(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ラッチ一体化ドア
(51)【国際特許分類】
E05C 3/14 20060101AFI20220602BHJP
E05C 1/10 20060101ALI20220602BHJP
E05D 7/04 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
E05C3/14
E05C1/10
E05D7/04
(21)【出願番号】P 2021172099
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521223335
【氏名又は名称】株式会社エルボーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 史郎
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-173532(JP,U)
【文献】実開昭62-034081(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 3/00-3/40
E05C 1/00-1/16
E05D 7/00-7/14
E06B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蝶番(6)により開閉するドア(A)であって、
ドア本体(1a)と、
前記ドア本体(1a)の戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、前記ドア(A)の閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部(3a)と、
前記蝶番(6)が取り付けられ、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、前記筐体内に前記ドア本体(1a)を少なくとも部分的に格納するドアケース(2a)と、
前記ドアケース(2a)に対して前記ドア本体
(1a)を回動可能に連結する回動軸(4a)と、
前記ドアケース(2a)の前記筐体内に配置され、前記ドア本体(1a)を、前記ドア(A)の戸先側に付勢する弾性体(5a)と、
前記ドア本体(1a)のドア面上に設けられた操作部(7a)であって、前記操作部(7a)を操作して前記回動軸(4a)の周りで前記ドア本体(1a)を回動させることにより、前記ラッチ部(3a)を前記ラッチ受けから解放可能である、前記操作部(7a)と、
を有するドア(A)。
【請求項2】
蝶番(6)により開閉するドア(D)であって、
ドア本体(1d)と、
前記ドア本体(1d)の戸先側の側面の一部が戸先側から戸尻側に向かって、切り欠かれた形状をしている切り欠き部 (13)と、
前記切り欠き部 (13)の空間内に回動可能に配置される回動体(12)と、
前記ドア本体(1d)に対して前記回動体(12)を回動可能に連結する回動軸(11)と、
前記回動体(12)の戸先側の側面の少なくとも一部を突出するように形成され、前記ドア(D)の閉位置にてラッチ受けに収容されるラッチ部(3d)と、
前記切り欠き部(13)に面する前記ドア本体(1d)と前記回動体(12)との間に配置され、前記回動体(12)を戸先側に付勢する弾性体(5d)と、
前記回動体 (12)のドア面側の表面上に設けられた操作部(7d)であって、前記操作部(7d)を操作して前記回動体(12)を前記回動軸(11)を中心に戸尻側に回動させることにより、前記ラッチ部(3d)を前記ラッチ受けから解放可能である、前記操作部(7d)と、
を有するドア(D)。
【請求項3】
蝶番(6)により開閉するドア(E)であって、
ドア本体(1e)と、
前記ドア本体(1e)の戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、前記ドア(E)の閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部(3e)と、
前記蝶番(6)が取り付けられ、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、前記筐体内に前記ドア本体(1e)を少なくとも部分的に格納するドアケース(2e)と、
前記ドアケース(2e)の前記筐体内に配置され、前記ドア本体(1e)を、前記ドア(E)の戸先側に付勢する弾性体(5e)と、
前記ドア本体(1e)のドア面上に設けられた操作部(7e)であって、前記操作部(7e)を操作して前記ドア本体(1e)を前記ドア(E)の戸尻側に摺動させることにより、前記ラッチ部(3e)を前記ラッチ受けから解放可能である、前記操作部(7e)と、
を有するドア(E)。
【請求項4】
ドア本体(1f)と、
前記ドア本体(1f)の戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、ドア(F)の閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部と、
前記ドア(F)を開閉するための蝶番(15)と、
前記ドア本体(1f)のドア面上に設けられた操作部と、を有し、
前記蝶番(15)は、
一対の対向する平板部(15h,15j)と平板部同士を連結する連結板部(15i)とを具備するドア側の羽(15d)と、一対の前記平板部(15h,15j)にそれぞれ形成された水平方向に延在する1又は複数のスリット孔(15f)と、一対の前記平板部(15h,15j)の間に配置される前記ドア本体(1f)を保持しかつ前記スリット孔(15f)に沿って摺動可能なスライド部材(15g)と、前記ドア側の羽(15d)内にて前記ドア本体(1f)と連結板部(15i)との間に配置された前記ドア本体(1f)を戸先側に付勢する弾性体(5f)と、を具備し、
前記操作部を操作して前記ドア本体(1f)を前記ドア(F)の戸尻側に摺動させることにより、前記ラッチ部を前記ラッチ受けから解放可能である、ドア(F)。
【請求項5】
蝶番(6)により開閉するドア(G)であって、
ドア本体(1g)と、
前記ドア本体(1g)の戸先側の側面の一部に形成された空洞部(10)であって、前記空洞部(10)を挟んで両側に位置するドア本体(1g)の一部が戸先側から戸尻側に向かって所定の長さだけ切り欠かれた形状を有している空洞部(10)と、
空洞部内で摺動可能なスライド体(8)と、
スライド体の戸先側の側面の少なくとも一部を突出させて形成され、前記ドア(G)の閉位置にてラッチ受けに収容されるラッチ部と、
前記空洞部(10)内に配置され、前記スライド体(8)を前記ドア(G)の戸先側に付勢する弾性体(5g)と、
前記スライド体 (8)のドア面側の表面上に設けられた操作部(7g)と、
を有するドア(G)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ機構を有するドアに関する。
【背景技術】
【0002】
開き戸型のドアの戸先側に設けられた一般的なラッチ機構では、ラッチボルトは、突出する方向にバネにより付勢されている(特許文献1、2等)。ドアの閉位置では、ラッチボルトが突出してドア枠のラッチ受けと係合することによってドアが閉位置に固定される。
閉位置にあるドアを開くときは、ラッチボルトをバネに抗して一時的に後退させる必要があり、その操作を行うレバーハンドルやプッシュプルハンドルなどの取っ手は、ラッチと一体的に、そしてドア本体とは別部品として設計されている。
【0003】
多様な身体的特徴を持つ人間の、様々な部位による、ラッチ解除を想定すると、そのラッチ解除の操作する部位の位置について自由度があることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004―238972
【文献】特開2004-218220号公報
【文献】実用新案登録第3229028号公報
【文献】特許第6722968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアとは別に製造されるラッチ機構の形状や配置場所等にともなって、ドアノブ等のラッチを解除する操作部の形状や配置場所も制約を受けるため、様々な身体的部位によるラッチ解除までを視野に入れたラッチ機構を想定すると、その実装は必ずしも容易であるとはいえず、多様な身体的特徴を持つ人間の操作にとって必ずしも使いやすいものではなかった。
【0006】
以上の現状に鑑み、本発明は、ラッチの操作をする部位の自由度を上げるために、ラッチ部分の機能をシンプルに、とりわけラッチ機構をドアと一体化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0008】
本発明の第1の態様は、蝶番(6)により開閉するドア(A)であって、
ドア本体(1a)と、
前記ドア本体(1a)の戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、前記ドア(A)の閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部(3a)と、
前記蝶番(6)が取り付けられ、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、前記筐体内に前記ドア本体(1a)を少なくとも部分的に格納するドアケース(2a)と、
前記ドアケース(2a)に対して前記ドア本体(1a)を回動可能に連結する回動軸(4a)と、
前記ドアケース(2a)の前記筐体内に配置され、前記ドア本体(1a)を、前記ドア(A)の戸先側に付勢する弾性体(5a)と、
前記ドア本体(1a)のドア面上に設けられた操作部(7a)であって、前記操作部(7a)を操作して前記回動軸(4a)の周りで前記ドア本体(1a)を回動させることにより、前記ラッチ部(3a)を前記ラッチ受けから解放可能である、前記操作部(7a)と、
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様は、蝶番(6)により開閉するドア(D)であって、
ドア本体(1d)と、
前記ドア本体(1d)の戸先側の側面の一部が戸先側から戸尻側に向かって、切り欠かれた形状をしている切り欠き部 (13)と、
前記切り欠き部 (13)の空間内に回動可能に配置される回動体(12)と、
前記ドア本体(1d)に対して前記回動体(12)を回動可能に連結する回動軸(11)と、
前記回動体(12)の戸先側の側面の少なくとも一部を突出するように形成され、前記ドア(D)の閉位置にてラッチ受けに収容されるラッチ部(3d)と、
前記切り欠き部(13)に面する前記ドア本体(1d)と前記回動体(12)との間に配置され、前記回動体(12)を戸先側に付勢する弾性体(5d)と、
前記回動体(12)のドア面側の表面上に設けられた操作部(7d)であって、前記操作部(7d)を操作して前記回動体(12)を前記回動軸(11)を中心に戸尻側に回動させることにより、前記ラッチ部(3d)を前記ラッチ受けから解放可能である、前記操作部(7d)と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の態様は、蝶番(6)により開閉するドア(E)であって、
ドア本体(1e)と、
前記ドア本体(1e)の戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、前記ドア(E)の閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部(3e)と、
前記蝶番(6)が取り付けられ、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、前記筐体内に前記ドア本体(1e)を少なくとも部分的に格納するドアケース(2e)と、
前記ドアケース(2e)の前記筐体内に配置され、前記ドア本体(1e)を、前記ドア(E)の戸先側に付勢する弾性体(5e)と、
前記ドア本体(1e)のドア面上に設けられた操作部(7e)であって、前記操作部(7e)を操作して前記ドア本体(1e)を前記ドア(E)の戸尻側に摺動させることにより、前記ラッチ部(3e)を前記ラッチ受けから解放可能である、前記操作部(7e)と、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の態様は、
ドア本体(1f)と、
前記ドア本体(1f)の戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、ドア(F)の閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部と、
前記ドア(F)を開閉するための蝶番(15)と、
前記ドア本体(1f)のドア面上に設けられた操作部と、を有し、
前記蝶番(15)は、
一対の対向する平板部(15h,15j)と平板部同士を連結する連結板部(15i)とを具備するドア側の羽(15d)と、一対の前記平板部(15h,15j)にそれぞれ形成された水平方向に延在する1又は複数のスリット孔(15f)と、一対の前記平板部(15h,15j)の間に配置される前記ドア本体(1f)を保持しかつ前記スリット孔(15f)に沿って摺動可能なスライド部材(15g)と、前記ドア側の羽(15d)内にて前記ドア本体(1f)と連結板部(15i)との間に配置された前記ドア本体(1f)を戸先側に付勢する弾性体(5f)と、を具備し、
前記操作部を操作して前記ドア本体(1f)を前記ドア(F)の戸尻側に摺動させることにより、前記ラッチ部を前記ラッチ受けから解放可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の態様は、蝶番(6)により開閉するドア(G)であって、
ドア本体(1g)と、
前記ドア本体(1g)の戸先側の側面の一部に形成された空洞部(10)であって、前記空洞部(10)を挟んで両側に位置するドア本体(1g)の一部が戸先側から戸尻側に向かって所定の長さだけ切り欠かれた形状を有している空洞部(10)と、
空洞部内で摺動可能なスライド体(8)と、
スライド体の戸先側の側面の少なくとも一部を突出させて形成され、前記ドア(G)の閉位置にてラッチ受けに収容されるラッチ部と、
前記空洞部(10)内に配置され、前記スライド体(8)を前記ドア(G)の戸先側に付勢する弾性体(5g)と、
前記スライド体 (8)のドア面側の表面上に設けられた操作部(7g)と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラッチ機構がドアと一体化されたことで、これまでラッチ機構に用いられてきた様々な部品の製造を省略できるようになる。
設けることのできるラッチ部の形状の自由度から、従来のラッチ受けの構造にあわせた形状のみならず、ラッチ部にて様々なデザイン性をもたせることもできる。ドア面に対して直交する直線方向のドアの耐性を相対的に高めるように、ラッチ部を形成することも可能になる。ラッチ機構がドアと一体化されたことで、ラッチ機構に係る構造がシンプルとなり、ラッチを解除する部位の構造もシンプルとなり、そのためにラッチ部及び操作部の取り付け位置の自由度が相対的に高まった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態のドアを斜め上方から視た概略斜視図である。
【
図2】
図2は、第2の実施形態のドアを、正面から視た概略正面図である。ドアの閉状態において、ラッチ部がラッチ受けに収容されている状態を示している。
【
図3】
図3(a)(b)は、
図1のI-I断面の一例をそれぞれ概略的に示し、(c)はドア本体が変則的な形状を取る場合の一例を示したものである。
【
図4】
図4は、第3の実施形態のドアを斜め上方から視た概略斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、第4の実施形態のドアを斜め上方から視た概略斜視図である。(b)は、回動体周辺を斜め上方から視た概略斜視図である。
【
図6】
図6は、第5の実施形態のドアを斜め上方から視た概略斜視図である。
【
図7】
図7は、第6の実施形態のドアの蝶番を斜め上方から視た概略斜視図である。
【
図8】
図8は、第6の実施形態のドアの蝶番を上方から視た概略平面図である。
【
図9】
図9(a)は、第7の実施形態のドアを斜め上方から視た概略斜視図である。(b)は、第7の実施形態のうちスライド体の戸先側の一部が突出することでラッチ部が形成される場合における、ドアの操作部周辺を正面から視た概略正面図である。(c)は、第7の実施形態のうちスライド体の戸先側の全部が突出することでラッチ部が形成される場合における、ドアの操作部周辺を正面から視た概略正面図である。(d)は、スライド体、操作部やラッチ部等がドア本体の下方に設けられた場合の、ドアの操作部周辺を斜め上方から視た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。図面において、各実施形態における同じ又は類似する構成要素には、基本的に同じ符号を付している。また、別の実施形態において既に説明した同じ又は類似する構成要素については、説明を省略する場合がある。
【0016】
本発明を適用されるドアは、一端部の鉛直回転軸の周りで回動して開閉する片開きドアである。ドア本体の幅方向に関して、回転軸の方を「戸尻側」と称し、回転軸とは反対側の方を「戸先側」と称することとする。蝶番の設置の仕方によってドア開閉における回動方向は、変わるが、便宜的に、
図1、4、5、6,7、8、9のように蝶番を設置したときの、ドアA~Gの一方のドア面をドア正面30aとし、他方のドア面をドア背面30bとする。
【0017】
(1)第1の実施形態
図1と
図3を参照して、本発明の第1の実施形態のドアAの構成を説明する。
図1は、第1の実施形態のドアAを斜め上方から視た概略斜視図である。
図3は、
図1のI-I断面を概略的に示した図である。第1の実施形態のドアAは、両方のドア面のうち一方の側にのみ、開くことが可能なドアである。
図1では、例としてドアAの戸尻側の壁に、蝶番の一方の羽が固定され、他方の羽がドアの戸尻側に固定されている様な状況を想定し、
図1の矢印の曲線で示したドア開放方向Pへ、蝶番の芯棒を中心軸に開放可能なドアを示している。
【0018】
図1のドアAは、サイズの大きな構成要素としてドア本体1aとドアケース2aを具備している。ドアケース2aは、ドア本体1aの一部を格納することができるように形成されている。
ドア本体1aは、ドアケース2aに対してドア本体1aが回動可能なように、ドアケース2aと回動軸4aにより連結されている。ドアケース2aは蝶番6と連結されているため、回動軸4aを中心に回動するのはドア本体1aとなる。この回動する動きを実現する回動軸4aの設け方としては、多様な方法がある。たとえば、ドアケース2aのドア正面30a側から、ドア本体1aを通り、ドアケース2aのドア背面30b側まで、貫通させた孔を設け、そこにドア本体1aに固定された軸を通し、この軸とドアケース2aは、ベアリングを介して接する方法などが考えられる。ドア本体1aのドアケース2aに対する回動を実現するには必ずしもドアケース2aないしドア本体1aに貫通する孔を必要とするものではない。
【0019】
ドアケース2a内に配置され、ドア本体1aを、ドアAの戸先側に付勢するように、弾性体5aが設置される。
弾性体5aのドアケース2a内での固定や、ドア本体1a側との固定する方法としては、支持部材を介して設置するなどが考えられる。
図1に示した状態のように、ドアAが閉位置にあってラッチ3aがラッチ受けに収容されたときのドアAの状態を、閉状態ポジションとする。弾性体5aの役割は、ドア本体1aがドアケース2aに対して、回動軸4aを中心に回動することでラッチが解除されたドアA状態から、閉状態ポジションにまで付勢して戻すことや、回動するための力が、加えられていないときにも閉状態ポジションにあるときのドアケース2aに対するドア本体1aの状態を維持することにある。
この役割を果たすことができるような特性を持つ弾性体5aが設置されることになり、その設置される個数についても、その役割を果たせれば、制約はない。例えば、
図1や
図3の破線で示した弾性体5aのように、ドアケースの内部における、ドアAの戸尻方向の場所に設置することもできる。この場合、回動体4aの中心軸の高さより下側になければならない制約がある。別の部位として、ドアケース2a内における下側方向の底面に弾性体5aを設置することも可能である。この場合には、回動軸4aの中心軸より戸先側であって、ドアケース2aの開口面よりも戸尻側になければならない制約がある。
【0020】
ラッチ機能を果たす部位として、ラッチ部3aがあるが、ドア本体1aの戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成されており、ドア本体1aと一体化した構造をとる。
ドアAの閉状態ポジションにおいて、ラッチ部3aがラッチ受けに収容されることでラッチ機能をはたす。
ラッチ部3aの形状等は、ラッチ受けの場所や形状によって制約をうけるが、周囲環境による制約を除けば、ラッチ部3aの配置や形状に主だった制約はない。
図1における矢印の曲線で示したドア開放方向PにドアAが開放されることを厳格に妨げるには、ラッチ部3aのドア正面30a側が、ドアAの開放方向と垂直な面において、
図1に示すように、平面であることが好ましい。
ドアAが開状態から閉状態になる際に、ラッチ部3aが操作部7aを用いた特定の操作を必要とせずに、ラッチ受けに収容されるようにするには、ラッチ部3aのドア背面30b側の面が、
図1に示すように横断面において扇状となるような曲面をとることが好ましい。
さらに、ラッチ解除可能となるドア本体1aの回動状態において、正面視した場合に、ラッチ部3aの戸先側のラインと、ラッチ受けのドア側のラインとが平行となるように、ラッチ部3aが形成されていることが望ましい。これにより、ラッチ部3aの一部分のみにラッチ受けが強く接触することによるラッチ部3aの経年劣化を防ぐことができる。
【0021】
操作部7aは、ドア本体1aのドア正面30aとドア背面30bの両面に設けられている。
第1の実施形態において、操作部7aを操作することで、ドアAを閉状態から開状態にするには、操作部7aに対して下方に力を加え、ドア本体1aが回動軸4aの周りを回動する動作をさせることで、ラッチ部3aをラッチ受けから解放し、その後操作部7aに対して、ドアの開放方向Pに、力を与える。ドア本体1aのドア面両側のいずれの操作部についても同じ動作をすることになる。
操作部7aを操作することで開状態から閉状態にするには、基本的にはこれと逆の手順の動作を行わずともドア本体1a又は操作部3aを単に前方に押すだけでよい。
操作部7aの形状は、上記操作を行うことが可能であればよく、主だった制約はない。
図1のように、単純な直方体構造にするのであれば、ドア開放方向Pへの力を操作部7aに加えやすいように、摩擦が生じやすい素材を上部に設けるか、摩擦が生じやすい部材を用いて操作部7aを設けることが好ましい。
ドア本体1aのドア正面30a側とドア背面30b側における操作部7を設ける位置については、回動軸4aを通る鉛直方向直線よりも少なくとも戸先側にあることを要する。また回動動作にあたって、操作部7aがドアケース2aに接触しない位置に設ける必要もある。回動のための力を最小限にすることを考えると、回動軸4aの中心からの距離がある方が好ましい。
【0022】
図1では、ドアケース2aに蝶番6の一方の羽が取り付けられ、他方の羽が壁などに取り付けられているため、蝶番6の芯棒を中心に、ドアAが開閉する。
ドアケース2aは、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、筐体内にドア本体1aを少なくとも部分的に格納する構造をとる。
ドア本体1aが、ドアケース2a内で、回動動作可能な構造を有することで、ラッチ部3aがラッチ受けから解除される、あるいはラッチ受けに収納されることを可能にする。
ドアケース2a内に弾性体5aが設けられ、それによるドア本体1aへの戸先側への付勢により、ラッチ部3aがラッチ受けへ収納される方向への、ドア本体1aの回動動作が、手動操作なく行われる。
こうしたドア本体1aの回動動作をドアケース2a内で可能とする範囲において、ドアケース2aのとりえる形状に主だった制約ない。
他方で、蝶番6や弾性体5aが取り付け可能かという点やドア本体1aの形状を先に設計された場合や、その他周囲環境による制限を受ける。
【0023】
第1の実施形態を表した
図1においてドア本体1aは、その一部がドアケース2aに格納されている。ドア本体1aが、ドアケース2aに対して回動軸4aを中心に回動することによってラッチ部3aがラッチ受けから解除される仕組みを取る。ドア本体の取り得る形状は、その動き及びドアケース2aがとる形状による制約を受けることになる。
図3は、
図1のI-I断面を概略的に示した図であるが、
図3(a)においてはドア1aが、ドア面が長方形となっている実施例を示している。この場合においてドア本体1aがラッチ解除のために回動軸4a周りを回動した後、ドア本体1aの右上と右下が、それぞれラッチ受けの存在する壁W側とドアケース2aないし床面と接触しないようにするために、ドア本体1a右側においては壁Wとの間に、ドア本体1a下側においては床面ないしドアケース2aとの間に、間隙を持たせるようにした例である。
図3(b)は、上述のように、ドア本体1aが回動した場合に、他の面と接触しないようにするために、ドア本体1aを変則的な形状にした実施例を示している。そのドア本体1aの形状のみを取り出した概略図が
図3(c)である。回動した場合に他の面と接触する可能性のあるドア本体右側面上部と下側側面において、傾斜をつけた実施例である。
こうした形状以外においても、ドア本体1aがとりえる形状は、上述のようにドアケース2aが卵型であれば、それに合わせてドア本体を卵型にすることも可能である。
ドア本体の取りうる形状は、回動軸4aや弾性体5aが設置可能かという点や、設置したいラッチ部3aや操作部の形状等に起因した制約はあるが、それ以外の点で主だった制約はない。
【0024】
(2)第2の実施形態
図2を参照して、本発明の第2の実施形態のドアBを説明する。
図2は、第2の実施形態のドアBを正面から視た概略正面図である。
第2の実施形態では、
図2に示すように、ドアケース2bがドア本体1bの全体を格納するような形状を取る。この場合においても操作部7bを操作することで、ドア本体1bが回動軸4b周りを回動することで、ラッチ部3bが壁Wに存在する凹型のラッチ受けから解除される機構を持つ点で第1の実施形態とは本質的に変わりはない。
【0025】
ドア本体1b全体がドアケース2bに格納されていることから、ドア本体1bに設けられた操作部7bに対してドアケース2bの外側からアクセスできるようにしなければならない。
図2で示すように、そのための孔9がドアケース2bに空いている。操作部7bを操作してラッチ部3bをラッチ受けから解放するために必要な回動を行う際に、操作部7bが少なくとも孔9の枠に接触しないように、孔9の大きさを決めなければならない。
【0026】
第2の実施形態では、ドアケース2bの戸先側の側面が、ドア本体1bを格納しかつドア本体1bが回動するのに必要な範囲で、戸先側側面を開口している。
他方で、第2の実施形態では、
図2からわかるように、少なくともドア本体1bに形成されたラッチ部3bが外部に突出して、壁側に存在する凹型のラッチ受けに格納されるようにすればよい。
この点で第1の実施形態よりも制約が少ないと言える。
【0027】
(3)第3の実施形態
図4を参照して、本発明の第3の実施形態のドアCを説明する。
図4は、第3の実施形態のドアCを斜め上方から視た概略斜視図である。
第1の実施形態と比較しドアケース2cは、ドア面水平方向の長さにおいて長く、ドア本体1cは、ドア面水平方向の長さにおいて短い。
第3の実施形態では、ドア本体1cが、水平方向の長さにおいて短くなることが可能であることを示している。操作部7cがドアケース2cに格納されていないこと、ドア本体1cがドアケース2cに格納されている部分に回動軸4cが設置されていることを必要とする。
ドアCとして必要な水平方向の長さを満たすために、ドア本体1cの水平方向の長さが短くなった分だけ、ドアケースの水平方向の長さが長くなる。そうすると、ドアケース2cの戸尻側に弾性体5cを設ける場合には、その分だけ、弾性体5cの長さが必要となる。
【0028】
第1、第2、第3の実施形態は、操作部7a、7b、7cを操作することで、ドア本体1a、1b、1cが回動軸4a、4b、4c周りを回動することで、ラッチ部3a、3b、3cが壁Wに存在する凹型のラッチ受けから解除される機構を持つ点で本質的に変わりはない。ドアケース2a、2b、2cやドア本体1a、1b、1cの大きさ、ドア本体1a、1b、1cがドアケース2a、2b、2cにどの程度格納されているのかといった点について、ドアの必要とするドア面水平方向の長さを確保できるようにすれば、一定の自由度を持って設計することができることを、これらの実施形態を通して示している。
【0029】
(4)第4の実施形態
図5を参照して、本発明の第4の実施形態のドアDを説明する。
図5(a)は、第4の実施形態のドアDを斜め上方から視た概略斜視図である。
図5(b)は、回動体12周辺を斜め上方から視た概略斜視図である。
第4の実施形態のドアDは、両側のドア面のうち一方の側にのみ、開くことが可能なドアである。この点で第1~3の実施形態と共通する。
図5では、例としてドアDの戸尻側の壁に、蝶番6の一方の羽が固定され、他方の羽がドアDの戸尻側に固定されている実装例を想定し、矢印の曲線の方向Pに、蝶番6の芯棒を中心軸に開くことが可能なドアを示している。
【0030】
第1~第3の実施形態との主な共通点は、蝶番によって開閉可能な開き戸であることと,ドアにラッチ機構が一体化していること、回動動作によって、ラッチを解除する機構を有することである。
【0031】
第1~第3の実施形態との主要な相違点は、第4の実施形態においてドアケースを有しない点、第1~第3の実施形態においてドアケース内で実現していた機能を、第4の実施形態では、切り欠き部の空間内で実現していることである。
【0032】
第4の実施形態に係るドアDは、ドア本体1dの戸先側の側面の一部が戸先側から戸尻側に向かって、切り欠かれた形状をしている切り欠き部13を有する。これはラッチ部が取り付けられる回動体12を設けるための空間である。回動体12が戸尻側に回動することによってラッチ部3dがラッチ受けから解放される。その機能が回動体12において果たせるような空間であれば、ドア本体1dの戸先側のどの部位に切り欠き部13を設けても良い。
図5では、ドア本体1dの戸先側の下端に切り欠き部を有する場合の例を示している。
図5のように、ドアの下方に切り欠き部を設けた場合には、足の操作によるドアDの開閉が想定されている。
切り欠き部の形状においても設置部位と同様に、回動体12がその機能を果たせる範囲において、主だった形状の制約はない。
図5では、ドア面側で直角三角形である三角柱体の空間となるような、切り欠き部が形成された例を示している。
【0033】
回動体12がドア本体1dに対して回動体12が回動可能なように、回動体12とドア本体1dは、回動軸11を介して連結されている。回動軸11を中心に回動体12がドア本体1dに対して回動することで、ラッチ部3dがラッチ受けから解放される。
ドア本体1dと回動体12は直接結合されずに、回動軸11を介して結合している。回動軸11の設け方としては、多様な方法がある。例えば、蝶番の一方の羽をドア本体1dに設け、他方の羽を回動軸11に設ける方法や、回動軸11を本体に設け、その回動軸11と回動体12を結合するという方法なども考えられる。
【0034】
回動体12は、そこにラッチ部3d、操作部7d、及び弾性体5dが設けられている。
回動体12が回動することで、そこに設けられたラッチ部3dがラッチ受けから解放されることになる。弾性体5dの力によって、ラッチ部3dがラッチ受けに収容されるポジションを維持することができる。これらのことから、回動体はラッチ部とセットで考え、その機能を果たせる大きさを有しなければならない。
回動体12の回動動作は、切り欠き部13の空間内で、完結しなければならない。当該空間内に収まらない場合には、例えば、
図5のようにドア本体1dの下端に切り欠き部13を設ける場合に、回動体12の回動動作において床面に回動体12が接触することで、回動できず、ラッチ解除されない場合がありえる。逆に、回動体12の回動動作が切り欠き部13の空間内で完結し、回動体12に設けられたラッチ部3dがラッチ機能を果たせるならば、回動体の形状に主だった制約はない。
【0035】
切り欠き部13に面するドア本体1dと回動体12との間に配置され、回動体12を戸先側に付勢する弾性体5dが設けられている。弾性体の一つの役割は、ドアDが閉状態ポジションにあるときに、ラッチ部3dがラッチ受けに収容されている状態を維持することにある。
弾性体の別の役割の1つは、ドアDが開状態にあってラッチ部3dがラッチ受けから解放された状態から、ドアDが閉状態にあってラッチ部3dがラッチ受けに収容された状態へと移行する際に、戸先方向の力を操作部7dに加える必要がなく弾性体5dが圧縮されて、ラッチ部3dをラッチ受けに収容できることである。弾性体5dに抗した手動操作の力を加えることなく、ラッチ部3dがラッチ受けに円滑に収容されるためには、閉状態への移行に際してラッチ受けの手前の戸枠と接触することになるラッチ部3dのドア背面30b側の面が、滑らかな曲面となっている。
図5で示したラッチ部3dが、一つの取り得る形状になる。その他のドアFを形成する構成要素については、後述する第6の実施形態と同じである。
弾性体の固定方法は、ドア本体及び回動体の各々に対して、支持部材を介して設けることが考えられる。
【0036】
操作部7dは、弾性体5dに抗した力を加え、回動体12の戸尻側への回動動作を生じさせるために、設けられる。
図5のように、切り欠き部13がドアの下方に位置する場合には、操作部の操作は足で行うことが想定される。この場合、ドア開放方向PへドアDを開放するための引き動作をするために、開放方向にドアDへ力を伝える必要があり、操作部7dの操作時に、足がドア開放方向Pへとずれない何らかの構造が必要となる。一般的には
図5の操作部7dが有するようなひっかかりを作ることである。
また、操作部7dを戸先側から視た場合に、
図5に示すような、操作部7dの上側が曲線となる形状にすると、操作部7dを上方から足で踏みつけにくくなるため、踏みつけることによる操作部7dの経年劣化を回避できる。
【0037】
ラッチ部は、回動体12の戸先側に設けられるため、場所の自由度は限定される。しかし、切り欠き部13及び回動体の場所や形状の自由度がある点で、ラッチ部の設置場所の自由度も十分に確保されているといえる。
【0038】
別の観点で、形状を考察する。ドア面側からドア1dを視た場合に、そのドア面側における回動体12の面積が大きいほど、ドアの遮蔽機能が高まり、小さいほど遮蔽機能が低下する。遮蔽機能のために当該面積を大きくすると、回動体12の回動動作が、切り欠き部13の空間内で完結しない場合がある。遮蔽機能を考えるのであれば、回動体12の回動動作を邪魔しないような箱型ケースであって、ドア本体1dに取り付けることで切り欠き部13を覆うことができるものを別途設けることも考えられる。
【0039】
第1~第3の実施形態において、ドアケースは、ドア本体に一体化したラッチ部がラッチ受けから解除されるためのドア本体の回動動作を可能にするためや、弾性体を設けることで、手動操作をせずに、ラッチ解除されたドア本体の状態から、操作部に力を加えていない元のドア本体の状態に戻すことができる機構を実現するための、役割を果たしていた。
第4の実施形態において、その役割は、切り欠き部13の空間内に、回動体12、回動軸11、弾性体5dを具備することで実現しているため、第4の実施形態におけるドアDはドアケースを有しない構成となっている。
そうであってもドア本体にラッチ機能が備わっている点、回動動作によってラッチ解除される点から、第1~第3の実施形態と本質的に相違するものではない。
【0040】
(5)第5の実施形態
図6を参照して、本発明の第5の実施形態のドアEを説明する。
図6は、第5の実施形態のドアE斜め上方から視た概略斜視図である。
第5の実施形態のドアEは、両側のドア面のうち一方の側にのみ、開くことが可能なドアである。この点で第1~4の実施形態と共通する。
図6では、例としてドアEの戸尻側の壁に、蝶番6の一方の羽が固定され、他方の羽がドアEの戸尻側に固定されている実装例を想定し、矢印の曲線の方向Pに、蝶番6の芯棒を中心軸に開くことが可能なドアを示している。
【0041】
ドアEは、第1~4の実施形態のドアと、ラッチ部3dを解除する機構が異なる。
第1~3の実施形態では、操作部7a、7b、7cを操作してドア本体1a、1b、1cをドアケース2a、2b、2cに対して軸回動することでラッチ部3a、3b、3cをラッチ受けから解除し、第4の実施形態では操作部7dを操作して回動体をドア本体に対して軸回動することでラッチ部3dをラッチ受けから解除する。第1~4の実施形態のドアのタイプを軸回動タイプとすると、第5の実施形態のドアEは、操作部7eを操作してドア本体1eをスライドさせることでラッチ部3eをラッチ受けから解除することから、スライドタイプといえる。
【0042】
ラッチ機能を果たす部位として、ラッチ部3eがあるが、ドア本体1eの戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成されており、ドア本体1eと一体化した構造をとる。
ドアEの閉位置において、ラッチ部3eがラッチ受けに収容されることでラッチ機能をはたす。
ラッチ部3eの形状等は、ラッチ受けの場所や形状によって制約をうけるが、周囲環境による制約を除けば、ラッチ部3eの配置や形状に主だった制約はない。
図6おける矢印の曲線で示したドア開放方向PにドアEが開放されることを厳格に妨げるには、ラッチ部3eのドア正面30a側が、ドアEのドア開放方向Pと直交する面において、
図6に示すように、平面であることが好ましい。
ドアEが開状態から閉状態になる際に、ラッチ部3eが操作部7eを用いた特定の操作を必要とせずに、ラッチ受けに収容されるようにするには、ラッチ部3eが、
図4のラッチ部3cと同様に、扇形柱体であることが好ましい。
【0043】
操作部7eは、ドア本体1eの両面に設けられている。
第5の実施形態において、操作部7eを操作することで、ドアEを閉状態から開状態にするには、操作部7dに対してドア面水平方向の戸尻側に力を加え、ドア本体1eをその方向に摺動させることで、ラッチ部3eをラッチ受けから解放し、その後操作部に対して、ドア開放方向Pに、力を与える。ドア本体1eのドア面両側に設けられた操作部7dいずれかについてこの動作を行うことになる。
図6に示すようにラッチ部3eが直方体の形状を取る場合に、操作部7eを操作することで開状態から閉状態にするには、これと逆の手順の動きをドアEに与えることで、ラッチ部3eをラッチ受けに収納する。ラッチ部3eが、
図4のラッチ部3cと同様に、扇形柱体である場合に、操作部7eを操作することで開状態から閉状態にするには、ドア背面30b側に押すだけでよい。
操作部7eの形状は、上記操作を行うことが可能であればよく、主だった制約はない。
図6のように、単純な直方体構造にするのであれば、ドア開放方向Pへの力を操作部7eに加えやすいように、摩擦が生じやすい素材を戸先側及び戸尻側の側面に設けるか、摩擦が生じやすい部材を用いて操作部7eを設けることが好ましい。
弾性体5eの力に抗して弾性体5eを収縮させる方向に、操作部7eを介して力を加え、ドア本体1eを摺動させることで、ラッチ部3eがラッチ受けから解除されるが、そのラッチを解除するに足る距離の摺動において、操作部7eがドアケース2eに接触しないように設ける必要がある。操作部を設ける位置について、その他の点において主だった制約はない。
ドア本体1eを摺動させるのに必要な力を最小限に収めたいのであれば、一つ以上の弾性体5eの反発力とドア本体1eとその下面の接地面で生じる静止摩擦力との合力に対して、逆向きに力が加えられる位置に、操作部7eが設けられることが望まれる。
【0044】
ドアケース2eに配置され、ドア本体1eを、ドアEの戸先側に付勢するように、弾性体5eが設置される。
弾性体5eのドアケース2eでの固定や、ドア本体1eとの固定する方法としては、支持部材を介して設置するなどが考えられる。
図6は、ドアEが閉位置にある状態を示しており、この状態においては、ラッチ部3eがラッチ受けに収容されている。この状態を、閉状態ポジションとする。弾性体5eの役割は、ドア本体1eがドアケース2e内にさらに格納される方向に、すなわち戸尻側に摺動することでラッチ部3eがラッチ受けから解除されたドアEの状態から、閉状態ポジションにまで付勢して戻すことである。
この役割を果たすことができるような特性や大きさを持つ弾性体が設置されることになり、その設置される個数についても、その役割を果たせれば、制約はない。例えば、
図6の破線で示した弾性体5eのように、ドアケース2eの内部における、ドアEの戸尻方向の場所に設置することもできる。
【0045】
図6では、ドアケース2eに蝶番6の一方の羽が取り付けられ、他方の羽が壁などに取り付けられているため、蝶番6の芯棒を中心に、ドアEが開閉する。
ドアケース2eは、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、その筐体内にドア本体1eを少なくとも部分的に格納する構造を取る。
蝶番6や弾性体5eが取り付け可能かという点や、ドア本体1eの形状が先に設計された場合や、その他周囲環境による一定の制限を受けるが、それ以外において形状に対する主だった制約はない。
そのため、ドアケース2eは、
図6のように直方体であって戸先側の一面だけが開放した形状に限られるものではなく、例えば、上面と底面が矩形であって、戸尻側と戸先側の側面が、当該側面の鉛直方向中心部に近づくほど、当該側面の水平方向の幅が広がる形状を有することも可能である。
【0046】
ドア本体1eの取りえる形状は、弾性体5eが設置可能かという点や、設置したいラッチ3eや操作部7eの形状等に起因した制約はあるが、それ以外の点で主だった制約はない。
また、上記実施例1~3で示したのと同様に、ドア本体1eが少なくともドアケース2eの一部に格納されていればよく、ドアケース2eにドア本体1eの全体が格納されていても良い。ドア本体の水平方向の長さを短くし、その分、ドアケース2eの水平方向の長さを長くするようにドア全体を設計することも可能である。
【0047】
(6)第6の実施形態
図7と
図8を参照して、本発明の第6の実施形態のドアFを説明する。
第6の実施形態は、ドアFをドア面と平行な水平方向に摺動させることで、ラッチ部をラッチ受けから解除する構造をとるドアFであって、このスライド構造を蝶番15に持たせることを特徴としたドアFとなる。上述したスライドタイプのドアの中の一形態なる。
図7は、第6の実施形態のドアEにおける蝶番15を斜め上方から視た概略斜視図である。
図8は、第6の実施形態のドアEにおける蝶番15を上方から視た平面図となる。
【0048】
第6の実施形態のドアFは、両方のドア面のうち一方の側にのみ、開くことが可能なドアである。この点で第1~5の実施形態と共通する。
図7では、例としてドアFの戸尻側の壁に、蝶番15の一方の羽15bが固定され、蝶番15の芯棒15cを中心に開閉可能なドアFにおける蝶番15を示している。
【0049】
ドア本体1fに関しては、ラッチ部が、戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成されており、ドアFの閉位置においてラッチ受けに収容される構造を持つ点は、これまでの実施形態と同じである。
第6の実施例に関するドアFは、上述したスライドタイプのドアであるため、第5の実施例と共通する。スライド機能を果たすための操作部は、第5の実施形態の操作部と実質的に同一である。
【0050】
図7、
図8に示すように、蝶番15は、壁側の羽15bは、通常の蝶番と異なるものではないが、他方の羽が、三枚の板によって平面視でコの字型を形成するような形状となっている。
三枚の板は、一対の対向する平板部15h、15jと平板部同士を連結する連結板部15iとを指している。平板部15h、15jと連結板部15iとの接する辺のいずれか一方に蝶番15の回動の中心となる芯棒15cが設けられる。
図7、
図8では、コの字型の内側において、一対の平板部15h、15jにそれぞれ形成された水平方向に延在する1つ以上のスリット孔15fを設け、そのスリット孔15fに沿って摺動可能なスライド部材15gによって、ドア本体1fを保持する様子を示している。
ドア本体の保持の仕方は、一例として、
図7、
図8では、ドア本体1fに、貫通孔を開け、そこにスライド部材15gを通す方法が考えられる。スライド部材15gの数は、全ての蝶番15についたスライド部材15gを合わせて少なくとも2本以上となることが好ましい。一本であるとそのスライド部材15gを中心として、ドア本体1fが回転する方向に係る力を止めることが難しいためである。貫通孔の数はスライド部材15gの数に合わせてドア本体1fに設ければよい。
ドア本体1fを保持する別の方法として、ドア本体1fに貫通孔を設けずに、凹部を設けて、そこにスライド部材をドア面の両側からはめ込むことによって支える方法も考えられる。この場合の凹部の数については、貫通孔の数と同様に、ドア面片側で数えて2つ以上設けることが望ましい。
【0051】
第5の実施形態において、弾性体5eはドアケース2e内に設置されていたのに対して、第6の実施形態では、弾性体5fは、蝶番15の中に設置されている。
図7にあるように、ドア側の羽15d内であって、すなわち一対の対向する平板部15h、15jと平板部同士を連結する連結板部15iからできるコの字型の内側であって、ドア本体1eを戸先側に付勢するように、弾性体5eが設置される。
弾性体5eの固定には、支持部材を介して設置する方法などが考えられる。
【0052】
第1、2、3、5の実施形態において、ドアケースは、ドア本体に一体化したラッチ部がラッチ受けから解除されるためのドア本体の回動あるいはスライドといった動きを可能にするためや、弾性体を設けることで手動操作を加えることなくラッチ解除されたドア本体の状態から操作部に力を加えていない元のドア本体の状態へと戻せるといった機構を実現するための、役割を果たしていた。
第6の実施形態では、蝶番15内に弾性体5fが存在するため、その仕組みは蝶番15内で完結することになる。従って、第6の実施形態におけるドアFはドアケースを有しない構成となっている。
蝶番15のみによって、ドア本体1fを支えることが可能なため、ドア本体1fの重量による、ドア本体1fの下側の接触点ないし接触面から床方向への力を与えない構造をとることができる。ドアの滑らかな開閉のためには、そうした構造を取ることが望ましい。
また、
図8に示すように蝶番15の内部に弾性体5fを設けることで、ドア本体1fの戸尻側の側面と蝶番15の連結板部15iとの間に間隙が生じる。そこで、ドアの遮蔽機能を持たせるため、
図7に示すように、蝶番15に遮蔽板16を設けることもできる。この遮蔽板16は、平板部15h、15jの蝶番15外側の面に設けることもでき、二つの平板部15h、15jのいずれか又は両方に設けてもよい。平板部15h、15jの蝶番15外側の面に、遮蔽板を設ける方法として、ねじ止めなど様々な方法がありえる。平板部15h及び平板部15jと、ドア本体1fとの間に、隙間がある場合には、ラッチ解除のためのドア本体1fの摺動を妨げない限りにおいて、遮蔽板16は、平板部15h、15jの蝶番15内側に設けることもできる。
【0053】
(7)第7の実施形態
図9(a)~(d)を参照して、本発明の第7の実施形態のドアGを説明する。
図9(a)は、第7の実施形態に係るドアGを斜め上方から視た概略斜視図であって、(b)は、第7の実施形態のうちスライド体の戸先側の一部が突出することでラッチ部が形成される場合における、ドアの操作部周辺を正面から視た概略正面図である。(c)は、第7の実施形態のうちスライド体の戸先側の全部が突出することでラッチ部が形成される場合における、ドアの操作部周辺を正面から視た概略正面図である。
【0054】
第7の実施形態のドアGは、両方のドア面のうち一方の側にのみ、開くことが可能なドアである。この点で第1~6の実施形態と共通する。
図9では、例としてドアGの戸尻側の壁に、蝶番6の壁側の羽が固定され、蝶番6の芯棒を中心に、開閉可能なドアGを示している。
第7の実施形態は、上述したスライドタイプのドアであり、かつドアケースを有しないドアに関するものであり、その点で第6の実施形態と共通する。
【0055】
図9(b)及び(c)に示すように、ドア本体1gの戸先側の側面の一部に空洞部10が形成されており、その空洞部10を挟んで両側に位置するドア本体1gの部材の一部が戸先側から戸尻側に向かって所定の長さだけ切り欠かかれた形状をしている。ドア面部材の切りかかれた長さは、空洞部10の奥行き長さよりも短い。ラッチ部がラッチ受けに収納されるために、スライド体8が戸先側に摺動した状態で、ドア面両側へスライド体8が外れないように、その状態においてもなお正面視でスライド体8の少なくとも一部がドア本体1g内に格納されていることが望ましい。また、切り欠く深さが長すぎることは、ラッチ部3gがドア本体1gの戸先側に突出した状態において、ドア正面からドア本体1gを視た場合に、弾性体5gが見えてしまうことも有り得るため、ドアの遮蔽機能の観点からは、望ましくない。
図9では、空洞部10の形状が、直方体の場合を示しているが、その他の例として、スライド体8が空洞部10の内部を摺動することで、スライド体8の戸先側部分により形成されるラッチ部がラッチ受けに収容され、又はラッチ解除されることができる範囲であれば、空洞部の形状として様々なものをとることができる。
ただしスライド体8が空洞10内を摺動する際に、摺動方向と直交する平面上でずれがないことが、ドアの開閉という本来的機能を円滑に発揮するためには、好ましい。
【0056】
第7の実施形態は、
図9に示すように、空洞部10内で摺動可能なスライド体8を具備するドアGに関する。 上述のように、スライド体8は、好ましくは空洞部10に篏合するような形状とする。
第7の実施形態では、ラッチ部3gは、スライド体8の戸先側の側面の少なくとも一部を突出させて形成される。
図9(b)に示すように、スライド体8の戸先側の側面の一部を突出させた形状だけでなく、
図9(c)に示すようにスライド体の戸先側の側面のすべてを突出させた形状、言い換えるとスライド体8そのものがラッチ部でもある構造をもとることができる。ただしラッチ受けの形状によって、ラッチ部3gの形状の制約を受けることになる。
スライド体8そのものあるいはスライド体8の一部が突出した部分をラッチ受けに収容された状態がドアGの閉位置ポジションということになる。
【0057】
第7の実施形態のドアGには、空洞部10内に配置され、スライド体8を戸先側に付勢するための弾性体5gが具備されている。すなわち、手動操作の力を加えていないときには、ラッチ部3gは、ドア本体1gの戸先側側面よりも、戸先側に突出している状態になる。
そのため、ラッチ部3gがラッチ受けから解放された状態からラッチ受けに収容された状態に移行するときに、ラッチ部3gをラッチ受けに収容するために戸先方向への力を操作部7gに加える必要が無い。
弾性体5gに抗した手動操作の力を加えることなく、ラッチ部3gがラッチ受けに円滑に収容されるためには、閉状態への移行に際してラッチ受けと接触することになるラッチ部3gのドア背面30b側の面が、滑らかな曲面となっていることが望ましい。第1の実施形態に関する
図1で示したラッチ部3aが、一つの取り得る形状になる。
【0058】
第7の実施形態では、操作部7gは、スライド体8のドア正面30a側とドア背面30bに、設けられている。
スライド体8と空洞部10が篏合する関係にあるため、スライド体8に操作部7gを設けた場合に、ラッチ部3gをラッチ受けから解放するためにスライド体8を摺動させると、操作部7gは、ドア面部材の切り欠きしたラインで衝突し、摺動が停止することになる。この切り欠きライン14がストッパーの役割を果たすことになる。
また、
図9(d)は、上記のスライド体8、操作部7g、ラッチ部3g、空洞部10、弾性体5gがドア本体1gの下方に設けられた場合の例である。この場合の操作部7gの操作は足ですることを想定する。この図で示すように、操作部7gを戸先側から視た場合に、操作部7gの上側が曲線となるような形状にすると、操作部7gを上方から足で踏みつけにくくなるため、踏みつけることによる操作部7gの経年劣化を回避できる。
【0059】
以上、本発明の幾つかの実施形態を示す図面を参照して本発明を説明したが、各実施形態の特徴的構成を組み合わせた実施形態も本発明に含まれる。また、両方のドア面のうち一方の側にのみ、開くことが可能なドアを例として説明したが、両方のドア面のいずれにも開くことが可能なドアにも本発明を適用可能である。本発明の主旨に沿う限りにおいてさらに多様な変形形態が可能である。
【符号の説明】
【0060】
A、B、C、D、E、F、G ドア
P ドア開放方向
W 壁
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g ドア本体
2、2a、2b、2c、2d ドアケース
3、3a、3b、3c、3d、3f、3g ラッチ部
4、4a、4b、4c 回動軸
5,5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g 弾性体
6 蝶番
7、7a、7B、7c、7d、7f、7g 操作部
8 スライド体
9 孔
10 空洞部
11 回動軸
12 回動体
13 切り欠き部
14 切り欠きライン
15 蝶番
15a ネジ穴
15b 壁側の羽
15c 芯棒
15d ドア側の羽
15e ランナーロック
15f スリット孔
15g スライド部材
15h 平板部
15i 連結板部
15j 平板部
16 遮蔽板
30a ドア正面
30b ドア背面
【要約】
【課題】ラッチ操作をする部位の配置位置についての自由度を高くするために、ラッチ機構が一体化したドアを提供する。
【解決手段】ドア本体1aと、ドア本体1aの戸先側の側面の少なくとも一部が突出するように形成され、ドアAの閉位置においてラッチ受けに収容されるラッチ部3aと、蝶番6が取り付けられ、戸先側の側面が開口する筐体を具備し、筐体内にドア本体1aを少なくとも部分的に格納するドアケース2aと、ドアケース2aに対してドア本体1bを回動可能に連結する回動軸4aと、ドアケース2aの前記筐体内に配置され、ドア本体1aを、ドアAの戸先側に付勢する弾性体5aと、ドア本体1aのドア面上に設けられた操作部7aであって、操作部7aを操作して回動軸4aの周りでドア本体1aを回動させることにより、ラッチ部3aをラッチ受けから解放可能である、操作部7aと、を有する。
【選択図】
図1