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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20220602BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20220602BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220602BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
A01G9/02 B
A01G9/02 E ZAB
A01G31/00 612
A01G7/00 601A
A01G9/20 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020571858
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2020031962
(87)【国際公開番号】W WO2021039765
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2019153999
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520500716
【氏名又は名称】果樹あるオフィス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】橋場 巌夫
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-155857(JP,U)
【文献】特開2013-146229(JP,A)
【文献】特開2007-107275(JP,A)
【文献】特開2000-093026(JP,A)
【文献】特開2015-149968(JP,A)
【文献】特開2014-010594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
A01G 31/00 - 31/06
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物を栽培する栽培領域を垂直方向に複数段に配置した栽培機構であって、各前記段の栽培領域の全域に前記農作物の育成に必要な光量の自然光が照射される構造であり、水分を前記農作物に供給可能であり、前記農作物が光合成を行う光源に前記栽培領域を向けた際に当該栽培機構の当該光源に対する裏側となる方向から当該栽培機構を見た時にもインテリアとして成立する両面的なデザイン性を備えた栽培機構を、当該農作物の育成者とは異なる者により当該農作物の育成環境調整以外の目的で既に日常的に空調機器による温度管理がされている複数の屋内空間に配備し、各前記屋内空間内の窓を介して複数の各前記段の栽培領域に自然光が照射されるように前記窓に近接して設置し、前記農作物を栽培する栽培方法であって、
各前記栽培機構は、ソーラー発電パネル及び電動ポンプを具備し、管理サーバーまでの通信を供給する通信機器の動力としての電力を当該ソーラー発電パネルから自立して供給可能であり、遠隔地から前記電動ポンプを集中的にオン・オフ操作可能なIoTデバイスを有し、前記操作により前記水分を前記農作物に供給・循環可能であり、
各前記栽培機構が設置されたそれぞれの環境に応じて、前記栽培機構単位で各前記電動ポンプにより灌水量を遠隔地から管理する栽培方法。
【請求項2】
請求項1に記載の栽培方法であって、
各前記栽培機構は、栽培環境条件を観測する複数のセンサーを具備し、前記複数のセンサーの動力としての電力を当該ソーラー発電パネルから自立して供給可能であり、
前記IoTデバイスは、前記各センサーの値を集約して管理サーバーに送信する
栽培方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の栽培方法であって、
前記栽培機構は、前記農作物に水を供給する循環水路として機能する前記栽培領域を有する棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚を有するものであり、
前記栽培棚の前面が前記窓に近接するように設置し、
各前記棚板間の間隔を、全ての前記段の栽培領域において前記農作物の適切な成長のために直射日光が照射することが求められる全ての範囲に前記窓を介して直射日光が照射され、かつ、前記栽培棚の裏面側より前記農作物を鑑賞すると共に前記農作物を収穫できる空間が確保できるように調整する
栽培方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の栽培方法であって、
前記農作物は、直射日光が生育に適さないものであって、
各前記棚板間の間隔を、全ての前記段の栽培領域において前記窓を介して直射日光が照射されず、最適な反射光が照射されるように、かつ、前記光源に対する裏側より前記農作物を鑑賞すると共に前記農作物を収穫できる空間が確保できるように調整する
栽培方法。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の栽培方法であって、
各前記棚板間の間隔を、設置者が必要に応じてさらに広げる及び/又は狭めることを可能にする
栽培方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の栽培方法であって、
前記栽培機構は、前記栽培領域を前面の方向に傾け各前記段の間隔を詰めて高密度化し、かつ、支柱を軸として開閉可能な構造としたものであり、
前記栽培機構を、前記窓に近接して前記前面が窓側に向くように設置し、当該栽培機構を閉じたときに前記栽培領域に前記窓を介して自然光を直接採光でき、かつ、閉じたときに室内側となる前記栽培領域の裏面側にもインテリアデザイン性を持たせ、開いたときには室内側から前記農作物の手入れ及び/又は収穫作業が可能となる
栽培方法。
【請求項7】
農作物を栽培する栽培領域を垂直方向に複数段に配置した栽培機構であって、各前記段の栽培領域の全域に前記農作物の育成に必要な光量の自然光が照射される構造であり、水分を前記農作物に供給可能であり、前記農作物が光合成を行う光源に前記栽培領域を向けた際に当該栽培機構の当該光源に対する裏側となる方向から当該栽培機構を見た時にもインテリアとして成立する両面的なデザイン性を備えた栽培機構を、日常的に空調機器による温度管理がされている屋内空間であって、窓を介して各前記段の栽培領域に自然光が照射されるように前記窓に近接して設置し、前記農作物を栽培する
栽培方法であって、
既存室内居住労働環境を農地として利用する際に特徴的な要素となる設置環境の窓の方角及び空調設定温度を、前記農作物の育成期間において前記栽培機構の設置環境それぞれの太陽高度ごとの累積日照時間と併せて極小農地の分類要素とし、気温、水量、日照角度ごとの日照時間から仮想的にそれぞれの前記極小農地の時節をずらしたグループに分け、育成条件を変えることで、旬の時期をずらした収穫及び/又は収穫時期の集中を避ける
栽培方法。
【請求項8】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の栽培方法であって、
前記栽培機構は、前記農作物に向けて送風するための扇風機をさらに具備し、
前記ソーラー発電パネルは、前記扇風機に電力を供給する
栽培方法。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか1項に記載の栽培方法であって、
前記栽培機構の前記栽培領域は、10平方メートル以下である
栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば苺などの農作物を栽培するための栽培方法、栽培機構及び栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物を栽培する手法として、従来から露地栽培やハウス栽培がある。露地栽培においては雨水に含まれる有害成分により作物に病変をきたし、また害虫による食害がある。ハウス栽培においてはハウス設備の設置費がかかり、また収穫時期を長期化するために冷房・暖房の費用がかかる。
【0003】
近年では、農作物の栽培が工業化され、LEDを使った完全な人工の光の植物工場や太陽の光を利用した植物工場が実用化されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-62769号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://monoist.atmarkit.CO.JP/mn/articles/1207/06/ニュース012_4.HTML
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の植物工場では工場用地や光源照明、空調管理などに費用が掛かり、大規模工場でないと農業として成立する単収(作付面積あたりの収穫量)を実現することが困難である。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、簡単な設備及び安価な運用コストでインドア栽培を実現でき、しかもインドア栽培においてインテリア性を持たせることができる栽培方法、栽培機構及び栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る栽培方法は、農作物を栽培する栽培領域を垂直方向に複数段に配置した栽培機構であって、各前記段の栽培領域の全域に前記農作物の育成に必要な光量の自然光が照射される構造であり、水分を前記農作物に供給可能であり、前記農作物が光合成を行う光源に前記栽培領域を向けた際に当該栽培機構の当該光源に対する裏側となる方向から当該栽培機構を見た時にもインテリアとして成立する両面的なデザイン性を備えた栽培機構を、当該農作物の育成環境調整以外の目的で既に日常的に空調機器による温度管理がされている屋内空間において、窓を介して各前記段の栽培領域に自然光が照射されるように前記窓に近接して設置し、前記農作物を栽培する。
【0009】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を有する棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚と、各前記棚板の前記栽培領域から排出された前記水を各前記棚板の前記栽培領域に循環させる水循環用電動ポンプ及び貯水槽とを具備し、各前記棚板間の間隔を任意に調整可能な機構を有し、前記栽培棚の一方側から見た各前記栽培領域の奥行を、前記調整された各前記棚板間の間隔に前記一方側から採光される自然光が各前記栽培領域での前記農作物の育成に求められる全範囲に照射されるようにした。
【0010】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する垂直方向に複数段の栽培領域を、一方側に傾けて各前記段の間隔を詰めて高密度化した栽培機構であって、各前記栽培領域から排出された前記水を各前記栽培領域に循環させる水循環用電動ポンプ及び貯水槽を有し、閉じたときに前記栽培領域に前記一方側から自然光を直接採光でき、かつ、閉じたときに前記栽培領域の裏面側にインテリアデザイン性を備え、開いたときには他方側から前記農作物の手入れ及び/又は収穫作業が可能となるように、支柱を軸として開閉可能な構造とした。
【0011】
本発明の一形態に係る栽培システムでは、上記の栽培機構を用い、前記栽培機構は、当該栽培機構の栽培領域が建築物の窓に近接するように前記建築物内に設置された。
【0012】
本発明の一形態に係る栽培方法は、農作物を栽培する単段の栽培領域を備える栽培機構であって、水分を前記農作物に供給可能であり、前記水分が前記栽培領域に滞留しないよう前記栽培領域の下部に排出され、排出された前記水分を受け止め前記栽培機構の外部に流出させない構造を有する栽培機構を、日常的に空調機器による温度管理がされている屋内空間であって、窓を介して前記栽培領域に自然光が照射されるように前記窓に近接して設置し、前記農作物を栽培する栽培方法であって、前記栽培機構は、前記栽培領域の下部より排出された水分を貯留する貯水槽と、前記貯水槽に貯留した水分を前記栽培領域に循環させるための電動ポンプと、前記電動ポンプに電力を供給するためのソーラー発電パネルとを有し、外部電力を利用せずに前記単段の栽培領域に前記水分を供給・循環させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な設備及び安価な運用コストでインドア栽培を実現でき、しかもインドア栽培においてインテリア性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る栽培システムの構成を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る栽培機構の構成を示す斜視図である。
図3図2に示した栽培機構の正面図である。
図4図2及び図3に示した栽培機構の各段の側面図である。
図5図4の一部の拡大図である。
図6】循環水路の他の例を示す栽培機構の斜視図である。
図7】プランタ平置きの例を示す栽培機構の斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る栽培機構の構成を示す斜視図である。
図9図8に示した栽培機構を側面側から見た断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る外鉢に内鉢を収容した一例を示す斜視図である。
図11図10に示した外鉢に内鉢を収容した例の断面図である。
図12】本発明の別の実施形態に係る栽培機構の構成を示す斜視図である。
図13図12に示した栽培機構の断面図である。
図14】本発明のさらに別の実施形態に係る栽培機構の構成を示す斜視図である。
図15図14に示した栽培機構を側面から見た断面図である。
図16図14及び図15に示した棚板の断面図である。
図17】本発明のまたさらに別の実施形態に係る栽培機構の構成を示す斜視図である。
図18】本発明のまた別の実施形態に係る栽培機構の構成を示す概略的断面図である。
図19】本発明のまた他の実施形態に係る栽培機構の構成を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
植物工場における既存の垂直多段方式栽培機構にあっては、各段の奥部に光が当たるよう育成用照明の電力供給が必要となり作物育成にかかる費用対効果が低く、グリーンウォール型の垂直多段機構においては育成面が鑑賞側にのみ向いており、これを室内の窓際に外に向けて設置すると室内からは底面及び側面しか観察できずインテリアとしての機能が低く、室内から観葉もしくはインテリア性の高い機構の観察が可能でかつ自然光もしくはオフィスの既存照明のみを光合成光源として循環水路を備えた垂直栽培機構が存在しない。
【0016】
既存のインドア栽培機構は植物工場での育成のためにインテリア性能を考慮しておらず、単収は高いけれども人工光源が必要であったりオフィス等居住空間への設置には適さないものか、もしくはオフィスインテリアとしての価値に偏重し作物収穫による農業収益化を前提としておらず、専業農業者による作物育成又は専業農業者による作物育成支援により既存農業と同等の単収(作付面積あたりの収穫量)を実現できないものしか存在しない。
【0017】
既存の植物工場では工場用地及び光源照明、空調管理に費用が掛かり、大規模工場でないと農業として成立する単収を実現することが困難である。
【0018】
本発明者は、人が活動するオフィスの空調が人から離れた空気も加温、冷却しなければならないのに対してその効果を享受する効率が著しく低いこと、ハウスに比べオフィスのガラス窓は日光の透過率が高いことに着目し、本発明を創案した。
【0019】
本発明の一形態に係る栽培方法は、農作物を栽培する栽培領域を垂直方向に複数段に配置した栽培機構であって、各前記段の栽培領域の全域に前記農作物の育成に必要な光量の自然光が照射される構造であり、水分を前記農作物に供給可能であり、前記農作物が光合成を行う光源に前記栽培領域を向けた際に当該栽培機構の当該光源に対する裏側となる方向から当該栽培機構を見た時にもインテリアとして成立する両面的なデザイン性を備えた栽培機構を、当該農作物の育成環境調整以外の目的で既に日常的に空調機器による温度管理がされている屋内空間において、窓を介して各前記段の栽培領域に自然光が照射されるように前記窓に近接して設置し、前記農作物を栽培する。
【0020】
典型的には、前記栽培機構は、電気を動力として前記水分を前記農作物に供給・循環可能である。
これにより、簡単な設備及び安価な運用コストでインドア栽培を実現でき、しかもインテリア性を持たせることができる。
【0021】
本発明の一形態に係る栽培方法では、各日照時間を各前記栽培機構の分類要素とし、記録台帳を作成し、50cmメッシュ~50mメッシュ単位の極小農地を共通する分類ごとに仮想的に同じ条件の農地として再集約して仮想的な大規模農業として行う。典型的には、本発明の一形態に係る栽培方法では、既存室内居住労働環境を農地として利用する際に特徴的な要素となる設置環境の窓の方角及び空調設定温度を、前記農作物の育成期間において前記栽培機構設置環境それぞれの太陽高度ごとの累積日照時間と併せて前記極小農地の分類要素とし、気温、水量、日照角度ごとの日照時間から仮想的にそれぞれの極小農地の時節をずらしたグループに分け、育成条件を変えることで、旬の時期をずらした収穫及び/又は収穫時期の集中を避ける。
既存の仮想大規模農業の考え方やフランチャイズ型農業では、日照量の管理は1m単位規模での統計利用がされておらず、各農作地の中においては育成効率化の戦略は同じである。同じ農作地の中で細分化して環境条件をデータ化することで育成効率を図る農業においては、温度管理や水量管理などは各農作物や設置ユニット単位でコントロールされるが、日照量については同じ農作地内では条件が同じため個別の管理・分類はしていない(非特許文献1参照)。
既存環境利用型のインドア農業においては、窓際で効率よく作物を育成するためには垂直栽培機構を利用する必要があるが、上段の栽培棚や設置フロアの天井により垂直方向に近い(太陽高度70度を超す)日光が作物を照らすことはほとんどなく、また日照を遮る建築物の方向などにより、栽培機構の設置環境によって全ての段に太陽光が照射される時間帯とその角度が千差万別であり、仮想的な大規模農業を実施するために各設置環境が自然環境におけるどの季節の気温と日照に近いのか分類する必要があり、またそのことによって季節外の作物を育成することが可能となる。
【0022】
本発明の一形態に係る栽培方法では、前記栽培機構は、前記農作物に水を供給する循環水路として機能する前記栽培領域を有する棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚を有するものであり、前記栽培棚の前面が前記窓に近接するように設置し、各前記棚板間の間隔を、全ての前記段の栽培領域において前記農作物の適切な成長のために直射日光が照射することが求められる全ての範囲に前記窓を介して直射日光が照射され、かつ、前記栽培棚の裏面側より前記農作物を鑑賞すると共に前記農作物を収穫できる空間や室内への採光、室外への眺望が確保できるように調整する。一方で、本発明に一形態に係る栽培方法では、前記農作物は、直射日光が生育に適さないものであって、前記栽培棚を設置する窓の方角が南東から南西の間と異なる方角となるように配慮し、全ての前記段の栽培領域において前記窓を介して直射日光が照射されず、最適な反射光が照射されるように、かつ、前記栽培棚の裏面側より前記農作物を鑑賞すると共に前記農作物を収穫できる空間や室内への採光、室外への眺望が確保できるように調整する。なお、各前記棚板間の間隔を、設置者がレイアウト嗜好等に応じてさらに広げる及び/又は狭めることを可能にしてもよい。
本発明では、人が活動するオフィスの環境温度が一年を通して18℃~35℃で安定していること及び過剰な窒素・リンその他作物の無病育成に有害な有機物質・無機物質を含む自然雨水が室内には降らないことを利用し、典型的には、作物の育成に必要な太陽仰角θのtanθ、作物育成に直射日光の照射が必要となる前記栽培棚上の太陽方向からの奥行長をLとしたときのL×tanθと、その高さに加えて眺望確保・採光確保・収穫体験に設置者が必要と考える追加の高さを加えた合計の高さ(もしくはレイアウトの観点から日照効率を軽減してでもL×tanθより間隔を狭めたい場合はその狭めた高さ)を各棚板間に空けられることを可能とした。加えて、本発明では、オフィスのグリーン化によりオフィス労働者のリラクゼーション及び労働効率上昇を図ることができる。また、直射日光の遮断によるグリーン間接照明化及び植物の水分蒸散効果により断熱効果を図ることができる。
【0023】
本発明の一形態に係る栽培方法では、前記栽培機構は、前記栽培領域を前面の方向に傾け各前記段の間隔を詰めて高密度化し、かつ、支柱を軸として開閉可能な構造としたものであり、前記栽培機構を、前記窓に近接して前記前面が窓側に向くように設置し、当該栽培機構を閉じたときに前記栽培領域に前記窓を介して自然光を直接採光でき、かつ、閉じたときに室内側となる前記栽培領域の裏面側にもインテリアデザイン性を持たせ、開いたときには室内側から前記農作物の手入れ及び/又は収穫作業が可能となる。
本発明では、室内からの眺望を塞いでも構わないオフィス・住居にあっては典型的には水平回転式垂直栽培機構又は開閉式グリーンウォール型垂直栽培機構を使用することにより農作物の葉・茎・果実が室内からも農作物の観察及び収穫を可能とする。
【0024】
本発明の一形態に係る栽培方法では、前記栽培機構を前記屋内空間へのインテリアとして提供すること及び/又は前記栽培された農作物より農作物を収穫するのに必要な農作業を代行することの対価として前記栽培機構が設置される領域を利用する権利及び前記収穫された農作物の所有する又は販売する権利を設定する。
【0025】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を有する棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚と、
各前記棚板の前記栽培領域から排出された前記水を各前記棚板の前記栽培領域に循環させる水循環用電動ポンプ及び貯水槽とを具備し、各前記棚板間の間隔を任意に調整可能な機構を有し、前記栽培棚の一方側から見た各前記栽培領域の奥行を、前記調整された各前記棚板間の間隔に前記一方側から採光される自然光が各前記栽培領域での前記農作物の育成に求められる全範囲に照射されるようにした。
【0026】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を有する棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚と、
各前記棚板の前記栽培領域から排出された前記水を各前記棚板の前記栽培領域に循環させる水循環用電動ポンプ及び貯水槽とを具備し、各前記棚板間の間隔を任意に調整可能な機構を有し、前記栽培棚の一方側から見た各前記栽培領域の奥行を、前記調整された各前記棚板間の間隔に前記一方側から採光される自然光が各前記栽培領域での前記農作物の育成に求められる全範囲に照射されるようにし、普段は直射日光を遮光しているが来客時など必要に応じて遮光カーテンを開けて眺望が楽しまれたり採光されたりするオフィス等であって、かつ前記栽培機構の設置によりカーテンの開閉が困難となる構造のオフィス等に設置されやすくするため、当該栽培機構の最上部の室内側にロールカーテンを具備し、当該栽培機構設置後も容易に遮光できる構造としても良い。この発明により、開閉式グリーンウォール型栽培機構では閉じた時の遮光度合いが大きく、開いた時でも室内からの外観が設置者の嗜好に合わないという環境であって、かつ必要に応じて遮光したいという環境において、窓際の一定の幅内に当該栽培機構を収めつつ各前記栽培領域間の間隔から眺望や採光を確保した栽培機構を提供することができる。
【0027】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する垂直方向に複数段の栽培領域を、一方側に傾けて各前記段の間隔を詰めて高密度化した栽培機構であって、各前記栽培領域から排出された前記水を各前記栽培領域に循環させる水循環用電動ポンプ及び貯水槽を有し、閉じたときに前記栽培領域に前記一方側から自然光を直接採光でき、かつ、閉じたときに前記栽培領域の裏面側にインテリアデザイン性を備え、開いたときには他方側から前記農作物の手入れ及び/又は収穫作業が可能となるように、支柱を軸として開閉可能な構造とした。
【0028】
本発明の一形態に係る栽培機構は、前記農作物に向けて送風するための扇風機をさらに具備する。これにより、農作物に向けて送風するための自家受粉の促進及び/又は農作物の健康に寄与する良好な風通しの確保、及び/又は高くなりすぎた環境温度や地表面温度の冷却効果を得ることができる。
【0029】
本発明の一形態に係る栽培機構は、前記水循環用電動ポンプや前記扇風機に電力を供給するためのソーラー発電パネルをさらに具備する。これにより、前記栽培機構を設置するオフィスや住居の既設電力を借用又は有償使用することなく農作物への水分供給や通風確保が可能となる。加えて本発明は、栽培土中温度、栽培地面温度、栽培環境温度、栽培土中水分量、循環水温、日照量などの栽培環境条件を観測するセンサーの動力、前記各センサーの値を集約して管理サーバーに送信するIOTデバイスの動力、前記IOTデバイスに管理サーバーまでのネットワーク通信を供給する通信機器の動力としての電力や、これら電子機器を夜間に駆動させるためのバッテリーへの充電も自立して行うことが可能となり、前記極小栽培農地を構成要素とした前記仮想的な大規模農業の実現を容易にする。
【0030】
本発明の一形態に係る栽培システムは、上記の栽培機構を用い、前記栽培機構は、その栽培領域が建築物の窓に近接するように建築物内に設置された。
【0031】
本発明の一形態に係る栽培システムは、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を垂直方向に円柱状に複数段配置した栽培機構であって、各前記栽培領域から排出された前記水を各前記栽培領域に循環させる水循環用電動ポンプ及び貯水槽とを有し、電力を動力として前記栽培領域を回転することで一方側より全栽培領域に自然光を直接採光することができ、かつ、室内側からも観葉や収穫作業を行うことができる機構であって、かつ循環水路及び回転動力が1つのタワー型栽培機構で完結する構造となっていることにより前記居住労働空間の窓際に1本から設置することを可能とした。
【0032】
本発明の一形態に係る栽培システムは、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する水受け皿と、棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚と、各前記水受け皿の上に置いたプランタや鉢植などの栽培領域を有する垂直多段栽培機構であって、各前記棚板の水受け皿から排出された前記水を各前記水受け皿又は棚板の前記栽培領域に循環させる水循環用ポンプと貯水槽とを具備し、各前記棚板間の間隔を、前記窓を介して採光できる直射日光が前記農作物の育成に適切な太陽高度・日照時間となり、また全ての段の栽培領域において前記農作物の適切な成長のために直射日光が照射することが求められる全ての範囲に直射日光が照射されるよう調整可能な栽培機構、あるいは直射日光では葉焼けを生じ反射光の照射が必要な作物にあっては最適な照射がされるよう前記間隔や設置する窓の方角を考慮・調整することが可能な栽培機構であって、かつ、前記調整間隔に加えて室内から外部への眺望を確保するため、あるいは前記農作物の収穫体験に必要な空間を確保するため、あるいは室内への直射もしくは間接の採光及び通風を確保するため、あるいは前記栽培機構を設置する室内を利用する者のレイアウト嗜好に適合するための目的で、さらに間隔を広げる調整をすることも可能にし、あえて農作物の育成密度を低くすることで前記利用者の前記栽培機構設置需要を喚起する、又は前記利用者のレイアウト嗜好に適合するための目的で前記調整間隔を狭め、あえて日照減による農作物の育成効率を低くすることで前記設置需要を喚起することが可能な栽培機構であって、かつ、室内側より前記農作物を鑑賞することを可能とした。
【0033】
農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を有する棚板を垂直方向に複数段に配置した栽培棚と、各前記棚板の前記栽培領域から排出された前記水を各前記棚板の前記栽培領域に循環させる水循環用ポンプ及び貯水槽とを具備し、各前記棚板を、縦板や支柱ではなくワイヤーロープに固定して観覧車の様に循環できるようにした構造を備え、各前記棚板の間隔を窓側から見た時に棚板が室内奥に向かって2枚並んでも必要な直射日光を栽培領域に採光できる間隔に調整した栽培棚であって、吹き抜け空間など、支柱の設置や高所の収穫が困難な場所でも手入れや収穫体験が可能とした。
【0034】
以上の栽培方法及び栽培システムは、栽培領域を垂直方向に複数段に配置した栽培機構を前提としていたが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
本発明の一形態に係る栽培方法は、農作物を栽培する単段の栽培領域を備える栽培機構であって、水分を前記農作物に供給可能であり、前記水分が前記栽培領域に滞留しないよう前記栽培領域の下部に排出され、排出された前記水分を受け止め前記栽培機構の外部に流出させない構造を有する栽培機構を、日常的に空調機器による温度管理がされている屋内空間であって、窓を介して前記栽培領域に自然光が照射されるように前記窓に近接して設置し、前記農作物を栽培する栽培方法であって、前記栽培機構は、前記栽培領域の下部より排出された水分を貯留する貯水槽と、前記貯水槽に貯留した水分を前記栽培領域に循環させるための電動ポンプと、前記電動ポンプに電力を供給するためのソーラー発電パネルとを有し、外部電力を利用せずに前記単段の栽培領域に前記水分を供給・循環させる。
これにより、栽培機構設置先顧客の電力負担を不要にする。その際、例えば、1平方メートル単位で水分循環機構や電力供給機構が完結することで、前記栽培機構設置先の間取りやスペースに合わせて柔軟に設置数量を調整できることを可能にする。結果として、それらが設置先顧客に設置してもらいやすい要素となり、本発明の主要な効果の一つである「オフィスや住居における空調の廃熱・廃冷を農作物の栽培に利用できる」という効果を単段栽培においても得られるようにした。
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物の栽培領域が単段であっても「オフィスや住居における空調の廃熱・廃冷を農作物の栽培に利用できる」という効果を得られるようにし、メロン・スイカ・トマトなどの草高が高く垂直多段栽培に不向きな果菜類やブドウ・マンゴー・ライチ等の果樹類の作物も室内で低コストに生産することを可能にした。
【0036】
本発明の一形態に係る栽培方法は、前記栽培機構を前記屋内空間へのインテリアとして提供すること及び/又は前記栽培された農作物より農作物を収穫するのに必要な農作業を代行することの対価として前記栽培機構が設置される領域を利用する権利及び前記収穫された農作物の所有する又は販売する権利を設定する。
【0037】
本発明の一形態に係る栽培方法は、前記栽培機構1ユニットあたりの前記栽培領域は、10平方メートル以下であり、1平方メートル前後がより好ましい。
【0038】
本発明の一形態に係る栽培方法は、前記電動ポンプの電源をオン・オフするIoTデバイスを有し、前記電動ポンプの動作・停止を遠隔地から管理可能とした。これにより、多数の栽培機構を集中管理することができる。
【0039】
本発明の一形態に係る栽培方法では、典型的には、多数の栽培機構の各水循環用の電動ポンプのオン・オフをIoTデバイスによる集中管理とすることで、設置先環境の窓方角や各環境の日照時間帯における天気、センサーで計測した各栽培機構の栽培領域の水分量などに応じて、栽培機構単位で灌水量を自動または手動で、遠隔地から調整することが可能となる。
農業用の灌水を集中管理するシステムやIoTデバイスとの連携するシステムは市場に存在するが、どちらもコストのかかる設備であるため灌水管理もIoTデバイス設置も圃場単位で導入するものとなっている。本発明におけるIoTデバイスの利用は、灌水のオン・オフのスイッチをIoT化するもので、栽培機構単位、栽培領域1平方メートル単位で灌水を管理するためのシステムであり、室内型農業の管理に特化したものである。
【0040】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物の栽培領域が単段であっても土壌あるいは培地中の水分が止水とならないよう栽培領域の底面の下に排水用の空間が確保されている、もしくは水受け皿に勾配をつけて排水が滞留しないようになっており、排水を貯水槽に誘導し、貯水槽の水分を循環する機構を備える。これにより、水位差を利用して水位を一定に保つ簡易な自動給水システムよりも根腐れなどの病害が発生するリスクが抑えられ、外部に排水出来ない室内空間においても果樹類の鉢植え栽培の現地での灌水管理を貯水槽への水分補充のみとすることが可能となり、IoTデバイスでの集中管理による大規模農業を点在するオフィスや住居空間の窓際でも可能となる。
【0041】
本発明の一形態に係る栽培機構は、農作物の栽培領域が単段であっても土壌あるいは培地中の水分が止水とならないよう栽培領域の底面の下に排水用の空間が確保されており、かつ、貯水槽からの水分供給量を栽培領域の土壌または培地に保水される以上の量とならないように調整することで、排水がほぼされないように構成する。これにより、排水を循環させる場合よりもさらに水質の管理が求められる作物においても、IoTデバイスでの集中管理による大規模農業を点在するオフィスや住居空間の窓際でも可能となる。
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<栽培システム>
図1は本発明の一実施形態に係る栽培システムの構成を示す平面図である。
同図に示すように、栽培システム100は、農作物として典型的には苺を栽培するための栽培機構101を、オフィスや住居などの建築物102の窓103に近接するように建築物102内に設置する。栽培機構101の構成については後述する。
建築物102内は、典型的には、農作業を優先して設定した温度ではなく、各オフィスや住居でその場所での活動者・住人が普段必要としている空調設定温度とする。
【0043】
本実施形態では、典型的には、栽培機構101を建築物102の屋内空間へのインテリアとして提供すること及び/又は栽培機構101で栽培された農作物としての苺を収穫するのに必要な農作業を代行することの対価として栽培機構101が設置される領域である自然光が直接あたる窓際の床面積を利用する権利及び収穫された苺の農作物の所有する又は販売する権利を設定する。加えて、その住居又はオフィスの使用者に収穫物を再販する権利及び収穫・消費体験を商品として第三者に販売する権利を設定してもよい。
【0044】
本実施形態では、例えば複数の建築物102のそれぞれ複数の窓103に近接して、この栽培機構101を設置することで、病害・虫害がほとんどないオフィスや住居の窓際スペースを空調管理コスト削減しつつ極小規模農地として利用し、それらを集約して仮想的な大規模農業として営農する。
典型的には、各日照時間を各栽培機構101の分類要素とし、記録台帳を作成する。記録台帳において、50cmメッシュ~50mメッシュ単位の極小農地を共通する分類ごとに仮想的に同じ条件の農地として再集約して仮想的な大規模農業として営農する。
例えば、既存室内居住労働環境を農地として利用する際に特徴的な要素となる設置環境の窓103の方角及び空調設定温度を、農作物としての苺の育成期間において栽培機構設置環境それぞれの太陽高度ごとの累積日照時間と併せて極小農地の分類要素とし、例えば表計算ソフトのソート機能を使用して気温、水量、日照角度ごとの日照時間から仮想的にそれぞれの極小農地の時節をずらしたグループに分ける。
そして、グループ単位で育成条件(水・肥料の供給調整や花・果実・茎の間引き等)を変えることで、苺の育成の効率化を図ることができる。また、意図的に旬の時期をずらした収穫及び/又は収穫時期の集中を避けることができ、苺を市場に長期で安定供給することを実現できる。
【0045】
<栽培機構の構成(その1)>
図2は本発明の一実施形態に係る栽培機構101の構成を示す斜視図、図3はその正面図、図4は栽培機構101の各段の側面図、図5図4の拡大図である。
栽培機構101は、例えば2本の支柱1の間に棚板2を所定の間隔でほぼ垂直方向に多段に配置した栽培棚によりその主要部が構成される。図中棚板2は3枚であるが、本発明では、その枚数を限定するものではない。各棚板2は、苺などの農作物を栽培する栽培領域として機能すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する。棚板2間の所定の間隔は典型的には可変式である。本発明では、支柱1の本数や棚板2の枚数、これらの素材、形状は特に限定するものではない。
【0046】
各棚板2の上面には、栽培領域としての作付面3を有する。棚板2間の所定の間隔は外部への眺望・採光・収穫作業用空間4として機能する。図中符号4の点線で囲む領域は説明を分かりやすくするために示したもので、眺望・採光・収穫作業用空間4はこの領域に限定されない。
【0047】
栽培機構101の下部には、棚板2から流出する水を貯留する貯水槽5が設置されている。ただし、貯水槽5の設置はこの位置に限定されない。電動ポンプ7は、貯水槽5に貯留された水を棚板2に供給する。棚板2と貯水槽5と電動ポンプ7によって循環水路6を構成する。この実施形態では、貯水槽5より最上段の棚板2に一方側に水を供給し、その棚板2の一方側から他方側に傾斜を利用して水が流れ、その他方側においてその下の棚板2の他方側に水を供給し、その棚板2の他方側から一方側に傾斜を利用して水が流れ、その一方側においてその下の、つまり最下段の棚板2の一方側に水を供給し、その棚板2の一方側から他方側に傾斜を利用して水が流れ、その他方側においてその下の貯水槽5に水が流れるようにすることで、循環水路6を構成する。循環水路6は、勿論他の形態であってもよい。例えば循環水路6は、図6に示すように、各棚板2に対して並列に水が流れるように構成してもよい。具体的には、電動ポンプ7より各棚板2に分岐する循環水路6を介して各棚板2の一方側に水を供給し、各棚板2の他方側より循環水路6を介して貯水槽に水を循環させる。
【0048】
栽培機構101は、電動ポンプ7などに電力を供給するためソーラー発電パネル8を有する。本発明は、栽培機構101に対するソーラー発電パネル8の設置位置を特に限定しない。
【0049】
図5において、図中右が室外側(窓側)、図中左が室内側、図中斜めの一点鎖線が日照である。
符号9Aで囲んだ部分はこの栽培機構101で育成する苺などの農作物の適切な成長に必要な直射日照が当たることが求められる空間を示している。符号9は日照をその棚板2の地面に投影した範囲の室内側末端から、棚板2の外端までの長さ(L)を示す。
符号10は太陽光の仰角(θ)であり、設置者が育成する農作物の育成環境・育成期間において熱射の強すぎる過大仰角の日照を遮り、育成効率を最大化できる仰角範囲の中で最大の仰角である。その仰角範囲が当該時期の南中高度を含む場合、θは南中高度に等しい。
符号11は上記の仰角(θ)に対する高さ(H)でであり、H=L×tanθである。
符号12は室内から室外への眺望の確保に、Hに加えて必要と判断される高さ(S)である。
符号13は棚板2において土壌栽培又は水耕栽培機構に必要な高さ(G)である。
本実施形態に係る栽培機構101においては、設置環境や季節、育成作物の特性に合わせて各棚板2間の間隔を、
L×tanθ+S+G
に調節することを可能とする。
【0050】
なお、図示をしていないが、農作物に向けて送風するための小型の扇風機を例えば各棚板2の近くに配置してもよい。その場合、ソーラー発電パネル8より各扇風機に電力を供給してもよい。これにより、農作物に向けて送風するための自家受粉の促進及び/又は農作物の健康に寄与する良好な風通しの確保、及び/又は高くなりすぎた環境温度や地表面温度の冷却効果を得ることができる。
【0051】
この実施形態に係る栽培機構101では、棚板2が栽培領域を構成していたが、本発明はこれに限定されず、図7に示すように、例えば棚板2の上にプランタ2Aを設置した構成であってもよい。
【0052】
<栽培機構の構成(その2)>
図8は本発明の他の実施形態に係る栽培機構111の構成を示す斜視図、図9は栽培機構111を側面側から見た断面図である。なお、これらの図において、最初に示した実施形態に係る栽培機構101と同じ要素には同じ符号を付している。
この実施形態に係る栽培機構111は、支柱1に対してグリーンウォール基板17が蝶番18を介して開閉可能に枢着されている。図8において、点線で示すグリーンウォール基板17は閉じた状態を示し、実線で示すグリーンウォール基板17は閉じた状態を示している。図8はグリーンウォール基板17が閉じた状態を示している。図9において、図中右が室外側(窓側)、図中左が室内側を示している。グリーンウォール基板17は例えば木製板やフェンスなどからなるが、本発明ではその素材や形状を限定するものではない。
【0053】
グリーンウォール基板17の表側(グリーンウォール基板17が閉じたときの室外側)には、内鉢(ポット)14を収容する外鉢15が縦横に取付けられている。例えば、外鉢15がグリーンウォール基板17に対して容易に着脱できるようにフック構造を有している。フック構造とは、例えばグリーンウォール基板17の穴やレール(図示を省略)に外鉢15に取り付けられたフック部材が係合するように構成したものである。図10及び図11に外鉢15に内鉢14を収容した一例を示す。外鉢15は底部に水抜き穴16が設けられ、上部から供給される水の通り抜け空間であり、その内側に収容された内鉢14に水が供給され、内鉢14で苺などの農産物が栽培される。各内鉢14は栽培領域を前面の方向に傾け各段の間隔を詰めて高密度に配置されるようになっている。
【0054】
グリーンウォール基板17の裏側(グリーンウォール基板17が閉じたときの室内側)は、インテリア性のあるデザイン等が施されたインテリア面19を有する。
【0055】
この実施形態に係る栽培機構111は、支柱1を軸として開閉可能な構造を有することで、グリーンウォール基板17を閉じたときに内鉢14が縦横に配置された栽培領域に窓側より自然光を直接採光でき、かつ、栽培領域の裏面側にインテリアデザイン性を備え、グリーンウォール基板17を開いたときには室内側から農作物の手入れ及び/又は収穫作業が可能となる。
【0056】
<栽培機構の構成(その3)>
図12は本発明の別の実施形態に係る栽培機構121の構成を示す斜視図、図13はその断面図である。なお、これらの図において、上記の実施形態に係る栽培機構101、111と同じ要素には同じ符号を付している。
栽培機構121は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を垂直方向に円柱状に複数段配置したものである。
【0057】
回転ウォール20は、下部の回転レール23に沿って回転可能保持されている。回転ウォール20は、図示を省略したモーターによって回転駆動される。モーターは、例えばソーラー発電パネル8より電力供給される。
【0058】
回転ウォール20の円周表面には、農作物を栽培するためのポット21が多数配置されている。回転ウォール20の上部には、循環水路6を介して電動ポンプ7より水を供給され、その水を各ポット21に分配するためのドーナッツ型水受け22が配置されている。各ポット21には、ドーナッツ型水受け22より循環水路6を介して水が供給される。各ポット21に供給された水は循環水路6を介して貯水槽5に循環される。これにより、各栽培領域から排出された水が各栽培領域に循環させることができる。
【0059】
栽培機構121では、回転ウォール20の円周表面に配置されたポット21からなる栽培領域を回転することで一方側より全栽培領域に自然光を直接採光することができ、かつ、室内側からも観葉や収穫作業を行うことができる。また、循環水路6を介した水の循環及び回転ウォール20の回転駆動をソーラー発電パネル8から供給された電力で行い、1つのタワー型栽培機構で完結するスタンドアローン構造となっていることにより居住労働空間の窓際に1本から設置することが可能である。
【0060】
<栽培機構の構成(その4)>
図14は本発明のさらに別の実施形態に係る栽培機構131の構成を示す斜視図、図15はその栽培機構131を側面から見た断面図である。なお、これらの図において、上記の実施形態に係る栽培機構101、111、121と同じ要素には同じ符号を付している。
栽培機構131は、農作物を栽培すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する栽培領域を有する棚板2を、これらの棚板2が観覧車の如く、裏面側から表面側乃至裏面側から表面側に回転する垂直方向に多段に配置した栽培棚を有する。
【0061】
各棚板2は、図16に示すように、棚板2を平衡に保つための平衡重り24と、ワイヤーロープ26をかしめこむ回転ロープかしめ部25とを有する。
【0062】
各棚板2は、縦板や支柱ではなく両側のワイヤーロープ26に固定され観覧車のように固定され、ロープウェーローラー27を介して裏面側から表面側乃至裏面側から表面側に回転して循環される。
【0063】
栽培機構131では、各棚板2の間隔は、窓側から見た時に棚板2が室内奥に向かって2枚並んでも必要な直射日光を栽培領域に採光できる間隔に調整されている。
【0064】
本実施形態に係る栽培機構131では、吹き抜け空間など、支柱の設置や高所の収穫が困難な場所でも手入れや収穫体験が可能となる。
【0065】
<栽培機構の構成(その5)>
以上の栽培方法及び栽培システムは、栽培領域を垂直方向に複数段に配置した栽培機構を前提としていたが、本発明はこれに限定されない。以下の実施形態では、単段の栽培領域を有する栽培機構を有からなる栽培システムを説明する。単段の栽培領域からなる栽培機構を有する栽培システムは、メロン・スイカ・トマトなどの草高が高く垂直多段栽培に不向きな果菜類やブドウ・マンゴー・ライチ等の果樹類の作物も室内で低コストに生産することができる。
【0066】
図17はその栽培機構の構成を示す斜視図である。なお、図において、上記の実施形態に係る栽培機構と同じ要素には同じ符号を付している。また、この栽培機構を使った栽培システムの構成は、図1に示した栽培システム100と同様であるので、図1を援用して説明する。
【0067】
本実施形態に係る栽培システムは、果菜類や果樹類などの農作物を栽培するための単段の栽培領域を有する栽培機構141(図17参照)を、図1に示したように、オフィスや住居などの建築物102の窓103に近接するように建築物102内に設置する。建築物102内は、典型的には、農作業を優先して設定した温度ではなく、各オフィスや住居でその場所での活動者・住人が普段必要としている空調設定温度とする。
【0068】
図1に示した栽培システム100と同様に、典型的には、栽培機構141を建築物102の屋内空間へのインテリアとして提供すること及び/又は栽培機構141で栽培された農作物としての苺を収穫するのに必要な農作業を代行することの対価として栽培機構141が設置される領域である自然光が直接あたる窓際の床面積を利用する権利及び収穫された苺の農作物の所有する又は販売する権利を設定する。加えて、その住居又はオフィスの使用者に収穫物を再販する権利及び収穫・消費体験を商品として第三者に販売する権利を設定してもよい。
【0069】
本実施形態では、栽培システム100と同様に、例えば複数の建築物102のそれぞれ複数の窓103に近接して、この栽培機構141を設置することで、病害・虫害がほとんどないオフィスや住居の窓際スペースを空調管理コスト削減しつつ極小規模農地として利用し、それらを集約して仮想的な大規模農業として営農する。
栽培機構141は、図17に示すように、例えば2本の支柱1の間に単段の棚板2を配置した栽培棚によりその主要部が構成される。棚板2は、苺などの農作物を栽培する栽培領域として機能すると共に栽培される農作物に水を供給する水路として機能する。棚板2間の所定の間隔は典型的には可変式である。本発明は、支柱1の本数、支柱1や棚板2の素材、形状を特に限定しない。
棚板2の上面には、栽培領域としての作付面3を有する。例えば、栽培機構141の栽培領域としての作付面3は、1平方メートル前後が好ましい。1平方メートル単位で水分循環機構や電力供給機構が完結することで、栽培機構設置先の間取りやスペースに合わせて柔軟に設置数量を調整できることができる。結果として、それらが設置先顧客に設置してもらいやすい要素となり、本発明の主要な効果の一つである「オフィスや住居における空調の廃熱・廃冷を農作物の栽培に利用できる」という効果を単段栽培においても得られる。
【0070】
栽培機構141の下部には、棚板2から流出する水を貯留する貯水槽5が設置されている。ただし、貯水槽5の設置はこの位置に限定されない。電動ポンプ7は、貯水槽5に貯留された水を棚板2に供給する。棚板2と貯水槽5と電動ポンプ7によって循環水路6を構成する。貯水槽5より棚板2の一方側に水を供給し、その棚板2の一方側から他方側に傾斜を利用して水が流れ、その他方側において貯水槽5に水が流れるようにすることで、循環水路6を構成する。
【0071】
栽培機構141は、ソーラー発電パネル8により発電された電力をバッテリー10に蓄電している。バッテリー10とソーラー発電パネル8との間には、IoTデバイス9が介挿されている。IoTデバイス9のオン・オフにより、電動ポンプ7による水の供給をコントロールすることができる。
【0072】
IoTデバイス9は、多数の栽培機構141を管理する管理センタ(図示せず)で集中管理する。
【0073】
水循環用の電動ポンプ7のオン・オフをIoTデバイス9による集中管理とすることで、設置先環境の窓方角や各環境の日照時間帯における天気、センサーで計測した各栽培機構141の栽培領域の水分量などに応じて、栽培機構単位で灌水量を自動または手動で、遠隔地から調整することが可能となる。
農業用の灌水を集中管理するシステムやIoTデバイスとの連携するシステムは市場に存在するが、どちらもコストのかかる設備であるため灌水管理もIoTデバイス設置も圃場単位で導入するものとなっている。本発明におけるIoTデバイス9の利用は、灌水のオン・オフのスイッチをIoT化するもので、栽培機構単位、栽培領域1平方メートル単位で灌水を管理するためのシステムであり、室内型農業の管理に特化したものである。
【0074】
栽培機構141は、農作物の栽培領域が単段であっても土壌あるいは培地中の水分が止水とならないよう水受け皿である棚板2に勾配をつけて排水が滞留しないようになっており、排水を貯水槽5に誘導し、貯水槽5の水分を循環するように構成されている。これにより、水位差を利用して水位を一定に保つ簡易な自動給水システムよりも根腐れなどの病害が発生するリスクが抑えられ、外部に排水出来ない室内空間においても果樹類の鉢植え栽培の現地での灌水管理を貯水槽への水分補充のみとすることが可能となり、IoTデバイス9での集中管理による大規模農業を点在するオフィスや住居空間の窓際でも可能となる。
【0075】
また、栽培機構141は、バッテリー10を有することで、そのような水の供給のコントロールを24時間(終日)行うことができる。本発明は、栽培機構141に対するソーラー発電パネル8の設置位置を特に限定しない。
【0076】
なお、図示をしていないが、農作物に向けて送風するための小型の扇風機を例えば棚板2の近くに配置してもよい。その場合、バッテリー10より扇風機に電力を供給してもよい。これにより、農作物に向けて送風するための自家受粉の促進及び/又は農作物の健康に寄与する良好な風通しの確保、及び/又は高くなりすぎた環境温度や地表面温度の冷却効果を得ることができる。また、扇風機とバッテリー10との間に、IoTデバイス(図示せず)を介挿し、電動ポンプ7と同様に、遠隔より送風を24時間(終日)集中管理してもよい。
【0077】
<栽培機構の構成(その6)>
図18は農作物として果樹類を栽培するのに好適な栽培機構の構成を示す概略的断面図である。なお、図において、上記の実施形態に係る栽培機構と同じ要素には同じ符号を付している。また、この栽培機構を使った栽培システムの構成は、図1に示した栽培システム100と同様であり、上記の実施形態で説明したとおりである。
【0078】
図18に示すように、栽培機構151は、例えば逆円錐台形状の鉢11を有する。鉢11の内側は、上から果樹類を植えられる培地11aと、排水空間11bと、貯水槽5とからなる積層構造を有する。なお、貯水槽5は鉢11の内側でもよいが鉢11とは別に鉢11の外側に配置してもよい。
【0079】
電動ポンプ7は、貯水槽5に貯留された水を培地11aに供給する。培地11aと貯水槽5と電動ポンプ7によって循環水路6を構成する。典型的には、電動ポンプ7によって培地11aの上部より水を供給し、その水は培地11a及び排水空間11bを通り、貯水槽5に水が流れるようにすることで、循環水路6を構成する。
【0080】
栽培機構151は、電動ポンプ7などに電力を供給するためソーラー発電パネル8を有する。ソーラー発電パネル8により発電された電力をバッテリー10に蓄電している。バッテリー10とソーラー発電パネル8との間には、IoTデバイス9が介挿されている。
【0081】
この栽培機構151のIoTデバイス9も上記の実施形態と同様の集中管理のために用いられる。
【0082】
この栽培機構151は、農作物の栽培領域が単段であっても土壌あるいは培地中の水分が止水とならないよう栽培領域の底面の下に排水空間11bが確保されており、排水を貯水槽5に誘導し、貯水槽5の水分を循環する機構を備えている。これにより、水位差を利用して水位を一定に保つ簡易な自動給水システムよりも根腐れなどの病害が発生するリスクが抑えられ、外部に排水出来ない室内空間においても果樹類の鉢植え栽培の現地での灌水管理を貯水槽への水分補充のみとすることが可能となり、IoTデバイス9での集中管理による大規模農業を点在するオフィスや住居空間の窓際でも可能となる。
【0083】
なお、本発明は、栽培機構151に対するソーラー発電パネル8の設置位置を特に限定しない。また、図示をしていないが、農作物に向けて送風するための小型の扇風機を例えば培地11aの近くに配置してもよい。その場合、バッテリー10より扇風機に電力を供給してもよい。また、扇風機とバッテリー10との間に、IoTデバイス(図示せず)を介挿し、遠隔より送風を24時間(終日)集中管理してもよい。
【0084】
なお、上記の実施形態では、電動ポンプ7によって培地11aの上部より水を供給し、その水は培地11a及び排水空間11bを通り、貯水槽5に水が流れるようにすることで、循環水路6を構成したが、図19に示す栽培機構161のように、排水空間11bと貯水槽5との間に不透水層11cを設け、貯水槽5に水を循環させず、貯水槽5から供給される水を単なる水分供給水路12を通り培地11aに供給するように構成してもよい。すなわち、この栽培機構161は、農作物の栽培領域が単段であっても土壌あるいは培地中の水分が止水とならないよう栽培領域の底面の下に排水空間11bを確保し、かつ、排水空間11bと貯水槽5との間に不透水層11cを設け、さらに貯水槽5からの水分供給量を栽培領域の土壌または培地に保水される以上の量とならないように調整することで、排水がほぼされない構成とすることができる。これにより、排水を循環させる場合よりもさらに水質の管理が求められる作物においても、IoTデバイス9での集中管理による大規模農業を点在するオフィスや住居空間の窓際でも可能となる。
【0085】
<その他>
本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形や応用が可能である。そのような変形や応用による実施の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
例えば、上記の実施形態では、栽培される農産物として苺を例示した。これは苺がイチゴ狩りなどの産地消費形態が広く認知されており、都市部のオフィスや大規模商業施設などの人が多く集まる場所で室内側からも収穫可能な方法で育成すれば、輸送コストや出荷作業のコストも削減しながらの都市部での消費が可能になる、というメリットがあるからである。しかし、農産物として、トマト、ナス、キュウリ等のオーガニック食材として購買実績の高い野菜類や、メロン、スイカ、マンゴーなど虫害に気をつける必要があり丁寧な育成が付加価値となりやすい果物野菜等であってもよい。例えば、農作物として胡蝶蘭などの直射日光を避ける必要のある花卉類を栽培することで、オフィスビルの北向きの窓際も農産地として開拓できるというメリットがある。
本発明では、開閉式グリーンウォールにおいて、下記の如く両面にインテリア性をもたせてもよい。また、開閉式の栽培棚の開閉方法は、支柱を軸として開閉する方式だけではなく、装置の脚部に車輪を具備し、移動・開閉をさせる方式としてもよ
【0086】
(1)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、背板は金属素材のフェンス等にし、室内側には設置室内で普段使用される範囲の既存照明量で育成が可能な観葉植物を配置したグリーンウォールとし、循環水路の水分を室内側の植物にも供給するように構成してもよ
【0087】
(2)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、室内側にはフェイクのグリーンを配置し、室内側はメンテナンス不要のグリーンウォールとして構成しても
【0088】
(3)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、背板の大部分をガラスやアクリルなど透過性の素材にして循環する水が透明部分を伝って落下する様子が鑑賞可能なウォーターフォールインテリアとして構成し、太陽側の栽培領域にはウォーターフォールを落下する水分を供給可能な構造としてもよい。また、落下する水のゆらぎを介することで室内に間接的に採光できるようグリーンウォールに任意の場所・任意の間隔で隙間を空け、背板部分に直射日光があたるよう調整してもよ
【0089】
(4)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、また、外部から当該窓を見た時にエクステリア性を高めるよう当該農作物の育成に支障のない範囲でフェイクグリーンを栽培領域の隙間や周辺に配置したり、1つ、又は並べて設置する当該栽培機構の一部を栽培領域ではなく設置場所企業のロゴ表示として構成してもよ
【0090】
(5)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、室内側はインテリア面の一部又は全部に設置場所企業のロゴを表示するスペースとしてオフィス内の宣材風景として利用できるよう構成してもよ
【0091】
(6)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、開閉部分を開くと農作物栽培領域が広がることとの調和性を持たせ、表面のグリーンインテリアとしての連続性があるよう、背板は木材のフェンスとして室内側からみても自然調和的なデザインとして構成しても
【0092】
(7)太陽側には収穫を目的とする農作物を作付けし、室内側には鍛金、彫金、絵画などのアートを具備した構成、又はそれらアートを展示するスペースとして構成してもよい。
【0093】
上記の実施形態では、棚板2間の所定の間隔は可変式であった。可変式としては、支柱に上下方向に所定間隔で棚板保持のためネジ穴を設け、各棚板を所望の位置でネジ止めする、或いは支柱の上下に棚板保持の保持溝を設け、各棚板を所望の位置の保持溝に入れる等がある。しかし、本発明は、可変式に限定されず、間隔が固定されていてもよい。
【0094】
上記の実施形態では、電動ポンプ7及び貯水槽5を用いて水を農作物に供給・循環させれものであったが、本発明は、これに限定されず、例えば栽培される農作物より上部の位置に水を貯水する貯水槽を配置し、重力によって農作物に水を供給するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 :支柱
2 :棚板
2A :プランタ
3 :作付面
4 :収穫作業用空間
5 :貯水槽
6 :循環水路
7 :電動ポンプ
8 :ソーラー発電パネル
9 :IoTデバイス
10 :バッテリー
11 :鉢
11a :培地
11b :排水空間
11c :不透水層
12 :水分供給水路
14 :内鉢
15 :外鉢
16 :水抜き穴
17 :グリーンウォール基板
18 :蝶番
19 :インテリア面
20 :回転ウォール
21 :ポット
22 :ドーナッツ型水受け
23 :回転レール
24 :平衡重り
25 :回転ロープかしめ部
26 :ワイヤーロープ
27 :ロープウェーローラー
100 :栽培システム
101 :栽培機構
102 :建築物
103 :窓
111 :栽培機構
121 :栽培機構
131 :栽培機構
141 :栽培機構
151 :栽培機構
161 :栽培機構
図1
図2
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