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特許7082838ウィッグベース、ウィッグ及びウィッグベース製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ウィッグベース、ウィッグ及びウィッグベース製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A41G3/00 E
A41G3/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021168409
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2021-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512180676
【氏名又は名称】株式会社グローウィング
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 貴嘉
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-321282(JP,A)
【文献】特開2019-189963(JP,A)
【文献】特開2000-226704(JP,A)
【文献】実開平02-090618(JP,U)
【文献】特開平05-295605(JP,A)
【文献】特開2016-138357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維の肌側層と、
形状を保つ合成繊維の外側層と、
前記肌側層と前記外側層との互いに向かい合う面を接着する接着剤と
を備え、
前記肌側層および前記外側層は肌色に着色され、前記肌側層の肌色は前記外側層の肌色よりも青みが強くかつ赤みが弱いウィッグベース。
【請求項2】
前記外側層は透け生地である請求項1に記載のウィッグベース。
【請求項3】
前記肌側層も透け生地であり、前記外側層の方が透け感が大きい請求項2に記載のウィッグベース。
【請求項4】
前記肌側層の肌側表面には前記接着剤が染み出していない請求項1から3のいずれか1項に記載のウィッグベース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のウィッグベースが頭部形状に成形され、植毛されたウィッグ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のウィッグベースを、加熱により、頭部を模した型に倣って成形する段階を備えるウィッグベース製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグベース、ウィッグ及びウィッグベース製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「頭部に装着するかつらは、頭部形状に成形された土台となるかつらベースと、該かつらベースに人毛又は人工毛髪を植毛したものであり、かつらベースの素材としては、例えば、人工皮膚と呼ばれるウレタンエラストマーなどの無孔質熱可塑性樹脂膜と、合成繊維などからなるメッシュ状織編物からなるネットが一般的に使用されている」と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2007-321282
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、天然繊維の肌側層と、形状を保つ合成繊維の外側層と、 肌側層と外側層とを接着する接着剤とを備えるウィッグベースが提供される。
【0004】
外側層は透け生地であってよい。肌側層も透け生地であり、外側層の方が透け感が大きくてよい。肌側層の肌側表面には接着剤が染み出していなくてよい。肌側層は前記外側層よりも青みが強くかつ赤みが弱く着色されていてよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、当該ウィッグベースが頭部形状に成形され、植毛されたウィッグが提供される。
【0006】
本発明の第3の態様においては、当該ウィッグベースを、加熱により、頭部を模した型に倣って成形する段階を備えるウィッグベース製造方法が提供される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ウィッグ10の全体を説明する概略図である。
図2】成形ベース200の部分断面拡大図である。
図3】肌側層220を説明する模式図である。
図4】外側層240を説明する模式図である。
図5】接着剤230を塗る方法の一例である。
図6】外側層240と肌側層220とを貼り合わせる方法の一例である。
図7】成形ベース200に成形する方法の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、ウィッグ10の全体を説明する概略図である。ウィッグ10は使用者の頭部に装着され、頭部の全体または一部を覆う。
【0011】
ウィッグ10は、成形ベース200と、成形ベース200に植毛された複数の毛髪100を備える。毛髪100は、人工毛髪および・または天然毛髪である。
【0012】
本実施形態におけるウィッグ10は、成形ベース200自体で、毛髪100側に凸のおわん型の形状を維持する。当該形状は使用者毎に頭部の形状に沿って成形されており、そのようなウィッグ10はオーダーメイドウィッグと呼ばれる。ここで、オーダーメードウィッグにおいてはそれ自身で頭部に沿った形状を保つことが求められるので、成形ベース200として合成繊維を用いることが考えられる。しかしながら、合成繊維が肌に触れるとかゆみなどを生じる敏感肌の使用者は、合成繊維の成形ベース200を用いることができない。
【0013】
図2は、成形ベース200の部分断面拡大図である。成形ベース200は、使用者の頭部側すなわち肌側に配された肌側層220と、肌とは反対側の外側層240と、肌側層220と外側層240とを接着する接着剤230とを備える。肌側層220の肌側表面(図2における下面)には、接着剤230が染み出していない非接着層228が形成されている。これにより、使用者の頭皮には天然繊維が接することになり、接着剤や合成繊維が頭皮に触れないので、敏感肌の使用者に対しても快適な使用感を提供することができる。
【0014】
図3は、肌側層220を説明する模式図である。肌側層220は、天然繊維の織物である。天然繊維は、植物繊維および・または動物繊維であって、綿、麻、絹、羊毛などが例示できる。なお、植物繊維の場合には有機栽培されたいわゆるオーガニックのものがより好ましい。
【0015】
図3に示す肌側層220は、経糸222と緯糸224とが平織されたものであり、目視で透けていることが分かる程度の隙間226を有する透け生地である。このような透け生地として、オーガンジーが例示できる。他の透け生地の例として、絽、紗などの絡み織が挙げられる。肌側層220の厚みは薄い方がよく、例えば0.12mm以下が好ましい。肌側層220は、反応染料によって肌色系に染色される。
【0016】
図4は、外側層240を説明する模式図である。外側層240は、合成繊維の織物である。合成繊維として、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタンなどが例示できる。合成繊維は、加熱成形によって形状が成形され、成形後の形状を自身で維持できることが好ましい。付言すれば、当該合成繊維により、肌側層220と貼り合わされた状態でも成形ベース200として成形後の形状を維持できる。
【0017】
図4に示す外側層240は、経糸242と緯糸244とが平織されたものであり、目視で透けていることが分かる程度の隙間246を有する透け生地である。このような透け生地として、オーガンジーが例示できる。外側層240の厚みも薄い方がよく、例えば0.12mm以下が好ましい。他の透け生地の例として、絽、紗などの絡み織が挙げられる。外側層240は、分散染料によって肌色系に染色される。
【0018】
肌側層220と外側層240とを比較した場合に、外側層240の方が透け感が大きい方が好ましい。透け感の大きさは、例えば隙間の平均的な大きさに対応し、隙間246の面積の方が隙間226よりも大きい。また、透け感の大きさは、平面視における単位面積当たりの糸の占める面積の大きさで比較してもよい。
【0019】
さらに、肌側層220と外側層240とを比較した場合に、肌側層220は外側層240よりも青みが強く、および・または、赤みが弱く着色されていることが好ましい。これにより、外側層240の側から見た場合に、外側層240の隙間246から肌側層220が部分的に表れて、全体として深みのあるより自然な頭皮に近い肌色に見える。なお、この観点からは肌側層220は透け生地でなくてもよい。また、肌側層220および・または外側層240は、成形ができるのであれば編物生地であってもよい。
【0020】
図5から図7は、成形ベース200の製造方法を説明する概念図である。図5は、接着剤230を塗る方法の一例である。
【0021】
図4に示す外側層240の生地を準備し、頭部を覆う面積に合わせて略楕円形状に切り取る。外側層240の一方の面に、その中心から放射状の線分と、同心円状の楕円の線とからなるいわゆる蜘蛛の巣状に接着剤230を塗る。蜘蛛の巣状に代えて、全面またはメッシュに塗ってもよい。いずれの場合も、使用中に剥離しない強度を保ちつつ、肌側層220に貼り合せた場合に肌側に非接着層228が形成されるような塗布方法および塗布量であることが好ましい。接着剤230はポリアミド樹脂が例示できるが、ポリウレタン系であってもよい。
【0022】
図6は、外側層240と肌側層220とを貼り合わせる方法の一例である。接着剤230を塗った外側層240の接着剤230側の面を図3に示す肌側層220に重ね合わせて、加熱および加圧する。この方法はホットメルトとも呼ばれる。これにより、外側層240と肌側層220との層構造によるベース地250が形成される。
【0023】
図7は、成形ベース200に成形する方法の一例である。図7において、使用者の頭部の形状を模した型20が準備される。この場合に、ビニール、ラップフィルム、3Dスキャナー等を使用して使用者の頭部の型取りが行われてよい。
【0024】
ベース地250を型20に沿わせた状態で、例えばコテなどで加圧および加熱する。これにより、型20に倣って成形された成形ベース200が形成される。成形ベース200に毛髪100を植毛することにより、図1に示したウィッグ10が形成される。
【0025】
[実施例1]
肌側層220として、140単糸の綿をオーガンジーに織った厚さ0.12mmの生地を用い、ベージュに染色した。外側層240として、20デニールのナイロンをオーガンジーに織った厚み0.12mmの生地を用い、薄い肌色に染色した。
【0026】
外側層240の一面にポリアミド樹脂の接着剤230を蜘蛛の巣状に塗り、肌側層220とホットメルトした。これにより、肌側層220に非接着層228が形成され、かつ、使用に十分な剥離強度を有するベース地250が得られた。
【0027】
ベース地250を型20を用いて約100度に加熱して、それ自身で頭部に倣った形状を保つ成形ベース200を得ることができた。これにより、敏感肌の使用者が快適に使用できるオーダーメイドのウィッグ10を提供することができた。
【0028】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0029】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0030】
10 ウィッグ、20 型、100 毛髪、200 成形ベース、220 肌側層、222 経糸、224 緯糸、226 隙間、228 非接着層、230 接着剤、240 外側層、242 経糸、244 緯糸、246 隙間、250 ベース地
【要約】      (修正有)
【課題】天然繊維の肌側層と、形状を保つ合成繊維の外側層と、肌側層と外側層とを接着する接着剤とを備えるウィッグベースを提供する。
【解決手段】外側層240は透け生地であってよい。肌側層220も透け生地であり、外側層の方が透け感が大きくてよい。肌側層の肌側表面には接着剤230が染み出していなくてよい。肌側層は外側層よりも青みが強くかつ赤みが弱く着色されていてよい。当該ウィッグベースが頭部形状に成形され、植毛されたウィッグが提供されてもよい。当該ウィッグベースを、加熱により、頭部を模した型に倣って成形する段階を備えるウィッグベース製造方法が提供されてもよい。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7