歯に噛合うように設けられる。第三に、走行台車が溶接ヘッド旋回ギアの内径側に設けられている、という構成であってもよい。
【0029】
また、本発明の溶接装置は、被溶接物のパイプの外周面上に固定されるものに限らず、固定部材を介してパイプの内側に固定されるものであってもよい。また、本発明は、溶接トーチの替わりにバイトを取付けることにより、加工装置としても使用することができる。
【0030】
以上に説明したように、本発明によれば、軽量でコンパクトな溶接トーチ移動機構及びこれを具えた溶接装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 溶接装置
12 ハウジング
20 溶接トーチ移動機構
22 溶接トーチ
30 差動装置
40 溶接ヘッド旋回ギア
42 旋回入力ギア
50,60,70 リングギア
52,62,72 リング入力ギア
54,64,74 リング出力ギア
84 第1シャフト
86 第1出力ギア
92 第2シャフト
94 第2出力ギア
96 送り入力ギア
98 送りねじ
100 送りナット
102 軸方向移動用ギア
103 内周側ねじ
104 外周側ねじ
M1~M4 駆動装置(電動機)