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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】調整可能な屈折力の眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019567634
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2018036548
(87)【国際公開番号】W WO2018227014
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】62/516,541
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512052029
【氏名又は名称】シファメド・ホールディングス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルジェント, クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ソール, トム
(72)【発明者】
【氏名】ミクスター, コリン
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534520(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189530(WO,A1)
【文献】特表2016-514514(JP,A)
【文献】特表2013-526344(JP,A)
【文献】特表2006-522007(JP,A)
【文献】特表2006-515189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0173890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な屈折力の眼内レンズであって、
光学部品と、前記光学部品の少なくとも一部の周りに延びる周辺部品を有する容器であって、前記光学部品は、前方光学素子と、後方光学素子と、前記前方光学素子と前記後方光学素子との間にチャンバ体積を有する流体チャンバを有する、容器と、
前記容器内の光学流体と、
光学流体中に溶解した輸送物質であって、前記輸送物質は、前記容器内を通過するように構成されている、輸送物質と、
前記容器内の体積制御素子であって、前記体積制御素子、非侵襲的エネルギーにより作動し、作動すると、前記輸送物質を前記光学流体中に放出して前記チャンバ体積を減少させ、かつ/または前記輸送物質を前記光学流体から吸収して前記チャンバ体積を増加させるように構成されている、体積制御素子
を含む、調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項2】
前記体積制御素子、前記輸送物質を前記光学流体中に放出して前記チャンバ体積を減少させるように構成された第1の体積制御素子のみを含む、請求項1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項3】
前記体積制御素子、前記輸送物質を前記光学流体から吸収して前記チャンバ体積を増加させるように構成された第2の体積制御素子のみを含む、請求項1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項4】
前記体積制御素子
前記輸送物質を前記光学流体中に放出して前記チャンバ体積を減少させるように構成された第1の体積制御素子と、
前記輸送物質を前記光学流体から吸収して前記チャンバ体積を増加させるように構成された第2の体積制御素子
を含む、請求項1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項5】
前記第1の体積制御素子、第1の種類のエネルギーにより作動し、
前記第2の体積制御素子、前記第1の種類のエネルギーとは異なる第2の種類のエネルギーにより作動する、請求項4に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項6】
前記第1の種類のエネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、電気エネルギー、および赤外線エネルギーを含む群から選択され、
前記第2の種類のエネルギー、レーザエネルギー、超音波エネルギー、電気エネルギー、および赤外線エネルギーを含む群から選択される異なる種類のエネルギーである、請求項5に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項7】
前記第1の体積制御素子、第1の波長または周波数のエネルギーにより作動し、
前記第2の体積制御素子、前記第1の波長または周波数とは異なる第2の波長または周波数の、同じ種類のエネルギーにより作動する、請求項4に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項8】
前記エネルギーは、レーザエネルギーであり、前記第1の波長は、第1の帯域幅内にあり、前記第2の波長、前記第1の帯域幅の外側の第2の帯域幅内にある、請求項7に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項9】
前記エネルギーは、超音波エネルギーであり、前記第1の周波数は、第1の周波数範囲内にあり、前記第2の周波数、前記第1の周波数範囲とは異なる第2の周波数範囲内にある、請求項7に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項10】
前記エネルギーは、無線周波数エネルギーであり、前記第1の周波数は、第1の周波数範囲内にあり、前記第2の周波数、前記第1の周波数範囲とは異なる第2の周波数範囲内にある、請求項7に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項11】
前記光学流体は、オイルを含み、前記輸送物質は、水を含む、請求項1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項12】
前記周辺部品は、外側流体リザーバを含み、
前記光学部品、前記周辺部品と流体連通する調節光学部品を含み、前記光学流体、天然眼の毛様体筋の動きに応じて、前記周辺部品と前記光学部品との間で流れ、
前記体積制御素子、(a)作動すると前記輸送物質を放出するように構成された第1の体積制御素子、および(b)作動すると前記輸送物質を吸収するように構成された第2の体積制御素子を含む、請求項1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項13】
前記光学流体は、オイルを含み、
前記輸送物質は、水を含み、
前記第1の体積制御素子、作動すると破壊され、前記輸送物質を前記光学流体中に放出し、前記放出した輸送物質の少なくとも一部は、前記容器から流れ出すことにより、前記流体チャンバ内の物質の体積が減少し、
前記第2の体積制御素子、作動すると破壊され、前記輸送物質を前記光学流体から吸収することにより大きくなり、前記容器の外部からの追加の輸送流体が、前記容器に流れ込むことにより、前記流体チャンバ内の物質の体積が増加する、請求項12に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項14】
前記体積制御素子
シェルと、前記シェル内に含まれる水を有する第1の体積制御素子と、
シェルと、前記シェル内に含まれる脱水ヒドロゲルを有する第2の体積制御素子
を含む、請求項1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項15】
前記シェル、ワックスまたはリポソームを含む、請求項14に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
【請求項16】
眼内レンズを移植するシステムであって、前記システムは、
天然眼の天然水晶体嚢に挿入されるように構成された調整可能な屈折力の眼内レンズ
非侵襲的活性化エネルギーを生成するように構成されたエネルギー源と
を含み、
前記調整可能な屈折力の眼内レンズは、光学流体と、輸送物質と、体積制御素子とを含み、前記体積制御素子は、前記調整可能な屈折力の眼内レンズの屈折力その場で調整されるように、前記天然嚢への前記調整可能な屈折力の眼内レンズの挿入後に、非侵襲的活性化エネルギーによって作用させられるように構成され、
活性化エネルギーにより、前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の前記体積制御素子、(a)前記輸送物質を前記眼内レンズ内の前記光学流体中に放出し、その結果、前記体積制御素子が収縮し、飽和点を超える過剰な輸送物質が前記調整可能な屈折力の眼内レンズから流れ出すことにより、前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の物質の体積が減少するか、または(b)前記輸送物質を前記光学流体から吸収し、その結果、前記体積制御素子が膨張し、追加の輸送物質が前記調整可能な屈折力の眼内レンズに流れ込むことにより、前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の物質の前記体積が増加する、システム
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
眼内レンズ(IOL)は、白内障または近視を治療する移植型光学デバイスである。IOLは通常、白内障のために濁っているか、または別様に変色している天然水晶体の代わりに使用される。IOLは、天然水晶体を取り出して、次にIOLを天然水晶体嚢に挿入することにより外科的に移植される。世界保健機関は、2010年に世界中で2,000万のIOLが移植されたと推定し、2020年までに年間3,000万のIOLが移植されると予測している。
【0002】
現在の多くのIOLは、製造業者により設定される単一の屈折力を有する。その結果、従来の単一の屈折力のIOLは、固定された屈折力を有する。これにより、施術者は、移植前に単一の屈折力のIOLの屈折力を測定する必要がある。しかしながら、IOLの屈折力は、IOLが天然水晶体嚢に正しくフィットしない可能性がある、または眼が経時的に変化する可能性があるので、移植後に正しくない可能性がある。移植された単一の屈折力のIOLの屈折力が正しくない場合、IOLの代わりに、別の外科手術により、適切な屈折力を持つ別のIOLを使用する必要がある。これは、医療費を増加させるだけでなく、患者にとって不便でもあり、光学的外科手術の通常の合併症の影響を受ける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズ(APIOL)のいくつかの実施形態は、図1図8を参照して以下に説明される。以下に説明されるAPIOLは、屈折力を、非侵襲的活性化を使用してその場で変えることができる。APIOLのいくつかの例が単一屈折力のデバイスに関して開示されているが、このコンセプトは、以下に記載される通り、眼内レンズの調節に適用することができる。
【0004】
開示されるAPIOLは、APIOLを取り出すことなく、および/または取り替えることなく屈折力をその場で選択的に変えてAPIOLを、移植後の患者が必要とする特定の屈折力に適合させることができる機能を提供する。例えば、本技術によるAPIOLのいくつかの実施形態は、輸送物質を放出または排出する第1の体積制御素子および/または輸送物質を吸収するか、または別様に引き付けて保持する第2の体積制御素子を含む。第1の体積制御素子は、輸送物質を、第1の体積制御素子と選択的に反応するエネルギーモダリティのような非侵襲的活性化に応じて放出するように構成された収縮素子または放出素子であり得る。これとは異なり、第2の体積制御素子は、輸送物質を非侵襲的活性化に応じて吸収するか、または別様に引き付けて保持するように構成された膨張素子であり得る。動作中、収縮素子を作動させて輸送物質をAPIOLから放出させて屈折力を低減させるか、または逆に、膨張素子を作動させて輸送物質を吸収させて屈折力を増加させることができる。
【0005】
本技術によるAPIOLは、容器、容器内の光学流体、および容器内の体積制御素子を含むことができる。容器は、周辺部品および光学部品を含むことができる。光学部品は、例えば前方光学素子および後方光学素子を含むことができる。光学要素は、親水性でまたは疎水性であり得る。容器は、透水性材料を含むことができる。容器に適する1つの透水性材料は:
a-親水性アクリル共重合体と、
b-フロリダ州サラソタのBenz Research and Development製のBenz 25 UVXTM材料と、
c-英国のContamac Ltd.製のCI18、CI21、またはCI26と、を含む。
適切な親水性アクリルは、これに限定されないが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む。適切な疎水性アクリルは、これらに限定されないが、2-エトキシエチルメタクリレート(EOEMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、およびヘキサフルオロイソプロピルアクリレートを含む。例えば、アクリルは架橋剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、アクリルは架橋アクリルポリマーを含む。親水性または疎水性ポリマーは、上の共重合体であり得る。
【0006】
容器を満たす内部光学流体はオイルを含むことができる。例えば、オイルは、房水の屈折率よりも高い屈折率を有することができる。オイルは、飽和体積の水を溶液中にヒトの眼の体温で保持することができる。輸送物質は水であり得る。
【0007】
体積制御素子は、輸送物質を容器内の光学流体中に放出するように構成された第1の体積制御素子、および/または輸送物質を光学流体から吸収するように構成された第2の体積制御素子を含むことができる。第1の体積制御素子は、作動すると、輸送物質を光学流体中に放出することにより、流体チャンバ内の輸送物質の体積を増加させる収縮素子であり得る。これにより、容器内の輸送物質濃度が飽和点を超えるので、このような輸送物質が拡散により容器から房水に輸送される。輸送物質の減少により、容器内の物質の体積が減少し、これにより今度は、光学部品の屈折力が減少する。第2の体積制御素子は、作動すると、輸送物質を光学流体から吸収する膨張素子であり得る。これも、容器内の輸送物質の不均衡を引き起こし、追加の輸送物質が拡散により房水から容器に輸送されるようになる。輸送物質の増加により、容器内の物質の体積が増加し、これにより今度は、光学部品の屈折力が増加する。
【0008】
第1の体積制御素子または収縮素子は、所定体積の輸送物質を含む第1の疎水性ケーシングを含むことができる。例えば、輸送物質は水であってもよく、第1の疎水性ケーシングはワックスまたはリポソーム(例えば、単層リポソーム)であってもよい。一例では、第1の体積制御素子は、水を含むワックス独立気泡発泡体であり得る。
【0009】
第2の体積制御素子または膨張素子は、第2疎水性ケーシングにより取り囲まれる1つ以上の親水性素子を含むことができる。親水性素子は、アクリルポリマーのようなヒドロゲルを含むことができる。第2疎水性ケーシングは、パリレンおよび/または疎水性アクリルを含むことができる。
【0010】
第1および/または第2の体積制御素子は、容器に固定することができる。他の実施形態では、第1および/または第2の体積制御素子は、光学流体中で浮遊させることができる。
【0011】
本技術によるAPIOLの光学部品は、前方光学素子および後方光学素子で区切られる光学流体(例えば、オイル)を含む流体レンズであり得る。周辺部品は、光学部品を取り囲んで、光学部品が容器の中心部となるようにすることができる。いくつかの実施形態では、前方光学素子および後方光学素子の一方または両方は、光学部品が屈折力を弛緩状態で有するような屈折力(すなわち、弛緩して付勢されない状態で定義される曲率)を持つことができる。他の実施形態では、前方光学素子および/または後方光学素子は、平坦膜であってもよく、平坦膜は屈折力を、弛緩して付勢されない状態で持たないことにより、光学部品が屈折力を弛緩状態で持たない。容器内の光学流体、輸送物質、および第1および/または第2の体積制御素子の合計体積により曲率が変化するので、光学部品の屈折力が変化する。より具体的には、屈折力は、容器内の物質の体積が増加すると増加し、逆に屈折力は、容器内の物質の体積が減少すると減少する。
【0012】
容器内の物質の体積は、第1の体積制御素子または第2の体積制御素子を選択的に作動させることにより制御される。第1の体積制御素子または第2の体積制御素子は、体積制御素子の疎水性ケーシングの全て、または一部を破壊することにより作動させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、体積制御素子は、体積制御素子を、第1の体積制御素子の第1の疎水性ケーシングまたは第2の体積制御素子の第2疎水性ケーシングのいずれかを選択的に破壊する非侵襲的活性化エネルギーに曝すことにより作動させる。非侵襲的活性化エネルギーは、レーザエネルギー(例えば、光)、超音波、電気エネルギー(例えば、無線周波数)、および/または赤外線を含むことができる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
調整可能な屈折力の眼内レンズであって、
光学部品と、前記光学部品の少なくとも一部の周りに延びる周辺部品と、を有する容器であって、前記光学部品が前方光学素子と、後方光学素子と、前記前方光学素子と前記後方光学素子との間にチャンバ体積を有する流体チャンバと、を有する、容器と、
前記容器内の光学流体と、
光学流体中に溶解した輸送物質であって、前記輸送物質が前記容器内を通過するように構成されている、輸送物質と、
前記容器内の体積制御素子であって、前記体積制御素子が、非侵襲的エネルギーにより作動し、作動すると、前記輸送物質を前記光学流体中に放出して前記チャンバ体積を減少させ、かつ/または前記輸送物質を前記光学流体から吸収して前記チャンバ体積を増加させるように構成されている、体積制御素子と、を含む、調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目2)
前記体積制御素子が、前記輸送物質を前記光学流体中に放出して前記チャンバ体積を減少させるように構成された第1の体積制御素子のみを含む、項目1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目3)
前記体積制御素子が、前記輸送物質を前記光学流体から吸収して前記チャンバ体積を増加させるように構成された第2の体積制御素子のみを含む、項目1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目4)
前記体積制御素子が、
前記輸送物質を前記光学流体中に放出して前記チャンバ体積を減少させるように構成された第1の体積制御素子と、
前記輸送物質を前記光学流体から吸収して前記チャンバ体積を増加させるように構成された第2の体積制御素子と、を含む、項目1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目5)
前記第1の体積制御素子が、第1の種類のエネルギーにより作動し、
前記第2の体積制御素子が、前記第1の種類のエネルギーとは異なる第2の種類のエネルギーにより作動する、項目4に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目6)
前記第1の種類のエネルギーが、レーザエネルギー、超音波エネルギー、電気エネルギー、および赤外線エネルギーを含む群から選択され、
前記第2の種類のエネルギーが、レーザエネルギー、超音波エネルギー、電気エネルギー、および赤外線エネルギーを含む群から選択される異なる種類のエネルギーである、項目5に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目7)
前記第1の体積制御素子が、第1の波長または周波数のエネルギーにより作動し、
前記第2の体積制御素子が、前記第1の波長または周波数とは異なる第2の波長または周波数の、同じ種類のエネルギーにより作動する、項目4に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目8)
前記エネルギーがレーザエネルギーであり、前記第1の波長が第1の帯域幅内にあり、前記第2の波長が、前記第1の帯域幅の外側の第2の帯域幅内にある、項目7に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目9)
前記エネルギーが超音波エネルギーであり、前記第1の周波数が第1の周波数範囲内にあり、前記第2の周波数が、前記第1の周波数範囲とは異なる第2の周波数範囲内にある、項目7に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目10)
前記エネルギーが無線周波数エネルギーであり、前記第1の周波数が第1の周波数範囲内にあり、前記第2の周波数が、前記第1の周波数範囲とは異なる第2の周波数範囲内にある、項目7に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目11)
前記光学流体がオイルを含み、前記輸送物質が水を含む、項目1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目12)
前記周辺部品が外側流体リザーバを含み、
前記光学部品が、前記周辺部品と流体連通する調節光学部品を含み、前記光学流体が、天然眼の毛様体筋の動きに応じて、前記周辺部品と前記光学部品との間で流れ、
前記体積制御素子が、(a)作動すると前記輸送物質を放出するように構成された第1の体積制御素子、および(b)作動すると前記輸送物質を吸収するように構成された第2の体積制御素子を含む、項目1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目13)
前記光学流体がオイルを含み、
前記輸送物質が水を含み、
前記第1の体積制御素子が、作動すると破壊され、前記輸送物質を前記光学流体中に放出し、前記放出した輸送物質の少なくとも一部が前記容器から流れ出すことにより、前記流体チャンバ内の物質の体積が減少し、
前記第2の体積制御素子が、作動すると破壊され、前記輸送物質を前記光学流体から吸収することにより大きくなり、前記容器の外部からの追加の輸送流体が、前記容器に流れ込むことにより、前記流体チャンバ内の物質の体積が増加する、項目12に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目14)
前記体積制御素子が、
シェルと、前記シェル内に含まれる水と、を有する第1の体積制御素子と、
シェルと、前記シェル内に含まれる脱水ヒドロゲルと、を有する第2の体積制御素子と、を含む、項目1に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目15)
前記シェルが、ワックスまたはリポソームを含む、項目14に記載の調整可能な屈折力の眼内レンズ。
(項目16)
眼内レンズを移植する方法であって、
調整可能な屈折力の眼内レンズを天然眼の天然水晶体嚢に挿入することと、
前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の体積制御素子に非侵襲的活性化エネルギーを作用させることにより、前記天然水晶体嚢への挿入後の前記調整可能な屈折力の眼内レンズの屈折力をその場で調整することと、を含み、
活性化エネルギーにより、前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の前記体積制御素子が、(a)輸送物質を前記眼内レンズ内の光学流体中に放出し、その結果、前記体積制御素子が収縮し、飽和点を超える過剰な輸送物質が前記調整可能な屈折力の眼内レンズから流れ出すことにより、前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の物質の体積が減少するか、または(b)前記輸送物質を前記光学流体から吸収し、その結果、前記体積制御素子が膨張し、追加の輸送物質が前記調整可能な屈折力の眼内レンズに流れ込むことにより、前記調整可能な屈折力の眼内レンズ内の物質の前記体積が増加する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本技術の多くの態様は、以下の図面を参照してより良好に理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも寸法通りに描かれているわけではない。代わりに、本技術の原理を明確に示すことに重点が置かれている。さらに、構成要素は、特定の図では例示を明確にするためにのみ明白であるとして示すことができ、構成要素が必ず明白であることを示唆しているわけではない。構成要素は、模式的に示すこともできる。
【0014】
図1】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの断面図である。
図2】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズ内に使用される第1の体積制御素子および第2の体積制御素子それぞれの動作の断面図である。
図3】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズ内に使用される第1の体積制御素子および第2の体積制御素子それぞれの動作の断面図である。
図4】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの断面図である。
図5】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの断面図である。
図6】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの断面図である。
図7】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの平面図である。
図8A】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの等角図である。
図8B】本技術による調整可能な屈折力の眼内レンズの図8Aの断面A-Aに沿った断面図である。
図9A】本技術によるモジュール式APIOLを示す等角図である。
図9B】本技術によるモジュール式APIOLを示す底面図である。
図9C】本技術によるモジュール式APIOLを示す図9Bの断面A-Aに沿った断面図である。
図10A】固定レンズの底面等角図である。
図10B図10Aの断面B-Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、周辺部品110および光学部品120を有するAPIOL100を概略的に示す断面図である。周辺部品110および光学部品120は、一体となって容器を画定することができる、または周辺部品のみが容器を画定することができる。周辺部品110は、光学部品120を完全に取り囲む外側環状区画室であってもよく、または周辺部品110は、光学部品の120の一部のみの周りに延びる外側離散セグメントであってもよい。周辺部品110は、光学部品120と流体連通する内部体積112を有することができる。しかしながら、他の実施形態では、周辺部品110の内部体積112は、光学部品120の内部から流体的に隔離することができる。周辺部品110は、光学部品120よりも硬くすることができ、体積の変化が、周辺部品110におけるよりも光学部品120において大きくなるように生じるようになる。
【0016】
光学部品120は、周辺部品110の前方部分に結合される前方光学素子122と、周辺部品110の後方部分に結合される後方光学素子124と、前方光学素子122と後方光学素子124との間の流体チャンバ126と、を有することができる。前方光学素子122は第1の膜であってもよく、後方光学素子124は第2の膜であってもよい。第1の膜および第2の膜は、屈折力を持つことができる(例えば、設定曲率または最小曲率を有する)、または屈折力を、弛緩して付勢されない状態で持たないようにすることができる(例えば、図1の水平方向)。流体チャンバ126に光学流体128を満たして、前方光学素子122、後方光学素子124、および光学流体が流体レンズ130を画定することができるようにする。動作中、光学流体128は、周辺部品110および流体チャンバ126の両方に満たすことができ、所望の曲率を前方光学素子122および/または後方光学素子124に付与して、所望の屈折力を光学部品120に与えることができる。光学部品120は、単一の屈折力を持つことができる、または光学部品は、屈折力が、天然眼の筋肉の動きに応じて変化する調節流体レンズであり得る。
【0017】
APIOL100は、第1の体積制御素子140および/または第2の体積制御素子160をさらに含むことができる。第1の体積制御素子140は、輸送物質を、第1の非侵襲的活性化モダリティを使用して吐き出すか、または別様に放出するように構成された収縮素子または放出素子であり得る。これとは異なり、第2の体積制御素子160は、物質を、第2の非侵襲的活性化モダリティを使用して吸収するか、または別様に引き付けて保持するように構成された膨張素子であり得る。第1および第2の非侵襲的活性化モダリティは、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160の一方または両方を選択的に作動させるレーザ射、超音波エネルギー、無線周波数(RF)エネルギー、または赤外線放射のような1種類以上のエネルギーであり得る。いくつかの実施形態では、第1の非侵襲的活性化モダリティは、第1の体積制御素子140のみを作動させ、第2の非侵襲的活性化モダリティは、第2の体積制御素子160のみを作動させて、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160を互いに独立して作動させることができるようにする。例えば、第1の体積制御素子140を1種類のエネルギー(例えば、レーザエネルギー)により作動させることができるのに対し、第2の体積制御素子160を異なる種類のエネルギー(例えば、RFエネルギー)で作動させることができる。異なる例では、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160は、異なる波長または周波数の共通の種類のエネルギーにより作動させることができる。この例では、第1の体積制御素子140は、第1の波長または周波数の所定の種類のエネルギー(例えば、第1の帯域幅のレーザエネルギー)で作動させることができ、第2の体積制御素子160は、第2の波長または周波数の所定の種類のエネルギー(例えば、第2の帯域幅のレーザエネルギー)で作動させることができる。第2の帯域幅を第1の帯域幅とは十分に異ならせて、第1の体積制御素子および第2の体積制御素子が一緒に作動するのを回避する。他の実施形態では、単一の非侵襲的活性化モダリティは、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160の両方を作動させることができる。作動すると、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160はそれぞれ、第1の作動素子142および第2の作動素子162となることができる。
【0018】
光学流体128および輸送物質(図1には図示せず)は、所望の平衡状態を流体チャンバ126内で天然眼の房水に対して維持するように選択される。輸送物質は、周辺部品110の壁内、前方光学素子122内、および/または後方光学素子124内を浸透により輸送されて、所望の平衡状態を、流体チャンバ126内の光学流体128と輸送物質との間で維持するように選択される。いくつかの実施形態では、光学流体128は、数パーセントを超える可溶化水含有量を維持することができるオイルであり、輸送物質は水である。その結果、第1の体積制御素子140(例えば、収縮素子)が、APIOL100内の水供給源を提供するのに対し、第2の体積制御素子160(例えば、膨張素子)は、水のシンクを提供する。内部体積は、第1の体積制御素子140または第2の体積制御素子160のいずれかを作動させることにより変化するので、流体チャンバ126内の物質の体積が変化することにより、光学部品120の屈折力をその場で調整する。一般に、流体チャンバ126内の物質の内部体積が増加すると、屈折力が増加し、逆に、流体チャンバ126内の物質の内部体積が減少すると、屈折力が減少する。
【0019】
図2は、第1の体積制御素子140の動作、より具体的には、輸送物質(例えば、水)を第1の体積制御素子140から放出または排出して光学部品120の屈折力を減少させることを概略的に示している。本技術のこの態様では、エネルギー源170は、第1の体積制御素子140と相互作用する非侵襲的活性化エネルギー172を生成して、第1の体積制御素子140が輸送物質を放出するか、または別様に排出するようにする。輸送物質が第1の体積制御素子140から放出されると、輸送物質は、APIOL100内の内部流体または光学流体128を過飽和させる。過剰な輸送物質は、周辺部品110の壁内および/または光学部品120の光学素子122、124内を通過して周囲の房水に入る。したがって、APIOL 100の内部体積は、APIOL 100から輸送される輸送物質の体積だけ減少する。APIOL100の周辺部品110は、光学部品120よりも構造的に硬いので、光学部品120の体積は周辺部品110の体積よりも大きく変化する。光学部品120の体積の減少により、光学部品120の屈折力が減少する。
【0020】
図3は、第2の体積制御素子160の動作を概略的に示している、より具体的には、第2の体積制御素子160内の、および/または第2の体積制御素子160上の輸送物質(例えば、水)を吸収するか、または別様に収集して光学部品120の屈折力を増加させる。本技術の特定の例では、APIOL100の屈折力は、第2の体積制御素子160に流れ込む水の隔離により増加する。より具体的には、輸送物質は、光学流体から第2の体積制御素子160に吸収され、第2の体積制御素子160は膨張してより大きな体積を占めるようになる。光学流体から取り出される輸送物質は、房水からの同じ種類の物質に置き換えられ、当該物質は、周辺部品110内および/または光学部品120内を通過して周囲の房水から光学流体に流れ込む。これにより、光学流体の化学反応が、当該化学反応の平衡レベル(たとえば、水:オイル平衡比)に戻る。したがって、APIOL100の内部体積は、APIOL100内の第2の体積制御素子160に吸収されている水の体積だけ増加する。APIOL100の周辺部品110は光学部品120よりも構造的に硬いので、光学部品120の体積が増加することにより、光学部品120の屈折力が増加する。
【0021】
図4は、光学部品120の態様をより詳細に示す断面図である。前方光学素子122および後方光学素子124は、APIOL100の容器または構造部分を画定することができる。図示のように、両方の膜は、弛緩して付勢されない状態では薄くて平坦(例えば、板状)であり、屈折力を光学部品120にこの状態では提供しない。APIOL 100の内部体積が増加すると、膜が曲がって、ほぼ球形の曲率になる。膜の間の高屈折率光学流体128は、光学素子122および124と組み合わせされることにより、屈折力を持つ流体レンズ130を形成する。流体レンズ130の屈折力は、流体チャンバ126内の光学流体128の体積が増加すると増加する。他の実施形態(図示せず)では、前方光学素子122および後方光学素子124の一方または両方は、弛緩して付勢されない状態で曲率を有することができ、これらの光学素子が屈折力を持つようになる。さらに他の実施形態では、前方光学素子122または後方光学素子124の一方は、他方(図示せず)よりも硬くすることができる、および/または厚くすることができる。
【0022】
図5は、本技術によるAPIOL500を示している。APIOL500は、上に説明したAPIOL100と同様であり、同様の参照番号は同様の構成要素を指している。APIOL500は、APIOL100とは、APIOL500の周辺部品110および光学部品120がバリア510で互いから流体的に隔離されているという点で異なっている。バリア510は、例えば親水性膜であり得る。このような実施形態では、バリア510は、第1の体積制御素子140および/または第2の体積制御素子160の作動に関連するデブリ(「D」)が光学部品120の流体チャンバ126に侵入するのを抑制する。いくつかのこのような実施形態では、膜510は、図5に示すように、周辺部品110と光学部品120との間で連続させることができる。他の実施形態では、膜510は、光学流体128が流体チャンバ126に流れ込む/流体チャンバ126から流れ出すことを可能にしながら、デブリDが光学部品120に流れ込むのを防止するか、または別様に阻止する流路または大きな細孔512(点線で示す)を含むことができる。この実施形態は、天然眼が周辺部品110に作用して流体を流体チャンバ126に送り込むか、または流体チャンバ126から引き出すときに、光学部品120が屈折力を増加させる/減少させる調整可能な調節流体レンズを提供するために有用であると予測される(例えば、国際出願番号[挿入120974.8012WO00]を参照されたく、この出願は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0023】
図6は、光学部品120が変形可能なバリア610で取り囲まれている本技術によるAPIOL600を示す断面図である。APIOL 600は、上に説明したAPIOL 100および500と同様であり、同様の参照番号は同様の構成要素を指している。第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160を含む周辺部品110内の流体は、変形可能なバリア610に作用する。いくつかの実施形態では、変形可能なバリア610はベローズである。動作中、光学流体128は、水に関して、より標準的な低い溶解度を有することができ、第1の体積制御素子140から放出される水の液胞は、房水と連通する周辺部品110の外側表面に拡散する。
【0024】
図7は、本技術によるAPIOL700の平面図であり、同様の参照番号は、図1図6に関する同様の構成要素を指している。APIOL700は、周辺部品710と、周辺部品710の中心にある光学部品120と、を有する。周辺部品710は、流体および第1の体積制御素子140を含む第1の区画部714を有し、周辺部品710は、流体および第2の体積制御素子160を含む第2の区画部716を有する。したがって、APIOL700はAPIOL100、500、および600とは、第1の体積制御素子140が第2の体積制御素子160から第1の区画部714および第2の区画部716において隔離されているという点で異なっている。
【0025】
図8Aは等角図であり、図8Bは、本技術によるAPIOL800の図8Aの断面A-Aに沿った断面図である。APIOL 800はまた、第1の体積制御素子140を第2の体積制御素子160から隔離するが、APIOL 800は複数の区画部を使用する。より具体的には、APIOL800は、光学部品120を完全に取り囲む周辺部品810を有し、周辺部品810は、個別の体積の第1の体積制御素子140を含むように構成された複数の第1の区画部814と、個別の体積の第2の体積制御素子160を含むように構成された複数の第2の区画部816と、を有する。APIOL700および800の各APIOLは、体積制御素子を含む区画部と光学部品120との間に接続用バリアを有することができる。このような実施形態では、体積制御素子素140、160の作動により引き起こされる接続用バリアの変形により、APIOL700および800の光学部品120の周辺体積を調整する。
【0026】
第1の体積制御素子140は、薄い外壁と、薄い外壁内の所定体積の輸送物質と、を有することができる。例えば、第1の体積制御素子140は、薄いワックスシェルと、シェル内に封入されている微小体積の水と、を有することができる。他の実施形態では、第1の体積制御素子140は、二重層脂質外膜を有する単層リポソームシェルのようなリポソームシェルで封入されている水を有することができる。他の実施形態では、第1の体積制御素子140は、水が独立気泡発泡体の空隙にある状態の独立気泡ワックス発泡体であり得る。
【0027】
第2の体積制御素子160は、親水性材料、または光学流体128内および/またはAPIOLの周囲壁の所定部分内を拡散することができるか、または別様に通過することができる材料のいずれかを封入する疎水性材料の外側表面により構成することができる。例えば、本明細書において説明される第2の体積制御素子160は、ワックスの薄い層、パリレンコーティング、または両親媒性材料の層に封入されている微小体積の脱水ヒドロゲルを含むことができ、親水性ヘッド基がヒドロゲルの外側表面として提示され、疎水性テイル基が、ミセルを形成する環境の外側に提示されるようになる。第2の体積制御素子160はまた、発泡体内の空隙がヒドロゲルを含む独立気泡ワックス発泡体であってもよい。
【0028】
上に説明される体積制御素子140、160は、シェルまたは外側コーティング層を制御可能に破壊することにより作動させることができることにより、制御された量の含有材料が局所環境にアクセスすることを可能にすることができるようになる。このようなエネルギーは、レーザエネルギー、超音波、RFを含む電気エネルギー、および赤外線エネルギーのうちの1つ、または任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、破壊は、レーザエネルギーを体積制御素子に供給することにより行なわれる。いくつかの実施形態では、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160は、異なる波長のレーザエネルギーまたは異なる周波数の超音波エネルギーまたは電気エネルギーにより作動する。例えば、第1の波長のレーザエネルギーを使用して第1の体積制御素子140を作動させるのに対し、第2の異なる波長のレーザエネルギーを使用して第2の体積制御素子160を作動させる。このような選択性は、コーティング材料の吸光度および/または体積制御素子のサイズを制御することにより、体積制御素子に組み込むことができる。代替実施形態では、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160は、これらの体積制御素子に、図7図8A、および図8Bを参照して上に説明した通りに個別に対処することができるように区画化することができる。
【0029】
図9Aは等角図であり、図9Bは底面図であり、図9Cは本技術によるモジュール式APIOL900を示す図9Bの切断面A-Aに沿った断面図である。図9Aおよび図9Bを参照すると、APIOL900は、調節構造910と、固定レンズ930と、第1の体積制御素子140と、第2の体積制御素子160と、を有する。図9Cを参照すると、調節構造910は、例えば前方部分を画定する第1部品911と、後方部分を画定する第2部品912と、を有することができる。第1部品911および第2部品912は、互いに流体連通する外側流体リザーバ914、流路916、および内側流体チャンバ918を形成するように組み付けられる。外側流体リザーバ914、流路916、および内側流体チャンバ918は、外側流体リザーバ914と内側チャンバ918との間で流路916を介して流れる光学流体および溶液中の輸送物質で満たされる。
【0030】
調節構造910は、内部流体チャンバ918の前方側を画定する第1光学部品921と、内部流体チャンバ918の後方側を画定する第2光学部品922と、を有する調節光学素子920(例えば、調節流体レンズ)を有することができる。第1光学部品921および第2光学部品922は、屈折力を持たない可撓性膜であってもよく、または他の実施形態では、第1光学部品921および第2光学部品922の一方または両方は屈折力を持つ可撓性レンズであってもよい。動作中、流体は、外側流体リザーバ914と内側チャンバ918との間で天然眼の毛様体筋の動きに応じて流れる。例えば、毛様体筋が弛緩すると、水晶体嚢が外側流体リザーバ914を押圧し、これにより今度は、流体が内側チャンバ918に流れ込み、第1光学部品921を前方に湾曲させる。これにより、調節光学素子920の厚さが増加する。逆に、毛様体筋が収縮すると、水晶体嚢は半径方向外側に引っ張られて、外側流体リザーバ914に押圧作用する力が小さくなることにより、内側チャンバ918内のより高圧の流体が外側流体リザーバ914に流れ込むことができるようになる。これにより、調節光学素子920の光軸に沿った厚さ(例えば、曲率)が減少する。
【0031】
APIOL900は、AIOLの移植中に使用される眼科用粘性手術装置(OVD)を天然水晶体嚢から取り出すことができる速度および容易さを向上させるフロースルー形状部950を含む。APIOL 900は、3つの外側フロースルー形状部950を有することができる。外側フロースルー形状部950は、外側流体リザーバ914の周囲に沿って円周方向に分散配置される凹部のような戻り止めであり得る。図示の実施形態では、フロースルー形状部950は、第1部品911および第2部品912の領域に形成される。3つの外側フロースルー形状部950が示されているが、他の実施形態は、図示されているよりも少なく含むか、または多く含むようにしてもよい。外側フロースルー形状部950は、APIOL900が眼内で回転するのをさらに抑制することができる。
【0032】
APIOL900は、固定レンズアセンブリ930をさらに含む。図9Cに示される固定レンズアセンブリ930は、光学部932と、光学部932から延びるスカート部934と、通路936と、を含む。光学部932は、本明細書において説明される非対称屈折力レンズまたは他のレンズを含むことができる固定屈折力を有し、通路936は、スカート部934内を通過して周囲領域にまで延びているが光学部932までには延びていない孔、スロット、オリフィスなどである。
【0033】
図9Cを参照すると、固定レンズアセンブリ930は、スカート部934の周りに延びる環状溝のような係合形状部938を有し、調節構造910の第1部品911は、半径方向内側に延びる環状突出部(例えば、突起)のような肉厚領域939を有する。固定レンズアセンブリ930は、第1部品910の連続肉厚領域939を固定レンズアセンブリ930の係合形状部938に係合させることにより、調節構造910に取り付けることができる。他の実施形態(図示せず)では、肉厚領域939および係合形状部938は、不連続形状部(例えば、固定レンズアセンブリ930および調節構造910の全外周の周りよりも短く延びる分割された凹部または突出部、または他の凹部または突出部)であり得る。このような不連続肉厚領域939および係合形状部938は、固定レンズアセンブリ930がトーリックレンズまたは他の非対称レンズを含む場合のように、固定レンズアセンブリ930と調節構造910との間の特定の半径方向の位置合わせを維持するために望ましい。あるいは、溝は、固定レンズアセンブリ930にあり、突出部は、調節構造910にあるようにしてもよい。
【0034】
固定レンズアセンブリ930は、調節部910が移植された後に移植することができる。これは、調節部910を移植することができ、次に、調節部910の実際の移植後の屈折力に基づいて、所望の屈折力を持つ固定レンズアセンブリ930を後で選択して、移植することができるので、有利であると期待される。固定レンズアセンブリ930は、調節構造910に取り付けた後に取り出すこともできる。これは、最初に移植した固定レンズアセンブリ930が適正ではないか、または調節構造910に挿入されている間に損傷を受けた場合に有利である。
【0035】
APIOL900は、患者の水晶体嚢の周辺からAPIOL 900の光学部分に細胞が移動するのを抑制する正方形の環状領域951をさらに含むことができる(図9Cのレンズの最も後方の領域に示される)。このような細胞移動により、手術後の光学系が不透明になってしまう可能性がある。
【0036】
図9Bおよび図9Cを参照すると、APIOL900は、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160を外部流体リザーバ914内に含む。その結果、第1の体積制御素子140または第2の体積制御素子160が作動すると、外側流体リザーバ914内の物質の体積が上に説明したように、それぞれ減少または増加する。それに応じて、外側流体リザーバ914内の物質の体積の変化により、調節光学素子920内の体積が変化し、これにより今度は、上に説明したように、APIOL900の屈折力が調整される。これは、取り出し可能な固定レンズアセンブリ930を有するAPIOL900においても有用であると予測される。例えば、調節構造910が適切ではない場合に移植されたか、または取り出された後に固定レンズアセンブリ930を移植することができる場合でも、第1の体積制御素子140または第2の体積制御素子160を作動させることを使用して、APIOL900の屈折力を必要に応じてさらに調整することができる。
【0037】
図10Aは、固定レンズ1030の底面等角図であり、図10Bは、図10Aの断面B-Bに沿った断面図である。固定レンズ1030は、図9A図9Cにおいて上に説明したモジュール式調節APIOL900において使用される固定レンズ930と同様である。しかしながら、固定レンズ1030は、第1の体積制御素子140および/または第2の体積制御素子160を容器内に有することの代わりに、またはその追加としてのいずれかで、第1の体積制御素子140および第2の体積制御素子160を含む。固定レンズ1030は、固定レンズ自体が調整可能な屈折力のレンズである。例えば、図10Bを参照すると、固定レンズ1030は、前方光学素子1032と、後方光学素子1034と、光学流体および輸送物質で満たされる流体チャンバ1036と、を含む。動作中、図1図8Bに関して上に説明したように、第1の体積制御素子140および/または第2の体積制御素子160は、非侵襲的活性化エネルギーに曝されて、流体チャンバ1036内の物質の体積を減少または増加させることにより、固定レンズ1030の屈折力を調整する。
【0038】
上に説明した光学流体128に適するオイルの1つの実施形態は、所定体積の以下の材料を組み合わせることにより調合することができる。平衡含水量および屈折率は共に、以下の成分の割合を変えることにより調整することができる。
フェニルメチルシクロシロキサン.RI 1.545
N-(トリエトキシシリルプロピル)-O-ポリエチレンオキシドウレタン、RI 1.45
(ヒドロキシエチレンオキシプロピルメチルシロキサン)-(3,4-ジメトキシフェニルプロピル)メチルシロキサン-ジメチルシロキサンターポリマー、RU 1.505
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B