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特許7082809構成員健康状態管理システム、構成員健康状態管理方法、及び構成員健康状態管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】構成員健康状態管理システム、構成員健康状態管理方法、及び構成員健康状態管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20220602BHJP
【FI】
G06Q50/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018133765
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020013230
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】518126889
【氏名又は名称】BioICT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕一
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-182738(JP,A)
【文献】特開2012-128768(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050174(WO,A1)
【文献】特開2013-174951(JP,A)
【文献】特開2010-191677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する情報蓄積部と、
インターネット回線を介して接続された複数の健康サービス提供者に前記健康状態情報を送信する情報送信部と、
前記複数の健康サービス提供者において解析された前記健康状態情報に基づく一次解析データを、前記複数の健康サービス提供者から取得する一次解析データ取得部と、
前記一次解析データに基づいて所定の評価基準を生成する評価基準生成部と、
前記評価基準と、前記評価基準の生成に用いられた一次解析データに関連する健康状態情報と同一項目についての一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する二次解析データ生成部と、
前記二次解析データを前記一の構成員に通知する通知部とを備える
ことを特徴とする構成員健康状態管理システム。
【請求項2】
前記評価基準生成部は、前記一次解析データに基づいてビッグデータ解析または機械学習を含むデータ解析を通じて前記所定の評価基準を生成し、
前記二次解析データ生成部は、前記一の構成員の健康状態情報を前記所定の評価基準に入力して、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の構成員健康状態管理システム。
【請求項3】
前記構成員の属する第1集団の構成員の各人について前記二次解析データを集約して第1集団解析データを生成するとともに、前記第1集団の構成員とは異なる第2集団の構成員の各人について前記二次解析データを集約して第2集団解析データを生成する集団解析部と、
前記第1集団解析データと前記第2集団解析データとを比較して前記第1集団と前記第2集団を比較した集団間比較データを生成する集団間比較部と
を備える請求項1または2に記載の構成員健康状態管理システム。
【請求項4】
前記一次解析データを数値化する数値化変換部が備えられる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構成員健康状態管理システム。
【請求項5】
前記二次解析データを蓄積する二次解析データ蓄積部が備えられる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構成員健康状態管理システム。
【請求項6】
前記集団間比較データを蓄積する集団間比較データ蓄積部が備えられる請求項3に記載の構成員健康状態管理システム。
【請求項7】
コンピュータ部が、
構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する情報蓄積ステップと、
インターネット回線を介して接続された複数の健康サービス提供者に前記健康状態情報を送信する情報送信ステップと、
前記複数の健康サービス提供者において解析された前記健康状態情報に基づく一次解析データを、前記複数の健康サービス提供者から取得する一次解析データ取得ステップと、
前記一次解析データに基づいて所定の評価基準を生成する評価基準生成ステップと、
前記評価基準と、前記評価基準の生成に用いられた一次解析データに関連する健康状態情報と同一項目についての、一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する二次解析データ生成ステップと、
前記二次解析データを前記一の構成員に通知する通知ステップとを備える
ことを特徴とする構成員健康状態管理方法。
【請求項8】
コンピュータ部に、
構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する情報蓄積機能と、
インターネット回線を介して接続された複数の健康サービス提供者に前記健康状態情報を送信する情報送信機能と、
前記複数の健康サービス提供者において解析された前記健康状態情報に基づく一次解析データを、前記複数の健康サービス提供者から取得する一次解析データ取得機能と、
前記一次解析データに基づいて所定の評価基準を生成する評価基準生成機能と、
前記評価基準と、前記評価基準の生成に用いられた一次解析データに関連する健康状態情報と同一項目についての、一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する二次解析データ生成機能と、
前記二次解析データを前記一の構成員に通知する通知機能とを実行させる
ことを特徴とする構成員健康状態管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成員健康状態管理システム、構成員健康状態管理方法、及び構成員健康状態管理プログラムに関し、特に、健康サービス提供者を活用して、集団に帰属する構成員個人の健康状態の把握と評価を容易にする構成員健康状態管理システム、その方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
会社、工場等の集団に属する構成員の健康状態を的確に判断し疾病予兆情報の分析から、構成員のフィジカル面とメンタル面の双方の疾病を予防すること、さらには疾病後の職場、社会復帰を支援することは、構成員の福利厚生水準を保ち、かつ、生産性の向上、会社、所属組織への信頼の醸成・向上、働き方改革において先進的に取り組むという社会的評価の認知向上を図るための喫緊の課題である。
【0003】
各企業、団体がいわゆる健康経営に取り組むことにより、少子高齢化社会における課題である高齢者の職場での戦力化を安心安全に推進することができるだけでなく、医療費や介護費等の社会福祉費用の効率化が図られて健全な国家財政運営に資することができる。また、健康増進を通じた職場活性化や生産性の向上によって、企業、所属組織の生産性が向上して競争力、収益性、効率性、費用対効果が高まる効果が期待できる。これが普及すれば日本の産業競争力の飛躍的な向上に寄与する。
【0004】
近年、健康経営が注目され、個人の健康管理グッズ、ITや健康デバイスを利用した各種のサービスが幅広く利用される。しかし、健康であるときも未病、罹病、罹病後のリハビリ、職場復帰、介護等のあらゆる健康状態を把握し状態に応じてよりQOL(生活の質)を高めるサポートの一元的な提供はなかった。さらに、企業や各種団体が健康経営を長期に継続して構成員の健康増進を安定的に図るためには、投資対効果の経済合理性が必須である。ところが、健康増進と生産性、業績、収益向上等の組織活動に及ぼす効果の検証ができるサービス、方法論は存在していない。そこで、健康増進が組織活動に及ぼす効果の検証できる機能を持つサービスが待ち望まれている。
【0005】
さらに少子高齢化が進む我が国においては、今後高齢者の職場での戦力化が喫緊の課題であるものの、その実現のためには職場での認知症の発症や進行に備える体制が必須である。加えて、高齢者雇用の進展いかんにより職場での脳卒中、心筋梗塞等の増加が予想され、疾病予兆の把握、疾病予防の具体的な手段を持つことがリスクマネージメント、企業や組織の活動、及び高齢の構成員当人にとっても重要な問題になる。
【0006】
従前、生活改善は個人の問題と考えられていた。しかし、構成員個人の集合である組織を考えた場合、構成員の健康状態の良否が企業の働きやすさ、やりがい、雰囲気、プレゼンティーイズム、組織へのロイヤリティーによる生産性の悪化または改善、さらには企業であれば、その業績との関連性も示唆されるようになっている。それゆえ、敢えて個人の生活習慣の領域にも踏み込み、改善を促すべきと社会の要請が変化している。また、国や地方自治体においても、構成員の医療費の抑制、ストレスの緩和等の重要度は高まっている。そのため、様々な組織による構成員の健康管理問題への取り組みの良否、その結果としての構成員の健康改善は企業の社会的責任として捉えられ、経営責任、コンプライアンスの点からも重要度が増している。
【0007】
このような経緯から、従前、構成員の健康状態を効率よく管理するシステム、方法が提案されてきた(特許文献1、2、及び3等)。しかしながら、従前のシステム、方法等にあっては、構成員個人の健康状態の分析は可能ではあるものの、集団内における健康状態の相対比較を必ずしも実現する構成ではなかった。近年、健康状態に関する統計データ等は頻繁に更新されることが多い。また、健康状態に関しての新しい指標、分析方法も開発されている。そうすると、最新の統計、検査手法を素早く取り入れて直近の情報を構成員に反映させることができれば、より改善効果が高まると期待される。
【0008】
また、現在では、健康状態の情報を収集して解析し、個人等へ還元する専門の事業者(健康サービス提供者)も登場している。特にネットワークのつながりから利用の障壁は低下し広範な活用も期待されている。そこで、ネットワーク上に存在する各種の健康状態の解析事業者の有効活用と、構成員の健康状態の管理を効率よく結びつけ、肥満、食習慣、運動不足、不適切な就業時間、睡眠状態、ストレス状態、喫煙、飲酒等の構成員個人の生活習慣にまで踏み込んだ生活習慣の改善指導、疾病予防のための種々の取り組みから構成員の個人の健康、未病、疾病、要介護等のそれぞれの状態の生活の質(QOL)の向上、並びに疾病及び重症化予防によるQOLの向上、改善、雇用者(企業)の取り組みの改善、さらには、部門全体等の構成員集団における改善に資する有効なシステム、方法等が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-191677号公報
【文献】特開2011-123579号公報
【文献】特開2016-206706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、所属の構成員の各種の健康状態情報の取得とともに外部の健康サービス提供者を活用して、構成員の健康状態の管理に結び付け構成員の生活の質(QOL)の改善及び雇用者(企業)の取り組みの改善に資するとともに、部門全体等の構成員集団における改善にも資する構成員健康状態管理システム、その管理方法、管理プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、第1の態様は、構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する情報蓄積部と、インターネット回線を介して接続された複数の健康サービス提供者に前記健康状態情報を送信する情報送信部と、前記複数の健康サービス提供者において解析された前記健康状態情報に基づく一次解析データを、前記複数の健康サービス提供者から取得する一次解析データ取得部と、前記一次解析データに基づいて所定の評価基準を生成する評価基準生成部と、前記評価基準と、前記評価基準の生成に用いられた一次解析データに関連する健康状態情報と同一項目についての一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する二次解析データ生成部と、前記二次解析データを前記一の構成員に通知する通知部とを備えることを特徴とする構成員健康状態管理システムに係る。
【0012】
第2の態様は、前記評価基準生成部は、前記一次解析データに基づいてビッグデータ解析または機械学習を含むデータ解析を通じて前記所定の評価基準を生成し、前記二次解析データ生成部は、前記一の従業員の健康状態情報を前記所定の評価基準に入力して、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する、ことを特徴とする第1の態様に記載の構成員健康状態管理システムに係る。
【0013】
第3の態様は、前記構成員の属する第1集団の構成員の各人について前記二次解析データを集約して第1集団解析データを生成するとともに、前記第1集団の構成員とは異なる第2集団の構成員の各人について前記二次解析データを集約して第2集団解析データを生成する集団解析部と、前記第1集団解析データと前記第2集団解析データとを比較して前記第1集団と前記第2集団を比較した集団間比較データを生成する集団間比較部とを備える第1または2の態様に記載の構成員健康状態管理システムに係る。
【0014】
第4の態様は、前記一次解析データを数値化する数値化変換部が備えられる第1ないし3のいずれかの態様に記載の構成員健康状態管理システムに係る。
【0015】
第5の態様は、前記二次解析データを蓄積する二次解析データ蓄積部が備えられる第1ないし4のいずれかの態様に記載の構成員健康状態管理システムに係る。
【0016】
第6の態様は、前記集団間比較データを蓄積する集団間比較データ蓄積部が備えられる第3の態様に記載の構成員健康状態管理システムに係る。
【0017】
第7の態様は、コンピュータ部が、構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する情報蓄積ステップと、インターネット回線を介して接続された複数の健康サービス提供者に前記健康状態情報を送信する情報送信ステップと、前記複数の健康サービス提供者において解析された前記健康状態情報に基づく一次解析データを、前記複数の健康サービス提供者から取得する一次解析データ取得ステップと、前記一次解析データに基づいて所定の評価基準を生成する評価基準生成ステップと、前記評価基準と、前記評価基準の生成に用いられた一次解析データに関連する健康状態情報と同一項目についての、一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する二次解析データ生成ステップと、前記二次解析データを前記一の構成員に通知する通知ステップとを備えることを特徴とする構成員健康状態管理方法に係る。
【0018】
第8の態様は、コンピュータ部に、構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する情報蓄積機能と、インターネット回線を介して接続された複数の健康サービス提供者に前記健康状態情報を送信する情報送信機能と、前記複数の健康サービス提供者において解析された前記健康状態情報に基づく一次解析データを、前記複数の健康サービス提供者から取得する一次解析データ取得機能と、前記一次解析データに基づいて所定の評価基準を生成する評価基準生成機能と、前記評価基準と、前記評価基準の生成に用いられた一次解析データに関連する健康状態情報と同一項目についての、一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データを生成する二次解析データ生成機能と、前記二次解析データを前記一の構成員に通知する通知機能とを実行させることを特徴とする構成員健康状態管理プログラムに係る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構成員健康状態管理システムによると、特定の集団に所属の構成員の各種の健康状態情報の取得とともに外部の健康サービス提供者を活用して加工できるため、効率よく構成員の健康状態の管理に結び付けることができる。そして、構成員の生活の質(QOL)の改善、及び管理者、雇用者(企業等)の取り組みの改善に貢献可能となる。さらには、構成員の属する集団全体での健康状態の管理も容易となる。
【0020】
加えて、本発明の構成員健康状態管理方法、構成員健康状態管理プログラムによると、所属の構成員の各種の健康状態情報の取得及び各種の健康状態に関する資料の活用の自動化等により低コストとしながらも質の高いサービスの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の構成員健康状態管理システムの概略構成図である。
図2】集約テーブルの概要図である。
図3】第1実施形態の情報の流れを示す模式図である。
図4】第2実施形態の構成員健康状態管理システムの概略構成図である。
図5】第2実施形態の情報の流れを示す模式図である。
図6】第1実施形態の構成員健康状態管理方法のフローチャートである。
図7】第2実施形態の構成員健康状態管理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1の概略構成図を用い第1実施形態の構成員健康状態管理システム1について説明する。本発明の構成員健康状態管理システム1(後出の2)は、同システムの運営者U(図3図5参照)により実施される。ここで、本発明における「構成員」とは、企業(会社、工場、事業所、施設)等の従業員、自治体・各種団体の職員、地域住民、NPO等の所定の集団に属する者、各種の学校の学生・生徒・児童、介護施設等の入居者等であり、何らかの「集団に帰属する者」として定義する。
【0023】
構成員健康状態管理システム1において、インターネット回線10(ネットワーク)に各種の端末11,12が接続される。同インターネット回線10に、健康サービス提供者51,52のウェブサイトのサーバ21,22も接続される。そして、インターネット回線10に本発明の主要な処理を実行するためのコンピュータ部100が接続されている。このように、構成員健康状態管理システム1では、有線または無線のネットワーク網を通じて各種の機器が接続される。さらに、インターネット回線10には蓄積サーバ13,14が加えられる。これらのサーバは、健診により取得した健康状態情報、さらには、日々変化する生体情報から取得した健康状態情報、遺伝子情報等の潜在的な健康状態情報を蓄積する。端末11,12、健康サービス提供者51,52とそれらのサーバ21,22、蓄積サーバ13,14の表記は図示上の便宜から2個とした。現実的には、インターネット回線10への接続個数は図示に限らず複数である。
【0024】
端末11,12は、歩数計、血圧計、体温計、心拍計、血糖値計、疲労度測定器、睡眠活動量計、加速度計等の人体の状態を計測できる機器であり、スマートフォン、タブレット等も含まれる。そこで、前述の機器を通じて構成員の人体の状態を継時的に計測した結果はインターネット回線10を通じてコンピュータ部100に送信される。なお、端末11,12の情報は、インターネット回線10を経由せず直接コンピュータ部100へ送信されることもある。
【0025】
また、端末11,12は、尿検査、血液検査、視力検査、聴力検査、心電図検査、呼吸量検査、レントゲン検査、内視鏡検査、細菌・ウイルス感染検査、DNA検査(ゲノム分析)、血管内壁検査等を実施する医療機関及び各種検査機関(これら機関のコンピュータ、サーバ)も含まれる。端末である医療機関等のコンピュータまたはサーバに蓄積された構成員の人体の状態を計測した検査結果、診断報酬明細書、電子カルテ、お薬手帳、母子手帳等の情報もインターネット回線10を通じてコンピュータ部100に送信される。
【0026】
これに加え、構成員の管理者(企業の雇用者等)及び情報セキュリティ、コンプライアンス、ストレスチェック等を委託する業務委託先、産業医、健康保険組合、人事部門等の組織の管理部門、または現場部門が保有する作業負荷に係る就労時間、喫煙歴、車両運転時間、機械操作時間、危険作業従事時間、ストレス状態の判定に係るパソコンの打鍵状態記録、作業内容、ウェブ検索履歴、メール送受信状況分析、移動距離や時間、在籍場所履歴、コンタクト人員数等の労務に関するデータを蓄積した企業のコンピュータ、サーバも端末11,12に含まれる。これらの労務管理上の結果もインターネット回線10を通じてコンピュータ部100に送信される。
【0027】
健康サービス提供者51のウェブサイト25のサーバ21には、ウェブページ31のデータ、提供サービスに関する処理内容、処理結果等の情報が格納され、健康サービス提供者52のウェブサイト26のサーバ22には、ウェブページ32、提供サービスに関する処理内容、処理結果等の情報のデータが格納されている。そのため、インターネット回線10を通じて健康サービス提供者51のウェブページ31、健康サービス提供者52のウェブページ32の閲覧、それらのサーバ21,22へのアクセスが可能である。むろん、ウェブサイト、ウェブページ、関連するサーバの数は図示に限らず複数である。これらのウェブサイト、ウェブページとは、後述するように健康状態に関する情報、それに基づく提供内容が掲載されている内容に限られる。
【0028】
ここで、健康状態情報とは、構成員の身体の状態を定量的に把握可能な指標である。例えば、歩数計による1日の歩行数、血圧計による高低血圧、1日の血圧変動、体温計による体温変化、心拍数の変動、一定期間内の血糖値の変動、生理不順(体温変化)、疲労度測定器による疲労の蓄積、睡眠活動量計による睡眠の質と時間、加速度計による運動量である。また、尿検査による尿中の糖及びタンパク質量、血液検査による血糖値(一日の変化)、血球量、コレステロール値、肝機能、抗体値、性ホルモン量、視力検査による視力の値、聴力検査による聴力の高低、心電図検査による心音、不整脈の検出、呼吸量検査による呼気体積、レントゲン検査による肺、骨の異常検出、内視鏡検査による食道、胃、直腸の荒れ具合、細菌・ウイルス感染検査による感染の種類と感染の程度、DNA検査(ゲノム分析)による病気になりやすいゲノム配列の有無と発症リスク分析等である。さらには、月間就労時間、喫煙歴(喫煙年数)、月間車両運転時間、月間機械操作時間、月間危険作業従事時間等の労務管理し得る時間や期間の情報である。
【0029】
具体的な数値として表される指標については、その数値が用いられる。不整脈の有無等の相対的な良否に委ねられる指標については、例えば3段階(高リスク:3点、中リスク:2点、低リスク:1点)、または該否判定(+1または-1)等の区分化した数値点数が予め付与される。このように、個別の健康状態情報は全て数値化される。こうすると、コンピュータ部100における各種演算の処理は容易となる。
【0030】
健康サービス提供者とは、インターネット回線等を通じて前述の構成員の健康状態情報を取得して、当該構成員の健康状態情報についての適正さ、偏りの解析等を行う事業者、各種アプリケーションの提供、運営者等である。例えば、健康サービス提供者のウェブサイトにスマートフォン等によりアクセスして日々の血圧が入力されると、その血圧の変動状況から疾病リスク等の判定が行われる。健康サービス提供者に応じて提供するサービス内容は異なり、健康サービス提供者を適宜使い分けることができる。
【0031】
健康サービス提供者には、前述の解析等が可能であれば、各種の事業内容の提供者も含まれる。例えば、健康食品、特定保健用食品、各種栄養補助食品等の製造、販売者、スポーツクラブ、瞑想、ヨガ、リラクゼーション、鍼灸等のサービス提供者、特定の疾患、前駆症状の発症者に対するEAP(employee assistant program)、心理療法、リハビリテーション等の医療の周辺の施術、カウンセリング等の提供者等である。これらは一例に過ぎず、当然にさらに他の事業内容の提供者も含まれる。なお、後出の図3においては、本発明の構成員健康状態管理システムの運営者と健康サービス提供者とを別の者の例として説明している。この形態に加えて、本発明の構成員健康状態管理システムの運営者と健康サービス提供者が同一主体となる場合も含まれる。
【0032】
インターネット回線10に接続されるコンピュータ部100には、CPU等のプロセッサ、ASIC、FPGA等を実装し演算機能を有する演算部101、前述の健康状態情報に関する各種データ及び必要なプログラムを記憶する記憶部102(ROM,RAM,HDD,SSD等を含む。)が備えられる。また、各種データの出力を担う出力部300も備えられる。さらに、図示しないものの適宜データの入出力のインターフェース、データの読み取りを行う読取部、バッファ、ディスプレイ等の表示部も備えられる。一般にコンピュータ部100は、公知のパーソナルコンピュータまたはサーバ等により構成される。
【0033】
第1実施形態のコンピュータ部100(及び演算部101)は、情報蓄積部110、情報送信部120、一次解析データ取得部130、数値化変換部140、評価基準生成部150、二次解析データ生成部160、二次解析データ蓄積部170、通知部210に対応する。コンピュータ部100に備えられる記憶部102は、健康状態情報(D0)、一次解析データ(D1)、評価基準(D2)、二次解析データ(D3)、回帰解析式(D4)等の各種データを記憶する。また、システムの作動に必要な各種のデータ、プログラム等も記憶する。
【0034】
出力部300は、コンピュータ部100(及び演算部101)における演算結果、すなわち、構成員個人への通知、及び構成員の雇用者(企業)へデータを比較した結果等の各種情報を出力(送信)する。具体的には、紙に印刷するプリンタ、構成員個人に電子メール、メッセージアプリケーション等により通知するメールサーバ、企業の人事、総務担当、産業医、一部の情報については各種の健康増進、疾病予防、医療、介護を担う各種外部機関のサーバに通知する、管理サーバ等の適宜である。以下、各部を説明する。
【0035】
情報蓄積部110は、構成員に関する健康状態情報を集約し蓄積する。健康状態情報の集約は前述のとおり、各端末11,12よりインターネット回線10を通じて、もしくは直接コンピュータ部100への入力により実行される。そして、情報蓄積部110は複数の構成員について、複数種類の健康状態情報を集約し、記憶部102に記憶(格納)する。構成員に関する健康状態情報の集約の形態は、各人毎としても、複数人まとめて次出の図2のような集約テーブルの形式としても良い。
【0036】
図2の概要図は集約テーブルの一例であり、行列よりなる表である。この例によると、行に対象となる構成員の「性別(男性:M,女性:F)」、「年齢(歳)」、「身長(cm)」、「体重(kg)」、「1日の平均歩数(歩)」、「1日の平均睡眠時間(時間)」、「1か月間の就労時間(時間)」等の健康状態情報の項目が集約される。図2には具体的に示してはいないものの、各種の健康状態情報についての集約の時点が問題となる。そこで、健康状態情報毎にその取得の「年月日」(20XX年YY月ZZ日)、さらには必要に応じて時刻も各項目に付加される。
【0037】
そして、列に各構成員別の前記の健康状態情報の項目の数値も集約される。この結果、健康状態情報の項目と構成員の状態が対応する表として一覧可能となる。また、全て数値化されているため事後の加工(データ処理)も容易である。集約テーブル中の健康状態情報の項目は、図示に限られることはなく任意であり必要に応じて取捨選択され、組み替えることができる。例えば、構成員の管理者、雇用者の業種により、または重点項目により適宜変更される。例えば、血中コレステロール値(その評価点)等の健康状態情報の追加も可能である。
【0038】
情報送信部120は、インターネット回線10を介して接続された複数の健康サービス提供者51,52に健康状態情報を送信する。
【0039】
各情報の流れについて、図3の模式図も交えて説明する。構成員M(当該構成員の属する集団も含まれる)から、構成員の健康状態情報(D0)は本発明の構成員健康状態管理システム1の運営者Uに送信される。同運営者において健康状態情報(D0)は集約、蓄積される。そして、健康状態情報(D0)は同運営者から健康サービス提供者51に送信される。図示が煩雑になるため、事業者を健康サービス提供者51のみとした。
【0040】
一次解析データ取得部130は、複数の健康サービス提供者51において解析された健康状態情報(D0)に基づく一次解析データ(D1)を、複数の健康サービス提供者51,52から取得する。一次解析データ(D1)は、健康サービス提供者側において、健康状態情報(D0)を各人間において相互比較しやすくするために加工したデータである。例えば、平均値、分散、標準偏差等の算出、そして偏差値等の算出が該当する。
【0041】
図3において、健康状態情報(D0)を受け取った複数の健康サービス提供者51,52において、その健康状態情報(D0)を基にして一次解析データ(D1)は生成される。そして、一次解析データ(D1)は健康サービス提供者51,52から運営者Uに送信される。
【0042】
数値化変換部140は、一次解析データ(D1)を数値化する。この数値化とは、「優、良、可、不可の4段階判定」、「A、B、Cの3段階判定」、「問題なし、要注意の2段階判定」等の曖昧かつ段階的な結果に対して数値を付すことである。例えば、段階的な結果に10、6、3、0点等の数値が付与される。この処理は運営者Uにおいて実行される(図3参照)。
【0043】
評価基準生成部150は、一次解析データ(D1)に基づいて所定の評価基準(D2)を生成する。評価基準(D2)とは、数値化された一次解析データ(D1)から所定の処理に基づいて調整される相互比較のための基準である。特に、一次解析データ(D1)が複数種類存在する場合に、これらの一次解析データを網羅的に処理するために評価基準(D2)は生成される。評価基準(D2)の生成は限定されることはなく、一次解析データ(D1)毎に所定の基準値を活用する限り適宜である。例えば、一次解析データ(D1)毎の所定の基準値と、個々の構成員の一次解析データ(D1)との乖離量の集計等が勘案される。また、評価基準(D2)として、単純な一次回帰式等の数式を用いることも可能である。さらに、評価基準生成部150は、一次解析データ(D1)に基づいてビッグデータ解析等多数を扱う統計、推定の手法、AI、機械学習等のデータ解析を通じて評価基準(D2)を生成する。これには、機械学習部320、AI部330等(図1等参照)が利用される。
【0044】
さらに正確に、構成員個人の総合的な健康状態情報の把握に際し、評価基準生成部150は、一例として、複数種類の一次解析データ(D1)に基づいて(これに関する所定の基準値を変数として)重回帰分析を実行し、回帰解析式(D4)を生成する。回帰解析式(D4)は運営者Uの記憶部102に記憶(格納)される(図3参照)。
【0045】
例えば、回帰解析式(D4-1)とそのスコア値(SM1)を求めるに際し、一次解析データ(D1)の中から「BMI」、「診断時の収縮期血圧」、「診断時の拡張期血圧」、「診断時の空腹期血糖値」を選択する。この場合、評価基準生成部150は、「構成員(M)のスコア値(SM1)={α1×BMI+α2×診断時の収縮期血圧+α3×診断時の拡張期血圧+α4×診断時の空腹期血糖値+α0}」とする回帰解析式(D4-1)を生成する。式中、α1、α2、α3、α4は係数であり、α0は定数である。
【0046】
もしくは、回帰解析式(D4-2)とそのスコア値(SM2)を求めるに際し、健康状態情報の中から「BMI」、「1日の平均歩数」、「1日の平均睡眠時間」を選択する。この場合、評価基準生成部150は、「構成員(M)のスコア値(SM2)={β1×BMI+β2×1日の平均歩数+β3×1日の平均睡眠時間+β0}」とする回帰解析式(D4-2)を生成する。式中、β1、β2、β3は係数であり、β0は定数である。
【0047】
評価基準生成部150における基準値の算出については、さらに次のとおり補足することができる。例えば、20歳で健診データがすべて基準値内(しかも、例えば基準値内であって更に中央値±10%以内)の人のスコアを800点、すべて基準値から外れた人のスコア値を200~0点(外れ程度に応じて)として決定する。そこに24時間バイタルデータや遺伝子検査の結果(これらを総称してその他の健康状態情報と言う。)を加味して、基準値を0~1000点の幅に設定する。
【0048】
上記で定めたスコア値から外れる人の評価項目毎の減点算定式を使って、評価基準生成部150は個人のスコア値を算定する算定式を求め、個人別の健診データ、その他の健康状態情報の入力を通じて最終スコア値を算定する。
【0049】
重回帰分析は、まず簡易的に説明変数を固定する。そして、ある個人のスコア値が重回帰式の係数と定数をどの値にすれば、算定された個人別スコアに最も近づくかを計算し、その結果から再計算して、説明変数のどれがどのくらいその個人に効いているかを判定するために活用する。
【0050】
評価基準生成部150における回帰解析式(D4)の生成に際し、一次解析データ(D1)の項目を予め絞っておくことにより特定の項目との関連性を読み解くこと、さらには、一次解析データ(D1)の項目間の密接さ等も把握できる。そこで、得られたスコア値と当該構成員の実際の健康状態との関連性を踏まえ、事後的に疫学的なアドバイスも可能である。さらには、予め一次解析データ(D1)の項目を規定しておくことにより、必要以上の項目と演算量の増大を防ぎながら効率的にスコア値の算出が可能である。むろん、回帰解析式(D4)は前述の式に限られることはなく、システムの運用状況に伴って健康状態情報とこれに付随する一次解析データ(D1)を随時の追加、変更することができる。また、変更後の連続性を担保するための補正係数を加味することができる。
【0051】
二次解析データ生成部160は、評価基準(D2)と、同評価基準(D2、さらにはD4の回帰解析式)の生成に用いられた一次解析データ(D1)に関連する健康状態情報(D0)と同一の項目について一の構成員の少なくとも一の健康状態情報とに基づき、前記一の構成員に関する二次解析データ(D3)を生成する。
【0052】
二次解析データ(D3)の生成に際し、前出の評価基準(D2)に個々の構成員の一次解析データ(D1)が代入される。例えば、「年齢、血圧変動、一日の歩数」を含む評価基準(D2)に、一の構成員の健康状態情報の数値(測定値)(一次解析データ(D1)の場合もある)とし「50歳、血圧100~170、1日4000歩」の情報が代入され、個々の健康状態情報における年齢に応じた妥当性等が二次解析データ(D3)として出力可能である。
【0053】
さらに、評価基準(D2)に回帰解析式(D4)を用いる場合、当該回帰解析式(D4)に一の構成員の健康状態情報の数値(測定値)(一次解析データ(D1)の場合もある)が代入される。そこで、二次解析データ(D3)としてスコア値(S)が算出可能である。例えば、或る構成員(M)の回帰解析式(D4-1)の二次解析データ(D3)となるスコア値(SM1)を求める場合、構成員(M)の健康状態情報の測定値「BMI」、「診断時の収縮期血圧」、「診断時の拡張期血圧」、「診断時の空腹期血糖値」を回帰解析式(D4-1)に代入する。健康状態基準算定式(D4-2)の二次解析データ(D3)のスコア値(SM2)も同様に代入により算出できる。
【0054】
さらに、前述の評価基準(D2)(回帰解析式(D4)も含まれる)の生成に際しては、「指定の特定保健用食品を毎日2錠飲んでいる。」等の特定の「健康サービス提供者」の製品の服用の情報も加味される。この場合の算定式、回帰式の係数は、該当する式の組成シミュレーションの中で最適数値が求められて用いられる。
【0055】
加えて、評価基準生成部150における一次解析データ(D2)に基づく回帰解析式(D4)の生成、二次解析データ生成部160における二次解析データ(D3)を生成等においては、コンピュータ部100に組み込まれた機械学習部320、AI部330等(図1等参照)も活用される。そこで、評価基準(D2)、二次解析データ(D3)は、ビッグデータ解析等の多数を扱う統計、推定の手法、AI活用等を通じて機械学習、強化学習等により生成可能である。
【0056】
二次解析データ蓄積部170は、一連の過程を通じて生成された二次解析データ(D4)を蓄積する。その後、出力部300等は、構成員本人及び構成員の雇用者・管理者、産業医、一部の情報については各種の健康増進、疾病予防、医療、介護を担う各種外部機関のサーバに対し、書面による印刷を含め、電子メール、メッセージアプリケーション等により通知する。出力等の方法は適宜である。これらの情報も、必要に応じ、経時の追跡による改善確認のため、一定期間二次解析データ蓄積部170に蓄積される。
【0057】
前述の二次解析データ(D3)に基づく判定、評価によると、構成員個人の個別の健康状態情報について、国、地方、集団の統計等と比較される。そこで、構成員個人は個々の健康状態情報の良否について意識し、改善に取り組むことが可能となる。
【0058】
通知部210は、一連の過程より得られた二次解析データ(D3)を運営者Uから当該一の構成員Mに通知する(図3参照)。この通知は、図1の出力部300を通じて実行される。構成員本人及び前述の関係者等への情報の出力に加えて、健康状態情報(D0)、一次解析データ(D1)、二次解析データ(D2)等も日々比較・可視化してユーザに提供する。そして、ユーザが健康増進のやり方や進捗を知ることにより行動に結び付けることが可能となる。出力部300は、いわゆるPDCA機能等を補完し得る。このように行動計画のレコメンド(提案)等が可能となり、より効果を高めることができる。
【0059】
通知部210(出力部300)からの効率的な提案のため、コンピュータ部100は、さらに、ルールエンジン部310、機械学習部320、AI部330を備える。ルールエンジン部310は、構成員個人(後述の実施形態では集団)の所定期間(日々、1か月間等)の取り組みが個人別判定データ(D3)、スコア値等に与える影響を分析して、どのような取り組みを先に実行すると健康増進や疾病予防及び疾病の重症化防止に効果的か、どのような組み合わせが効果的かを推定する。例えば、ルールエンジン部310は、ジョギングを毎日10分か、隔日で1時間とするべきか等を導き出す。ルールエンジン部310は、構成員個人の最適な対応メニューを自動生成して提供する機能を有する。また、過重負荷のリスク分析を行い、該当する構成員に対して出力部を通じて「これ以上頑張るな」等の警告も報知する。機械学習部320、AI部330は機械学習、強化学習等によりビッグデータ解析、高度な推定等の演算を実行する。
【0060】
さらに、ルールエンジン部310、機械学習部320、AI部330は、個人の健康状態情報、一次解析データ及び二次解析データから疾病リスクを分析し、更に疾病の予兆を検知して、構成員本人及び構成員の雇用者・管理者、産業医、一部の情報については各種の健康増進、疾病予防、医療、介護を担う各種外部機関のサーバに対し、書面による印刷を含め、電子メール、メッセージアプリケーション等により通知することが可能である。
【0061】
次に図4を用い第2実施形態の構成員健康状態管理システム2について説明する。第2実施形態の構成員健康状態管理システム2は、構成員の属する集団とさらにそれ以外の他の集団を比較することにより集団全体の動向を把握可能とするシステムである。構成員健康状態管理システム2において、インターネット回線10、端末11,12、健康サービス提供者51,52とそれらのサーバ21,22、蓄積サーバ13,14、コンピュータ部100、出力部300、ルールエンジン部310、機械学習部320、AI部330等は第1実施形態のシステムと同様である。
【0062】
第2実施形態のコンピュータ部100(及び演算部101)は、情報蓄積部110、情報送信部120、一次解析データ取得部130、数値化変換部140、評価基準生成部150、二次解析データ生成部160、集団解析部180、集団比較部190、集団間比較データ蓄積部200、通知部210に対応する。コンピュータ部100に備えられる記憶部102は、健康状態情報(D0)、一次解析データ(D1)、評価基準(D2)、二次解析データ(D3)、回帰解析式(D4)、第1集団解析データ(D5)、第2集団解析データ(D6)、集団間比較データ(D7)等の各種データを記憶する。また、システムの作動に必要な各種のデータ、プログラム等も記憶する。第2実施形態の構成員健康状態管理システム2において、第1実施形態のシステムと共通する部の説明を省略する。
【0063】
集団解析部180は、構成員の属する第1集団の構成員の各人について二次解析データ(D3)を集約して第1集団解析データ(D5)を生成する。さらに、第1集団の構成員とはことなる第2集団の構成員の各人についての同様に二次解析データ(D3)を集約して第2集団解析データ(D6)を生成する。第1集団と第2集団の語句は、集団間を区別する上での便宜上の表現である。なお、比較する集団がさらに複数(第3集団、第4集団等)に拡張するとしても、同様の繰り返しにより集団間の比較は可能である。
【0064】
前述のとおり、一の構成員に関する二次解析データ(D3)は数値化されている。そこで、一の構成員に関する二次解析データ(D3)の集約に際し、集団解析部180は、当該集団を構成する構成員の一部または全部の二次解析データ(D3)を、総計または平均(相加平均、相乗平均、または調和平均)、中央値の算定等の数理的(または統計的)に処理し、第1集団解析データ(D5)を生成する。
【0065】
そして、第1集団とは別の第2集団(同一企業内の別部署、別会社、別自治体等の各種の集団)についても、同様に集団解析部180は、第2集団を構成する構成員の一部または全部の二次解析データ(D3)から数理的(または統計的)な処理を経て第2集団解析データ(D6)を生成する。こうすると、数値の多少により、当該集団に属する構成員全体の傾向が把握可能となる。
【0066】
集団比較部190は、第1集団解析データ(D5)と第2集団解析データ(D6)を比較し、第1集団と第2集団を比較した集団間比較データ(D7)を生成する。すなわち、集団比較部190は、第1集団解析データ(D5)と第2集団解析データ(D6)の双方の数値同士の比較を行う。数値同士の比較は通常「差」として求められる。なお、第1集団解析データ(D5)、第2集団解析データ(D6)、集団間比較データ(D7)等も記憶部102に記憶(格納)される。
【0067】
集団間比較データ蓄積部200は、集団間比較データ(D7)を蓄積する。なお、第1集団解析データ(D5)、第2集団解析データ(D6)、集団間比較データ(D7)等も記憶部102に記憶(格納)される。
【0068】
図5は、第2実施形態の構成員健康状態管理システム2に対応するデータの流れを示す模式図である。同図から理解されるように、運営者Uにおいて記憶(蓄積)されている二次解析データ(D3)から、第1集団解析データ(D5)、第2集団解析データ(D6)、集団間比較データ(D7)が生成され、そして、集団間比較データ(D7)は運営者Uから構成員(当該構成員の帰属する集団)に対して通知される。
【0069】
例えば、第1集団に属する構成員についての第1集団解析データ(D5)は相加平均による算出から数値「87.43」、第2集団に属する構成員についての第2集団解析データ(D6)は相加平均による算出から数値「85.67」であるとする。この場合、双方の差、すなわち集団間比較データ(D7)は「1.76」(数値差、差分値)である。従って、集団間比較データ(D7)の数値比較(正・負の関係も含む。)を通じて、より優良な集団との差が具体的に把握され、現状からの当該集団の改善点が認識される。このような比較をさらに他の集団との間でも繰り返すことにより、他の集団との間における相対化、改善事項が把握可能となる。
【0070】
第1集団解析データ(D5)と第2集団解析データ(D6)から導き出される集団間比較データ(D7)は、その由来からわかるように、比較的限られた項目同士の比較である。そのため、集団間比較データ(D7)は、集団内における特定の健康状態情報を他の集団の特定の健康状態情報と比較する場合において有効である。さらに、集団間の比較について、構成員個人の複数の健康状態情報の相互間の関連性を踏まえた上で総合的な良否比較にも拡張することができる。集団間における比較の標本数の増加に伴い、疫学的な知見も蓄積する。そこで、今後の活用の途も広がる。
【0071】
さらに、前述の記憶部102は、一の構成員の個人による改善の推移、併せて、組織、集団別の日々の変化、組織としての取り組みの前後の比較を可能に各種のデータを蓄積する。そこで、ルールエンジン部310、機械学習部320、AI部330による推定精度は向上し、これに基づく出力部300(報知部)からの報知も可能となる。
【0072】
本発明の実施形態においては、図3及び図5に開示のとおり、構成員健康状態管理システムの運営者Uと健康サービス提供者51,52とを別の者の例として説明している。当該実施形態に加えて、本発明の構成員健康状態管理システムの運営者Uと健康サービス提供者51,52が同一主体となる場合も含まれる。
【0073】
さらに、構成員健康状態管理システムの運営者は、各々の健康サービス提供者の提供サービスや商材の有効性について、どのような属性のユーザ(当該サービスの受益者、当該サービスの依頼者)の健康増進や疾病予防にどの程度効果があるかあるいは無いかをモニタリングとともにデータを分析する。そして、運営者における当該モニタリング、データ分析の結果はユーザに伝えられる。ユーザにおいては、最適な健康増進サービスや食材、行動、サービス事業者の選択の判断が可能となることに加え、各種の提案、推奨も伝えられる。
【0074】
これとともに、構成員健康状態管理システムの運営者は、健康サービス提供者に対しても個人情報を消去した情報をフィードバックする。フィードバックの結果、健康サービス提供者はそれぞれの提供者の生産する製品、商材、提供サービス等が効能をどの程度持っているか、特定の属性の個人や集団に対してそれぞれどういう効能をどの程度持っているか否かについての検証が可能となる。すなわち、構成員健康状態管理システムの運営者から健康サービス提供者に向けてのフィードバックを通じて、健康サービス提供者は各自の製品開発に活用可能となる。
【0075】
はじめに、図6のフローチャートを用い、第1実施形態の構成員健康状態管理方法を構成員健康状態管理プログラムとともに説明する。第1実施形態の構成員健康状態管理方法は、その構成員健康状態管理プログラムに基づいて、コンピュータ部100により実行される。当該第1実施形態の構成員健康状態管理プログラムは、図1の第1実施形態の構成員健康状態管理システム1のコンピュータ部100に対して、情報蓄積機能、情報送信機能、一次解析データ取得機能、数値化変換機能、評価基準生成機能、二次解析データ生成機能、二次解析データ蓄積機能、通知機能等の各種機能を実行させる。これらの各機能は図示の順に実行される。なお、各機能は前述の構成員健康状態管理システム1の説明と重複するため、詳細は省略する。
【0076】
図6のフローチャートは第1実施形態の構成員健康状態管理方法の全体の流れであり、情報蓄積ステップ(S110)、情報送信ステップ(S120)、一次解析データ取得ステップ(S130)、数値化変換ステップ(S140)、評価基準生成ステップ(S150)、二次解析データ生成ステップ(S160)、二次解析データ蓄積ステップ(S170)、通知ステップ(S210)の各種ステップを備える。その他、構成員健康状態管理方法は、記憶、格納、呼び出し、演算等の各種の図示しないステップも備える。
【0077】
情報蓄積機能は、構成員に関する健康状態情報(D0)を集約する(S110;情報蓄積ステップ)。情報蓄積機能は、第1実施形態の構成員健康状態管理システム1のコンピュータ部100(図1参照)により実行される。
【0078】
情報蓄積機能は、インターネット回線10を介して接続された複数の健康サービス提供者51,52に健康状態情報(D0)を送信する(S120;情報蓄積ステップ)。情報送信機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0079】
一次解析データ取得機能は、複数の健康サービス提供者51,52において解析された健康状態情報(D0)に基づく一次解析データ(D1)を、複数の健康サービス提供者51,52から取得する(S130;一次解析データ取得ステップ)。一次解析データ取得機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0080】
数値化変換機能は、一次解析データ(D1)を数値化する(S140;数値化変換ステップ)。数値化変換機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0081】
評価基準生成機能は、一次解析データ(D1)に基づいて所定の評価基準(D2)を生成する(S150;評価基準生成ステップ)。評価基準生成機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0082】
二次解析データ生成機能は、評価基準(D2)と、この評価基準(D2)の生成に用いられた一次解析データ(D1)に関連する健康状態情報(D0)と同一項目についての一の構成員の少なくとも一の健康状態情報(D0)とに基づき、当該一の構成員に関する二次解析データ(D3)を生成する(S160;二次解析データ生成ステップ)。二次解析データ生成機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0083】
二次解析データ蓄積機能は、二次解析データを蓄積する(S170;二次解析データ蓄積ステップ)。二次解析データ蓄積機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0084】
通知機能は、二次解析データ(D3)を一の構成員に通知する(S210;通知ステップ)。通知機能は、コンピュータ部100により実行される。
【0085】
次に、図7のフローチャートを用い、第2実施形態の構成員健康状態管理方法を構成員健康状態管理プログラムとともに説明する。第2実施形態の構成員健康状態管理方法は、その構成員健康状態管理プログラムに基づいて、コンピュータ部100により実行される。当該第2実施形態の構成員健康状態管理プログラムは、図4の第2実施形態の構成員健康状態管理システム2のコンピュータ部100に対して、情報蓄積機能、情報送信機能、一次解析データ取得機能、数値化変換機能、評価基準生成機能、二次解析データ生成機能、二次解析データ蓄積機能、集団解析機能、集団間比較機能、集団間比較データ蓄積機能、通知機能等の各種機能を実行させる。これらの各機能は図示の順に実行される。なお、各機能は前述の構成員健康状態管理システム1及び2の説明と重複するため、詳細は省略する。
【0086】
図7のフローチャートは第2実施形態の構成員健康状態管理方法の全体の流れであり、情報蓄積ステップ(S110)、情報送信ステップ(S120)、一次解析データ取得ステップ(S130)、数値化変換ステップ(S140)、評価基準生成ステップ(S150)、二次解析データ生成ステップ(S160)、二次解析データ蓄積ステップ(S170)、集団解析ステップ(S180)、集団比較ステップ(S190)、集団間比較データ蓄積ステップ(S200)、通知ステップ(S210)の各種ステップを備える。その他、構成員健康状態管理方法は、記憶、格納、呼び出し、演算等の各種の図示しないステップも備える。各ステップの実行、処理については、前述のコンピュータ部100における各部の説明と共通するため、重複説明は省略する。
【0087】
集団解析機能は、構成員の属する第1集団の構成員の各人について二次解析データ(D3)を集約して第1集団解析データ(D5)を生成するとともに、前出の第1集団の構成員とは異なる第2集団の構成員の各人について二次解析データ(D3)を集約して第2集団解析データ(D6)を生成する(S180;集団解析ステップ)。集団解析機能は、第2実施形態の構成員健康状態管理システム2のコンピュータ部100(図4参照)により実行される。
【0088】
集団間比較機能は、第1集団解析データ(D5)と第2集団解析データ(D6)とを比較して第1集団と第2集団を比較した集団間比較データ(D7)を生成する(S190;集団間比較ステップ)。集団間比較機能は、コンピュータ部100(図4参照)により実行される。
【0089】
集団間比較データ蓄積機能は、集団間比較データ(D7)を蓄積する(S200;集団間比較データ蓄積ステップ)。集団間比較データ蓄積機能は、コンピュータ部100(図4参照)により実行される。
【0090】
当該構成員健康状態管理プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される。記憶媒体は、「一時的でない有形の媒体」に、プログラムを記憶する。記憶媒体は、HDD、SDD等の任意の適切な記憶媒体、またはこれらの2つ以上の適切な組合せを含む。記憶媒体は、揮発性、不揮発性、または揮発性と不揮発性の組合せでもよい。なお、記憶媒体はこれらの例に限られず、プログラムを記憶可能であれば、どのようなデバイスまたは媒体であってもよい。
【0091】
構成員健康状態管理システム1の端末11,12及びコンピュータ部100は、例えば、記憶媒体に記憶されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することによって、各実施形態に示す複数の機能部の機能を実現することができる。また、当該プログラムは、任意の伝送媒体(通信ネットワーク等)を介して、端末11,12への提供も可能である。端末11,12及びコンピュータ部100は、例えば、インターネット等を介してダウンロードしたプログラムを実行することにより、各実施形態に示す複数の機能部の機能を実現する。
【0092】
当該プログラムは、例えば、オブジェクト指向プログラミング言語等のマークアップ言語などを用いて実装できる。端末11,12及びコンピュータ部100における処理の少なくとも一部は、1以上のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の構成員健康状態管理システム、構成員健康状態管理方法は、所属の構成員の各種の健康状態情報の取得とともに外部の健康サービス提供者を活用して構成員の健康状態の管理、取り組みの改善に貢献し得る。さらに構成員の所属する集団における健康状態の管理、取り組みの改善にも貢献し得る。そのため、構成員個人に対し、または属する集団に対して、よりきめ細かい助言等も可能となる。
【符号の説明】
【0094】
1,2 構成員健康状態管理システム
10 インターネット回線
11,12 端末
13,14,21,22 サーバ
25,26 ウェブサイト
31,32 ウェブページ
51,52 健康サービス提供者
100 コンピュータ部
101 演算部
102 記憶部
110 情報蓄積部
120 情報送信部
130 一次解析データ取得部
140 数値変換部
150 評価基準生成部
160 二次解析データ算出部
170 二次解析データ蓄積部
180 集団解析部
190 集団比較部
200 集団間比較データ蓄積部
210 通知部
300 出力部
310 ルールエンジン部
320 機械学習部
330 AI部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7